以下、実施形態に係る吸収性物品について、図面を参照して説明する。本実施形態では、吸収性物品の例として軽失禁パッドについて説明する。したがって、本実施形態では、吸収性物品の吸収対象である排泄物は尿である。ただし、本発明の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されるものではなく、パンティライナー、生理用ナプキン、使い捨ておむつ(テープ型、パンツ型)のような吸収性物品に適用することができる。
図1〜図3は本実施形態に係る吸収性物品1(軽失禁パッド)の構成を示している。ただし、図1は展開した状態の吸収性物品1の構成を示す平面図である。図2は図1のII−II'線に沿う断面図である。図3は吸収性物品1の各領域を説明するための平面図である。吸収性物品1は、長手方向DL、幅方向DW及び厚さ方向DTを有し、幅方向DWの中心を通り、長手方向DLに延びる中央軸線CLと、長手方向DLの中心を通り、幅方向DWに延びる中央軸線CWを更に有している。また、図1及び図3において、向って上方を吸収性物品1の前方とし、向って下方が吸収性物品1の後方とする。
本明細書においては、中央軸線CLに向かう方向を、幅方向DWにおける内側の方向といい、中央軸線CLから遠ざかる方向を、幅方向DWにおける外側の方向という。同様に、中央軸線CWに向かう方向を、長手方向DLにおける内側の方向といい、中央軸線CWから遠ざかる方向を長手方向DLにおける外側の方向という。また、吸収性物品1の厚さ方向DTにおいて、着用者の肌対向面に対向する側(肌対向面側)に向かう方向を、肌対向面側の方向といい、着用者の肌対向面に対向する側とは反対側(非肌対向面側)に向かう方向を、非肌対向面側の方向という。
図1に示すように、本実施形態の吸収性物品1は、平面視にて、長手方向DLに延びる長辺と幅方向DWに延びる短辺を有する長方形の長手方向両端縁が円弧状に膨らんだ形状を有している。ただし、本発明において吸収性物品1の形状は、このような形状に限定されず、長手方向DLの長さ寸法が幅方向DWの幅寸法よりも長い長形状のものであれば、任意の縦長の形状(例えば、長方形、楕円形、瓢箪形など)とすることができる。
図2に示すように、本実施形態の吸収性物品1は、表面シート2(液透過性層)と、裏面シート3(液不透過性層)と、表面シート2と裏面シート3との間に位置する吸収層、すなわち吸収性シートSA1(第1の吸収層)及び消臭剤含有層SA2(第2の吸収層)を含む吸収層と、を備えている。表面シート(液透過性層)2は、厚さ方向DTにおいて着用者の肌対向面側に位置する液透過性シートである。表面シート2としては、例えば液透過性の不織布や織布、液透過孔が形成された合成樹脂フィルム、これらの複合シートなど、任意の液透過性シートが挙げられる。裏面シート3(液不透過性層)は、着用者の非肌対向面側に位置する液不透過性のシートである。裏面シート3としては、例えば液不透過性の不織布や合成樹脂フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート、SMS不織布など、任意の液不透過性シートが挙げられる。吸収性シートSA1(第1の吸収層)は、表面シート2と裏面シート3との間に位置する、液吸収性能及び液保持性能を有し、好ましくは消臭性能を有する層である。吸収性シートSA1は、本実施形態では、吸収性ポリマー6を含む吸収性材料を2枚の液透過性シート7、7’(例示:エアスルー不織布)で挟持した構成を有する。消臭剤含有層SA2(第2の吸収層)は、吸収性シートSA1と裏面シート3との間に位置する、液吸収性能、液保持性能及び消臭性能を有する層である。消臭剤含有層SA2は、本実施形態では、消臭剤(例示:シクロデキストリン)と吸収性ポリマー及び液保持性物質(例示:パルプ)の混合物とを含む消臭剤含有吸収材層4を2枚の液透過性シート(例示:ティッシュ)からなるキャリアシート5、5’(上面シート、下面シート)で挟持した構成を有する。なお、本実施形態の吸収性物品1では、吸収性シートSA1の配置位置は、表面シート2と消臭剤含有層SA2との間ならば特に制限されず、また消臭剤含有層SA2の液吸収性能や液保持性能や排泄物の拡散性能が十分であれば吸収性シートSA1を省略してもよい。
図2に示すように、本実施形態の吸収性物品1は、更に、一対のサイドギャザーシート8a,8a’と、外装シート8bと、線状弾性部材9,9’と、固定部33、33と、を備えている。一対のサイドギャザーシート8a、8a’は、表面シート2における幅方向DWの両側の表面を覆うように配置され、長手方向DLに延びる防漏壁である。一対のサイドギャザーシート8a、8a’は、表面シート2の幅方向DWの両側の表面において立設可能に折り畳まれ、幅方向DWの内側の端縁がギャザー部を形成するように自由端とされている。線状弾性部材9、9’は、一対のサイドギャザーシート8、8’の自由端の近傍に、長手方向DLに沿って延びる線状の弾性体である。線状弾性部材9、9’は、一対のサイドギャザーシート8、8’のそれぞれに2本ずつ配置され、一対のサイドギャザーシート8、8’の端縁を収縮させる。外装シート8bは、裏面シート3の非肌対向面側に接合され、その周縁部分において一対のサイドギャザーシート8a、8a’と相互に接合されている。固定部33、33は、外装シート8bにおける吸収層と反対側に、長手方向DLに沿って貼り付けられた細長い矩形状の粘着テープである。固定部33、33は、吸収性物品1の個包装時にはセパレータを介して吸収性物品1を包装シート(図示されず)に固定し、吸収性物品1の使用時には吸収性物品1を着用者の下着などに再固定する。
