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JP6460363B2 - 手袋 - Google Patents

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Description

本発明は耐薬品性を有する手袋に関し、更に詳しくは、伸縮性糸を使用した箇所と使用していない箇所の境界部分にクラックやピンホールが生じず、耐薬品透過性に優れ安全性の高い、サポートタイプの耐薬品性の手袋に関する。
従来から、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、天然ゴム、合成ゴム(NBR系、SBR系、クロロプレン系、シリコーン系)などが繊維製手袋上に被覆された、いわゆるサポート手袋が作業用手袋として使用されている(例えば特許文献1) 。
このような作業用手袋を製造する際、繊維製手袋を浸漬用手型に被せる工程において、繊維製手袋を浸漬用手型に十分フィットさせることができず、繊維製手袋にシワが発生することがある。このようなシワは当該繊維製手袋にゴムや樹脂を被覆する時に被膜にクラックやピンホール等を生じさせる原因になる。従って、繊維製手袋を浸漬用手型に十分フィットさせ、さらには、完成した手袋の使用者の手に対するフィット性や滑り止め性を向上させるために、従来から伸縮性糸(ゴム糸)を繊維製手袋内に編み込むことが知られている(例えば特許文献2〜4) 。
さらに、浸漬用手型を用いて繊維製手袋上にゴムを被覆した後に、当該手袋をより立体形状とするために、成形用手型に前記手袋を被せ替えて加熱硬化する手袋の製造方法が知られている(例えば特許文献5)。伸縮性糸を含まない繊維製手袋を用いてこの製法によりサポート手袋を製造すれば、前記手袋が成形用手型にフィットしないため、結果として、サポート手袋が使用者の手にフィットしなくなる。従って、このような場合にも伸縮性糸が編み込まれた繊維製手袋が使用される。
特開2012−77416号公報 特許第3760441号公報 特許第2925543号公報 特開2007−9346号公報 特開2005−320652号公報
しかしながら、伸縮性糸が編み込まれた従来の繊維製手袋にゴムや樹脂を被覆した場合、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分で、被膜にクラックやピンホールが発生し易くなる。このようなクラックやピンホール等が発生すると、作業中にクラック等から水や薬品が手袋内部に侵入し、安全性が損なわれ危険である。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分では段差が生じており、この段差が境界部分におけるクラック等の原因になっていることを突き止め、この知見に基づいて本発明を完成した。
即ち本発明は、従来の耐薬品性手袋の問題を解決し、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分でクラックやピンホールが生じにくく、耐薬品透過性に優れ、安全性が高い、サポートタイプの耐薬品性の手袋を提供することを目的とするものである。
本発明の特徴は、繊維製手袋の表面にゴムまたは樹脂を被覆した手袋であって、繊維製手袋の少なくとも手首部の裏側に伸縮性糸が編み込まれ、該伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分にゴムまたは樹脂が被覆されており、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が210μm以下である手袋である。
本発明の他の特徴は、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が50μm以下である上記の手袋である。
本発明の他の特徴は、European Standard EN374−3の方法に準じた硫酸の透過試験において、硫酸透過時間が20分以上である上記の手袋である。
本発明の他の特徴は、European Standard EN374−3の方法に準じた硫酸の透過試験において、硫酸透過時間が30分以上である上記の手袋である。
本発明の他の特徴は、ゴムまたは樹脂の固形分100重量部に対し、クラック防止剤を1.0重量部以上含むゴムまたは樹脂のラテックス配合液を用い、凝固剤を用いる凝固法により繊維製手袋の表面に合成ゴムまたは樹脂の被覆層が形成されている上記の手袋である。
本発明の他の特徴は、クラック防止剤が二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種である上記の手袋である。
本発明の他の特徴は、凝固剤が有機酸系凝固剤である上記の手袋である。
本発明の他の特徴は、有機酸系凝固剤が、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸から選ばれる少なくとも1種の凝固剤と、水、メタノール、エタノールから選ばれる少なくとも1種の溶媒とからなる上記の手袋である。
