「第1実施形態」
本発明の第1実施形態を図1および図2を参照して以下に説明する。
図1に示す第1実施形態に係るシリンダ装置10は、例えば自動車や鉄道車両のサスペンション装置に用いられるものである。シリンダ装置10は、作動流体が封入されるシリンダ11を有している。シリンダ11は、内筒12と、内筒12よりも大径の外筒13とを有する二重筒構造をなしている。内筒12は、軸方向の両端側が開放された円筒状をなしており、外筒13は、軸方向の一端側が閉塞され他端側が開口された有底円筒状をなしている。内筒12は、外筒13内に外筒13に対して軸方向の位置を重ね合わせて同軸状に設けられており、これにより、外筒13との間に環状のリザーバ室14を形成している。以下、シリンダ11の軸方向(図1の上下方向)における外筒13の閉塞側(図1の上下方向下側)の端部を閉塞側端部とし、外筒13の開口側(図1の上下方向上側)の端部を開口側端部とする。
シリンダ11の内筒12内には、ピストン17が摺動可能に嵌装されている。このピストン17は、内筒12内つまりシリンダ11内に上室18と下室19とを画成している。シリンダ11内には、具体的に、上室18および下室19内に作動流体としての作動液が封入され、リザーバ室14内に作動流体としての作動液およびガスが封入される。つまり、シリンダ装置10は複筒式の液圧緩衝器となっている。
ピストン17にはロッド22が連結されている。ロッド22は、その軸方向一端側がシリンダ11の内筒12内に挿入されてピストン17に連結されており、その軸方向他端側がシリンダ11の開口側端部から外部へと突出している。ピストン17は、ロッド22の内筒12内の端部に連結されており、ロッド22と一体的に移動してシリンダ11の内筒12内で摺動する。ロッド22のシリンダ11から突出する突出側を先端側とし、シリンダ11内に常に配置されるピストン17への連結側を基端側とする。
ピストン17には、図示は略すが、ロッド22がシリンダ11からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン17が上室18側に移動して上室18の圧力が上昇すると、上室18から下室19に作動液を流しつつその流れを制限して減衰力を発生させる伸び側減衰力発生機構が設けられている。また、ピストン17には、ロッド22がシリンダ11からの突出量を減らす縮み側に移動しピストン17が下室19側に移動して下室19の圧力が上昇すると、下室19から上室18に作動液を流しつつその流れを制限して減衰力を発生させる縮み側の減衰力発生機構が設けられている。
シリンダ11には、ロッド22が突出する側の端部である開口側端部に、筒状をなしてロッド22を案内するロッドガイド25と、環状をなして作動流体を密封するオイルシールであるロッドシール26とが設けられている。ロッド22は、ロッドガイド25の内周側とロッドシール26の内周側とを通っている。
いずれもシリンダ11の開口側端部に設けられるロッドガイド25およびロッドシール26は、ロッドシール26の方が、ロッドガイド25よりもシリンダ11の軸方向におけるロッド22の先端側に設けられている。言い換えれば、ロッドシール26は、ロッドガイド25に対しシリンダ11の内外方向(図1の上下方向で、以下、シリンダ内外方向という)の外側(図1の上下方向上側)に設けられており、逆に、ロッドガイド25は、ロッドシール26に対しシリンダ内外方向の内側(図1の上下方向下側)に設けられている。シリンダ11の閉塞側端部の内側にはベースバルブ28が設けられている。
ロッドガイド25およびロッドシール26は、それぞれの内側にロッド22が摺動可能に挿通されている。ロッド22は、シリンダ11内に配置される基端側が内筒12内に配置されるピストン17によってシリンダ11の中心軸上に配置されている。また、ロッド22は、軸方向の中間部が内筒12および外筒13に嵌合されるロッドガイド25によってシリンダ11の中心軸上に配置されている。つまり、ロッド22は、ピストン17およびロッドガイド25によってシリンダ11に対して同軸状に支持されている。
ロッドガイド25は、ロッド22を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持する。その結果、ロッドガイド25はロッド22を軸方向に摺動可能にガイドする。ロッドシール26は、その外周部がシリンダ11の外筒13の内側に密着嵌合される。ロッドシール26には、その内周部にロッド22が密着状態となるように挿入される。ロッドシール26は、ロッド22の移動時にその外周側に摺接することによりロッド22をシールする。これにより、ロッドシール26は、シリンダ11の開口側端部を閉塞して、内筒12内の作動液およびリザーバ室14内の高圧ガスおよび作動液が外部に漏出するのを規制する。
シリンダ11の外筒13は、上記したように有底円筒状をなしており、円筒状の胴部30と、この胴部30におけるロッド22の突出側とは反対の端部を閉塞させる底部31と、胴部30におけるロッド22の突出側の開口部32の位置から径方向内方に突出する加締め部33とを有している。加締め部33は、円筒状の胴部30の開口部32側つまり開口側端部が、加締め加工により内方に向け折り曲げられて形成される部分である。
シリンダ11の内筒12は、上記したように円筒状をなしており、軸方向の一端側が外筒13の底部31の内側に載置されたベースバルブ28に嵌合状態で支持されている。また、内筒12は、軸方向の他端側が外筒13の胴部30の開口部32側に嵌合されたロッドガイド25に嵌合状態で支持されている。
