以下に、本発明の実施の形態を、図を用いて説明する。
(第一の実施形態)
図1に本発明の第一の実施形態の構成を示す。本実施形態の被検体情報取得装置は、被検体を保持して圧迫する圧迫板である保持板101(101a、101b)、照射手段であるレーザ光源104、光音響波検出手段であるトランスデューサアレイ105、画像信号生成手段である光音響信号処理部106及び画像再構成部107、圧力情報取得手段である圧力算出部114、及び制御手段128を有する。ここで、照射手段であるレーザ光源104は被検体に照射光を照射するものであり、音響波検出手段であるトランスデューサアレイ105は照射光によって被検体内部に発生する音響波を受信して電気信号を出力するものである。また、画像信号生成手段である光音響信号処理部106及び画像再構成部107は、音響波検出手段であるトランスデューサアレイ105が出力する電気信号に基づいて音響波画像を形成するための信号を生成するものである。また、圧力情報取得手段である圧力算出部114は圧迫板である保持板101が被検体に加える圧力情報を取得するものであり、制御手段128は、音響波画像と圧力情報を表示手段115に表示させるものである。これらによって、音響波画像を用いた診断の信頼性が向上する。詳述すると、被検体情報取得装置である光音響マンモグラフィー装置では、被検体中の血液および血液成分の分布に対して有効な画像情報を得ることができるため、血管およびその周囲における部位の圧力情報が診断時に補助情報として利用できることが期待できる。換言すると、被検体の血液に関する情報を画像化する光音響画像を取得する被検体情報取得装置故に、被検体に加えられる圧力情報は、その光音響画像の信頼性の判断に有益な情報である。また、圧力が血流に影響を与えて光音響波の計測の再現性が損なわれる恐れもあるため、その確認のための情報として圧力情報を利用することも期待できる。
尚、図1に示す構成においては、好まし形態として照射手段であるレーザ光源104からの光を伝送する光ファイバからなる光伝送手段103、圧迫板である保持板101bを介して被検体へレーザ光を照射する光照射部102、圧迫板101aに加えられた荷重を検知する荷重センサ108(加重センサと記載する場合もある)、圧迫板である保持板101を保持する支柱109を有している。また圧力情報取得手段である圧力算出部114での圧力算出に必要な情報、具体的には、圧迫板である保持板101と被検体との接触面積を算出するためのCCDカメラ110、CCDカメラ画像生成部111、輪郭抽出部112、領域検出手段である接触面積算出部113及び照明手段116を更に備えている。また、制御手段128は、好ましい形態として、レーザ光源104や超音波トランスデューサアレイ105等の制御も兼ねている。
尚、図1に示す構成、また後述する図2,図3,図4に示す構成は、光音響画像を取得する被検体情報取得装置においては、好ましい形態と言える。これについて、以下、説明する。
特許文献1に記載のような保持板全面に圧力センサを配置する構成では、光音響画像取得を行う際のレーザ光の照射や光音響信号の取得が良好におこなえないという、光音響画像を取得する被検体情報取得装置に特有な新たな課題を有していた。
即ち光音響波は超音波の一種であるため、被検体、保持板および光音響波を検出する超音波トランスデューサが各々音響的に接触して配置される必要がある。特に被検体内部で発生する微弱な光音響信号を検出するには、これらの接触面において光音響波の減衰、反射を起こすと受信光音響信号の強度が減少しSNRが劣化するため、各界面に音響整合材以外の材質や構造を挟みこむのは好ましくない。またレーザ光を効率よく照射するためにも被検体と保持板間はレーザ光透過性が高い構成とすることが必要とされ、レーザ光を照射する照射部は保持板に近接し、かつ光照射部と保持板間には光の吸収や反射を起こす材質や構造を設けることは好ましくない。
また圧電素子などによる圧力センサも直接圧力を計測するために被検体表面や保持板に接して配置される必要があるが、圧電素子などの固体型圧力計測素子は一般に音響インピーダンスが高く、被検体、保持板などの間に挟むと光音響波の強い反射を生じやすいものであった。
以上のように、被検体を保持する保持板で被検体(乳房)を固定して、この保持板を介して光照射、光音響波の検出を行う装置では、保持板表面の広範囲な領域に圧力センサを設ける構造は好ましくなく、改善が求められていた。
このような理由から、本実施形態の一例である図1に示す構成の被検体情報取得装置や、後述の図2〜図4で示させる構成の被検体情報取得装置は好ましい形態である。
次に、図1に示す構成の被検体情報取得装置の動作について説明する。
初めに光音響波画像の取得と表示について説明する。圧迫板である二枚の保持板101(101a、101b)は支柱109に保持され、手動またはモータ駆動でその間隔を調整して被検体を圧迫して保持する。保持板101bは少なくとも照射手段であるレーザ光源104の発生するレーザパルス光の波長および照明手段116の発光波長帯域(可視域)の光透過性が高い樹脂材(例えばPC、PMMAなど)で形成される。保持板101aは光音響波の透過性が高くまた、境界での光音響波の反射を防ぐため被検体と音響インピーダンスの差が小さい材質、例えばポリメチルペンテンポリマーのTPX(R)などで形成されるのが好ましい。照射手段である音速レーザ光源104は制御手段128からの駆動命令で650nm〜1100nmの特定波長のレーザパルス光を発生し、発生したパルス光は光伝送手段103を伝搬し、光照射部102より保持板101bを介して被検体に照射される。照射された光パルスにより被検体内に発生した光音響波は保持板101aを介して音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105で受信される。超音波トランスデューサアレイ105は光照射部103と保持板101をはさんで対向し、好ましくは二次元アレイで構成される。超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102は対向した関係を保ったままで保持板101上を走査されてもよい。超音波トランスデューサアレイ105の各素子で受信した光音響信号は画像信号生成手段を構成する光音響信号処理部106で増幅、デジタル化などの信号処理をされ、同じく画像信号生成手段を構成する光音響画像再構成部107で三次元画像データへ変換される。光音響画像再構成部107では超音波トランスデューサアレイ105上の各素子からの信号をもとに光音響波の到達時間と各素子の位置より光音響波の各発生点での発生強度、即ち光音響波発生強度分布を算出し、これを三次元画像データとして格納する。この光音響波発生強度分布の算出にはディレイ・アンド・サム法、逆投影法、マイグレーション法などを用いことができる。