吸収性物品1は、図3に示すように、平面視にて、略中央の領域に、排泄口当接域TSを有している。排泄口当接域TSは、中央軸線CLを幅方向DWに跨って延在すると共に、中央軸線CWを長手方向DLに跨って延在している。本実施形態では、排泄口当接域TSの幅方向DWの中心が中央軸線CLとほぼ重なり、長手方向DLの中心が中央軸線CWとほぼ重なる。ここで、「排泄口当接域」とは、着用者が吸収性物品を着用する際に、着用者の排泄口の位置に対応する領域であり、すなわち着用者の排泄口が当接し得る領域を指し、吸収性物品の種類、具体的には、着用者から排出される尿や便、経血などの排泄物の種類、着用者の年齢や性別などに応じて、吸収性物品の種類毎に適宜設定される領域である。本実施形態では、長手方向DLに長い長方形の形状とする。なお、排泄口当接域TSは、一例としては、後述の圧搾部14の内側の領域であり、例えば吸収性物品の長手方向DLの全長の約1/3程度の長手方向長さと、吸収性物品の幅方向DWの全長の約1/3程度の幅方向長さを有する。排泄物は、着用者の排泄口から排出されると、まず主に排泄口当接域TSにおいて吸収性物品1に吸収され、次いで表面シート2及び吸収層において吸収されつつ主に長手方向DLに拡散する。
また、図3に示すように、本実施形態の吸収性物品1において、消臭剤含有層SA2は、平面視にて、吸収性物品1の長手方向DL及び幅方向DWに延在する接着剤塗工領域THと、長手方向DL及び幅方向DWに延在する消臭剤配置領域TCと、を有している。ただし、消臭剤置領域TCの長手方向DLにおける両端縁ELC、E’LC及び幅方向DWにおける両端縁EWC、E’WCは、それぞれ接着剤塗工領域THの長手方向DLにおける両端縁ELH、E’LH及び幅方向DWにおける両端縁EWH、E’WHよりも、長手方向DL及び幅方向DWにおいて内側に位置している。
ここで、「接着剤塗工領域」とは、消臭剤含有層SA2における消臭剤含有吸収材層4をキャリアシート5及び/又はキャリアシート5’に接着するための接着剤がキャリアシート5及び/又はキャリアシート5’に塗工された平面視における領域を意味する。具体的には、吸収性物品1の長手方向DL及び幅方向DWに延設される領域である。その形状は任意であるが、本実施形態では、長手方向DLの端縁ELH、E’LHと幅方向DWの端縁EWH、E’WHとを有する長方形の長手方向両端縁が円弧状に膨らんだ形状を有している。また、本実施形態では、この接着剤塗工領域THは、キャリアシート5’上に形成されている。この接着剤塗工領域THは、着用者から排出された排泄物と消臭剤との接触効率の観点から、図3に示すように、平面視にて、吸収性物品の長手方向DLに延びる中央軸線CLを幅方向DWに跨って該幅方向DWに延在すると共に、吸収性物品の幅方向DWに延びる中央軸線CWを長手方向DLに跨って該長手方向DLに延在する領域が好ましい。
また、「消臭剤配置領域」とは、所定坪量以上の消臭剤がキャリアシート5’(消臭剤保持シート)の表面上に配置された平面視における領域を意味し、具体的には、長手方向DL及び幅方向DWに延設される領域である。その形状は任意であるが、本実施形態では、長手方向DLの端縁ELC、E’LCと幅方向DWの端縁EWC、E’WCとを有する細長い長方形の形状を有している。この消臭剤配置領域TCは、着用者から排出された排泄物と消臭剤との接触効率の向上等の観点から、図3に示すように、平面視にて、吸収性物品の長手方向DLに延びる中央軸線CLを幅方向DWに跨って該幅方向DWに延在すると共に、吸収性物品の幅方向DWに延びる中央軸線CWを長手方向DLに跨って該長手方向DLに延在する領域であることが好ましい。また、本実施形態では、消臭剤配置領域TCの幅方向DWの中心が中央軸線CLとほぼ重なり、長手方向DLの中心が中央軸線CWとほぼ重なる。言い換えると、排泄口当接域TS及び消臭剤配置領域TCにおいて、幅方向DWの中心及び長手方向DLの中心がそれぞれ重なる。それにより、排泄口から排出される排出物を消臭剤配置領域TCに確実に導くことができる。
本実施形態において、吸収性物品1は、消臭剤含有層SA2内の消臭剤が、接着剤によりキャリアシート5’(下面シート)に部分的に接合されており、且つ、平面視にて、消臭剤配置領域TCの長手方向DLにおける両端縁ELC、E’LC及び幅方向DWにおける両端縁EWC、E’WCが、それぞれ接着剤塗工領域THの長手方向DLにおける両端縁ELH、E’LH及び幅方向DWにおける両端縁EWH、E’WHよりも、長手方向DL及び幅方向DWにおいて内側に位置する構造を有している。そのため、消臭剤が接着剤によってキャリアシート5’に保持されている部分では、消臭剤含有吸収材層4内の消臭剤がキャリアシート5’の面方向に移動し難くなっている。一方、消臭剤が接着剤によってキャリアシート5’に保持されていない部分では、接着剤に接触していないことに加えて、消臭剤含有吸収材層4の構成(後述)等により、消臭剤含有吸収材層4内の消臭剤がキャリアシート5’の面方向に一定程度移動することができるようになっている。すなわち消臭剤含有吸収材層4の構成等により、意図的に消臭剤の一部を移動可能に配置している。ただし、消臭剤配置領域TCの長手方向DLにおける両端縁ELC、E’LC及び幅方向DWにおける両端縁EWC、E’WCよりもそれぞれ外側に位置する接着剤により、それより外側へは移動し難くなっている。更に、接着剤によってキャリアシート5’に保持されていない消臭剤も、接着剤によってキャリアシート5’に保持された消臭剤との結合や摩擦などにより、その動きをある程度は拘束される。したがって、本実施形態の吸収性物品1は、消臭剤含有層SA2内の消臭剤を、移動可能に保持しつつ、概ね接着剤によって規定された接着剤塗工領域TH内に留めておくことができ、消臭剤が消臭剤配置領域TCを超えて偏在化するのを抑制することができる。すなわち、消臭剤が際限なく移動することを防止しつつ、所定の範囲内で移動可能にすることができる。それにより、必要な場所に、すなわち排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
