以下、本発明の詳細を説明する。
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有する。該導電層は、ニッケルと、ボロン及びリンの内の少なくとも1種と、銅とを含む。該導電層は、ニッケル−ボロン/リン−銅導電層である。
例えば、ニッケルとボロンとを含む導電層の表面の磁性は高く、上下の電極間を電気的に接続した場合に、磁性により凝集した導電性粒子の影響で、接続されてはならない横方向に隣接する電極間が接続されやすい傾向がある。本発明に係る導電性粒子では、上記導電層が銅を含むので、上記導電層の表面の磁性がかなり低くなる。このため、複数の導電性粒子が凝集するのを抑制できる。従って、電極間を電気的に接続した場合に、凝集した導電性粒子により横方向に隣接する電極間が接続されるのを抑制できる。すなわち、隣り合う電極間の短絡を防止できる。
さらに、本発明に係る導電性粒子では、上記導電層がニッケルを含むので、導電性粒子により電極間を接続した場合に、電極間の接続抵抗が低くなる。本発明に係る導電性粒子における導電層100重量%中のニッケルの含有量が50重量%以上であると、電極間の接続抵抗がかなり低くなる。
また、ボロンを含まないニッケル導電層を有する導電性粒子では、該ボロンを含まないニッケル導電層が柔らかすぎて、電極間の接続時に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、電極間の接続抵抗が高くなりやすい傾向がある。例えば、ニッケルとリンとを含む導電層を有する導電性粒子では、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除できず、接続抵抗が高くなりやすい傾向がある。特に、上記導電層100重量%中のリンの含有量が0.5重量%以上であると、接続抵抗が高くなりやすい。
一方で、電極間の接続抵抗を低くするために、ニッケルとリンとを含む導電層の厚みを厚くすると、導電性粒子により接続対象部材又は基板が傷つくことがある。
これに対して、上記導電層がニッケルとボロンとを含む場合には、上記導電層の硬さは比較的高くなることから、電極間の接続抵抗を低くすることができる。電極間の接続の際に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を排除でき、接続抵抗を低くすることができる。
従って、上記導電層は、ボロンを含むことが好ましい。すなわち、上記導電層は、ニッケルとボロンと銅とを含むことが好ましい。また、上記導電層は、ニッケルとボロンと銅とを含み、かつ上記導電層が、リンを含まないか又は含むことが好ましい。上記導電層は、リンを含んでいてもよい。
上記導電層がニッケルとボロンと銅とを含む場合には、導電層の硬さを十分に高く維持できる。このため、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を十分に排除でき、接続抵抗を十分に低くすることができる。すなわち、導電性粒子の凝集の抑制と、電極間の接続抵抗の低減との双方を両立できる。特に上記導電層がニッケルとボロンと銅とを含み、更に上記導電層が外表面に突起を有する場合には、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜をより一層効果的に排除でき、接続抵抗をより一層低くすることができる。
さらに、上記導電層がニッケルとボロンと銅とを含むことによって、上記導電層の硬さを充分に高く維持できる結果、導電性粒子により電極間を接続した接続構造体に衝撃が与えられても、導通不良が生じ難くなる。すなわち、接続構造体の耐衝撃性を高めることもできる。
接続抵抗をより一層低くし、電極間の接続信頼性をより一層高める観点からは、上記導電性粒子を10%圧縮したときの圧縮弾性率(10%K値)は好ましくは7000N/mm2以上、より好ましくは8000N/mm2以上である。
上記導電性粒子における上記圧縮弾性率(10%K値)は、以下のようにして測定できる。
微小圧縮試験機を用いて、円柱(直径50μm、ダイヤモンド製)の平滑圧子端面で、25℃、圧縮速度2.6mN/秒、及び最大試験荷重10gfの条件下で導電性粒子を圧縮する。このときの荷重値(N)及び圧縮変位(mm)を測定する。得られた測定値から、上記圧縮弾性率を下記式により求めることができる。上記微小圧縮試験機として、例えば、フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」等が用いられる。
K値(N/mm2)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:導電性粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(N)
S:導電性粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:導電性粒子の半径(mm)
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図1に示すように、導電性粒子1は、基材粒子2と、導電層3と、複数の芯物質4と、複数の絶縁性物質5とを有する。
導電層3は、基材粒子2の表面上に配置されている。導電層3は、ニッケルとボロンと銅とを含む。導電層3は、ニッケルと、ボロン及びリンの内の少なくとも1種と、銅とを含む。導電性粒子1は、基材粒子2の表面が導電層3により被覆された被覆粒子である。
導電性粒子1は導電性の表面に、複数の突起1aを有する。導電層3は外表面に、複数の突起3aを有する。複数の芯物質4が、基材粒子2の表面上に配置されている。複数の芯物質4は導電層3内に埋め込まれている。芯物質4は、突起1a,3aの内側に配置されている。導電層3は、複数の芯物質4を被覆している。複数の芯物質4により導電層3の外表面が隆起されており、突起1a,3aが形成されている。
導電性粒子1は、導電層3の外表面上に配置された絶縁性物質5を有する。導電層3の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質5により被覆されている。絶縁性物質5は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、第2の導電層12(他の導電層)と、導電層13(第1の導電層)と、複数の芯物質4と、複数の絶縁性物質5とを有する。導電性粒子11では、第2の導電層12は、ニッケルと、ボロン及びリンの内の少なくとも1種と、銅とを含む導電層に相当しない。
導電性粒子1と導電性粒子11とでは、導電層のみが異なっている。すなわち、導電性粒子1では、1層構造の導電層が形成されているのに対し、導電性粒子11では、2層構造の第2の導電層12及び導電層13が形成されている。
