以下、本発明の実施の形態に係る光投射装置およびディスプレイ装置について説明する。
[1]第1の実施の形態
(1)ディスプレイ装置の構成
図1は、第1の実施の形態に係るディスプレイ装置の構成を説明するための図である。図1(a)に本例のディスプレイ装置1の主要部が模式的平面図で示される。以下の説明において、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義する。X方向は観察者10から見て左から右または右から左へ向かう水平方向であり、図1では、左から右へ向かう方向を矢印Xで示す。また、Y方向は観察者10から見て上から下または下から上へ向かう鉛直方向であり、図1では、上から下へ向かう鉛直方向を矢印Yで示す。さらに、Z方向はX方向およびY方向に直交する奥行き方向であり、図1では、観察者10から遠ざかる奥行き方向を矢印Zで示す。
図1(a)に示すように、ディスプレイ装置1は、光投射装置2、スクリーン3、記憶装置4および制御装置5を備える。光投射装置2は、光発生器20および光学装置30を含む。光発生器20は、画像を形成するための光線群L0を発生する。光発生器20から発生された光線群L0が光学装置30に導かれる。光学装置30においては、光発生器20から導かれた光線群L0が複数(本例では2つ)の光線群に分配される。以下の説明では、光学装置30において分配される一方の光線群を第1の光線群L1と呼び、他方の光線群を第2の光線群L2と呼ぶ。本例では、スクリーン3として反射型のスクリーンが用いられる。光学装置30は、第1の光線群L1および第2の光線群L2を時分割でスクリーン3の前面に投射する。
記憶装置4は、例えばハードディスクまたはメモリカード等を含む。記憶装置4には、スクリーン3上に画像(本例では、平面画像)を提示するための画像データが記憶される。制御装置5は、例えばパーソナルコンピュータからなる。制御装置5は、記憶装置4に記憶される画像データに基づいて光投射装置2の光発生器20および光学装置30を制御する。
図1(b)にスクリーン3の正面図が示される。図1(b)に示すように、スクリーン3の左側の領域3aに第1の光線群L1が投射されることにより矩形状の第1の画像G1が表示される。また、スクリーン3の右側の領域3bに第2の光線群L2が投射されることにより矩形状の第2の画像G2が表示される。
本例では、第1の画像G1および第2の画像G2は重ならないように表示される。これに限らず、第1の画像G1の一部と第2の画像G2の一部とが重なってもよい。
(2)光投射装置の構成
図2は、図1の光投射装置2の構成を示す模式的横断面図である。図2に示すように、光投射装置2においては、光発生器20および光学装置30がZ方向に並ぶように配置される。光発生器20および光学装置30は互いに固定される。
光発生器20は、第1のケーシング21、空間光変調器23、投射レンズ24および光源LSを含む。本実施の形態では、空間光変調器23としてLCOS(Liquid Crystal on Silicon)が用いられる。空間光変調器23としては、LCOSに代えて、DMD(Digital Mirror Device)またはLCD(Liquid Crystal Display)等の他の空間光変調器を用いることもできる。第1のケーシング21は、空間光変調器23、投射レンズ24および光源LSを収容する。また、第1のケーシング21は、前面部21a、後面部21b、一側面部21cおよび他側面部21dを有する。
前面部21aおよび後面部21bは、XY面に平行でありかつ互いに対向する。一側面部21cおよび他側面部21dは、YZ面に平行でありかつ互いに対向する。
第1のケーシング21内の中央部に空間光変調器23が配置される。空間光変調器23は、光源LSにより発生される光を透過させるとともに透過する光線群の位相を変調することにより、画像を形成するための光線群L0を生成する。投射レンズ24と対向する前面部21aの部分に開口22が形成される。Z方向における空間光変調器23と開口22との間に投射レンズ24が配置される。本例では、投射レンズ24は、その光軸24aが空間光変調器23の中心を通るように配置される。
光学装置30は、第2のケーシング31、ビームスプリッタ35、複数(本例では3つ)のミラー36,37,38、第1の液晶シャッタ41、第2の液晶シャッタ42およびシャッタ駆動部40を含む。
第2のケーシング31は、ビームスプリッタ35およびミラー36,37,38を収容する。また、第2のケーシング31は、前面部31a、後面部31b、一側面部31cおよび他側面部31dを有する。
前面部31aおよび後面部31bは、XY面に平行でありかつ互いに対向する。一側面部31cおよび他側面部31dは、YZ面に平行でありかつ互いに対向する。
本実施の形態では、第1のケーシング21および第2のケーシング31が別個に設けられ、第1のケーシング21および第2のケーシング31が図示しない連結部材により一体的に連結されることにより、光発生器20および光学装置30が互いに固定される。これに限らず、光発生器20および光学装置30の構成要素が単一のケーシングに収容されてもよい。また、第1のケーシング21および第2のケーシング31が同一の材料(樹脂または金属)により作製される場合には、第1のケーシング21および第2のケーシング31は連結部材とともに一体成形されてもよい。
X方向における第2のケーシング31の幅W30は、X方向における第1のケーシング21の幅W20の2倍よりも小さい。本例では、第2のケーシング31の幅W30は、第1のケーシング21の幅W20と等しい。
第2のケーシング31の後面部31bの中央に開口32が形成される。ここで、X方向における第1のケーシング21の開口22および第2のケーシング31の開口32の大きさは、第2のケーシング31の幅W30と等しくてもよい。例えば、開口22,32が円形状を有する場合、開口22,32の直径は第2のケーシング31の幅W30と等しくてもよい。また、第2のケーシング31の後面部31bは形成されなくてもよい。この場合、第1のケーシング21の前面部21aには、例えば第2のケーシング31の後部開口と同じ形状を有する開口22が形成される。
光学装置30は、光発生器20の投射レンズ24の光軸24aが、開口32を通して第2のケーシング31内に向かうように配置される。
第2のケーシング31内の中央部にビームスプリッタ35が配置される。それにより、光発生器20の空間光変調器23から光線群L0が出射されると、その光線群L0は、投射レンズ24により拡げられ、第1のケーシング21の開口22および第2のケーシング31の開口32を通して、第2のケーシング31内のビームスプリッタ35に導かれる。
ビームスプリッタ35は、空間光変調器23から導かれる光線群L0を第1の光線群L1として一側面部31cに向かって反射するとともに第2の光線群L2として透過する。
前面部31aには、円形の第1の投射口33と円形の第2の投射口34とがX方向に一定距離離間するように形成されている。X方向におけるビームスプリッタ35と一側面部31cとの間にミラー36が設けられる。ミラー36は、第1の光線群L1を前面部31aの第1の投射口33に向かって反射する。また、ミラー36は、使用者によりY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。例えば、使用者は、YZ面に対するミラー36の傾きを調整することにより、第1の光線群L1が投射される向きを変化させることができる。それにより、第1の光線群L1が投射される位置が変化し、スクリーン3に表示される第1の画像G1(図1(b))の位置が調整される。