図4は吸収性物品1における図1のII−II'線に沿った断面での消臭剤配置領域TCの消臭剤の分布を説明するための模式図である。横軸は幅方向DWにおける吸収性物品1での位置を示し、縦軸は消臭剤の坪量を示し、曲線BWは消臭剤の坪量の分布を示す曲線である。本実施形態では、消臭剤の坪量の分布が図4に示す曲線BWとなるように、キャリアシート5’表面に消臭剤を配置する。ただし、曲線BWは、消臭剤配置領域TCの中央領域(中央軸線CLを含む領域)でピークを有する上に凸の曲線である。消臭剤含有層SA2における消臭剤以外の材料は場所によらずほぼ同一とする。曲線BWは、例えば、中央軸線CLを含む領域にピークを有し、中央軸線CLを基準として幅方向DWに線対称な略釣鐘形状又は略台形状の曲線が挙げられる。したがって、消臭剤配置領域TCの中央領域では消臭剤の坪量が相対的に大きく、消臭剤配置領域TCの両端部領域では消臭剤の坪量が相対的に小さい。言い換えると、消臭剤配置領域TCの中央領域内の任意の位置での消臭剤の坪量は、消臭剤配置領域TCの両端部領域内での任意の位置での消臭剤の坪量より小さい。したがって、消臭剤配置領域TCは、中央領域に相対的に大きい坪量の消臭剤が、両端部領域に相対的に小さい坪量の消臭剤が、それぞれキャリアシート5’の表面上に配置された平面視における領域ということができる。
次に、消臭剤配置領域TCにおける長手方向DLの所定位置での第1方向の消臭剤の坪量の分布の変化の一例について説明する。ここでは、一例として図1のII−II'線に沿った断面における消臭剤の坪量の変化について説明する。すなわち、所定位置は中央軸線CWと中央軸線CLとの交点の位置であり、第1方向は幅方向DWである。図5は、実施形態に係る吸収性物品1の消臭剤の移動の一例を説明するための模式図であり、図1のII−II'線に沿った断面における消臭剤の坪量の変化を示している。ただし、図5(a)は吸収性物品1を使用する前(未使用時)の消臭剤の坪量の分布を示し、図4と実質的に同じである。図5(b)は吸収性物品1を使用する際に吸収性物品1を変形している途中(使用開始時)の消臭剤の坪量の分布を示す。図5(c)は吸収性物品1を使用の最中(使用時)での消臭剤の坪量の分布を示す。また、図面に向かって上下方向が鉛直方向であり、図中の図形の厚さで消臭剤の坪量を表している。
図5(a)に示すように、未使用時では、消臭剤配置領域TCの幅方向DWにおいて、中央領域の消臭剤の坪量QM0が中央領域の両側の両端部領域の消臭剤の坪量QE0よりも多くなるように(図4のように)消臭剤が予め配置されている。この場合、およそQM0>>QE0の関係がある。続いて、図5(b)に示すように、使用開始時、すなわち着用者が吸収性物品1を下着に装着するとき、例えば、吸収性物品1が着用者の両足の付け根に挟まれることなどにより、幅方向DWにおいて、中央領域で肌対向面側に凸であり、長手方向DLに延びる畝が形成されるように変形される。その結果、鉛直方向において、中央領域が相対的に高い位置となり、両端部分が相対的に低い位置となる。ここで、消臭剤含有吸収材層4内において接着剤によってキャリアシート5’に保持されていない消臭剤は、キャリアシート5’の面方向に一定程度移動することができるようになっている。したがって、中央領域が相対的に高い位置となり、両端部領域が相対的に低い位置となることにより、中央領域の消臭剤は、重力により、鉛直方向において相対的に低い位置、すなわち両端部領域へ移動することになる。それゆえ、中央領域の消臭剤の坪量が減少してQM1(<QM0)となり、両端部領域の消臭剤の坪量が増加してQE1(>QE0)となる。ただし、QM1>QE1である。更に、図5(c)に示すように、使用時では、例えば、吸収性物品1が着用者の両足の付け根の動きや振動などにより、幅方向DWにおいて中央領域で肌対向面側に更に凸の形状となるように変形される。その結果、鉛直方向において、中央領域が相対的に更に高い位置となり、両端部領域が相対的に更に低い位置となる。それに伴い、中央領域の消臭剤は、重力により、鉛直方向において相対的に低い位置、すなわち両端部領域へ更に移動することになる。すなわち、中央領域の消臭剤の坪量が減少してQM2(<QM1)となり、両端部領域の消臭剤の坪量が増加してQE2(>QE1)となる。ただし、QM2≒QE2である。
このようにして、吸収性物品1の使用時の変形や着用者の動きなどにより、吸収性物品1に、鉛直方向にて相対的に高い位置の部分と低い位置の部分とが生じると、相対的に高い位置の部分から低い位置の部分に消臭剤が移動する。そこで吸収性物品1では、相対的に高い位置になる部分の消臭剤の坪量を、相対的に低い位置になる部分の消臭剤の坪量よりも予め多くしておく。それにより、相対的に高い位置の部分から低い位置の部分に消臭剤が移動しても、坪量の多い部分から少ない部分へ消臭剤が移動するだけなので、相対的に高い位置の部分での消臭剤の量を確保できる。すなわち、使用前に消臭剤配置領域TCの消臭剤の坪量に分布を付けることで、使用時の変形や着用者の動きにより、消臭剤の坪量の不均一が生じることを抑制できる。ここで、鉛直方向において、排泄口当接域TSを通る断面における相対的に高い位置は、排泄物が排泄されたとき概ね最初に接触する(吸収する)箇所ということができる。したがって、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