ロッドガイド25は、略段付き円環状をなすロッドガイド本体40と、ロッドガイド本体40の内周部に嵌合固定される円筒状のカラー41とからなっている。ロッドガイド本体40の外周側には、シリンダ内外方向の外側に大径外周部44が形成され、シリンダ内外方向の内側に、大径外周部44よりも小径の小径外周部45が形成されている。大径外周部44および小径外周部45は、いずれも円筒状をなしており、軸方向の位置をずらして同軸状に形成されている。
ロッドガイド本体40は、大径外周部44が、シリンダ11の外筒13の胴部30の内周部に嵌合している。また、ロッドガイド本体40は、小径外周部45が、シリンダ11の内筒12の内周部に嵌合している。ロッドガイド本体40の内周側には、シリンダ内外方向の外側に大径内周部51が、シリンダ内外方向の内側に大径内周部51よりも小径の小径内周部52が形成されている。
ロッドガイド本体40におけるシリンダ内外方向外側の端部には、軸方向に突出する円環状の外側環状凸部55が外周側に、軸方向に突出する円環状の内側環状凸部56が内周側に、それぞれ形成されている。外側環状凸部55は、内側環状凸部56よりも大径であり、シリンダ内外方向外側の端部位置が内側環状凸部56よりも外側となっている。
ロッドガイド本体40には、外側環状凸部55の内側環状凸部56側に、軸方向に沿って貫通する連通穴57が形成されている。連通穴57は、外筒13と内筒12との間のリザーバ室14に開口している。カラー41は、ロッドガイド本体40の小径内周部52内に嵌合固定されており、このカラー41内に、ロッド22が摺接するように挿入されている。
ロッドシール26は、その外周部が外筒13の胴部30の内周部とロッドガイド25とに接触して外筒13の胴部30をシールする。また、ロッドシール26は、その内周部がロッド22の外周部に接触して、ロッド22の外周部をシールする。これにより、ロッドシール26は、外筒13とロッド22との間を閉塞する。ロッドシール26は、外筒13の加締め部33とロッドガイド25とに挟持されている。
ロッドシール26は、弾性部材61に円環部材62(剛性部材)が埋設された一体成形品であるロッドシール本体63と、いずれもロッドシール本体63とは別体でロッドシール本体63の弾性部材61に装着される内側スプリング65および外側スプリング66とからなっている。
弾性部材61は、ニトリルゴムやフッ素ゴムなどの摺動性の高いゴム材からなっている。円環部材62は、弾性部材61よりも高剛性の金属製の円環平板状をなしている。円環部材62は、ロッドシール本体63の形状を維持するためのものであり、対象部位に固定するための強度をロッドシール本体63に生じさせるものである。内側スプリング65および外側スプリング66はいずれも金属製であり、密着巻きのコイルスプリングの両端を連結して環状にしたガータスプリングである。
ロッドシール26は、シリンダ11の外筒13に係止される円環板状の環状部71と、環状部71の内周側を被覆しつつ環状部71からシリンダ内外方向の内側つまりロッド22の基端側に突出してロッド22に密封接触する環状のオイルリップ72(内側リップ)と、環状部71の内周側を被覆しつつ環状部71からシリンダ内外方向の外側つまりロッド22の先端側に延出してロッド22に密封接触する環状のダストリップ73(外側リップ)とを備えている。また、ロッドシール26は、環状部71の外周側からシリンダ内外方向の内側に突出する環状のシールリング75と、環状部71の径方向の中間位置からシリンダ内外方向の内側に突出する筒状のチェックリップ76とを有している。オイルリップ72、ダストリップ73、シールリング75およびチェックリップ76は、弾性部材61の一部からなっており、よって、円環部材62は、これらよりも高剛性となっている。
図2に示すように、オイルリップ72およびダストリップ73は、円環部材62の円筒状をなす径方向内側の内周面62aを被覆するとともにロッドシール26の内周面を構成する。ここで、内周面62aの径方向の位置が、環状部71の径方向のオイルリップ72およびダストリップ73側の端部位置となっている。
環状部71は、円環部材62の全部を含んでおり、円環部材62と弾性部材61の一部とからなっている。環状部71の弾性部材61からなる部分は、円環部材62の円筒状をなす径方向外側の外周面62bを被覆する円筒状の外周被覆部82を有している。
また、環状部71の弾性部材61からなる部分は、外周被覆部82のシリンダ内外方向内側の端縁部から径方向内方に延出する円環平板状の内側部分被覆部83を有している。内側部分被覆部83は、外周被覆部82からオイルリップ72よりも手前まで延出しており、円環部材62のシリンダ内外方向内側の平坦な内端面62cの径方向の中間部から外周側を被覆している。
さらに、環状部71の弾性部材61からなる部分は、外周被覆部82のシリンダ内外方向外側の端縁部から径方向内方に延出する円環平板状の外側部分被覆部84を有している。外側部分被覆部84は、外周被覆部82からダストリップ73の手前まで延出しており、円環部材62のシリンダ内外方向外側の平坦な外端面62dの径方向の中間部から外周側を被覆している。円環部材62の内周面62aおよび外周面62bは同軸状に配置されており、内端面62cおよび外端面62dは、互いに平行に配置されて、内周面62aおよび外周面62bに直交している。
