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JP6314819B2 - 車両 - Google Patents

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Description

本発明は、車両に関し、特に、ワンウェイクラッチを用いて形成される変速段と、ワンウェイクラッチを用いることなく形成される変速段とを選択的に形成可能な変速装置を備えた車両に関する。
特開2013−83306号公報(特許文献1)には、エンジンと2つの三相交流モータジェネレータ(第1モータジェネレータおよび第2モータジェネレータ)との間に変速装置および差動装置が設けられた構成を有するハイブリッド車両が開示されている。このハイブリッド車両に備えられる変速装置は、駆動状態(エンジンから駆動輪に向けて動力が伝達される状態)で係合し、被駆動状態(駆動輪からエンジンに向けて動力が伝達される状態)で解放されるワンウェイクラッチを有している。変速装置は、ワンウェイクラッチを用いて形成される低速ギヤ段と、ワンウェイクラッチを用いることなく形成される高速ギヤ段とを選択的に形成可能に構成される。
特開2013−83306号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたハイブリッド車両において、低速ギヤ段を形成している時に被駆動状態に移行されると、ワンウェイクラッチが空転するためエンジンブレーキを利用できない。そのため、エンジンブレーキを利用するためには、ワンウェイクラッチを用いる低速ギヤ段ではなく、ワンウェイクラッチを用いない高速ギヤ段を形成する必要がある。
しかしながら、低速ギヤ段を形成している時に、被駆動状態に移行されたことに応じて高速ギヤ段に切り替え、駆動状態に戻ったことに応じて再び低速ギヤ段に戻すような変速制御を行なうと、ユーザによる加減速操作に応じて駆動状態と被駆動状態とが頻繁に切り替わるような場合に、ギヤ段も頻繁に切り替わってしまい、変速制御のハンチングが生じることが懸念される。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、変速制御のハンチングを防止しつつエンジンブレーキを利用可能にすることである。
この発明に係る車両は、エンジンと、駆動輪と、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられ、ワンウェイクラッチを用いて形成される第1変速段と、ワンウェイクラッチを用いることなく形成される第2変速段とを選択的に形成可能な変速装置と、変速装置と駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられた差動装置と、変速装置を制御する制御装置とを備える。制御装置は、エンジンから駆動輪に向けて動力が伝達される駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれるか否かを判定し、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定された場合、駆動状態において第2変速段を形成するように変速装置を制御する。
このような構成によれば、駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれると判定された場合には、駆動状態において(すなわち被駆動状態に移行される前に)エンジンブレーキを利用可能な第2変速段が予め形成される。そのため、その後に被駆動状態に移行されて実際にエンジンブレーキの要求があった場合においても、変速制御を行なうことなくエンジンブレーキを利用することができる。その結果、ユーザによる加減速の操作に応じて駆動状態と被駆動状態とが頻繁に切り替わるような場合においても、変速制御のハンチングを防止しつつエンジンブレーキを利用することができる。
好ましくは、制御装置は、駆動状態において要求駆動トルクの変化量が加速側の値であってかつ所定値未満である場合に、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定する。
このような構成によれば、駆動状態において要求駆動力の変化量が加速側の値であってかつ所定値(たとえば、図9のS10における「しきい値Tsh」に相当する値)未満である場合には、その後に被駆動状態へ移行し易いことに鑑み、駆動状態においてエンジンブレーキを利用可能な第2変速段を予め形成しておくことができる。
好ましくは、車両は、駆動輪に接続されたモータジェネレータと、モータジェネレータの回生電力を受け入れる蓄電装置とをさらに備える。制御装置は、駆動状態において蓄電装置の蓄電量が所定値以上である場合に、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定する。
このような構成によれば、モータジェネレータの回生電力を受け入れる蓄電装置の蓄電量が所定値(たとえば、図9のS11における「しきい値S1」に相当する値)以上である場合には、その後に被駆動状態へ移行した際にモータジェネレータの回生ブレーキが制限されてエンジンブレーキの要求が見込まれることに鑑み、駆動状態においてエンジンブレーキを利用可能な第2変速段に予め形成しておくことができる。
好ましくは、制御装置は、駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれると判定されない場合、変速装置において第1変速段と第2変速段とのどちらを形成するのかを車速および要求駆動トルクに基づいて決定する。