ミラー36は、さらに使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられてもよい。この場合、第1の画像G1の位置調整の自由度が向上する。なお、第2のケーシング31内においてZ方向におけるミラー36の位置は固定されている。
第2のケーシング31の前面部31aにおける第1の投射口33に第1の液晶シャッタ41が設けられる。第1の液晶シャッタ41が開状態である場合、ビームスプリッタ35により反射された第1の光線群L1は、ミラー36から第1の投射口33を通してスクリーン3に投射される。一方、第1の液晶シャッタ41が閉状態である場合、ビームスプリッタ35により反射された第1の光線群L1は、第1の液晶シャッタ41により遮られ、スクリーン3に投射されない。
Z方向におけるビームスプリッタ35と前面部31aとの間にミラー37が設けられる。また、X方向におけるミラー37と他側面部31dとの間にミラー38が設けられている。ミラー37は、YZ面に対して一定の傾き(例えば45°)を維持するように第2のケーシング31に固定され、第2の光線群L2を他側面部31dに向かって反射する。ミラー38は、ミラー37により反射された第2の光線群L2を前面部31aの第2の投射口34に向かって反射する。また、ミラー38は、ミラー36と同様に、光投射装置2の使用者によりY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。例えば、使用者は、YZ面に対するミラー38の傾きを調整することにより、第2の光線群L2が投射される向きを変化させることができる。それにより、第2の光線群L2が投射される位置が変化し、スクリーン3に表示される第2の画像G2(図1(b))の位置が調整される。
ミラー38は、さらに使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられてもよい。この場合、第2の画像G2の位置調整の自由度が向上する。なお、第2のケーシング31内においてZ方向におけるミラー37,38の位置は固定されている。
前面部31aにおける第2の投射口34に第2の液晶シャッタ42が設けられる。第2の液晶シャッタ42が開状態である場合、ビームスプリッタ35を透過した第2の光線群L2は、ミラー37,38によって反射され、第2の投射口34を通してスクリーン3に投射される。一方、第2の液晶シャッタ42が閉状態である場合、ビームスプリッタ35を透過した第2の光線群L2は、第2の液晶シャッタ42により遮られスクリーン3に投射されない。
前面部31aには、第1の液晶シャッタ41および第2の液晶シャッタ42を駆動するシャッタ駆動部40が設けられている。シャッタ駆動部40は、図1の制御装置5により制御され、第1の液晶シャッタ41および第2の液晶シャッタ42の開閉状態を一定周期で交互に切り替える。
第1の光線群L1および第2の光線群L2がそれぞれ投射されるタイミングで、空間光変調器23において生成される画像が切り替えられる。図3は、第1の画像G1および第2の画像G2が時分割でスクリーン3上に表示される場合の解像度についての効果を説明するための図である。例えば空間光変調器23により生成可能な所定面積の画像の解像度がαであるとする。
この場合、第1の画像G1および第2の画像G2が所定面積を有し、空間光変調器23において時分割で第1の画像G1および第2の画像G2が生成される場合には、図3(a)に示すように、第1の画像G1および第2の画像G2をそれぞれ解像度αでスクリーン3上に表示させることが可能である。
一方、空間光変調器23において、第1の画像G1および第2の画像G2を含む連結画像を形成する光束群を生成する場合、その連結画像の面積は上記の所定面積よりも大きいので、連結画像の解像度をαにすることはできない。したがって、図3(b)に示すように、スクリーン3上に表示される連結画像の解像度はαよりも低下する。
このように、空間光変調器23において時分割で複数の画像を生成する。それにより、低コストでスクリーン3上に表示される画像の解像度を高く維持することができる。
ここで、空間光変調器23により発生された光線群を第1の投射口33に導く経路を第1の経路L1aと呼び、空間光変調器23により発生された光線群を第2の投射口34に導く経路を第2の経路L2aと呼ぶ。また、スクリーン3から光投射装置2を見た場合に第1の光線群L1が発生したとみなされる仮想的な出射点を第1の仮想出射点VP1と呼ぶ。さらに、スクリーン3から光投射装置2を見た場合に第2の光線群L2が発生したとみなされる仮想的な出射点を第2の仮想出射点VP2と呼ぶ。
本実施の形態においては、第1の経路L1aの光路長および第2の経路L2aが等しい光路長を有するように構成される。この場合、Z方向における第1の仮想出射点VP1から第1の投射口33までの距離と、Z方向における第2の仮想出射点VP2から第2の投射口34までの距離とが等しくなる。それにより、既存の2つのプロジェクタを並べた場合と同様の機能を単一の光投射装置2を用いて実現することができる。したがって、低コストで高品質の画像を提示することが可能となる。
特に、本例の光投射装置2においては、第1の経路L1aの光路長および第2の経路L2aが等しい光路長を有するように構成されるので、第1の経路L1aおよび第2の経路L2aにそれぞれ異なる倍率のレンズを追加することなく、第1の投射口33における第1の光線群L1のXY面におけるサイズと第2の投射口34における第2の光線群L2のXY面におけるサイズとを一致させることができる。したがって、Z方向における第1の投射口33からスクリーン3までの距離と第2の投射口34からスクリーン3までの距離とが一致するように光投射装置2を配置することにより、第1の画像G1のサイズと第2の画像G2のサイズとを容易に一致させることが可能である。
スクリーン3に複数の画像をそれぞれ表示させるために、複数の画像をそれぞれ形成するための複数のプロジェクタを用いる場合には、多数のプロジェクタを正確に配置する必要がある。したがって、複数のプロジェクタの配置作業が煩雑になる。これに対して、本例の光投射装置2においては、既存の2つのプロジェクタを並べた場合と同様の機能が1つの光投射装置2を用いて実現される。したがって、スクリーン3に表示されるべき画像の数に比べて光投射装置2の数を少なくすることができる。それにより、光投射装置2の設置作業が簡素化される。
また、第1および第2の画像G1,G2にそれぞれ対応する2つのプロジェクタを用いる場合には、例えばスクリーン3に表示される第1および第2の画像G1,G2の明るさおよびサイズを均一化するために各プロジェクタの調整作業が必要となる。それにより、2つのプロジェクタの調整作業に長時間を要する。これに対して、本例の光投射装置2においては、第1の光線群L1および第2の光線群L2は、1つの光発生器20により発生される光線群L0が分配されることにより生成される。そのため、第1の光線群L1により形成される第1の画像G1の明るさと第2の光線群L2により形成される第2の画像G2の明るさとが互いに等しくなる。したがって、第1の画像G1の明るさと第2の画像G2の明るさとを均一化するための調整作業が不要となる。