本発明によれば、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が210μm以下、好ましくは50μm以下であるので、当該境界部分にクラックやピンホールが生じず、耐薬品透過性に優れ、安全性の高い、サポートタイプの耐薬品性の手袋を提供することができる。
本発明の手袋は、繊維製手袋の表面にゴムまたは樹脂を被覆した手袋であって、繊維製手袋の少なくとも手首部に伸縮性糸が編み込まれ、該伸縮性糸上にゴムまたは樹脂が被覆されており、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が210μm以下であることを特徴とする。
本発明において、繊維製手袋には各種繊維のものが適用でき、綿、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリウレタン、高強度延伸ポリエチレン、例えば、ダイニーマ(登録商標)、アラミド、例えば、ケブラー(登録商標)等、既知のフィラメント糸または紡績糸を単独でまたは複合して、シームレスで編まれてなる手袋や編布、織布、不織布の縫製による手袋などが使用できる。
本発明で使用する繊維製手袋には、少なくとも手首部に伸縮性糸が編み込まれる。
本発明において、伸縮性糸とはゴム糸などと呼ばれるゴム弾性を有する糸であり、スパンデックス等の弾性繊維の周りに非弾性繊維からなる糸を巻回することにより、ゴム弾性を有し且つ一般的な編み機で扱えるようにされた糸である。本発明においては、ゴム弾性を有し、繊維製手袋に編み込むことができる伸縮性糸であればどのようなものでも使用できるが、このような伸縮性糸の市販品としては、例えば、LYCRA(登録商標)(東レ・オペロンテックス株式会社製)等が挙げられる。
本発明において、伸縮性糸を繊維製手袋に編み込む方法は特に限定されないが、例えば引き揃え編みやプレーティング編みのように2本の糸を同時に使う編み方において、2本のうち一方の糸を所定の部分で伸縮性糸に切り替える方法や、1本の糸で編むメリヤス編み等のような通常の編み方において所定の部分に伸縮性糸を加えて編む方法等が例示できる。
本発明において、繊維製手袋の表面にゴムまたは樹脂が被覆される。ゴムまたは樹脂は、通常の場合は手袋全体に被覆されるが、少なくとも伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分がゴムまたは樹脂で被覆されている手袋であれば本発明に含まれる。
本発明で使用されるゴムとしては、天然ゴム(NR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム等のジエン系ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴムが例示できる。これらの中で、特に、経済性、汎用性、アレルギーを起こす恐れのある蛋白を含まない等の観点からニトリルブタジエンゴムが好ましい。これらは、水系分散ラテックスが一般的であるが、溶剤系溶液や溶剤系分散液でも使用できる。
本発明で使用される樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル、それらの変性体が例示できる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用される。
なお、ゴムまたは樹脂のラテックスには、必要に応じ、金属酸化物、加硫促進剤、硫黄、界面活性剤、老化防止剤、pH調整剤、可塑剤、充填剤等を、1種又は2種以上配合することができる。
ゴムまたは樹脂を繊維製手袋に被覆する具体的な方法は特に限定されないが、繊維製手袋を手型に被せ、この手型を凝固剤溶液に浸漬してから引き上げて乾燥させ、その後ゴムまたは樹脂のラテックス配合液に浸漬し一定時間後に引き上げ、乾燥させる方法が例示できる。使用する手型は特に限定されず、金属製、セラミック製、木製、プラスチック製のものなどが使用できる。
本発明において使用される凝固剤は通常使用されるものでよく、具体的には蟻酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸カルシウム等の塩が使用されるが、硝酸カルシウムに代表される2価のアルカリ土類金属の無機塩が凝固力が強い点で好ましい。これらの凝固剤を溶解する溶媒も特に限定されず、通常は水、メタノール、エタノール等が使用されるが、揮発しやすく乾燥させやすい点でメタノールが好ましい。
本発明において、耐薬品性を高めるためにクラック防止剤を添加するのが好ましい。
本発明で使用されるクラック防止剤は4価の元素を有する金属酸化物であり、好ましくは、二酸化チタン(TiO2)、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化ジルコニウム(ZrO2)等が挙げられ、これらは単独で又は組み合わせて用いられる。
