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JP6392629B2 - ポリビニルアセタール組成物 - Google Patents

ポリビニルアセタール組成物 Download PDF

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Description

本発明はポリビニルアセタールを含有する組成物に関する。
ポリビニルアセタール及び可塑剤からなるシートは、合わせガラス用中間膜として利用されている。
合わせガラス用中間膜は通常、合わせガラス用中間膜を2枚のガラスに挟み、これをニップロールで仮接着し、オートクレーブで加熱、加圧して本接着する方法により製造される。このような製造方法は減圧工程を含まないため、合わせガラス用中間膜が少量の水を含んでいる場合でも、製造工程中での水の揮発による発泡リスクが低い。従って通常、調湿工程簡略化の観点で、合わせガラス用中間膜は含水率を0.4〜0.7%程度に調節したものを用いる。一方、高価なオートクレーブ装置の導入が困難な場合には、合わせガラスの製造にバキュームバッグが用いられる。この方法ではガラスと合わせガラス用中間膜を重ねたものをバキュームバックにいれて、減圧下に熱処理して合わせガラスを製造するため、合わせガラス用中間膜中で水が発泡し気泡となって外観が損なわれるリスクが高い。従って、合わせガラス製造時の歩留まり性向上の観点から、通常、合わせガラス用中間膜の含水率は比較的低め(例えば、0.01〜0.3%程度)に調節したものが使用される。
合わせガラス用中間膜を含む合わせガラスは自動車フロントガラスなど、高い透明性が求められる用途に使用されており、合わせガラス用中間膜自身に非常に高い透明性が求められる。一方、合わせガラス用中間膜は帯電しやすく、取り扱う際に作業環境中のほこりが表面に付着してしまうことがある。従って、その帯電防止性を改善する検討が従来から行われている(特許文献1)。ところが合わせガラス用中間膜の帯電防止性は、その含水率によって帯電防止性が変化し、結果、ほこりの付着しやすさが変化する。
一般に工業製品においてはその品質管理が重要であり、安定した品質で製品を製造することが求められる。従って、例えば前記合わせガラス製造方法の違いから合わせガラス用中間膜の含水率を変化させた場合、合わせガラス用中間膜のほこり付着性が変化し、結果、透明性の異なる合わせガラスが得られるといった問題があった。
また近年、生活環境の質に対する要求の高まりと共に、遮音性能を有する合わせガラス用中間膜に対するニーズが高まっている。遮音性能を有する合わせガラス用中間膜としては、通常の合わせガラス用中間膜よりも可塑剤の含有量を多くしたものが一般に使用されている。ところがこのような合わせガラス用中間膜はその表面が粘着性を有しているため、通常の合わせガラス用中間膜に比べて、一度ほこりが付着すると取り除くことが困難であるといった問題がある。そのような観点から、遮音性能を有する合わせガラス用中間膜、またそのような合わせガラス用中間膜を使用した合わせガラス(端部で合わせガラス用中間膜がむき出しになっている場合)においては、通常の合わせガラス用中間膜よりも高い帯電防止性能が求められている。帯電防止性能を高める方法としてナトリウム、カリウム、マグネシウムを含む化合物を添加する方法が知られている。しかしナトリウム、カリウム、マグネシウムを含む化合物を添加して十分な帯電防止性を有する合わせガラス用中間膜を得るには、これら化合物を多量に添加する必要がある。そのような合わせガラス用中間膜は、吸水した際に白化することがあった(特許文献2)。
特開2001−097745号公報 特許第2999177号公報
本発明の目的はポリビニルアセタール、可塑剤を含む組成物であって、透明性に優れ、吸水した際に白化を起こしにくく、帯電防止性に優れかつ含水率を変化させた場合であってもほこりの付着性が変化しにくい組成物を提供することである。
本発明によれば上記の目的は、ポリビニルアセタールおよび可塑剤を含む組成物であって、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩若しくはカリウム塩の最大粒子径が25μm以上またはTOF−SIMSで測定されるマグネシウム塩の最大粒子径が15μm以上であり、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムのそれぞれの含有量が200ppm以下である組成物を提供することで好適に達成される。
本発明によれば、ポリビニルアセタールおよび可塑剤を含む組成物であって、透明性に優れ、吸水した際に白化を起こしにくく、帯電防止性に優れかつ含水率を変化させた場合であってもほこりの付着性が変化しにくい組成物を提供できる。
まず本発明で使用するポリビニルアセタールについて説明する。本発明で使用するポリビニルアセタールは通常、ポリビニルアルコールを原料として製造される。上記ポリビニルアルコールは従来公知の手法、すなわち酢酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物を重合し、得られた重合体をけん化することによって得ることができる。カルボン酸ビニルエステル化合物を重合する方法としては、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法など、従来公知の方法を適用することができる。重合開始剤としては、重合方法に応じて、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤などを適宜選択できる。けん化反応は、従来公知のアルカリ触媒または酸触媒を用いた加アルコール分解反応、加水分解反応などを適用できる。
また、前記ポリビニルアルコールは本発明の主旨に反しない限り、カルボン酸ビニルエステル化合物と他の単量体とを共重合させた共重合体をけん化したものであってもよい。他の単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレンなどのα−オレフィン;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシルなどのメタクリル酸エステル;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩およびその4級塩、N−メチロールアクリルアミドおよびその誘導体などのアクリルアミドおよびその誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸およびその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン、その塩およびその4級塩、N−メチロールメタクリルアミドおよびその誘導体などのメタクリルアミドおよびその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテルなどのビニルエーテル;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン;酢酸アリル、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸エステルまたはマレイン酸無水物、ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物;酢酸イソプロペニル、などが挙げられるがこれらに限定されない。これらの他の単量体を共重合させる場合には、通常、カルボン酸ビニルエステル化合物に対して10モル%未満の割合で用いられる。
本発明に用いられるポリビニルアセタールの原料となるポリビニルアルコールの粘度平均重合度は特に限定されず、用途に応じて適宜選択されるが、150〜4000のものが好ましく、700〜4000のものがより好ましく、1500〜4000であるものがさらに好ましい。粘度平均重合度が150未満だと、本発明の組成物の力学強度が不十分となることがあり、後述するTOF−SIMSで規定されるナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の最大粒子径が、特に15℃を超える温度で本発明の組成物を保管する際に小さくなり、本発明の規定を満たさなくなることがあり、4000を超えると溶剤への溶解性や、溶融加工時の加工性が低下することがある。