また、本例の光投射装置2においては、分配される前の光線群L0が投射レンズ24により拡げられる。一方、第1の光線群L1および第2の光線群L2はレンズを通過しない。この場合、第1の経路L1aの光路長および第2の経路L2aが等しい光路長を有するので、第1の光線群L1により形成される第1の画像G1のサイズと第2の光線群L2により形成される第2の画像G2のサイズとが互いに等しくなる。したがって、第1の画像G1のサイズと第2の画像G2のサイズとを均一化するための調整作業が不要となる。
これらより、スクリーン3に表示される画像の明るさおよびサイズを調整するための調整作業が容易化する。
また、図2の光投射装置2においては、YZ面に対するミラー36,38の傾きを変化させることにより、第1の光線群L1が投射されるスクリーン3上の位置および第2の光線群L2が投射されるスクリーン3上の位置を容易に調整することができる。この場合、例えば図1(b)の第1の画像G1および第2の画像G2をスクリーン3上の共通の領域に重ねて表示させることもできる。
(3)光投射装置の変形例
(3−1)第1の変形例
上記のように、図2の光学装置30においては、第1の経路L1aおよび第2の経路L2aが等しい光路長を有するようにビームスプリッタ35およびミラー36,37,38を含む光学装置30の光学系が構成される。
図2の例に限らず、光学装置30においては、以下のように光学系の構成が決定されてもよい。図4は、光投射装置2の第1の変形例を示す模式的横断面図である。図4(a)の例では、光学装置30内に設けられたX方向におけるビームスプリッタ35と一側面部31cとの間にミラー36が設けられる。ミラー36は、ビームスプリッタ35により反射された第1の光線群L1を第1の投射口33に導く。図4(a)の例においても、図2の例と同様に、ミラー36は使用者によりY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。ミラー36は、さらに使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられてもよい。また、Z方向におけるビームスプリッタ35と前面部31aとの間にミラー37,38,39が設けられる。ミラー37,38,39は、ビームスプリッタ35を透過した第2の光線群L2をそれぞれ反射することにより、第2の光線群L2を第2の投射口34に導く。図4(a)の例では、ミラー37,38,39のうちミラー39のみが、ミラー36と同様に、使用者によりY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。ミラー39は、さらに使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられてもよい。
図4(b)の例では、X方向におけるビームスプリッタ35と一側面部31cとの間にミラー36が設けられる。ミラー36は、ビームスプリッタ35により反射された第1の光線群L1を第1の投射口33に導く。図4(b)の例においても、ミラー36は、図4(a)の例と同様に、使用者によりY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。ミラー36は、さらに使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられてもよい。また、Z方向におけるビームスプリッタ35と前面部31aとの間にミラー37,38が設けられる。ミラー37,38は、ビームスプリッタ35を透過した第2の光線群L2をそれぞれ反射することにより、第2の光線群L2を第2の投射口34に導く。図4(b)の例においては、ミラー37,38のうちミラー38のみが、図4(a)のミラー39と同様に、使用者によりY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。ミラー38は、さらに使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられてもよい。
このように、図4(a),(b)の例では、第2の経路L2aの光路長が第1の経路L1aの光路長と等しくなるように、複数のミラー37,38,39が配置される。なお、本例においても、Z方向におけるミラー36,37,38,39の位置は固定されている。
(3−2)第2の変形例
図5は、光投射装置2の第2の変形例を示す模式的断面図である。本例の光学装置30は以下の点が図2の光学装置30と異なる。本例の光学装置30においては、第2のケーシング31内に、ビームスプリッタ35およびミラー36,37,38とともに、結像レンズ51、リレーレンズ52、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54が設けられる。
具体的には、Z方向における後面部31bとビームスプリッタ35との間に結像レンズ51およびリレーレンズ52が設けられる。結像レンズ51は後面部31bとリレーレンズ52との間に位置し、光発生器20から導かれる光線群L0を収束させつつリレーレンズ52に導く。結像レンズ51とリレーレンズ52との間では、空間光変調器23において生成された画像aに基づく実像bが点線で示されるように結像される。
リレーレンズ52は、結像レンズ51から導かれた光線群L0をさらに収束させつつビームスプリッタ35へ導く。それにより、第1の経路L1a上では実像bに基づく実像c1がさらに結像される。第1の投射口33には第1の投射レンズ53が設けられている。第1の投射レンズ53は、第1の光線群L1を拡げつつ第1の経路L1aの延長線上で実像c1に基づく実像をスクリーン3に結像する。
また、第2の経路L2a上では実像bに基づく実像c2がさらに結像される。第2の投射口34には第2の投射レンズ54が設けられている。第2の投射レンズ54は、第2の光線群L2を拡げつつ第2の経路L2aの延長線上で実像c2に基づく実像をスクリーン3に結像する。
ここで、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54は、使用者によりX方向に平行な軸の周りで揺動可能かつY方向に平行な軸の周りで揺動可能に設けられる。使用者は、第1の投射口33から第1の光線群L1が投射される向きおよび第2の投射口34から第2の光線群L2が投射される向きを変化させることができる。それにより、第1の光線群L1および第2の光線群L2が投射されることによりスクリーン3に表示される第1の画像G1(図1(b))および第2の画像G2(図1(b))の位置が調整される。
また、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54は、Z方向に移動可能に設けられる。それにより、使用者は、第1の光線群L1および第2の光線群L2が投射されることによりスクリーン3に表示される第1の画像G1(図1(b))および第2の画像G2(図1(b))の大きさおよび焦点を調整することができる。
本例では、光発生器20から光学装置30に導かれる光線群L0が結像レンズ51およびリレーレンズ52により収束されつつビームスプリッタ35に導かれる。それにより、ビームスプリッタ35のサイズを大きくすることなく、ビームスプリッタ35に入射する光の量を増加させることができる。したがって、光投射装置2を大型化することなく第1の経路L1aおよび第2の経路L2aを通る第1の光線群L1および第2の光線群L2の光量の低下を防止することができる。
