JP6390274B2 - 熱延鋼板 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.03%超0.30%未満、Si:0.01%以上3.0%以下、Mn:1.0%以上4.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.01%以上3.0%以下、N:0.010%以下を含有し、かつSiとsol.Alの合計含有量(Si+sol.Al)が0.5%以上3.0%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイト:60%以上、ポリゴナルフェライト:5%以上30%未満、残留オーステナイト:3%未満、ベイナイト、残留オーステナイトおよびポリゴナルフェライトを除く残部:10%以下であって、鋼板表面から100μm深さ位置のポリゴナルフェライト面積率と板厚の1/4深さ位置のポリゴナルフェライト面積率とが下記式(1)を満足することを特徴とする熱延鋼板。
ここで、
Vαsは鋼板表面から100μm深さ位置でのポリゴナルフェライトの面積率(%)、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのポリゴナルフェライトの面積率(%)、
をそれぞれ表す。
(1−1)C:0.03%超0.30%未満
Cは、ベイナイトの生成を促進する作用を有する。C含有量が0.03%以下では、目的とするベイナイト面積率を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.03%超とする。好ましくは0.06%以上、さらに好ましくは0.10%以上である。一方、C含有量が0.30%以上では、パーライトが優先的に生成してしまう。その結果、ベイナイトの生成が不十分となり、目的とするベイナイト面積率を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.30%未満とする。好ましくは0.25%以下である。
Siは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用と脱酸により鋼を健全化する作用を有する。さらにセメンタイト等の鉄系炭化物の析出を抑制することで伸びフランジ性の向上に寄与する。Si含有量が0.01%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.01%以上とする。後述するように、本発明ではSiおよびsol.Alの合計含有量(Si+sol.Al)が重要であるが、Siはsol.Alよりも固溶強化能が高いことから、より高い強度を求める場合には、Si含有量は0.5%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.8%以上、特に好ましくは1.0%以上である。しかし、Si含有量が3.0%超では鋼板の表面性状や化成処理性の劣化、延性や溶接性の劣化が著しくなる。またA3変態点の著しい上昇を招き、安定した熱間圧延を困難にする場合がある。したがって、Si含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下である。
Mnは、フェライト変態を抑制してベイナイトの生成を促進する作用を有する。Mn含有量が1.0%未満では、目的とするベイナイト面積率を確保することが困難である。したがって、Mn含有量は1.0%以上とする。好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは1.8%以上である。一方、Mn含有量が4.0%超では、フェライト変態が過度に抑制されてしまい、鋼板表層近傍で目的とするポリゴナルフェライト面積率を確保することが困難となる。したがって、Mn含有量は4.0%以下とする。好ましくは3.6%以下、さらに好ましくは3.2%以下である。
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により強度を高める作用を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、Pは偏析し易い元素であり、その含有量が0.10%を超えると、粒界偏析に起因する成形性や靭性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.050%以下、より好ましくは0.030%以下、さらに好ましくは0.020%以下である。P含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの観点からは0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して熱延鋼板の成形性を低下させる。S含有量が0.010%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.0050%以下、さらに好ましくは0.0030%以下、最も好ましくは0.0010%以下である。S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの上昇を抑制する観点からは0.0001%以上とすることが好ましい。
Alは、Siと同様に、鋼を脱酸して鋼板を健全化する作用を有する。さらにセメンタイト等の鉄系炭化物の析出を抑制することで伸びフランジ性の向上に寄与する。sol.Al含有量が0.01%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.01%以上とする。好ましくは0.03%以上である。一方、sol.Al含有量が3.0%超では、A3変態点の著しい上昇を招いて、安定した熱間圧延を困難にする場合がある。したがって、sol.Al含有量は3.0%以下とする。好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2.0%以下である。