本発明に用いられるポリビニルアセタールは、例えば次のような方法によって得ることができるが、これに限定されない。まず濃度3〜30質量%のポリビニルアルコール水溶液を、80〜100℃の温度範囲で保持した後、その温度を10〜60分かけて徐々に冷却する。温度が−10〜30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30〜300分間アセタール化反応を行う。その後反応液を30〜200分かけて20〜80℃の温度まで昇温し、その温度を30〜300分保持する。次に反応液を、必要に応じてアルカリなどの中和剤を添加して中和し、樹脂を水洗、乾燥することにより、本発明で用いるポリビニルアセタールが得られる。
アセタール化反応に用いる酸触媒としては特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。これらの中でも塩酸、硫酸、硝酸が好ましく用いられる。
アセタール化反応に用いるアルデヒドは特に限定されないが、炭素数1〜8のアルデヒドを用いることが好ましい。炭素数1〜8のアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、二種以上が併用されてもよい。これらの中でも炭素数2〜5のアルデヒド、特にn−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド等炭素数4のアルデヒドが入手容易であり、アセタール化反応後に残存するアルデヒドの水洗や乾燥による除去が容易で、また得られるポリビニルアセタールの力学特性に優れるため、好ましく用いられる。
本発明で使用するポリビニルアセタールの平均残存水酸基量は特に限定されないが、15〜50モル%であることが好ましく、17〜42モル%であることがより好ましく、23〜35モル%であることがより好ましく、26〜31モル%であることがさらに好ましい。平均残存水酸基量が15モル%未満であると、本発明の組成物の力学強度が不十分となったりあるいは可塑剤との相溶性が低下したりすることがあり、50モル%を超えると、本発明の組成物が吸水しやすくなったり、可塑剤との相溶性が低下することがある。
本発明で使用するポリビニルアセタールのアセタール化度は特に限定されないが、65〜85モル%であることが好ましく、68〜78モル%であることがより好ましく、68〜75モル%であることがさらに好ましく、68〜73モル%であることが特に好ましい。ポリビニルアセタールのアセタール化度が65モル%未満となると、可塑剤化合物との相溶性が低下することがあり好ましくなく、85モル%を超えるものは工業的に安価に生産することが困難であり、また得られる組成物の力学強度や帯電防止性が低下することがある。
本発明で使用するポリビニルアセタールの残存ビニルエステル基の量は特に限定されないが、0.1〜30モル%であることが好ましく、0.5〜30モル%であることがより好ましく、2〜30モル%であることがさらに好ましい。残存ビニルエステル基の量が0.1モル%未満のものは工業的に安価に生産することが困難であり、30モル%を越えるものは、長期間使用した場合に着色して外観が損なわれることがある。
次に本発明で使用する可塑剤について説明する。本発明で使用される可塑剤は特に限定されず、ポリビニルアセタールとの相溶性、ポリビニルアセタールへの可塑化効果に優れるものであれば、特に限定されない。そのような可塑剤に含まれる化合物を具体的に例示すると、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ2−エチルブチレート、グリセリントリ(2−エチルヘキサン酸)エステルなど、多価アルコールと1価カルボン酸との脂肪族エステル化合物、アジピン酸ジ(2−ブトキシエチル)、セバシン酸ジヘキシルなどの多価カルボン酸と1価アルコールとの脂肪族エステル化合物、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)共重合体、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル、ポリプロピレンオキシドモノメチルエーテル、メタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコールにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド化合物から選ばれる1種類以上の化合物を付加反応または付加重合反応させて得られる脂肪族エーテル化合物、フェノール、ノニルフェノールなどのフェノール性水酸基を有する化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシド化合物から選ばれる1種類以上の化合物を付加反応または付加重合反応させて得られる化合物などのフェノールエーテル構造を有する化合物、プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどの多価アルコールと、アジピン酸、セバシン酸などの多価カルボン酸、もしくは炭酸化合物を共重合して得られるポリエステル化合物、フェノール、ノニルフェノールなどのフェノール性水酸基を有する化合物と、酢酸、2−エチルヘキサン酸などのカルボン酸を反応させて得られる化合物などのフェノールエステル構造を有する化合物などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明において可塑剤の使用量は特に限定されないが、2〜200質量部が好ましく、20〜200質量部がより好ましく、30〜200質量部がさらに好ましく、42〜200質量部が特に好ましく、42〜100質量部が最適である。可塑剤量が2質量部未満であると、本発明の組成物を合わせガラス用中間膜として使用する場合に、その柔軟性が不足することがあり、可塑剤量が200質量部を超えると、本発明の組成物の力学強度が低下したり、本発明の組成物から可塑剤がブリードしたりすることがあり、好ましくない。
なお、本発明の組成物を遮音性能を有する合わせガラス用中間膜として使用する場合、その可塑剤量は42〜200質量部とすることが、適切な遮音性能を発現させる観点で好ましく、42〜120質量部とすることがより好ましい。ポリビニルアセタール100質量部に対して可塑剤を42〜200質量部含有する組成物は、好適な遮音性能を発現する一方で、表面に粘着性を有しており、付着したほこりを取り除くことが困難になることがあり、ほこりを付着させないことが重要である。本発明の組成物のうち、可塑剤を42質量部以上含有する組成物は合わせガラス用中間膜として使用した場合に遮音性能を発現しやすく、また従来知られている遮音性合わせガラスに使用される組成物よりも高い帯電防止性を有し、かつその帯電防止性の含水率による変化量が少ないので好適である。
また本発明で使用する可塑剤の分子量は特に限定されないが、ポリビニルアセタールとの相溶性、ポリビニルアセタールへの可塑化効果の点で250〜2000であることが好ましく、250〜1000であることがより好ましく、250〜800であることがさらに好ましい。また後述するTOF−SIMSで規定されるナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の最大粒子径が、本発明の組成物保管中、特に15℃を超える温度での保管中に変化し、本発明の規定を満たさなくなることのないようにする観点では、本発明で使用する可塑剤に含まれる化合物の10〜100質量%が分子量350以上の化合物であることが好ましく、30〜100質量部が分子量350以上の化合物であることがより好ましく、50〜100質量部が分子量350以上の化合物であることがさらに好ましく、80〜100質量部が分子量350以上の化合物であることが特に好ましい。
また本発明において、後述するTOF−SIMSで規定されるナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の最大粒子径が、本発明の組成物保管中、特に15℃を超える温度での保管中に小さくなり、本発明の規定を満たさなくなることが無いようにする観点では、特に可塑剤としてフェノールエーテル構造、フェノールエステル構造から選ばれる構造を有する化合物を5〜100質量%含有することが好ましく、特にフェノールエーテル構造を有する化合物を5〜100質量%含有することが好ましいので、次にこれを説明する。
本発明において、可塑剤としてフェノールエーテル構造、フェノールエステル構造から選ばれる構造を有する化合物を5〜100質量%含むものを使用する場合、可塑剤に含まれるフェノールエーテル構造、フェノールエステル構造から選ばれる構造を有する化合物は20〜100質量%であることがより好ましく、30〜100質量%であることがさらに好ましく、50〜100質量%であることが特に好ましく、80〜100質量%であることが最適である。可塑剤としてフェノールエーテル構造、フェノールエステル構造から選ばれる構造を有する化合物を5〜100質量部含むことで、本発明の組成物を15℃を超える温度で保管した場合であっても、後述するTOF−SIMSで規定されるナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の最大粒子径が小さくなり、本発明の規定を満たさなくなることが無いので好適である。