上記のように、本例では、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54の各々は、結像レンズ51よりも小さい直径を有する。それにより、X方向における第1の投射口33および第2の投射口34の大きさを結像レンズ51の直径よりも小さくすることができる。したがって、小さいピッチで第1の光線群L1および第2の光線群L2を投射することができる。
空間光変調器23、投射レンズ24および光源LSを含む光発生器20の構成は一般にプロジェクタとして市販されている。図5の光学装置30が市販のプロジェクタの付属品として作製される場合には、既存の1つのプロジェクタに光学装置30を取り付けることにより図5の光投射装置2と同じ構成を容易に実現することができる。例えば、既存の1つのプロジェクタに図5の光学装置30を取り付けることにより、複数(本例では2つ)の画像がスクリーン3に時分割で表示される。それにより、既存の複数のプロジェクタを並べた場合と同様の機能を既存の1つのプロジェクタを用いて容易に実現することができる。
図5に示すように、第2の変形例では、結像レンズ51とリレーレンズ52との間で画像aに基づく実像bが結像される。この場合、光線群L0は結像レンズ51から実像bが形成される位置まで収束した後、実像bが形成される位置から拡散する。実像bが形成される位置から拡散する光線群L0がリレーレンズ52が存在しない方向に拡散すると、リレーレンズ52に入射される光線群L0の量が低下する。そこで、実像bが形成される位置からリレーレンズ52に向かう光線群L0の量を増加させるために、実像bが形成される位置に光線群L0をリレーレンズ52に向かって拡散させるための光学部材を設けてもよい。光線群L0が拡散する方向を調整するための光学部材としては、例えば透光性を有する拡散板を用いることができる。
また、実像c1が形成される位置に第1の光線群L1を第1の投射レンズ53に効率的に入射させる光学部材(例えば、拡散板)を設けてもよい。さらに、実像c2が形成される位置に第2の光線群L2を第2の投射レンズ54に効率的に入射させる光学部材(例えば、拡散板)を設けてもよい。
上記のように、実像b,c1,c2が形成される位置にそれぞれ拡散板が設けられることにより、光投射装置2から投射される第1の光線群L1および第2の光線群L2の光量の低下をさらに防止することができる。
(3−3)第3の変形例
図6は、光投射装置2の第3の変形例を示す模式的断面図である。本例の光発生器20は以下の点が図2の光発生器20と異なる。本例の光発生器20においては、第1のケーシング21の内部に、空間光変調器23および投射レンズ24に代えて反射素子60が設けられる。
図7は、反射素子60の構成の一例を示す模式図である。図7の反射素子60は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)により作製される。反射素子60は、支持枠61、可動枠62および反射部材63により構成される。支持枠61は、XY面上に配置される。図7では、支持枠61、可動枠62および反射部材63の部分がドットパターンで示される。
ここで、X方向に平行でかつY方向における反射素子60の中心を通る軸を第1の回転軸60xと呼び、Y方向に平行でかつX方向における反射素子60の中心を通る軸を第2の回転軸60yと呼ぶ。
可動枠62は、矢印qで示すように、第1の回転軸60xを中心として回転可能に支持枠61に取り付けられる。反射部材63は、矢印rで示すように、第2の回転軸60yを中心として回転可能に可動枠62に取り付けられる。反射部材63の一面が反射面64となる。反射面64の一辺の長さは、例えば0.5mm〜1mm程度である。
このような構成により、反射面64は、第2の回転軸60yを中心として揺動可能に設けられるとともに、第1の回転軸60xを中心として揺動可能に設けられる。ここで、光線とは、拡散しない直線で表される光をいう。これにより、反射面64に入射した光線をXZ面内の任意の角度およびYZ面内の任意の角度で反射させることが可能となる。
本例では、光源LSからの光線Lを反射素子60の反射面64に照射している間に、第1の回転軸60xを中心として反射面64を一定角度に傾斜させた状態で第2の回転軸60yを中心として反射面64を順次異なる複数の角度に傾斜させる。次に、第1の回転軸60Xを中心とする反射面64の傾斜角度を変更した後、第2の回転軸60Yを中心として反射面64を順次異なる複数の角度に傾斜させる。この操作を繰り返し行うことにより、一定時間内に反射面64から複数の異なる方向に光線が投射される。
このように、光源LSからの光線Lを反射素子60の反射面64に照射した状態で、反射面64を第2の回転軸60Yおよび第1の回転軸60Xを中心として揺動させることにより、光線Lを反射面64で異なる複数の方向に時分割で反射させることができる。それにより、光投射装置2においては、擬似的に複数の光線からなる光線群L10が光学装置30に向かって出射される。
光学装置30においては、光線群L10が光学装置30のビームスプリッタ35に導かれる。ビームスプリッタ35では、図2の光学装置30と同様に、反射素子60から導かれる光線群L10が第1の光線群L11および第2の光線群L12に分配される。第1の光線群L11はミラー36により第1の投射口33に導かれる。また、第2の光線群L12はミラー37,38により第2の投射口34に導かれる。
図6の例においても、MEMS60により発生された光線群を第1の投射口33に導く経路を第1の経路L1aと呼び、MEMS60により発生された光線群を第2の投射口34に導く経路を第2の経路L2aと呼ぶ。
シャッタ駆動部40が第1の液晶シャッタ41および第2の液晶シャッタ42を駆動することにより、第1の光線群L11および第2の光線群L12が時分割でスクリーン3の前面に投射される。それにより、第1の光線群L11が投射されることにより第1の画像G1(図1)がスクリーン3に表示されるとともに、第2の光線群L12が投射されることにより第2の画像G2(図1)がスクリーン3に表示される。
(3−4)第4の変形例
図2の光学装置30においては、光投射装置2から導かれる光線群L0が第1の光線群L1および第2の光線群L2に分配される。これに限らず、光学装置30では、光投射装置2から導かれる光線群L0が3つ以上の光線群に分配されてもよい。
図8は、光投射装置2の第4の変形例を説明するための図である。図8では、光学装置30の内部構造を示す一部切り欠き斜視図が示される。本例の光学装置30においては、第2のケーシング31の前面部31aに第1の投射口33、第2の投射口34、第3の投射口81および第4の投射口82が形成される。前面部31aを第2のケーシング31の内側から見た場合に、第1の投射口33は前面部31aの左上の領域に形成され、第2の投射口34は前面部31aの右上の領域に形成される。また、第3の投射口81は前面部31aの左下の領域に形成され、第4の投射口82は前面部31aの右下の領域に形成される。
また、第2のケーシング31内には、光投射装置2から導かれる光線群L0を第1の光線群L1、第2の光線群L2、第3の光線群L3および第4の光線群L4に分配するための3つのビームスプリッタ35a,35b,35cが設けられる。さらに、第2のケーシング31内には、3つのビームスプリッタ35a,35b,35cにより分配された第1の光線群L1、第2の光線群L2、第3の光線群L3および第4の光線群L4をそれぞれ第1の投射口33、第2の投射口34、第3の投射口81および第4の投射口82を通してスクリーン3に導くための図示しない複数のミラーが設けられる。
