Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

JP6455461B2 - 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents

曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6455461B2
JP6455461B2 JP2016035601A JP2016035601A JP6455461B2 JP 6455461 B2 JP6455461 B2 JP 6455461B2 JP 2016035601 A JP2016035601 A JP 2016035601A JP 2016035601 A JP2016035601 A JP 2016035601A JP 6455461 B2 JP6455461 B2 JP 6455461B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
strength steel
bendability
rolling
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016035601A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017150051A (ja
Inventor
太郎 木津
太郎 木津
章雅 木戸
章雅 木戸
哲志 田谷
哲志 田谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2016035601A priority Critical patent/JP6455461B2/ja
Publication of JP2017150051A publication Critical patent/JP2017150051A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6455461B2 publication Critical patent/JP6455461B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)

Description

本発明は、自動車のロアアームやフレームなどの足回り部材、ピラーやメンバーなどの骨格部材およびそれらの補強部材、ドアインパクトビーム、シート部材、自販機、デスク、家電・OA機器、建材などに使用される構造用部材として最適な曲げ性に優れた高強度鋼板とその製造方法に関する。
近年、地球環境に対する関心の高まりを受けて、CO2排出量低減の要望が増加している。さらに、自動車分野などでは車体を軽くすることで燃費を向上させるとともに、排ガス量を減らしたいとのニーズも益々大きくなっている。また、衝突安全性に対するニーズも高い。自動車の軽量化には、使用部品の薄肉化が最も有効である。すなわち、自動車の強度を維持しつつその軽量化を図るためには、自動車部品用素材となる鋼板の高強度化により鋼板を薄肉化することが有効である。
一般に、鋼板の強度の上昇によりプレス成型性は低下することが多く、強度が高くなるほど成型様式として容易な曲げ成型を主体とした加工が好まれる傾向にある。通常、成型前のブランク材は、打ち抜き加工により分断されるため、割れの発生を抑制するために打ち抜き時のクリアランスを管理することは非常に重要である。しかしながら、実生産でのプレスにおいては金型摩耗や材料のずれなどの影響により、適正なクリアランスで打ち抜けない場合も多い。そして、大きなクリアランスで打ち抜きにより分断されたブランク材の曲げ成型を行う場合は、打ち抜き端部から割れが発生することが鋼板の高強度化により非常に顕著になり、曲げ加工を主体とした部品向けの鋼板であっても高強度化が困難となっている。
従来、曲げ性に優れた高強度鋼板として、たとえば、特許文献1には、質量%で、C:0.055%超0.15%未満、Si:1.2%未満、Mn:0.5%超2.5%未満、Al:0.5%未満、P:0.1%未満、S:0.01%未満、N:0.008%未満、および、V:0.03%超0.5%未満、Ti:0.003%超0.2%未満、Nb:0.003%超0.1%未満、Mo:0.03%超0.2%未満から選ばれる1種または2種以上を、−0.04<C−(Ti−3.43N)×0.25−Nb×0.129−V×0.235−Mo×0.125<0.05の範囲で含有し、ビッカース硬度がHv≧0.3×TS(MPa)+10の等軸フェライトを70体積%以上含有し、マルテンサイトが5体積%以下であり、残部が等軸以外のフェライト、ベイナイト、セメンタイト、パーライトの1種または2種以上からなる熱延鋼板の製造技術が開示されている。
また、曲げ性と剪断加工性に優れた高強度鋼板として、たとえば、特許文献2には、質量%で、C:0.01〜0.2%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Sol.Al:0.02〜0.5%、Ti:0.02〜0.25%、N:0.010%以下、Nb:0〜0.1%、V:0〜0.4%、Mo:0〜0.4%、W:0〜0.4%、Cr:0〜0.4%、および、Ca、Mg、REMの総含有量:0〜0.01%を含有し、面積率で89%以上のフェライトとベイナイト、5%以下のパーライト、3%以下のマルテンサイト、3%以下の残留オーステナイトであり、板厚中心位置のビッカース硬さHvCと鋼板の表層100μm位置のビッカース硬さHvSがHvS/HvC≦0.80となる熱延鋼板の製造技術が開示されている。
さらに、曲げ性と打ち抜き部の疲労特性に優れた高強度鋼板として、たとえば、特許文献3には、質量%で、C:0.05〜0.15%、Si:0〜0.2%、Al:0.5〜3.0%、Mn:1.2〜2.5%、P:0.1%以下、S:0.01%以下、N:0.007%以下、Ti:0.03〜0.10%、Nb:0.008〜0.06%、V:0〜0.12%、Si+Al:0.8×(Mn−1)%以上、Ti+Nb:0.04〜0.14%を含有し、マルテンサイトと残留オーステナイトの面積率が合計で3〜20%、フェライトが50〜95%、パーライトが3%以下で、鋼板の表層部において網目状の酸化物が存在する領域の板厚方向の板厚方向の厚さが0.5μm未満となる熱延鋼板の製造技術が開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、打ち抜き材の曲げ性が低いという問題があった。また、特許文献2に記載の技術では、剪断加工性を改善したものの、剪断後の曲げ加工に対しては顕著な効果は認めらないという問題があった。特許文献3に記載の技術では、打ち抜き部の疲労特性は改善できるが、打ち抜き後の曲げ加工とは応力負荷レベルが大きく異なるため、打ち抜き材の曲げ加工性までは向上できないという問題があった。
特開2006−161111号公報 特開2015−98629号公報 特許第5574070号公報