二酸化チタン及び二酸化ケイ素は充填剤として公知であり、例えば特開2011−32590号公報や特開2011−231448号公報にもラテックスに配合できることが記載されている。しかしながら、二酸化チタンは隠蔽性や他の充填剤をより細かく粉砕して凝集を防止する目的で使用され、また二酸化ケイ素はタレ防止や表面改質、滑り止め性を向上させる目的で使用され、本発明の耐薬品性を向上させる目的とは全く異なる。
クラック防止剤は、合成ゴム又は樹脂の固形分100重量部に対して1.0重量部以上使用される。1.0重量部未満では十分なクラック防止効果が得られない。クラック防止剤の上限は特にないが、十分に効果が得られる点から概ね10重量部以下が好ましく、配合液の安定性から5重量部以下がより好ましく、コストの点から2重量部以下が好ましい。
クラック防止剤の粒径については特に限定されないが、ゴム配合系等に凝集物を発生させない点から20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。また種類や形状については、クラック防止剤が二酸化チタンである場合は結晶構造がルチル型のものが好ましく、二酸化ケイ素である場合は一定の結晶構造を持たない非晶質シリカのうち湿式法で製造されたものが好ましい。
本発明においてクラック防止剤を添加する場合、凝固剤としては有機酸が好ましく、クラック防止剤と有機酸との相乗効果により優れたクラック防止効果が得られる。有機酸としては、例えば、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸等が例示できる。また、これらの有機酸を溶解する溶媒としては、通常は水、メタノール、エタノール等が使用されるが、揮発しやすく乾燥させやすい点でメタノールが好ましい。
有機酸と溶媒との割合は、溶媒100重量部に対して有機酸が2〜6重量部であることが好ましい。有機酸が2重量部未満では溝クラックが発生し、一方、6重量部を超えると繊維製手袋から被膜が剥離しやすくなる傾向がある。
溶媒が水である場合、凝固剤水溶液のpHは2〜2.7が好ましく、2.2〜2.6がより好ましい。pHが2未満では繊維手袋と被覆層との間で剥離しやすくなる傾向があり、一方、2.6を超えると十分な凝固が得られなくなる傾向がある。
溶媒が水でない場合には、溶媒を同じ重量の水に置き換えた場合に、pHが上記の範囲になるようにするのが好ましい。
ゴムまたは樹脂を被覆した後、加熱硬化を行う。加熱硬化の条件は定法でよいが、具体的には100〜150℃で0.15〜1時間、好ましくは120〜140℃で0.25〜0.5時間加熱することにより行う。しかしながら、いきなり上記の条件で加熱すれば手袋に含まれる水分が被膜内で急速に気化して手袋の品質に悪影響を与え、所謂ブリスター現象が発生することがあるため、高温で加熱硬化する前に、60〜90℃で0.5〜1時間、好ましくは60〜80℃で0.5〜0.75時間加熱して、被膜の含水量を低くしておくほうが好ましい。
加熱硬化後は脱型し、必要に応じて、水洗、乾燥して本発明の手袋が得られる。
本発明の手袋は、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が210μm以下、好ましくは50μm以下であることを特徴とする。境界部分に生じる段差は小さい程望ましく、例えば、繊維製手袋の伸縮性糸が編み込まれる箇所を、予め、編み込まれる伸縮性糸の厚さ相当分だけ薄くしておくことにより、段差を0μmとすることも可能である。
境界部分に生じる段差を一定以下にする方法は特に限定されないが、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の段差が小さくなるように伸縮性糸を選択する方法が例示できる。
具体的には、引き揃え編みやプレーティング編みのように2本の糸を同時に使う編み方において、2本のうち一方の糸を所定の部分で伸縮性糸に切り替える方法の場合は、切り替え前における編糸と伸縮性糸の単位長さ当りの重さ(以下、「デニール数」という)ができるだけ近いほうが好ましいが、例えば伸縮性糸のデニール数が切り替え前の編糸のデニール数の30〜300%が好ましく、50〜250%がより好ましい。
また、1本の糸で編む通常の編み方において所定の部分だけ伸縮性糸を加えた2本の糸で編む方法においては、使用する伸縮性糸は細ければ細いほど好ましいが、例えば140デニール以下が好ましく、90デニール以下がより好ましい。
本発明の手袋における伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差の測定方法は下記のとおりである。
前記境界部分を、伸縮性糸の編み方向と垂直方向に裁断し、その断面をゴムまたは樹脂の被膜を上側に、繊維製手袋の部分を下側にしてマイクロスコープ(キーエンス製、型番:VHX−900)にて観察した上で、伸縮性糸を含まない領域に被覆されたゴムまたは樹脂の被覆最上端を通る直線Aを水平方向に設け、伸縮性糸を含む領域に被覆されたゴムまたは樹脂の被覆最上端に前記直線Aと平行になるように直線Bを設け、この2直線A−B間の距離を測定して段差とした。また、測定箇所が複数ある場合は、すべての測定値の最大値を段差とした。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