フェノールエーテル構造を有する化合物とは、フェノール、ノニルフェノールなどフェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基と、アルコール化合物が有する水酸基との間で脱水縮合してエーテル結合を形成している化合物と同じ化学構造を有する化合物であり、そのような化合物であれば、その製造方法は限定されず、例えばフェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基と、アルコール化合物が有する水酸基との脱水縮合で得られるものでもよいし、フェノール性水酸基を有する化合物のフェノール性水酸基にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド化合物を付加反応、付加重合反応させて得られる化合物でも良い。その際用いられるアルキレンオキシド化合物は1種単独でも、2種以上を併用してもよい。アルキレンオキシドは同種のものが複数付加していてもよいし、2種以上のものが複数付加していてもよい。またフェノールエステル化合物とは、フェノール性水酸基を有するフェノール性水酸基とカルボン酸化合物が有するカルボキシル基との間で脱水縮合してエステル結合を形成している化合物と同じ化学構造を有する化合物であり、そのような化合物であれば、その製造方法は特に限定されない。
フェノール性水酸基を有する化合物としては従来公知の化合物が挙げられ、例えばフェノール、2−メチルフェノール、3−メチルフェノール、4−メチルフェノール、2−ノニルフェノール、3−ノニルフェノール、4−ノニルフェノールなどが挙げられるがこれらに限定されず、とりわけフェノール、4−ノニルフェノールが好ましい。
フェノールエーテル構造を有する化合物を具体的に例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物のアルキレンオキシド付加物または付加重合物(アルキレンオキシドが複数付加している構造)が挙げられ、例えばフェノールのエチレンオキシド付加物またはエチレンオキシド付加重合物、フェノールのプロピレンオキシド付加物またはプロピレンオキシドの付加重合物;フェノールのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共付加重合物;4−ノニルフェノールのエチレンオキシド付加物またはエチレンオキシド付加重合物;4−ノニルフェノールのプロピレンオキシド付加物またはプロピレンオキシドの付加重合物;4−ノニルフェノールのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共付加重合物などが挙げられるがこれらに限定されない。またこれら化合物の末端水酸基の水素原子の少なくとも1つをアセチル基、エチルカルボニル基、3−ヘプチルアシル基などのアシル基またはメチル基、エチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基で置換した化合物、例えばフェノール(2−アセトキシエトキシエチル)エーテル、フェノール(2−メトキシエトキシエチル)エーテルなども挙げられるが、これらに限定されない。
フェノールエステル構造を有する化合物を具体的に例示すると、ノニルフェノールアセテート、ノニルフェノール2−エチルヘキサノエートなどが挙げられるが、これらに限定されない。
フェノールエーテル構造を有する化合物、フェノールエステル構造を有する化合物の分子量は特に限定されないが、280〜2000であることが好ましく、300〜1500であることが好ましく、300〜1200であることがさらに好ましく、300〜900であることがいっそう好ましく、300〜700であることが特に好ましく、300〜600であることが最適である。分子量が280未満であると沸点が低くなりすぎ、本発明の組成物を成形するとき、また使用するときにその揮発が問題になることがあり、分子量が2000を超えると、本発明の組成物においてポリビニルアセタールとの相溶性が低下することがある。
本発明の可塑剤は30℃で液体であることが好ましく、15℃で液体であることがより好ましく、0℃で液体であることがさらに好ましく、−10℃で液体であることが特に好ましい。30℃で液体であるものは、取り扱い性に優れるため好適である。
本発明の可塑剤はその3〜95質量%がアジピン酸ジ(2−ブトキシエチル)、セバシン酸ジヘキシルなどの、多価カルボン酸と1価アルコールとのエステル化合物、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ2−エチルブチレートなどの、多価アルコールと1価カルボン酸のエステル化合物であることが、ポリビニルアセタールの相溶性、またポリビニルアセタールへの可塑化効果の点(できるだけ少ない可塑剤量で、組成物のガラス転移温度を低下させる点)で好ましく、特に本発明で使用する可塑剤がフェノールエーテル構造を有する化合物、フェノールエステル構造を有する化合物を含む場合、高い可塑化効果を得る観点で好適である。その割合は5〜90質量%であることがより好ましく、10〜90質量%であることがさらに好ましく、20〜90質量%であることがいっそう好ましく、30〜90質量%であることが特に好ましく、50〜90質量%であることが最適である。
本発明の組成物のガラス転移温度Tgは特に限定されないが、本発明の組成物を遮音性合わせガラス用中間膜として使用する観点では、Tgが20℃未満であることが好ましく、−30〜19℃であることがより好ましく、−10〜18℃であることがさらに好ましく、0〜18℃であることが特に好ましい。ガラス転移温温度が−30℃未満であるものは、室温で十分な遮音性能が発現しないことがあり、20℃以上であるものは、室温で十分な遮音性能を発現しないことがある。
本発明の組成物ではナトリウムの含有量が200ppm以下であり、1〜200ppmであることが好ましく、1〜100ppmであることがより好ましく、1〜50ppmであることがさらに好ましく、2〜45ppmであることが特に好ましい。ナトリウムの含有量が200ppmを超えると、本発明の組成物の透明性が低下したり、吸湿時に白化したりすることがある。
また本発明の組成物ではカリウムの含有量が200ppm以下であり、1〜200ppmであることが好ましく、1〜100ppmであることがより好ましく、1〜80ppmであることがさらに好ましく、2〜50ppmであることが特に好ましい。カリウムの含有量が200ppmを超えると、本発明の組成物の透明性が低下したり、吸湿時に白化したりすることがある。
さらに本発明の組成物ではマグネシウムの含有量が200ppm以下であり、1〜200ppmであることが好ましく、1〜100ppmであることがより好ましく、1〜80ppmであることがさらに好ましく、2〜50ppmであることが特に好ましい。マグネシウムの含有量が200ppmを超えると、本発明の組成物の透明性が低下したり、吸湿時に白化したりすることがある。
本発明の組成物に含まれるナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量は前記のとおりであるが、本発明の組成物の透明性を高め、吸湿時の白化を起こりにくくし、また帯電防止性に優れかつ含水率を変化させた場合であってもほこりの付着性が変化しにくいものとする観点では、本発明の組成物に含まれるナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの合計含有量は200ppm以下であることが好ましく、150ppm以下であることがより好ましく、100ppm以下であることがさらに好ましく、80ppm以下であることが特に好ましく、50ppm以下であることが最適である。また、同様の観点から、本発明の組成物に含まれるナトリウム、カリウムおよびマグネシウムの合計含有量は1ppm以上であることが好ましく、2ppm以上であることがより好ましく、5ppm以上であることがさらに好ましく、10ppm以上であることが特に好ましい。
