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JP6303195B2 - 細菌による機能的外来タンパク質の製造方法 - Google Patents

細菌による機能的外来タンパク質の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、細菌の細胞質内で、所望の外来タンパク質、特に組換え単鎖抗体(scFv)を、生物学的な機能を保持し、可溶性の状態で効率よく発現させることで、大量生産する方法に関する。
抗体は、研究、検査、医薬などの分野で無くてはならない存在であるが、近年、抗体医薬としてより重要性が高まっている。これには、組換え技術によるマウス抗体のヒト化技術が大きく貢献し、ファージディスプレイ技術と合わせて、新しい抗体作製技術が大きく進展している。
組換え抗体は、従来の抗体に、親和性の増強、安定性の増強、他のタンパク質との融合、細胞内での発現、小サイズ化、多量体化等の性質を持たせることができる。形態は、IgGと同様なもの、IgGからFc部分を取り除いたFab、抗体認識部分のみのscFv(単鎖抗体)等がある。その中でもscFvは、分子量が25kDa程度とIgGの分子量の6分の1程と小さい。抗体としての結合能は、IgGと全く同様でありながら、小サイズのため取扱いが大変容易であり、研究・検査分野において多くの利用が期待されている。細胞への浸潤性がよいことから、がん治療のツールとしても有望視されている。
組換え抗体は、現在おもに培養動物細胞を用いて発現されている。培養動物細胞を用いることで、機能的な抗体(抗原認識機能を持つ)を発現させることができるが、その発現には、長期間を要し、コストも大きく、組換え抗体製品が高価なことの原因となっている。微生物を用いれば、大量にスピーディーに発現が可能となる。大腸菌は増殖が速く培養が容易なため、組換えタンパク質の大量発現系の宿主として汎用されている。しかし、組換えタンパク質が大腸菌体内で封入体を形成してしまい、他の発現系が必要となる場合も多い。scFvもそのタンパク質としての性質から、大腸菌で発現させようとすると、多くの場合封入体を形成し、可溶化した状態で発現できないのが現状である。
大腸菌において、scFvの発現を試みると、scFvの種類を問わず、ほとんどの場合は細胞内で封入体として沈殿してしまい、機能的なタンパク質として回収できない(非特許文献1)。これは、scFvが真核細胞由来のタンパク質であるという本質的な理由による。抗体をはじめ、真核生物由来のタンパク質の多くはジスルフィド結合を有している。scFvにも複数のジスルフィド結合が存在している。大腸菌の細胞質内は強い還元条件下にあるため、真核生物由来のタンパク質を発現させても正しいジスルフィド結合を形成し本来の立体構造を再現するのはscFvのみならず、一般的にも困難である。大腸菌内で発現した外来タンパク質が本来の立体構造とは異なると、封入体を形成して不溶化してしまう場合だけでなく、細胞質内のプロテアーゼで分解されてしまったり、細胞毒性を示し宿主大腸菌の生育が悪くなるなどの問題が発生する。
このような外来タンパク質を大腸菌宿主で効率よく発現させるための方法としては、ジスルフィド結合の形成に適した酸化的環境にあるペリプラズムで発現する方法が提案されている(非特許文献3)。大腸菌のジスルフィド結合形成に関与し、シャペロン機能も有するタンパク質であるDsbAなどの各種Dsbファミリータンパク質は、ペリプラズム空間に偏在しているため、ペリプラズム移行シグナルを外来タンパク質に付加し、ペリプラズム領域内に分泌・発現させることで、機能的な組換え外来タンパク質を回収することができる場合が多い(非特許文献4)。さらに、DsbAなどのDsbファミリータンパク質を発現する発現ベクターを、外来タンパク質をペリプラズム領域内で分泌・発現可能な発現ベクターと共発現させて、正しいジスルフィド結合能を強化する方法も提案されている(特許文献1)。また、リフォールディング促進活性が知られているトリガーファクターを発現する発現ベクターを、外来タンパク質の発現ベクターと共発現させる方法も提案されている(特許文献2)。これらの手法はscFvに適用することも可能で、ペリプラズム領域内であれば機能的なscFvを回収することができる。ペリプラズム領域内で機能的なscFvを得る際に、scFvをタンデムscFv(scFv-scFv)結合体、又は2量体化能のあるロイシンジッパードメインなどの多量体化能を有するタンパク質との融合タンパクとして発現させてscFv多量体とすることで、機能的scFvの抗原との反応性を増大させる方法(非特許文献11、14)、さらに当該手法をファージディスプレイ法に応用して、機能的なscFv多量体をファージ上にディスプレイし、ハイスループットな抗原特異的scFvを選択する方法も開発されている(非特許文献12)。しかしながら、狭いペリプラズム空間で発現させる方法では、機能的なscFvは得られるものの、発現タンパク質としての回収率が低く、本来の目的である細菌を用いて高発現させるという目的は達せられない。
一方、細胞質においてジスルフィド結合を形成し正しい立体構造のタンパク質を発現するための手法として、細胞質内環境の改良が施された大腸菌ホスト株(コンピテントセル)が開発されている。市販されている主な菌株としては、New England Biolabs社からの「SHuffleコンピテントセル」及びNovagen社からの「Origamiコンピテントセル」がある。前者においてはジスルフィド結合形成を妨げるグルタチオンリダクターゼ(Gor)やチオレドキシンリダクターゼ(TreR)が不活性化され、さらに、本来ペリプラズムに存在して、正しいジスルフィド結合の形成能及びシャペロン機能を有するジスルフィド結合イソメラーゼ(DsbC)が細胞質で発現するように改良されている。後者においては、TreRとGorに変異をもたせることで、細胞質でのジスルフィド結合形成能を向上させ、細胞質内でのタンパク質フォールディングが可能となるように改良されている。このような細胞質環境が改変された特殊な大腸菌を用いた場合には、scFvについても、細胞質内で機能的scFvの発現に成功している(非特許文献5、15など)が、発現量は野生型大腸菌でのペリプラズム内での発現量を超えるまでには至っていないようである(非特許文献6)。
一般に、タンパク質発現が大腸菌等でうまくいかない時は、親水性の高いタンパク質と融合させて発現させることで成功する例が多く(非特許文献7)、ビオチン化ドメインを備える親水性タグと融合させて発現を改善する例(特許文献3)も知られている。scFv発現に関しても多くの試みがなされている。scFvに対し、親水性の高いマルトース結合タンパク質を融合させて、分子全体の親水性を上げて発現量を上げた旨の報告もある(非特許文献8)。なお、この報告では、マルトース結合タンパク質-scFvの細胞質発現量が(200mg/L, 培養液の600nm吸光度が2の時)とされ、あまりの発現量の大きさに注目を集めたが、追試実験での再現性も含め、このシステムを用いた続報はない。しかも、得られたscFvに対して定量的な抗原結合活性実験が行われていない。
また、scFvを酵母GAL4由来のDNA結合ドメインとの融合タンパク質を発現するベクターを構築し、一般的な大腸菌宿主の細胞質内で該融合タンパク質を発現させたことの報告があるが、90%程度がインクルージョンボディに含まれている状態での発現であり、細胞質内での機能的scFv発現に成功したとまではいえない(非特許文献9)。
最近、scFvをマルトース結合タンパク質やチオレドキシンのような親水性の高いタンパク質との融合体とした上で、細胞質内を酸化的環境に改良した改変大腸菌を用いてその細胞質内で発現させ、かつ界面活性剤を加えた溶媒中で回収することにより、溶解性が高い機能的scFvを得たという報告がある(非特許文献16)が、多段階の煩雑な工程が必要である。
このように、一般的な大腸菌宿主を用いて細胞質内で機能的scFvを大量に発現させようとする試みは未だ成功しているとは言い難く、発現量が増える場合には機能的ではないタンパク質、すなわち変性した抗原結合能の弱いscFvしか回収されず(非特許文献6)、scFvの細胞質内での発現の問題点の大きな原因は、細胞質内が還元的環境下であることとされる(非特許文献13)。その結果、scFvの発現については、収量は低くなってしまうものの、ペリプラズムでの発現が重要であることが広く認められている(非特許文献1、13)。
また、発現したタンパク質を菌体外に分泌することのできるBacillus megateriumを用いて、機能的なscFvを培養液内に分泌生産する方法も提唱されているが(非特許文献10)、多くの成功例が報告されるには至っていない。分泌システムを利用した発現は、scFv内のジスルフィド結合は正常に結ばれることが期待されるが、大量の培養液中にscFvが存在するので、濃縮の作業が必要になる点は大きなデメリットである。これに対して、細菌の細胞質内で正常なscFvを発現できれば、宿主菌を遠心後、非常に濃縮された状態で精製する事ができ、大量の培養液濃縮工程の手間がかからず簡便である。
以上のことから、有用性の高いscFvを正常な可溶化状態で、一般的な細菌の細胞質内において安価に大量生産させる手法が、待ち望まれていた。
特開2000−83670号公報 特開2000−189163号公報 特許第4377242号 特許公表2005−514957号公報 特許公表2004−519211号公報