環状部71の外周被覆部82は、外周面62bの接触部分の全面に接着されている。また、内側部分被覆部83は、内端面62cの接触部分の全面に接着されている。さらに、外側部分被覆部84は、外端面62dの接触部分の全面に接着されている。ここで、オイルリップ72およびダストリップ73は、内周面62aの接触部分の全面に接着されている。
弾性部材61では、外周被覆部82、内側部分被覆部83および外側部分被覆部84のみが環状部71を構成することになる。環状部71を構成する以外の弾性部材61からなる部分として、上記したシールリング75とチェックリップ76とがある。シールリング75は、円環状をなしており、内側部分被覆部83の外周縁部からシリンダ内外方向の内側に向け突出している。チェックリップ76は、円筒状をなしており、内側部分被覆部83の径方向の内側位置からシリンダ内外方向の内側に向け突出している。
いずれも弾性部材61のみからなる、オイルリップ72、ダストリップ73、シールリング75、チェックリップ76、外周被覆部82、内側部分被覆部83、外側部分被覆部84は、一体に形成されている。つまり、これらは、図示は略すが、金型内の所定位置に円環部材62をセットしてこの金型のキャビティ内にゴム素材を射出することにより形成される。その際に、弾性部材61と円環部材62とは接触部分の全面が加硫接着させられる。
内側部分被覆部83および外側部分被覆部84は、外周被覆部82に繋がっている一方で、オイルリップ72およびダストリップ73からは径方向に離間している。つまり、ロッドシール26には、オイルリップ72と内側部分被覆部83との間に円環部材62の内端面62cが露出する内側露出部87が形成されている。また、ロッドシール26には、ダストリップ73と外側部分被覆部84との間に円環部材62の外端面62dが露出する外側露出部88が形成されている。内側露出部87および外側露出部88は、いずれも径方向内側の内周部と径方向外側の外周部とが同心の円環状をなしている。言い換えれば、内側露出部87および外側露出部88は、いずれも円環状をなしている。
ロッドシール26は、外筒13の加締め部33とロッドガイド25の外側環状凸部55とに環状部71が挟持されて、シリンダ11に係止される。具体的には、内側部分被覆部83と円環部材62と外側部分被覆部84とが、加締め部33と外側環状凸部55とに挟持される。
シールリング75は、環状部71の外周側のシリンダ内外方向内側から突出しており、環状部71の外周被覆部82および内側部分被覆部83に繋がっている。シールリング75は、ロッドガイド25の外側環状凸部55の外周部と、外筒13の胴部30の内周部とに密着して、ロッドガイド25と外筒13との隙間をシールする。
チェックリップ76は、円環状をなしており、環状部71の内側部分被覆部83から、シリンダ内外方向内方に延びている。チェックリップ76は、ロッドガイド25の内側環状凸部56の外側環状凸部55側の部分に所定の締め代を持って全周に渡り密封接触可能となっている。ここで、図1に示す上室18からロッドガイド25とロッド22との隙間を介して漏れ出た作動液は、図2に示すロッドガイド25の内側環状凸部56の径方向内側の室89に溜まることになり、チェックリップ76は、この室89の圧力が、連通穴57つまりリザーバ室14の圧力よりも所定量高くなった時に開いて室89に溜まった作動液を連通穴57を介してリザーバ室14に流す。つまり、チェックリップ76は、室89からリザーバ室14への方向にのみ作動液およびガスの流通を許容し逆方向の流通を規制する逆止弁として機能する。
オイルリップ72は、円環部材62の内周側を被覆しつつ円環部材62の内周側からシリンダ内外方向の内側に向け円環状をなして突出している。オイルリップ72には、その内周部に、径方向内方に突出してロッド22の外周面に摺接する円環状の第1リップ部91が形成されている。また、オイルリップ72には、その内周部に、第1リップ部91よりもダストリップ73に近い側にて径方向内方に突出してロッド22の外周面に摺接する円環状の第2リップ部92が形成されている。ロッドシール26とロッド22との間には、第1リップ部91および第2リップ部92を含むオイルリップ72で密封される円環状の第1密封空間93が形成されている。言い換えれば、第1密封空間93は、ロッドシール26の第1リップ部91および第2リップ部92を含むオイルリップ72と、ロッド22とで囲まれて形成されている。
ダストリップ73は、円環部材62の内周側を被覆しつつ円環部材62の内周側からシリンダ内外方向の外側に向け円環状をなして突出している。ダストリップ73には、その内周部に、径方向内方に突出してロッド22の外周面に摺接する円環状の第3リップ部95がオイルリップ72とは反対側に形成されている。ロッドシール26とロッド22との間には、第2リップ部92を含むオイルリップ72と第3リップ部95を含むダストリップ73とで密封される円環状の第2密封空間94(密封空間)が形成されている。言い換えれば、第2密封空間94は、ロッドシール26の第2リップ部92を含むオイルリップ72および第3リップ部95を含むダストリップ73と、ロッド22とで囲まれて形成されている。第1密封空間93と第2密封空間94とは、基本的にはロッド22と第2リップ部92とで区画されている。第2密封空間94は、第1密封空間93よりも容積が大きくなっている。