実施例1
地編糸として75デニール(82.5dtex)のポリエステル双糸を2本用い、添え糸として75デニール(82.5dtex)のポリエステル双糸を1本用い、プレーティング編みを行う。手首部では添え糸を20デニール(22dtex)のスパンデックスの周りに70デニール(77dtex)のウーリーナイロン単糸を1本巻回してなる伸縮性糸に切り替えて編み、伸縮性糸が編成された部分と伸縮性糸が編成されていない平編部とからなる繊維製手袋を作製した。なお地編糸が表側、添え糸が裏側になるようにした。
この繊維製手袋を浸漬用手型に被せ、酢酸5重量部、メタノール100重量部からなる凝固剤の浴槽に浸漬し、5秒後に引き上げた。
この凝固剤に浸漬された手袋を30℃で45秒間乾燥させてから、この繊維製手袋の全体を、表1に示すNBRラテックス配合液の浴槽に浸漬してから引き上げた後、70℃で30分間乾燥させた。その後、乾燥した手袋を浸漬用手型から外してから、30℃の温水中で1時間リーチングした。
リーチング後脱水し、手袋をセット用手型(人間の手の自然な形状の手型)に被せ替えて加熱硬化を行った。加熱硬化は当初70℃で60分間加熱乾燥した後、120℃で20分間加熱することで行った。
加熱硬化後、セット用手型から離型することにより、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差は32.4μmであった。
Figure 0006460363
実施例2
繊維製手袋として、75デニール(82.5dtex)のポリエステル双糸を2本用いて平編みで編み上げられ、手首部のみ20デニール(22dtex)のスパンデックスの周りに70デニール(77dtex)のウーリーナイロン単糸を1本巻回したカバーリング糸からなる伸縮性糸を加えた合計3本の糸で編んだものを使用した他は実施例1と同様にして、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差は40.7μmであった。
実施例3
伸縮性糸として、70デニール(77dtex)のスパンデックスの周りに70デニール(77dtex)のウーリーナイロン単糸を1本巻回したカバーリング糸からなるものを用いた他は実施例2と同様にして、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差は200.5μmであった。
実施例4
NBRラテックス配合液の浴槽から引き上げるまでは実施例1と同様に操作し、その後、25℃で7分間乾燥させ、次いで75℃で5分間乾燥させた。その後、乾燥した手袋を50℃の温水中で2分間リーチングし、温水中から引き上げて表面の水滴がなくなるまで乾燥させ、第1層の被膜を形成させた。
第1層の被膜が形成された手袋を、NBRラテックスをLx−551に、増粘剤A−7075の量を0.3重量部に変更した他は表1に示したものと同じラテックス配合液へ5秒間浸漬してから、第1層と同様に乾燥、リーチング、乾燥を再度繰り返して第2層の被膜を形成させた。
続いて、第2層の被膜が形成された手袋を、第2層と同じラテックス配合液の浴槽に約5秒間浸漬し、浴槽から引き上げた後、表面の水滴がなくなるまで乾燥させ、第3層の被膜を形成させた。
その後、70℃で40分間乾燥させ、手袋を手型から外して25℃の水に浸漬して1時間リーチングを行った。
リーチング後、脱水し、セット用手型に被せ替えて加熱硬化を行った。加熱硬化は当初70℃で60分間加熱した後、130℃で20分間加熱することで行った。加熱硬化後、セット用手型から離型することにより、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差は15.1μmであった。
実施例5
表1のクラック防止剤であるTiO2 をSiO2 に変更した他は実施例1と同様にして、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外箇所の境界部分に生じる段差は31.9μmであった。
実施例6
表1のクラック防止剤であるTiO2 を使用しない他は実施例1と同様にして、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外箇所の境界部分に生じる段差は32.1μmであった。
実施例7
凝固剤の酢酸5重量部をクエン酸5重量部に変更した他は実施例1と同様にして、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外箇所の境界部分に生じる段差は33.5μmであった。
実施例8
凝固剤の酢酸5重量部を硝酸カルシウム5重量部に変更した他は実施例1と同様にして、本発明の手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外箇所の境界部分に生じる段差は31.5μmであった。
