JP6381196B2 - 樹脂成形体用プライマー - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1記載の変性ポリオレフィン樹脂を水性分散化してなるプライマーであっても、形成された塗膜は、基材との密着性に劣ることがあり、また塗膜上に積層された塗料との密着性に劣ることがあった。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)ポリオレフィン樹脂と水性媒体を含有し、水溶性高分子の含有量がポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満である水性分散体からなるプライマーであって、
ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを含有し、
オレフィン成分がプロピレンを60〜95質量%含有し、エチレンを含有せず、
不飽和カルボン酸成分の含有量が、オレフィン成分の0.5〜15質量%であり、
ポリオレフィン樹脂の水性分散体中での重量平均粒子径が0.15μm以下であることを特徴とする樹脂成形体用プライマー。
(2)オレフィン成分がブテンを含有することを特徴とする(1)記載の樹脂成形体用プライマー。
(3)水性分散体における不揮発性水性化助剤の含有量がポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満であることを特徴とする(1)または(2)記載の樹脂成形体用プライマー。
(4)水性分散体がさらに架橋剤を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂成形体用プライマー。
(5)ポリオレフィン樹脂がγ線架橋されていることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂成形体用プライマー。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂成形体用プライマーから水性媒体を除去してなることを特徴とする塗膜。
(7)上記(6)記載の塗膜上に塗料が積層されてなることを特徴とする積層体。
本発明の樹脂成形体用プライマーは、ポリオレフィン樹脂と水性媒体を含有する水性分散体からなり、本発明におけるポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを含有するものである。
本発明において、ポリプロピレンなどの樹脂成形体に対するプライマーの密着性を向上させるために、オレフィン成分はプロピレンを含有することが必要である。オレフィン成分におけるプロピレンの含有量は60〜95質量%であることが必要であり、60〜90質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。オレフィン成分におけるプロピレンの含有量が60質量%未満であると、得られる塗膜は、ポリプロピレンなどの樹脂成形体に対する密着性が低下する傾向にあり、一方、オレフィン成分におけるプロピレンの含有量が95質量%を超えると、ポリオレフィン樹脂は、水性分散化することが困難になる傾向があり、また水性分散体中での重量平均粒子径が大きくなる傾向がある。
不飽和カルボン酸成分をポリオレフィン樹脂へ導入する方法は特に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤存在下、不飽和カルボン酸成分を含有しないポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸とをポリオレフィン樹脂の融点以上に加熱溶融して反応させる方法や、不飽和カルボン酸成分を含有しないポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸を有機溶剤に溶解させた後、ラジカル発生剤の存在下で加熱、攪拌して反応させる方法等により、不飽和カルボン酸成分を含有しないポリオレフィン樹脂に不飽和カルボン酸をグラフト共重合する方法が挙げられる。操作が簡便である点から前者の方法が好ましい。グラフト共重合に使用するラジカル発生剤としては、例えば、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ジラウリルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、エチルエチルケトンパーオキシド、ジ−tert−ブチルジパーフタレート等の有機過酸化物類や、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類が挙げられる。これらは反応温度によって適宜選択して使用すればよい。
なお、ポリオレフィン樹脂に導入された酸無水物成分は、乾燥状態では酸無水物構造となりやすく、後述する塩基性化合物を含有する水性媒体中では、その一部または全部が開環してカルボン酸またはその塩の構造となる傾向がある。
上記「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、または、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。
また「不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、このような助剤を製造時(樹脂の水性化時)に用いず、得られる分散体が結果的にこの助剤を含有しないことを意味する。したがって、このような水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満程度含まれていても差し支えない。
乳化剤としては、カチオン性乳化剤、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、あるいは両性乳化剤が挙げられ、一般に乳化重合に用いられるもののほか、界面活性剤類も含まれる。例えば、アニオン性乳化剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホン酸塩、高級カルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルサルフェート塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩、ビニルスルホサクシネート等が挙げられ、ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体などのポリオキシエチレン構造を有する化合物やポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのソルビタン誘導体等が挙げられ、両性乳化剤としては、ラウリルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