ここで、着用者が吸収性物品1を下着に装着するときに肌対向面側に対して凸の状態となる吸収性物品1としては、例えば、女性用の軽失禁パッド、パンティライナー、生理用ナプキンなどが挙げられる。これらの場合、図4において説明された消臭剤の坪量の分布を有するように消臭剤配置領域TCに消臭剤を配置することが好ましい。すなわち、その分布は、中央領域で相対的に消臭剤の坪量が高く、両端部領域で相対的に消臭剤の坪量が低い分布である。例えば中央領域にピークを有する上に凸の曲線状の分布であり、具体的には略釣鐘形又は略台形の曲線状の分布が挙げられる。なお、肌対向面側に凸の畝が複数形成される場合は、消臭剤の分布を畝ごとに上記凸の曲線状の分布とすればよい。
上述の図4及び図5では、幅方向DWを第1の方向の例として説明したが、本発明はその例に限定されるものでは無く、第1の方向は他の方向であってもよいし、一つの方向だけでなく複数の方向であってもよい。他の方向の例としては、吸収性物品1の使用(開始)時に、吸収性物品1が、長手方向DLにおいて消臭剤配置領域TCの中央領域で肌対向面側に凸であり、幅方向DWに延びる畝が形成されるように変形される場合が挙げられる。この場合、長手方向DLの中央領域で消臭剤の坪量を相対的に大きくし、長手方向DLの中央領域の両側の両端部領域で消臭剤の坪量を相対的に小さくする。複数の方向の例としては、吸収層の排泄口当接域TS内に、例えば略楕円形状の嵩高部が設けられている場合が挙げられる。そのような嵩高部は全体的に山型であり、どの方向の断面でも肌対向面側に凸であり、第1の方向は全方向ということができる。
本実施形態の吸収性物品1では、消臭剤含有層SA2の消臭剤含有吸収材層4の消臭剤は、接着剤によってキャリアシート5’に保持された消臭剤(保持消臭剤)と、接着剤によってキャリアシート5’に保持されていない消臭剤(非保持消臭剤)とを含んでいる。そして、キャリアシート5(上面シート)及びキャリアシート5’(下面シート)により狭持され包摂された消臭剤含有吸収材層4内において、非保持消臭剤は、キャリアシート5(上面シート)とキャリアシート5’(下面シート)との間に移動可能に配置されており、上記図5や後述の図10のように消臭剤含有層SA2を移動できる。このように一部の消臭剤を移動可能に配置する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。すなわち、消臭剤の移動を意図しない通常の場合と比較して、キャリアシート5’上の接着剤の塗布量や塗布面積を減らしたり、塗布パターン内の隙間を多くしたりするなど接着剤との接触を減らす方法や、消臭剤含有吸収材層4内の消臭剤以外の液保持性物質などの坪量を減らしたり、消臭剤の坪量を増やしたりするなど消臭剤含有吸収材層4の消臭剤の相対密度を増やす方法や、粒子状の消臭剤の粒径を小さくしたり、表面を平滑化したりするなど消臭剤の粒子自身を移動し易くする方法や、これらの組み合わせなどが挙げられる。
それにより、その非保持消臭剤は、吸収性物品1の動き(又は姿勢)に応じて、すなわち使用者の動きや姿勢に応じて動くことができる。例えば使用者が横向きに寝ると、吸収層の横部分が鉛直下方になるので、消臭剤が重力によりその横部分に移動することができる。それにより、使用者が横向きで排泄物を放出し、排泄物が重力によりその下側の横部分へ向かった時でも、その横部分に消臭剤が予め移動しているので、排泄物の臭気を確実に抑制することができる。すなわち、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
この場合、吸収性物品1の製造工程において、消臭剤を消臭剤配置領域TCに配置する工程では、消臭剤配置領域TCでの消臭剤の坪量が上記の図4で説明された消臭剤の坪量の分布となるように、消臭剤がキャリアシート5’上に配置される。その配置方法としては、例えば幅方向DWに沿って、消臭剤配置領域TC用及びその両側の領域用にそれぞれ消臭剤供給管を配置し、消臭剤配置領域TC用の消臭剤供給管での消臭剤の供給量を多くし、その両側の領域用の消臭剤供給管での消臭剤の供給量を少なくする方法が挙げられる。あるいは、例えば、キャリアシート5’表面の領域の上方から消臭剤配置領域TCに、予め設定された運動量又はエネルギーで勢い良く消臭剤を供給することにより、消臭剤配置領域TCに消臭剤を堆積させつつ、堆積された消臭剤のうちの上部の消臭剤が崩れて消臭剤配置領域TCにおける幅方向DWの両側に拡がるようにする方法が挙げられる。
なお、本発明の吸収性物品1においては、消臭剤配置領域TCと接着剤塗工領域THとの構成は上述された構成に限定されるものではない。例えば、消臭剤配置領域TCの長手方向DLにおける両端縁ELC、E’LC又は幅方向DWにおける両端縁EWC、E’WCのいずれかが、接着剤塗工領域THの長手方向における両端縁ELH、E’LH又は幅方向DWにおける両端縁EWH、E’WHよりも、長手方向DL又は幅方向DWにおいて内側に位置する構造を有していればよい。そのような構造を有する吸収性物品においても、消臭剤含有層内の消臭剤を接着剤によって規定された接着剤塗工領域TH内に一定程度留めておくことができ、消臭剤が偏在化するのを十分に防ぐことができる。