Jonas V. Schaefer and Andreas Pluckthun, 2010, "Improving Expression of scFv Fragments by Co-expression of Periplasmic Chaperones" In: R.E. Kontermann and S. Dubel(Eds.), Antibody Engineering. Vol. 2. Springer, p.345-361 Dorothea E. Reilly and Daniel G. Yansura, 2010, "Production of Antibodies and Antibody Fragments in Escherichia coli", In: R.E. Kontermann and S. Dubel(Eds.), Antibody Engineering. Vol. 2. Springer, p.331-344 Ario de Marco, "Strategies for successful recombinant expression of disulfide bond-dependent proteins in Escherichia coli" Microbial Cell Factories 2009, 8:26 p.1-18 Andrew G. Popplewell, Mukesh Sehdev, Mariangela Spitali, and A. Neil C. Weir 2005, "Expression of Antibody Fragments by Periplasmic Secretion in Escherichia coli" In: C. Mark; James, David C.(Eds.), Therapeutic Proteins: Methods and Protocols, Humana Press, p.17-30. Paola Jurado, Daniel Ritz, Jon Beckwith, Victor de Lorenzo and Luis A. Fernandez "Production of Functional Single-Chain Fv Antibodies in the Cytoplasm of Escherichia coli" J. Mol. Biol.(2002) 320, 1-10 Cecile D Martin, Gertrudis Rojas, Joanne N Mitchell, Karen J Vincent, Jiahua Wu, John McCafferty and Darren J Schofield, "A simple vector system to improve performance and utilisation of recombinant antibodies" BMC Biotechnology(2006)6:46, 1-15 Dominic Esposito and Deb K Chatterjee, "Enhancement of soluble protein expression through the use of fusion tags" Current Opinion in Biotechnology 2006, 17:353-358 Horacio Bach, Yariv Mazor, Shelly Shaky, Atar Shoham-Lev Yevgeny Berdichevsky, David L. Gutnick and Itai Benhar. "Escherichia coli Maltose-binding Protein as a Molecular Chaperone for Recombinant Intracellular Cytoplasmic Single-chain Antibodies" J. Mol. Biol. (2001) 312, 79-93 Qing Ye et al., "Generation and functional characterization of the anti-transferrin receptor single-chain antibody-GAL4 (TfRscFv-GAL4) fusion protein" BMC Biotechnol. (2012) 12:91 (DOI: 10.1186/1472-6750-12-91) Eva Jordan, Michael Hust, Andreas Roth, Rebekka Biedendieck, Thomas Schirrmann, Dieter Jahn and Stefan Dubel. "Production of recombinant antibody fragments in Bacillus megaterium" Microbial Cell Factories, 2007, 6:2, 1-11 Andreas Pluckthun, Peter Pack, "New protein engineering approaches to multivalent and bispecific antibody fragments" Immunotechnology 3 (1997) 83-105 H. Thie, S. Binius, T. Schirrmann, M. Hust and S. Dubel, "Multimerization domains for antibody phage display and antibody production" New Biotechnology, Vol. 26, No.6, 2009, 314-321 Thomas Schirrmann, Laila Al-Halabi, Stefan Dubel, Michael Hust, "Production systems for recombinant antibodies" Frontiers in Bioscience 4576-4594, May 1, 2008 John de Kruif and Ton Logtenberg, "Leucine Zipper Dimerized Bivalent and Bispecific scFv Antibodies from a Semi-synthetic Antibody Phage Display Library" THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.271, No.13, Issue of March 29, pp.7630-7634, 1996 Mi-Ae Heo, Su-Hyun Kim, So-Yeon Kim, Yu-Jin Kim, Junho Chung, Min-Kyu Oh, Sun-Gu Lee, "Functional expression of single-chain variable fragment antibody against c-Met in the cytoplasm of Escherichia coli" Protein Expression and Purification 47 (2006) 203-209 Wei Sun, Jing Xie, Heng Lin, Su Mi, Zhe Li, Fang Hua, Zhuowei Hu, "A combined strategy improves the solubility of aggregation-prone single-chain variable fragment antibodies" Protein Expression and Purification 83 (2012) 21-29 Robert Carlsson, Anna Hjalmarsson, David Liberg, Christine Persson, Tomas Leanderson, "Genomic structure of mouse SPI-C and genomic structure and expression pattern of human SPI-C" Gene 299 (2002) 271-278 Feng JA, Johnson RC, Dickerson RE, "Hin recombinase bound to DNA:the origin of specificity in major and minor groove interactions" SCIENCE Vol.263 p.348-355, JANUARY 1994 Gunsalus RP, Yanofsky C, "Nucleotide sequence and expression of Escherichia coli trpR, the structural gene for the trp aporepressor" Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol.77, No.12, pp.7117-7121, December 1980 Monika Papworth, Paulina Kolasinska, Michal Minczuk "Designer zinc-finger proteins and their applications" Gene 366 (2006) 27-38
背景技術に示したように、一般的な細菌宿主、特に大腸菌宿主を用いて真核生物由来の所望の外来タンパク質の生物学的機能を保持した状態の機能的タンパク質を細胞質内に高発現させる、又は正常な立体構造(本来の折りたたみ状態)を保持した可溶性状態で細胞質内に高発現させる方法であって、scFvに対しても適用可能な方法の提供が強く望まれていた。なお、本発明において、「機能的タンパク質」というとき、「本来の生物学的機能を保持した組換えタンパク質」を指すが、そのような組換えタンパク質は、通常、タンパク質本来の正常な立体構造(折りたたみ状態)を保持し、かつ可溶性状態にある組換えタンパク質でもあるので、後者の意味で用いることもある。
本発明者らは、この問題解決に鋭意取り組み、宿主大腸菌に対して特殊な改良を施さなくても、一般的な大腸菌宿主の細胞質内において、機能的な組換えscFvを大量に発現させる手法を開発するに至った。
具体的には、特殊な改変を施さない一般的な大腸菌宿主内で、種々のscFv遺伝子を用い、scFvのC末端側にDNA結合タンパク質の1種であるジンクフィンガードメインを3つ有するZif268を融合した「scFv-Zif268」として発現させることによって、組換えscFvの発現量を増大させることができた。得られた組換えscFvは、リーダー配列を含む配列を用いたにもかかわらずペリプラズムではなく細胞質内で発現しており、融合体の状態でも結合活性が高く、ぺリプラズムに発現させたscFvと同程度の結合活性を持っていた。これは、scFv-Zif268が、大腸菌の細胞質内でscFvが正しい立体構造をとった可溶化状態で発現できていることを示している。ペリプラズム発現のためのリーダー配列を省いた追試実験で、全く同じ結果が得られたことからも、「scFv-Zif268」の融合タンパク質が細胞質内で発現し、かつscFvの正常なリフォールディング形成が行われたことが確認できた。この結果は、従来特殊な改変を施さない一般的な大腸菌宿主を用いた場合は、還元的環境下にある細胞質内では機能的なscFvの回収が難しいとされていた技術常識があったことからみて、驚くべき結果である。しかも、Zif268と同様にジンクフィンガードメインに属するGAL4由来DNA結合ドメインを用いた場合には機能的なscFvが取得できない(非特許文献9)ことに加え、ロイシンジッパードメインを用いた場合はペリプラズム内での発現であった(非特許文献11、12)ことを考え合わせると、DNA結合ドメインのうちでもZif268もしくはZif268と類似したDNA結合ドメイン特有の効果である可能性がある。
また、その際Zif268をscFvのN端に融合させた「Zif268-scFv」の場合は、発現が確認できなかったという結果を得たことから、両者の結合順序も重要であり、Zif268を機能的な状態で取得したい標的タンパク質scFvのC末側に結合する必要があるといえる。