光音響波発生強度は各点での照射パルス光の吸収率に比例するため、照射手段であるレーザ光源104で発生するパルス光の波長を血液の吸収波長に一致させることで被検体内の血液分布の画像データが算出できる。同様にパルス光の波長をヘモグロビンの吸収波長と一致させることでヘモグロビン濃度分布の画像データが作成できる。またレーザ光源104で発生するパルス光を複数波長のパルス光とし、各波長の照射パルス光に対する光音響波発生強度分布を比較することで分光学的な画像データを作成してもよい。例えばオキシヘモグロビンとデオキシヘモグロビンの吸収波長の差異に合わせた複数波長パルス光による光音響波発生強度分布を比較することで血中酸素濃度の分布画像データが作成できる。
音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102を不図示の走査手段により、圧迫板である保持板101上を走査させることで保持板101に接触している被検体全域の三次元画像データを取得できる。画像信号生成手段を構成する光音響画像再構成部107で作成された三次元画像データは制御手段128へ送られる。
圧迫圧力の計測は以下のように行われる。
好ましくは圧迫板である保持板101を用いて被検体の保持・固定を行った時点で、不図示の走査手段により音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102が退避位置まで移動する。退避位置はCCDカメラ110の撮像画角外にあればよい。
保持板101bの周縁部にはたとえばLED光源からなる照明手段116が配置されており、保持板101b内部に照明光を透過させて照明する。CCDカメラ110で保持板101b面を撮像する。このとき照明手段116からの照射光の大部分は保持板101b内部を略全反射して伝搬しているが、保持板101bに対して被検体の接触面と非接触面では光学屈折率がことなるためCCDカメラ110での撮像画面にコントラストの差が生じやすい構成となっている。このため特に接触面と非接触面のコントラスト差により被検体接触面が検出でき、特に境界のエッジが強調される。
CCDカメラ画像生成部111ではCCDカメラ110の撮像画像を生成するが、このとき画像輝度のコントラスト強調を行ってもよい。作成された撮像画像情報は輪郭抽出部112で輪郭抽出を行い、領域検出手段である接触面積算出部113で境界内部の面積を算出する。具体的には輪郭抽出部112で空間微分フィルタを用いて輪郭抽出を行えばよく、好ましくは輪郭の連結の有無を判断して接触領域と非接触領域の境界を単連結の境界線で補間し、領域検出手段である接触面積算出部113で境界内(被検体接触部分)の画素をカウントすればよい。CCDカメラ110の撮像画像から被検体接触面積を算出するには、これ以外にも通常の画像処理で使用される種々の方法を用いてもよく、特に輪郭抽出を行うことなくCCDカメラ110の撮像画像を直接二値化してもよい。
またCCDカメラ画像生成部111からの画像データを制御手段128へ入力し、後述のように光音響画像とともに表示してもよい。
荷重センサ108は例えば磁歪式ロードセル、静電容量型ロードセル、ジャイロ式ロードセル、ひずみゲージ式ロードセルなどのロードセル素子を用いることができる。支柱109の保持板101保持部に配置して保持板にかかる圧迫力を検出し、その値を圧力情報取得手段である圧迫圧力算出部114へ送る。圧迫圧力算出部114では荷重センサ108で計測された圧迫力と領域検出手段である接触面積算出部113で算出された被検体接触面積より圧迫圧力を算出する。算出された圧迫圧力は血圧などとの対比がし易いmmHgの単位に換算されて、制御手段128へ送られる。
次に制御手段128について説明をする。図8に制御手段128をより詳しく表す。制御手段128は主制御部132、入力部133、画像処理部134、記憶部135が設けられている。
主制御部132では前述した照射手段であるレーサ光源104の駆動をふくむ光音響波の取得を制御する。また光音響画像データの取得に先だって、前記の圧迫圧力計測を行うための制御を行う。さらには音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102を走査しながら光音響画像データを取得する場合には、不図示の走査部とレーサ光源104の駆動をふくむ光音響波の取得を制御する。入力部133から撮像諸条件を入力し、これに従って光音響画像データの取得を行うと同時に、以下のように入力部133からの入力により表示手段115へ表示する表示画像データを作成する表示画像の制御を行う。主制御部132はこれらの制御を行うためのCPU、MPUなどのマイクロプロセッサやRAM、ROM、データ転送用の各種バスや通信インターフェースなどから構成される。
画像処理部134では画像信号生成手段を構成する光音響画像再構成部107で作成された三次元画像データをもとに、入力部133の入力で指定される光音響画像の断面二次元画像、投影二次元画像、レンダリング画像などの表示用画像を作成する。入力部133からはさらに断面二次元画像の断面の位置及び方向、投影二次元画像の投影面の方向、レンダリング画像の視点方向などが指定できる。画像処理部134ではこれら入力部133からの入力に従って所望の表示用画像データを作成する。また表示画像データに対してノイズ除去、フィルタ処理やコントラストや色彩補正を行う。画像処理部134は主制御部132と同様のマイクロプロセッサを併用して用いることもできるが、好ましくは画像処理専用のGPUを用いて構成することも可能である。記憶部135には上記駆動の制御、表示用の制御のために入力手段より入力された各種パラメタや装置本来に固定されたパラメタが記憶される。さらに記憶部135には各種のデータを記憶する。記憶されるデータとしては画像信号生成手段を構成する光音響画像再構成部107で作成された光音響画像データ、圧力情報取得手段である圧迫圧力算出部114で算出された圧力値データ、患者IDや氏名などの被検者の情報などがある。さらには診断に有用な各種診断情報を記録する。診断情報としては血圧履歴(過去の最大・最小血圧等)、体脂肪率、BMI(ボディマス指標)、年齢、カップサイズ(トップバストとアンダーバストの差)などがある。さらに記憶部135には主制御部132の通信インターフェースなどを通してX線マンモグラフィー、MRI画像などの他モダリティによる画像や過去に撮像した光音響画像を転送して記録することもできる。さらに好ましくは、これら他モダリティの画像データを画像処理部134を用いて光音響の表示画像と整合をとった表示画像、たとえば光音響画像を断面二次元画像で表示する際には、他モダリティ画像も断面二次元画像とし同一断面での画像を表示できるように他モダリティ画像データを座標変換し、他モダリティ表示画像データを作成することが好ましい。さらにCCDカメラ画像生成部111からの画像データを記憶してもよく、表示手段に表示した各種表示画像を記憶してもよい。なお記憶部135は各種記憶デバイスで構成することができるが、各種画像データを記憶するため好ましくはHDDなどの大容量記憶デバイスで構成される。