比較例1
伸縮性糸として、70デニール(77dtex)のスパンデックスの周りに70デニール(77dtex)のウーリーナイロン双糸を1本巻回したカバーリング糸からなるものを用いた他は実施例2と同様にして、手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差は222.4μmであった。
比較例2
伸縮性糸として、280デニール(308dtex)のスパンデックスの周りに70デニール(82.5dtex)ウーリーナイロン双糸を2本巻回したカバーリング糸からなるものを用いた他は実施例2と同様にして、手袋を得た。
得られた手袋の伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差は643μmであった。
上記実施例1〜8、比較例1〜2で得られた手袋について、上記境界部分におけるクラック又はピンホールの発生の有無を目視で観察し、さらにエアリーク試験(EN374−2に準拠)を実施した。
さらに、被膜についての耐薬品性を評価するため、European Standard EN374−3「gloves for chemical protection」の規定に基づいて、硫酸の透過試験を行った。試験は、被膜の外面側を硫酸(濃度:96%)に接した状態とし、反対面側に0.1MのKClをキャリアとして流し、キャリアのpHを測定することにより行った。
具体的には、得られたpHから水素イオン濃度を算出し、さらにこの水素イオン濃度から硫酸濃度を算出し、得られた硫酸濃度から1分あたりの硫酸透過量を算出し、得られた硫酸透過量を基に、1分あたりの硫酸透過量が1μg/cm2 を超えるまでの時間(分)を算出し、測定値とした。結果を表2に示す。
表2から明らかなように、境界部分における段差が210μm以下であった実施例1〜8の手袋ではクラックやピンホールは認められず、210μmを超えていた比較例1、2の手袋ではクラックが認められた。尚、実施例1、2の手袋と実施例3の手袋と比較すれば、実施例1、2の手袋が実施例3の手袋よりもゴムラテックスの均一付着性に優れていた。
また、実施例1、5の手袋と実施例6の手袋の比較から、クラック防止剤を使用する実施例1、5の手袋の方がクラック防止剤を使用しない実施例6の手袋よりも耐薬品性に優れている。
さらに、実施例1、7の手袋と実施例8の手袋の比較から、クラック防止剤を使用する場合は、凝固剤として有機酸を用いた実施例1、7の手袋の方が、凝固剤として硝酸カルシウムを用いた実施例8の手袋より耐薬品性に優れている。
Figure 0006460363
叙上のとおり、本発明によれば、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差を210μm以下としたことにより、境界部分にクラックやピンホールが生じず、耐薬品透過性に優れ、安全性の高い、サポートタイプの耐薬品性の手袋を提供することができる。

Claims (8)

  1. 繊維製手袋の表面にゴムまたは樹脂を被覆した手袋であって、繊維製手袋の少なくとも手首部の裏側に伸縮性糸が編み込まれ、該伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分にゴムまたは樹脂が被覆されており、伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が210μm以下であることを特徴とする手袋。
  2. 伸縮性糸が編み込まれた箇所とそれ以外の箇所の境界部分に生じる段差が50μm以下であることを特徴とする請求項1記載の手袋。
  3. European Standard EN374−3の方法に準じた硫酸の透過試験において、硫酸透過時間が20分以上であることを特徴とする請求項1記載の手袋。
  4. European Standard EN374−3の方法に準じた硫酸の透過試験において、硫酸透過時間が30分以上であることを特徴とする請求項1記載の手袋。
  5. ゴムまたは樹脂の固形分100重量部に対し、クラック防止剤を1.0重量部以上含むゴムまたは樹脂のラテックス配合液を用い、凝固剤を用いる凝固法により繊維製手袋の表面に合成ゴムまたは樹脂の被覆層が形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の手袋。
  6. クラック防止剤が二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項5記載の手袋。
  7. 凝固剤が有機酸系凝固剤である請求項5又は6記載の手袋。
  8. 有機酸系凝固剤が、酢酸、蟻酸、プロピオン酸、クエン酸、シュウ酸から選ばれる少なくとも1種の凝固剤と、水、メタノール、エタノールから選ばれる少なくとも1種の溶媒とからなる請求項7記載の手袋。
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