本発明者らは、さらにZif268と類似のDNA結合ドメインとして、Zif268と同程度の分子量を持ち、2次構造としてαヘリックスを多く含んでいるDNA結合ドメインである、トリプトファン・リプレッサー(trpR)及びHinリコンビナーゼ由来のHinRを選択し、両者に対して「scFv-Zif268」と同様の手法を適用し、大腸菌でscFvのC末端側に融合させた融合タンパク質を発現させたところ、Zif268と同様、細胞質内での機能的なscFvの発現増強作用が確認できた。また、scFvの由来生物種や抗原特異性を変えても同様の結果が得られることも確認できた。
このことから、scFvに対してZif268、trpR又はHinRという特定のDNA結合ドメインを含むタンパク質をC末側に結合させることで、scFvを細胞質内で機能的でかつ可溶性の状態で大量に発現させることができることが判明した。
次いで、本発明者らは、scFv以外の外来タンパク質であって、従来から形質転換細菌内での正しい立体構造の可溶化状態で発現することが難しいとされていた節足動物由来のガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)、や膜タンパク質のCD8を、scFvと同様にZif268との融合タンパク質として大腸菌内で発現させたところ、正しい立体構造をとった状態で細胞質内で大量に発現させることに成功した。このことは、発現させる対象のタンパク質については、ヒトなど哺乳動物由来のタンパク質でなくても、また本来可溶性のタンパク質ではない膜タンパク質であっても、細菌細胞質内で正しい立体構造をとり、機能的でしかも可溶性の状態で発現させることが可能であることを意味する。
以上の知見を得たことで、本願発明を完成させた。
すなわち、本願発明は以下の通りである。
〔1〕 所望の外来タンパク質のC末側に、Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメイン又はその機能的フラグメントを含むDNA結合タンパク質を融合させた融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて細菌宿主を形質転換することを特徴とする、細菌宿主細胞質内での機能的外来タンパク質の発現増強方法。
〔2〕 前記融合タンパク質において、所望の外来タンパク質のC末側であって、かつDNA結合タンパク質のN末側の位置に切断可能部位を含むリンカーが設けられていることを特徴とする、前記〔1〕に記載の発現増強方法。
〔3〕 所望の外来タンパク質が、単鎖抗体(scFv)である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の発現増強方法。
〔4〕 所望の外来タンパク質のC末側に、Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメイン又はその機能的フラグメントを含むDNA結合タンパク質を融合させた融合タンパク質をコードする核酸を有効成分とする、細菌宿主細胞質内での機能的外来タンパク質発現増強剤。
〔5〕 Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメイン又はその機能的フラグメントを含むDNA結合タンパク質をコードする核酸の使用であって、当該DNA結合タンパク質をコードする核酸を、所望の外来タンパク質をコードする核酸の3’末端に融合させることによって、前記外来タンパク質を細菌宿主の細胞質内で機能的外来タンパク質として発現させるための使用。
〔6〕 細菌宿主における所望の外来タンパク質の発現量を増強させる方法であって、下記の(a)及び(b)の工程を含む方法;
(a)Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメイン又はその機能的フラグメントを含むDNA結合タンパク質をコードする第1の核酸分子を、前記外来タンパク質をコードする第2の核酸分子の3’末端側に融合させて、細菌宿主における発現産物が、前記DNA結合タンパク質が前記外来タンパク質のC末側に位置するような融合タンパク質をコードする遺伝子構築物を形成する工程、
(b)前記構築物を、細菌宿主の細胞質内で発現させる工程。
〔7〕 さらに、下記の工程(c)を含む前記〔6〕に記載の方法;
(c)発現させた融合タンパク質を宿主細菌の細胞質画分から回収する工程。
〔8〕 前記第1の核酸分子の5’末端側で、かつ第2の核酸分子の3’末端側の位置に、切断可能部位を含むリンカー配列をコードする核酸分子が融合されていることを特徴とする前記〔6〕又は〔7〕に記載の方法。
本発明により、従来一般的な大腸菌など細菌の細胞質内では、正常な立体構造(本来の折りたたみ構造)を保持し、可溶化した状態で発現させることが困難とされていた外来タンパク質を、そのC末端側に各種DNA結合タンパク質を融合させた融合タンパクとして発現させることで、どのような外来タンパク質であっても細胞質内で正常な立体構造を保持した状態で効率よく発現させることができる。そして、従来のペリプラズム領域よりも空間的なゆとりが大きい細胞質内で発現増強効果を発揮できるため、望みの外来タンパク質を正常な立体構造を保持した可溶化状態で大量に製造することが可能となった。
特に、医薬用途などで期待が大きい組換え単鎖抗体(scFv)を、大量生産することができる点は画期的である。
図1は、発現した遺伝子を模式的に示した。図中、A10B scFvはマウス由来抗ウサギIgG組換え単鎖抗体を指し、VHはそのH鎖可変領域、VLはそのL鎖可変領域を示す。pelBは、大腸菌の膜透過のシグナル配列を示す。(G4S)3は、グリシン(G)とセリン(S)がつながったG-G-G-G-Sという配列が3回繰り返しているリンカーを示す。 図2は、A10B scFv単独、Zif268を融合させた場合、MBP(マルトース結合タンパク質)を融合させた場合、それぞれの抗原(ウサギIgG)に対する反応性(ELISA法)を示している。A10B scFv-Zif268が高い抗原反応性を示していることが分かる。 図3Aは、A10B scFv単独、Zif268を融合させた場合、MBP(マルトース結合タンパク質)を融合させた場合、およびA10B scFv-Zif268を細胞質に発現させた場合の可溶性画分のペリプラズム(P)と細胞質(C)での発現量をウェスタンブロッティング法で測定した結果を示している。 図3Bは、上記画分の抗原(ウサギIgG)に対する反応性(ELISA法)を示している。A10B scFv-Zif268が、分泌シグナルの有無にかかわらず、細胞質で大量に発現していることが分かる。 図4は、A10B scFv単独、Zif268を融合させた場合、MBP(マルトース結合タンパク質)を融合させた場合、培養温度・発現誘導剤(IPTG)濃度を変化させ、発現した場合の各画分の抗原(ウサギIgG)に対する反応性(ELISA法)を示している。誘導条件が変わってもA10B scFv-Zif268が高い抗原反応性を示していることが分かる。 図5は、A10B scFvをペリプラズムから精製した画分とA10B scFv-Zif268を細胞質から精製した画分の抗原(ウサギIgG)に対する反応性(ELISA法)を示している。細胞質にあるA10B scFv-Zif268が、ペリプラズム中にある、すなわちジスルフィド結合をもち正しい立体構造を持っていると思われる画分(scFv)と全く同じ反応活性を持っていることが分かる。細胞質にあるA10B scFv-Zif268が正しい立体構造を持っていることを示している。 図6では、A10B scFv以外の抗体scFvでも効果があることを示す。図6は、抗ガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)抗体scFv、ニワトリ由来の抗ウサギIgG免疫グロブリン抗体scFvそれぞれに、Zif268をC末側に融合させた場合の機能的scFv発現量増強効果を調べた結果を示している。 図7では、Zif268以外のDNA結合ドメインでも効果があることを示す。図7Aは、Zif268とともに、トリプトファン・リプレッサー(trpR)やHin RecombinaseのDNA結合ドメイン(HinR)をA10B scFvに融合させた場合の全発現量を比較したものである。trpRやHinRもZif268と同様に機能的なscFvの発現増強効果があることが分かる。 図7Bは、図7Aと同様に、A10B scFvをZif268,trpR及びHinRと融合させた場合の発現量を、ペリプラズム画分及び細胞質画分ごとに比較したものである。いずれのDNA結合ドメインの場合も細胞質内での発現によって、機能的scFvの発現増強が引き起こされたことがわかる。 図8では、scFvだけではなく、一般の外来タンパク質に対しても発現量増強効果があることを示す。図8は、節足動物由来のタンパク質であるガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)および哺乳動物由来タンパク質であってもscFvとは全く物性の異なる膜タンパク質のCD8に対するZif268融合による発現増強効果を示している。タンパク質内に5つのジスルフィド結合を持つガウシア・ルシフェラーゼ(GLuc)は、大腸菌での発現が難しいとされているが、Zif268融合による発現により、発現が改善されていること、及び膜タンパク質CD8でも同様に機能的なタンパク質の発現改善効果があることを示している。
1.本発明で用いられる「DNA結合タンパク質」について
(1)本発明の「DNA結合タンパク質」
本発明で用いられる「DNA結合タンパク質」は、周知のDNA結合ドメインであるZif268、トリプトファン・リプレッサー(trpR)及びHinリコンビナーゼ由来のHinRから選択されたDNA結合ドメイン又はその機能的フラグメントを含むDNA結合タンパク質である。
「Zif268」は、ステロイド/甲状腺ホルモン核受容体スーパーファミリーのメンバーEgr1(Mus musculus early growth response)から取得された、3つのZnフィンガードメインClass-1を有するDNA結合ドメインであり、様々な生物種で配列上の相同性がきわめて高く保存されている。Zif268は通常のZnフィンガードメインClass-1に特有の、3つのDNA結合配列モチーフ(oxCx2-4Cx3ox5ox2Hx3-4Hx2-6)で構成され、この配列モチーフに含まれる2つのヒスチジン残基および2つのシステイン残基が亜鉛イオンと結合している(例えば、Berg et al. (1996) Science 271:1081-1085参照)。なお、Znフィンガーの配列モチーフ「oxCx2-4Cx3ox5ox2Hx3-4Hx2-6」中、C=Cys、H=His、o=疎水性アミノ酸残基、x=任意のアミノ酸残基を表す。