本発明はかかる事情に鑑み、とくにクリアランスが大きい打ち抜き部材の曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、以下のことを見出した。打ち抜き時のクリアランスが大きくなると、打ち抜き端面には剪断応力に加えて引張り応力が作用する。このことが打ち抜き面の荒れを大きくする要因となる。しかし、ベイナイトを主体とすることで、ベイナイト中に存在する多数の微細セメンタイトが剪断応力だけでなく、とくに引張り応力に対しても亀裂の起点として作用し、打ち抜き時の端面を平滑化する。そして、鋼板の表面粗さを小さくすることで、曲げ変形時の端面近傍からの亀裂発生を抑制する。さらに、鋼板の表層組織を細粒化し粒子径20nm未満の微細析出物を析出させることにより亀裂の伝播を抑制する。以上により、曲げ性を大いに向上させることができる。
すなわち、本発明は、C、Si、Mn、P、S、Al、N、および、Ti、Nb、V量を制御した鋼スラブを、熱延圧延するに際し、デスケーリング圧力と圧延温度、および、圧下率を制御するとともに、熱延後の冷却において、高圧水の衝突圧、熱延後の鋼板の冷却速度および巻取温度を制御することで、粒子径20nm未満の微細析出物、鋼板の表層近傍の粒径、および、鋼板の表面粗さを制御することを特徴とする。粒子径20nm未満の微細析出物、鋼板の表層近傍の粒径、および、鋼板の表面粗さを制御することで、高強度鋼板の打ち抜き部材の曲げ性を格段に向上させることができる。
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであり、以下を要旨とするものである。
[1]成分組成は、質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.6〜1.5%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.030%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、Ti、Nb、Vの1種または2種以上をそれぞれ0.01〜1.0%を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、
組織は、面積率で、ベイナイトが50%超えであり、
鋼板表面から板厚深さ方向に50μmの位置での平均粒径が2500×[引張強度TS(MPa) ]−0.85μm以下であり、
鋼中に析出した粒子径20nm未満の析出物中のC量が0.005質量%以上であり、
算術平均粗さRaが3.0μm以下であることを特徴とする曲げ性に優れた高強度鋼板。
[2]前記成分組成に加えて、質量%で、Mo、Ta、Wの1種または2種以上をそれぞれ0.005〜0.50%含有することを特徴とする[1]に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
[3]前記成分組成に加えて、質量%で、Cr、Ni、Cuの1種または2種以上をそれぞれ0.01〜1.0%含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
[4]前記成分組成に加えて、質量%で、Ca、REMの1種または2種をそれぞれ0.0005〜0.01%含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
[5]前記成分組成に加えて、質量%で、Sb:0.005〜0.050%を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
[6]前記成分組成に加えて、質量%で、B:0.0005〜0.0030%を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
[7]鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
[8][1]〜[6]のいずれかに記載の成分組成を有する鋼スラブに対して、鋳造後、直送圧延し、または1200℃以上に再加熱し、
次いで、粗圧延後、仕上げ圧延前に、衝突圧を3MPa以上とするデスケーリングを行い、950℃以下での累積圧下率を0.7以上、仕上圧延終了温度を800℃以上とする熱間圧延を行い、
次いで、仕上圧延終了後750℃まで最大衝突圧5kPa以上、平均冷却速度40℃/s以上とする冷却を行い、
次いで、巻取温度350℃以上530℃未満まで、平均冷却速度10〜100℃/sで冷却し、
巻取温度350℃以上530℃未満で巻取ることを特徴とする曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[9]さらに、前記巻取り後、酸洗した後、均熱温度750℃以下の焼鈍を行い、次いで、溶融めっき処理することを特徴とする[8]に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[10]さらに、溶融めっき処理後、合金化処理温度460〜600℃、保持時間1s以上で合金化処理を行うことを特徴とする[9]に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[11]さらに、前記巻取り後、酸洗した後、電気めっき処理することを特徴とする[8]に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[12]前記巻取り、前記酸洗、前記溶融めっき処理、前記合金化処理、前記電気めっき処理のいずれかの処理後、板厚減少率0.1〜3.0%の加工を施すことを特徴とする[8]〜[11]のいずれかに記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
[13][1]〜[6]のいずれかに記載の高強度鋼板に対して、めっき処理することを特徴とする曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
なお、本発明において、高強度鋼板とは、引張強さ(TS)が780MPa以上の鋼板であり、熱延鋼板、溶融めっき処理、合金化溶融めっき処理および電気めっき処理などの表面処理を熱延鋼板に施した鋼板を含むものである。さらに、熱延鋼板および表面処理を施した鋼板の上にさらに化成処理などにより皮膜を有する鋼板をも含むものである。また、本発明において、曲げ性に優れたとは、打ち抜き後、成形時の曲げ加工性が優れていることである。また、本発明において、クリアランスが大きいとは、板厚に対するポンチとダイスの隙間の比が20%以上のことである。
本発明によれば、曲げ性に優れた高強度鋼板が得られる。本発明の高強度鋼板は、引張強さ:780MPa以上を有し、かつ打ち抜き部材としての曲げ性に優れるため、自動車の構造部材等の使途に好適に用いることができ、工業上有益な効果がもたらされる。