ビームスプリッタ35a,35b,35cは、投射レンズ24(図2)の光軸24a(図2)上で並ぶように配置される。ビームスプリッタ35a,35b,35cのうちビームスプリッタ35aは前面部31aから最も離れた場所に位置し、ビームスプリッタ35cは前面部31aに最も近い場所に位置する。
ビームスプリッタ35aは、空間光変調器23から導かれる光線群L0を第1の光線群L1として後面部31bから見て左斜め上方に向かう方向に反射する。また、ビームスプリッタ35aは、光線群L0の残りの部分を透過する。ビームスプリッタ35aにより反射された第1の光線群L1は、図示しないミラーにより第1の投射口33に導かれる。本例においても、空間光変調器23(図2)により発生された光線群を第1の投射口33に導く経路を第1の経路L1aと呼ぶ。
ビームスプリッタ35bは、ビームスプリッタ35aを透過した光線群L0を第2の光線群L2として後面部31bから見て右斜め上方に向かう方向に反射する。また、ビームスプリッタ35bは光線群L0の残りの部分を透過する。ビームスプリッタ35bにより反射された第2の光線群L2は、図示しないミラーにより第2の投射口34に導かれる。本例においても、空間光変調器23(図2)により発生された光線群を第2の投射口34に導く経路を第2の経路L2aと呼ぶ。
ビームスプリッタ35cは、ビームスプリッタ35bを透過した光線群L0を第3の光線群L3として後面部31bから見て左斜め下方に向かう方向に反射する。また、ビームスプリッタ35cは光線群L0の残りの部分を透過する。ビームスプリッタ35cにより反射された第3の光線群L3は、図示しないミラーにより第3の投射口81に導かれる。本例では、空間光変調器23(図2)により発生された光線群を第3の投射口81に導く経路を第3の経路L3aと呼ぶ。
ビームスプリッタ35cを透過した光は、第4の光線群L4として図示しないミラーにより後面部31bから見て右斜め下方に向かう方向に反射される。その後、第4の光線群L4は、さらに図示しないミラーにより第4の投射口82に導かれる。本例では、空間光変調器23(図2)により発生された光線群を第4の投射口82に導く経路を第4の経路L4aと呼ぶ。
本例では、第1の経路L1aの光路長、第2の経路L2aの光路長、第3の経路L3aの光路長および第4の経路L4aの光路長が互いに等しくなるように、ビームスプリッタ35a,35b,35cおよび図示しないミラーの配置が決定される。
本例の光学装置30はさらに第1の液晶シャッタ41、第2の液晶シャッタ42、第3の液晶シャッタ83、第4の液晶シャッタ84および図示しないシャッタ駆動部を有する。シャッタ駆動部が第1〜第4の液晶シャッタ41,42,83,84を駆動することにより、第1〜第4の光線群L1〜L4が時分割でスクリーン3の前面に投射される。
図9は、図8の光投射装置2から第1〜第4の光線群L1〜L4が投射された状態を示すスクリーン3の正面図である。図9に示すように、スクリーン3の左上の領域3aに第1の光線群L1が投射されることにより矩形状の第1の画像G1が表示される。また、スクリーン3の右上の領域3bに第2の光線群L2が投射されることにより矩形状の第2の画像G2が表示される。また、スクリーン3の左下の領域3cに第3の光線群L3が投射されることにより矩形状の第3の画像G3が表示される。また、スクリーン3の右下の領域3dに第4の光線群L4が投射されることにより矩形状の第4の画像G4が表示される。
本例では、第1の画像G1〜第4の画像G4は重ならないように表示される。これに限らず、第1の画像G1の一部と他の画像G2〜G4の一部とが重なってもよい。第2の画像G2の一部と他の画像G3,G4の一部とが重なってもよい。第3の画像G3の一部と他の画像G4の一部とが重なってもよい。
上記のように、スクリーン3に第1〜第4の画像G1〜G4を時分割で表示する場合には、スクリーン3上に高い解像度を有する高品質の画像を表示させることができる。
ここで、スクリーン3から図8の光投射装置2を見た場合に第1の光線群L1を出射するとみなされる仮想的な出射点を第1の仮想出射点と呼ぶ。また、スクリーン3から光投射装置2を見た場合に第2の光線群L2を出射するとみなされる仮想的な出射点を第2の仮想出射点と呼ぶ。また、スクリーン3から光投射装置2を見た場合に第3の光線群L3を出射するとみなされる仮想的な出射点を第3の仮想出射点と呼ぶ。また、スクリーン3から光投射装置2を見た場合に第4の光線群L4を出射するとみなされる仮想的な出射点を第4の仮想出射点と呼ぶ。
この場合、本例においても、第1の仮想出射点から第1の投射口33までの距離、第2の仮想出射点から第2の投射口34までの距離、第3の仮想出射点から第3の投射口81までの距離および第4の仮想出射点から第4の投射口82までの距離が互いに等しくなる。したがって、既存の4つのプロジェクタを並べた場合と同様の機能を単一の光投射装置2を用いて実現することができる。したがって、低コストでより高品質の画像を提示することが可能となる。
(4)第1の実施の形態の効果
上記のように、本実施の形態に係る光投射装置2においては、複数の経路が等しい光路長を有するように光学装置30の光学系が構成されるので、複数の光線群を出射する複数の仮想的な出射点と複数の投射口との距離が等しくなる。それにより、既存の複数のプロジェクタを並べた場合と同様の機能を単一の光投射装置2を用いて実現することができる。したがって、低コストで高品質の平面画像を提示することが可能となる。また、スクリーン3に表示されるべき画像の数に比べて光投射装置2の数を少なくすることができる。それにより、光投射装置2の設置作業が単純化する。さらに、スクリーン3に表示される画像の明るさおよびサイズを調整するための調整作業が容易化する。
[2]第2の実施の形態
(1)立体ディスプレイの構成
第2の実施の形態では、ディスプレイ装置の一例として、立体ディスプレイを説明する。図10は、第2の実施の形態に係る立体ディスプレイの構成を説明するための図である。図10(a)に本例の立体ディスプレイ1Aの主要部が模式的平面図で示される。以下の説明においても、第1の実施の形態と同様に、互いに直交する3つの方向をX方向、Y方向およびZ方向と定義する。
図10(a)に示すように、本例の立体ディスプレイ1Aは、複数の光投射装置2、平面形状の光線制御子6、記憶装置4および制御装置5を備える。図10(b)に立体ディスプレイ1Aに用いられる複数の光投射装置2のうちの1つの模式的断面図が示される。各光投射装置2は、X方向における第1の投射口33および第2の投射口34の位置関係が逆になるように構成される点を除いて図6の光投射装置2と同じ構成を有する。また、立体ディスプレイ1Aにおいては、複数の光投射装置2は、第1の投射口33および第2の投射口34がX方向に交互に並ぶように、X方向に沿って配列される。光投射装置2は、第1の投射口33および第2の投射口34から擬似的に複数の光線からなる第1の光線群L11および第2の光線群L12を光線制御子6に投射する。
図10(b)に太い矢印で示すように、各光投射装置2においては、YZ面に対するミラー36,38の傾きが調整される。それにより、光線制御子6の予め定められた領域に第1の光線群L11および第2の光線群L12が正確に投射される。
光線制御子6は、複数の光投射装置2の第1の投射口33および第2の投射口34から投射される光線を透過させつつ一定角度範囲内で拡散させるように複数の光投射装置2の前方(手前)に配置される。光線制御子6の機能の詳細については、後述する。
