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JP6399028B2 - ターボ過給機付エンジン - Google Patents

ターボ過給機付エンジン Download PDF

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JP6399028B2 JP2016071482A JP2016071482A JP6399028B2 JP 6399028 B2 JP6399028 B2 JP 6399028B2 JP 2016071482 A JP2016071482 A JP 2016071482A JP 2016071482 A JP2016071482 A JP 2016071482A JP 6399028 B2 JP6399028 B2 JP 6399028B2
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Description

本発明は、エンジン本体に、少なくとも2つの独立したターボ部を有するターボ過給機が付設されたターボ過給機付エンジンに関する。
ターボ過給機付エンジンでは、エンジンの排気エネルギーを利用して吸気を過給するターボ過給機が、エンジン本体の一側壁に隣接して取り付けられる。ターボ過給機のハウジング内には排気通路が備えられ、この排気通路に対して、エンジン本体から排気が供給される。前記排気通路は、エンジン本体から排気を受け入れる導入通路、タービンを収容するタービン室、及び前記導入通路から前記タービン室へ排気を導くスクロール通路を含む。導入された排気によって前記タービンはタービン軸回りに回転し、前記タービン軸に連結されたコンプレッサのブロワー扇車を回転させ、吸気を過給する。
従来、2つの独立したターボ部を、前記排気経路に直列状に配置してなるターボ過給機が知られている。例えば特許文献1には、主としてエンジンの中速から高速回転域で動作する大型ターボ部と、主として低速回転域で動作する小型ターボ部とを備えた2ステージ型のターボ過給機が開示されている。小型ターボ部の小タービンは、排気通路において大型ターボ部の大タービンよりも上流側に配置される。前記排気通路は、小タービン室を経由せず、前記導入通路と大タービン室とを繋ぐバイパス通路を備える。このバイパス通路にはレギュレートバルブが配置され、エンジンの回転域に応じて前記レギュレートバルブが開閉される。
特許5499953号公報
ターボ過給機においては、排気の運動エネルギーを効率良くタービンに伝達して出力を向上させることが求められる。上記の2ステージ型のターボ過給機においては、とりわけ高速回転域において大型ターボ部の大タービンに大きな排気運動エネルギーを与え、高速回転域におけるエンジン出力及び燃費を高めることが求められる。
本発明の目的は、大型及び小型のターボ部を有するターボ過給機が付設されたエンジンにおいて、大型ターボ部のタービンに大きな排気運動エネルギーを与えることが可能なターボ過給機付エンジンを提供することにある。
本発明の一局面に係るターボ過給機付エンジンは、エンジン本体と、前記エンジン本体に隣接して配置され、前記エンジン本体から排気が供給される排気通路を有し、前記エンジン本体へ導入される吸気を過給するターボ過給機と、を備え、前記ターボ過給機は、第1タービン軸を有する第1タービンを含み、前記エンジン本体の中速から高速回転域で主に動作する大型ターボ部と、前記排気通路において前記大型ターボ部の上流側に配置され、第2タービン軸を有する第2タービンを含み、前記エンジン本体の低速回転域で主に動作する小型ターボ部と、を含み、前記排気通路は、前記エンジン本体側から排気を受け入れる導入通路と、前記第1タービンへ向けて排気を導く第1スクロール通路と、前記第2タービンと前記第1スクロール通路の第1上流部とを繋ぐターボ間通路と、前記導入通路に連通する第2上流部を有し、前記第2タービンへ向けて排気を導く第2スクロール通路と、前記第2スクロール通路及び前記ターボ間通路をバイパスして、前記導入通路と前記第1上流部とを繋ぐバイパス通路と、を含み、前記エンジン本体に対して、前記第1上流部が前記第1タービン軸よりも遠い側に配置されると共に、前記ターボ間通路が前記バイパス通路よりも遠い側に配置され、前記バイパス通路の下流端と前記ターボ間通路の下流端とは、前記第1タービン軸と直交する一の断面内に含まれる位置関係において、前記第1上流部に合流するものであって、前記バイパス通路の下流端は、前記ターボ間通路の下流端よりも前記エンジン本体に対して近い側に配置されていることを特徴とする。
このターボ過給機付エンジンによれば、エンジン本体に対して、第1スクロール通路の第1上流部が第1タービン軸よりも遠い側に配置される。このため、導入通路から前記第1上流部までの排気通路のレイアウトに余裕を持たせることができ、前記排気通路を極端に湾曲させずに済む。そして、エンジン本体に対して、ターボ間通路がバイパス通路よりも遠い側に配置され、また、前記バイパス通路の下流端は、前記ターボ間通路の下流端よりも近い側において、前記第1上流部と対向している。このため、前記バイパス通路を短く且つ湾曲度合いが小さい排気通路として設定し易くなり、大型ターボ部が主に動作する場面において、バイパス通路を通してスムーズに排気を前記第1上流部へ送り込むことができる。従って、排気の流れに大きな抵抗を発生させず、大型ターボ部の第1タービンに大きな排気運動エネルギーを与えることが可能となる。
上記のターボ過給機付エンジンにおいて、前記バイパス通路に配置され、該バイパス通路を開閉するバイパス弁をさらに備え、前記バイパス弁は、前記バイパス通路を閉じことが可能な形状を有する弁本体と、前記弁本体を片持ち支持する回動軸とを含み、前記回動軸が軸回りに回動されることで、前記弁本体が前記バイパス通路を閉じる姿勢と、前記バイパス通路を開放する姿勢との間で姿勢変更し、前記回動軸は、前記第1タービン軸と略平行な方向に延び、前記第1タービン軸と直交する断面において、前記バイパス通路の、前記エンジン本体に対して近い側の側方に配置されていることが望ましい。
このターボ過給機付エンジンによれば、バイパス通路を通過する排気の流れによって、弁本体が前記開放する姿勢となるよう回動軸回りに回動する方向に、バイパス弁は付勢力を受けることになる。つまり、排気流に逆らわず、前記弁本体を開放させることができる。従って、バイパス通路の使用開始時に前記弁本体を開放し易くなり、前記バイパス通路を通したスムーズな排気の供給に貢献することができる。