本発明においてはTOF−SIMSで測定されるナトリウム塩若しくはカリウム塩の最大粒子径が25μm以上またはTOF−SIMSで測定されるマグネシウム塩の最大粒子径が15μm以上である。本発明において、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩の最大粒子径、カリウム塩の最大粒子径およびマグネシウム塩の最大粒子径は、以下の方法で測定される。ION−TOF社製、TOF−SIMS5を用いて、Bi ++イオンガンを一次イオン源とする走査モードを用いて、本発明の組成物からなるシート表面の分析を、該シート表面の無作為に選んだ5箇所(それぞれ500μm×500μmの範囲)で行い、ナトリウム二次イオン、カリウム二次イオンおよびマグネシウム二次イオンの二次イオン像のイメージング画像をそれぞれ5枚得る。ナトリウム二次イオン、カリウム二次イオンおよびマグネシウム二次イオンそれぞれについて、5枚の二次イオン像のイメージング画像それぞれについて観察される各粒子で粒子径が最大となる箇所(径)を測定し、その値がもっとも大きい粒子の径を各イメージング画像の最大粒子径とする。それらを平均したもの(5枚の二次イオン像のイメージング画像における最大粒子径の和を5で除した値)を、それぞれナトリウム塩の最大粒子径、カリウム塩の最大粒子径およびマグネシウム塩の最大粒子径とする。
本発明の組成物のTOF−SIMSで測定されるナトリウム塩の最大粒子径が25μm以上である場合、本発明の組成物の帯電防止性がその含水率にほとんど依存しなくなる観点から、その最大粒子径は好ましくは27μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは33μm以上であり、特に好ましくは36μm以上であり、40μm以上であることが最適である。またナトリウム塩の最大粒子径の上限は、本発明の組成物が吸湿した際の白化を抑制する観点では、200μm未満であることが好ましく、100μm未満であることがより好ましく、80μm未満であることがさらに好ましく、70μm未満であることがいっそう好ましく、60μm未満であることが特に好ましく、50μm未満であることが最適である。
本発明の組成物のTOF−SIMSで測定されるカリウム塩の最大粒子径が25μm以上である場合、本発明の組成物の帯電防止性がその含水率にほとんど依存しなくなる観点から、その最大粒子径は好ましくは27μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは33μm以上であり、特に好ましくは36μm以上であり、40μm以上であることが最適である。またカリウム塩の最大粒子径の上限は、本発明の組成物が吸湿した際の白化を抑制する観点では、200μm未満であることが好ましく、100μm未満であることがより好ましく、80μm未満であることがさらに好ましく、70μm未満であることがいっそう好ましく、60μm未満であることが特に好ましく、50μm未満であることが最適である。
本発明の組成物のTOF−SIMSで測定されるマグネシウム塩の最大粒子径が15μm以上である場合、本発明の組成物の帯電防止性がその含水率にほとんど依存しなくなる観点から、その最大粒子径は好ましくは17μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、さらに好ましくは25μm以上であり、特に好ましくは30μm以上であり、40μm以上であることが最適である。またマグネシウム塩の最大粒子径の上限は、本発明の組成物が吸湿した際の白化を抑制する観点では、100μm未満であることが好ましく、90μm未満であることがより好ましく、80μm未満であることがさらに好ましく、70μm未満であることがいっそう好ましく、60μm未満であることが特に好ましく、50μm未満であることが最適である。
本発明の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば本発明の組成物に含まれるポリビニルアセタール、可塑剤の合計量100質量部に対して、炭素数8〜10の脂肪族炭化水素化合物を3〜10質量部添加して溶融混練する方法(前者の製法とする)、本発明の組成物に含まれる成分を適切な溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法(後者の製法とする)が挙げられるがこれらに限定されない。
前者の製法は、本発明の組成物に含まれるポリビニルアセタール、可塑剤の合計100質量部に対して、炭素数7〜10の脂肪族炭化水素化合物を3〜10質量部添加して溶融混練する方法である。この方法において添加される脂肪族炭化水素化合物は、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩の最大粒子径を適切な範囲にする効果がある。脂肪族炭化水素化合物を添加する方法は特に限定されないが、本発明で使用するポリビニルアセタールが沈殿法によって得られる多孔質の粒子である場合には、あらかじめ該多孔質の粒子に必要量の脂肪族炭化水素化合物を吸収させたものを使用することが、取り扱い性の観点から好ましい。添加した脂肪族炭化水素化合物は、混練終了時に残存していてもよいし、ある程度除かれていても良いが、混練終了後の組成物を冷却した際に多量の脂肪族炭化水素化合物が残存していると、混合物中でポリビニルアセタール、可塑剤と脂肪族炭化水素化合物が混合せずに相分離したり、可塑剤がブリードしたりすることがあり、また組成物の帯電防止性が低下することもある。したがって本発明の組成物を前者の製法で製造する場合、混練終了の時点で脂肪族炭化水素化合物の含有量がポリビニルアセタールと可塑剤の合計量に対して0.3質量%未満、好ましくは0.1質量%未満になるように、混練中に脂肪族炭化水素化合物を徐々に取り除くことが好ましい。混練中に脂肪族炭化水素化合物を徐々に取り除く観点では、使用する脂肪族炭化水素化合物は、その沸点が溶融混練温度未満のもの、好ましくは(溶融混練温度−15)℃未満のものを使用することが好ましい。混練中に脂肪族炭化水素化合物を取り除く方法は特に限定されないが、溶融混練時の加温により脂肪族炭化水素化合物を揮発させ、常圧下もしくは減圧下に水を揮発させる方法などが好ましい。なお、脂肪族炭化水素化合物の添加量が3質量%より少ないと、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩の最大粒子径を適切な範囲に調節できないことがあり、脂肪族炭化水素化合物の添加量が10質量部より多いと、得られる混合物から脂肪族炭化水素化合物を除くことが困難になり、また溶融混練時の混合物中でポリビニルアセタールと脂肪族炭化水素化合物が相分離することがある。前者の製法においては、ポリビニルアセタール、可塑剤、脂肪族炭化水素化合物を100〜170℃、好ましくは100〜120℃の温度で1〜10分、好ましくは1〜3分混合することで、目的の組成物を得ることができる。なお温度が100℃未満であるまたは混練時間が1分未満であると、ポリビニルアセタールと可塑剤の混合が不十分となることがある。ポリビニルアセタールと可塑剤を十分に混合しつつ、TOF−SIMSで測定されるナトリウム、カリウム、マグネシウムの最大粒子径を本発明で規定される範囲にする観点では、あらかじめポリビニルアセタールと可塑剤を室温で混合した後、室温(20〜30℃)で3〜10日程放置して可塑剤をポリビニルアセタールに十分吸収させた後、前記条件にて溶融混練する方法が好ましい。また温度が170℃を超えるまたは混練時間が10分を超えると、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の最大粒子径が小さくなって本発明の規定を満たさないことがある。
また後者の製法は、本発明の組成物に含まれる成分を適切な溶剤に溶解した後、溶剤を留去する方法である。適切な溶剤とは、ポリビニルアセタール、可塑剤を溶解可能な低級アルコール、具体的にはエタノール、プロパノールなどの良溶剤と、脂肪族炭化水素化合物からなる貧溶剤を100:3〜100:10(質量比)で混合した溶剤である。その際、良溶剤と貧溶剤の組み合わせは特に限定されないが、良溶剤の沸点から貧溶剤の沸点を減じた値が−10〜10℃であることが好ましい。良溶剤の沸点から貧溶剤の沸点を減じた値が−10℃未満であると、後者の製法において溶剤を留去する際に良溶剤が先に留去されてしまい、結果、得られる組成物においてポリビニルアセタールと可塑剤が相分離してしまうことがあり、10℃を超えると、後者の製法において溶剤を留去する際に貧溶剤が先に留去されてしまい、結果、得られる組成物において、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩、カリウム塩およびマグネシウム塩の最大粒子径が小さくなってしまい、本発明の規定を満たさないことがある。良溶剤の沸点から貧溶剤の沸点を減じた値が−10〜10℃である良溶剤と貧溶剤の組み合わせとしては、エタノール(沸点78℃)とヘキサン(沸点69℃)、1−プロパノール(沸点97℃)とヘプタン(沸点98℃)などが挙げられる。
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、その他添加剤を含んでいてもよい。