本実施例では、マカクザル由来のZif268(AF385078(nlm.nih.gov/nuccore/AF385078))からその機能的フラグメントに当たる19〜107番目の部分アミノ酸配列(配列番号1)を大腸菌に最適化し人工合成して用いたが、マカクザル由来配列には限られず、どのような生物種由来であってもよい。たとえば、ヒトのZif268(NM_001964)の他、mouse(NM_007913.5)、rat(NM_012551.2)、cow(NM_001045875.1)、chicken(NM_204136.2)、bird(AF492528)などが例示できる。これらの全長配列を用いてもいいし、これら配列中の本発明の実施例で用いられた配列番号1に対応する機能的フラグメントを含む部分配列を用いても良い。なお、実施例などでは、当該配列番号1のZif268機能的フラグメントを、単に「Zif268」と表記し、融合タンパク質でも「タンパク質-Zif268」などと表記している。
「HinR」は、Hinリコンビナーゼ(198amino acids)中のC端の52アミノ酸がDNA結合能を有するDNA結合ドメイン(HinR)に相当し、5つのαへリックスで構成されたヘリックス−ターン−ヘリックス(HTH)ドメインに属する(非特許文献18)。
「HinR」も、各種微生物のインベルターゼ中に保存性の高い領域が確認されており、本実施例では非特許文献18記載の配列番号3に示されるアミノ酸配列(サルモネラ菌由来)を用いたが、サルモネラ菌由来インベルターゼ(WP_000190914)の他、大腸菌(WP_021553495)、枯草菌(WP_016191666)、肺炎桿菌(WP_020804545)などの配列中の配列番号3に相当するアミノ酸配列を含む機能的フラグメントを利用することができる。
「trpR」は、Tryptophan転写抑制因子であって、「HinR」と同様にHTHドメインに属し、108アミノ酸からなり、トリプトファンの結合に伴い2量体化し、DNAに結合する性質をもち(非特許文献19)、配列番号5などで表される。
実施例では非特許文献19に記載の大腸菌由来trpR(PRF Ac.070329A)を用いたが、他の大腸菌(WP_021544456)やサルモネラ菌(WP_000190914)など他の細菌由来の「trpR」を用いることもできる。
本発明においては、これら各DNA結合ドメイン(Zif268、HinR又はtrpR)もしくはその機能的フラグメントを含んでさえいれば、それぞれのN端及び/又はC端側に余分なアミノ酸配列が残っていても、又は他のペプチドもしくはタンパク質が結合して融合タンパク質となっても、細菌細胞質内での機能的な外来タンパク質形成能という効果は変わらない。
したがって、本発明の「DNA結合タンパク質」は、以下のように表すことができる。
「Zif268、HinR及びtrpRから選択されたDNA結合ドメイン又はその機能的フラグメントを含むアミノ酸配列からなるDNA結合タンパク質。」
また、これら各DNA結合ドメイン中のαへリックス構造、βシートなどの立体構造に影響を与えない程度のアミノ酸変異、すなわち1ないし数個(10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下)のアミノ酸の欠失・置換・挿入・付加による変異であれば許容される。
したがって、本発明の各DNA結合ドメインは、それぞれのアミノ酸配列を用いて、以下のように表現することもできる。
「配列番号1、3もしくは5に示されるアミノ酸配列、またはその1ないし数個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列であって、DNA結合ドメインとしての活性を保持したアミノ酸配列からなるDNA結合タンパク質。」
(2)本発明で用いる「DNA結合タンパク質」の共通性
本発明の「DNA結合ドメイン」は、いずれも所望の外来タンパク質のC末側に結合させた融合タンパクとして大腸菌など細菌宿主で発現させることで、細菌の細胞質内で、正常なフォールディングを形成させ、かつ発現増強も起こさせる機能を有している。
ところで、DNA結合ドメインは、一般に特定の転写調節機構に関与する転写因子などに由来するため、それぞれ特異的に固有のDNA配列を認識し、当該DNA配列を含む特定のDNA領域への結合能を有しており、従来から、このような個々のDNA結合ドメイン固有の特定DNA領域への結合能を利用して、標的遺伝子の転写制御を行うことは広く行われており、その際に、scFvと標的遺伝子の転写開始領域を認識するDNA結合ドメインとの融合タンパク質の構築も行われていた(特許文献4、5、非特許文献20)。
本発明の各DNA結合ドメインにもそれぞれ特定のDNA領域に対する特異的な認識能、結合能が存在するが、それぞれの認識配列には全く共通性がないことからみて、このような特定のDNA配列に対する特異的な認識能が利用されているわけでないことは明らかである。具体的には、Zif268の認識配列が「gcgtgggcgt」配列であり、HinRの認識配列が「tttttgataa」配列であり、Tryptophan transcriptional repressor中のtrpRの認識配列が「gtactagtt」配列であって、それぞれのDNA結合ドメインが特異的に認識し、結合する対象となるDNA領域の配列間には、何らの共通性は見いだせない。
本発明のDNA結合ドメインが、融合させた外来タンパク質に対して、どのようなメカニズムで細菌の細胞質内で、正常なフォールディングを形成させ、かつ発現増強も起こさせるのかの詳細は不明であるが、標的とする外来タンパク質のC末側に結合させた、各種のDNA結合ドメインに共通的な性質に基づいて、細胞質内での融合タンパク質中の外来タンパク質の正しいジスルフィド結合形成を促進することができ、その結果、機能的外来タンパク質の産生促進を実現することができたものと解される。本発明者らは、各「DNA結合ドメイン」に共通した性質として、以下のような性質に着目している。すなわち、その1つは、DNA結合ドメイン共通の性質としてマイナス電荷を有するDNAへの結合能を持つことからみて、プラス電荷と共に親水性の傾向を持っているフラグメントであると考えられる点であり、他の1つは、Zif268、HinR及びtrpR中の機能的フラグメント領域を構成するアミノ酸残基数は50〜110程度(約5〜11kDa)とコンパクトであり、しかもαへリックスを多く含む安定かつ柔軟な構造(S. Harrison, Nature, 353: 715-719(1991)のFIG.1など参照)を有している点である。前者の性質は、静電的な相互作用による非特異的なタンパク質、核酸などへの結合能を想起させるものである。以下のメカニズムに限定するものではないが、後者の性質は、シャペロンタンパク質とも共通しており、外来タンパク質との融合タンパク質として発現後、速やかに柔軟構造を利用して外来タンパク質と緩く非特異的な結合状態を形成し、外来タンパク質のリフォールディングを助けるシャペロン機能を発揮するというメカニズムが強く示唆される。
2.本発明の対象となる外来タンパク質
本発明において対象となる外来タンパク質は、どのようなタンパク質であっても良いが、特に、従来から大腸菌などの細菌の細胞質内では正常な立体構造での発現が難しいとされていたヒトなど哺乳類、鳥類、昆虫など真核生物由来のタンパク質が特に適している。たとえば単鎖抗体などの抗体フラグメント、ルシフェラーゼなどの他、インターフェロン、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、トロンボポエチン、成長ホルモン、プロインスリンなどの種々の生理活性タンパク質、プロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、スーパーオキシドディスムターゼなどの酵素類、インターロイキン受容体などのレセプター類、リゾチーム、血清アルブミン、スギ花粉抗原、およびウイルス構成タンパク質などが挙げられる。
抗体フラグメントとしては、単鎖抗体(scFv)の他、Fab又はFvも好ましく用いられる。ここで、単鎖抗体(scFv)は、モノクローナル抗体の重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とをペプチドリンカーでつないだ一本鎖の抗体フラグメントを指し、Fabは、重鎖又は軽鎖由来の可変領域(VH又はVL)と定常領域(CH1又はCL)からなるフラグメント、Fvは重鎖又は軽鎖由来の可変領域(VH又はVL)を指すが、いずれも当業者には周知である。
たとえば、本発明の実施例で用いた「A10B scFv」は、mouse抗ウサギIgG抗体のVHとVLをリンカーで結合した単鎖抗体(AC No.AY635846)であり、典型的なscFvとして研究用に汎用されている。
本発明の単鎖抗体(scFv)として、実施例では、他に由来生物又は抗原が異なるMouse anti-GLuc scFv及びChicken anti-rabbit IgG scFvを用いて同様の結果を得ている。
さらに、本発明の実施例では、DNA結合ドメインと融合させる単鎖抗体以外の機能的外来タンパク質として、実施例では、節足動物由来の「GLuc」及び哺乳動物由来ではあるが膜タンパク質である「CD8」を用いた実験を行い、同様の結果を得ている。なお、「GLuc」は、Gaussia由来ルシフェラーゼ(AY015993)を表し、「CD8」はヒトCD8α(AC No.DQ896639)を表す。
以上のことからみて、DNA結合ドメインと融合させる対象の外来タンパク質は、生物の由来も、タンパク質の種類もどのようなものであっても適用できることは明らかである。
3.融合タンパク質及びその製造方法
(1)リンカー、遺伝子の結合順序
本発明では正常な機能的タンパク質として発現させたい所望の外来タンパク質のC末側にDNA結合タンパク質が結合した状態の融合タンパク質が発現できるという融合タンパク質での結合順序が重要である。したがって、発現ベクターに挿入する組換えDNAは、外来タンパク質遺伝子の3’末端側にリンカーを介して又は介することなくDNA結合タンパク質遺伝子を結合させて構築する。
また、本発明では、ペリプラズムなど各器官への移行シグナル配列の有無に関わりなく同様の細胞質内での発現増強効果を発揮させることができる。すなわち、市販の移行シグナル配列、分泌シグナル配列などが組み込まれたベクターなどを用いる場合に、当該シグナル配列をわざわざ除去する必要はないし、反対にあえて結合させる必要はない。ただし、ペリプラズムもしくは細胞外への分泌を完全に抑えるためには、ペリプラズム移行シグナル配列、細胞外分泌シグナル配列などの移行シグナルはあらかじめ全て除去しておくことが好ましい。
ここで、リンカーとしては、汎用のリンカー配列であるグリシン(G)及び/又はセリン(S)の連続配列(たとえば(G4S)3、(G4S)4)を用いることができるが、各種リンカー配列が周知であって、当業者は適宜選定できるので、これには限定されない。なお、前述のように、外来タンパク質遺伝子とDNA結合ドメインとの結合方法自体は従来から既知であり(非特許文献20、特許文献4、5)、これら文献の記載に従って結合させることができる。