上記のターボ過給機付エンジンにおいて、前記第1上流部及び前記第2上流部は、それぞれ前記エンジン本体に対して、前記第1タービン軸、第2タービン軸よりも遠い側に配置され、前記第1タービンは前記第1タービン軸回りに所定の第1回転方向へ回転する一方、前記第2タービンは前記第2タービン軸回りに前記第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転することが望ましい。
このターボ過給機付エンジンによれば、導入通路から第2上流部までの排気通路のレイアウトについても余裕を持たせることができ。従って、第2スクロール通路に対する排気の流れもスムーズにすることができ、大きな排気運動エネルギーを第1、第2タービンに与えることが可能となる。また、第1、第2タービンの回転方向が互いに逆方向とされる。両タービンを同方向に回転させることを前提に排気通路を設定すると、どうしても大きく湾曲した排気通路が必要となりターボ過給機が大型化することが多いが、上記構成によれば排気経路をシンプルに設計し易くなり、ターボ過給機のコンパクト化に貢献できる。
上記のターボ過給機付エンジンにおいて、前記第1スクロール通路と前記第2スクロール通路とは、前記第1上流部と前記第2上流部とが互いに向き合うように配置され、前記導入通路は、前記大型ターボ部と前記小型ターボ部との間に配置され、前記導入通路と前記第1上流部及び前記第2上流部との間には、これらを繋ぐY字型の分岐通路が配置され、前記分岐通路の、前記導入通路と前記第1上流部とを繋ぐ通路が、前記バイパス通路であることが望ましい。
このターボ過給機付エンジンによれば、Y字型の分岐通路によって、第1、第2上流部の双方に対し、湾曲度合いの少ない滑らかな排気通路で前記導入通路と繋ぐレイアウトを、コンパクトに設定し易くなる。
本発明によれば、大型及び小型のターボ部を有するターボ過給機が付設されたエンジンにおいて、大型ターボ部のタービンに大きな排気運動エネルギーを与えることが可能なターボ過給機付エンジンを提供することできる。
図1は、本発明の実施形態に係るターボ過給機付エンジンの斜視図である。 図2は、上記エンジンのターボ過給機部分を一部破断して示す斜視図である。 図3は、ターボ過給機付エンジン及びその周辺部品の構成と、吸気及び排気のフローとを模式的に示す図である。 図4は、本実施形態に係るターボ過給機の概略断面図である。 図5は、排気バイパス弁の一例を示す斜視図である。 図6は、エンジン本体の低速回転域における、ターボ過給機内の排気のフローを示す断面図である。 図7は、エンジン本体の中速及び高速回転域における、ターボ過給機内の排気のフローを示す断面図である。 図8は、変形実施形態に係るターボ過給機の概略断面図である。
[エンジンの概略構成]
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係るターボ過給機付エンジンを詳細に説明する。先ずは、当該エンジンの概略構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るターボ過給機付エンジン1の斜視図、図2は、エンジン1のターボ過給機3の部分を一部破断して示す斜視図である。図1、図2及び他の図面において、前後、左右、上下の方向表示を付している。これは説明の便宜のためであり、実際の方向を必ずしも示すものではない。
ターボ過給機付エンジン1は、多気筒型のエンジン本体10と、エンジン本体10の左側面に連結された排気マニホールド14と、図略の吸気マニホールドと、エンジン本体10の左方に隣接して配置されたターボ過給機3とを含む。図1では除去した状態を示しているが、排気マニホールド14の周囲はマニホールドインシュレータ15で囲まれ、エンジン本体10の左側面はエンジン本体インシュレータ16で覆われ、ターボ過給機3の周囲はターボインシュレータ17で覆われている。
エンジン本体10は、直列四気筒のディーゼルエンジンであり、シリンダブロック11と、シリンダブロック11の上面に取り付けられたシリンダヘッド12と、シリンダヘッド12の上方に配置されたシリンダヘッドカバー13とを備えている。シリンダブロック11は、燃料の燃焼室を形成する4つの気筒2(後出の図3、図4にその一つが示されている)を備えている。
排気マニホールド14は、各気筒2の排気ポート25から排出される排気ガスを一つの流路に集合させるマニホールド通路141(図4)を内部に備えている。排気マニホールド14の入気側はシリンダヘッド12に連結され、出気側はターボ過給機3に接続されている。
ターボ過給機3は、エンジン本体10から排出される排気エネルギーを利用して、エンジン本体10へ導入される吸気を過給する装置である。ターボ過給機3は、エンジン本体10の中速から高速回転域において主に動作して吸気を過給する大型ターボ部3Aと、低速回転域で主に動作して吸気を過給する小型ターボ部3Bとを備えている。本実施形態では、大型ターボ部3Aの下方に小型ターボ部3Bが連設されている。大型ターボ部3A及び小型ターボ部3Bは各々、前方側に配置されるタービン室と、後方側に配置されるコンプレッサ室とを備える。ターボ過給機3内には、前記各タービン室を経由し、エンジン本体10から排気が供給される排気通路と、前記各コンプレッサ室を経由し、エンジン本体10へ導入される吸気が流通する吸気通路とが備えられている。つまり、前記各タービン室はエンジン本体10の排気経路に、前記各コンプレッサ室はエンジン本体10の吸気経路に、各々組み込まれている。
図2には、大型ターボ部3Aの大タービン室33(図3)を区画する大型ターボハウジング31と、小型ターボ部3Bの小タービン室35(図3)を区画する小型ターボハウジング32とが示されている。大型ターボハウジング31は、後記で説明する大スクロール通路55他を区画する板金製のケースからなる板金ハウジング311と、板金ハウジング311の下端を支持するハウジングベース312とを含む。ハウジングベース312の下部には、上フランジ部313が備えられている。
一方、小型ターボハウジング32は、鋳鉄性のケースからなるハウジングであり、排気通路の上流側には導入フランジ部321が、下流側には下フランジ部322が一体的に備えられている。導入フランジ部321は、排気マニホールド14との連結を行うためのフランジ部であり、ターボ過給機3への排気の入口となる部分である。下フランジ部322は、大型ターボハウジング31との連結を行うためのフランジ部である。下フランジ部322の上に上フランジ部313が載置され、両者がボルト締結されることによって、大型ターボハウジング31と小型ターボハウジング32とが一体化されている。ターボ過給機3からの排気の出口となる部分には、排気側フランジ323が備えられている。排気側フランジ323には、排気通路の下流側配管が接続される。