本発明の組成物を合わせガラス用中間膜など、ガラスとの接着性を適切に調節して使用する用途に用いる場合、接着性改良剤(接着性調整剤)を添加しても良い。接着性改良剤としては酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酪酸マグネシウムなどのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩といった、従来公知の接着性改良剤を使用できる。その添加量も特に限定されず、例えばパンメル試験により得られるパンメル値が目的に応じた値になるように添加量を調節することができる。そのような接着力調整剤を添加する場合であっても、本発明の組成物中のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量は前記規定量を満たす必要がある。
本発明の組成物を保管する際、その温度は特に限定されないが、0〜14℃であることが好ましく、0〜12℃であることがより好ましく、0〜10℃であることがさらに好ましい。保管温度が14℃を超える温度、すなわち15℃以上であると、本発明の組成物を長期間、例えば10000時間以上保管した場合、その組成によってはTOF−SIMSで測定されるナトリウム塩の最大粒子径、カリウム塩の最大粒子径、マグネシウム塩の最大粒子径がそれぞれ25μm未満、25μm未満、15μm未満となることがある。従って本発明の組成物は、15℃を越える温度での保管時間が10000時間未満であるものが好ましい。
また本発明の組成物を保管する際、その含水率は0.05〜1質量%とすることが好ましく、0.05〜0.8質量%であることがより好ましく、0.05〜0.6質量%であることがさらに好ましい。含水率が0.05質量%未満であると、本発明の組成物の帯電防止性が不十分になることがあり、1質量%を超えると、本発明の組成物を使用して合わせガラスを作製する場合に気泡が発生することがある。
本発明の組成物を成形(例えば押出成形、プレス成形、キャスト成形など)して得られるシートも本発明の範囲に含まれる。本発明のシート、本発明の複層膜は、特に合わせガラス用中間膜用途に好適に使用される。
前記したシートの厚さは特に限定されないが、通常、0.01〜5mmの範囲が好ましく、0.05〜3mmの範囲がより好ましく、0.1〜1.6mmの範囲がさらに好ましい。
本発明のシートを合わせガラス用中間膜として使用する場合、本発明のシートと積層させるガラスは特に限定されず、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラス等を制限なく使用できる。これらは無色または有色のいずれであってもよい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスの厚みは特に限定されないが、通常、100mm以下であることが好ましい。
本発明のシートを合わせガラス用中間膜として使用する場合、シートの表面の形状は特に限定されないが、少なくとも一方の表面が凹凸構造を形成させたシートであると、当該シートとガラスとを熱圧着する際の泡抜け性に優れるため好ましい。両表面が凹凸構造を形成させたシートであることがより好ましい。凹凸構造としては特に限定されないが、例えば十点平均粗さを指標とするなら、10〜100μmが好ましく、20〜70μmがより好ましい。
本発明のシートを用いて得られる合わせガラスもまた、本発明を構成する。かかる合わせガラスは従来公知の方法で製造できる。例えば真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また上記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げられる。真空バック、真空リングを用いて製造する場合には、本発明のシートの含水率は0.01〜0.3質量%とすることが、合わせガラス製造時の気泡発生を抑制する観点から好ましく、また前記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着して製造する場合は、合わせガラス製造時の気泡発生を抑制しつつ、本発明のシート調湿工程を簡略化する観点で、その含水率は0.4〜0.7質量%とすることが好ましい。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
(PVB−1の調製)
還流冷却器、温度計、イカリ型攪拌翼を備えた5L(リットル)のガラス製容器に、イオン交換水4050g、ポリビニルアルコール(PVA−1)(粘度平均重合度1700、けん化度99モル%)330gを仕込み(PVA濃度7.5%)、内容物を95℃に昇温して完全に溶解させた。次に、内容物を、120rpmで攪拌しながら、約30分かけて5℃まで徐々に冷却した後、ブチルアルデヒド186gと35%の塩酸200gを添加し、ブチラール化反応を60分間行った。その後、60分かけて67℃まで昇温し、67℃にて120分間保持した後、室温まで冷却した。得られた樹脂をイオン交換水で洗浄し、残存するブチルアルデヒドを十分に取り除いた後、過剰量の0.15質量%水酸化ナトリウム水溶液5000gを添加して残存する酸触媒を中和した。さらに、この樹脂を5000gのイオン交換水で6回水洗した後、脱水、乾燥してポリビニルブチラール(PVB−1)を得た。得られたPVB−1のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−1のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。また、PVB−1のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ32ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。ICP発光分析は、PVB−1サンプルに硫酸、硝酸を添加して加熱分解した後、塩酸水で定容した溶液を使用し、ICP発光分析装置(Perkin Elmer社製Optima4300DV)で測定することにより行った(以下、同様)。測定結果を表1に示す。
(PVB−2の調製)
PVB−1の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を4回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−2を得た。得られたPVB−2のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−2のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−2のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ65ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−3の調製)
PVB−1の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を2回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−3を得た。得られたPVB−3のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−3のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−3のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ240ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−4の調製)
PVB−1の調製において、0.15質量%水酸化ナトリウム水溶液5000gを、0.15質量%水酸化カリウム水溶液5000gに変更した以外は同様にして、PVB−4を得た。得られたPVB−4のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−4のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−4のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ1ppm未満、29ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−5の調製)