図1は粒子径20nm未満の析出C量に対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図である。 図2はベイナイト面積率に対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図である。 図3は鋼板の表層50μmでの平均粒径を2500×TS(MPa)−0.85で割った値に対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図である。 図4は算術平均粗さに対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図である。
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下の%は、特に断らない限り質量%を意味するものとする。
まず、本発明の高強度鋼板の成分組成の限定理由について説明する。
C:0.04〜0.20%
CはTi、Nb、Vと微細炭化物を形成し、鋼板の高強度化、打ち抜き性、曲げ性の向上に寄与する。また、ベイナイトの生成の促進にも貢献する。このような効果を得るためには、C含有量を0.04%以上とする必要がある。より高強度化が必要な場合は0.06%以上が好ましく、さらに好ましくは0.08%以上である。一方、多量のCはベイナイト変態を抑制しマルテンサイト変態を促進するとともに、炭化物が粗大化し、Ti、Nb、Vとの微細炭化物の形成も抑制される。また、過剰なCは溶接性を低下させるとともに、多量のセメンタイトの生成を招き、靭性や成型性を大きく低下させる。したがって、C含有量を0.20%以下とする必要がある。好ましくは0.04%以上0.15%以下、さらに好ましくは0.04%以上0.12%以下である。
Si:0.6〜1.5%
Siは熱間圧延後の冷却過程において、Ti、Nb、Vの微細炭化物形成を促す。さらに、固溶強化元素として成形性を大きく低下させることなく鋼板の高強度化に寄与することもできる。このような効果を得るためには、Si含有量を0.6%以上とする必要がある。一方、Siを多量に含有すると、赤スケールと呼ばれる表面模様が発生し、鋼板表面の粗さが大きくなってしまう。また、熱間圧延後、冷却過程でのフェライト変態が促進されてしまい、Ti、Nb、Vの炭化物が粗大に析出するとともにベイナイト変態が抑制されてしまう。さらに、靭性が低下する。また、鋼板の表面にSiの酸化物が生成しやすくなるため、熱延鋼板では化成処理不良、めっき鋼板では不めっきなどの不良が生じやすくなる。したがって、Si含有量を1.5%以下とする必要がある。以上より、Si含有量を0.6%以上1.5%以下、好ましくは0.8%以上1.2%以下とする。
Mn:1.0〜3.0%、
Mnは熱間圧延後の冷却において、ベイナイト変態を促進するとともに鋼板の組織の細粒化に効果がある。さらに、Mnは固溶強化により鋼板の高強度化に寄与することもできる。また、有害な鋼中SをMnSとして無害化する作用も有する。このような効果を得るためには、Mn含有量を1.0%以上とする必要がある。好ましくは1.3%以上である。一方、多量のMnはスラブ割れを引き起こすとともにベイナイト変態を抑制し、マルテンサイト変態を促進してしまう。その結果、CとTi、Nb、Vとによる微細炭化物の形成を抑制してしまう。よって、Mn含有量を3.0%以下とする必要がある。好ましくは2.3%以下、さらに好ましくは1.6%以下である。
P:0.10%以下
Pは溶接性を低下させる作用を有するとともに、粒界に偏析して鋼板の延性、曲げ性および靭性を劣化させる。さらに、Pを多量に含有すると、熱間圧延後の冷却過程でのフェライト変態が促進されてしまい、Ti、Nb、Vの炭化物が粗大に析出するとともにベイナイト変態が抑制されてしまう。以上より、P含有量を0.10%以下とする必要がある。好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.03%以下、さらに好ましくは0.01%以下である。ただし、必要以上にPを低減させることは製造コストの増大を招くので、Pの下限値は0.001%が好ましい。
S:0.030%以下
Sは溶接性を低下させる作用を有するとともに、熱間圧延での延性を著しく低下させることで、熱間割れを誘発し、鋼板の表面性状を著しく劣化させる。また、Sは鋼板の強度向上にほとんど寄与しない。さらに、不純物元素として粗大な硫化物を形成することにより、鋼板の延性、曲げ性および伸びフランジ性を低下させる。これらの問題はS含有量が0.030%を超えると顕著となるため、極力低減することが望ましい。したがって、S含有量を0.030%以下とする必要がある。好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.001%以下である。ただし、必要以上にSを低減させることは、製造コストの増大を招くので、Sの下限値は0.0001%が好ましい。
Al:0.10%以下
Alを多く含有すると、鋼板の靭性および溶接性が大きく低下してしまう。さらに、鋼板の表面にAlの酸化物が生成しやすくなるため、熱延鋼板では化成処理不良が、めっき板では不めっきなどの不良が生じやすくなる。したがって、Al含有量を0.10%以下とする必要がある。好ましくは0.06%以下である。下限は特に規定しない。Alキルド鋼として0.01%以上含まれていても問題ない。
N:0.010%以下
NはTi、Nb、Vと高温で粗大な窒化物を形成する。しかし、粗大な窒化物は鋼板の強度向上にあまり寄与しないことから、Ti、Nb、V添加による鋼板の高強度化の効果を小さくしてしまうだけでなく、鋼板の靭性の低下も招いてしまう。さらにNを多量に含有させると、熱間圧延中にスラブ割れが発生し、表面疵が生じる恐れがある。したがって、N含有量を0.010%以下とする必要がある。好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.003%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。ただし、必要以上にNを低減させることは製造コストの増大に直結するので、Nの下限値は0.0001%が好ましい。
Ti、Nb、V:1種または2種以上をそれぞれ0.01〜1.0%
Ti、Nb、VはCと微細な炭化物を形成し、鋼板の高強度化に寄与するとともに、打ち抜き部材の曲げ性の改善にも寄与する。このような作用を得るためには、Ti、Nb、Vの1種または2種以上をそれぞれ0.01%以上含有させる必要がある。一方、Ti、Nb、V を、それぞれ1.0%を超えて多量に含有させても、鋼板の高強度化の効果は飽和する上に、微細析出物が多量に析出し靭性が低下することから、Ti、V、Nbの含有量をそれぞれ1.0%以下とする必要がある。
残部は鉄および不可避的不純物である。不可避的不純物としては、Sn、Mg、Co、As、Pb、Zn、Oなどが挙げられ、合計で0.5%以下であれば許容できる。
以上の必須添加元素で、本発明の鋼板の目的とする特性が得られるが、上記の必須添加元素に加えて、必要に応じて下記の元素を添加することができる。
Mo、Ta、Wの1種または2種以上をそれぞれ0.005〜0.50%