マニホールドインシュレータ15は、高温の排気が流通する排気マニホールド14から発せられる熱によって周辺部品が熱害を受けないよう遮熱するインシュレータである。エンジン本体インシュレータ16は、排気マニホールド14及びターボ過給機3から発せられる熱から、シリンダヘッドカバー13、ハーネス、センサ類を保護する。ターボインシュレータ17は、同じく高温の排気が流通する大型、小型ターボハウジング31、32の周囲を覆い、周辺部品の熱害を抑止するインシュレータである。
[エンジンの内部的構成]
図3は、ターボ過給機付エンジン1及びその周辺部品の構成と、吸気及び排気のフローとを模式的に示す図である。エンジン1は、エンジン本体10と、エンジン本体10に燃焼用の空気を導入するための吸気通路P1と、エンジン本体10で生成された燃焼ガス(排気)を排出するための排気通路P2と、これら吸気通路P1及び排気通路P2の一部を各々構成する通路を備えたターボ過給機3と、排気通路P2の下流端付近に配置された排気浄化装置70と、吸気通路P1と排気通路P2との間に配置されたEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置80とを備えている。
エンジン本体10の各気筒2には、ピストン21、燃焼室22、クランク軸23、吸気ポート24、排気ポート25、吸気弁26及び排気弁27が備えられている。図3では、1つの気筒2が示されている。ピストン21は、気筒2内に往復運動可能に収容されている。燃焼室22は、気筒2内においてピストン21の上方に形成されている。燃焼室22には、図略のインジェクタからディーゼル燃料が噴射される。前記インジェクタから噴射された燃料は、吸気通路P1から供給される空気と混合して燃焼室22内で自着火する。ピストン21は、この燃焼による膨張力で押し下げられて上下方向に往復運動する。
クランク軸23は、エンジン本体10の出力軸であり、ピストン21の下方に配設されている。ピストン21とクランク軸23とは、コネクティングロッドを介して互いに連結されている。クランク軸23は、ピストン21の往復運動に応じて、その中心軸回りに回転する。吸気ポート24は、吸気通路P1から供給される空気(吸気)を気筒2に導入する開口である。排気ポート25は、気筒2内での燃料の燃焼によって生成された排気を排気通路P2に導出するための開口である。吸気弁26は、吸気ポート24を開閉する弁であり、排気弁27は排気ポート25を開閉する弁である。
吸気通路P1には、吸気のフローの上流側から順に、エアクリーナ41、ターボ過給機3のコンプレッサ部(大コンプレッサ室34及び小コンプレッサ室36)、インタークーラ42及びスロットルバルブ43が設けられている。吸気通路P1の下流端は、吸気マニホールド(図示せず)を介して吸気ポート24に接続されている。エアクリーナ41は、吸気通路P1に取り入れる空気を浄化する。インタークーラ42は、吸気ポート24を通して燃焼室22に送る吸気を冷却する。スロットルバルブ43は、燃焼室22に送る吸気の量を調整するバルブである。なお、吸気通路P1においてターボ過給機3の上流側には、ブローバイガスを燃焼室22に送るブローバイ還流路411が接続されている。吸気は、後記で詳述するターボ過給機3の前記コンプレッサ部を通過する際に過給される。
排気通路P2の上流端は、排気マニホールド14を介して、排気ポート25に接続されている。排気通路P2には、排気のフローの上流側から順に、ターボ過給機3のタービン部(小タービン室35及び大タービン室33)、排気浄化装置70が設けられている。排気浄化装置70は、排気中のNOxを一時的に吸蔵し後に還元するNOx吸蔵還元触媒を含む触媒装置71と、排気中の粒子状物質を捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)72とからなる。排気が有する運動エネルギーは、当該排気がターボ過給機3の前記タービン部を通過する際に回収される。
EGR装置80は、エンジン本体10から排出された排気の一部(EGRガス)を吸気に還流させるための装置である。EGR装置80は、排気通路P2と吸気通路P1とをそれぞれ連通させる第1EGR通路81及び第2EGR通路84と、これら通路81、84をそ各々開閉する第1EGRバルブ82及び第2EGRバルブ85とを有する。第1EGR通路81には、EGRクーラ83が設けられている。EGRガスは、第1EGR通路81の通過途中にEGRクーラ83により冷却されて、その後、吸気通路P1に流入する。一方、第2EGR通路84にはEGRクーラは設けられておらず、EGRガスは高温のまま吸気通路P1に流入可能である。第1、第2EGR通路81、84は、排気通路P2のターボ過給機3よりも上流側の部分と、吸気通路P1のスロットルバルブ43よりも下流側の部分とを連通している。従って、ターボ過給機3の前記タービン部へ導入される前の排気が、吸気と共に吸気ポート24に供給される。
[ターボ過給機の詳細]
続いて、本実施形態に係るターボ過給機3の内部構造について、上掲の図3と、ターボ過給機3の概略断面を示す図4とを参照して説明する。既述の通りターボ過給機3は、中速〜高速回転域動作用の大型ターボ部3Aと低速回転域動作用の小型ターボ部3Bとを備える。大型ターボ部3Aは、大タービン室33及び大コンプレッサ室34を備える。同様に、小型ターボ部3Bは、小タービン室35及び小コンプレッサ室36を備える。大タービン室33及び小タービン室35は排気通路P2に連通しており、大コンプレッサ室34及び小コンプレッサ室36は吸気通路P1に連通している。
大タービン室33には大タービン33T(第1タービン)が、大コンプレッサ室34には大ブロワー34Bが、各々収容されている。大タービン33Tと大ブロワー34Bとは、大タービン軸37(第1タービン軸)で連結されている。すなわち、大タービン軸37の一端に大タービン33Tが取り付けられ、他端に大ブロワー34Bが取り付けられている。大タービン33Tは、排気のフロー(運動エネルギー)を受け取り、大タービン軸37の軸回り回転する。大ブロワー34Bは、同じく大タービン軸37の軸回りに回転して吸気を圧縮(過給)する。大タービン33Tが排気の運動エネルギーを受けて回転すると、大ブロワー34Bも大タービン軸37の軸回りに一体回転する。
大タービン33Tとしては、複数の翼を有しこれら翼に排気が衝突することで大タービン軸37の軸回りに回転するインペラを用いることができる。また、大タービン33Tとして、角度変更可能な複数のノズルベーンをタービン外周部に備え、エンジン回転数に応じて大タービン33Tへ流入する排気の流速(すなわちタービン容量)を調整可能なVGT(Variable Geometry Turbine)を用いることは、好ましい実施形態の一つである。