(2)発現ベクター、宿主微生物
本発明の発現ベクターとしては、通常の細菌用のベクターであれば、どのようなベクターであっても用いることができる。このようなベクターは当業者には周知であり、多数の細菌用ベクターが市販されている。具体的には、例えば、pTrcHis2ベクター、pcDNA3.1/myc-Hisベクター(Invitrogen社製)、pUC119(宝酒造社製)、pBR322(宝酒造社製)、pBluescript II KS+ Stratagene社製)、pQE-Tri(Qiagen社製)、pET、pGEM-3Z、pGEX、pMAL等のプラスミドベクター、λEMBL3(Stratagene社製)、λDASHII(フナコシ社製)等のバクテリオファージベクター、Charomid DNA(和光純薬工業(株)製)、Lorist6(和光純薬工業(株)製)等のコスミドベクター等が挙げられる。また、大腸菌由来のプラスミド(例えばpTrc99A, pKK223, pET3a)等の他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNA I/Neo、p3×FLAG-CMV-14、pCAT3、pcDNA3.1、pCMV等も挙げられる。
ただし、本発明においては、ペリプラズムもしくは、菌体外に分泌させずに、細胞質内で発現させることを特徴としているため、市販のプラスミド、ファージベクターのうち、あらかじめOmpA、pelBなどのシグナルペプチドをコードするDNAが組み込まれているベクターをあえて用いる必要はない。そのようなベクターを用いる場合であって、完全にペリプラズムや菌体外への漏れを防ぐためには、これらシグナル配列を除去又は不活性化して用いる。
また、外来タンパク質の検出や精製を容易にするために、外来タンパク質は、タグペプチドを結合して発現させても良い。融合させるタグペプチドとしてはFLAGタグ、3XFLAGタグ、Hisタグ(His tag、例えば6×Hisタグ)等が挙げられる。
そして、本発明の融合タンパク質遺伝子の転写を制御するためのプロモーターは、誘導可能なプロモーターが好ましく、たとえば、IPTGにより誘導可能なプロモーターであるlac、tac、trcの他、IAAで誘導可能なtrp、L-アラビノースで誘導可能なara、テトラサイクリンを用いて誘導可能なPzt-1、高温(42℃)で誘導可能なPLプロモーター、コールドショック遺伝子の一つであるcspA遺伝子のプロモーターなどが使用できる。これらのプロモーターの制御下にある本発明の融合タンパク質遺伝子を、前記発現ベクターに挿入する。
得られた発現用組み換えベクターを用いて、適当な宿主細菌(原核微生物)を形質転換(形質導入)することにより、形質転換細菌を調製する。
本発明に用いられる宿主細菌としては、大腸菌(Escherichia coli.)の他、バチルス属菌(B. subtilis, B. megaterium, B. brevis, B. borstelenis等)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、乳酸連鎖球菌(Lactococcus lactis)、乳酸桿菌(Lactobacillus)などの周知の形質転換用の細菌宿主を用いることができる。
本発明に用いられる宿主大腸菌としては、具体的には、HB101、JM109、MC4100、MG1655、W3110等の一般的に用いられる株を用いることができる。本発明においては、細胞質内の環境を酸化的な環境などの、ジスルフィド結合を形成しやすい細胞質内環境の特別な改良は不要であるが、このような改良が施された市販のコンピテントセル(New England Biolabs社製「SHuffle」又はNovagen社製「Origami」)の他、degP変異株、ompT変異株、tsp変異株、lon変異株、clpPX変異株、hslV/U変異株、lonおよびclpPX二重変異株、lon、clpPXおよびhslV/U三重変異株等のプロテアーゼ変異株、plsX変異株、rpoH欠失変異株、rpoHミスセンス変異株等の変異株を用いることもできる。
発現用組み換えベクターによる宿主細胞の形質転換は、従来周知の方法を用いて行うことができる。例えば、一般的なコンピテントセル形質転換方法(J. Bacteriol. 93, 1925 (1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet. 168, 111 (1979))、エレクトロポレーション法(FEMS Microbiol. Lett. 55, 135 (1990))又はLP形質転換方法(T. Akamatsuら, Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2001, 65, 4, p.823-829)、M.Morrisonの方法(Methods in Enzymology, 68, 326-331,1979参照)等により行うことができる。また、市販のコンピテントセルを用いる場合には、その製品プロトコールに従って形質転換を行えばよい。
(3)外来タンパク質の回収方法、精製方法
形質転換細菌の培養方法は、周知の一般的な細菌の培養方法が適用でき、温度、培地のpH及び培養時間も適宜設定され得る。宿主細胞が大腸菌である形質転換体を培養する場合は、大腸菌を培養する常法の条件で、かつ通常用いられる液体培地で行えばよい。
外来タンパク質は、DNA結合ドメインの融合タンパク質として、培養物から回収される。濾過または遠心分離などの方法によって菌体を回収し、適当な緩衝液に再懸濁する。そして、例えば界面活性剤処理、超音波処理、リゾチーム処理、凍結融解などの方法で、回収された菌体の細胞壁及び/又は細胞膜を破壊した後、遠心分離や濾過などの方法で融合タンパク質を含有する粗抽出液を得る。そして、一般に用いられる方法に従って、粗抽出液から融合タンパク質を単離、精製する。
融合タンパク質の単離、精製方法としては、例えば塩析、溶媒沈殿法等の溶解度を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動など分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられる。精製された融合タンパク質は、例えば抗His抗体を用いたELISA等により確認することができる。
次いで、Enterokinase、Factor Xa、Thrombin、HRV 3C protease、等のタンパク質切断酵素を利用することで、市販ベクターに組み込まれているタグ配列を適宜取り除くことができる。
また、融合タンパク質の構築に当たり、あらかじめ外来タンパク質とDNA結合タンパク質との間のリンカー部分にこれらの酵素の認識領域を組み込んでおくことで、上記切断酵素を利用して、融合タンパク質から外来タンパク質を切断できるから、必要に応じて、外来タンパク質を、外来タンパク質に応じた公知の精製方法に従って単離・精製することができる。
例えば、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーに代表されるタンパク質の精製方法により行なうことができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
本発明におけるその他の用語や概念は、当該分野において慣用的に使用される用語の意味に基づくものであり、本発明を実施するために使用する様々な技術は、特にその出典を明示した技術を除いては、公知の文献等に基づいて当業者であれば容易かつ確実に実施可能である。また、各種の分析などは、使用した分析機器又は試薬、キットの取り扱い説明書、カタログなどに記載の方法を準用して行った。
なお、本明細書中に引用した技術文献、特許公報及び特許出願明細書中の記載内容は、本発明の記載内容として参照されるものとする。
(実施例1)発現ベクターの作製
(1−1)pET-22b/A10B scFvの作製
A10Bを大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。AC No.AY635846の配列情報を元に人工合成したA10B遺伝子(配列番号7)の5’末端側にEcoRI、3’末端側にHindIIIとNotIを配置した。当該末端処理を施したA10B遺伝子及び、pET-22b(+)(タカラバイオ社)をEcoRI(Takara社)とNotI(Takara社)で37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、各バンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kit(Qiagen社)を用いて精製した。精製したA10B遺伝子とpET-22b(+)ベクターをライゲーションし、大腸菌(DH5α株)にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-22b/A10Bプラスミドを取得した。構築した発現ベクターの模式図を図1に示す。
(1−2)pET-22b/A10B scFv-Zif268の作製
A10B scFv-Zif268を大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。Zif268(AC No.AF385078)中の機能的フラグメント(配列番号1)の配列情報を元にZif268遺伝子断片(配列番号2)を人工合成した。人工的に合成したZif268遺伝子断片が挿入されたプラスミド及び前記(1−1)で作製したpET-22b/A10B scFvをHindIII(Takara社)とXhoI(Takara社)で37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、各バンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kit(Qiagen社)を用いて精製した。精製したZif268遺伝子断片(以下、単にZif268遺伝子という。)とA10B scFvが付加されたpET-22bベクターをライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-22b/A10B scFv-Zif268プラスミドを取得した。Zif268はA10B scFvの3’末端側(C末端側)に配置した。構築した発現ベクターの模式図を図1に示す。
(1−3)pET-30a/A10B scFv-Zif268の作製