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の成形性を低下させる作用を有する。N含有量が0.010%超では成形性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.0080%以下、さらに好ましくは0.0070%以下である。N含有量の下限は特に規定する必要はないが、後述するようにTi、NbおよびVの1種または2種以上を含有させて鋼組織の微細化を図る場合を考慮すると、炭窒化物の析出を促進させるためにN含有量は、0.0010%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0020%以上である。
上述したように、SiおよびAlはともにセメンタイト等の鉄系炭化物の析出を抑制する作用を有し伸びフランジ性を向上させることから、本発明ではSiとsol.Alの合計含有量(Si+sol.Al)を規定する。合計含有量(Si+sol.Al)が0.5%未満では、上記作用が不十分なために粗大なパーライトやセメンタイトが生成し、伸びフランジ性が劣化する場合がある。したがって、合計含有量(Si+sol.Al)は0.5%以上とし、好ましくは1.0%以上であり、さらに好ましくは1.2%以上である。一方、合計含有量(Si+sol.Al)が3.0%超では、A3変態点の著しい上昇を招いて、安定した熱間圧延を困難にする場合がある。したがって、合計含有量(Si+sol.Al)は、3.0%以下とし、好ましくは2.5%以下であり、さらに好ましくは2.2%以下である。
Ti、NbおよびVは、鋼中に炭化物または窒化物として析出し、そのピン止め効果によって鋼組織を微細化する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても、上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ti含有量は0.20%以下、Nb含有量は0.10%以下、V含有量は0.50%以下とする。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.005%以上、Nb:0.002%以上、およびV:0.005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Cr、Mo、NiおよびBは、焼入性を高める作用を有する。またMoは鋼中に炭化物を析出して強度を高める作用を有する。また、Niは、後述するようにCuを含有させる場合においては、Cuに起因するスラブの粒界割れを効果的に抑制する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。
Ca、MgおよびREMは、介在物の形状を調整することにより、成形性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、これらの元素の含有量が上記上限値を超えると、鋼中の介在物が過剰となり、却って成形性を低下させる場合がある。したがって、各々の元素の含有量は上記のとおりとする。それぞれの元素は、好ましくは0.010%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには上記元素のいずれかを0.0005%以上含有させることが好ましい。ここで、REMは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素を指し、REMの含有量は、これらの元素の合計含有量を指す。ランタノイドの場合、工業的にはミッシュメタルの形で添加される。
Cuは、低温で析出して強度を高める作用を有するので、鋼中に含有させてもよい。しかし、Cu含有量が1.0%超では、スラブの粒界割れが生じる場合がある。したがって、Cu含有量は1.0%以下とする。好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.3%未満である。上記作用による効果をより確実に得るにはCu含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
Biは、凝固組織を微細化することにより成形性を高める作用を有するので、鋼中に含有させてもよい。しかし、Bi含有量を0.020%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Bi含有量は0.020%以下とする。好ましくは0.010%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
(2−1)鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのベイナイト面積率:60%以上
ベイナイトは硬質かつ均質な組織であり、高い強度と優れた伸びフランジ性とを兼備させるのに最も適した組織であることから、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのベイナイト面積率は60%以上とする。60%未満の場合、所望の強度と伸びフランジ性を得ることが困難となる。好ましくは70%以上である。
軟質なポリゴナルフェライトを含有させることにより延性を向上させるため、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのポリゴナルフェライト面積率は5%以上30%未満とする。5%未満の場合は延性向上の効果が得られず、一方、30%以上含有させると伸びフランジ性が低下するばかりでなく、所望の強度確保が困難となる。ポリゴナルフェライト面積率は好ましくは8%以上25%以下、より好ましくは8%以上20%以下である。
残留オーステナイトは、変態誘起塑性(TRIP)により延性を高める作用を有する一方、変態により生成する硬質なマルテンサイトが伸びフランジ性を低下させる。高い伸びフランジ性を得るため、残留オーステナイトの面積率は3%未満に限定する。
成形性の観点から、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのベイナイト、残留オーステナイトおよびポリゴナルフェライトを除く残部の面積率は10%以下とする。10%を超える場合、伸びフランジ性が低下することがある。より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