このような構成によれば、駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれると判定されない場合、第1変速段および第2変速段のうちから、車速および要求駆動トルクに応じた最適な変速段を選択することができる。
車両の全体構成を示す図である。 制御装置の構成を示したブロック図である。 変速装置のワンウェイクラッチF1およびブレーキB1の作動係合表を示す図である。 HV走行モード中(ローギヤ段Lo)の共線図である。 HV走行モード中(ハイギヤ段Hi)の共線図である。 単モータ走行モード中の共線図である。 両モータ走行モード中の共線図である。 車速および要求駆動力と走行モードとの対応関係を例示した図である。 制御装置が行なう処理手順を示すフローチャートである。 差動装置の動作点制御の一例を共線図上に示した図である。 HV走行モードでの駆動状態においてローギヤ段Loからハイギヤ段Hiへ変速する場合における状態変化の一例を示す図である。 変速線図の一例を示した図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[ハイブリッド車両の全体構成]
図1は、本実施の形態による駆動装置を備える車両1の全体構成を示す図である。車両1は、エンジン10と、第1モータジェネレータ(以下「第1MG」という)20と、第2モータジェネレータ(以下「第2MG」という)30と、第1MG20および第2MG30をそれぞれ駆動するためのインバータ25,35と、変速装置40と、差動装置(遊星歯車装置)50と、カウンタ軸(出力軸)70と、デファレンシャルギヤ80と、駆動輪90と、制御装置100とを含む。
車両1は、エンジン10、第1MG20および第2MG30の少なくともいずれかの動力を用いて走行する、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式のハイブリッド車両である。なお、車両1の駆動方式は、FF方式に限定されず、FR(フロントエンジン・リアドライブ)方式であってもよい。
エンジン10は、たとえば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン10は、制御装置100からの制御信号により制御される。
第1MG20および第2MG30は、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型の三相(U相、V相、W相)交流回転電機である。第1MG20の回転軸21は、エンジン10のクランク軸と同軸上に配置されている。第2MG30の回転軸31は、第1MG20の回転軸21と平行に配置される。カウンタ軸(出力軸)70は、第1MG20の回転軸21および第2MG30の回転軸31と平行に配置される。
第1MG20および第2MG30は、インバータ25,35によってそれぞれ駆動される。インバータ25,35は、制御装置100からの制御信号に応じて、駆動用バッテリ(図示せず)からの直流電力を交流電力に変換して第1MG20、第2MG30にそれぞれ供給する。また、インバータ25,35は、制御装置100からの制御信号に応じて、第1MG20、第2MG30が発生した交流電力を直流電力に変換して駆動用バッテリに供給する。
第2MG30は、発電することによって制動力(回生ブレーキ)を発生することができる。第2MG30が発生した回生電力は、駆動用バッテリに受け入れられる。
変速装置40は、エンジン10と差動装置50との間の動力伝達経路上に設けられ、エンジン10の回転を変速して差動装置50に出力する。変速装置40は、サンギヤS1とピニオンギヤP1とリングギヤR1とキャリアCA1とを含むシングルピニオン式の遊星歯車機構と、ワンウェイクラッチF1およびブレーキB1とを備える。
キャリアCA1は、エンジン10のクランク軸と連結される。ピニオンギヤP1は、サンギヤS1とリングギヤR1との間に配置され、サンギヤS1およびリングギヤR1とそれぞれ噛み合う。ピニオンギヤP1は、キャリアCA1によって自転および公転可能に支持される。
サンギヤS1の回転速度、キャリアCA1の回転速度(すなわちエンジン10の回転速度)、リングギヤR1の回転速度は、後述するように、共線図上で直線で結ばれる関係(すなわち、いずれか2つの回転速度が決まれば残りの回転速度も決まる関係)になる。
ブレーキB1は、サンギヤS1の回転を規制(ロック)可能な油圧式の摩擦係合要素である。ブレーキB1が係合されると、サンギヤS1がギヤケース(車体)に固定されるため、サンギヤS1の回転が規制される。ブレーキB1が解放されると、サンギヤS1がギヤケース(車体)から切り離されるため、サンギヤS1の回転が許容される。
ワンウェイクラッチF1は、サンギヤS1とキャリアCA1との間に設けられ、サンギヤS1に対するキャリアCA1の正方向への相対回転を許容し、負方向への相対回転を抑制する。
具体的には、サンギヤS1に対してキャリアCA1が正方向へ相対回転しようとすると、ワンウェイクラッチF1は解放されて空転する。これにより、サンギヤS1とキャリアCA1とが切り離された状態となるため、サンギヤS1に対するキャリアCA1の正方向への相対回転(サンギヤS1の回転速度よりもキャリアCA1の回転速度が高くなること)が許容される。
一方、サンギヤS1に対してキャリアCA1が負方向へ相対回転しようとすると、ワンウェイクラッチF1は係合される。これにより、サンギヤS1とキャリアCA1とは一体的に回転するため、サンギヤS1に対するキャリアCA1の負方向への相対回転(キャリアCA1の回転速度がサンギヤS1の回転速度よりも高くなること)が抑制される。