小タービン室35には小タービン35T(第2タービン)が、小コンプレッサ室36には小ブロワー36Bが、各々収容されている。小タービン35Tと小ブロワー36Bとは、小タービン軸38(第2タービン軸)で連結されている。すなわち、小タービン軸38の一端に小タービン35Tが取り付けられ、他端に小ブロワー36Bが取り付けられている。小タービン35Tは、排気の運動エネルギーを受け取り、小タービン軸38の軸回り回転する。小ブロワー36Bは、同じく小タービン軸38の軸回りに回転して吸気を圧縮(過給)する。小タービン35Tが排気の運動エネルギーを受けて回転すると、小ブロワー36Bも小タービン軸38の軸回りに一体回転する。なお、小タービン35Tとしては、流入する排気の流速を変更不能な、いわゆるFGT(Fixed Geometry Turbine)を用いることができる。
大タービン33Tの容量は小タービン35Tの容量よりも大きく、また、大ブロワー34Bの容量は小ブロワー36Bの容量よりも大きく設定されている。これにより、大型ターボ部3Aは、小型ターボ部3Bよりも大きな流量の排気によって大タービン33Tを回転させ、大ブロワー34Bの回転によってより大きな流量の吸気を過給することが可能である。
ターボ過給機3には、その機内において吸気通路P1の一部を担う通路として、過給機内吸気通路44が備えられている。過給機内吸気通路44は、吸気導入通路45、第1主通路46、第2主通路47、出口通路48及び吸気バイパス通路49を含む。吸気導入通路45は、ターボ過給機3内において最も上流側の吸気通路であり、大タービン軸37の軸方向から大コンプレッサ室34内の大ブロワー34Bに向かう通路である。第1主通路46は、大ブロワー34Bの外周部から、小コンプレッサ室36内の小ブロワー36Bの軸心へ向けて吸気を案内する通路である。第2主通路47は、小ブロワー36Bの外周部から、出口通路48に向かう通路である。出口通路48は、ターボ過給機3内において最も下流の吸気通路であり、インタークーラ42に接続される通路である。このように、吸気のフローにおいて、大ブロワー34Bが小ブロワー36Bの上流側に配置されている。
吸気バイパス通路49は、小コンプレッサ室36をバイパスする通路、すなわち、小ブロワー36Bに吸気を与えることなく、吸気を下流に導く通路である。具体的には吸気バイパス通路49は、大コンプレッサ室34と小コンプレッサ室36とを繋ぐ第1主通路46の途中から分岐し、第2主通路47と共に出口通路48に合流している。吸気バイパス通路49には、該通路49を開閉する吸気バイパス弁491が配置されている。
吸気バイパス弁491が全閉となり吸気バイパス通路49を閉鎖している状態では、吸気の全量が小コンプレッサ室36に流入する。一方、吸気バイパス弁491が開弁している状態では、吸気の多くは小コンプレッサ室36をバイパスし、吸気バイパス通路49を通して下流側に流れる。すなわち、小コンプレッサ室36に収容されている小ブロワー36Bは、吸気のフローに対して抵抗となるため、吸気バイパス弁491が開弁している状態では、吸気の多くはより抵抗の小さい吸気バイパス通路49に流入する。吸気バイパス弁491は、負圧式のバルブアクチュエータ492により開閉される。
ターボ過給機3には、その機内において排気通路P2の一部を担う通路として、過給機内排気通路50が備えられている。過給機内排気通路50は、排気導入通路51(導入通路)、連絡通路52、小スクロール通路53(第2スクロール通路)、ターボ間通路54、大スクロール通路55(第1スクロール通路)、排出通路56及び排気バイパス通路57(バイパス通路)を含む。図4から明らかな通り、排気導入通路51、連絡通路52及び小スクロール通路53は小型ターボハウジング32内に形成される通路、大スクロール通路55及び排出通路56は大型ターボハウジング31内に形成される通路、ターボ間通路54及び排気バイパス通路57は両ハウジング31、32に跨って形成される通路である。本実施形態では、小タービン35T(即ち小型ターボ部3B)が、排気通路P2において大タービン33T(即ち大型ターボ部3A)の上流側に配置されている。
排気導入通路51は、ターボ過給機3内において最も上流側の排気通路であり、エンジン本体10側から排気を受け入れる通路である。連絡通路52は、排気導入通路51の下流に連なり、排気を小タービン室35に向けて導く通路である。小スクロール通路53は、小タービン室35の一部を形成しており、小タービン35Tへ向けて排気を導く通路である。連絡通路52の下流端は、小スクロール通路53の上流部53U(第2上流部)に連なっている。小スクロール通路53は、小タービン35Tの外周を周回するように配置された渦巻き状の通路であり、下流に向けて流路幅が徐々に狭くなっている。排気は、小スクロール通路53から小タービン35Tの径方向中心に向けて流入し、小タービン35Tを小タービン軸38の軸回りに回転させる。
ターボ間通路54は、小タービン35Tと大スクロール通路55の上流部55U(第1上流部)とを繋ぐ通路である。ターボ間通路54の上流部分は、小タービン室35から小タービン35Tの軸方向に延び出す部分であり、下流部分は、上流部55Uに連なる部分である。小タービン35Tの外周から径方向内側に流入し小タービン35Tに対して膨張仕事を為した排気は、ターボ間通路54から取り出され、大タービン33Tに向かうことになる。
大スクロール通路55は、大タービン室33の一部を形成しており、大タービン33Tへ向けて排気を導く通路である。大スクロール通路55は、大タービン33Tの外周を周回するように配置された渦巻き状の通路であり、下流に向けて流路幅が徐々に狭くなっている。排気は、大スクロール通路55から大タービン33Tの径方向中心に向けて流入し、大タービン33Tを大タービン軸37の軸回りに回転させる。排出通路56は、ターボ過給機3内において最も下流の排気通路であり、大タービン室33から大タービン33Tの軸方向に延び出している。大タービン33Tの外周から径方向内側に流入し大タービン33Tに対して膨張仕事を為した排気は、排出通路56から取り出される。排出通路56の下流端は、排気側フランジ部323に設けられた開口であり、下流の排気浄化装置70に至る排気通路に接続される。