PVB−4の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を4回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−5を得た。得られたPVB−5のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−5のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−5のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ1ppm未満、74ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−6の調製)
PVB−4の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を2回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−6を得た。得られたPVB−6のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−6のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−6のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ1ppm未満、230ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−7の調製)
PVB−1の調製において、ブチルアルデヒドの使用量を205gに変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−7を得た。得られたPVB−7のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は24モル%であった。PVB−7のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−7のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ30ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−8の調製)
PVB−7の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を3回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−8を得た。得られたPVB−8のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は24モル%であった。PVB−8のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−8のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ150ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−9の調製)
PVB−1の調製において、PVA−1をPVA−2(粘度重合度1700、けん化度92モル%)330gに変更し、ブチルアルデヒドの使用量を193gに変更し、昇温後の反応温度を67℃から72℃に変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−9を得た。得られたPVB−9のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は7モル%であり、平均残存水酸基量は18モル%であった。PVB−9のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−9のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ32ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−10の調製)
PVB−9の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を3回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−10を得た。得られたPVB−10のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は7モル%であり、平均残存水酸基量は18モル%であった。PVB−10のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−10のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ145ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−11の調製)
PVB−1の調製において、0.15質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.15質量%の水酸化ナトリウムと0.3質量%の水酸化カリウムを含む水5000gに変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−11を得た。得られたPVB−11のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−11のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−11のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ26ppm、59ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−12の調製)
PVB−1の調製において、0.15質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.30質量%の水酸化ナトリウムと0.08質量%の水酸化カリウムを含む水5000gに変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−12を得た。得られたPVB−12のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−12のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−12のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ71ppm、16ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−13の調製)
PVB−1の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を10回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−13を得た。得られたPVB−13のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−13のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−13のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ2ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−14の調製)
PVB−7の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を10回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−14を得た。得られたPVB−14のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は240モル%であった。PVB−14のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−14のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ2ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−15の調製)