Mo、Ta、Wは微細析出物を形成することで鋼板の高強度化、曲げ性改善に寄与する。このような効果を得るため、Mo、Ta、W を含有する場合には、Mo、Ta、Wのうちの1種または2種以上の含有量をそれぞれ0.005%以上とする。一方、多量にMo、Ta、Wを含有させても効果が飽和するだけでなく、微細析出物が多量に析出し鋼板の靭性、打ち抜き性が低下することから、Mo、Ta、Wのうちの1種または2種以上の含有量をそれぞれ0.50%以下とすることが好ましい。
Cr、Ni、Cuの1種または2種以上をそれぞれ0.01〜1.0%
Cr、Ni、Cuは鋼板の組織を細粒化するとともに固溶強化元素として作用することで鋼板の高強度化と曲げ性の向上に寄与する。このような効果を得るため、Cr、Ni、Cuを含有する場合には、Cr、Ni、Cuのうちの1種または2種以上の含有量をそれぞれ0.01%以上とする。一方、多量にCr、Ni、Cuを多量に含有させても効果が飽和するだけでなく製造コストの上昇を招くことから、Cr、Ni、Cuのうちの1種または2種以上の含有量をそれぞれ1.0%以下とすることが好ましい。
Ca、REMの1種または2種をそれぞれ0.0005〜0.01%
Ca、REMは硫化物の形態を制御することで鋼板の延性、靭性、曲げ性および伸びフランジ性を向上させることができる。このような効果を得るため、Ca、REMを含有させる場合には、Ca、REMの1種または2種の含有量をそれぞれ0.0005%以上とする。一方、多量に含有させても効果が飽和するだけでなくコストが上昇することからCa、REMを含有させる場合には、Ca、REMの1種または2種の含有量をそれぞれ0.01%以下とすることが好ましい。
Sb:0.005〜0.050%
Sbは熱間圧延時において表面に偏析することから、スラブに窒素が進入するのを防止して、粗大な窒化物の形成を抑制することができる。このような効果を得るため、Sbを含有する場合には0.005%以上の含有量とする。一方、多量にSbを含有すると製造コストが上昇することから、Sbを含有する場合は0.050%以下の含有量とする。
B:0.0005〜0.0030%
Bは組織を細粒化することで、鋼板の高強度化と曲げ性の向上に寄与することができる。このような効果を得るため、Bを含有させる場合には0.0005%以上の含有量とする。好ましくは0.0010%以上である。一方、多量のBは熱間圧延時の圧延荷重を上昇させてしまうことから、Bを含有する場合には0.0030%以下の含有量とする。好ましくは0.0020%以下である。
次に、本発明の高強度鋼板の重要な要件である組織等について説明する。
ベイナイト: 面積率で50%超え
ベイナイト組織は曲げ性に優れることから、本発明ではベイナイトを面積率で50%超えとする。好ましくはベイナイトの面積率は60%以上、より好ましくは70%以上である。ベイナイト以外の組織は、フェライト、パーライト、マルテンサイト、残留オーステナイトなどであってよい。なお、ベイナイトの面積率は後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。また、製造条件、特に冷却時の冷却速度を制御することにより、ベイナイト相の面積率を50%超えとすることができる。
鋼板表面から板厚深さ方向に50μmの位置での平均粒径:2500×[引張強度TS(MPa) ]−0.85μm以下
鋼板の表面付近の全組織の粒径を小さくすることで、曲げ成型時の割れの進行を抑制することができる。さらに、鋼板の強度が高いほど割れは進行しやすいことから、より粒径を小さくする必要がある。このような鋼板表面付近の粒径は、鋼板最表面で評価するよりも、スケールを除いた鋼板の表面から板厚深さ方向に50μm内側に入った位置のほうがより的確に評価できる。よって、本発明では、鋼板表面から板厚深さ方向に50μmの位置での平均粒径を規定することとする。なお、本発明において、鋼板表面から板厚深さ方向に50μmの位置とは、スケールを除いた鋼板表面から板厚方向に50μm内側に入った位置であり、「表層50μm位置」と称することもある。
鋼板の表層50μm位置での平均粒径を2500×[引張強度TS(MPa) ]−0.85μm以下とすることで、曲げ成型時の割れの伸展を抑制することができ、優れた曲げ性を得ることができる。好ましくは鋼板の表層50μm位置での平均粒径は2000×[TS(MPa) ]−0.85μm以下、より好ましくは1500×[TS(MPa) ]−0.85μm以下、さらに好ましくは1000×[TS(MPa) ]−0.85μm以下である。下限は特に規定しないが、0.5μm程度で十分である。なお、鋼板の表層50μm位置での平均粒径は後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。また、鋼板の表層50μm位置での平均粒径は、製造条件、特に熱間圧延時の累積圧下率や仕上圧延終了温度等により、制御することができる。
鋼中に析出した粒子径20nm未満の析出物中のC量0.005%以上
鋼中に析出した析出物のうち、粒子径20nm未満の析出物は鋼板の強度および打ち抜き部材の曲げ性の向上に寄与できる。このような微細な析出物は、炭化物が主体である。よって、このような効果を得るためには、粒子径20nm未満の析出物中のC量(以下、略して析出C量と称することもある)が0.005%以上である必要がある。好ましくは0.010%以上である。一方、粒子径20nm未満の析出物が必要以上に鋼中に多量に存在しても鋼板の強度上昇の効果は飽和することから、析出C量は0.10%以下が好ましく、より好ましくは0.08%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。なお、析出C量は後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。また、製造条件を制御することにより、析出C量を0.005%以上とすることができる。
算術平均粗さRaが3.0μm以下
高強度鋼板表面の算術平均粗さを小さくすることで、打ち抜き部材を曲げ成型したときの割れの起点発生を抑制することができる。よって、算術平均粗さ(Ra)を3.0μm以下とする必要がある。好ましくは2.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。下限は特に規定しないが、0.5μm程度が好ましい。なお、算術平均粗さRaは後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。また、高圧水の衝突圧を3MPa以上とするデスケーリングを行うことにより、算術平均粗さRaを3.0μm以下とすることができる。
次に、本発明の高強度鋼板の製造方法について説明する。
本発明の高強度鋼板は、上記成分組成を有する鋼スラブを鋳造後、直送圧延または1200℃以上に再加熱し、次いで、粗圧延後、仕上げ圧延前に、衝突圧を3MPa以上とするデスケーリングを行い、950℃以下での累積圧下率を0.7以上、仕上圧延終了温度を800℃以上とする熱間圧延を行う。次いで、仕上げ圧延終了後750℃まで最大衝突圧5kPa以上、平均冷却速度40℃/s以上とする冷却を行い、次いで、巻取温度350℃以上530℃未満まで、平均冷却速度10〜100℃/sで冷却し、巻取温度350℃以上530℃未満で巻取ることで得られる。巻取り後、酸洗を行うことができる。さらに、酸洗後、均熱温度750℃以下の焼鈍を行い、次いで、溶融めっき処理、もしくは酸洗後電気めっき処理することができる。溶融めっき処理後、合金化処理温度460〜600℃、保持時間1s以上で合金化処理を行うことができる。また、以上により得られた高強度薄鋼板に対して、板厚減少率0.1〜3.0%の加工を施すことができる。