オイルリップ72の外周部には、径方向内方に凹む円環状の装着溝101が環状部71に隣接して形成されている。この装着溝101は、円環部材62の内端面62cが露出する内側露出部87に隣接して形成されている。この装着溝101に環状の内側スプリング65が装着されている。すると、内側スプリング65は、環状部71に接することになる。オイルリップ72に装着された内側スプリング65は、環状部71の内側露出部87に直接当接することになり、言い換えれば、円環部材62の内端面62cのうち内側露出部87を形成する部分に直接当接する。さらに言い換えれば、オイルリップ72に装着された内側スプリング65のシリンダ内外方向の外側の端部は、環状部71の平坦な内端面62cに接しており、この平坦な内端面62cは内側スプリング65との接触部分が円環状をなしている。オイルリップ72に装着された内側スプリング65のシリンダ内外方向の外側の端部は、環状部71の内径側の端部位置である円環部材62の内周面62aよりも径方向外側に位置している。
以上により、金属製の内側スプリング65が、金属製の円環部材62に直接メタルタッチで接触する。内側スプリング65は円環部材62に径方向の位置を重ね合わせている。内側スプリング65は、オイルリップ72をロッド22に密着する方向つまり締め付ける方向に付勢する。
ダストリップ73の外周部に、径方向内方に凹む円環状の装着溝102が環状部71に隣接して形成されている。この装着溝102は、円環部材62の外端面62dが露出する外側露出部88に隣接して形成されている。この装着溝102に環状の外側スプリング66が装着されている。すると、外側スプリング66は、環状部71に接することになる。ダストリップ73に装着された外側スプリング66は、環状部71の外側露出部88に直接当接することになり、言い換えれば、円環部材62の外端面62dのうち外側露出部88を形成する部分に直接当接する。さらに言い換えれば、ダストリップ73に装着された外側スプリング66のシリンダ内外方向の内側の端部は、環状部71の平坦な外端面62dに接しており、この平坦な外端面62dは外側スプリング66との接触部分が円環状をなしている。ダストリップ73に装着された外側スプリング66のシリンダ内外方向の内側の端部は、環状部71の内径側の端部位置である円環部材62の内周面62aよりも径方向外側に位置している。
以上により、金属製の外側スプリング66が、金属製の円環部材62に直接メタルタッチで接触する。外側スプリング66は円環部材62に径方向位置を重ね合わせている。外側スプリング66は、ダストリップ73をロッド22に密着する方向つまり締め付ける方向に付勢する。
特許文献1には、ピストンロッドの外周側に摺接してシールを行うロッドシールのシール性を向上可能なシリンダ装置が記載されている。このシリンダ装置は、ロッドシールが複雑な構造をなしており、コストが増大してしまう。
第1実施形態のシリンダ装置10は、内側スプリング65および外側スプリング66が環状部71に当接している。ここで、内側スプリング65および外側スプリング66が環状部71に当接していなければ、ロッド22とロッドシール26との間の第1密封空間93および第2密封空間94は、いずれも、ロッド22の摺接時の弾性部材61の変形により、ロッド22がシリンダ11に進入する縮み行程で減少し、ロッド22がシリンダ11から伸び出る伸び行程で増加することになる。また、室89も縮み行程ではロッドシール26の変形により体積が減少し、伸び行程で増加することになる。ロッドガイド25とロッド22との隙間から漏れ出た作動液が室89に満たされると、作動液の非圧縮性により、縮み行程では体積が減少した分だけ作動液は室89から低圧側つまり第1密封空間93側に吐出され、伸び行程では体積が増大した分だけ作動液が高圧の上室18側から室89に吸い込まれる。また、室89から漏れ出た作動液が第1密封空間93に満たされると、作動液の非圧縮性により、縮み行程では体積が減少した分だけ作動液は第1密封空間93から低圧側つまり第2密封空間94側に吐出され、伸び行程では体積が増大した分だけ作動液が第1密封空間93側から第2密封空間94側に吸い込まれる。伸び行程および縮み行程の交互の繰り返しによる上記のようなポンピング作用によって、作動液が、上室18から室89に、室89から第1密封空間93に、第1密封空間93から第2密封空間94に、それぞれ輸送され、第2密封空間94から大気側に掻き出されてしまう可能性があり、ロッドシール26のシール性が低下してしまう可能性がある。
これに対して、高剛性の円環部材62を含むことでオイルリップ72およびダストリップ73と比べて変形しにくい環状部71に内側スプリング65および外側スプリング66を軸方向に当接させることで、各リップの締め代を変えずにロッド22の往復摺動時の内側スプリング65および外側スプリング66の軸方向の相対移動(内側スプリング65および外側スプリング66の軸方向距離の変動)を抑制することができる。具体的には、内側スプリング65および外側スプリング66は、円環部材62により円環部材62側への移動が規制されることになり、装着溝101,102が円環部材62に隣接していて変形しにくいことから、円環部材62とは反対方向への移動も抑制されることになる。