更に、本実施形態の吸収性物品1は、吸収層(吸収性シートSA1と消臭剤含有層SA2)において、排泄口当接域TSに吸収層の嵩が周辺部よりも高い部分、すなわち嵩高部(図示せず)を備えていてもよい。嵩高部は排泄口に対応する位置に形成するために、例えば排泄口当接域TSの中央領域に形成される。嵩高部は、吸収性シートSA1及び消臭剤含有層SA2の少なくとも一方に形成される。嵩高部は、厚さ方向DTにおいて周辺部よりも厚く形成される。ここで、吸収性物品1は、使用時に着用者の両足の付け根に挟まれることなどにより上方(肌対向面側)に凸の形状となるように変形されるが、吸収性物品1のうちの厚さが厚い部分ほど変形され難く、厚さが薄い部分ほど変形されやすい。そして、本実施形態の吸収性物品1は厚さが厚い嵩高部を有しているので、嵩高部は変形されず、嵩高部の周辺部が変形されて鉛直下方に向き、全体として凸の形状となる。すなわち、嵩高部は使用時に鉛直方向に相対的に高い位置になる部分ということができる。したがって、この場合、嵩高部の坪量が周辺部の坪量よりも大きくなるように消臭剤を配置することが好ましい。それにより、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
また、本実施形態の吸収性物品1は、図3に示すように、圧搾部14を備えている。圧搾部14は、排泄口当接域TSに対して幅方向DWの外側に位置し、長手方向DLに延設されている。圧搾部14は、幅方向DLへの排泄物の拡散を抑制すると共に、長手方向DLに拡散させる。本実施形態では、圧搾部14は、エンボス加工により形成される圧搾溝であり、幅方向DWにおいて排泄口当接域TSの両外側に延設されている。また、本実施形態では、圧搾部14(圧搾溝)は、厚さ方向DTに表面シート2の表面から吸収性シートSA1の内部まで達する溝であり、圧搾溝の底部の下側部分(非肌対向面側部分)には、圧搾によって周囲よりも繊維密度の高い高密度部15が形成されている。なお、圧搾部14(圧搾溝)は、厚さ方向DTに表面シート2の表面から消臭剤含有層SA2の内部、例えばキャリアシート5まで達する溝であってもよい。
このように吸収性物品1では、幅方向DWの中央領域、すなわち鉛直方向に相対的に高い位置になる部分における幅方向DWの両外側に、消臭剤含有層SA2の内部まで達する圧搾部14(圧搾溝)が形成されている場合には、高い位置になる部分の消臭剤が幅方向DWに拡がり過ぎることを防止できる。すなわち、変形や体勢の影響により消臭剤が幅方向DWに広がり過ぎて、排泄物の排出される領域の消臭剤が不足する事態を防止できる。それにより、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
また、本実施形態の吸収性物品1は、図1に示すように、吸収性物品1を着衣に固定するために所定の間隔で配置された複数の固定部33を備えている。固定部33としては、例えば接着剤や粘着シートが挙げられる。吸収性物品1は、個包装されるときには、複数の固定部33により、略矩形状の包装シート(図示されず)に取り外し可能に固定され、その包装シートにより包装される。ただし、包装シートは、複数の固定部33と接する部分に、それぞれ剥離シート(図示されず)を有しており、吸収性物品1は包装シートに剥離可能に固定される。それにより吸収性物品1は、使用時に包装シートから剥離され、複数の固定部33により着用者の着衣に再固定される。本実施形態の吸収性物品1は、外装シート3の消臭剤含有層SA2と反対側の表面に、長手方向DLに延在し、幅方向DWの中心点(又は中央軸線CL)を挟んで所定の間隔で配置された一対の固定部33を備える。
このような構成を有する吸収性物品1では、各固定部33は着用者の着衣、例えば下着に粘着されるため、吸収性物品1における一対の固定部33に対応する部分は下着と密着することにより高い剛性を有するようになる。ここで、吸収性物品1の使用時には、吸収性物品1における着用者の鼠蹊部に対面する部分は、両足の付け根に挟まれることにより、幅方向DWにおいて両外側から内側へ圧縮される。このとき、鼠蹊部に対面する部分のうち、一対の固定部33に対応する部分は高い剛性を有するため、当該部分そのものは幅方向DWに圧縮されず、一対の固定部33の間の部分(幅方向DWの中央軸線CL上の部分に相当)が肌対向面側(上方側)に凸状に盛り上がることで、圧縮力を逃がしている。その結果、一対の固定部33に対応する部分の間に、長手方向DLに延在する凸状の畝部が形成される。すなわち、一対の固定部33の間に対応する部分が使用時に鉛直方向に相対的に高い位置になる部分ということができる。したがって、この場合、一対の固定部33の間に対応する部分、すなわち一対の固定部33に対応する部分以外の部分での消臭剤の坪量が、一対の固定部33に対応する部分での消臭剤の坪量よりも大きくなるように、消臭剤配置領域TCに消臭剤を配置することが好ましい。それにより、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保できる。
なお、吸収性物品1は、排泄口当接域TSに対して長手方向DLの外側に位置し、幅方向DWに延設された圧搾部を更に備えていてもよい。圧搾部は、厚さ方向DTに表面シート2の表面から吸収性シートSA1又は消臭剤含有層SA2の内部まで達する溝であり、エンボス加工により形成される。そのような圧搾部(圧搾溝)は、長手方向DLへの排泄物の拡散を抑制すると共に、幅方向DLに拡散させる。長手方向DLの中央領域、すなわち鉛直方向に相対的に高い位置になる部分における長手方向DLの両外側に、消臭剤含有層SA2の内部まで達する圧搾部14(圧搾溝)が形成されている場合には、高い位置になる部分の消臭剤が長手方向DLへに拡がり過ぎることを防止できる。すなわち、変形や体勢の影響により消臭剤が長手方向DLへ広がり過ぎて、排泄物の排出される領域の消臭剤が不足する事態を防止できる。それにより、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