したがって、サンギヤS1の回転速度よりもキャリアCA1の回転速度が高い状態においては、ワンウェイクラッチF1は解放される。一方、サンギヤS1の回転速度がキャリアCA1の回転速度に達すると、ワンウェイクラッチF1が係合される。
変速装置40の変速比(入力要素であるキャリアCA1の回転速度と出力要素であるリングギヤR1の回転速度との比、具体的にはキャリアCA1の回転速度/リングギヤR1の回転速度)は、ワンウェイクラッチF1およびブレーキB1の係合および解放の組合せに応じて切り替えられる。
ブレーキB1が解放された状態では、サンギヤS1の回転が規制されない。そのため、駆動状態(エンジン10から駆動輪90へ向けて動力が伝達される状態)においては、エンジン10の出力トルクによってサンギヤS1の回転速度がキャリアCA1の回転速度まで引き上げられてワンウェイクラッチF1が係合される。その結果、変速比が1.0(直結状態)となるローギヤ段Loが形成される。一方、被駆動状態(駆動輪90からエンジン10へ向けて動力が伝達される状態)においては、駆動輪90からリングギヤR1に入力される正方向のトルクによってリングギヤR1の回転速度が上昇し、リングギヤR1の回転上昇によって、てこの原理により、キャリアCA1を支点としてサンギヤS1の回転速度が低下する。これにより、サンギヤS1の回転速度がキャリアCA1の回転速度よりも相対的に低下するため、ワンウェイクラッチF1は解放される。その結果、ローギヤ段Loが選択されている場合(ブレーキB1が解放された状態)においては、被駆動状態において駆動輪90からの動力をエンジン10に伝達することができず、いわゆるエンジンブレーキを作用させることができない。
一方、ブレーキB1が係合された状態では、サンギヤS1の回転が規制されるため、サンギヤS1の回転速度よりもキャリアCA1の回転速度が相対的に高くなり、ワンウェイクラッチF1は解放される。その結果、変速比が1.0よりも小さい値(たとえば0.7、いわゆるオーバードライブ状態)となるハイギヤ段Hiが形成される。すなわち、ハイギヤ段Hiは、ワンウェイクラッチF1ではなく、ブレーキB1を用いて形成される。ブレーキB1は被駆動状態であっても係合可能であるため、ハイギヤ段Hiの形成中においてはエンジンブレーキを作用させることができる。
差動装置50は、サンギヤS2とピニオンギヤP2とリングギヤR2とキャリアCA2とを含むシングルピニオン式の遊星歯車装置である。差動装置50のキャリアCA2は、変速装置40の出力要素であるリングギヤR1に連結され、リングギヤR1と一体的に回転する。
ピニオンギヤP2は、サンギヤS2とリングギヤR2との間に配置され、サンギヤS2およびリングギヤR2とそれぞれ噛み合う。ピニオンギヤP2は、キャリアCA2によって自転および公転可能に支持される。
サンギヤS2は、第1MG20の回転軸21に連結される。リングギヤR2には、カウンタドライブギヤ51が接続されている。カウンタドライブギヤ51は、リングギヤR2と一体回転する、差動装置50の出力ギヤである。
サンギヤS2の回転速度(すなわち第1MG20の回転速度)、キャリアCA2の回転速度、リングギヤR2の回転速度は、後述するように、共線図上で直線で結ばれる関係(すなわち、いずれか2つの回転速度が決まれば残りの回転速度も決まる関係)になる。したがって、第1MG20の回転速度を調整することによって、キャリアCA2の回転速度とリングギヤR2との比を無段階に切り替えることができる。
カウンタ軸(出力軸)70には、ドリブンギヤ71およびドライブギヤ72が設けられる。ドリブンギヤ71は、差動装置50のカウンタドライブギヤ51と噛み合う。エンジン10および第1MG20の動力は、差動装置50のカウンタドライブギヤ51を介してカウンタ軸(出力軸)70に伝達される。
なお、変速装置40と差動装置50とは、エンジン10からカウンタ軸(出力軸)70までの動力伝達経路上において直列に接続されている。そのため、エンジン10の回転は、変速装置40と差動装置50とにおいて変速された後に、カウンタ軸(出力軸)70に伝達される。
また、ドリブンギヤ71は、第2MG30の回転軸31に接続されたリダクションギヤ32とも噛み合う。つまり、第2MG30の動力は、リダクションギヤ32を介してカウンタ軸(出力軸)70に伝達される。
ドライブギヤ72は、デファレンシャルギヤ80のデフリングギヤ81と噛み合っている。デファレンシャルギヤ80は、左右の駆動軸82を介してそれぞれ左右の駆動輪90と接続されている。つまり、カウンタ軸(出力軸)70の回転は、デファレンシャルギヤ80を介して左右の駆動軸82に伝達される。
車両1は、変速装置40に油圧を供給するための構成として、電動式オイルポンプ(以下「EOP」ともいう)61、機械式オイルポンプ(以下「MOP」ともいう)62、油圧回路63を備える。EOP61は、内部に設けられるモータ(以下「内部モータ」ともいう)によって駆動されて油圧を発生し、油圧回路63に供給する。EOP61の内部モータは、制御装置100からの制御信号によって制御される。MOP62は、差動装置50のキャリアCA2に接続され、キャリアCA2から伝達される動力によって作動されて油圧を発生する。したがって、キャリアCA2が回転されるとMOP62も作動され、キャリアCA2が停止されるとMOP62も停止される。
油圧回路63は、EOP61およびMOP62の少なくとも一方から供給される油圧を元圧として、変速装置40のブレーキB1に供給する油圧(以下「B1油圧」ともいう)を調圧するソレノイドバルブを含む。ソレノイドバルブは、制御装置100からの制御信号によって制御される。
[制御装置の構成]