その結果、オイルリップ72の第2リップ部92とダストリップ73の第3リップ部95との軸方向の相対移動を抑制することができ、容積が変化しやすい第2密封空間94の容積の変動を抑制することができる。したがって、ロッドシール26のシール性を向上可能となる。しかも、環状部71に内側スプリング65および外側スプリング66を当接させるという簡素な構造でロッドシール26のシール性を向上可能となるため、コスト増を抑制しつつロッドシール26のシール性を向上可能となる。
しかも、弾性部材61からなるオイルリップ72およびダストリップ73と比べて剛性が高く変形しにくい環状部71の金属製の円環部材62に内側スプリング65および外側スプリング66を直接当接させているため、ロッド22の往復摺動時の内側スプリング65および外側スプリング66の相対移動をさらに抑制することができる。
「第2実施形態」
次に、第2実施形態を主に図3に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態のシリンダ装置10Aでは、第1実施形態とは一部異なるロッドシール26A、具体的にはロッドシール本体63Aが用いられている。このロッドシール本体63Aは、第1実施形態とは一部形状が異なる円環部材62Aを含む環状部71Aを有している。言い換えれば、ロッドシール本体63Aは、第1実施形態とは一部形状が異なる弾性部材61Aを含む環状部71Aを有している。
円環部材62Aには、内周側のシリンダ内外方向内側に内側段差部111が形成されており、内周側のシリンダ内外方向外側に外側段差部112が形成されている。これにより、円環部材62Aは、第1実施形態よりも軸方向に短い内周面62Aaと、第1実施形態と同様の外周面62bと、第1実施形態よりも径方向の幅が狭い内端面62Acおよび外端面62Adとを有している。ここでも、内周面62Aaの径方向の位置が、環状部71Aの径方向におけるオイルリップ72およびダストリップ73側の端部位置となっている。
内側段差部111は、内周面62Aaおよび外周面62bと同軸状に配置される円筒状の段差壁面111aと、内端面62Acおよび外端面62Adと平行に配置される平坦な段差底面111bとを有している。
外側段差部112は、内周面62Aaおよび外周面62bと同軸状に配置される円筒状の段差壁面112aと、内端面62Acおよび外端面62Adと平行に配置される平坦な段差底面112bとを有している。段差壁面111a,112aは同一円筒面に配置されており、段差壁面111aの軸方向長さが段差壁面112aの軸方向長さよりも長くなっている。
環状部71Aは、弾性部材61Aからなる部分が、外周被覆部82に加えて、外周被覆部82のシリンダ内外方向内側の端縁部から径方向内方に延出してオイルリップ72に繋がる内側被覆部115と、外周被覆部82のシリンダ内外方向外側の端縁部から径方向内方に延出してダストリップ73に繋がる外側被覆部116とを有している。つまり、内側被覆部115は、円環部材62Aに対しシリンダ内外方向内側に設けられてオイルリップ72に繋がっており、外側被覆部116は、円環部材62Aに対しシリンダ内外方向外側に設けられてダストリップ73に繋がっている。内側被覆部115および外側被覆部116は、いずれも弾性部材61Aからなるため、円環部材62Aよりも低剛性となっている。
弾性部材61Aでは、外周被覆部82、内側被覆部115および外側被覆部116が環状部71を構成することになる。ロッドシール26Aは、外筒13の加締め部33とロッドガイド25の外側環状凸部55とに、内側被覆部115と円環部材62Aと外側被覆部116とが挟持されて、シリンダ11に係止される。シールリング75は、環状部71Aの内側被覆部115の外周縁部からシリンダ内外方向の内側に向け突出しており、チェックリップ76は、内側被覆部115の径方向の中間位置からシリンダ内外方向の内側に向け突出している。
内側被覆部115は、内側段差部111を含んで円環部材62Aのシリンダ内外方向内側を覆っている。内側被覆部115は、円環部材62Aの内端面62Acの全面と段差壁面111aの全面と段差底面111bの全面とに接着されており、これらに密着している。内側被覆部115は、シリンダ内外方向内側の端面115aが平坦面となっている。よって、内側被覆部115は、内側段差部111を埋める充足部118と、充足部118の径方向外側にあって充足部118よりも軸方向に薄い被覆本体部119とを有している。充足部118は、内側段差部111の段差壁面111aの全面と段差底面111bの全面とに接着されている。
オイルリップ72の装着溝101は、内側被覆部115の端面115aに隣接して形成されている。そして、この装着溝101に環状の内側スプリング65が装着されている。すると、内側スプリング65は、環状部71Aに直接当接することになり、より具体的には、内側被覆部115の充足部118に直接当接する。言い換えれば、オイルリップ72に装着された内側スプリング65のシリンダ内外方向の外側の端部は、環状部71Aの平坦な端面115aに接しており、この平坦な端面115aは内側スプリング65との接触部分が円環状をなしている。オイルリップ72に装着された内側スプリング65のシリンダ内外方向の外側の端部は、環状部71Aの内径側の端部位置である円環部材62Aの内周面62Aaよりも径方向外側に位置している。具体的に、オイルリップ72に装着された内側スプリング65は円環部材62Aの内側段差部111に径方向の位置を重ね合わせている。オイルリップ72に装着された内側スプリング65は、最もシリンダ内外方向外側の端部が、円環部材62Aの内側段差部111と径方向の位置を重ね合わせており、円環部材62Aの内側段差部111とで内側被覆部115の充足部118を軸方向に挟んでいる。