主制御部132では画像処理部134で作成された光音響画像の表示用画像データと記憶部135に記録された各種データを表示手段115に表示する。図9に表示手段115に表示される各種表示データの構成例を示す。136は被験者情報表示領域、137は光音響画像表示領域、138は光音響画像制御パラメタ表示領域、139は他モダリティ画像表示領域、140は圧力値表示領域である。被検者情報表示領域136には、患者ID、氏名、過去の最大・最小血圧、体脂肪率、BMI、年齢、カップサイズなどの被検者に関する情報が表示される。光音響画像表示領域137には三次元画像データをもとに、入力部133の入力で指定された光音響画像の断面二次元画像、投影二次元画像、レンダリング画像などの光音響表示用画像が表示される。光音響画像制御パラメタ表示領域138には、入力部133の入力で指定された光音響表示用画像の諸条件、たとえば断面二次元画像、投影二次元画像、レンダリング画像のいずれを選択したか、また断面二次元画像の断面の位置及び方向、投影二次元画像の投影面の方向、レンダリング画像の視点方向などが表示される。さらに光音響表示用画像に対する画像処理、たとえば使用した画像フィルタの種類と諸条件、コントラストや色彩補正の諸条件が表示される。他モダリティ画像表示領域139には光音響画像と比較できるようにX線マンモグラフィー、MRI画像などの画像とその撮像諸条件が表示される。圧力値表示領域140には圧力情報取得手段である圧迫圧力算出部114で算出された圧力値がmmHg単位で表示される。
また他モダリティ画像表示領域139には他モダリティの画像を表示せずに、被検体の固定状態を確認するためにCCDカメラ画像生成部111からの画像データを用いて、CCDカメラ110で撮像した被検体外形画像を表示してもよい。本構成では被検体外形画像を光音響画像と並列表示することで撮像時の被検体の固定状態が確認できるという利点を有する。
またこれら表示手段115に表示された表示画像や各種データは記憶部135に記録され、または主制御部132の通信インターフェースを介して外部へ転送される。これにより被検体の経過観察をおこなう際に光音響画像の比較が可能である。またCCDカメラ110で撮像した被検体外形画像を記録しておくことで、異なる時点での撮像にたいして被検体固定状態の確認が可能となる。
ここでは、画像信号生成手段を構成する光音響画像再構成部107、CCDカメラ画像生成部111、輪郭抽出部112、領域検出手段である接触面積算出部113、圧力情報取得手段である圧迫圧力算出部114並びに制御手段128を個別のブロックとして説明したが、実際にはPCを用いてソフトウエア上で上記の各ブロックの処理を行うことができる。
また圧迫圧力の計測は上記のように光音響画像の取得に先だって行っても、取得後に行ってもよく、さらには音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102の走査に応じてCCDカメラ110により被検体接触面の全域が撮像できるタイミングであれば光音響画像の取得中に行われてもよい。
本実施形態では、照明手段116は圧迫板である保持板101b周縁部に設けられ、保持板101b内部で照明光が伝播する構成としたが、被検体接触領域とくに境界部分がCCDカメラ110で明確に撮像され被検体接触領域が検出されればよく、特にこの構成にかぎらない。例えば保持板101bの厚みを薄く構成し、保持板101bのCCDカメラ110側から照明することで、光照射部103から被検体内部へのパルス光入射の損失を抑制することができる。
上記構成ではCCDカメラ110の撮像から被検体接触領域の面積を求めたが、異なる光学的撮像装置を用いて接触面積を算出することもできる。図2にタイムオブフライトカメラを用いた構成を示す。図中101〜115は上記と同じ構成要素であり、とくに光音響波画像の取得と表示に関しては上記と同様に行われるため説明を省略する。
また117はタイムオブフライトカメラ、118は三次元形状処理部、119は領域検出手段である接触面積算出部である。タイムオブフライトカメラ117は圧迫板である保持板101に挟まれた被検体表面の三次元形状を計測するものである。変調した照射光を照射する光源と受光センサと受光センサの出力を位相検知し、照射光が対象物で反射しセンサに届くまでの光の飛行時間(遅れ時間)と光の速度(3×108m/s)から,被写体までの距離を計測する処理手段を具備する。
タイムオブフライトカメラ117で算出された被検体表面の三次元形状データは三次元形状処理部118へ入力される。三次元形状処理部118ではあらかじめ計測されているタイムオブフライトカメラ117と保持板101の位置情報と被検体表面の三次元形状データをもとに被検体接触領域を抽出する。つまり、光学的三次元計測技術を用いて接触領域を光学的に検出する。即ち被検体表面と保持板101表面の交差曲面を被検体の接触領域と非接触領域の境界線データとして求め、領域検出手段である接触面積算出部119へ入力する。領域検出手段である接触面積算出部では境界線データをもとに保持板101上の被検体の接触領域面積を算出する。算出された被検体接面積は、前記図1の構成と同様に圧力情報取得手段である圧迫圧力算出部114で荷重センサ108により計測された圧迫力とともに圧迫圧力計算に使用される。
タイムオブフライトカメラ117を用いた本構成では保持板101間に挟まれた被検体表面の三次元形状と保持板101表面位置から保持板101上の被検体接触面積を算出するものである。このためタイムオブフライトカメラ117の配置は保持板101間を見込む位置に配置でき、保持板101上の音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102の位置に無関係に接触面積計測ができ、光音響画像の取得時の圧迫圧力をオンタイムに算出できるという利点を有する。さらに図1の構成にくらべ接触面積計測を保持板101を通して行わないために保持板101上の汚れなどによる接触面積検出誤差の影響が少ない構成となっている。本構成の場合にも三次元形状処理部118、領域検出手段である接触面積算出部119などはPC上のソフトウエアとして処理構成上に構築され、実際の回路ブロックとして構成する必要がないことは前記図1の構成と同様である。
またここではタイムオブフライトカメラ117を用いたが光学的に被検体表面の三次元計測が可能なレーザ走査三次元計測装置などを用いても同様の効果を得ることができる。
さらに本構成ではタイムオブフライトカメラ117と三次元形状処理部118を用いて得られた被検体である乳房の固定時の三次元形状を制御手段128内の記憶部135に記憶し、表示手段115に表示することができる。例えば図9に示した表示構成例において、入力部133からの表示入力設定に応じて他モダリティ画像表示領域139に三次元形状処理部118からのデータを用いて被検体固定時の三次元形状をレンダリング画像として光音響画像と同時に表示することができる。さらに光音響表示画像を断面二次元画像、投影二次元画像、レンダリング画像で表示する際に、その断面位置、投影面方向、レンダリング画像の視点方向などを他モダリティ画像表示領域139に表示した被検体の形状画像に重ねて表示する。本構成ではこのように被検体固定時の外形形状と光音響表示画像との位置関係が対応つけられるため、撮像部位と被検体全体の位置関係が明瞭になるという利点を有する。また被検体固定時の三次元形状データを記憶部135に記録したり、主制御部132の通信インターフェースを介して外部へ転送して保存することで、異なる時点での撮像にたいして被検体固定状態の比較、確認が可能となることは前記の場合と同様である。