以下の説明においては、図2の例と同様に、光線制御子6から光投射装置2を見た場合に第1の光線群L11を出射したとみなされる仮想的な出射点を第1の仮想出射点VP1と呼ぶ。また、光線制御子6から光投射装置2を見た場合に第2の光線群L12を出射したとみなされる仮想的な出射点を第2の仮想出射点VP2と呼ぶ。複数の第1の仮想出射点VP1および複数の第2の仮想出射点VP2は、Z方向における共通の位置でX方向に並ぶように配置される。
記憶装置4には、立体画像300を提示するための立体形状データが記憶される。制御装置5は、記憶装置4に記憶される立体形状データに基づいて光投射装置2を制御する。それにより、光線制御子6の前方(手前)および後方(背後)の空間に立体画像300が提示される。
(2)光線制御子6の構成
光線制御子6は、アクリルまたはポリカーボネート等からなる平面状の透明シートにより形成される。透明シートの一面または両面には、X方向に延びる複数の直線状レンズがY方向に密に並ぶように設けられている。各直線状レンズは、例えばかまぼこ形の垂直断面を有する。
光線制御子6は、光線を透過させつつX方向において(XZ面内で)第1の角度範囲で微小拡散させ、光線を透過させつつY方向において(YZ面内で)第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲で拡散させる機能を有する。
光線制御子6は、複数の光投射装置2の第1の投射口33および第2の投射口34からの光線をそれぞれX方向において第1の角度範囲で微小拡散させて透過させるので、観察者10は、X方向の任意の位置で、光投射装置2から観察者10に向かうある方向の一本の光線のみを視認することができる。
また、光線制御子6は、各光投射装置2の第1の投射口33または第2の投射口34からの光線をY方向において第1の角度範囲よりも大きい第2の角度範囲で拡散させて透過させるので、観察者10は、一本の光線を上下方向の任意の位置から視認することができる。
(3)第2の実施の形態の効果
図11は、第2の実施の形態に係る立体ディスプレイ1Aの効果を説明するための図である。例えば、立体ディスプレイに図10(a)の複数の光投射装置2に代えて図5の光発生器20と同じ構成を有する複数のプロジェクタprを用いる場合を想定する。図11(a)に複数の光投射装置2に代えて複数のプロジェクタprを用いた立体ディスプレイの模式的平面図が示され、図11(b)に複数のプロジェクタprの正面図が示される。
複数のプロジェクタprのレンズおよびケース等の部品の物理的な制約により、複数のプロジェクタprから出射される光線群の出射点TPを図10(a)の複数の第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2と同じピッチでX方向に密に配置することは難しい。
そこで、図11(a),(b)に示すように、複数のプロジェクタprを用いる場合には、複数のプロジェクタprをY方向で複数段(本例では2段)に配置するとともにX方向において複数のプロジェクタprの出射点TPが重ならないように配置する方法が考えられる。この方法によれば、Y方向に配置される複数のプロジェクタprの段数を増加させることにより、各プロジェクタprの物理的な制約によらず、複数のプロジェクタprの出射点TPをX方向に密に配置することが可能となる。
図11(c)に図11(a)の立体ディスプレイの模式的側面図が示される。図11(c)の例では、上段のプロジェクタprから光線制御子6の中心部PSに向かって投射される光線Laは上方から下方に向かうようにZ方向に進行する。一方、下段のプロジェクタprから光線制御子6の中心部PSに向かって投射される光線Lbは、下方から上方に向かうようにZ方向に進行する。光線制御子6の中心部PSにおいて透過される光線La,Lbは点線で示されるようにYZ面内で拡散される。
光線制御子6の後方の空間では、光線制御子6を透過する光線Laの輝度分布は、上段のプロジェクタprから中心部PSに向かって光線Laが進行する直線上で最も大きく、その直線から離れるにつれて小さくなる。同様に、光線制御子6を透過する光線Lbの輝度分布は、下段のプロジェクタprから中心部PSに向かって光線Lbが進行する直線上で最も大きく、その直線から離れるにつれて小さくなる。
そのため、観察者10の視点が光線制御子6の中心部PSよりも低い位置Eaにある場合、観察者10は上段のプロジェクタprから投射される光線Laにより形成される画像を明るいと認識し、下段のプロジェクタprから投射される光線Lbにより形成される画像を暗いと認識する。一方、観察者10の視点が光線制御子6の中心部PSよりも高い位置Ebにある場合、観察者10は上段のプロジェクタprから投射される光線Lbにより形成される画像を明るいと認識し、下段のプロジェクタprから投射される光線Laにより形成される画像を暗いと認識する。このように、複数のプロジェクタprがY方向で複数段に配置される場合には、観察位置によって立体画像300の画質にむらが生じる。
これに対して、本実施の形態に係る立体ディスプレイ1Aにおいては、複数の光投射装置2をY方向で複数段に配置することなく、複数の光投射装置2の第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2をX方向に密に配置することが可能である。それにより、X方向に微小拡散させる光線制御子6の第1の角度範囲を小さくしても、光線制御子6を透過した複数の光線間にX方向における隙間が実質的に形成されにくくなる。光線制御子6において第1の角度範囲が小さくなると、立体画像300がX方向において精細に提示される。また、Y方向における観察位置によって立体画像300の画質にむらが生じることが防止される。
これらの結果、低コストでX方向の任意の位置の観察者10に間隙(途切れ)のない高品質の立体画像300を提示することが可能となる。
[3]第3の実施の形態
(1)立体ディスプレイの構成
第3の実施の形態においても、第2の実施の形態と同様に、ディスプレイ装置の一例として、立体ディスプレイを説明する。図12は第3の実施の形態に係る立体ディスプレイの模式的縦断面図である。図13は第3の実施の形態に係る立体ディスプレイの主要部の模式的平面図である。
第3の実施の形態に係る立体ディスプレイ1Bが第2の実施の形態に係る立体ディスプレイ1Aと異なるのは、以下の点である。
図12および図13の立体ディスプレイ1Bは、複数の光投射装置2、記憶装置4(図10(a)参照)、制御装置5(図10(a)参照)および光線制御子7を備える。また、立体ディスプレイ1Bは、テーブル9に設けられる。テーブル9は、天板91および複数の脚92からなる。天板91は、円形孔部を有する。
光線制御子7は、上下方向の軸500を中心として回転対称な円錐台形状を有する。光線制御子7の大径の底部および小径の底部は開口している。光線制御子7は、入射した光線を透過させつつ軸500を中心とする円周方向において第3の角度範囲で微小拡散させ、光線を透過させつつ稜線方向において第3の角度範囲よりも大きい第4の角度範囲で拡散させる機能を有する。光線制御子7は、大径の底部開口が上方を向くように天板91の円形孔部に嵌め込まれる。