排気バイパス通路57は、小タービン室35をバイパスする通路、すなわち、小タービン35Tに排気を作用させることなく、排気を下流(大タービン33T)に導く通路である。具体的には排気バイパス通路57は、排気導入通路51と連絡通路52との間から分岐し、大スクロール通路55の上流部55Uに合流しており、小スクロール通路53及びターボ間通路54をバイパスしている。排気バイパス通路57には、該通路47を開閉する排気バイパス弁6(バイパス弁)が配置されている。排気バイパス弁6は、実際に排気バイパス通路57を開閉する弁本体61と、弁本体61を動作させるバルブアクチュエータ6Aとを含む。
排気バイパス弁6(弁本体61)が全閉となり排気バイパス通路57を閉鎖している状態では、排気の全量が小タービン室35に流入する。なお、EGR装置80が作動して、EGRガスの還流が実施されている場合は、エンジン本体10から排出された排気から前記EGRガスを除いたガスの全量が、小タービン室35に流入する。一方、排気バイパス弁6が開弁している状態では、排気の多くは小タービン室35をバイパスして下流側の大タービン室33(大スクロール通路55)に流れ込む。すなわち、小タービン室35に収容されている小タービン35Tは、排気のフローに対して抵抗となるため、排気バイパス弁6が開弁している状態では、排気の多くはより抵抗の小さい排気バイパス通路57に流入する。つまり、排気は、小タービン35Tを通過せずに下流側に流れる。
換言すると、排気バイパス弁6が如何に動作しようとも、排気は必ず大タービン室33の大タービン33Tを通過する。つまり、常に大型ターボ部3Aが動作して吸気の過給を行わせることができるので、ターボ過給機3による吸気の過給圧を高くし、エンジンシステム全体でのエネルギー効率を高めることができる。
基本動作として、排気バイパス弁6は、エンジン本体10が低速回転域で動作している場合には全閉とされ、連絡通路52及び小スクロール通路53を通して小タービン35Tに排気が供給される。小タービン35Tはイナーシャが小さいため、たとえ排気流量が小さくても早期に回転数が上昇し、小ブロワー36Bによる過給力を高めることができる。その後、排気は、ターボ間通路54及び大スクロール通路55を通過し、大タービン33Tに供給される。すなわち、低速回転域では大タービン33T及び小タービン35Tの双方が回転し、これに伴い大ブロワー34B及び小ブロワー36Bも回転する。従って、大型ターボ部3A及び小型ターボ部3Bの双方が動作して、吸気を過給することができる。ここで、大タービン33TにVGTが付設されている場合、VGTの開度を小さくして大タービン33Tに流入する排気の流速を高めることが望ましい。これにより、低速回転域における大ブロワー34Bによる過給力を高めることができる。
一方、エンジン本体10が中速〜高速回転域で動作している場合に、排気バイパス弁6は全開とされ、排気は排気バイパス通路57を通して専ら大タービン33Tに供給される。つまり、排気のフロー抵抗を極力抑えて、大タービン33Tに排気を供給することができるので、エネルギー効率を高めることができる。なお、大タービン33TがVGTを有する場合は、そのVGT開度を、予め設定された所定の過給圧を得るための基本VGT開度とすることが望ましい。
バルブアクチュエータ6Aは、電動式のアクチュエータ装置からなり、弁本体61を単純に開閉させるだけでなく、全閉から全開の間で弁本体61の開度を調整することが可能である。弁本体61の開度は、運転条件毎に、過給圧が目標の圧力になるように設定される。目標の過給圧及び弁本体61の開度は、エンジン回転数とエンジン負荷とによって予め設定されている。バルブアクチュエータ6Aは、その設定に従い、弁本体61の開度を制御する。
[ターボ過給機内の排気通路の詳細]
続いて、主に図4を参照して、ターボ過給機3内における過給機内排気通路50の具体的な配置関係、通路の形状当について詳述する。まず、排気導入通路51は、上述の導入フランジ部321の端面に開口を有し、左方に延びる通路である。この排気導入通路51は、大型ターボ部3Aと小型ターボ部3Bとの間に配置されている。詳しくは、大型ターボ部3Aと小型ターボ部3Bとは上下方向に配置され、排気導入通路51はこれらターボ部3A、3Bの間の中間の高さ位置に配置されている。
エンジン本体10(シリンダヘッド12)の左側面には排気ポート25の出気開口が設けられている。排気マニホールド14は、右端側に入気側フランジ部142を、左端側に出気側フランジ部143を有しており、これらフランジ部142、143にはマニホールド通路141の左右端部開口が設けられている。入気側フランジ部142は、排気ポート25の出気開口に位置合わせしてシリンダヘッド12に結合される。出気側フランジ部143は、導入フランジ部321と結合される。これにより、排気ポート25と排気導入通路51(過給機内排気通路50)とがマニホールド通路141を介して連通状態となり、図4において矢印Fで示すように、エンジン本体10側からの排気をターボ過給機3内へ取り入れ可能とされている。
排気導入通路51と、小スクロール通路53の上流部53Uと大スクロール通路55の上流部55Uとの間には、これらを繋ぐY字型の分岐通路50Bが配置されている。なお、上流部53U、55Uとは、スクロール通路53、55が各タービン33T、35Tの軸心に向けて渦を巻始めるスクロール始点部分である。この分岐通路50Bのうち、排気導入通路51の下流端より下方へ向かい上流部53Uに繋がる通路が連絡通路52であり、同下流端より上方へ向かい上流部55Uに繋がる通路が排気バイパス通路57である。
小スクロール通路53は、図4において反時計方向にスクロールする通路である一方、大スクロール通路55は時計方向にスクロールする通路である。つまり、両スクロール通路53、55が渦を巻く方向は互いに反対方向に設定されている。これは、スクロール通路53、55の上流部53U、55Uを次の通りに配置したことによる。
小スクロール通路53は、上流部53Uがエンジン本体10の左側面に対して小タービン軸38よりも遠い側(左側)に配置され、上流部53Uから下流側に向けて渦を巻く部分が小タービン軸38よりもエンジン本体10に近い側(右側)に向かうようにスクロールした通路である。小スクロール通路53の上流部53Uは、上向きに開口している。小スクロール通路53は、この上流部53Uから右下方向に向かい、小タービン軸38の下方側を通過し、その後に小タービン軸38の右方側を抜けて上方に向かっている。もちろん、小タービン35Tの周囲を周回した小スクロール通路53の下流端は、小タービン軸38よりも左側に位置している。