さらに別の構成例として音響波検出手段である超音波トランスデューサアレイ105および光照射部102とともに走査する光学センサを用いて接触面積計測を行ってもよい。光学センサは光照射部102に隣接して保持板101を介して被検体を向いて配置され、光照射部102より被検体に向け照射された光パルス、または別途設けた光源から被検体に向け照射された光の被検体表面による反射光を検出する。光照射部102と同時に走査される光学センサによる反射光量の変化が急峻に起こる位置を保持板101に対する被検体の接触領域と非接触領域の境界線として検出し、前記同様にこの境界線位置より被検体接触面積を算出すればよい。光学センサは光照射部102の開口幅に応じて複数のアレイを構成し、アレイ上の各光学センサ位置と光照射部102の走査位置を利用して境界線を検出する構成をとることもできる。本構成では前記構成に比べ簡易な構成で被検体接触面積を算出できる。
以上のように本実施形態では光学的に撮像した被検体領域の面積を検出し、これと支柱109の保持板保持部に配置した荷重センサの荷重計測値から保持板にかかる圧力値を算出するため、レーサ照射部、光音響信号を受信する超音波トランスデューサアレイを保持板に接して配置できる。これにより被検体へのレーザ照射、被検体からの光音響波取得に障害のない形で圧力算出が可能となる。さらにレーサ照射部および超音波トランスデューサアレイを走査する場合にも、CCDカメラ、タイムオブフライトカメラなどの撮像手段の撮像画角を走査範囲外にすることが可能であるため光音響画像取得に障害とならない構成とすることができる。
(第二の実施形態)
図3を用いて第二の実施形態について説明する。図中101〜109と113〜115ならびに128は先の実施形態と同じ構成要素であるため、説明を省略または簡略する。また光音響波画像の取得と表示の詳細に関しても先の実施形態と同様に行われるため説明を省略する。但し光音響信号処理部106では受信した光音響波信号以外にも受信超音波信号にも増幅、デジタル化などの信号処理を行う。図3中120は透過波検出手段、121は超音波送信手段である。
超音波トランスデューサアレイ105の各位置で、光音響波信号の取得に先だって、超音波トランスデューサアレイ105より超音波を送受信して被検体の超音波トランスデューサアレイ105に対向する領域内で保持板101aに接触する領域の検出を行う。これについての詳細は後述するが、つまり、被検体と圧迫板である保持板との接触領域を音響的に検出する。具体的には、超音波トランスデューサアレイによる超音波の受信の有無により接触領域を検出する。次いで前記のように光照射部102よりパルス光を照射して光音響波信号を取得する。走査を行って光音響波画像を取得する場合は、その後不図示の走査手段により超音波トランスデューサアレイ105と光照射部102を移動し、次の位置で接触領域の検出と光音響波信号の取得を行うことを繰り返すことで、被検体の保持板101aに対する接触面積の検出と光音響波画像の取得が行われる。なお超音波送受信による接触部分の検出とパルス光照射による光音響波信号の順番はどちらを先に行ってもよい。
超音波送信手段121からの駆動信号により超音波トランスデューサアレイ105内の全てあるいは一部の素子より被検体へ向けて超音波を送信する。送信超音波は保持板101aを通過し、保持板101aに接触する領域では被検体内へ侵入し、被検体内で超音波エコーまた対向する保持板101bによる超音波反射波を発生する。発生した被検体内部の超音波エコー、保持板101bの超音波反射波は超音波トランスデューサアレイ105上の接触領域下の素子で受信される。一方被検体が保持板101aに接触しない箇所に位置する素子では送信超音波は被検体に侵入せず、保持板101a内で多重反射を生じた反射超音波を受信する。よって超音波送信に対する超音波トランスデューサアレイ105内の各素子の受信信号より超音波トランスデューサアレイ105の受信領域について保持板101aに接触する領域が検出できることになる。
図7に超音波トランスデューサアレイ105での超音波エコーの受信信号の概略図を挙げる。図7(a)に被検体に接した素子での受信超音波信号を、図7(b)に被検体が接していない素子での受信超音波信号を示す。132は保持板101aの超音波トランスデューサアレイ105と逆側の界面による超音波反射信号、133は被検体内での超音波エコー信号、134は保持板101aと超音波トランスデューサアレイ105の界面による多重反射信号である。
図7(a)に示す被検体と保持板とが接した領域に位置する素子では、送信超音波が保持板101aと被検体との界面で保持板101aと被検体との音響インピーダンスの差によって生じる反射信号132が受信される。そしてそれ以降は、被検体内部の組織による超音波エコー信号133が受信される。反射信号132は超音波送信後、送信した超音波が保持板101aを伝搬する時間で受信されるため、素子ごとに受信開始時間より決まった時間位置に現れる。超音波エコー信号133は反射信号132の後にほぼ被検体の厚みを伝搬する時間にわたって受信され続ける。
図7(b)に示す、被検体が保持板と接していない領域での素子では、保持板101aの超音波トランスデューサアレイ105の配置側と逆側の界面においては、一般に空気などが接しているため被検体が接する場合より大きな反射信号132が生じる。さらにこの界面で反射した超音波が保持板101aを逆走し保持板101aと超音波トランスデューサアレイ105との界面での多重反射による多重反射信号134が受信される。この多重反射信号134と超音波反射信号132との時間間隔は、保持板101aと保持板101a内での超音波の音速によって決まる。そしてこの多重反射信号134の到達タイミング以外のタイミングでは、信号が現れない。
以上より透過波検出手段120では、受信信号の特定位置に現れる132、保持板101aの超音波トランスデューサアレイ105の配置側と逆側の界面による反射信号133、134の信号強度に基づき、圧迫板である保持板と被検体との接触または非接触を判定できる。即ち被検体と空気の音響インピーダンスの差によって生じる反射強度の差異を用いて、受信信号の反射強度が一定値以下であるものを、保持板と被検体とが接触した領域に位置する素子と判定できる。
また反射信号132の受信後の一定時間において多重反射信号134の有無を判定し、多重反射信号134が現れない素子を保持板と被検体とが接触した領域に位置する素子と判定できる。