PVB−1の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄回数を1回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−15を得た。得られたPVB−15のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−15のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−15のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ430ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−16の調製)
PVB−4の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄回数を1回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−16を得た。得られたPVB−16のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−16のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−16のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ1ppm未満、383ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−17の調製)
PVB−7の調製において、5000gのイオン交換水での洗浄を1回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−17を得た。得られたPVB−17のブチラール化度(平均アセタール化度)は75モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は24モル%であった。PVB−17のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−17のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ395ppm以下、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−18の調製)
PVB−7の調製において、0.15質量%水酸化ナトリウム水溶液を0.15%水酸化カリウム水溶液に変更し、5000gのイオン交換水での洗浄を1回にした以外は同様にして反応を行い、PVB−18を得た。得られたPVB−18のブチラール化度(平均アセタール化度)は74モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は25モル%であった。PVB−18のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−18のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ1ppm未満、402ppm、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
(PVB−19の調製)
PVB−1の調製において、PVA−1をPVA−3(粘度重合度2400、けん化度99モル%)330gに変更した以外は同様にして反応を行い、PVB−19を得た。得られたPVB−19のブチラール化度(平均アセタール化度)は69モル%、残存酢酸ビニル基の含有量は1モル%であり、平均残存水酸基量は30モル%であった。PVB−19のブチラール化度、残存酢酸ビニル基の含有量はJIS K6728にしたがって測定した。またPVB−19のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ33ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。測定結果を表1に示す。
Figure 0006392629
(実施例1)
PVB−1の100質量部に可塑剤(トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート(3GO)36質量部と20質量部のPhE−1の混合物)をビーカーにいれ、ガラス棒を使用して10分間混合した後、25℃で5日間静置して可塑剤をPVB−1に十分吸収させた。得られた混合物の合計100質量部に対して、ヘプタン(沸点98℃)5質量部をさらに添加してPVB−1に吸収させた後、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.1質量部を加えて窒素雰囲気下、ラボプラストミルで120℃、60rpm、2.5分間溶融混練した(混練中にヘプタンは徐々に揮発した)。混練物を室温(25℃)まで冷却して組成物−1を得た。得られた組成物−1におけるヘプタンの含有量は0.01%未満であった。組成物−1のナトリウム、カリウム、マグネシウムの含有量をICP発光分析で分析したところ、それぞれ21ppm、1ppm未満、1ppm未満であった。組成を表2に示す。なおPhE−1はフェノールのフェノール性水酸基にエチレンオキシドを付加重合させることで得られる化合物を含む可塑剤であり、フェノール1分子あたりのエチレンオキシド平均付加量は7分子、平均分子量は402である。
次いで、組成物−1を120℃で、100kgf/cmの圧力を加えて、10分間熱プレスを行い、厚さ0.8mmのシート−1を得た。シート−1を適切なエンボスシートで挟んで熱プレスして、表裏両面に十点平均粗さ40μmの凹凸をつけ(凹凸付シート−1)、23℃、28%RHで調湿した後、この凹凸付シート−1を厚さ3.2mmのフロートガラス2枚で挟み、バキュームバック内で仮圧着した後、オートクレーブで140℃、1.2MPa、40分間処理して合わせガラス−1を得た。合わせガラス−1には気泡が残存しておらず、凹凸付シート−1の泡抜け性は良好であった。
(シートの表面固有抵抗測定)
シート−1を23℃、28%RHで48時間調湿して含水率を0.5質量%に調節した後、タケダ理研工業株式会社製の超高抵抗測定用試料箱(TR−42)、および横河ヒューレット・パッカード株式会社製、絶縁抵抗計(4329A)を使用し、JIS K6271(2008)に記載の二重リング法により、23℃、28%RHの雰囲気下で表面固有抵抗を測定したところ、3.1×10Ω/□であった。またシート−1をデシケーター(23℃、10%RH未満)内で2週間乾燥して含水率を0.1質量%に調節した後、上記と同様にデシケーター内で表面固有抵抗を測定したところ、4.2×10Ω/□であった。結果を表3に示す。なお前記含水率は0.5gのシート−1(前記方法で調湿、もしくは乾燥したもの)を株式会社三菱化学アナリティック製カールフィッシャー水分計(KF−200(容量法水分計)とVA−200(水分気化装置)を組み合わせて使用)を用いて、200℃で10分間加熱し、その間に気化した水分を定量することで測定した。
(ほこりの付着性評価)
シート−1を23℃、28%RHで調湿し、含水率を0.5質量%にしたシート−1を、粉塵計(chinaway社製、CW−HAT200)で測定されるPM10の濃度が70μg/m(0.07mg/m)の雰囲気で水平に保持して23℃、28%RHで7日間、静置した。静置した後のシート−1の保管時に上側になっていた面を走査型電子顕微鏡で100倍に拡大した写真を撮影し、1mm×1mmの領域5箇所それぞれに存在する、目視で確認できるほこりの数を数え、それらの平均値を求めた。平均値が2個未満であるものをAとし、2個以上、5個未満であるものをBとし、5個以上であるものをCとして評価したところ、Aであった。また同様の試験を調湿条件、試験条件とも23℃、10%RH未満とし、シート−1の含水率を0.1質量%として行った結果、ほこりの付着性はAであった。結果を表3に示す。
(ほこりの取り除き性)
10cm×10cmのシート−1を23℃、28%RHで調湿し、含水率を0.5質量%にしたものの表面に、最大径2mm未満に切断した綿(疑似わたぼこり)0.1gを均一にふりかけて10分間静置した。続いてシート−1の表面に垂直な方向、50cmの距離から風速1.6m/sの風を送風機で当てて、60秒処理した。処理後のシート−1の表面に残存していた疑似わたぼこりの重量を測定し、0.001g未満:A、0.001g以上0.01g未満:B、0.01g以上:Cとして、付着したほこりの取り除き性を評価したところBであった。
(ガラス転移温度の測定)
シート−1を幅3mmに切断して、周波数0.3Hz、引っ張りモードで動的粘弾性を測定した(装置:レオロジー社製 DVE−V4)ところ、tanδのピーク温度(ガラス転移温度)は13℃であった。結果を表3に示す。