外側被覆部116は、外側段差部112を含んで円環部材62Aのシリンダ内外方向外側を覆っている。外側被覆部116は、円環部材62Aの外端面62Adの全面と段差壁面112aの全面と段差底面112bの全面とに接着されており、これらに密着している。外側被覆部116は、シリンダ内外方向外側の端面116aが平坦面となっている。よって、外側被覆部116は、外側段差部112を埋める充足部121と、充足部121の径方向外側にあって充足部121よりも軸方向に薄い被覆本体部122とを有している。充足部121は、外側段差部112の段差壁面112aの全面と段差底面112bの全面とに接着されている。
ダストリップ73の装着溝102は、外側被覆部116の端面116aに隣接して形成されている。そして、この装着溝102に環状の外側スプリング66が装着されている。すると、外側スプリング66は、環状部71Aに直接当接することになり、より具体的には、外側被覆部116の充足部121に直接当接する。言い換えれば、ダストリップ73に装着された外側スプリング66のシリンダ内外方向の内側の端部は、環状部71の平坦な端面116aに接しており、この平坦な端面116aは外側スプリング66との接触部分が円環状をなしている。ダストリップ73に装着された外側スプリング66のシリンダ内外方向の内側の端部は、環状部71Aの内径側の端部位置である円環部材62Aの内周面62Aaよりも径方向外側に位置している。具体的に、ダストリップ73に装着された外側スプリング66は円環部材62Aの外側段差部112に径方向位置を重ね合わせている。ダストリップ73に装着された外側スプリング66は、最もシリンダ内外方向内側の端部が、円環部材62Aの外側段差部112と径方向の位置を重ね合わせており、円環部材62Aの外側段差部112とで外側被覆部116の充足部121を軸方向に挟んでいる。
第2実施形態においても、高剛性の環状の円環部材62Aを含むことで、オイルリップ72およびダストリップ73と比べて変形しにくい環状部71Aに内側スプリング65および外側スプリング66を当接させることで、ロッド22の往復摺動時の内側スプリング65および外側スプリング66の相対移動を抑制することができる。その結果、第1実施形態と同様、コスト増を抑制しつつロッドシール26Aのシール性を向上可能となる。しかも、内側スプリング65および外側スプリング66と円環部材62Aとの間に弾性部材61Aからなる充足部118,121が介在するため、内側スプリング65および外側スプリング66のロッド22への追従性を向上させることができる。
ここで、第2実施形態では、内側スプリング65を弾性部材61Aからなる充足部118に当接させているものの、充足部118は、剛性の高い円環部材62Aに接着され、しかも円環部材62Aおよび内側スプリング65に挟持されているため、ほとんど変形することはない。同様に、外側スプリング66を弾性部材61Aからなる充足部121に当接させているものの、充足部121は、剛性の高い円環部材62Aに接着され、しかも円環部材62Aおよび外側スプリング66で挟持されているため、ほとんど変形することはない。このため、上記のように、ロッドシール26Aのシール性を向上可能となる。
「第3実施形態」
次に、第3実施形態を主に図4に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態のシリンダ装置10Bでは、第1実施形態とは一部異なるロッドシール26B、具体的にはロッドシール本体63Bが用いられている。このロッドシール本体63Bは、第1実施形態とは一部異なる円環部材62Bを含む環状部71Bを有している。言い換えれば、第1実施形態とは一部異なる弾性部材61Bを含む環状部71Bを有している。
円環部材62Bには、内周側のシリンダ内外方向内側に内側面取部131が形成されており、内周側のシリンダ内外方向外側に外側面取部132が形成されている。これにより、円環部材62Bは、第1実施形態よりも軸方向に短い内周面62Baと、第1実施形態と同様の外周面62bと、第1実施形態よりも径方向の幅が狭い内端面62Bcおよび外端面62Bdとを有している。ここでも、内周面62Baの径方向の位置が、環状部71Bの径方向におけるオイルリップ72およびダストリップ73側の端部位置となっている。
内側面取部131は、円環部材62Bの内周面62Baおよび外周面62bと同軸のテーパ状に形成されたテーパ面131aを有している。外側面取部132は、円環部材62Bの内周面62Baおよび外周面62bと同軸のテーパ状に形成されたテーパ面132aを有している。テーパ面131a,132aは、テーパ面131aの軸方向長さがテーパ面132aの軸方向長さよりも長くなっており、テーパ面131aの最大径がテーパ面132aの最大径よりも大きくなっている。
環状部71Bは、弾性部材61Bからなる部分が、外周被覆部82に加えて、外周被覆部82のシリンダ内外方向内側の端縁部から径方向内方に延出してオイルリップ72に繋がる内側被覆部115Bと、外周被覆部82のシリンダ内外方向外側の端縁部から径方向内方に延出してダストリップ73に繋がる外側被覆部116Bとを有している。つまり、内側被覆部115Bは、円環部材62Bに対しシリンダ内外方向内側に設けられてオイルリップ72に繋がっており、外側被覆部116Bは、円環部材62Bに対しシリンダ内外方向外側に設けられてダストリップ73に繋がっている。内側被覆部115Bおよび外側被覆部116Bは、いずれも弾性部材61Bからなるため、円環部材62Bよりも低剛性となっている。