テーブル9の下方には、複数の光投射装置2が、各光投射装置2の第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2が軸500を中心とする円周上に位置するように配置されている。複数の光投射装置2は、光線制御子7の斜め下方から光線制御子7の外周面に光線を照射するように設けられる。
各光投射装置2は、擬似的に複数の光線からなる第1の光線群L11および第2の光線群L12を第1の投射口33および第2の投射口34から時分割で投射する。光投射装置2の構成および動作は、図6の光投射装置2と同じである。
テーブルの周囲にいる観察者は、テーブルの天板の斜め上方から光線制御子7の内周面を観察することができる。
制御装置5(図10(a))は、記憶装置4(図10(a))に記憶される立体形状データに基づいて複数の光投射装置2を制御する。それにより、光線制御子7の内部および上方に立体画像300が提示される。
(2)第3の実施の形態の効果
本実施の形態では、各光投射装置2の第1の仮想出射点VP1と第2の仮想出射点VP2とがY方向に平行な軸500を中心とする円周上に位置する。図14は、第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2の位置関係についての効果を説明するための図である。例えば、1つの光投射装置2の第1の仮想出射点VP1が図12の天板91よりも下方の位置で軸500を中心とする円周cr1上に配置され、第2の仮想出射点VP2が天板91よりも下方の位置で軸500を中心とする円周cr1上に位置しない場合を想定する。
この場合、図14(a)に示すように、図12の天板91よりも上方でかつ軸500を中心とする円周cr2上の第1の位置p1からは第1の仮想出射点VP1が右に見え、第2の仮想出射点VP2が左に見える。一方、天板91よりも上方でかつ軸500を中心とする円周cr2上の第2の位置p2からは第1の仮想出射点VP1が左に見え、第2の仮想出射点VP2が右に見える。すなわち、見る位置により第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2の位置関係が変化する。また、第1の仮想出射点VP1および第2の位置p2を通る直線と第2の仮想出射点VP2および第2の位置p2を通る直線とがなす角度は、第1の仮想出射点VP1および第1の位置p1を通る直線と第2の仮想出射点VP2および第1の位置p1を通る直線とがなす角度に比べて著しく小さくなる。この場合、観察位置によっては観察者10が立体画像300の立体形状を適切に認識することができなくなる。
一方、上記のように、1つの光投射装置2の第1および第2の仮想出射点VP1,VP2が図12の天板91よりも下方の位置で軸500を中心とする円周cr1上に位置する場合を想定する。この場合、図14(b)に示すように、第1の位置p1および第2の位置p2のいずれの位置からも第1の仮想出射点VP1が右に見え、第2の仮想出射点VP2が左に見える。すなわち、光線制御子7を通して第1および第2の仮想出射点VP1,VP2を視認する場合には、円周cr2上のいずれの位置から見ても第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2の位置関係が変化しない。さらに、第1の仮想出射点VP1および第2の位置p2を通る直線と第2の仮想出射点VP2および第2の位置p2を通る直線とがなす角度は、第1の仮想出射点VP1および第1の位置p1を通る直線と第2の仮想出射点VP2および第1の位置p1を通る直線とがなす角度とほぼ等しい。それにより、観察者10はいずれの方向から光線制御子7を見た場合でも、立体画像300の立体形状を適切に認識することができる。
上記のように、本実施の形態に係る立体ディスプレイにおいては、複数の光投射装置2の第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2を円周方向に密に配置することが可能となる。また、複数の光投射装置2の第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2から光線制御子7に向かうように投射された光線が光線制御子7により円周方向おいて微小拡散される。したがって、円周方向において隙間のない光線群が形成される。その結果、低コストで円周方向の任意の位置の観察者10に間隙(途切れ)のない高品質の立体画像300を提示することが可能となる。
[4]他の実施の形態
(1)第1の実施の形態では、スクリーン3として反射型のスクリーンが用いられる。これに限らず、スクリーン3としては、反射型のスクリーンに代えて透過型のスクリーンを用いてもよい。この場合、第1の光線群L1および第2の光線群L2に基づく第1の画像G1および第2の画像G2がスクリーン3の後面に表示される。観察者10は、スクリーン3の後面を見ることにより第1の画像G1および第2の画像G2を視認することができる。
(2)第2の実施の形態では、光線制御子6は、複数の光投射装置2の前方(手前)に配置され、複数の光投射装置2から投射される光線を透過させつつ一定角度範囲内で拡散させる。それにより、光線制御子6の前方および後方の空間に立体画像300が提示される。観察者10は、光線制御子6の後面を見ることにより立体画像300を視認することができる。
これに限らず、立体ディスプレイ1Aにおいては、反射材が光線制御子6の後面に設けられてもよい。この場合、光線制御子6を透過して反射材により反射され、再び光線制御子6を透過する複数の光線群により光線制御子6の前方に立体画像300が提示される。観察者10は、Z方向における複数の光投射装置2と光線制御子6との間の位置から光線制御子6の前面を見ることにより立体画像300を視認することができる。
(3)第3の実施の形態においても、光線制御子7は、複数の光投射装置2の前方(手前)に配置され、複数の光投射装置2から投射される光線を透過させつつ一定角度範囲内で拡散させる。観察者10は、光線制御子7の内周面を見ることにより立体画像300を視認することができる。
これに限らず、立体ディスプレイ1Bにおいては、反射材が光線制御子7の外周面に設けられるとともに複数の光投射装置2が光線制御子7の斜め上方から光線制御子7の内周面に光線を照射するように設けられてもよい。このとき、各光投射装置2の第1の仮想出射点VP1および第2の仮想出射点VP2を軸500を中心とする円周上に配置する。この場合、光線制御子7の内周面から光線制御子7を透過して反射材により反射され、再び光線制御子7を透過する複数の光線群により光線制御子7の内部に立体画像300が提示される。それにより、観察者10は、光線制御子7の内周面を見ることにより立体画像300を視認することができる。
(4)上記の第1の実施の形態における第2の変形例(図5)では、第2のケーシング31内に、ビームスプリッタ35およびミラー36,37,38とともに、結像レンズ51、リレーレンズ52、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54が設けられる。
上記の構成要素のうち、リレーレンズ52は設けられなくてもよい。この場合、例えば第2のケーシング31内では、空間光変調器23により生成された画像に基づく実像が結像レンズ51とビームスプリッタ35との間の第1および第2の経路L1a,L2a上で結像される。または、空間光変調器23により生成された画像に基づく実像がビームスプリッタ35と第1の投射口33との間の第1の経路L1a上およびビームスプリッタ35と第2の投射口34との間の第2の経路L2a上で結像される。