図2は、図1における制御装置100の構成を示したブロック図である。制御装置100は、HVECU(Electric Control Unit)150と、MGECU160と、エンジンECU170とを含む。HVECU150、MGECU160、エンジンECU170の各々は、コンピュータを含んで構成される電子制御ユニットである。なお、ECUの数は、3つに限定されるものではなく、全体として1つのECUに統合しても良いし、2つ、または4つ以上の数に分割されていても良い。
MGECU160は、第1MG20および第2MG30を制御する。MGECU160は、例えば、第1MG20に対して供給する電流値を調節することで第1MG20の出力トルクを制御し、第2MG30に対して供給する電流値を調節することで第2MG30の出力トルクを制御する。
エンジンECU170は、エンジン10を制御する。エンジンECU170は、例えば、エンジン10の電子スロットル弁の開度の制御、点火信号を出力することによるエンジンの点火制御、エンジン10に対する燃料の噴射制御、等を行なう。エンジンECU170は、電子スロットル弁の開度制御、噴射制御、点火制御等によりエンジン10の出力トルクを制御する。
HVECU150は、車両全体を統合制御する。HVECU150には、車速センサ、アクセル開度センサ、MG1回転数センサ、MG2回転数センサ、出力軸回転数センサ、バッテリセンサ等が接続されている。これらのセンサにより、HVECU150は、車速、アクセル開度、第1MG20の回転数(回転速度)、第2MG30の回転数(回転速度)、動力伝達装置の出力軸の回転数(回転速度)、駆動用バッテリのSOC(State Of Charge)等を取得する。
さらに、HVECU150には、ユーザによるシフトレバー操作を検出するシフトセンサからのシフトレンジが入力される。シフトレンジには、駐車(P)レンジ、後進(R)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、前進(D)レンジ、ブレーキ(B)レンジが含まれる。なお、Bレンジでは、アクセル開度が0のときの目標減速度(目標制動力)がDレンジよりも大きい値に設定される。したがって、ユーザは、Bレンジを選択することによって、下り坂などでより大きい減速度(制動力)を要求することができる。
さらに、HVECU150には、モードセレクトスイッチからの運転モードが入力される。運転モードには、スポーツモードと、通常(非スポーツ)モードとが含まれる。スポーツモードでは、同じアクセル開度に対する目標加速度および目標減速度が通常モードよりも大きい値に設定される。したがって、ユーザは、スポーツモードを選択することによって、より大きい加速度および減速度を要求することができる。
HVECU150は、取得した情報に基づいて、車両に対する要求駆動力や要求駆動トルク等を算出する。HVECU150は、算出した要求値に基づいて、第1MG20の出力トルク(以下、「MG1トルク」とも記載する。)、第2MG30の出力トルク(以下、「MG2トルク」とも記載する。)およびエンジン10の出力トルク(以下、「エンジントルク」とも記載する。)を決定する。HVECU150は、MG1トルクの指令値およびMG2トルクの指令値をMGECU160に対して出力する。また、HVECU150は、エンジントルクの指令値をエンジンECU170に対して出力する。
HVECU150は、後述する走行モード等に応じて変速装置40のブレーキB1を制御する。HVECU150は、B1油圧の指令値PbB1を図1の油圧回路63のソレノイドバルブに出力する。
[車両1の走行モード]
制御装置100は、ハイブリッド走行モード(以下「HV走行モード」という)あるいはモータ走行モード(以下「EV走行モード」という)で車両1を走行させる。HV走行モードとは、エンジン10および第2MG30の動力で車両1を走行させる走行モードである。EV走行モードとは、エンジン10を停止し、第1MG20あるいは第2MG30の少なくとも一方の動力で車両1を走行させる走行モードである。
EV走行モードは、さらに、単モータ走行モードと両モータ走行モードとに細分化される。単モータ走行モードとは、第2MG30単独の動力で車両1を走行させる走行モードである。両モータ走行モードとは、第1MG20および第2MG30の両方の動力で車両1を走行させる走行モードである。
図3は、各走行モードにおける変速装置40のワンウェイクラッチF1およびブレーキB1の作動係合表を示す図である。図2において、「F1」、「B1」、「MG1」、「MG2」はそれぞれワンウェイクラッチF1、ブレーキB1、第1MG20、第2MG30を示す。C1の欄およびB1の欄の丸(○)印は「係合」を示し、×印は「解放」を示し、三角(△)印は駆動状態で「係合」となり被駆動状態で「解放」となることを示す。また、MG1の欄およびMG2の欄の「G」は主にジェネレータとして動作させることを示し、「M」は主にモータとして動作させることを示す。
HV走行モードにおいては、制御装置100は、車速に応じて変速装置40の変速比を切り替える。中低速域で車両1を前進させる場合あるいは車両1を後進させる場合、制御装置100は、ブレーキB1を解放する。これにより、駆動状態においてワンウェイクラッチF1が係合されてローギヤ段Loが形成される(後述の図4参照)。一方、高速域で車両1を前進させる場合、制御装置100は、ブレーキB1を係合する。これにより、ワンウェイクラッチF1が解放されてハイギヤ段Hiが形成される(後述の図5参照)。また、HV走行モードにおいては、制御装置100は、第1MG20を主にジェネレータとして動作させ、第2MG20を主にモータとして動作させる。
EV走行モードにおいては、制御装置100は、上述した単モータ走行モードと両モータ走行モードとを選択的に切り替える。