弾性部材61Bでは、外周被覆部82、内側被覆部115Bおよび外側被覆部116Bが環状部71Bを構成することになる。ロッドシール26Bは、外筒13の加締め部33とロッドガイド25の外側環状凸部55とに、内側被覆部115Bと円環部材62Bと外側被覆部116Bとが挟持されて、シリンダ11に係止される。シールリング75は、環状部71Bの内側被覆部115Bの外周縁部からシリンダ内外方向の内側に向け突出しており、チェックリップ76は、環状部71Bの内側被覆部115Bの径方向の中間位置からシリンダ内外方向の内側に向け突出している。
内側被覆部115Bは、内側面取部131を含んで円環部材62Bのシリンダ内外方向内側を覆っている。内側被覆部115Bは、円環部材62Bの内端面62Bcの全面とテーパ面131aの全面とに接着されており、これらに密着している。内側被覆部115Bは、シリンダ内外方向内側の端面115Baが平坦面となっている。よって、内側被覆部115Bは、内側面取部131を埋める充足部118Bと、充足部118Bの径方向外側にあって充足部118Bよりも軸方向に薄い被覆本体部119とを有している。充足部118Bは、内側面取部131のテーパ面131aの全面に接着されている。
オイルリップ72の装着溝101は、内側被覆部115Bの端面115Baに隣接して形成されている。そして、この装着溝101に環状の内側スプリング65が装着されている。すると、内側スプリング65は、環状部71Bに直接当接することになり、より具体的には、内側被覆部115Bの充足部118Bに直接当接する。言い換えれば、オイルリップ72に装着された内側スプリング65のシリンダ内外方向の外側の端部は、環状部71Bの平坦な端面115Baに接しており、この平坦な端面115Baは内側スプリング65との接触部分が円環状をなしている。オイルリップ72に装着された内側スプリング65のシリンダ内外方向の外側の端部は、環状部71Bの内径側の端部位置である円環部材62Bの内周面62Baよりも径方向外側に位置している。内側スプリング65は円環部材62Bの内側面取部131に径方向の位置を重ね合わせている。内側スプリング65は最もシリンダ内外方向外側の端部が円環部材62Bの内側面取部131と径方向の位置を重ね合わせており、円環部材62Bの内側面取部131とで内側被覆部115Bの充足部118Bを軸方向に挟んでいる。
外側被覆部116Bは、外側面取部132を含んで円環部材62Bのシリンダ内外方向外側を覆っている。外側被覆部116Bは、円環部材62Bの外端面62Bdの全面とテーパ面132aの全面とに接着されており、これらに密着している。外側被覆部116Bは、シリンダ内外方向外側の端面116Baが平坦面となっている。よって、外側被覆部116Bは、外側面取部132を埋める充足部121Bと、充足部121Bの径方向外側にあって充足部121Bよりも軸方向に薄い被覆本体部122とを有している。充足部121Bは、外側面取部132のテーパ面132aの全面に接着されている。
ダストリップ73の装着溝102は、外側被覆部116Bの端面116Baに隣接して形成されている。そして、この装着溝102に環状の外側スプリング66が装着されている。すると、外側スプリング66は、環状部71Bに直接当接することになり、より具体的には、外側被覆部116Bの充足部121Bに直接当接する。言い換えれば、ダストリップ73に装着された外側スプリング66のシリンダ内外方向の内側の端部は、環状部71Bの平坦な端面116Baに接しており、この平坦な端面116Baは外側スプリング66との接触部分が円環状をなしている。ダストリップ73に装着された外側スプリング66のシリンダ内外方向の内側の端部は、環状部71Bの内径側の端部位置である円環部材62Bの内周面62Baよりも径方向外側に位置している。外側スプリング66は最もシリンダ内外方向内側の端部が円環部材62Bの外側面取部132と径方向の位置を重ね合わせており、円環部材62Bの外側面取部132とで外側被覆部116の充足部121Bを軸方向に挟んでいる。
第3実施形態においても、高剛性の円環部材62Bを含むことで、オイルリップ72およびダストリップ73と比べて変形しにくい環状部71Bに内側スプリング65および外側スプリング66を当接させることで、ロッド22の往復摺動時の内側スプリング65および外側スプリング66の相対移動を抑制することができる。その結果、第1実施形態と同様、コスト増を抑制しつつロッドシール26Bのシール性を向上可能となる。しかも、内側スプリング65および外側スプリング66と円環部材62Bとの間に弾性部材61Bからなる充足部118B,121Bが介在するため、内側スプリング65および外側スプリング66のロッド22への追従性を向上させることができる。
第3実施形態では、内側スプリング65を弾性部材61Bからなる充足部118Bに当接させているものの、充足部118Bは、剛性の高い円環部材62Bに接着され、しかも円環部材62Bおよび内側スプリング65に挟持されているため、ほとんど変形することはない。同様に、外側スプリング66を弾性部材61Bからなる充足部121Bに当接させているものの、充足部121Bは、剛性の高い円環部材62Bに接着され、しかも円環部材62Bおよび外側スプリング66で挟持されているため、ほとんど変形することはない。このため、上記のようにロッドシール26Bのシール性を向上可能となる。