以下、詳細に説明する。
本発明において、鋼の溶製方法は特に限定されず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、真空脱ガス炉にて2次精錬を行ってもよい。その後、生産性や品質の観点から連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とする。造塊−分塊圧延法、薄スラブ連鋳法等、公知の鋳造方法でスラブとしても良い。
鋳造後スラブ:鋳造後のスラブを直送圧延、または、温片や冷片となったスラブを1200℃以上に再加熱
Ti、Nb、Vを微細に析出させるためには、熱間圧延開始前にこれらの元素を鋼中に固溶させる必要がある。そのため、鋳造後のスラブは高温のまま熱間圧延機の入り側に搬送して、熱間圧延を行う(直送圧延)ことが好ましい。しかし、一旦、鋳造後のスラブが温片や冷片となり、Ti、Nb、Vが析出物として析出してしまった場合は、Ti、Nb、V を再固溶させるためにスラブを1200℃以上に再加熱したのち粗圧延を開始する必要がある。スラブ加熱温度が低いとTi、V、Nbの再固溶が阻害され、粗大な炭化物のまま残るため、微細な炭化物の生成が抑制されてしまう。1200℃以上での保持時間は特に規定しないが、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。操業負荷の観点から上限は180分以下が好ましい。また、再加熱温度は好ましくは1220℃以上、より好ましくは1250℃以上である。操業負荷の観点から上限は1300℃以下が好ましい。
熱間圧延:粗圧延後、仕上げ圧延前に、衝突圧を3MPa以上とするデスケーリングを行い、仕上げ圧延での950℃以下の累積圧下率を0.7以上、仕上圧延終了温度を800℃以上とする
本発明では、粗圧延後、仕上げ圧延前に、仕上げ圧延機の入り側で高圧水を使用したデスケーリングを行う。この時、高圧水の衝突圧を3MPa以上とする。スケールを除去するに際し、衝突圧が小さいとスケールが除去しきれず表面に残り、その状態で仕上げ圧延されると残ったスケールが鋼板表面に押し込まれて鋼板の表面粗さが大きくなってしまう。そのため、仕上げ圧延機の入り側での高圧水の衝突圧を3MPa以上とする必要がある。好ましくは5MPa以上、より好ましくは8MPa以上、さらに好ましくは10MPa以上である。上限は特に規定しないが15MPaが好ましい。時間は特に限定しないが、仕上げ圧延中の鋼板の温度が低くなりすぎないように、0.1〜5sが好ましい。なお、上記において、衝突圧とは、高圧水が鋼材表面に衝突する単位面積あたりの力である。
仕上げ圧延での950℃以下の累積圧下率:0.7以上
仕上げ圧延において、低い温度での圧下率を大きくすると、ベイナイト粒径を小さくすることができる。そのため、950℃以下での圧下率を累積で0.7以上とする。好ましくは1.0以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.6以上である。上限は特に規定しないが、2.0が好ましい。なお、累積圧下率は、仕上げ圧延において、950℃以下となる各圧延機での圧下率をそれぞれ加算して合計したものとする。圧延機での圧下率とは、圧延機の入り側と出側の板厚の比をいう。圧延機での圧下率の合計とは、各圧延機の板厚の比をそれぞれ加算して得られる値をいう。
仕上圧延終了温度:800℃以上
仕上圧延の終了温度が低くなると、熱間圧延後、冷却過程でのフェライト変態が高温域で起こり、Ti、Nb、Vの炭化物が粗大に析出することにより、結晶粒径が大きくなる。また、ベイナイト変態が抑制されてしまう。さらに、仕上圧延の終了温度がフェライト域になると、歪誘起析出によりTi、Nb、Vの炭化物が粗大に析出するとともに、ベイナイト面積率も小さくなってしまう。そのため、仕上圧延終了温度を800℃以上とする。好ましくは820℃以上、より好ましくは850℃以上である。仕上圧延終了温度の上限は特に規定しないが、920℃が好ましい。
仕上圧延終了後750℃まで最大衝突圧5kPa以上、平均冷却速度40℃/s以上とする冷却
仕上圧延終了温度から750℃までの最大衝突圧:5kPa以上
仕上圧延終了温度から750℃までの間において、冷却水により鋼板を冷却するに際し、冷却水の最大衝突圧を大きくすることで、鋼板表層部の粒径を小さくすることができる。そのため、仕上圧延機出側から750℃までの、冷却水の最大衝突圧を5kPa以上とする。好ましくは10kPa以上、より好ましくは15kPa以上である。最大衝突圧の上限は特に規定しないが200kPaが好ましい。なお、上記において、最大衝突圧とは、高圧水が鋼板表面に衝突する単位面積あたりの力の最大値である。
仕上圧延終了温度から750℃までの平均冷却速度:40℃/s以上
仕上圧延終了温度から750℃までの冷却速度が小さいと、フェライト変態が高温で起こり、粒径が大きくなり、Ti、Nb、Vの炭化物が粗大に析出してしまう。したがって、仕上圧延終了温度から750℃までの平均冷却速度は40℃/s以上とする。好ましくは60℃/s以上、さらに好ましくは80℃/s以上である。上限は特に規定しないが、温度制御の観点から200℃/sが好ましい。
750℃から巻取温度350℃以上530℃未満まで平均冷却速度10〜100℃/sで冷却
750℃から巻取温度までの平均冷却速度:10〜100℃/s
750℃から巻取温度までの冷却速度が小さいと、フェライト変態が促進することでTi、Nb、Vの炭化物が粗大化してしまう。また、ベイナイト変態の抑制と結晶粒の粗大化が生じてしまう。そのため冷却時の平均冷却速度を10℃/s以上とする。好ましくは20℃/s以上である。一方、750℃から巻取温度までの冷却速度が大きいと、Ti、Nb、Vの微細炭化物の生成が不十分となってしまう。そのため750℃から巻取までの平均冷却速度は100℃/s以下とする。好ましくは70℃/s以下、より好ましくは40℃/s以下である。
巻取温度:350℃以上530℃未満
巻取温度が高いとフェライト変態が促進することでTi、Nb、Vの炭化物が粗大化してしまう。また、ベイナイト変態の抑制と結晶粒の粗大化が生じてしまう。そのため、巻取温度を530℃未満とする必要があり、好ましくは480℃未満である。一方、巻取温度が低いと、ベイナイト変態が抑制され、マルテンサイト変態が促進されてしまう。そのため、巻取温度を350℃以上とする。
以上により、本発明の高強度鋼板が製造される。なお、上記において、仕上圧延終了温度、巻取温度は、鋼板表面の温度とする。仕上圧延終了後750℃までの平均冷却速度、750℃から巻取温度までの平均冷却速度は、鋼板表面の温度をもとに規定される。
巻取り後、酸洗(好適条件)