大スクロール通路55も同様に、上流部55Uがエンジン本体10の左側面に対して大タービン軸37よりも遠い側(左側)に配置され、上流部55Uから下流側に向けて渦を巻く部分が大タービン軸37よりもエンジン本体10に近い側(右側)に向かうようにスクロールした通路である。大スクロール通路55の上流部55Uは、下向きに開口している。大スクロール通路55は、この上流部55Uから右上方向に向かい、第1タービン軸37の上方側を通過し、その後に大タービン軸37の右方側を抜けて下方に向かっている。もちろん、大タービン33Tの周囲を周回した大スクロール通路55の下流端は、大タービン軸37よりも左側に位置している。
このように小スクロール通路53と小スクロール通路55とは、それぞれの上流部53U、55Uが概ね上下方向において向き合うように配置されている。また、排気導入通路51は、上流部53U、55Uの中間に位置している。それゆえ、上述のY字型のコンパクトな分岐通路50Bにて、両スクロール通路53、55を排気導入通路51に繋ぐことが可能である。
また、両スクロール通路53、55が渦を巻く方向が互いに反対方向であることから、小タービン35Tの回転方向と大タービン33Tの回転方向も反対である。すなわち、小タービン35Tは、小スクロール通路53のスクロール方向に沿って、図4に示す断面では、小タービン軸38の軸回りに反時計方向(所定の第1回転方向)へ回転する。一方、大タービン33Tは、大スクロール通路55のスクロール方向に沿って、大タービン軸37の軸回りに時計方向(第2回転方向)へ回転する。
さらに、このような大、小スクロール通路53、55の配置は、それぞれの上流部53U、55Uに連なる上流側通路を、直線状乃至は緩やかな湾曲状の排気通路とすることを可能としている。図4に示されている通り、連絡通路52の少なくとも上流部53Uから上流側に延びる部分である上流側通路53UAは、概ね直線状に下方に延びる通路である。また、ターボ間通路54の少なくとも上流部55Uから上流側に延びる部分である上流側通路55UAも、概ね直線状に上方に延びる通路である。従って、排気は、大、小スクロール通路53、55の上流部53U、55Uに、それぞれ直線的なルートに沿ってフロー抵抗が少ない状態で進入することができる。
ターボ間通路54は、小タービン35Tの配置位置から当該小タービン35Tの軸方向に延び出し、左上方向に経路を変え、上述の略直線状の上流側通路55UA(ターボ間通路54の下流付近の通路)を通して大スクロール通路55の上流部53Uへ繋がっている。既述の通り、排気バイパス通路57も、上流部53Uへ繋がる排気通路である。両者の配置関係は、ターボ間通路54が排気バイパス通路57よりもエンジン本体10の左側面に対して遠い側に配置される関係にある。
上述の通り、上流部53Uはエンジン本体10の左側面に対して大タービン軸37よりも遠い側に配置されている。この上流部53Uに、ターボ間通路54の下流端54E及び排気バイパス通路57の下流端57Eが合流しているのであるが、両者の位置関係は、下流端57Eの方が下流端54Eよりもエンジン本体10に対して近い側において上流部53Uに対向する関係にある。
このように、排気バイパス通路57及びその下流端57Eが、ターボ間通路54及びその下流端54Eよりも、排気を吐出するエンジン本体10により近い側に配置されることから、排気導入通路51と上流部53Uとを短絡的に繋ぐ排気バイパス通路57を、短く且つ湾曲度合いが小さい排気通路として設定し易くなる。
他方、このような配置関係は、ターボ間通路54における、上流部53Uの上流側通路55UAを直線状乃至は緩やかな湾曲状に設定し易いレイアウトである。つまり、排気バイパス通路57をエンジン本体10に近い側に配置することで、下向きに開口する上流部53Uの下方にスペースを取り易くなる。さらに本実施形態では、小タービン軸38の方が大タービン軸37よりもエンジン本体10の左側により近い位置に配置されており、小タービン35Tの径も小さいことから、小型ターボ部3Bの左側方に空きスペースを作り易い。従って、上流部53Uの下方スペースを利用して、ターボ間通路54の下流部分である上流側通路55UAを略直線状に設定し易いものである。
なお、小タービン軸38をエンジン本体10により近く配置することは、連絡通路52を略直線状に設定することにも寄与している。小タービン軸38を大タービン軸37よりも右方に配置することで、小スクロール通路53の左方にスペースを取り易くなる。上流部53Uが小タービン軸38よりも左方に位置し、小スクロール通路53の径が大スクロール通路55の径よりも小さいことも相俟って、前記左方スペースは相応の広さを確保できる。従って、この左方スペースを利用して、左方に延びる排気導入通路51から下方に分岐する連絡通路52について、その上流側通路53UAを略直線状にして上流部53Uに合流させることができる。
[排気のフローについて]
次に、図5〜図7をさらに参照して、ターボ過給機3内における排気のフローを、排気バイパス弁6の動作状態と関連付けて説明する。図5は、排気バイパス弁6の一例を示す斜視図である。排気バイパス弁6は、弁本体61、保持片62及び回動軸63を備えている。弁本体61は、既述の通り排気バイパス通路57を開閉するものであり、排気バイパス通路57を閉じことが可能な形状、つまり排気バイパス通路57の下流端の開口サイズよりも大きいサイズを有している。保持片62は、弁本体61の背面に配置される矩形状の部材であり、その一端側で弁本体61を保持している。回動軸63は、大タービン軸37と略平行な方向(前後方向)に延び、保持片62の他端側に結合されている。回動軸63は、バルブアクチュエータ6Aによって、その軸回りに回動可能である。
回動軸63は、保持片62を介して弁本体61を片持ち支持している。従って、回動軸63が軸回りに回動することで、弁本体61も回動軸63を軸心として回動する。バルブアクチュエータ6Aが回動軸63を軸回りに回動させることで、弁本体61は排気バイパス通路57を閉じる姿勢(図6)と、排気バイパス通路57を開放する姿勢(図7)との間で姿勢変更する。
ここで、回動軸63は、大タービン軸37と直交する断面(図4)において、排気バイパス通路57の右方、つまりエンジン本体10に対して近い側の側方に配置されている。これは、排気バイパス通路57から大スクロール通路55の上流部55Uに流れ込む排気のフローに逆らわず、弁本体61を閉姿勢から開姿勢へ姿勢変更させ易くすることを考慮したものである。また、開姿勢の弁本体61が、排気フローの抵抗になり難いようにするためでもある。
図6は、エンジン本体10の低速回転域における、ターボ過給機3内の排気のフローを示す断面図である。低速回転域では、バルブアクチュエータ6Aは弁本体61を閉姿勢とし、排気バイパス通路57が閉じられる。この場合、エンジン本体10側から吐出されてくる排気(矢印F)は、ターボ過給機3の小型ターボハウジング32に備えられている排気導入通路51に進入する。排気は、連絡通路52によって下方に導かれ、小スクロール通路53の上流部53Uに至る(矢印F1)。そして排気は、小タービン35Tに作用すべく、小タービン35Tの外周部の小スクロール通路53から小タービン軸38に向かう方向に流入し、小タービン35Tを反時計方向R2に回転させる。