導電層13は、基材粒子2の表面上に配置されている。基材粒子2と導電層13との間に、第2の導電層12(他の導電層)が配置されている。従って、基材粒子2の表面上に第2の導電層12が配置されており、第2の導電層12の表面上に導電層13が配置されている。導電層13は、ニッケルと、ボロン及びリンの内の少なくとも1種と、銅とを含む。第2の導電層12は外表面に、複数の突起を有する。導電層13は外表面に、複数の突起13aを有する。導電性粒子11は導電性の表面に、複数の突起11aを有する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
図3に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、導電層22とを有する。導電層22は、基材粒子2の表面上に配置されている。導電層22は、ニッケルとボロン及びリンの内の少なくとも1種と銅とを含む。
導電性粒子21は、芯物質を有さない。導電性粒子21は導電性の表面に、突起を有さない。導電性粒子21は球状である。導電層22は外表面に突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子は、導電性の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子21は、絶縁性物質を有さない。但し、導電性粒子21は、導電層22の表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。
[基材粒子]
上記基材粒子としては、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。上記基材粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを備えるコアシェル粒子であってもよい。なかでも、金属粒子を除く基材粒子が好ましく、樹脂粒子、金属粒子を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子が好ましい。
上記基材粒子は、樹脂により形成された樹脂粒子であることが好ましい。上記導電性粒子を用いて電極間を接続する際には、上記導電性粒子を電極間に配置した後、圧着することにより上記導電性粒子を圧縮させる。基材粒子が樹脂粒子であると、上記圧着の際に上記導電性粒子が変形しやすく、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなる。このため、電極間の導通信頼性が高くなる。
上記樹脂粒子を形成するための樹脂として、種々の有機物が好適に用いられる。上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリアルキレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及び、エチレン性不飽和基を有する種々の重合性単量体を1種もしくは2種以上重合させて得られる重合体等が挙げられる。基材粒子の硬度を好適な範囲に容易に制御できるので、上記樹脂粒子を形成するための樹脂は、エチレン性不飽和基を複数有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
上記樹脂粒子を、エチレン性不飽和基を有する単量体を重合させて得る場合には、該エチレン性不飽和基を有する単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
上記非架橋性の単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン等の不飽和炭化水素;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、塩化ビニル、フッ化ビニル、クロルスチレン等のハロゲン含有単量体等が挙げられる。
上記架橋性の単量体としては、例えば、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、ビニルトリメトキシシラン等のシラン含有単量体等が挙げられる。
上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を、公知の方法により重合させることで、上記樹脂粒子を得ることができる。この方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で懸濁重合する方法、並びに非架橋の種粒子を用いてラジカル重合開始剤とともに単量体を膨潤させて重合する方法等が挙げられる。
上記基材粒子が金属を除く無機粒子又は有機無機ハイブリッド粒子である場合には、基材粒子を形成するための無機物としては、シリカ及びカーボンブラック等が挙げられる。上記シリカにより形成された粒子としては特に限定されないが、例えば、加水分解性のアルコキシシル基を2つ以上有するケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
上記基材粒子が金属粒子である場合に、該金属粒子を形成するための金属としては、銀、銅、ニッケル、ケイ素、金及びチタン等が挙げられる。但し、上記基材粒子は金属粒子ではないことが好ましい。
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは1.5μm以上、特に好ましくは2μm以上、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、より一層好ましくは300μm以下、更に好ましくは50μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは5μm以下である。基材粒子の粒子径が上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性がより一層高くなり、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗がより一層低くなる。さらに基材粒子の表面に導電層を無電解めっきにより形成する際に凝集し難くなり、凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。粒子径が上記上限以下であると、導電性粒子が充分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗がより一層低くなり、更に電極間の間隔が小さくなる。上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