さらにまた一定時刻以上の特定時間領域にわたり信号振幅強度を算出することで超音波エコー信号133の有無を判定し、超音波エコー信号133が受信されたものを保持板と被検体とが接触した領域に位置する素子と判定できる。超音波エコー信号133の有無は、一定時間での信号振幅強度の平均を用いてもよいが、超音波エコー信号133が、反射信号132、多重反射信号134とは異なり連続的に受信される特性があるため、一定強度の信号が連続する時間を用いて判断したり、平均信号振幅強度に対して信号振幅強度の時間分散が一定値以下になる場合を超音波エコー信号133ありと判断するなどの統計処理を用いてもよい。
以上の判定のすべてまたはいずれかを組み合わせることもできる。
超音波トランスデューサアレイ105の各素子の超音波受信信号は、光音響信号処理部106で増幅、デジタル化などの信号処理をされ、透過波検出手段120へ入力される。透過波検出手段120ではデジタル化された超音波受信信号から各素子が被検体内の超音波エコーあるいは保持板101bによる超音波反射波を受信したかを判定する。ついで超音波エコーまたは超音波反射波を受信した素子の素子識別番号、あるいは超音波トランスデューサアレイ105上での位置情報を領域検出手段である接触面積算出部113へ入力する。
領域検出手段である接触面積算出部113では超音波エコーまたは超音波反射波を受信した素子の識別番号あるいは位置情報をもとに超音波トランスデューサアレイ105の受信領域内での被検体接触面積を算出する。例えば超音波トランスデューサアレイ105が等受信面積の素子からなる場合には超音波エコーまたは超音波反射波を受信した素子数に素子面積をかければよい。また素子面積が異なる場合には素子の識別番号あるいは位置情報をもとに対応する素子面積を考慮にいれて積算すればよい。超音波トランスデューサアレイ105を走査する場合には各超音波トランスデューサアレイ105位置での被検体接触面積を加算することで、走査全領域に対する被検体接触面積を求める。このようにして、接触領域を音響的に検出する。
算出された被検体接面積は、前記図1の構成と同様に圧迫圧力算出部114で荷重センサ108により計測された圧迫力とともに圧迫圧力計算に使用され、制御手段128の指示によって、音響波画像と圧力情報とを表示部115に一時に表示させる(同時に表示される)。
上記の説明では、光音響波信号の取得と被検体接触面積計測用の超音波の送受信を同一の超音波トランスデューサアレイ105で行う構成に関して説明を行ったが、走査を行って光音響波画像を取得する場合は、光音響波信号受信と超音波送受信を個別のトランスデューサアレイで行うこともできる。また光音響波信号の受信信号処理、超音波の送受信処理を別構成要素で行うことも可能である。
光音響信号は超音波の一種であるが一般に帯域が広いトランスデューサや受信手段が必要となり、一方超音波の送信と受信の双方を行うトランスデューサは高い受信感度と同時に送信時の高圧印加電圧に対する耐性を持つことが望まれる。
また光音響波信号取得と超音波送受信のクロストークをさけるため、各々必要となる光音響波、超音波の伝搬時間分の信号取得を独立のタイミングで行うことが好ましい。一方送受信超音波の使用帯域を光音響波と異なるものとし、クロストークをなくすことで光音響波信号取得と超音波送受信を同時に行って、光音響波画像と接触面積検出の全体に必要な時間を短縮することができる。
光音響波信号取得と超音波送受信を同時に行う場合には、光音響波受信と超音波送受信をそれぞれに応じた別構成の要素で行うことで、各々の信号処理帯域、トランスデューサ特性を個別に設定でき、好ましい。
また走査を行って光音響波画像を取得し、光音響波信号受信と超音波送受信を個別のトランスデューサアレイで行う場合には、各々のトランスデューサの位置をし、光音響波信号取得領域と接触面積検出領域を異なるものとすることでクロストークを空間的に分離することができる。特に光音響波受信用トランスデューサアレイおよび光照射部の走査と超音波受信用トランスデューサアレイの走査を同時且つ並列に独立して行うことも可能である。
以上の構成は光音響波画像と接触面積検出の全体に必要な時間を短縮できるので、被検体保持の全体時間を短縮し、被験者の負荷を抑制するのに好適な構成である。
本実施形態では超音波トランスデューサアレイ105あるいは別途用意したトランスデューサより超音波を送信し、被検体内で反射したエコーを受信することで、保持板101aと被検体との接触領域を検出した。しかし、接触面積を音響的に検出する方法としては光音響波受信信号を用いて接触領域の検出を行うこともできる。つまり、被検体と圧迫板である保持板との接触領域を音響的に検出するのに際し、超音波トランスデューサアレイによる光音響波の受信の有無により接触領域を検出する。この場合には光音響信号処理部106で超音波トランスデューサアレイ105上の各素子で受信した光音響波信号を判定して、上記超音波受信信号の場合と同様に超音波トランスデューサアレイ105上で接触する領域を検出する。超音波トランスデューサアレイ105を走査する場合には、超音波トランスデューサアレイ105の各位置での接触領域を重ね合わせることで保持板101a全領域に対する被検体接触面積を算出する。本構成では超音波送信手段を必要とせず、また光音響波画像の取得時に同時に被検体接触面積を算出できるという利点を有する。
以上のように本実施形態では超音波トランスデューサアレイの受信信号を用いて検出される超音波または光音響波の保持板透過の有無より被検体領域の面積を検出し、これと支柱109の保持板保持部に配置した荷重センサの荷重計測値から保持板にかかる圧力値を算出する。このため光音響画像取得のための走査と同時に被検体領域の面積が検出され、光音響画像取得の障害とならない構成となっている。
(第三の実施形態)
本実施形態では被検体接触領域の保持板における圧力分布を検出し、さらにこれを用いて被検体内部の圧力分布を推定して光音響画像と一時(同時)に表示するものである。その際光音響信号の取得に障害とならないように被検体接触領域の圧力分布を検出する構成をとる。
図4に本発明の第三の実施形態の構成を示す。図中の符号のうち、図1、図3に記載されたものはそれぞれ第一、第二の実施形態について説明を加えたものと同一の構成要素を示す。また光音響画像データ取得時の光音響信号受信から光音響画像再構成部107での三次元画像データ作成までの動作は第一の実施形態と同等のため、一部説明を省く。122は保持枠、123は加重分布算出部、124は投光側圧力分布算出部、125は超音波トランスデューサアレイ上圧力計測部、126は光音響波受信側圧力分布算出部、127は圧力情報取得手段である被検体圧力分布算出部、128は制御手段、129は荷重センサ素子を配列したアレイ型荷重センサである。
光音響画像データの取得は、第一の実施形態と同様に行われる。但し超音波トランスデューサアレイ105と光照射部103とは対向して位置し、不図示の走査手段により保持板101上を走査し、被検体全域の画像取得を行うものとする。
初めに被検体に接触する光音響波受信側保持板101aの接触領域内での圧力分布の計測に関して説明する。本実施形態では光音響画像データ取得と光音響波受信側保持板101a側の被検体接触領域の圧力分布計測を同時に行う構成をとる。