単モータ走行モードで車両1に駆動力(前進あるいは後進させる力)を作用させる場合、制御装置100は、ブレーキB1を解放する。これにより、ワンウェイクラッチF1が解放されて変速装置40がニュートラル状態(動力を伝達しない状態)となる。一方、単モータ走行モードで車両1にエンジンブレーキを作用させる場合、制御装置100は、ブレーキB1を係合する。これにより、駆動輪90の回転がエンジン10に伝達されることによってエンジン10が回転させられる、いわゆるエンジンブレーキ状態となる。なお、単モータ走行モードにおいては、制御装置100は、第1MG20を主にジェネレータとして動作させ、第2MG20を主にモータとして動作させる(後述の図6参照)。
両モータ走行モードで車両1を走行(前進あるいは後進)させる場合、制御装置100は、ブレーキB1を係合し、かつ第1MG20のトルクを負方向に作用させることによってワンウェイクラッチF1を係合する。これにより、変速装置40の回転要素S1,CA1,R1および差動装置50のキャリアCA2の各回転速度は0に固定される。両モータ走行モード中においては、制御装置100は、第1MG20および第2MG20を主にモータとして動作させる(後述の図7参照)。
図4〜7は、それぞれ、HV走行モード中(ローギヤ段Lo)、HV走行モード中(ハイギヤ段Hi)、単モータ走行モード中、両モータ走行モード中の共線図である。図4〜7に示す「S1」、「CA1」、「R1」はそれぞれ変速装置40のサンギヤS1、キャリアCA1、リングギヤR1を示し、「S2」、「CA2」、「R2」はそれぞれ差動装置50のサンギヤS2、キャリアCA2、リングギヤR2を示す。
図4を参照して、HV走行モード中にローギヤ段Loで前進走行している場合の制御状態について説明する。ローギヤ段Lo形成時には、ワンウェイクラッチF1が係合され、ブレーキB1が解放されるため、変速装置40の回転要素S1,CA1,R1は一体となって回転する。これにより、変速装置40のキャリアCA1に入力されたエンジン10の回転は、同じ回転速度でリングギヤR1から差動装置50のキャリアCA2に伝達される。すなわち、変速装置40のキャリアCA1に入力されたエンジン10のトルク(以下「エンジントルクTe」という)は、変速装置40のリングギヤR1から差動装置50のキャリアCA2に伝達される。なお、リングギヤR1から出力されるトルク(以下「変速部出力トルクTr1」という)は、ローギヤ段Lo形成時においてはエンジントルクTeと同じ大きさ(Te=Tr1)である。
差動装置50のキャリアCA2に伝達されたエンジン10の回転は、サンギヤS2の回転速度(第1MG20の回転速度)によって無段階に変速されて差動装置50のリングギヤR2に伝達される。この際、制御装置100は、第1MG20のトルク(以下「第1MGトルクTm1」ともいう)を負方向に作用させる。これにより、第1MGトルクTm1は、キャリアCA2に入力されたエンジントルクTeをリングギヤR2に伝達するための反力トルクとして作用する。
リングギヤR2に伝達されたエンジントルクTe(以下「エンジン伝達トルクTec」という)は、カウンタドライブギヤ51からカウンタ軸(出力軸)70に伝達され、車両1の駆動力として作用する。
また、第2MG30のトルク(以下「第2MGトルクTm2」ともいう)は、リダクションギヤ32からカウンタ軸(出力軸)70に伝達され、車両1の駆動力として作用する。したがって、HV走行モードでは、エンジン伝達トルクTecと第2MGトルクTm2とを用いて、車両1は走行する。
次に、図5を参照して、HV走行モード中にハイギヤ段Hiで前進走行している場合の制御状態について説明する。ハイギヤ段Hi形成時には、ブレーキB1が係合されるため、サンギヤS1の回転が規制される。これにより、サンギヤS1の回転速度よりもキャリアCA1の回転速度が相対的に高くなり、ワンウェイクラッチF1は解放される。その結果、変速装置40のキャリアCA1に入力されたエンジン10の回転は、増速されて変速装置40のリングギヤR1から差動装置50のキャリアCA2に伝達される。したがって、変速部出力トルクTr1はエンジントルクTeよりも小さくなる(Te>Tr1となる)。
次に、図6を参照して、単モータ走行モード中に前進走行している場合の制御状態について説明する。単モータ走行モードでは、制御装置100は、エンジン10を停止し、第2MG30をモータとして動作させる。そのため、単モータ走行モードでは、第2MGトルクTm2を用いて車両1は走行する。
この際、制御装置100は、サンギヤS2の回転速度が0となるように第1MGトルクTm1をフィードバック制御する。そのため、サンギヤS2は回転しない。一方、変速装置40のワンウェイクラッチF1およびブレーキB1は解放されているため、差動装置50のキャリアCA2の回転は規制されない。したがって、差動装置50のリングギヤR2、キャリアCA2および変速装置40のリングギヤR1は、第2MG30の回転に連動して、第2MG30の回転方向と同じ方向に回転(空転)させられる。
一方、変速装置40のキャリアCA1は、エンジン10が停止されていることによって、停止状態に維持される。変速装置40のサンギヤS1は、リングギヤR1の回転に連動して、リングギヤR1の回転方向とは反対の方向に回転(空転)させられる。
次に、図7を参照して、両モータ走行モード中に前進走行している場合の制御状態について説明する。両モータ走行モードでは、エンジン10は停止され、変速装置40のワンウェイクラッチF1が係合されかつブレーキB1が係合される。これにより、変速装置40の回転要素S1,CA1,R1の回転が規制される。変速装置40のリングギヤR1の回転が規制されることで、差動装置50のキャリアCA2の回転も規制される。