その後、排気は、小タービン35Tの軸方向から導出され、ターボ間通路54に進入する。排気は、ターボ間通路54に沿って上方へ導かれ、上流側通路55UAを経て大スクロール通路55の上流部55Uに至る(矢印F2)。このとき、排気は小型ターボハウジング32から大型ターボハウジング31内へ流入することにもなる。そして排気は、大タービン33Tに作用すべく、大タービン33Tの外周部の大スクロール通路55から大タービン軸37に向かう方向に流入し、大タービン33Tを時計方向R1に回転させる。しかる後、排気は大タービン33Tの軸方向から導出され、排出通路56(図3)を通してターボ過給機3の機外へ排出され、排気浄化装置70へ向かう。
図7は、エンジン本体10の中速及び高速回転域における、ターボ過給機3内の排気のフローを示す断面図である。中速〜高速回転域では、バルブアクチュエータ6Aは弁本体61を開姿勢とし、排気バイパス通路57が開かれる。この場合、エンジン本体10側から吐出されてくる排気(矢印F)は、排気導入通路51を経て、フロー抵抗が小さい排気バイパス通路57へ専ら流入する。そして排気は、排気バイパス通路57に沿って左上方へ導かれ、大スクロール通路55の上流部55Uへ、右寄りの部分から流入する(矢印F3)。このとき、排気は小型ターボハウジング32から大型ターボハウジング31内へ流入することにもなる。以下同様に、排気は、大スクロール通路55から大タービン33Tに対して流入し、大タービン33Tの軸方向から導出されて排出通路56へ向かう。
[作用効果]
以上説明した本実施形態に係るターボ過給機付エンジン1によれば、次のような作用効果を奏する。ターボ過給機付エンジン1は、過給機内排気通路50上において大型ターボ部3Aの上流に小型ターボ部3Bが直列に並ぶ2ステージ型のターボ過給機3を備える。ターボ過給機3は、大スクロール通路55のスクロール始点となる上流部55Uが、大タービン軸37よりもエンジン本体10に対して遠い側に配置される構造を有する。このため、排気導入通路51から上流部55Uまでの排気通路のレイアウトに余裕を持たせることができ、過給機内排気通路50を極端に湾曲させずに済む。従って、排気のフロー抵抗が小さい過給機内排気通路50を実現することができる。
また、エンジン本体10に対して、ターボ間通路54が排気バイパス通路57よりも遠い側に配置されている。排気バイパス通路57の下流端57Eは、ターボ間通路54の下流端54Eよりもエンジン本体10に近い側において、大スクロール通路55の上流部55Uと対向している。このため、排気バイパス通路57を短く且つ湾曲度合いが小さい排気通路として設定し易くなり、大型ターボ部3Aが主に動作する場面において、排気バイパス通路57を通してスムーズに排気を上流部55Uへ送り込むことができる。従って、大型ターボ部3Aの上流に小型ターボ部3Bを備えた2ステージ型のターボ過給機3において、排気のフローに大きな抵抗を発生させず、大型ターボ部3Aの大タービン33Tに大きな排気運動エネルギーを与えることが可能となる。
排気バイパス通路57には、弁本体61と該弁本体61を片持ち支持する回動軸63とを備えた排気バイパス弁6が配置されている。回動軸63は、大タービン軸37と略平行な方向に延び、排気バイパス通路57の、エンジン本体10に対して近い側の側方に配置されている。このため、排気バイパス通路57を通過する排気の流れによって、弁本体61が開姿勢となるよう回動軸63回りに回動する方向に、弁本体61は付勢力を受けることになる。つまり、排気流に逆らわず、弁本体61を開放させることができる。従って、排気バイパス通路57の使用開始時に弁本体61を開放し易くなり、排気バイパス通路57を通したスムーズな排気の供給に貢献することができる。また、弁本体61は回動軸63で片持ち支持されているので、開姿勢となった弁本体61は、排気バイパス通路57から完全に退避する。よって、弁本体61が、排気フローの抵抗になり難いようにすることができる。
ターボ過給機3は、小スクロール通路53の上流部53U及び大スクロール通路55の上流部55Uが、それぞれエンジン本体10に対して、小タービン軸38、大タービン軸37よりも遠い側に配置され、大タービン33Tと小タービン35Tとは互いに逆方向に回転する構造を有する。このため、排気導入通路51から各上流部53U、55Uまでの排気通路(連絡通路52、ターボ間通路54)のレイアウトに余裕を持たせることができ、これら排気通路を極端に湾曲させずに済む。従って、排気通路中における排気の流れをスムーズにすることができ、大きな排気運動エネルギーを各タービン33T、35Tに与えることが可能となる。
また、両タービン33T、35Tを同方向に回転させることを前提に排気通路を設定すると、どうしても大きく湾曲した排気通路が必要となり、ターボ過給機3が大型化する傾向がある。既存の2ステージ型ターボ過給機では、2つのタービンを同方向に回転させることを前提としているため、ターボ過給機3の小型化は一般に難しい。しかしながら、本実施形態の構成によれば、ターボ過給機3内の排気経路をシンプルに設計し易くなり、ターボ過給機3のコンパクト化を図ることができる。
小スクロール通路53と大スクロール通路55とは、上流部53U、55U同士が互いに向き合うように配置されている。排気導入通路51は大型ターボ部3Aと小型ターボ部3Bとの間に配置され、排気導入通路51と上流部53U及び上流部55Uとの間には、これらを繋ぐY字型の分岐通路50Bが配置されている。この分岐通路50Bの、排気導入通路51と上流部55Uとを繋ぐ通路が排気バイパス通路57である。このため、Y字型の分岐通路50Bによって、各上流部53U、55Uに対し、湾曲度合いの少ない滑らかな排気通路で排気導入通路51と繋ぐレイアウトを、コンパクトに設定し易い利点がある。
以上の通り、本実施形態のターボ過給機付エンジン1によれば、少なくとも2つの独立した大型ターボ部3A及び小型ターボ部3Bが排気通路に直列に配置されたターボ過給機3が付設されたエンジンにおいて、大、小タービン33T、35Tに大きな排気運動エネルギーを与えることができる。
[変形実施形態の説明]
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上記実施形態では、小型ターボ部3Bの上に大型ターボ部3Aが配置される態様を例示した。2つのターボ部3A、3Bは、上下方向に並ぶ態様に限らず、水平方向、斜め方向に並ぶ態様としても良い。また、2つのターボ部3A、3Bが本発明の条件を満たす限りにおいて、さらに他のターボ部が備えられていても良い。