超音波トランスデューサアレイ105には、付随してアレイ型荷重センサレイ129が付随して配置されている。アレイ型荷重センサ129は超音波トランスデューサアレイ105の開口領域を覆う範囲の荷重分布を測定できる大きさで、好ましくは超音波トランスデューサアレイ105の各素子のアレイ配置に対応した点での荷重値を検出する。さらに超音波トランスデューサアレイ105とアレイ型荷重センサ129の相対位置は超音波トランスデューサアレイ105の走査方向によって設定される。
図6(a)、(b)に超音波トランスデューサアレイ105の素子構成とアレイ型荷重センサ129の素子構成と、各々の配置関係の具体例を示す。
図6(a)は超音波トランスデューサアレイ105を図y方向に走査する場合の構成例である。二次元配列の超音波トランスデューサアレイ105と同様にアレイ型荷重センサ129が二次元に配列され、超音波トランスデューサアレイ105上のトランスデューサ素子130と同じピッチ間隔でアレイ型荷重センサ129の荷重センサ素子131が配置されている。さらに超音波トランスデューサアレイ105の縦(図x方向)、横(図y方向)のトランスデューサ素子数とアレイ型荷重センサ129の荷重センサ素子数を同じにとり、超音波トランスデューサアレイ105とアレイ型荷重センサ129をy方向に並べて配置する。超音波トランスデューサアレイ105が、光音響画像データの取得に伴ってy方向の幅分走査されることで、超音波トランスデューサアレイ105上の各トランスデューサ素子130とアレイ型荷重センサ129上の各荷重センサ素子131の位置が重なり、走査前の各トランスデューサ素子130位置での荷重を各荷重センサ素子131で検出できる。
具体的には光照射部102からの照射に同期して超音波トランスデューサアレイ105により光音響波の受信を行う。光音響信号処理部106で増幅、デジタル化された各トランスデューサ素子130の受信信号をもとに透過波検出手段120で、各トランスデューサ素子130に対する被検体接触または非接触の判定を行う。同時にアレイ型荷重センサ129の各荷重センサ素子131で荷重測定を行う。計測された荷重値は超音波トランスデューサアレイ上圧力計測部125で走査に伴う時間だけ格納される。超音波トランスデューサアレイ上圧力計測部125では超音波トランスデューサアレイ105のy方向幅分を走査単位として、アレイ型荷重センサ129で計測した荷重値を格納・保持するとともに、一走査単位前に格納した荷重値と透過波検出手段120の判定をもとに、保持板と被検体との接触領域に位置するトランスデューサ素子130の圧力値を算出し、光音響波受信側圧力分布算出部126へ出力する。ここで保持板と被検体との接触領域に位置しているトランスデューサ素子130の圧力値は、アレイ型荷重センサ129の荷重センサ素子131で計測された荷重値を、対応する超音波トランスデューサ素子130の面積で割ることで求める。光音響波受信側圧力分布算出部126では、光音響画像データの取得にともなう超音波トランスデューサアレイ105走査の走査位置情報をもとに光音響波受信側保持板101aに接触した各トランスデューサ素子130位置での圧力値を接触領域内の圧力分布として算出する。
ここでは走査の方向に応じて、初めにアレイ型荷重センサ129からの荷重計測値を一走査単位分格納し、透過波検出手段120からの接触・非接触の判定を用いて接触素子の圧力値を算出したが、走査方向が逆の場合には透過波検出手段120からの接触・非接触の判定を一走査単位分格納し、これとアレイ型荷重センサ129からの荷重計測値を用いて算出することもできる。また超音波トランスデューサアレイ105をx方向へ走査する場合には、超音波トランスデューサアレイ105とアレイ型荷重センサ129をx方向へ並べて配列すればよい。
さらに走査単位を各トランスデューサ素子130の幅にとる場合には、図6(b)に示すように一次元配列のアレイ型荷重センサ129を用いることもできる。図6(b)ではx方向、y方向ともにトランスデューサ素子130の一素子分の幅でアレイ型荷重センサ129を配し、それぞれの方向に一走査単位移動するたびに一列分のトランスデューサ素子130の圧力計測を行っていく。特に光音響画像データの取得において光音響波信号が微弱な場合、トランスデューサ素子幅ずつ走査を行い、重複する領域の素子の光音響波信号を積算することでSNRを向上する場合には、このような構成をとることで光音響画像データ取得と同時に接触領域の圧力分布が計測できる。さらにアレイ型荷重センサ129の素子配列数を選択することで超音波トランスデューサアレイ105の走査方法に適合した圧力分布の計測が可能である。
また以上では説明の簡便のため超音波トランスデューサアレイ105上の各トランスデューサ素子130の配列とアレイ型荷重センサ129上の各荷重センサ素子131の配列の間隔を一致させたが、それぞれの間隔が異なる場合にも両者の幾何学的関係を用いてアレイ型荷重センサ129で計測した荷重値の各値を補間することで、超音波トランスデューサアレイ105上の各トランスデューサ素子130の位置での圧力値を得ることが可能である。さらに補間を用いる場合は、各トランスデューサ素子130や各荷重センサ素子131は均一にとる必要はなく、素子の大きさや配置に応じて補間により圧力分布に換算できればよい。この計測圧力値と透過波検出手段120からの接触・非接触判定を用いることで同様の圧力分布の計測が可能である。
以上のように荷重センサ素子131は超音波トランスデューサアレイ105と並置され、光音響画像取得時の超音波トランスデューサアレイ105走査と同期して、同時に圧力分布計測が行われ、光音響画像取得の障害とならない構成となっている。
次に被検体に接触する照射側の保持板101bの接触領域内での圧力分布の計測に関して説明する。
保持枠122は複数の荷重センサ108を介して保持板101bの周囲を保持し、支柱109に移動可能に固定される。荷重センサ108は保持板101bの周囲部に、光照射部102の走査領域およびCCDカメラ110の撮像領域の外部となるように配置される。保持枠122は手動またはモータ駆動で支柱109上を移動し、保持板101a、101b間の間隔を調整して被検体を保持する。図5に保持板101bを保持する荷重センサ108、保持枠122、支柱109の配置の例を示す。保持枠122は被検体である乳房の撮像領域を確保して保持するために体側が空いたコの字とすることが望ましい。また荷重センサ108は保持枠122に沿って好ましくは等間隔に複数、例えばN個配置され保持板101b上での荷重分布を計測する。
CCDカメラ110で撮像された被検体画像は第一の実施形態と同様にCCDカメラ画像生成部111、輪郭抽出部112で処理され、保持板101b上での被検体接触領域が検出される。
加重分布算出部123では保持枠122に沿って配置された複数の荷重センサ108からの出力をもとに保持板101b上での荷重分布を以下のように算出する。