キャリアCA2の回転が規制された状態で、制御装置100は、第1MG20および第2MG30をモータとして動作させる。具体的には、第2MGトルクTm2を正トルクとして第2MG30を正回転させるとともに、第1MGトルクTm1を負トルクとして第1MG20を負回転させる。第1MGトルクTm1は、キャリアCA2を支点としてリングギヤR2に伝達される。リングギヤR2に伝達される第1MGトルクTm1(以下「第1MG伝達トルクTm1c」という)は、正方向に作用し、カウンタ軸(出力軸)70に伝達される。そのため、両モータ走行モードでは、第1MG伝達トルクTm1cと第2MGトルクTm2とを用いて、車両1は走行する。
制御装置100は、第1MG伝達トルクTm1cと第2MGトルクTm2との合計によって要求トルクを満たすように、要求駆動トルクに対する第1MGトルクTm1と第2MGトルクTm2とのトルク分担比率を調整する。
[走行モードの切替]
制御装置100は、駆動用バッテリのSOCがしきい値よりも低い場合、駆動用バッテリを充電するためにエンジン10を運転してHV走行モードで車両1を走行させる。一方、駆動用バッテリのSOCがしきい値よりも高い場合、制御装置100は、車速および要求駆動力に基づいて車両1の走行モードを切り替える。
図8は、駆動用バッテリのSOCがしきい値よりも高い場合における、車速および要求駆動力と走行モードとの対応関係を例示した図である。図8において、境界ラインL1は第2MGの出力可能駆動力に相当し、境界ラインL2は第1MG20の出力可能駆動力と第2MG30の出力可能駆動力との合計に相当する。
境界ラインL1未満の領域では、第2MG30単独で要求駆動力を出力することができるため、制御装置100は、制御装置100は単モータ走行モードで車両1を走行させる。
境界ラインL1を超えかつ境界ラインL2未満の領域では、第2MG30単独で要求駆動力を出力することはできないが第1MG20および第2MG30の両方で要求駆動力を出力することができるため、制御装置100は両モータ走行モードで車両1を走行させる。
境界ラインL2を超える領域では、第1MG20および第2MG30の両方で要求駆動力を出力することができないため、制御装置100は、HV走行モードで車両1を走行させる。
[HV走行モードでの駆動状態におけるギヤ段選択]
以上のような構成を有する車両1において、HV走行モードでワンウェイクラッチF1を係合してローギヤ段Loを形成している時に、駆動状態から被駆動状態に移行されると、ワンウェイクラッチF1が解放状態となり空転するためエンジンブレーキを利用できない。そのため、エンジンブレーキを利用するためには、ワンウェイクラッチF1を用いるローギヤ段Loではなく、ワンウェイクラッチF1を用いないハイギヤ段Hiを形成する必要がある。
しかしながら、ローギヤ段Loを形成している時に、被駆動状態になったことに応じてハイギヤ段Hiに切り替へ、駆動状態に戻ったことに応じて再びローギヤ段Loに戻すような変速制御を行なうと、ユーザによる加減速操作に応じて被駆動状態と駆動状態とが頻繁に切り替わるような場合に、ギヤ段も頻繁に切り替わってしまい、変速制御がハンチングすることが懸念される。
そこで、本実施の形態による制御装置100は、HV走行モードでの駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれるか否かを判定し、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定された場合には、駆動状態において(すなわち被駆動状態に移行される前に)エンジンブレーキを利用可能なハイギヤ段Hiを予め形成するように変速装置40を制御する。以下、この点について詳しく説明する。
図9は、HV走行モードでの駆動状態において制御装置100が行なう処理手順を示すフローチャートである。
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10〜S12の処理において、制御装置100は、エンジンブレーキの要求が見込まれるか否かを判定する。
具体的には、制御装置100は、S10にて、要求駆動トルクの変化量が0よりも大きい値(加速側の値)でかつしきい値Tshよりも低いか否かを判定する。この判定は、要求駆動トルクの変化量が加速側の値(0よりも大きい値)ではあるがユーザによる加速意図はほとんどなく、被駆動状態へ移行し易い状態であるか否かを判定するものである。したがって、しきい値Tshは、0よりも僅かに大きい値に予め設定される。
また、制御装置100は、S11にて、駆動用バッテリのSOCがしきい値S1よりも大きいか否かを判定する。この判定は、仮に被駆動状態へ移行された場合に、駆動用バッテリのSOCが高く第2MG30による回生電力を十分に受け入れることができないために第2MG30による回生ブレーキが制限されるか否かを判定するための処理である。したがって、しきい値S1は、SOCの制御上限値に近い値に設定される。
また、制御装置100は、S12にて、シフトレンジがBレンジであるか否かを判定する。この判定は、Bレンジが選択されていることによって、仮に被駆動状態へ移行された場合に目標制動力が第2MG30による回生ブレーキよりも大きい値になるか否かを判定するための処理である。
要求駆動トルクの変化量がしきい値Tshよりも低くかつ駆動用バッテリのSOCがしきい値S1よりも高い場合(S10にてYESかつS11にてYES)、あるいは、要求駆動トルクの変化量がしきい値Tshよりも低くかつシフトレンジがBレンジである場合(S10にてYESかつS12にてYES)、制御装置100は、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定する。