以上により得られた高強度鋼板に対して、酸洗を行うことができる。酸洗の方法は特に限定しない。塩酸酸洗や硫酸酸洗が挙げられる。酸洗を行うことで、鋼板表面のスケールが除去され、化成処理や塗装密着性がよくなる。また、後に続く、溶融めっき処理や、電気めっき処理を行った場合のめっき密着性が良好となる。
また、本発明の高強度鋼板は、めっき処理やめっき浴の組成によっても材質に影響をおよぼさないため、めっき処理として、溶融亜鉛めっき処理、合金化溶融亜鉛めっき処理、電気めっき処理のいずれも施すことができる。
酸洗後、均熱温度750℃以下の焼鈍を行い、次いで、溶融めっき処理(好適条件)
酸洗後に、均熱温度750℃以下の焼鈍を行う。均熱温度を750℃以下とすることで、Ti、Nb、Vの炭化物の粗大化と結晶粒の粗大化を抑制することができる。次いで、めっき浴に浸漬し、溶融めっき処理を行う。例えば、溶融亜鉛めっき処理の場合、めっき浴は420〜500℃が好ましい。めっき浴が420℃未満では亜鉛が溶融しない。一方、500℃超えではめっきの合金化が過剰に進んでしまう。
溶融めっき処理後、合金化処理温度460〜600℃、保持時間1s以上で合金化処理(好適条件)
溶融めっき処理後、460〜600℃まで再加熱をおこない、再加熱温度で1s以上保持することで合金化溶融めっき鋼板とすることができる。再加熱温度が460℃未満の場合は、合金化が不十分である。一方、600℃超えの場合は合金化が過剰に進んでしまう。また、保持時間が1s未満の場合は合金化が不十分である。なお、再加熱温度とは鋼板表面の温度とする。
酸洗後、電気めっき処理(好適条件)
酸洗後、電気めっき処理を行うことで、亜鉛めっき、亜鉛とAlの複合めっき、亜鉛とNiの複合めっき、Alめっき、AlとSiの複合めっきを鋼板表面に形成することができる。
板厚減少率0.1〜3.0%の加工
以上により得られた高強度鋼板に、軽加工を加えることで可動転位を増やし、打ち抜き性を高くすることができる。この効果を得るため、0.1%以上の板厚減少率で軽加工を行うことが好ましい。より好ましくは、板厚減少率は0.3%以上である。一方、板厚減少率が大きくなると、転位の相互作用で転位が移動しにくくなり、打ち抜き性が低下することから、軽加工を行う場合には板厚減少率を3.0%以下とすることが好ましく、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。ここで、軽加工としては、圧延ロールによる圧下を鋼板に加えることでもよいし、鋼板に張力を与える引張りによる加工でもよい。さらに、圧延と引張りの複合加工でもよい。
表1に示す成分組成からなる溶鋼を通常公知の手法により溶製、連続鋳造して鋼スラブを製造した。これらのスラブを、表2に示す製造条件にて、熱間圧延、冷却、巻取りを行い、熱延鋼板とした。また、一部については、酸洗(塩酸濃度:質量%で10%、温度80℃)し、表2に示す条件でめっき処理を行った。
以上により得られた高強度鋼板からそれぞれ試験片を採取し、以下の試験、評価を行った。なお、めっき鋼板の場合は、めっき後の鋼板で試験、評価を行った。
ベイナイト面積率
圧延方向−板厚方向断面を埋め込み研磨し、ナイタール腐食後、走査型電子顕微鏡(SEM)にて板厚1/4部を中心とし倍率1000倍として100×100μm領域の写真を3枚撮影し、そのSEM写真を画像処理することにより求めた。
鋼板の表層50μmの位置での平均粒径
圧延方向−板厚方向断面を埋め込み研磨し、ナイタール腐食後、測定ステップ0.1μmでEBSD測定をおこない、方位差15°以上を粒界として求めた。スケールを除く鋼板の表層50μm位置での測定長さは500μmとし、鋼板の表層50μm位置にある結晶粒全てについて、その各々の面積を円換算して直径を求め、それらの直径の平均値を平均粒径とした。
析出C量
まず、特許第4737278号公報に示すように、鋼板から採取した試験片を陽極として10%AA系電解液(10体積%アセチルアセトン−1質量%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール電解液)中で定電流電解を行い、この試験片を一定量溶解した後、孔径20nmのフィルターを用いて電解液を濾過し、ついで、得られた濾液中のTi、NbおよびV量、さらにはMo、TaおよびW量を、ICP発光分光分析法により分析して求めた。求められたTi、NbおよびV、さらにはMo、TaおよびWが全て炭化物であったとして、測定結果から換算して析出C量を求めた。
算術平均粗さRa
JIS B0601に準拠してRaを求めた。なお、圧延直角方向に5回測定して、その平均値とした。また、めっき板については、めっき前の鋼板の表面粗さを求めた。めっき板についてはめっき後の鋼板のRaを、熱延鋼板については酸洗してスケールを除去した後の鋼板のRaを求めた。
機械特性
圧延直角方向を長手方向としてJIS5号引張り試験片を切り出し、JIS Z2241に準拠して引張試験を行い、降伏強度(YP)、引張強度(TS)、全伸び(El)を求めた。試験は2回行い、それぞれの平均値をその鋼板の機械特性値とした。
曲げ試験
圧延直角方向を長手方向として35×100mmの板をクリアランス25%で打ち抜いた後、バリを曲げの内側として、90°のV曲げをおこなった。押し込み時の荷重は5〜10トン、押し込み速度は50mm/minとした。そして、打ち抜き面近傍のV曲げ頂点部に割れが発生しないV曲げポンチ先端の最小半径(mm)を求めた。割れの判定は板面頂点部を目視で確認することで行った。3回試験を行い、3回とも割れが認められなかった場合に割れ無しとして、割れが発生しない(割れ無し)最小半径を臨界曲げ半径とした。そして、(臨界曲げ半径/板厚)の値が3.0以下であれば、曲げ加工性に優れると判断した。
以上により得られた結果を表3に示す。
Figure 0006455461
Figure 0006455461
Figure 0006455461
表3より、本発明例では、曲げ性に優れた高強度薄鋼板が得られているのがわかる。
図1〜図3は、表3に示す結果をもとに整理したものであり、図1は析出C量に対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図、図2はベイナイト面積率に対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図、図3は鋼板の表層50μm位置での平均粒径を2500×TS(MPa)−0.85で割った値に対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図、図4は算術平均粗さRaに対する臨界曲げ半径と板厚の比の関係を示す図である。
図1より、析出C量を本発明の範囲内とすることで、(臨界曲げ 半径/板厚)の値を3.0以下にできることがわかる。
図2より、ベイナイト面積率を本発明の範囲内とすることで、(臨界曲げ半径/板厚)の値を3.0以下にできることがわかる。
図3より鋼板の表層50μm位置での平均粒径を本発明の範囲内とすることで、(臨界曲げ半径/板厚)の値を3.0以下にできることがわかる。
図4より、算術平均粗さRaを本発明の範囲内とすることで、(臨界曲げ半径/板厚)の値を3.0以下にできることがわかる。