A10B scFv-Zif268を大腸菌の細胞質内で発現させるための発現ベクターを作製した。前記(1−2)で作製したpET-22b/A10B scFv-Zif268を鋳型に5’側にNcoIサイトを付加したフォワードプライマー(5’ ATGCCCATGGGTATGGCCCAGGTGCAGCT 3’:配列番号8)及び5’側にXhoIサイトを付加したリバースプライマー(5’ ACGCGCTCGAGGTCTTTCTGGCGTAAG 3’:配列番号9)、を用いてPCR反応によりA10B scFv-Zif268遺伝子を増幅した。PCRはKOD-FXポリメラーゼ(ToYoBo社)を用いて95℃ 2分を1サイクル、95℃ 30秒・55℃ 30秒・68℃ 1分を25サイクル、68℃ 3分・20℃を1サイクルの反応を行った。増幅したA10B scFv-Zif268断片とpET-30aはNcoIとXhoIによりそれぞれ37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、各バンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したA10B scFv-Zif268遺伝子とpET-30aベクターをライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-30a/A10B scFv-Zif268プラスミドを取得した。構築した発現ベクターの模式図を図1に示す。
(1−4)pET-22b/A10B scFv-MBPの作製
比較のために、A10B scFvをマルトース結合タンパク質(Maltose-binding protein:MBP)と融合させたA10B scFv-MBPを大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。
MBPが挿入された市販ベクターのpMAL-p2X(New England Biolabs社)を鋳型に5’側にHindIIIサイトを付加したフォワードプライマー(5’ AGGCAAGCTTAAAATCGAAGAAGGTAAACT 3’:配列番号10)及び5’にXhoIサイトを付加したリバースプライマー(5’ ACGCGCTCGAGAGTCTGCGCGTCTTTCAGG 3’:配列番号11)、を用いてPCR反応によりMBP遺伝子を増幅した。PCRはKOD-FXポリメラーゼを用いて95℃ 2分を1サイクル、95℃ 30秒・55℃ 30秒・68℃ 1分を25サイクル、68℃ 3分・20℃を1サイクルの反応を行った。増幅したMBP断片と前記(1−1)で作製したpET-22b/A10B scFvをHindIIIとXhoIで37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、各バンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したMBP遺伝子とA10B scFvが付加されたpET-22bベクターをライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、A10BのC末端側にMBPが配置されたpET-22b/A10B scFv-MBPプラスミドを取得した。
(1−5)pET-22b/Anti-GLuc scFvの作製
Anti Gaussiaルシフェラーゼ(GLuc)scFvを大腸菌で発現させる発現ベクターを作製した。Anti GLuc scFv(GL-11-6)(配列番号12)をコードするDNAを鋳型に5’側にEcoRIサイトを付加したフォワードプライマー(5’ ACGCGGAATTCCAGGTGCAGCTGAAGG 3’:配列番号13)及び5’側にNotIサイトを付加したリバースプライマー(5’ CAAATGCGGCCGCGACGTTTGAGCTCCAG 3’:配列番号14)、を用いてPCR反応によりAnti-GLuc scFv遺伝子を増幅した。PCRはKOD-FXポリメラーゼを用いて95℃ 2分を1サイクル、95℃ 30秒・55℃ 30秒・68℃ 1分を25サイクル、68℃ 3分・20℃を1サイクルの反応を行った。増幅したAnti GLuc scFv断片とpET-22bをEcoRIとNotIで37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、各バンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したAnti GLuc scFv遺伝子とpET-22bベクターをライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-22b/Anti GLuc scFvプラスミドを取得した。
(1−6)pET-22b/Anti-GLuc scFv-Zif268の作製
Anti-GLuc scFv-Zif268を大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。前記(1−2)で作製したpET-22b/A10B scFv-Zif268をEcoRIとNotIで37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、Zif268が付加されたベクターのバンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製した遺伝子と前記(1−5)で作製した、EcoRI・NotI処理のAnti-GLuc scFv断片をライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、Anti-GLuc scFvのC末端側にZif268が配置されたpET-22b/Anti GLuc scFv-Zif268プラスミドを取得した。
(1−7)pET-22b/Chicken anti-rabbit IgG scFv及びpET-22b/Chicken anti-rabbit IgG scFv-Zif268の作製
前記(1−1)と同様の方法で、Chickenの脾臓から取得したChicken anti-rabbit IgG scFv(配列番号15)をコードするDNAを鋳型としてPCR反応により増幅し、末端をEcoRI・NotI処理したChicken anti-rabbit IgG scFv断片を精製した。当該断片をpET-22bベクターに挿入し、Chicken anti-rabbit IgG scFvを大腸菌内で発現させるための発現ベクター、pET-22b/Chicken anti-rabbit IgG scFvプラスミドを作製した。
前記(1−2)で作製したpET-22b/A10B scFv-Zif268からEcoRI・NotI処理によりZif268が付加されたベクターを回収し、上記EcoRI・NotI処理のChicken anti-rabbit IgG scFv断片をライゲーションし、前記(1−2)と同様の方法により、Anti-rabbit IgG scFvのC末端側にZif268が配置されたpET-22b/Chicken anti-rabbit IgG scFv-Zif268プラスミドを取得した。
(1−8)pET-22b/A10B scFv-trpRの作製
A10B scFv-trpRを大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。trpR遺伝子の配列情報(Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.77, No.12, pp.7117-7121, December 1980)からtrpR遺伝子断片を人工的に合成し(配列番号6)、前記(1−2)と同様に発現ベクターを得た。
(1−9)pET-22b/A10B scFv-HinRの作製
A10B-scFv-HinRを大腸菌で発現させるための発現ベクターを作製した。HinRのアミノ酸情報(SCIENCE Vol.263 p.348-355 JANUARY 1994、配列番号3)からコドンを大腸菌に最適化してHinR遺伝子断片(配列番号4)を人工合成し、前記(1−2)と同様に発現ベクターを得た。
(1−10)pET-22b/GLucの作製
Gaussiaルシフェラーゼ(GLuc)を大腸菌で発現させる発現ベクターを作製した。Gaussiaルシフェラーゼ遺伝子(AC No.AY015993:配列番号16)を人工的に合成し、EcoRIとNotIで切断し、切断断片を同様の制限酵素で切断したベクター、pET-22bを前記(1−2)と同様にライゲーション・トランスフォーメーション後、出現したクローンをクローニングし、Gaussiaルシフェラーゼの発現ベクターを構築した。
(1−11)pET-22b/GLuc-Zif268の作製
GLuc-Zif268を大腸菌で発現させる発現ベクターを作製した。前記(1−2)で作製したpET-22b/A10B scFv-Zif268をEcoRIとNotIで37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、Zif268が付加されたベクターのバンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製した遺伝子と前記(1−10)で作製した、EcoRI・NotI処理のGLuc断片をライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-22b/GLuc-Zif268プラスミドを取得した。
(1−12)pET-22b/CD8の作製
CD8(Human CD8α:AC No.DQ896639:配列番号17)を大腸菌で発現させる発現ベクターを作製した。Human CD8αは遺伝子配列情報を元に人工合成し、合成した遺伝子を鋳型に5’側にEcoRIサイトを付加したフォワードプライマー(5’ -ACGCGGAATTCGTACAAAAGAGCAGGCTC- 3’:配列番号18)及び5’側にNotIサイトを付加したリバースプライマー(5’ -CCTTTTGCGGCCGCGTACAAGAAAGCTGGGT- 3’:配列番号19)、を用いてPCR反応によりCD8遺伝子を増幅した。PCRはKOD-FXポリメラーゼを用いて95℃ 2分を1サイクル、95℃ 30秒・55℃ 30秒・68℃ 1分を25サイクル、68℃ 3分・20℃を1サイクルの反応を行った。増幅したCD8断片とpET-22bをEcoRIとNotIで37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、各バンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したCD8遺伝子とpET-22bベクターをライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-22b/CD8プラスミドを取得した。
(1−13)pET-22b/CD8-Zif268の作製