一方、要求駆動トルクの変化量がしきい値Tshよりも高い場合(S10にてNO)、あるいは駆動用バッテリのSOCがしきい値S1よりも低くかつシフトレンジがBレンジでない場合(S11にてYESかつS12にてYES)、制御装置100は、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定しない。
エンジンブレーキの要求が見込まれると判定された場合(S10にてYESかつS11にてYES、またはS10にてYESかつS12にてYES)、制御装置100は、S13にて、今後のエンジンブレーキの要求に備えて、駆動状態において(すなわち被駆動状態に移行される前に)予めハイギヤ段Hiを形成する。すなわち、制御装置100は、ローギヤ段Loが形成されていた場合にはハイギヤ段Hiへのアップ変速を行ない、既にハイギヤ段Hiが形成されていた場合にはハイギヤ段Hiをそのまま維持する。これにより、エンジンブレーキを利用できないローギヤ段Loを使用できない状態となる。
S13にてハイギヤ段Hiを形成したことに応じて、制御装置100は、S14にて差動装置50の動作点制御を実行する。
図10は、エンジン10の動作点(回転速度およびトルク)を変化させずにローギヤ段Loからハイギヤ段Hiへ変速する場合における差動装置50の動作点制御の一例を共線図上に示した図である。
HV走行モードにおいてローギヤ段Loで前進走行している場合、上述の図4で説明したように、ワンウェイクラッチF1が係合され、かつブレーキB1が解放されることで、変速装置40の各回転要素S1,CA1,R1が一体的に回転する(線LN1)。このとき、差動装置50においては、第1MG20および第2MG30の運転状態によって、たとえば線LN3のような状態となる。
このローギヤ段Loの状態から、ブレーキB1を係合してハイギヤ段Hiに変速すると、サンギヤS1が固定されてサンギヤS1の回転速度が0となるため、エンジン10を支点としてリングギヤR1の回転速度が上昇して、線LN2で示されるような状態となる。
この際、制御装置100は、第1MGトルクTm1を調整してサンギヤS2の回転速度を上昇させる。この制御が、差動装置50の動作点制御(図10のS14の制御)である。変速中は車速はほぼ変化せずリングギヤR2の回転速度は一定であるため、差動装置50の動作点制御によってサンギヤS2の回転速度を上昇させることによって、差動装置50のキャリアCA2の回転速度も上昇させることができる(線LN4)。これにより、変速装置40のリングギヤR1の回転上昇に応じて、差動装置50のキャリアCA2の回転速度を上昇させることができる。その結果、差動装置50の変速比(キャリアCA2の回転速度とリングギヤR2の回転速度との比)が、変速後のハイギヤ段Hiに適した値に速やかに制御される。
図11は、HV走行モードでの駆動状態において、エンジン10の動作点を変化させずにローギヤ段Loからハイギヤ段Hiへ変速する場合における状態変化の一例を示す図である。図11の横軸には時間が示されており、縦軸には、エンジン10の回転速度、第1MG20のトルク、第1MG20の回転速度、第2MG30のトルク、第2MG30の回転速度、B1油圧、キャリアCA2の回転速度、および駆動用バッテリのSOCが示される。
図11に示す例では、時刻t1にて駆動用バッテリのSOCがしきい値S1よりも上昇したことに応じてエンジンブレーキの要求が見込まれると判定される。この判定に伴い、時刻t2にて、B1油圧が上昇され始め、ローギヤ段Loからハイギヤ段Hiへの変速が開始される。
時刻t3にてイナーシャ相が始まると、制御装置100は、第1MG20のトルクを調整することで第1MG20の回転速度を上昇させる。
時刻t4にて、B1油圧が所定の係合圧まで上昇しブレーキB1の係合が完了すると、ハイギヤ段Hiへの変速が終了する。ハイギヤ段Hiの形成後においては被駆動状態においてエンジンブレーキを使用することができる。
図9に戻って、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定されない場合(S10にてNOまたはS12にてNO)、制御装置100は、S15にて、ハイギヤ段Hiおよびローギヤ段Loのうち、車速および要求駆動トルクに応じたギヤ段を変速線図に基づいて選択する。これにより、ローギヤ段Loの使用が許容されることになる。
図12は、ギヤ段の選択(図9のS15の処理)に用いられる変速線図の一例を示した図である。図12において、横軸は車速を示し、縦軸は要求駆動トルクを示す。最大トルクラインTmaxは、車両1が出力可能な駆動トルクに相当する。
図12に示すLo固定領域は、境界トルクラインT1を超えかつ最大トルクラインTmax未満の領域である。Lo固定領域では、ハイギヤ段Hiを選択すると駆動トルクが不足するため、選択されるギヤ段はローギヤ段Loに固定される。
図12に示すHi/Lo選択領域は、境界トルクラインT1未満の領域である。Hi/Lo選択領域では、車速および要求駆動トルクに応じてハイギヤ段Hiとローギヤ段Loとのどちらかが選択される。図12に示す例では、最適な燃費となるように、車速と要求駆動トルクとの交点が境界トルクラインT2を超える場合にはローギヤ段Loが選択され、車速と要求駆動トルクとの交点が境界トルクラインT2未満である場合にはハイギヤ段Hiが選択される。
なお、図9のS15の処理において、変速(ローギヤ段Loとハイギヤ段Hiとの切替)が行なわれる場合には、制御装置100は、図9のS14と同様の差動装置50の動作点制御を行なう。