本実施形態の吸収性物品1において、吸収性シートSA1は以下の方法で作製することができる。まず、上述の吸収性ポリマー6(吸収性材料)を、接着剤Gを塗工した2枚の液透過性シート7、7’の間の、該2枚の液透過性シート7、7’の幅方向における中央域に配置する。次に、当該吸収性ポリマー6が配置された領域(吸収性ポリマー配置領域11)の幅方向の両側に隣接する領域に、吸収性ポリマー6が存在しないように、吸収性ポリマー6を2枚の液透過性シート7、7’で挟持する。その後、その2枚の液透過性シート7、7’の幅方向における両端縁側の吸収性ポリマー6が配置されていない領域(吸収性ポリマー非配置領域12)を、それぞれ長手方向に延びる折畳み線に沿って幅方向の内側に折り畳む(いわゆる、額巻き)。以上により吸収性シートSA1は形成される。
なお、2枚の液透過性シート7、7’の幅方向DWにおける両端縁側の吸収性ポリマー非配置領域12を幅方向DWの内側に折り畳む際は、肌対向面側又は非肌対向面側のいずれの方向に折り畳んでもよい。このように吸収性ポリマー6を挟持した2枚の液透過性シート7、7’の各吸収性ポリマー非配置領域12を折り畳むことで、吸収性ポリマー6が吸収性シートSA1から漏出し難くなると共に、吸収性シートSA1の折り畳まれた部分(折畳み部)が、4層の積層構造となることによって剛性が高くなる。ここで、吸収性物品1は、使用時に両足の付け根に挟まれることにより、幅方向DWにおいて両外側から内側へ圧縮される。このとき、吸収性物品1の圧縮される部分のうち、折畳み部は高い剛性を有するため、当該部分そのものは幅方向DWに圧縮されず、両者の間の部分、すなわち吸収性シートSA1の中央部分が肌対向面側(上方側)に盛り上がるように変形することで、圧縮力を逃がしている。その結果、端部(非挟持部分)の間の中央部分(挟持部分)に、長手方向に延在する凸状の畝部が形成される。すなわち、凸状の畝部は使用時に鉛直方向に相対的に高い位置になる部分ということができる。したがって、この場合、挟持部分(凸状の畝部)に対応する消臭剤含有層SA2の消臭剤の坪量が、非挟持部分に対応する消臭剤の坪量よりも大きくなるように消臭剤を配置することが好ましい。それにより、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
次に、本実施形態における吸収性シートSA1(第1の吸収層)の材料について説明する。まず、吸収性ポリマー6を含む吸収性材料において、吸収性ポリマー6としては、水を吸収して保持することのできるポリマーであれば特に制限はないが、例えば水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有するポリマーなどが挙げられる。具体的には、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状ポリマーが挙げられる。このような吸収性ポリマーは、水だけでなく、アンモニア成分等からなる臭気も吸収するため、消臭効果も発揮することができる。また、吸収性ポリマー6として、吸収性ポリマー粒子と任意の消臭成分とを一体化した消臭成分含有吸収性ポリマーなども好適に用いることができる。なお、消臭成分は、アンモニアやジメチルアミン等の臭気成分を吸着することによって、これらの臭気成分に起因する臭気を消すことができる成分を意味する。そのような消臭成分としては、例えば、活性炭;アルミナ;ゼオライト;シクロデキストリン;銀や銅等の殺菌性金属カチオンで置換されたゼオライト、活性炭やアルミナ等の表面に殺菌作用を有する第4級アンモニウム塩化合物が付着した複合体などの殺菌性消臭成分;尿中の尿素を分解してアンモニア成分を生成する細菌を殺菌する殺菌剤含有吸収性ポリマー;又はこれら各消臭成分の2種以上の組合せが挙げられる。吸収性材料としては、上記の吸収性ポリマー6を含むものであれば特に制限はなく、当該吸収性ポリマー6のほかにパルプ等の吸水性繊維などからなる液保持性物質を含むことができる。また、液透過性シート7、7’としては、液透過性を有するシートであれば特に制限されず、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド、積層不織布(例えば、SBS不織布等)、ティッシュなどの親水性の不織布を用いることができる。
また、図2及び図3に示すように、本実施形態の吸収性物品1は、吸収性シートSA1の幅方向DWにおける両端縁側の折畳み部に、長手方向DLに延びる香料塗工領域TF、T’Fを備えており、臭気が拡散しても香りによりマスキングできる。
本発明の吸収性物品1においては、消臭剤含有層SA2の構造は上述の構造に限定されない。例えば、消臭剤含有層SA2は、粉粒物等の任意の形態のシクロデキストリンを、吸収性ポリマー及び/又は液保持性物質と共に、1枚の液透過性シートを折って挟むようにして、或いは3枚以上の液透過性シートで囲繞するようにして、或いは後述する他の実施形態のように、1枚の液透過性シート(シクロデキストリン被覆シート)で非肌対向面側から被覆するようにして、構成することができる。本発明においてキャリアシートに用いる液透過性シートは、例えば、パルプ等の細かい繊維の集合体からなる不織布(ティッシュを含む)、織布等の任意のシート状繊維構造体を用いることができる。