CD8-Zif268を大腸菌で発現させる発現ベクターを作製した。前記(1−2)で作製したpET-22b/A10B scFv-Zif268をEcoRIとNotIで37℃、3時間処理し、アガロースゲル電気泳動後、Zif268が付加されたベクターのバンドを回収しQiaquick Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製した遺伝子と前記(1−12)で作製した、EcoRI・NotI処理のCD8断片をライゲーションし、大腸菌にトランスフォーメーションし、クローニングを行なった。クローンは配列解析を行い、正しい配列のクローンを決定し、pET-22b/CD8-Zif268プラスミドを取得した。
(実施例2)Zif268によるA10B scFvの発現増強効果
(2−1)発現ベクターによるタンパク質の発現
実施例1で作製したpET-22b/A10B scFv、pET-22b/A10B scFv-MBP、pET-22b/A10B scFv-Zif268を大腸菌BL21(DE3)株(Novagen社)へ導入し、形質転換クローンをクローニングした。形質転換クローンはアンピシリンを添加したLB培地2mL、37℃、200r.p.mで一晩前培養する。前培養液1mLをアンピシリンを添加したLB培地100mLに加え、37℃、200r.p.mで培養する。波長600nmの吸光度が0.5に達するまで2〜3時間培養し、培養液の温度を30℃に冷し、0.2mMのIPTGを加え、30℃で一晩培養し、各タンパク質の発現を誘導し、大腸菌を回収した。
(2−2)大腸菌からのライセートの回収
前記(2−1)で得た大腸菌からライセートを抽出するために、1mM ABSF、protease inhibitor入りのPBSを2mL加え、超音波で大腸菌を破砕し、20000r.p.mで30分間遠心し、上清を回収し大腸菌ライセートとした。
(2−3)大腸菌からのペリプラズム画分の回収
前記(2−1)で得た大腸菌からペリプラズム画分を抽出するために、PE Buffer(20%Sucrose, 1mM EDTA, 100mM Tris-HCl pH8.0)を2mL加え、氷中で30分処理し、4000r.p.mで20分間遠心後、上清を回収しペリプラズム画分とした。
(2−4)大腸菌からのサイトプラズム画分の回収
サイトプラズム画分を抽出するために、前記(2−3)で得たペリプラズム画分を除いた大腸菌に、1mM ABSF、protease inhibitor入りのPBSを2mL加え、超音波で大腸菌を完全に破砕し、20000r.p.mで30分間遠心後、上清を回収しサイトプラズム画分とした。
(2−5)ELISAによるA10B scFv発現大腸菌ライセートからのA10B scFvの結合活性測定
発現させたA10B scFv、A10B scFv-Zif268、A10B scFv-MBPの結合活性はELISAにより測定した。抗原(Rabbit IgG)をコーティングバッファーで10ng/mlに調整し、96wellイムノプレートに50μL/well分注し、室温で2時間コーティングした。コーティング後、プレートをPBSで2回洗浄し、2%BSAを250μL/well分注し室温で2時間ブロッキングした。
次いで、前記(2−3)及び(2−4)でそれぞれ分画したペリプラズム及びサイトプラズムを50μL/well分注し、室温で2時間抗原と反応させた。その後、PBS-T(0.05% Tween20/PBS)で3回洗浄後、PBSで2回洗浄し、0.2%BSA/PBSで5000倍に希釈したHRPが結合した抗His抗体(Roche社)を1時間反応させ、PBS-T(0.05% Tween20/PBS)で3回洗浄後、PBSで2回洗浄し、発色基質(Sigma社)と反応させた後、発色を測定しA10B scFvの結合活性を測定した。結果を図2に示す。
結果、発現させた全てのA10B scFvが結合活性を有することが確認された。A10B scFv単独及びA10B scFvとMPBを融合させたタンパク質は同程度の結合活性を有しており、Zif268を融合させた場合はA10B scFv単独及びA10B scFvとMPBを融合させたタンパク質と比較しておよそ100倍高い結合活性が確認された。
(実施例3)A10Bのペリプラズムとサイトプラズムでの発現及び結合活性の測定
(3−1)ペリプラズムの分画
実施例1で示した発現ベクター、pET-22b/A10B scFv、pET-22b/A10B scFv-Zif268、pET-30a/A10B scFv-Zif268、pET-22b/A10B scFv-MBP、を実施例2(2−1)と同様にタンパク質の発現を誘導した。発現誘導した大腸菌のペリプラズムからタンパク質を抽出するために、実施例2(2−3)と同様に、PE Buffer(20% Sucrose、100mMTris-HCl pH8.0、1mM EDTA)を2mL加え、15分間氷冷後、13000r.p.mで20分間遠心し、上清を回収しペリプラズムを分画した。
(3−2)サイトプラズムの分画
前記(3−1)でペリプラズムを回収した大腸菌のペレットに、実施例2(2−4)と同様に、1mM ABSF、Protease inhibitorを加えたPBSを2mL加え、超音波で大腸菌を破砕し、20000r.p.mで30分間遠心し、上清を回収しサイトプラズムを分画した。
(3−3)ウェスタンブロッティングによる発現の確認
各A10B scFvのペリプラズム及びサイトプラズムの発現量はSDS-PAGE後にウェスタンブッティングによって発現量の比較を行なった。ペリプラズム及びサイトプラズム画分は各20μLとサンプルバッファー20μLを混合し、95℃、5分間熱処理し、10%アクリルアミドゲルで電気泳動した。電気泳動後のアクリルアミドゲルからタンパク質をトランスブロッターを用いてPDFメンブレン(ミリポア社)に転写し、5%スキムミルク/PBSでブロッキングした。ブロッキングしたメンブレンを0.5%のスキムミルクで5000倍に希釈したHRPが結合した抗His抗体(Roche社)によって1時間処理し、PBS-T(0.05% Tween20/PBS)で3回洗浄後、PBSで2回洗浄し、発光基質(ミリポア社)と反応させた後、発光を測定することによりタンパク質の発現量を測定した。結果を図3Aに示す。
pET-22b/A10B scFv、pET-22b/A10B scFv-MBP発現ベクターによって発現したタンパク質はpelBリーダー配列によりペリプラズムにタンパク質が移行しており、サイトプラズム内での移行途中のタンパク質も確認された。また、両タンパク質は同程度の発現量であることが分かった。
一方、pET-22b/A10B scFv-Zif268、pET-30a/A10B scFv-Zif268発現ベクターによって発現したタンパク質の場合は、pelBリーダー配列の無いpET-30a/A10B scFv-Zif268のみならず、pelBリーダー配列があるpET-22b/A10B scFv-Zif268においても、ペリプラズムには移行しておらず、発現したタンパク質がサイトプラズムに留まることが分かった。そして、Zif268を付加した場合は、いずれの場合でも発現量が飛躍的に向上することが示された。MBPと融合させた場合は、そのようなサイトプラズムに留まる現象も、発現増強効果も観察できなかった。
なお、N端にZif268を繋いだ場合(pET-22b/Zif268-A10B scFv発現ベクター)についても、同様の実験を行ったが、融合タンパク質の発現は全く観察されなかった。(結果は図示せず。)
(3−4)ELISAによる活性測定
各A10B scFvのペリプラズム及びサイトプラズムの結合活性は実施例2(2−5)と同様にELISAによって測定した。結果を図3Bに示す。
A10B scFvの結合活性も前記(3−3)の発現量と対応した結果が得られ、pET-22b/A10B、pET-22b/A10B-MBP発現ベクターによって発現したタンパク質は、どちらもペリプラズム及びサイトプラズム共に同等の結合活性を示した。pET-22b/A10B scFv-Zif268、pET-30a/A10B scFv-Zif268発現ベクターによって発現したタンパク質は、ペリプラズムにおける結合活性は全く見られず、サイトプラズムでは高い結合活性が示された。
(実施例4)培養条件の変化によるA10B scFv及びA10B scFv-Zif268の結合活性測定
実施例2(2−1)で得たpET-22b/A10B scFv、pET-22b/A10B scFv-Zif268をBL21(DE3)へ形質転換したクローンをアンピシリンを添加したLB培地2mL、37℃、200r.p.mで一晩前培養する。前培養液1mLをアンピシリンを添加したLB培地100mLに加え、37℃、200r.p.mで培養する。波長600nmの吸光度が0.5に達するまで2〜3時間培養し、培養液の温度を30℃及び25℃に冷し、各々の温度の培養液に200μM及び50μMとなるようIPTGを加え、一晩培養し、各タンパク質の発現を誘導し、大腸菌を回収し、ライセートを回収後、実施例2(2−5)と同様にELISAによるA10B scFv発現大腸菌ライセートからのA10B scFvの結合活性を測定した。結果を図4に示す。
A10B scFvの発現は30℃、IPTG 200μMの条件で最も高い活性を示したが、その他の条件でも顕著な活性の変化は見られなかった。A10B scFv-Zif268の発現もA10B scFvの発現と同様の傾向を示し、培養条件によって大きな変化は見られないが、30℃、IPTG 200μMの条件で最も高い活性を示した。
(実施例5)A10B scFv及びA10B scFv-Zif268の定量的な結合活性測定
(5−1)A10B scFv及びA10B scFv-Zif268の精製
A10B scFvを発現させた大腸菌のペリプラズムを分画し、A10B scFv-Zif268を発現させた大腸菌のサイトプラズムを分画した。各々の画分からニッケルカラム(HisTrap FF GE社)を用いてGE社のプロトコールに従い、A10B scFv、A10B scFv-Zif268を精製した。精製したタンパク質はProtein assay kit(ピアス社)でタンパク質濃度を測定し、定量した。それぞれの収量はA10B scFvが0.15mg/L、A10B scFv-Zif268が12.3mg/Lであった。
(5−2)A10B scFv及びA10B scFv-Zif268の結合活性測定
前記(5−1)で精製したA10B scFv及びA10B scFv-Zif268を実施例2(2−5)と同様にELISAにより定量的な結合の活性を測定した。結果を図5に示す。
精製したA10B scFv及びA10B scFv-Zif268の分子量あたりの活性は同程度であることが示された。この結果から、Zif268をA10Bに融合することによりその発現量をサイトプラズムにおいて向上させる。また、通常scFvはペリプラズムに移行することで立体構造を形成し結合活性を発揮することが知られているが、Zif268を融合することによってサイトプラズム内で結合活性を持つことが明らかとなった。