以上のように、本実施の形態による制御装置100は、HV走行モードでの駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれるか否かを判定し、エンジンブレーキの要求が見込まれると判定された場合には、駆動状態においてエンジンブレーキを利用可能なハイギヤ段Hiを予め形成する。そのため、その後に被駆動状態に移行されて実際にエンジンブレーキの要求があった場合においても、変速制御を行なうことなくエンジンブレーキを利用することができる。その結果、ユーザによる加減速の操作に応じて駆動状態と被駆動状態とが頻繁に切り替わるような場合においても、変速制御のハンチングを防止しつつエンジンブレーキを利用することができる。
<変形例>
上述の実施の形態は、たとえば以下のように変更することもできる。
(1) 上述の実施の形態においては図9のS10において要求駆動トルクの変化量と比較される「しきい値Tsh」を0よりも僅かに大きい固定値とする場合を説明したが、「しきい値Tsh」を車速などに応じて変動する値としてもよい。
たとえば、「しきい値Tsh」を、車速が高いほど小さい値に変動する値としてもよい。このようにすると、被駆動状態に移行し易いか否か(エンジンブレーキの要求が見込まれるか否か)を車速に応じて適切に判定することができる。
また、図12の変速線図に示したローギヤ段Loとハイギヤ段Hiとの選択が可能な領域(図12に示すHi/Lo選択領域)においてのみ、エンジンブレーキ要求が見込まれるか否かを判定してもよい。
(2) 上述の実施の形態においては図9のS12においてシフトレンジがBレンジであるか否かを判定する場合を説明したが、図9のS12において、Bレンジの判定に代えてあるいは加えて、スポーツモードが選択されているか否かを判定するようにしてもよい。
このようにすると、スポーツモードが選択されていることによって、仮に被駆動状態へ移行された場合に目標制動力が通常モード選択時よりも大きい値に設定されてエンジンブレーキの要求が見込まれることを判定することができる。
(3) 上述の実施の形態においては図9のS10およびS11の双方の条件が成立した場合にS13にてハイギヤ段Hiに固定する例を説明したが、S11の条件を省いてS10の条件が成立した場合にS13にてハイギヤ段Hiに固定するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態およびその変形例については、適宜組合せることも可能である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 車両、10 エンジン、20 第1MG、30 第2MG、25,35 インバータ、32 リダクションギヤ、40 変速装置、50 差動装置、51 カウンタドライブギヤ、63 油圧回路、71 ドリブンギヤ、72 ドライブギヤ、80 デファレンシャルギヤ、81 デフリングギヤ、82 駆動軸、90 駆動輪、100 制御装置、B1 ブレーキ、CA1,CA2 キャリア、F1 ワンウェイクラッチ、P1,P2 ピニオンギヤ、R1,R2 リングギヤ、S1,S2 サンギヤ。

Claims (4)

  1. エンジンと、
    駆動輪と、
    前記エンジンと前記駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられ、ワンウェイクラッチを用いて形成される第1変速段と、ワンウェイクラッチを用いることなく形成される第2変速段とを選択的に形成可能な変速装置と、
    前記変速装置と前記駆動輪との間の動力伝達経路上に設けられ、前記変速装置に接続されたキャリアと、サンギヤと、前記駆動輪に接続されたリングギヤとを含む差動装置と、
    前記差動装置の前記サンギヤに接続された第1モータジェネレータと、
    前記駆動輪に接続された第2モータジェネレータと、
    前記第2モータジェネレータの回生電力を受け入れる蓄電装置と、
    前記変速装置を制御する制御装置とを備え、
    前記制御装置は、前記エンジンから前記駆動輪に向けて動力が伝達される駆動状態においてエンジンブレーキの要求が見込まれるか否かを判定し、前記エンジンブレーキの要求が見込まれると判定された場合、前記駆動状態において前記第2変速段を形成するように前記変速装置を制御し、
    前記制御装置は、前記駆動状態において前記蓄電装置の蓄電量が所定値以上である場合に、前記エンジンブレーキの要求が見込まれると判定し、
    前記制御装置は、前記駆動状態において前記エンジンブレーキの要求が見込まれると判定されたことによって前記第1変速段から前記第2変速段への変速が行なわれる場合、変速前と変速後との間で前記エンジンの動作点を変化させないように前記第1モータジェネレータを制御する、車両。
  2. 前記制御装置は、前記駆動状態において要求駆動トルクの変化量が加速側の値であってかつ所定値未満である場合に、前記エンジンブレーキの要求が見込まれると判定する、請求項1に記載の車両。
  3. 前記変速装置は、前記エンジンに接続されたキャリアと、サンギヤと、前記差動装置に接続されたリングギヤとを含む遊星歯車装置と、前記遊星歯車装置の前記サンギヤの回転を規制するブレーキ要素と、前記ワンウェイクラッチとを含み、
    前記ワンウェイクラッチは、前記変速装置のサンギヤに対する前記変速装置のキャリアの一方向への相対回転を許容し、他方向への相対回転を抑制する、請求項1または2に記載の車両。
  4. 前記制御装置は、前記駆動状態において前記エンジンブレーキの要求が見込まれると判定されない場合、前記変速装置において前記第1変速段と前記第2変速段とのどちらを形成するのかを車速および要求駆動トルクに基づいて決定する、請求項1〜3のいずれかに記載の車両。
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