また、本実施形態の吸収性物品1において、消臭剤含有層SA2の消臭剤含有吸収材層4に含まれる消臭剤としては、消臭成分を含む材料が挙げられる。消臭成分は、アンモニアやジメチルアミン等の臭気成分を吸着することによって、これらの臭気成分に起因する臭気を消すことができる成分を意味する。そのような消臭成分としては、例えば、活性炭;アルミナ;ゼオライト;シクロデキストリン;銀や銅等の殺菌性金属カチオンで置換されたゼオライト、活性炭やアルミナ等の表面に殺菌作用を有する第4級アンモニウム塩化合物が付着した複合体などの殺菌性消臭成分;尿中の尿素を分解してアンモニア成分を生成する細菌を殺菌する殺菌剤含有吸収性ポリマー;又はこれら各消臭成分の2種以上の組合せが挙げられる。特に、消臭性能の面からシクロデキストリンが好ましい。
ここで、シクロデキストリンは、グルコピラノース単位がα−1,4結合によって連結された環状オリゴ糖である。本発明の吸収性物品に用いられるシクロデキストリンは、特に制限されず、α−、β−、γ−シクロデキストリン及び/又はそれらの混合物のほかに、化学修飾(例えば、メチル化やアセチル化)されたα−、β−、γ−シクロデキストリン及び/又はそれらの混合物などを用いることができる。本発明の吸収性物品に用いられるシクロデキストリンの形態は、特に制限されず、種々の形態のものを用いることができるが、分散性や製造時の取扱い易さ等の観点から、バインダーで粒径を調整したシクロデキストリン粉粒物として用いることが好ましい。
このような消臭剤含有層SA2は、消臭剤としての上記シクロデキストリンと、吸収性ポリマー及び液保持性物質の混合物とを含む消臭剤含有吸収材層4を、ホットメルト型の接着剤を用い、2枚のキャリアシート5、5’に接合することで得ることができる。具体的には、ティッシュ等からなるキャリアシート5’(消臭剤保持シート)を着用者の肌対向面側となる面を上にして、キャリアシート5’を静止した状態で又は搬送しながら、キャリアシート5’の肌対向面側の表面上に接着剤を吸収性物品1の長手方向DLに対応する方向に沿って塗工する接着剤塗工工程と、シクロデキストリンを、接着剤が塗工された接着剤塗工領域TH内の少なくとも接着剤の表面上に配置する消臭剤配置工程と、吸収性ポリマー及び液保持性物質(例示:パルプ等)の混合物を、キャリアシート5’における接着剤塗工領域TH内の少なくとも接着剤及びシクロデキストリンの表面上に配置することで、消臭剤含有吸収材層4を形成する消臭剤含有吸収材層形成工程と、消臭剤含有吸収材層4の肌対向面側の表面上に、接着剤を介して又は介さないでキャリアシート5を配置するキャリアシート配置工程と、により上述の消臭剤含有層SA2を得ることができる。
次に、他の実施形態について説明する。本実施の形態では、上記図1〜図5を用いて説明された実施形態と相違する点について主に説明する。図6は、他の実施形態の吸収性物品1における図1のII−II’線に沿う断面図である。この本実施形態に係る吸収性物品1は、以下のこと以外は、上記図1〜図5を用いて説明された実施形態と同様の構成を有している。すなわち、消臭剤(例示:シクロデキストリン)を含有する層(上記実施形態では、消臭剤含有吸収材層4)が消臭剤のみで構成された消臭剤層4’であること、該消臭剤の少なくとも一部が、表面シート2及び消臭剤層4’の間に位置する液透過性シート7’の非肌対向面側の表面(保持面)上に保持され、且つ液透過性シート7’が、保持面とは反対側の面に吸収性ポリマー6等の吸収性材料を保持して、吸収性材料の肌対向面側に配置される液透過性シート7と共に、吸収性シートSA1を形成していること、及び消臭剤が、ティッシュ等の液透過性シートからなる消臭剤被覆シート10によって、非肌対向面側から被覆されていること(すなわち、消臭剤含有層SA2が、消臭剤層4’及び消臭剤被覆シート10を含むこと)、である。
本実施形態の吸収性物品1は、消臭剤(例示:シクロデキストリン)を含有する層が消臭剤のみによって構成されているため、着用者から排出された尿などの排泄物が消臭剤に接触する機会を増大させることができると共に、消臭剤を含有する層の厚さを薄くすることができ、吸収量に応じた薄型化等の任意の製品設計を実現することができる。
次に、更に他の実施形態について説明する。本実施形態では上記図1〜図5を用いて説明された実施形態と相違する点について主に説明する。図7〜図8は本実施形態に係る吸収性物品1a(軽失禁パッド(男性用))の構成を示している。ただし、図7は展開した状態の吸収性物品1aの構成を示す平面図である。図8は図7のVIII−VIII'線に沿う断面図である。本実施形態に係る吸収性物品1aは、以下のこと以外は、上記図1〜図5を用いて説明された実施形態と同様の構成を有している。すなわち、男性用の形状をすること、消臭剤の坪量のピークが中央軸線CL上に無いこと(後述)、吸収層において吸収性シートを有さないこと、である。ただし、本実施形態の吸収性物品1aは、上記図1〜図5を用いて説明された実施形態と同様に吸収性シートを備えていてもよい。
図9は吸収性物品1における図7のVIII−VIII'線に沿う断面での消臭剤配置領域TCの消臭剤の分布を説明するための模式図である。横軸は幅方向DWにおける吸収性物品1での位置を示し、縦軸は消臭剤の坪量を示し、曲線BWは消臭剤の坪量の分布を示す曲線である。本実施形態では、消臭剤の坪量の分布が図9に示す曲線BWとなるようにキャリアシート5’表面に消臭剤を配置する。ただし、曲線BWは、消臭剤配置領域TCにおける両端部と中央軸線CLとの間の両端部領域にそれぞれピークを有する、すなわち二つのピークを有する曲線である。消臭剤含有層SA2における消臭剤以外の材料は場所によらずほぼ同一とする。したがって、消臭剤配置領域TCの両端部領域のピーク近傍では消臭剤の坪量が相対的に大きく、消臭剤配置領域TCの中央領域では消臭剤の坪量が相対的に小さい。したがって、消臭剤配置領域TCは、両端部領域に相対的に大きい坪量の消臭剤が、中央領域に相対的に小さい坪量の消臭剤が、それぞれキャリアシート5’の表面上に配置された平面視における領域ということができる。