なお、第1実施形態において、円環部材62にかえて第2実施形態の円環部材62Aを用いて、内側露出部87と外側露出部88とを形成しつつ、内側段差部111の範囲のみを埋めるように充足部118を設け、外側段差部112の範囲のみを埋めるように充足部121を設けても良い。つまり、充足部118を、内側露出部87を構成する内端面62Acと面一に、充足部121を、外側露出部88を構成する外端面62Adと面一に形成する。
また、第1実施形態において、円環部材62にかえて第3実施形態の円環部材62Bを用いて、内側露出部87と外側露出部88とを形成しつつ、内側面取部131の範囲のみを埋めるように充足部118Bを設け、外側面取部132の範囲のみを埋めるように充足部121Bを設けても良い。つまり、充足部118Bを、内側露出部87を構成する内端面62Acと面一に、充足部121Bを、外側露出部88を構成する外端面62Adと面一に形成する。
また、第2実施形態において、円環部材62Aにかえて内側段差部111および外側段差部112のない第1実施形態の円環部材62を用いて、その内端面62cの全面を充足部118のない内側被覆部115で被覆し、その外端面62dの全面を充足部121のない外側被覆部116で被覆しても良い。この場合、内側スプリング65は充足部118のない内側被覆部115に当接し、外側スプリング66は充足部121のない外側被覆部116に当接することになる。
さらに、これらの変形を含む第1〜第3実施形態の構造を、シリンダ内外方向内側と、シリンダ内外方向外側とで別々に選択して採用しても良い。
以上の実施形態においては、シリンダ11が内筒12と外筒13とを有する二重筒構造をなす場合を例にとり説明したが、一つのシリンダのみを有するモノチューブタイプの液圧緩衝器等のシリンダ装置にも適用可能である。モノチューブタイプのシリンダ装置においては、例えば、シリンダの胴部に径方向内方に突出する係止凸部を形成し、この係止凸部と胴部の加締め部との間にロッドガイドと上記と同様のロッドシール26,26A,26Bとを配置することになる。
本発明は、複筒式あるいは単筒式の液圧緩衝器以外にも、アクティブサスペンション等のシリンダ装置にも適用可能である。さらにはガス圧緩衝器等のシリンダ装置にも適用可能である。
以上に述べた実施形態は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダに挿入されるロッドと、前記シリンダの端部に設けられて前記ロッドを案内するロッドガイドと、前記シリンダの端部の前記ロッドガイドよりもシリンダ内外方向外側に設けられて前記作動流体を密封するロッドシールと、を有するシリンダ装置であって、前記ロッドシールは、環状の剛性部材を含み前記シリンダに係止される環状部と、前記環状部からシリンダ内外方向内側に突出して前記ロッドに密封接触する環状の内側リップと、前記環状部からシリンダ内外方向外側に突出して前記ロッドに密封接触する環状の外側リップと、前記内側リップを前記ロッドに密着する方向に付勢する環状の内側スプリングと、前記外側リップを前記ロッドに密着する方向に付勢する環状の外側スプリングと、を備え、前記ロッドシールと前記ロッドとの間に、前記内側リップおよび前記外側リップで密封される密封空間が形成されており、前記内側スプリングおよび前記外側スプリングが前記環状部に当接している。
これにより、環状の剛性部材を含むことで内側リップおよび外側リップと比べて変形しにくい環状部に、内側スプリングおよび外側スプリングを当接させるため、ロッドの往復摺動時の内側スプリングおよび外側スプリングの相対移動を抑制することができる。その結果、内側リップおよび外側リップの伸縮つまり密封空間の容積の変動を抑制することができる。これにより、ロッドシールのシール性を向上可能となる。しかも、環状部に内側スプリングおよび外側スプリングを当接させるという簡素な構造でロッドシールのシール性を向上可能となるため、コスト増を抑制しつつロッドシールのシール性を向上可能となる。
また、前記内側スプリングおよび前記外側スプリングが前記剛性部材に当接していることから、ロッドの往復摺動時の内側スプリングおよび外側スプリングの相対移動をさらに抑制することができる。したがって、ロッドシールのシール性をさらに向上可能となる。
また、前記環状部は、前記剛性部材に接着され該剛性部材のシリンダ内外方向内側に設けられて前記内側リップに繋がる低剛性の内側被覆部と、前記剛性部材に接着され該剛性部材のシリンダ内外方向外側に設けられて前記外側リップに繋がる低剛性の外側被覆部と、を有し、前記内側スプリングが前記剛性部材とシリンダ径方向の位置を重ね合わせて該剛性部材とで前記内側被覆部を挟んでおり、前記外側スプリングが前記剛性部材とシリンダ径方向の位置を重ね合わせて該剛性部材とで前記外側被覆部を挟んでいる。これにより、内側被覆部は剛性の高い剛性部材に接着され、しかも剛性部材および内側スプリングに挟持されているため、ほとんど変形することはない。同様に、外側被覆部は剛性の高い剛性部材に接着され、しかも剛性部材および外側スプリングで挟持されているため、ほとんど変形することはない。このため、ロッドシールのシール性を向上可能となる。