(2−5)鋼板表面から100μm深さ位置と鋼板表面から板厚の1/4深さ位置とにおけるフェライトの面積率の関係
伸びフランジ成形や曲げ成形等のように、鋼板内部に比して鋼板表層部における歪量が大きい成形法では、鋼板表層部における変形能を高めるとともに、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが重要である。そのため本発明に係る熱延鋼板の鋼板表面から100μm深さ位置での鋼組織と板厚の1/4深さ位置での鋼組織との関係は以下を満足する。
ここで、
Vαsは鋼板表面から100μm深さ位置でのポリゴナルフェライトの面積率(%)、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのポリゴナルフェライトの面積率(%)、
をそれぞれ表す。
上述した化学組成及び鋼組織を有する本発明に係る熱延鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を備えさせて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は、電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
高い強度を有するとともに優れた延性と伸びフランジ性とを兼備する熱延鋼板を得るには、上記化学組成を有するスラブに多パスの熱間圧延を施して熱延鋼板を製造するに際して、熱間圧延により導入されるせん断歪みを利用して鋼板表層近傍と鋼板内部とで蓄積歪みに差を生じさせ、上記歪みの差による変態駆動力の差を効率的に利用して鋼板表面から100μm深さ位置でのフェライト変態を鋼板内部よりも促進させることが重要である。
ここで、各記号の意味は次の通りである。
t:最終圧延パスの1つ前の圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間時間(秒)
T:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了温度(℃)
以下に製造方法についてより詳しく説明する。
熱間圧延に供するスラブは、上述の化学組成を有する。熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造により得られたスラブや鋳造・分塊により得られたスラブなどを用いることができ、必要によってはそれらに熱間加工または冷間加工を加えたものを用いることができる。
最終圧延パスと1つ前の圧延パスおよび2つ前の圧延パスにおける圧下率は25%以上60%以下とすることが好ましい。最終圧延パスと1つ前の圧延パスおよび2つ前の圧延パスにおける圧下率をそれぞれ25%以上とすることにより、主に再結晶オーステナイト粒の微細化が図られるとともに、鋼板の表層近傍に導入されるせん断歪みの効果によって鋼板の表層近傍の再結晶オーステナイト粒が鋼板の内部に比べて一層微細化される。さらに、最終圧延パスの圧下率を25%以上とすることにより、後述する熱間圧延後の冷却条件と相俟って、導入される歪みを変態駆動力および変態核生成サイトとして、鋼板の内部に比べて鋼板の表層近傍のフェライト変態を促進することが可能となる。各圧延パスでの圧下率が25%未満では鋼板の表層近傍に導入されるせん断歪み量が不十分となり、延性と伸びフランジ性とを兼備する熱延鋼板が得られない場合がある。したがって、最終圧延パスと1つ前の圧延パスおよび2つ前の圧延パスにおける圧下率は25%以上とすることが好ましい。より好ましくは30%以上であり、40%以上とすることがさらに好ましい。
圧延完了温度は860℃以上1050℃以下とすることが好ましい。これにより圧延により導入した歪の解放が抑制され、後続する冷却処理を適切に施すことにより、延性と伸びフランジ性とを兼備する熱延鋼板が得られる。
0.002/exp(−6080/(T+273))≦t≦2.0 (1)
ここで、各記号の意味は、t:最終圧延パスの1つ前の圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間時間(秒)、T:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了温度(℃))である。
圧延により導入した歪による駆動力を効率的に活用して変態させるため、圧延完了後の一次冷却は0.3秒以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の平均冷却速度で850℃未満Ar3点以上の温度域まで冷却することが好ましい。この温度域に冷却し、後述する滞留時間と相俟って、鋼板表層近傍でのフェライト変態駆動力を残したまま、鋼板内部の蓄積歪みを解放させることが可能となる。これにより鋼板表層近傍でのフェライト量が内部に比べて多いという延性および伸びフランジ性に好適な鋼組織を得ることができる。
圧延完了後、冷却開始までの時間が0.3秒を超える場合や平均冷却速度が200℃/秒未満では鋼板表層近傍に導入された歪みが解放してしまい、このような鋼組織が得られない場合がある。また一次冷却の停止温度が850℃以上では、鋼板表層近傍の蓄積歪みの解放が顕著となり所望の鋼組織が得られない場合がある。一方、一次冷却の停止温度がAr3点を下回ると鋼板内部でのフェライト変態が顕著となり、ベイナイト主体の組織とならない場合がある。したがって、圧延完了後の一次冷却は0.3秒以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の平均冷却速度で850℃未満Ar3点以上の温度域まで冷却することが好ましい。圧延完了から冷却開始までの時間はより好ましくは0.2秒以内、さらに好ましくは0.15秒以内である。また平均冷却速度はより好ましくは300℃/秒、さらに好ましくは400℃/秒である。