次に、消臭剤配置領域TCにおける長手方向DLの所定位置での第1方向の消臭剤の坪量の分布の変化の一例について説明する。ここでは、一例として図7のVIII−VIII'線に沿った断面における消臭剤の坪量の変化について説明する。すなわち、所定位置は中心軸線CWと中心軸線CLとの交点の位置であり、第1方向は幅方向DWである。図10は、実施形態に係る吸収性物品1aの消臭剤の移動の一例を説明するための模式図であり、図7のVIII−VIII'線に沿った断面における消臭剤の坪量の変化を示している。ただし、図10(a)は吸収性物品1aを使用する前(未使用時)の消臭剤の坪量の分布を示し、図9と実質的に同じである。図10(b)は吸収性物品1aを使用する際に吸収性物品1aを変形している途中(使用開始時)の消臭剤の坪量の分布を示す。図10(c)は吸収性物品1aを使用の最中(使用時)での消臭剤の坪量の分布を示す。また、図面に向かって上下方向が鉛直方向であり、図中の図形の厚さで消臭剤の坪量を表している。
図10(a)に示すように、未使用時では、消臭剤配置領域TCの幅方向DWにおいて、中央領域の消臭剤の坪量QM0が中央領域の両側の両端部領域の消臭剤の坪量QE0よりも少なくなるように(図9のように)消臭剤が予め配置されている。この場合、およそQM0<<QE0の関係がある。続いて、図10(b)に示すように、使用開始時、すなわち着用者(男性)が吸収性物品1aを下着に装着すると、吸収性物品1aが着用者の陰茎及び陰嚢を包み込む。それにより、幅方向DWにおいて、中央領域で肌対向面側に凹となるような凹部が形成されるように変形される。その結果、鉛直方向において、中央領域が相対的に低い位置となり、両端部分が相対的に高い位置となる。ここで、上述のように、消臭剤含有吸収材層4内において接着剤によってキャリアシート5’に保持されていない消臭剤は、キャリアシート5’の面方向に一定程度移動することができるようになっている。したがって、中央領域が相対的に低い位置となり、両端部領域が相対的に高い位置となることにより、両端部領域の消臭剤は、重力により、鉛直方向において相対的に低い位置、すなわち中央領域へ移動することになる。それゆえ、中央領域の消臭剤の坪量が増加してQM1(>QM0)となり、両端部領域の消臭剤の坪量が減少してQE1(<QE0)となる。ただし、QE1>QM1である。更に、図10(c)に示すように使用時では、例えば吸収性物品1が着用者の体の動きや振動などにより、幅方向DWにおいて中央領域で肌対向面側に更に凹の形状となるように変形される。その結果、鉛直方向において、中央領域が相対的に更に高い位置となり、両端部領域が相対的に更に低い位置となる。それに伴い、両端部領域の消臭剤は、重力により、鉛直方向において相対的に低い位置、すなわち中央領域へ更に移動することになる。すなわち、中央領域消臭剤の坪量が増加してQM2(>QM1)となり、両端部領域の消臭剤の坪量が減少してQE2(<QE1)となる。ただし、QM2≒QE2である。
この場合にも、相対的に高い位置になる部分が、相対的に低い位置になる部分よりも消臭剤の坪量を予め多くされている。そのため、相対的に高い位置の部分から低い位置の部分に、移動可能な非保持消臭剤が移動しても、坪量の多い部分から少ない部分へ消臭剤が移動するだけなので、相対的に高い位置の部分での消臭剤の量を確保できる。したがって、吸収層の変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
ここで、着用者が吸収性物品1を下着に装着するときに肌対向面側に対して凹状態となる吸収性物品1としては、男性用の軽失禁パッド、使い捨ておむつなどが挙げられる。これらの場合、図9において説明された消臭剤の坪量の分布を有するように消臭剤配置領域TCに消臭剤を配置することが好ましい。すなわち、その分布は、中央領域で相対的に消臭剤の坪量が低く、両端部領域で相対的に消臭剤の坪量が高い分布である。
また、上記各実施形態で示される吸収性物品の吸収層は移動可能な非保持消臭剤を含んでいる。そのため、その非保持消臭剤は、吸収性物品の動き(又は姿勢)に応じて、すなわち使用者の動きや姿勢に応じて動くことができる。例えば使用者が横向きに寝ると、吸収層の横部分が鉛直下方になるので、消臭剤が重力によりその横部分に移動することができる。それにより、使用者が横向きで排泄物を放出し、排泄物が重力によりその下側の横部分へ向かった時でも、その横部分に消臭剤が予め移動しているので、排泄物の臭気を確実に抑制することができる。更に、例えば使用者が起き上がると、吸収層の中央部分が鉛直下方になるので、消臭剤が重力によりその中央部分に移動することができる。それにより、使用者が横向きから起き上がって排泄物を放出し、排泄物が重力によりその下側の中央部分へ向かった時でも、その中央部分に消臭剤が予め移動しているので、排泄物の臭気を確実に抑制することができる。すなわち、吸収層において変形や体勢の影響に拘らず、排泄物の排出される領域に適正な量の消臭剤を確保することが可能となる。
本発明の吸収性物品は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組合せや変更等が可能である。