その後、第1の投射レンズ53は、第1の光線群L1を拡げつつ第1の経路L1a上で結像された実像に基づく実像をスクリーン3に結像する。また、第2の投射レンズ54は、第2の光線群L2を拡げつつ第2の経路L2a上で結像された実像に基づく実像をスクリーン3に結像する。
(5)上記の例の他、第1の実施の形態における第2の変形例(図5)の光投射装置2においては、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54は設けられなくてもよい。
この場合、光線群L0を拡げるようにリレーレンズ52を構成する。それにより、リレーレンズ52が結像レンズ51から導かれた光線群L0を拡げつつビームスプリッタ35へ導き、結像レンズ51により結像された実像に基づく実像を第1の光線群L1および第2の光線群L2によりスクリーン3に結像する。
(6)上記の第1〜第3の実施の形態では、光発生器20から光学装置30に導かれる光線群L0から第1の光線群L1および第2の光線群L2がビームスプリッタ35により分配される。また、光線群L10から第1の光線群L11および第2の光線群L12が分配される。
これに限らず、第1の光線群L1または第1の光線群L11と第2の光線群L2または第2の光線群L12とが以下の構成により光線群L0,L10から分配されてもよい。
例えば、図2のビームスプリッタ35が設けられる位置に、ビームスプリッタ35に代えてY方向に平行な軸の周りで揺動可能なミラーを設けてもよい。この場合、ミラーをYZ面に対して45°傾斜させることにより光発生器20からの光線群L0を第1の光線群L1として第1の投射口33に導くことができる。一方、ミラーをYZ面に対して平行にすることにより光発生器20からの光線群L0を第2の光線群L2として第2の投射口34に導くことができる。したがって、一定の周期でYZ面に対するミラーの傾きを変更することにより、光量を低下させること無く光線群L0から第1の光線群L1および第2の光線群L2を分配することができる。
この場合、第1の投射口33および第2の投射口34に交互に光が導かれるので、第1の液晶シャッタ41、第2の液晶シャッタ42およびシャッタ駆動部40が不要となる。
上記の例の他、図2のビームスプリッタ35が設けられる位置に、ビームスプリッタ35に代えて電気的に光学特性を変化させることが可能な調光ミラーを設けてもよい。調光ミラーは、例えば電圧が印加されない状態で光を反射し、所定レベルの電圧が印加されることにより光を透過する。
この場合、調光ミラーをYZ面に対して45°傾斜させて配置する。この状態で、調光ミラーに所定レベルの電圧を印加する。それにより、光発生器20からの光線群L0を第1の光線群L1として第1の投射口33に導くことができる。一方、調光ミラーへの電圧の印加を停止する。それにより、光発生器20からの光線群L0を第2の光線群L2として第2の投射口34に導くことができる。
(7)上記の第1〜第3の実施の形態では、切り替え手段として、第1の液晶シャッタ41、第2の液晶シャッタ42、第3の液晶シャッタ83、第4の液晶シャッタ84およびシャッタ駆動部40を用いているが、これに限定されない。切り替え手段としては、第2のケーシング31の前面部31aに設けられる複数の投射口のいずれか1つから出射される光を通過させつつ複数の投射口の残りの投射口から出射される光を遮ることが可能な機構を有する他の構成を用いてもよい。
具体的には、切り替え手段として、円盤形状の遮光部材および回転駆動部を用いてもよい。本例の遮光部材には1つの開口が形成される。この場合、第2のケーシング31の前面部31aにおいて、複数の投射口の中心を通る軸の周りで回転可能となるようにかつ遮光部材の1つの開口が複数の投射口のいずれか1つに重なるように遮光部材を設ける。この状態で、回転駆動部により遮光部材を回転させることにより、複数の投射口から時分割で複数の光を投射させることができる。
上記の例の他、複数の投射口の各々に機械的に開閉可能なシャッタを設けてもよい。この場合、複数のシャッタの開閉状態を個別に制御することにより、複数の投射口から時分割で複数の光を投射させてもよい。
(8)上記の第1の実施の形態では、光発生器として、空間光変調器23を備える光投射装置2およびMEMSを備える光投射装置2を用いているが、これに限定されない。光発生器としては、複数のレンズからなるレンズアレイ等の投影系を備えた一般的な光投射装置を用いることもできる。
(9)上記の第2および第3の実施の形態では、光発生器として、MEMSを備える反射素子60を用いているが、これに限定されない。光発生器としては、LCOS、DMDまたはLCD等の空間光変調器および複数のレンズからなるレンズアレイ等の投影系を備えた一般的な光発生装置を用いることもできる。この場合、光投射装置2の第1の投射口33から異なる方向の複数の光線を同時に投射することができる。また、光投射装置2の第2の投射口34から異なる方向の複数の光線を同時に投射することができる。
[5]請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
上記第1〜第3の実施の形態では、第1の画像G1、第2の画像G2、第3の画像G3、第4の画像G4および立体画像300が画像の例であり、光線群L0、第1の光線群L1、第2の光線群L2、第3の光線群L3、第4の光線群L4、光線群L10、第1の光線群L11および第2の光線群L12が光線群の例である。
また、光発生器20が光発生器の例であり、光学装置30が光学装置の例であり、第1の投射口33、第2の投射口34、第3の投射口81および第4の投射口82が複数の投射口の例であり、第1の経路L1a、第2の経路L2a、第3の経路L3aおよび第4の経路L4aが複数の経路の例である。
また、ビームスプリッタ35、ミラー36,37,38,39、結像レンズ51、リレーレンズ52、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54が光学系の例であり、シャッタ駆動部40、第1の液晶シャッタ41、第2の液晶シャッタ42、第3の液晶シャッタ83および第4の液晶シャッタ84が時分割手段の例であり、閉状態が第1の状態の例であり、開状態が第2の状態の例であり、第1の液晶シャッタ41、第2の液晶シャッタ42、第3の液晶シャッタ83および第4の液晶シャッタ84が複数の光遮断手段の例である。
また、シャッタ駆動部40が切り替え手段の例であり、ビームスプリッタ35,35a,35b,35cが光分配手段の例であり、ミラー36,37,38,39が複数の光学部材の例であり、ミラー36,37,38,39が複数の反射部材の例であり、投射レンズ24が第1のレンズの例であり、結像レンズ51が第2のレンズの例であり、リレーレンズ52または第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54が1または複数の第3のレンズの例であり、第1の投射レンズ53および第2の投射レンズ54が複数の第4のレンズの例である。
また、スクリーン3および光線制御子6,7がスクリーンの例であり、光投射装置2が1または複数の光投射装置の例であり、第1の画像G1、第2の画像G2、第3の画像G3および第4の画像G4が平面画像の例であり、立体画像300が立体画像の例であり、制御装置5が制御装置の例である。
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。