上記基材粒子の粒子径は、2μm以上、5μm以下であることが特に好ましい。上記基材粒子の粒子径が2〜5μmの範囲内であると、電極間の間隔が小さくなり、かつ導電層の厚みを厚くしても、小さい導電性粒子が得られる。
[導電層]
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子の表面上に配置されており、かつニッケルとボロン及びリンの内の少なくとも1種と銅とを含む導電層を有する。以下、ニッケルとボロン及びリンの内の少なくとも1種と銅とを含む導電層を、導電層Xと記載することがある。上記導電層Xは、ニッケル−ボロン/リン−銅導電層である。該導電層Xは、基材粒子の表面に直接積層されていてもよく、他の導電層などを介して基材粒子の表面上に配置されていてもよい。
上記導電層Xでは、ニッケルとボロン及びリンの内の少なくとも1種と銅とは合金化していてもよい。また、上記導電層Xでは、ニッケル、ボロン、リン及び銅以外に、クロム、タングステン、モリブデン、シーボーギウムを用いてもよい。
上記導電層Xは、ニッケルを主成分として含むことが好ましい。上記導電層X100重量%中のニッケルの含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは50重量%以上、より一層好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。上記導電層X100重量%中のニッケルの含有量は97重量%以上であってもよく、97.5重量%以上であってもよく、98重量%以上であってもよい。ニッケルの含有量の上限は、ボロン、リン及び銅の含有量により適宜変更できる。上記導電層X100重量%中のニッケルの含有量は好ましくは99.85重量%以下、より好ましくは99.7重量%以下、更に好ましくは99.45重量%未満である。上記ニッケルの含有量が上記下限以上であると、電極間の接続抵抗がより一層低くなる。また、電極や導電層の表面における酸化被膜が少ない場合には、上記ニッケルの含有量が多いほど電極間の接続抵抗が低くなる傾向がある。
上記導電層X100重量%中のボロンとリンとの合計の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2.5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下である。ボロンとリンとの合計の含有量が上記下限以上であると、導電層がより一層硬くなり、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜をより一層効果的に除去でき、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。ボロンとリンとの合計の含有量が上記上限以下であると、ニッケル及び銅の含有量が相対的に多くなるので、電極間の接続抵抗が低くなる。
上記導電層X100重量%中のボロンの含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上、好ましくは5重量%以下、より好ましくは4重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2.5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下である。ボロンの含有量が上記下限以上であると、導電層がより一層硬くなり、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜をより一層効果的に除去でき、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。ボロンの含有量が上記上限以下であると、ニッケル及び銅の含有量が相対的に多くなるので、電極間の接続抵抗が低くなる。
上記導電層Xは、リンを含まないか又は含み、かつ上記導電層100重量%中のリンの含有量が0.5重量%未満であることが好ましい。上記導電層100重量%中のリンの含有量はより好ましくは0.3重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。上記導電層Xはリンを含まないことが特に好ましい。
上記導電層X100重量%中の銅の含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは5重量%を超え、特に好ましくは10重量%以上である。上記銅の含有量が上記下限以上であると、導電層の外表面の硬さがより一層高くなる。このため、電極や導電層の表面に酸化被膜が形成されている場合に、電極及び導電性粒子の表面の酸化被膜を効果的に排除でき、接続抵抗を低くすることができ、かつ得られる接続構造体の耐衝撃性を高めることができる。さらに、銅の含有量が上記下限以上であると、導電層の外表面の磁性が弱くなり、複数の導電性粒子が凝集し難くなる。このため、電極間の短絡を効果的に抑制できる。上記導電層X100重量%中の銅の含有量は、0.01重量%以上であってもよく、0.2重量%以上であってもよい。上記導電層X100重量%中の上記銅の含有量の上限は、ニッケル、ボロン及びリンの含有量により適宜変更できる。上記導電層X100重量%中の銅の含有量は、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは25重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。
導電性粒子の凝集をより一層抑制し、かつ電極間の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記導電層X100重量%中のニッケルと銅との合計の含有量は好ましくは51重量%以上、より好ましくは61重量%以上、更に好ましくは71重量%以上、特に好ましくは91重量%以上である。上記導電層X100重量%中のニッケルと銅との合計の含有量は98重量%以上であってもよく、98.5重量%以上であってもよく、99重量%以上であってもよい。上記導電層X100重量%中のニッケルと銅との合計の含有量は99.95重量%以下であることが好ましい。
上記導電層Xにおけるニッケル、ボロン、リン及び銅の各含有量の測定方法は、既知の種々の分析法を用いることができ特に限定されない。この測定方法として、吸光分析法又はスペクトル分析法等が挙げられる。上記吸光分析法では、フレーム吸光光度計及び電気加熱炉吸光光度計等を用いることができる。上記スペクトル分析法としては、プラズマ発光分析法及びプラズマイオン源質量分析法等が挙げられる。