Claims (13)

  1. 成分組成は、質量%で、C:0.04〜0.20%、Si:0.6〜1.5%、Mn:1.0〜3.0%、P:0.10%以下、S:0.030%以下、Al:0.10%以下、N:0.010%以下を含有し、Ti、Nb、Vの1種または2種以上をそれぞれ0.01〜1.0%を含有し、残部は鉄および不可避的不純物からなり、
    組織は、面積率で、ベイナイトが50%超えであり、
    鋼板表面から板厚深さ方向に50μmの位置での平均粒径が2500×[引張強度TS(MPa) ]−0.85μm以下であり、
    鋼中に析出した粒子径20nm未満の析出物中のC量が、鋼板全体を100質量%としたとき0.005質量%以上であり、
    算術平均粗さRaが3.0μm以下であることを特徴とする曲げ性に優れた高強度鋼板。
  2. 前記成分組成に加えて、質量%で、Mo、Ta、Wの1種または2種以上をそれぞれ0.005〜0.50%含有することを特徴とする請求項1に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
  3. 前記成分組成に加えて、質量%で、Cr、Ni、Cuの1種または2種以上をそれぞれ0.01〜1.0%含有することを特徴とする請求項1または2に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
  4. 前記成分組成に加えて、質量%で、Ca、REMの1種または2種をそれぞれ0.0005〜0.01%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
  5. 前記成分組成に加えて、質量%で、Sb:0.005〜0.050%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
  6. 前記成分組成に加えて、質量%で、B:0.0005〜0.0030%を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
  7. 鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板。
  8. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高強度鋼板の製造方法であって、
    前記成分組成を有する鋼スラブに対して、鋳造後、直送圧延し、または1200℃以上に再加熱し、
    次いで、粗圧延後、仕上げ圧延前に、衝突圧を3MPa以上とするデスケーリングを行い、950℃以下での累積圧下率を0.7以上、仕上圧延終了温度を800℃以上とする熱間圧延を行い、
    次いで、仕上圧延終了後750℃まで最大衝突圧5kPa以上、平均冷却速度40℃/s以上とする冷却を行い、
    次いで、巻取温度350℃以上530℃未満まで、平均冷却速度10〜100℃/sで冷却し、
    巻取温度350℃以上530℃未満で巻取ることを特徴とする曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  9. さらに、前記巻取り後、酸洗した後、均熱温度750℃以下の焼鈍を行い、次いで、溶融めっき処理することを特徴とする請求項8に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  10. さらに、溶融めっき処理後、合金化処理温度460〜600℃、保持時間1s以上で合金化処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  11. さらに、前記巻取り後、酸洗した後、電気めっき処理することを特徴とする請求項8に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  12. 前記巻取り、前記酸洗、前記溶融めっき処理、前記合金化処理、前記電気めっき処理のいずれかの処理後、板厚減少率0.1〜3.0%の加工を施すことを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
  13. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の高強度鋼板に対して、めっき処理することを特徴とする曲げ性に優れた高強度鋼板の製造方法。
JP2016035601A 2016-02-26 2016-02-26 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 Active JP6455461B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016035601A JP6455461B2 (ja) 2016-02-26 2016-02-26 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016035601A JP6455461B2 (ja) 2016-02-26 2016-02-26 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017150051A JP2017150051A (ja) 2017-08-31
JP6455461B2 true JP6455461B2 (ja) 2019-01-23