本発明において水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂と水性媒体とを、密閉可能な容器中で加熱、攪拌する方法を採用することができる。この方法において、水性媒体は、有機溶剤や塩基性化合物を含有することが好ましい。
水性媒体における有機溶剤の含有量は、50質量%以下であることが好ましく、1〜45質量%であることがより好ましく、2〜40質量%であることがさらに好ましく、3〜35質量%であることが特に好ましい。有機溶剤の含有量が50質量%を超えると、実質的に水性媒体とはみなせなくなり、安全衛生、環境保全の観点から好ましくなく、使用する有機溶剤によっては、水性分散体の安定性が低下してしまう場合がある。
有機溶剤は、塗膜からの除去が容易であることから、沸点が150℃以下であることが好ましい。沸点が150℃を超える有機溶剤は、塗膜から乾燥によって飛散させることが困難であり、特に低温乾燥して得られた塗膜においては、耐水性や基材との密着性等が低下する場合がある。
上記の有機溶剤の中でも、ポリオレフィン樹脂の水性化促進効果が高いことから、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
ポリオレフィン樹脂の水性分散化の際に、水性媒体に塩基性化合物を添加することにより、ポリオレフィン樹脂の分散を安定にすることができる。
塩基性化合物の添加量は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基に対して0.5〜10倍当量であることが好ましく、0.8〜5倍当量であることがより好ましく、0.9〜3.0倍当量であることがさらに好ましい。塩基性化合物の添加量が0.5倍当量未満では、塩基性化合物の添加効果が認められず、添加量が10倍当量を超えると、塗膜形成時の乾燥時間が長くなったり、水性分散体の安定性が低下する場合がある。
塩基性化合物としては特に限定されず、具体例としては、アンモニア、トリエチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、イソプロピルアミン、アミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、エチルアミン、ジエチルアミン、イソブチルアミン、ジプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、n−ブチルアミン、2−メトキシエチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、2,2−ジメトキシエチルアミン、モノエタノールアミン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピロール、ピリジン等を挙げることができる。
次に、さらに系内に、塩基性化合物、有機溶剤、水から選ばれる少なくとも1種を追加し、密閉容器中で再度、80〜240℃の温度で加熱、攪拌をおこなう。このような溶媒等を追加して、加熱、攪拌をおこなうこと(以下、追加分散処理ともいう)により、ポリオレフィン樹脂は微細なものとなり、その重量平均粒子径を0.15μm以下にすることができる。塩基性化合物、有機溶剤、水を追加する方法は特に限定されないが、ギヤポンプを用いて加圧下で添加する方法や、いったん、系内温度を下げた後、開封して追加する方法などが挙げられる。追加する塩基性化合物、有機溶剤、水の量は、所望する固形分濃度や粒子径によって適宜決めることができるが、添加して得られる水性分散体における固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、2〜45質量%となる量がより好ましく、3〜40質量%となる量がさらに好ましい。
上記工程において、槽内の温度が80℃未満であると、ポリオレフィン樹脂の水性化の進行が困難になることがあり、槽内の温度が240℃を超えると、ポリオレフィン樹脂の分子量が低下することがある。
ストリッピングの方法としては、常圧または減圧下で水性分散体を攪拌しながら加熱し、有機溶剤を留去する方法を挙げることができる。また、水性媒体が留去されることにより、固形分濃度が高くなるので、例えば、粘度が上昇し作業性が低下するような場合には、予め水性分散体に水を添加しておいてもよい。
水性分散体における架橋剤の含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、0.01〜80質量部であることが好ましく、0.1〜50質量部であることがより好ましく、0.5〜30質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が0.01質量部未満であると、塗膜性能を向上する効果が小さく、80質量部を超えると、加工性等の性能が低下することがある。
水性分散体に添加する他の重合体の水性分散体としては、特に限定されない。例えば、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、変性ナイロン樹脂、ウレタン樹脂、ロジンやテルペンなどの粘着付与樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の水性分散体を挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用してもよい。
無機粒子としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化すず等の金属酸化物、炭酸カルシウム、シリカ等の無機粒子や、バーミキュライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ハイドロタルサイト、合成雲母等の層状無機化合物が挙げられる。酸化亜鉛を添加することにより紫外線遮蔽性能が得られ、酸化すずを添加することにより帯電防止性能が得られる。これらの無機粒子は、2種以上を混合して使用してもよい。
無機粒子の平均粒子径は、水性分散体の安定性の面から、0.005〜10μmであることが好ましく、0.005〜5μmであることがより好ましい。
顔料、染料としては、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック等の一般的に市販されているものが挙げられる。
上記構成の水性分散体は、塗膜形成能に優れているので、本発明のプライマーは、公知の成膜方法により、各種樹脂成形体の表面に均一に塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一な塗膜を各種樹脂成形体表面に接着させて形成することができる。