上記導電層Xにおけるニッケル、ボロン、リン及び銅の各含有量を測定する際には、ICP発光分析装置を用いることが好ましい。ICP発光分析装置の市販品としては、HORIBA社製のICP発光分析装置、及び日立製作所社製のICP−MS分析器等が挙げられる。
上記他の導電層(第2の導電層)を形成するための金属は特に限定されない。該金属としては、例えば、金、銀、銅、パラジウム、白金、亜鉛、鉄、錫、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン及びこれらの合金等が挙げられる。また、上記金属としては、錫ドープ酸化インジウム(ITO)及びはんだ等が挙げられる。なかでも、電極間の接続抵抗がより一層低くなるので、錫を含む合金、ニッケル、パラジウム、銅又は金が好ましく、ニッケル又はパラジウムがより好ましい。上記導電層を構成する金属はニッケルを含むことが好ましい。
上記基材粒子の表面上などに導電層(他の導電層及び導電層X)を形成する方法は特に限定されない。導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを基材粒子又は他の導電層の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下である。導電性粒子の粒子径が上記下限以上及び上限以下であると、導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が充分に大きくなり、かつ導電層を形成する際に凝集した導電性粒子が形成されにくくなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電層が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
上記導電性粒子の粒子径は、導電性粒子が真球状である場合には、直径を示し、導電性粒子が真球状ではない場合には、最大径を示す。
上記導電層Xの厚みは好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.3μm以下である。上記導電層Xの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、充分な導電性が得られ、かつ導電性粒子が硬くなりすぎずに、電極間の接続の際に導電性粒子が充分に変形する。
導電層が2層以上の積層構造である場合に、導電層Xの厚みは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.01μm以上、更に好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.3μm以下、更に好ましくは0.1μm以下である。上記導電層Xの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、導電層Xによる被覆を均一にでき、かつ電極間の接続抵抗が充分に低くなる。
上記導電層Xの厚みは、0.05μm以上、0.3μm以下であることが特に好ましい。さらに、基材粒子の粒子径が2μm以上、5μm以下であり、かつ、上記導電層Xの厚みが0.05μm以上、0.3μm以下であることが特に好ましい。この場合には、導電性粒子を大きな電流が流れる用途により好適に用いることができる。さらに、導電性粒子を圧縮して電極間を接続した場合に、電極が損傷するのをより一層抑制できる。
上記導電層Xの厚みは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、導電性粒子の断面を観察することにより測定できる。
上記導電性粒子1個当たりの上記導電層の外表面の突起は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。
上記導電層Xにおけるニッケル、ボロン、リン及び銅の含有量を制御する方法としては、例えば、無電解ニッケルめっきにより導電層Xを形成する際に、ニッケルめっき液のpHを制御する方法、無電解ニッケルめっきにより導電層Xを形成する際に、ボロン含有還元剤の濃度を調整する方法、無電解ニッケルめっきにより導電層Xを形成する際に、リン含有還元剤の濃度を調整する方法、ニッケルめっき液中の銅濃度を調整する方法、並びにニッケルめっき液中のニッケル濃度を調整する方法等が挙げられる。
無電解めっきにより形成する方法では、一般的に、触媒化工程と、無電解めっき工程とが行われる。以下、無電解めっきにより、樹脂粒子の表面に、ニッケルとボロンと銅を含む合金めっき層を形成する方法の一例を説明する。
上記触媒化工程では、無電解めっきによりめっき層を形成するための起点となる触媒を、樹脂粒子の表面に形成させる。
上記触媒を樹脂粒子の表面に形成させる方法としては、例えば、塩化パラジウムと塩化スズとを含む溶液に、樹脂粒子を添加した後、酸溶液又はアルカリ溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法、並びに硫酸パラジウムとアミノピリジンとを含有する溶液に、樹脂粒子を添加した後、還元剤を含む溶液により樹脂粒子の表面を活性化させて、樹脂粒子の表面にパラジウムを析出させる方法等が挙げられる。上記還元剤として、ボロン含有還元剤が好適に用いられる。また、上記還元剤として、リン含有還元剤を用いることで、リンを含む導電層を形成できる。
上記無電解めっき工程では、ニッケル含有化合物、上記ボロン含有還元剤及び銅含有化合物を含むニッケルめっき浴が好適に用いられる。ニッケルめっき浴中に樹脂粒子を浸漬することにより、触媒が表面に形成された樹脂粒子の表面に、ニッケルを析出させることができ、ニッケルとボロンと銅とを含む導電層を形成できる。
上記ニッケル含有化合物としては、硫酸ニッケル及び塩化ニッケル等が挙げられる。上記ニッケル含有化合物は、ニッケル塩であることが好ましい。
上記ボロン含有還元剤としては、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム及び水素化ホウ素カリウム等が挙げられる。上記リン含有還元剤としては、次亜リン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記銅含有化合物としては、硫酸銅、塩化銅、及びピロリン酸銅等が挙げられる。上記銅含有化合物は、銅塩であることが好ましい。
[芯物質]
本発明に係る導電性粒子は導電性の表面に、突起を有することが好ましい。導電層Xは外表面に突起を有することが好ましい。該突起は複数であることが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