輪郭抽出部112の出力から保持板101b上での被検体接触領域が検出される。被検体接触領域内にM点のサンプリング点を設定する。サンプリング点数Mは保持枠122に沿って配置された荷重センサ108の個数N−1以下であることが好ましい。M個のサンプリング点とN個の荷重センサ108の位置関係と、N個の荷重センサ108よりの出力よってM個のサンプリング点の荷重を算出する。
例えば、保持板101bの剛性が高い場合には、各荷重センサ108を支点とするモーメントの式が荷重センサ108の個数N得られる。さらにM個のサンプリング点の荷重とN個の荷重センサ108の荷重釣り合いの式が得られ、N+1個の条件式に対してM個のサンプリング点での荷重値を未知数として求めればよい。M=N+1の時は方程式を解くことで各サンプリング点での被検体の接触荷重値が得られ、それ以外のときは最小二乗法などの回帰法を用いたフィッティングにより求めればよい。最尤法などの統計手法を用いて求めてもよい。
M=N+1の場合に具体的には、M個のサンプリング点での荷重値Pi(i=1,2,・・・,M)を未知数とした以下のような連立一次方程式を解けばよい。
ここで、Ri,jはi番目(i=1,・・・,M)のサンプリング点から、j番目(j=1,・・・,N)の荷重センサ108までの距離、R’j,kはj番目(j=1,・・・,N)の荷重センサ108から、k番目(k=1,・・・,N)の荷重センサ108までの距離をあらわす。またQjはj番目(j=1,・・・,N)の荷重センサ108の計測した荷重値、
はjが1からNまでのうちj=kとなるものを除いた和をとることを表す。右辺はN+1=M行のベクトルであり、左辺は(N+1)行M列、即ちM行M列の正方行列にM行のベクトルをかけたものであるので連立方程式として解くことができる。なおここでサンプリング点での荷重値P
iと荷重センサ108の計測した荷重値Q
jは、保持板101bの表面法線に沿ってそれぞれ逆方向(例えば図4で各々上下方向)に働く荷重方向を正にとることとする。また保持板101bの重量を補正するために、荷重センサ108の計測した荷重値Q
jは、保持板101で被検体を保持する以前の値を基準に、保持圧迫による増加分をとることが好ましい。
M≠Nの場合には左辺の行列が正方行列にならないため方程式を解くことはできないが、上式をQjについてのフィッティング式として、最小二乗法やその他の統計手法を用いて最尤となるQjの値を求めればよい。なおこの場合にはM≦Nにとるのが好ましい。
サンプリング点数Mを荷重センサ108の数Nより大きくとると測定精度が低下するため、以上のように求められたM点のサンプリング点での荷重値をもとに保持板101b上での被検体接触領域の各点での荷重分布値を線型補間、多項式補間、ウェーブレット補間などの補間法を用いて算出するのが好ましい。
投光側圧力分布算出部124では、この荷重分布値をもとに保持板101b上被検体接触領域の圧力分布を算出する。本実施形態ではCCDカメラ画像生成部111で作成される画像データの画素位置での荷重分布値を補間により算出し、これを各画素に対応する保持板101b上での面積要素の面積で割ることで、その点の保持板101bの垂直方向の圧力値を算出する。これを被検体接触領域内の画素について行うことで保持板101b上被検体接触領域内での圧力分布を算出する。必要に応じて複数画素を単位としてその中心位置での荷重値を補間により算出し、その複数画素の面積で割った平均圧力値を用いて圧力分布を算出してもよい。
保持板101bの剛性が然程高くなくゆがみが生じる場合には、上記の剛体モーメントの関係は成立しないが、ゆがみの程度が少ないときには次のように荷重分布が算出できる。
保持板101b上全体にサンプリング点をとり、そのうちある特定点へ荷重した場合の各荷重センサ108の計測値は、ゆがみの程度が少ないときには近似的に線型関係となる。即ち特定サンプル点に与えた荷重値と、それによって荷重センサ108のうちのある特定荷重センサより得られる計測値には線型関係があり、また異なるサンプル点に与えた荷重値がある特定荷重センサの計測値に与える影響も加算的である。このことを用いて次のような荷重分布算出を行う。
保持板101b上全体に広がった各サンプリング点に独立に単位荷重を与えたときの各荷重センサ108の計測値をテーブルとして格納しておく。このテーブルは実測により作成してもよく、また保持板101bの弾性特性値を用いて有限要素法などで算出しておいてもよい。このテーブルの各要素の値は特定サンプル点に与えた荷重が、ある荷重センサの計測値に与える線型関係の比例定数となっている。
このテーブルのうち保持板101b上での被検体接触領域内の含まれるサンプリング点に関するものを用いて、上記の線型関係を用いて各荷重センサ108の計測値を与える式を立てると以下のようになる。但し、被検体接触領域内の含まれるサンプリング点数をM’、荷重センサ108の数をNとする。
ここでPi(i=1,2,・・・,M’)は被検体接触領域内の含まれるサンプリング点での荷重値、Qjはj番目(j=1,・・・,N)の荷重センサ108の計測した荷重値、Ci,jはi番目のサンプリング点に与えた荷重値とj番目の荷重センサ108での計測値の 比例定数で、上記テーブルの要素である。
M’≦Nのときは前記剛体モーメントの関係を用いる場合と同様に、連立方程式またはフィッティングを用いて荷重センサ108で計測された荷重値Qjから被検体接触領域内に含まれるサンプリング点での荷重値Piを算出し、前記と同様に補間を行うことで被検体接触領域内の圧力分布を求める。
被検体接触領域内に含まれるサンプリング点が荷重センサ108の個数Nより多いときには、荷重分布を求めるサンプリング点を選択して求めるサンプリング点をN以下として荷重分布を計算し、補間を行うことで投光側圧力分布算出部124で被検体接触領域内の圧力分布を求める。
以上で荷重センサ108の計測量を荷重即ち、保持板101b表面法線方向の垂直応力として説明を加えたが、荷重センサ108での計測量を保持板断面法線方向応力、各面でのせん断応力、各種歪などにとることもできる。これらの場合にも各センサの計測値とサンプリング点での荷重の間には線型関係があり、上記と同様の行列を用いた線型関係式が成立するため、同様の計算により荷重分布が算出できる。とくに各種歪、応力のうち独立なものを複数用いることで計測量の個数Nを増やすことができる。これにより上記の荷重分布を算出するサンプリング点の数M’を大きくとることができ、補間により算出する圧力分布の算出精度を向上することができる。
以上のような構成をとることで光照射部102の走査領域およびCCDカメラ110の撮像領域より外側に配置された荷重センサ108より保持板101bの被検体接触領域内部の圧力分布が算出される。即ち光音響画像取得のための光照射部102の走査を阻害しない領域に設置した荷重センサ108の計測値を用いて圧力分布を計測し、光音響画像取得の障害とならない圧力分布計測を可能にしている。
以上のように算出された保持板101aと101b上の被検体接触面内での圧力分布は圧力情報取得手段である被検体圧力分布算出部127へ入力される。そして、圧迫板である保持板が被検体に加える圧力の分布情報を取得する。