上記実施形態では、大タービン33Tと小タービン35Tとが互いに逆方向に回転するように設定された排気通路を有するターボ過給機3を示した。これに代えて、大、小タービン33T、35Tが同方向に回転する態様としても良い。
図8は、変形実施形態に係るターボ過給機30の概略断面図である。ターボ過給機30は、上下方向に配置された大型ターボ部30A及び小型ターボ部30Bを備える。図4に示した実施形態と同じ部分には同じ符号を付している。エンジン本体10に対して、ターボ間通路54が排気バイパス通路57よりも遠い側に配置されている点、排気バイパス通路57の下流端57Eが、ターボ間通路54の下流端54Eよりもエンジン本体10に近い側において、大スクロール通路55の上流部55Uと対向している点も同じである。
相違する点は、連絡通路520及び小スクロール通路530の配置である。小スクロール通路530の上流部530Uは、小タービン軸38よりもエンジン本体10に近い側において、上方に開口している。連絡通路520は、この上流部530Uと排気導入通路51の下流端とを繋ぐために、Uターンする態様の排気通路とされている。小スクロール通路530は、上流部530Uから下流側にかけて、小タービン軸38の左方に向かうようにスクロールしている。これにより、小タービン35Tも、大タービン33Tと同じく時計方向R3に回転する。図8のターボ過給機30においても、ターボ間通路54と排気バイパス通路57との配置関係が上記実施形態と同様であるので、上記と同様の利点を享受することができる。
他の変形実施形態として、タービン軸37、38と直交する断面において、排気バイパス通路57の下流端57Eが斜めにカットされた形状を具備することが望ましい。上記実施形態では、弁本体61が、排気バイパス通路57のエンジン本体10に対して近い側の側方に配置されている回転軸63によって、片持ち支持される例を示した。この構成において、下流端57Eを、左側方が高く右側方(エンジン本体10に近い側)が低くなるように斜めにカットされた形状とすれば、排気のフローによって弁本体61がより開放し易い構造とすることができる。
1 ターボ過給機付エンジン
10 エンジン本体
3 ターボ過給機
3A 大型ターボ部
3B 小型ターボ部
31 大型ターボハウジング
32 小型ターボハウジング
33T 大タービン(第1タービン)
35T 小タービン(第2タービン)
37 大タービン軸(第1タービン軸)
38 小タービン軸(第2タービン軸)
50 過給機内排気通路
50B Y字型の分岐通路
51 排気導入通路(導入通路)
52 連絡通路
53 小スクロール通路(第2スクロール通路)
53U 上流部(第2上流部)
54 ターボ間通路
55 大スクロール通路(第1スクロール通路)
55U 上流部(第1上流部)
56 排出通路
57 排気バイパス通路(バイパス通路)
6 排気バイパス弁
61 弁本体
63 回動軸
P1 吸気通路
P2 排気通路

Claims (4)

  1. エンジン本体と、
    前記エンジン本体に隣接して配置され、前記エンジン本体から排気が供給される排気通路を有し、前記エンジン本体へ導入される吸気を過給するターボ過給機と、を備え、
    前記ターボ過給機は、
    第1タービン軸を有する第1タービンを含み、前記エンジン本体の中速から高速回転域で主に動作する大型ターボ部と、
    前記排気通路において前記大型ターボ部の上流側に配置され、第2タービン軸を有する第2タービンを含み、前記エンジン本体の低速回転域で主に動作する小型ターボ部と、を含み、
    前記排気通路は、
    前記エンジン本体側から排気を受け入れる導入通路と、
    前記第1タービンへ向けて排気を導く第1スクロール通路と、
    前記第2タービンと前記第1スクロール通路の第1上流部とを繋ぐターボ間通路と、
    前記導入通路に連通する第2上流部を有し、前記第2タービンへ向けて排気を導く第2スクロール通路と、
    前記第2スクロール通路及び前記ターボ間通路をバイパスして、前記導入通路と前記第1上流部とを繋ぐバイパス通路と、を含み、
    前記エンジン本体に対して、前記第1上流部が前記第1タービン軸よりも遠い側に配置されると共に、前記ターボ間通路が前記バイパス通路よりも遠い側に配置され、
    前記バイパス通路の下流端と前記ターボ間通路の下流端とは、前記第1タービン軸と直交する一の断面内に含まれる位置関係において、前記第1上流部に合流するものであって、前記バイパス通路の下流端は、前記ターボ間通路の下流端よりも前記エンジン本体に対して近い側に配置されている、ターボ過給機付エンジン。
  2. 請求項1に記載のターボ過給機付エンジンにおいて、
    前記バイパス通路に配置され、該バイパス通路を開閉するバイパス弁をさらに備え、
    前記バイパス弁は、前記バイパス通路を閉じことが可能な形状を有する弁本体と、前記弁本体を片持ち支持する回動軸とを含み、前記回動軸が軸回りに回動されることで、前記弁本体が前記バイパス通路を閉じる姿勢と、前記バイパス通路を開放する姿勢との間で姿勢変更し、
    前記回動軸は、
    前記第1タービン軸と略平行な方向に延び、
    前記第1タービン軸と直交する断面において、前記バイパス通路の、前記エンジン本体に対して近い側の側方に配置されている、ターボ過給機付エンジン。
  3. 請求項1又は2に記載のターボ過給機付エンジンにおいて、
    前記第1上流部及び前記第2上流部は、それぞれ前記エンジン本体に対して、前記第1タービン軸、第2タービン軸よりも遠い側に配置され、
    前記第1タービンは前記第1タービン軸回りに所定の第1回転方向へ回転する一方、前記第2タービンは前記第2タービン軸回りに前記第1回転方向とは反対の第2回転方向へ回転する、ターボ過給機付エンジン。
  4. 請求項3に記載のターボ過給機付エンジンにおいて、
    前記第1スクロール通路と前記第2スクロール通路とは、前記第1上流部と前記第2上流部とが互いに向き合うように配置され、
    前記導入通路は、前記大型ターボ部と前記小型ターボ部との間に配置され、
    前記導入通路と前記第1上流部及び前記第2上流部との間には、これらを繋ぐY字型の分岐通路が配置され、
    前記分岐通路の、前記導入通路と前記第1上流部とを繋ぐ通路が、前記バイパス通路である、ターボ過給機付エンジン。
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