上記芯物質が上記導電層中に埋め込まれていることによって、上記導電層が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。但し、導電性粒子及び導電層の表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよい。
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきにより導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきにより導電層を形成した後、芯物質を付着させ、更に無電解めっきにより導電層を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上に、内側の導電層を形成した後、該内側の導電層上に芯物質を配置し、次に外側の導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面上に導電層を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。
上記基材粒子の表面上に芯物質を配置する方法としては、例えば、基材粒子の分散液中に、芯物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、例えば、ファンデルワールス力により集積させ、付着させる方法、並びに基材粒子を入れた容器に、芯物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。なかでも、付着させる芯物質の量を制御しやすいため、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法が好ましい。上記導電性粒子は、基材粒子の表面上に第2の導電層を有し、かつ該第2の導電層上に導電層Xを有していてもよい。
上記芯物質を構成する物質としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ及びジルコニア等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができ、更に接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、並びに錫−鉛合金、錫−銅合金、錫−銀合金、錫−鉛−銀合金及び炭化タングステン等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、銀又は金が好ましい。上記芯物質を構成する金属は、上記導電層を構成する金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。上記芯物質を構成する金属は、上記導電層を構成する金属を含むことが好ましい。上記芯物質を構成する金属は、ニッケルを含むことが好ましい。上記芯物質を構成する金属は、ニッケルを含むことが好ましい。
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上限以下であると、電極間の接続抵抗を効果的に低くすることができる。
上記芯物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。芯物質の平均径は、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求められる。
[絶縁性物質]
本発明に係る導電性粒子は、上記導電層の表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡をより一層防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。導電性粒子が導電層の外表面に複数の突起を有する場合には、導電性粒子の導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。
上記絶縁性物質の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン−ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。なかでも、水溶性樹脂が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。
上記導電層の表面上に絶縁性物質を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。なかでも、絶縁性物質が脱離し難いことから、上記導電層の表面に、化学結合を介して上記絶縁性物質を配置する方法が好ましい。
上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は、導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。絶縁性物質の平均径が上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電層同士が接触し難くなる。絶縁性粒子の平均径が上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性物質を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
上記絶縁性物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。絶縁性物質の平均径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。本発明に係る導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散され、導電材料として用いられることが好ましい。上記導電性粒子及び上記導電材料はそれぞれ、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル−スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法は、従来公知の分散方法を用いることができ特に限定されない。上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を分散させる方法としては、例えば、上記バインダー樹脂中に上記導電性粒子を添加した後、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、上記導電性粒子を水又は有機溶剤中にホモジナイザー等を用いて均一に分散させた後、上記バインダー樹脂中に添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法、並びに上記バインダー樹脂を水又は有機溶剤等で希釈した後、上記導電性粒子を添加し、プラネタリーミキサー等で混練して分散させる方法等が挙げられる。