Family

ID=59741439

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016035601A Active JP6455461B2 (ja) 2016-02-26 2016-02-26 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6455461B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102495090B1 (ko) * 2018-07-31 2023-02-06 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 고강도 열연 강판 및 그의 제조 방법
WO2020039697A1 (ja) 2018-08-22 2020-02-27 Jfeスチール株式会社 高強度鋼板及びその製造方法
MX2021012787A (es) * 2019-07-10 2021-12-10 Nippon Steel Corp Lamina de acero de alta resistencia.
JP7495641B2 (ja) * 2020-08-27 2024-06-05 日本製鉄株式会社 熱延鋼板
MX2023001946A (es) * 2020-08-27 2023-03-14 Nippon Steel Corp Lamina de acero laminada en caliente.
EP4206343A4 (en) * 2020-08-27 2023-12-13 Nippon Steel Corporation HOT ROLLED STEEL SHEET
KR20230040349A (ko) * 2020-08-27 2023-03-22 닛폰세이테츠 가부시키가이샤 열연 강판
CN114798737B (zh) * 2022-04-27 2024-04-30 日照宝华新材料有限公司 一种薄板坯连铸连轧生产极薄规格花纹板的板形控制方法

Family Cites Families (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0751732A (ja) * 1993-08-23 1995-02-28 Kobe Steel Ltd 表面性状の優れた鋼板の熱間圧延方法
JP3520632B2 (ja) * 1995-11-10 2004-04-19 Jfeスチール株式会社 疲労特性および加工性に優れる熱延高張力鋼板ならびにその製造方法
JPH11129015A (ja) * 1997-10-28 1999-05-18 Nippon Steel Corp 薄スケール鋼板の製造方法
JP4306068B2 (ja) * 2000-01-24 2009-07-29 Jfeスチール株式会社 加工性に優れた熱延下地の溶融亜鉛めっき高張力鋼板の製造方法
US6364968B1 (en) * 2000-06-02 2002-04-02 Kawasaki Steel Corporation High-strength hot-rolled steel sheet having excellent stretch flangeability, and method of producing the same
JP4380353B2 (ja) * 2004-02-17 2009-12-09 Jfeスチール株式会社 深絞り性と強度−延性バランスに優れた高強度鋼板およびその製造方法
BRPI1010678A2 (pt) * 2009-05-27 2016-03-15 Nippon Steel Corp chapade aço de alta resistência, chapa de aço banhada a quente e chapa de aço banhada a quente de liga que têm excelentes características de fadiga, alongamento e colisão, e método de fabricação para as ditas chapas de aço
JP5126326B2 (ja) * 2010-09-17 2013-01-23 Jfeスチール株式会社 耐疲労特性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5724267B2 (ja) * 2010-09-17 2015-05-27 Jfeスチール株式会社 打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP5641086B2 (ja) * 2013-04-15 2014-12-17 Jfeスチール株式会社 量産打抜き性に優れた高強度熱延鋼板およびその製造方法
JP6179584B2 (ja) * 2015-12-22 2017-08-16 Jfeスチール株式会社 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017150051A (ja) 2017-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6179584B2 (ja) 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法
JP6384641B1 (ja) 高強度鋼板およびその製造方法
JP6455461B2 (ja) 曲げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法
KR101621639B1 (ko) 강판, 도금 강판 및 그들의 제조 방법
CN112534077B (zh) 高强度热轧钢板及其制造方法
CN114645219A (zh) 高强度镀锌钢板及其制造方法
JP6589903B2 (ja) 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
CN114008231B (zh) 高强度热轧钢板及其制造方法
EP3910087B1 (en) High-strength cold-rolled steel sheet and production method for same
KR101986033B1 (ko) 고강도 강판 및 그 제조 방법
JP6610749B2 (ja) 高強度冷延薄鋼板
JP6443555B2 (ja) 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法
JP6288321B2 (ja) 高強度熱延鋼板およびその製造方法
KR102064147B1 (ko) 고강도 박강판 및 그 제조 방법
JP6131872B2 (ja) 高強度薄鋼板およびその製造方法
JP2020111770A (ja) 高強度冷延薄鋼板及びその製造方法
JP4172268B2 (ja) 伸びフランジ性、強度−延性バランス、および歪時効硬化特性に優れた複合組織型高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
JP6455462B2 (ja) 靭性と延性に優れた高強度鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170922

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20180502

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20180509

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180911

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180918

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20181107

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20181120

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20181203

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6455461

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R3D04

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250