850℃未満Ar3点以上の温度域での滞留時間は1秒以上、3秒未満とすることが好ましい。これによって鋼板表層近傍でのフェライト変態駆動力を残したまま、鋼板内部の蓄積歪みを解放することが可能となる。これにより鋼板表層近傍でのフェライト量が内部に比べて多いという延性および伸びフランジ性に好適な鋼組織を得ることができる。1秒未満では鋼板内部の歪み解放が不十分なため鋼板内部でのフェライト生成量が増し、伸びフランジ性が低下する場合がある。一方、3秒以上では鋼板表層近傍に導入された歪みが解放してしまい、フェライト生成量が減少し延性が低下する場合がある。したがって850℃未満Ar3点以上の温度域での滞留時間は1秒以上、3秒未満とすることが好ましい。
上述した鋼板表層近傍におけるフェライト面積率を確保するには、フェライト変態が活発となる600℃以上750℃未満の温度域まで20℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、該温度域にて1秒以上15秒未満の時間滞在させることが好ましい。平均冷却速度が20℃/秒未満の場合、鋼板内部で冷却中にフェライト変態が生じベイナイト主体の組織と成り難い。したがって該温度域への平均冷却速度は20℃/秒以上とすることが好ましい。より好ましくは40℃/秒、さらに好ましくは60℃/秒、特に好ましくは80℃/秒である。上記温度域に滞在させる時間が1秒未満では、鋼板表層近傍のフェライト変態が十分に進行せず、延性が低下する場合がある。一方、上記温度域に滞在させる時間が15秒以上の場合、鋼板内部のフェライト変態が進行して伸びフランジ性が低下する場合がある。さらにセメンタイトやパーライトの生成が顕著となり、伸びフランジ性や延性が低下してしまう場合がある。したがって、上記温度域に滞在させる時間は1秒以上15秒未満とすることが好ましい。
高強度鋼板において高い伸びフランジ性を得るため、本発明では粗大なパーライトやセメンタイトの生成と残留オーステナイトの生成をそれぞれ抑制する必要がある。このために巻き取り工程は500℃超600℃未満の温度域で開始し、その後450℃までの平均冷却速度を0.007℃/秒以上1.0℃/秒以下とすることが好ましい。上記化学組成を有する鋼板の巻き取りを500℃以下で開始した場合や500℃超600℃未満で巻き取った後、450℃まで1.0℃/秒超の平均冷却速度で冷却した場合は、鋼板中に残留オーステナイトが生成し伸びフランジ性が劣化する場合がある。また巻き取り開始温度が500℃以下の遷移沸騰領域では鋼板長手や幅方向で温度ムラが生じやすく特性変動が起こり易い。一方、巻き取りを600℃以上で開始した場合は鋼板内部でフェライト変態が進行し、ベイナイト主体の組織と成り難い。さらに600℃以上で開始した場合や500℃超600℃未満で巻き取った後、450℃まで0.007℃/秒未満の平均冷却速度で冷却した場合は、粗大なパーライトやセメンタイトの生成が顕著となり伸びフランジ性が劣化する場合がある。巻き取り開始温度のより好ましい範囲は520℃以上580℃以下である。また巻き取り開始から450℃までのより好ましい平均冷却速度は0.008℃/秒以上0.3℃/秒以下である。
熱延鋼板の板厚が1.2mm以下では、圧延完了温度の確保が困難になるとともに圧延荷重が過大となって、熱間圧延が困難となる場合がある。したがって、本発明の熱延鋼板の板厚は1.2mm超とすることが好ましい。より好ましくは1.4mm以上である。一方、熱延鋼板の板厚が6mm超では、鋼組織の微細化が困難となり、上述した鋼組織を確保することが困難となる場合がある。また、上述した傾斜組織を得ることも困難となる場合がある。したがって、板厚は6mm以下とすることが好ましい。より好ましくは5mm以下である。
得られた鋼板の鋼組織および機械特性を表3にまとめて示す。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.03%超0.30%未満、Si:0.01%以上3.0%以下、Mn:1.0%以上4.0%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.01%以上3.0%以下、N:0.010%以下を含有し、かつSiとsol.Alの合計含有量(Si+sol.Al)が0.5%以上3.0%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイト:60%以上、ポリゴナルフェライト:5%以上30%未満、残留オーステナイト:3%未満、ベイナイト、残留オーステナイトおよびポリゴナルフェライトを除く残部:10%以下であって、鋼板表面から100μm深さ位置のポリゴナルフェライト面積率と板厚の1/4深さ位置のポリゴナルフェライト面積率とが下記式(1)を満足し、引張り強度が780MPa以上、強度−伸びフランジ性バランス(TS×λ)が69000MPa・%以上および強度−延性バランス(TS×EL)が16000MPa・%以上であることを特徴とする熱延鋼板。
Vαs>1.5Vαq (1)
ここで、
Vαsは鋼板表面から100μm深さ位置でのポリゴナルフェライトの面積率(%)、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのポリゴナルフェライトの面積率(%)、
をそれぞれ表す。 - 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.20%以下、Nb:0.10%以下およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%未満、Mo:0.50%以下、Ni:1.0%以下およびB:0.0050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.020%以下、Mg:0.020%以下およびREM:0.020%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Cu:1.0質量%以下を含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Bi:0.020質量%以下を含有する請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱延鋼板。
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