本発明に係る導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
(接続構造体)
本発明の導電性粒子を用いて、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が本発明の導電性粒子により形成されているか、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料(異方性導電材料など)により形成されている接続構造体であることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
図4に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に正面断面図で示す。
図4に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、図4では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,21などを用いてもよい。
第1の接続対象部材52は表面52a(上面)に、複数の第1の電極52bを有する。第2の接続対象部材53は表面53a(下面)に、複数の第2の電極53bを有する。第1の電極52bと第2の電極53bとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104〜4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120〜220℃程度である。
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は、電子部品であることが好ましい。
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
(実施例1)
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、硫酸ニッケル0.23mol/L、ジメチルアミンボラン0.92mol/L、クエン酸ナトリウム0.5mol/L及び硫酸銅0.0023mol/Lを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記ニッケルめっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)配置された導電性粒子を得た。
(実施例2)
硫酸銅濃度を0.11mol/Lに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例3)
(1)パラジウム付着工程
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。この樹脂粒子をエッチングし、水洗した。次に、パラジウム触媒を8重量%含むパラジウム触媒化液100mL中に樹脂粒子を添加し、攪拌した。その後、ろ過し、洗浄した。pH6の0.5重量%ジメチルアミンボラン液に樹脂粒子を添加し、パラジウムが付着された樹脂粒子を得た。
(2)芯物質付着工程
パラジウムが付着された樹脂粒子をイオン交換水300mL中で3分間攪拌し、分散させ、分散液を得た。次に、金属ニッケル粒子スラリー(平均粒子径100nm)1gを3分間かけて上記分散液に添加し、芯物質が付着された樹脂粒子を得た。
(3)無電解ニッケルめっき工程
実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例4)
硫酸銅(5水和物)濃度を0.11mol/Lに変更したこと以外は実施例3と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例5)
(1)絶縁性粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N−トリメチル−N−2−メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁性粒子を得た。
絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
実施例4で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁性粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁性粒子が付着した導電性粒子を得た。
走査電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、導電性粒子の表面に絶縁性粒子による被覆層が1層のみ形成されていた。画像解析により導電性粒子の中心より2.5μmの面積に対する絶縁性粒子の被覆面積(即ち絶縁性粒子の粒子径の投影面積)を算出したところ、被覆率は30%であった。
(実施例6)
硫酸銅濃度を0.0011mol/Lに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例7)
硫酸銅濃度を0.05mol/Lに変更し、タングステン酸ナトリウム0.5mol/L追加したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅−タングステン導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例8)
硫酸銅濃度を0.22mol/Lに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(参考例9)
次亜リン酸ナトリウム0.92mol/Lを追加したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−ボロン−リン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(参考例10)
ジメチルアミンボラン0.92mol/Lを次亜リン酸ナトリウム0.92mol/Lに変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケル−リン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(実施例11)
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)の表面を、ゾルゲル反応による縮合反応を用いて無機シェル(厚み250nm)により被覆したコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子(基材粒子)を用意した。