(実施例6)Zif268によるA10B scFv以外のscFvへの発現増強効果
実施例1(1−1)、(1−2)、(1−5)、(1−6)及び(1−7)で作製した下記の発現ベクターを用いて、実施例2と同様の方法により大腸菌で発現させ、実施例2(2−3)、(2−4)と同様の方法により分画したペリプラズム画分及びサイトプラズム画分を用い、実施例2と同様の方法により、ELISAによってZif268のA10B以外のscFvの発現に対する効果を測定した。
(1)pET-22b/A10B scFv及びpET-22b/A10B scFv-Zif268
(2)pET-22b/Mouse anti-GLuc scFv及びpET-22b/Mouse anti-GLuc scFv-Zif268
(3)pET-22b/Chicken anti-rabbit IgG scFv及びpET-22b/Chicken anti-rabbit IgG scFv-Zif268
その結果、A10B scFv以外のscFvの場合も、scFv単独よりもZif268を付加して発現させた場合には、サイトプラズマに留まることが確認され、かつscFv活性の向上が見られた。この結果から、Zif268はどのような種類のscFvに対しても、そのC末端側に融合させた融合タンパクとして細菌で発現させることで、その産生を増強し、サイトプラズム内においてscFv活性を有するscFvを発現させることが可能となることが示された。
(実施例7)trpR及びHinRにおけるscFvへの発現増強効果
実施例1(1−1)、(1−2)、(1−8)及び(1−9)で作製した下記の発現ベクターを用いて、実施例2と同様の方法により大腸菌で発現させ、先に実施例2(2−2)と同様の方法によりライセートを回収し、ELISAによってZif268以外のDNA結合タンパク質のA10B発現に対する効果を測定した。結果を図7Aに示す。次いで、実施例2(2−3)、(2−4)と同様の方法により分画したペリプラズム画分及びサイトプラズム画分を用い、実施例2と同様の方法により、ELISAによってZif268以外のDNA結合タンパク質のA10B発現に対する効果を測定した。結果を図7Bに示す。
(1)pET-22b/A10B scFv
(2)pET-22b/A10B scFv-Zif268
(3)pET-22b/A10B scFv-trpR
(4)pET-22b/A10B scFv-HinR
その結果、trpR又はHinRをA10Bに付加した場合も、Zif268の場合と同様に、A10B単独での発現と比較して発現の大きな向上が見られ、かつ細胞質内で発現していた。またtrpR又はHinRをA10Bに付加した場合は、発現しているscFv-trpRおよびscFv-HinRは、scFv-Zif268同様、高い抗原結合活性を示した。この結果から、Zif268と同様に、trpR及びHinRには、scFvのC末端側に融合させることで、細胞質内で、機能的なscFvの発現を増強させることが示された。
(実施例8)Zif268によるscFv以外のタンパク質への発現増強効果
Zif268の各種scFv以外の外来タンパク質への発現増強効果を確認するため、実施例1(1−10)、(1−11)、(1−12)及び(1−13)で作製した抗Gaussiaルシフェラーゼ(GLuc)-Zif268及びCD8-Zif268の発現ベクターを用いて、実施例2と同様の方法により大腸菌で発現させ、実施例2(2−3)、(2−4)と同様の方法により分画したペリプラズム画分及びサイトプラズム画分を用い、実施例2と同様の方法により、ELISAによりGLuc及びGLuc-Zif268とCD8及びCD8-Zif268の活性を測定した。結果を図8に示す。
その結果、GLuc及びCD8両タンパク質共に、A10B scFvの場合と同様に、Zif268を付加することによって細胞質内で発現しており、かつGLuc又はCD8単独での発現と比較して活性の向上が見られた。この結果により、Zif268はscFvのみならず、どのような外来タンパク質であっても、そのC末端側に融合させることで、細胞質内で、機能的な活性を保持した外来タンパク質の産生を増強させることが示された。
1.配列番号1:Zif268
2.配列番号2:Zif268(gene)
3.配列番号3:HinR
4.配列番号4:HinR(gene)
5.配列番号5:Tryptophan transcriptional repressor(trpR)E.Coli
6.配列番号6:trpR(gene)
7.配列番号7:A10B(Mouse anti-rabbit IgG)scFv(gene)
8.配列番号8:forward primer(A10B scFv-Zif268)
9.配列番号9:reverse primer(A10B scFv-Zif268)
10.配列番号10:forward primer(A10B scFv-MBP)
11.配列番号11:reverse primer(A10B scFv-MBP)
12.配列番号12:Anti GLuc scFv(GL-11-6)
13.配列番号13:forward primer(Anti GLuc scFv-Zif268)
14.配列番号14:reverse primer(Anti GLuc scFv-Zif268)
15.配列番号15:Chicken anti-rabbit IgG scFv
16.配列番号16:Gaussia luciferase(GLuc)
17.配列番号17:Human CD8α
18.配列番号18:forward primer(CD8)
19.配列番号19:reverse primer(CD8)

Claims (8)

  1. 所望の外来タンパク質のC末側に、Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメインを融合させた融合タンパク質をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて細菌宿主を形質転換することを特徴とする、細菌宿主細胞質内での機能的外来タンパク質の発現増強方法であって、
    ここで、Zif268 DNA結合ドメインは、配列番号1、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、trpR DNA結合ドメインは、配列番号5、もしくはその1ないし10個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、またHinR DNA結合ドメインは、配列番号3、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列に示されるタンパク質である、方法
  2. 前記融合タンパク質において、所望の外来タンパク質のC末側であって、かつDNA結合タンパク質のN末側の位置に、タンパク質切断酵素認識領域を含むリンカーが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の発現増強方法。
  3. 所望の外来タンパク質が、単鎖抗体(scFv)である、請求項1又は2に記載の発現増強方法。
  4. 所望の外来タンパク質のC末側に、Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメインを融合させた融合タンパク質をコードする核酸を有効成分とする、細菌宿主細胞質内での機能的外来タンパク質発現増強剤であって、
    ここで、Zif268 DNA結合ドメインは、配列番号1、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、trpR DNA結合ドメインは、配列番号5、もしくはその1ないし10個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、またHinR DNA結合ドメインは、配列番号3、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列に示されるタンパク質である、機能的外来タンパク質発現増強剤
  5. Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメインをコードする核酸の使用であって、当該DNA結合タンパク質をコードする核酸を、抗体フラグメントをコードする核酸の3’末端に融合させることによって、前記抗体フラグメントを細菌宿主の細胞質内で機能的抗体フラグメントとして発現させるための使用であって、
    ここで、Zif268 DNA結合ドメインは、配列番号1、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、trpR DNA結合ドメインは、配列番号5、もしくはその1ないし10個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、またHinR DNA結合ドメインは、配列番号3、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列に示されるタンパク質である、使用
  6. 細菌宿主における所望の外来タンパク質の発現量を増強させる方法であって、下記の(a)及び(b)の工程を含む方法;
    (a)Zif268、trpR、及びHinRから選択されたDNA結合ドメインをコードする第1の核酸分子を、前記外来タンパク質をコードする第2の核酸分子の3’末端側に融合させて、細菌宿主における発現産物が、前記DNA結合タンパク質が前記外来タンパク質のC末側に位置するような融合タンパク質をコードする遺伝子構築物を形成する工程であって、
    ここで、Zif268 DNA結合ドメインは、配列番号1、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、trpR DNA結合ドメインは、配列番号5、もしくはその1ないし10個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列で示されるタンパク質であり、またHinR DNA結合ドメインは、配列番号3、もしくはその1ないし5個のアミノ酸が欠失・置換・挿入・付加されたアミノ酸配列に示されるタンパク質である、工程
    (b)前記構築物を、細菌宿主の細胞質内で発現させる工程。
  7. さらに、下記の工程(c)を含む請求項6に記載の方法;
    (c)発現させた融合タンパク質を宿主細菌の細胞質画分から回収する工程。
  8. 前記第1の核酸分子の5’末端側で、かつ第2の核酸分子の3’末端側の位置に、タンパク質切断酵素認識領域を含むリンカー配列をコードする核酸分子が融合されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
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