一方、光音響画像再構成部107で構成された三次元光音響画像データは、第一の実施形態で説明したのと同様に制御手段128によって選択された表示画像形式に従って光音響表示画像データに変換される。ここで表示画像形式はたとえば、指定方向に対するMIP(最大強度投影)画像、指定断面に対する断層画像、指定閾値についてのサーフェースレンダリング、ボリュームレンダリングである。光音響画像再構成部107で算出された光音響波発生強度、レーザ光吸収強度、ヘモグロビン濃度、血中酸素濃度のいずれか、または各々の分布をもとに指定された表示画像形式に従って投影面、断面、レンダリング座標上の座標に輝度、あるいは色彩値のデータを作成する。
圧力情報取得手段である被検体圧力分布算出部127では、投光側圧力分布算出部124、光音響波受信側圧力分布算出部126で得られた保持板101aと101b上での被検体接触面内での圧力分布をもとに制御手段128によって選択された表示画像形式に沿って被検体内部の点での圧力分布画像データを算出する。表示画像形式は光音響表示画像データに使用する表示画像形式と同一でも異なる形式でもよい。特に光音響表示画像データに使用する表示画像形式と同一形式をとることで、圧力分布画像と光音響画像の比較を容易にとることができる。例えば光音響表示画像として特定断面を指定したときには、これと同一断面上の断面圧力分布データを圧力情報取得手段である被検体圧力分布算出部127で算出する。算出には保持板101aと101b上での被検体接触面内での圧力分布をもとに指定断面上の点で線型補間、多項式補間、ウェーブレット補間などの補間法を用いて行う。
また光音響画像をMIP画像で行う場合には、これと同一方向に対する圧力分布のMPI画像を補間などによって算出することで、光音響画像と比較しやすい圧力MPI画像データを作成する。レンダリング光音響画像を表示する場合は、圧力サーフェスレンダリングデータ、圧力ボリュームレンダリングデータを作成する。但し分布画像の表示画像形式は必ずしも光音響画像と一致させる必要はない。
算出された断面圧力分布データは制御手段128へ送られ光音響画像と同様に各点での圧力値を表示用の輝度または色彩値のデータへ変換されて表示手段115で光音響表示画像と同時に表示される。光音響画像と圧力分布画像を同一表示画像形式にとって同時に、特に重ねて表示させることで略同一位置での圧力と光音響情報を比較できるという利点を有するが、比較のため異なる表示画像形式で表示したり、光音響画像と圧力分布画像を同時(一時)に別途表示する、異なる時刻で表示するなどが可能であることは言うまでもない。制御手段128は、図8に示すように主制御部132、入力部133、画像処理部134、記憶部135が設けられている。図9に示すように表示手段115に表示される136は被験者情報表示領域、137は光音響画像表示領域、138は光音響画像制御パラメタ表示領域、139は他モダリティ画像表示領域、140は圧力値表示領域である。
これらの断面圧力分布データは第一の実施形態と同様に制御手段128内の記憶部135に記憶され、入力部133からの表示制御入力によって指定された表示画像形式に従って画像処理部134で処理をされ、表示手段115に表示される。たとえば圧力分布は図9を用いて例示した表示構成では、光音響画像表示領域に表示する光音響表示画像に重ねた等圧力線表示や、カラー領域表示を行うことができる。また他モダリティ画像表示領域139に光音響表示画像と並列してカラー領域表示などで圧力分布表示画像を表示してもよい。このとき並列して表示する光音響表示画像と圧力分布表示画像の断面の位置や視点方向の整合をとることが好ましいが、これは第一の実施形態で光音響表示画像と他モダリティ表示画像の整合をとるのと同様に行える。圧力値表示領域140には圧力平均値を表示してもよい。
以上では光音響波受信側保持板101aと投光側保持板101bで、それぞれの保持板上の被検体接触領域の(二次元)圧力分布の算出をそれぞれ、保持枠122に配された複数荷重センサからの算出、超音波トランスデューサアレイ105と同時に走査するアレイ型荷重センサを用いた算出で行った。このため本構成では投光側保持板101bに対して被検体接触領域を光学的に取得し、光音響波受信側保持板101aに対して音響的に被検体接触領域を検出するため、光音響画像取得動作と親和性の高い装置構成とすることができる。
しかしながら光音響波受信側保持板101aと投光側保持板101bともに保持枠122に配された複数荷重センサからの算出を用いて行うこともできる。
さらに投光側保持板101b上の検体接触領域の(二次元)圧力分布の算出を、送受信可能な超音波プローブとアレイ型荷重センサを組あわせて走査し、エコー超音波受信、透過波検出、超音波トランスデューサ上圧力計測を行って求めることもできる。
さらに送受信可能な超音波プローブとアレイ型荷重センサを走査して取得した(二次元)圧力分布と、CCDカメラ110を用いて取得した検体接触領域を比較して、検体接触領域の(二次元)圧力分布を得ることもできる。
さらに別の構成としてはCCDカメラ110を偏光検出可能とし、投光側保持板101bの光弾性画像を撮像することで投光側保持板101b上の相対応力分布を求め、これと保持板の圧迫力を計測する荷重センサより投光側保持板101b上での被検体接触領域の(二次元)圧力分布を算出してもよい。
本実施形態は光音響波受信側保持板101a、投光側保持板101b上での被検体接触領域の(二次元)圧力分布を別途算出するため、被検体の保持圧迫時に各々の保持板での被検体接触領域の面積が異なる場合にも被検体内圧力が計測できる。特に保持板面を重力と直交する水平方向に配置する場合に被検体自重力の影響で上下の保持板の被検体接触領域面積が異なる場合や、保持時の圧迫の不均一で被検体接触領域面積に差が生じる場合にも有効な構成である。特に保持板の被検体接触領域面積が異なるために保持板上での圧力に差が生じる場合にも、表示する光音響画像断面などの光音響信号の採取位置における圧力値を分布の形で同時に表示することができる。このため光音響画像を用いた血液分布、ヘモグロビン濃度分布、血液酸素濃度分布などの画像診断に、被検体内部の圧力分布情報を有効に利用することが可能となる。
尚、上記いずれの実施形態も、圧力情報に替えて、または加えて、血圧情報を表示しても良い。具体的には、既存の血圧情報取得手段(血圧計)をもちいて、被検者の血圧を測定し、音響波画像と共に表示すればよい。その際、圧迫板である保持板が被検体を圧迫している状態で被検者の血圧情報を取得し、音響波画像と血圧情報とを表示手段に表示させても、同様の効果を得ることが出来る。尚、圧迫板である保持板が被検体を圧迫している状態での被検者の血圧情報とは、圧迫最中での血圧に限らず、圧迫最中の血圧情報と圧迫前後での血圧情報との関係性が把握できていれば、音響波画像と圧迫前後での血圧情報とを表示手段に表示することで、音響画像の信頼性を判断する十分有益な情報となる。そして圧力情報と同様に、音響波画像と血圧情報とを表示手段に一時に表示させるのが好ましい。