樹脂粒子を、上記有機無機ハイブリッド粒子に変更したこと以外は実施例1と同様にして、有機無機ハイブリッド粒子の表面上にニッケル−ボロン−銅導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例1)
ニッケルめっき液における硫酸銅を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケルとボロンとを含む導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例2)
ニッケルめっき液における硫酸銅を用いなかったこと以外は参考例10と同様にして、樹脂粒子の表面上にニッケルとリンとを含む導電層(厚み0.1μm)が配置された導電性粒子を得た。
(比較例3)
粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP−203」)を用意した。
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記樹脂粒子10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、樹脂粒子を取り出した。次いで、樹脂粒子をジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、樹脂粒子の表面を活性化させた。表面が活性化された樹脂粒子を十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液を得た。
また、硫酸銅0.23mol/L、エチレンジアミン四酢酸塩2.3mol/L、ホルマリン0.5mol/Lを含む銅めっき液(pH12.5)を用意した。
得られた懸濁液を60℃にて攪拌しながら、上記銅めっき液を懸濁液に徐々に滴下し、無電解銅めっきを行った。その後、懸濁液を濾過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥することにより、樹脂粒子の表面上に銅導電層(厚み0.1μm)配置された導電性粒子を得た。
(評価)
(1)導電層X100重量%中のニッケル、ボロン、リン及び銅の含有量
60%硝酸5mLと37%塩酸10mLとの混合液に、導電性粒子5gを加え、導電層を完全に溶解させ、溶液を得た。得られた溶液を用いて、ニッケル、ボロン、リン及び銅の含有量をICP発光分析器(HORIBA社製ULTIMA2)により分析した。なお、実施例1〜8,11及び比較例1, 3の導電性粒子における導電層はリンを含んでいなかった。
(2)圧縮弾性率(10%K値)
得られた導電性粒子の圧縮弾性率(10%K値)を、上述した方法により、微小圧縮試験機(フィッシャー社製「フィッシャースコープH−100」)を用いて測定した。
(3)めっき状態
得られた導電性粒子50個のめっき状態を、走査型電子顕微鏡により観察した。めっき割れ又はめっき剥がれ等のめっきむらの有無を観察した。めっきむらが確認された導電性粒子が4個以下の場合を「良好」、めっきむらが確認された導電性粒子が5個以上の場合を「不良」と判定した。
(4)凝集状態
得られた導電性粒子を粒子濃度100×103〜500×103個/mLになるように、シース液(Sysmex社製)で調整した。調整後のスラリー液について、電気抵抗式粒度分布測定装置(Sysmex社製SD−2000)にて、スターラーチップを付けた状態でカウント数5000〜10000個で測定した。得られた粒度分布から、メインピークと連結ピークの谷部中央を大粒子閾値として大粒子率を求めた。凝集状態を下記の基準で判定した。
[凝集状態の判定基準]
○○:大粒子率が10%以下
○:大粒子率が10%を超え、20%以下
△:大粒子率が20%を超え、30%以下
×:大粒子率が30%を超える
(5)接続抵抗
接続構造体の作製:
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「エピコート1009」)10重量部と、アクリルゴム(重量平均分子量約80万)40重量部と、メチルエチルケトン200重量部と、マイクロカプセル型硬化剤(旭化成ケミカルズ社製「HX3941HP」)50重量部と、シランカップリング剤(東レダウコーニングシリコーン社製「SH6040」)2重量部とを混合し、導電性粒子を含有量が3重量%となるように添加し、分散させ、樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、片面が離型処理された厚さ50μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムに塗布し、70℃の熱風で5分間乾燥し、異方性導電フィルムを作製した。得られた異方性導電フィルムの厚さは12μmであった。
得られた異方性導電フィルムを5mm×5mmの大きさに切断した。切断された異方性導電フィルムを、一方に抵抗測定用の引き回し線を有するアルミニウム電極(高さ0.2μm、L/S=20μm/20μm)を有するガラス基板(幅3cm、長さ3cm)のアルミニウム電極側のほぼ中央に貼り付けた。次いで、同じアルミニウム電極を有する2層フレキシブルプリント基板(幅2cm、長さ1cm)を、電極同士が重なるように位置合わせをしてから貼り合わせた。このガラス基板と2層フレキシブルプリント基板との積層体を、10N、180℃、及び20秒間の圧着条件で熱圧着し、接続構造体を得た。なお、ポリイミドフィルムにアルミニウム電極が直接形成されている2層フレキシブルプリント基板を用いた。
接続抵抗の測定:
得られた接続構造体における対向する電極間の接続抵抗を4端子法により測定した。また、接続抵抗を下記の評価基準で評価した。
〔接続抵抗の評価基準〕
○○○:接続抵抗が2.0Ω以下
○○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
○:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗が5.0Ωを超え、10Ω以下
×:接続抵抗が10Ωを超える
(6)耐衝撃性
上記(5)接続抵抗の評価で得られた接続構造体を高さ70cmの位置から落下させ、導通を確認することにより耐衝撃性の評価を行った。初期抵抗値からの抵抗値の上昇率が50%以下の場合を「良好」、初期抵抗値からの抵抗値の上昇率が50%を超える場合を「不良」と判定した。
結果を下記の表1,2に示す。なお、凝集状態の評価において、実施例8における大粒子率は、実施例2,4,5,7における大粒子率よりも小さかった。