(白化距離の測定)
合わせガラス−1を50℃、95%RHで2週間処理し、端部からの白化距離を定規をあてがって測定し、1mm未満:A、1mm以上2mm未満:B、2mm以上4mm未満:C、4mm以上7mm未満:D、7mm以上:Eとして評価したところ、Aであった。結果を表3に示す。
(飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)によるシート−1のナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩の最大粒子径測定)
ION−TOF社製、TOF−SIMS5を用いて、Bi ++イオンガンを一次イオン源とする走査モードを用いてシート−1表面の分析を、シート−1表面の無作為に選んだ5箇所(それぞれ500μm×500μmの範囲)で行い、ナトリウム二次イオン、カリウム二次イオンおよびマグネシウム二次イオンの二次イオン像のイメージング画像をそれぞれ5枚得た。ナトリウム二次イオン、カリウム二次イオンおよびマグネシウム二次イオンそれぞれについて、5枚の二次イオン像のイメージング画像それぞれについて観察される各粒子で粒子径が最大となる箇所を測定し、その値がもっとも大きい粒子の径を各イメージング画像の最大粒子径とした。それらを平均したもの(5枚の二次イオン像のイメージング画像における最大粒子径の和を5で除した値)を、それぞれナトリウム塩の最大粒子径、カリウム塩の最大粒子径、マグネシウム塩の最大粒子径とした。測定は作製直後(作製後、1週間以内)のサンプルと、作製直後のサンプルを20℃で10000時間処理した後のサンプルの両方に対して行った。初期のサンプルの結果を表2に、20℃で10000時間処理した後の結果を表3に示す。
(実施例2〜43、比較例14〜19)
使用するポリビニルアセタール、可塑剤の種類、量を表2または表4に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、組成物、シート、凹凸付シート、合わせガラスを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。なお、実施例32〜36、39では、使用する可塑剤(トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート36質量部と、20質量部のPhE−1の混合物)に酢酸マグネシウム4水和物を0.0437質量部添加したものを使用し、また実施例37、38、40では、使用する可塑剤(トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート36質量部と、20質量部のPhE−1の混合物)に酢酸マグネシウム4水和物を0.0874質量部添加したものを使用した。またPhE−2、PhE−3、PhE−4は、いずれもフェノールのフェノール性水酸基にエチレンオキシドを付加重合させることで得られる化合物を含む可塑剤であり、PhE−2はフェノール1分子あたりのエチレンオキシド付加量は9分子、平均分子量は490、PhE−3はフェノール1分子あたりのエチレンオキシド付加量は12分子、平均分子量は622、PhE−4はフェノールA1分子あたりのエチレンオキシド付加量は16分子、平均分子量は798である。組成および結果を表2〜表5に示す。
(実施例44)
1−プロパノール2000質量部とヘプタン100質量部の混合溶剤に100質量部のPVB−1、トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート36質量部、20質量部のPhE−1、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.1質量部を添加、溶解した。得られた溶液をキャストして常圧下で溶剤を乾燥して、厚さ0.8mmのシート−44を得た。シート−44をエンボスシートで挟んで熱プレスして、表裏両面に十点平均粗さ40μmの凹凸をつけ(凹凸付シート−44)、23℃、28%RHで調湿した後、凹凸付シート−44を厚さ3.2mmのフロートガラス2枚で挟み、バキュームバック内で仮圧着した後、オートクレーブで140℃、1.2MPa、40分間処理して合わせガラス−44を得た。合わせガラス−44には気泡が残存しておらず、凹凸付シート−44の泡抜け性は良好であった。組成物、シート、凹凸付シート、合わせガラスを、実施例1と同様の方法で評価した。組成および結果を表2および表3に示す。
(実施例45〜46)
PVB−1の代わりにそれぞれPVB−2、PVB−3を使用した以外は、実施例44と同様にして、組成物、シート、凹凸付シート、合わせガラスを得て、実施例1と同様の方法で評価した。組成および結果を表2及び表3に示す。
(比較例1〜12)
実施例1で混合物にヘプタンを添加せず、使用するポリビニルアセタール、可塑剤の種類、量を表4に記載のとおり変更した以外は同様にして、組成物、シート、凹凸付シート、合わせガラスを作製し、実施例1と同様の方法で評価した。なお比較例12では、使用する可塑剤(トリエチレングリコールジ2−エチルヘキサノエート36質量部と、20質量部のPhE−1の混合物)に酢酸マグネシウム4水和物を0.0437質量部添加したものを使用した。組成および結果を表4および表5に示す。
(比較例13)
実施例44でヘプタンを使用しなかったこと以外は同様にして、組成物、シート、凹凸付シート、合わせガラスを得て、実施例44と同様の方法で評価した。組成および結果を表4および表5に示す。
Figure 0006392629
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Figure 0006392629
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Claims (13)

  1. ポリビニルアセタールおよび可塑剤を含む組成物であって、TOF−SIMSで測定されるナトリウム塩若しくはカリウム塩の最大粒子径が25μm以上またはTOF−SIMSで測定されるマグネシウム塩の最大粒子径が15μm以上であり、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムのそれぞれの含有量が200ppm以下であり、前記ナトリウム、前記カリウムおよび前記マグネシウムの合計含有量が200ppm以下であり、前記ポリビニルアセタール100質量部に対して前記可塑剤を2〜200質量部含有する組成物
  2. ポリビニルアセタールのアセタール化度が65〜85モル%である、請求項に記載の組成物。
  3. ポリビニルアセタールの残存ビニルエステル基量が0.1〜30モル%である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. ポリビニルアセタールの平均重合度が150〜4000である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  5. ポリビニルアセタール100質量部に対して可塑剤を42〜200質量部含む、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  6. 可塑剤が分子量350以上の化合物を10〜100質量%含有する、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  7. 可塑剤の5〜100質量%がフェノールエーテル構造、フェノールエステル構造から選ばれる構造を有する化合物である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  8. 可塑剤の3〜95質量%が、多価カルボン酸と1価アルコールのエステル化合物、多価アルコールと1価カルボン酸のエステル化合物から選ばれる1種類以上の化合物である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  9. ガラス転移温度Tgが20℃未満である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  10. 15℃を超える温度での曝露時間が10000時間未満である、請求項1〜のいずれかに記載の組成物。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の組成物からなるシート。
  12. シート表面の少なくとも一方の面の十点平均粗さが10〜100μmである、請求項11に記載のシート。
  13. 請求項11または12に記載のシートを合わせガラス用中間膜として備える合わせガラス。
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