乾燥または乾燥と焼き付けのための加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや赤外線ヒーター等を使用すればよい。
また、加熱温度や加熱時間は、被塗布物である樹脂成形体の特性や、架橋剤を含有する場合はその種類、配合量等により適宜選択される。経済性を考慮すると、加熱温度は、30〜250℃であることが好ましく、60〜230℃であることがより好ましく、80〜210℃であることがさらに好ましい。加熱時間は、1秒〜20分であることが好ましく、5秒〜15分であることがより好ましく、5秒〜10分であることがさらに好ましい。なお、架橋剤を添加した場合は、ポリオレフィン樹脂中のカルボキシル基と架橋剤との反応を十分進行させるために、加熱温度および時間は架橋剤の種類によって適宜選定することが望ましい。
なお、各種の特性は、以下の方法によって測定または評価した。
(1)オレフィン成分の構成
無水マレイン酸を反応させる前のポリオレフィン樹脂について、オルトジクロロベンゼン(d4)中、120℃にて1H−NMR、13C−NMR分析(バリアン社製、300MHz)を行い、オレフィン成分の構成を求めた。13C−NMR分析では定量性を考慮したゲート付きデカップリング法を用いて測定した。
オレフィン成分に対する不飽和カルボン酸成分の含有量は、下記に示す方法(A)または(B)を用いて求めた。
(A):ポリオレフィン樹脂の酸価をJIS K5407に準じて測定し、その値から不飽和カルボン酸の含有量(グラフト率)を次式から求めた。
含有量(質量%)=(グラフトした不飽和カルボン酸の質量)/(原料ポリオレフィン樹脂の質量)×100
(B):赤外吸収スペクトル分析(Perkin Elmer社製フーリエ変換赤外分光光度計 System−2000、分解能4cm−1)を行い、不飽和カルボン酸成分の含有量を求めた。
ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、GPC分析(東ソー社製HLC−8020、カラムはTSK−GEL)を用いて、試料をテトラヒドロフランに溶解して、40℃で測定し、ポリスチレン標準試料で作成した検量線から求めた。試料がテトラヒドロフランに溶解し難い場合は、オルトジクロロベンゼンに溶解した。
日機装社製、マイクロトラック粒度分布計UPA150(MODEL No.9340)を用い、水性分散体中のポリオレフィン樹脂の数平均粒子径(mn)および重量平均粒子径(mw)を求めた。なお、樹脂の屈折率は1.5とした。
得られたプライマーをポリプロピレン板(日本テストパネル社製)に、乾燥後の塗布量が約1g/m2になるようにメイヤーバーで塗布し、60℃で30秒間乾燥させて、ポリプロピレン板上に塗膜を形成した。ポリプロピレン板上に形成された塗膜にセロハンテープ(ニチバン社製CT−15M)を貼り、勢いよくセロハンテープを剥がして、テープ剥離試験にて、塗膜とポリプロピレン板との密着性を評価した。
○:塗膜の剥離なし
△:塗膜の一部が剥離
×:塗膜の全面が剥離
上記(5)に記載された方法によりポリプロピレン板上に塗膜を形成し、40℃の温水に1日、浸漬した。温水から取り出し、塗膜表面の水分を取り除いた後、上記(5)のテープ剥離試験方法により、塗膜とポリプロピレン板との耐水密着性を評価した。
○:塗膜の剥離なし
△:塗膜の一部が剥離
×:塗膜の全面が剥離
上記(5)に記載された方法によりポリプロピレン板上に塗膜を形成し、疑似ガソリン(トルエン/イソオクタン=1/1)に1日浸漬した。疑似ガソリンから取り出し、塗膜における、膨潤・膨れの有無を確認した。
◎:塗膜に膨潤・膨れなし
○:塗膜面積の20%未満に膨れあり
△:塗膜面積の20%以上、50%未満に膨れあり
×:塗膜面積の50%以上に膨潤あり
上記(5)に記載された方法によりポリプロピレン板上に塗膜を形成し、次いで、塗膜上に、乾燥後の塗布量が約1g/m2になるように、自動車用塗料(ロックペイント社製プロタッチ077−0204、塗料色:ホワイト)をメイヤーバーにて塗布し、室温で1時間放置後に、80℃で3時間乾燥を行った。得られた自動車塗料層に、セロハンテープを貼った以外は、上記(5)のテープ剥離試験方法と同様にして、自動車塗料密着性を評価した。
○:自動車塗料層の剥離なし
△:自動車塗料層の一部が剥離
×:自動車塗料層の全面が剥離
(1)ポリオレフィン樹脂(P−1)
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/ブテン=80/20(質量%))280gを4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸25.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥してポリオレフィン樹脂(P−1)を得た。
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/ブテン=65/35(質量%))を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂(P−2)を得た。
(3)ポリオレフィン樹脂(P−3)
プロピレン−エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=92/8(質量%))を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂(P−3)を得た。
(4)ポリオレフィン樹脂(P−4)
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/ブテン=97/3(質量%))を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂(P−4)を得た。
(5)ポリオレフィン樹脂(P−5)
プロピレン−ブテン共重合体(プロピレン/ブテン=50/50(質量%))を用いた以外は実施例1と同様の方法でポリオレフィン樹脂(P−5)を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1L容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、60.0gのポリオレフィン樹脂(P−1)、45.0gのエチレングリコール−n−ブチルエーテル、8.0gのN,N−ジメチルエタノールアミンおよび137.0gの蒸留水をガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌したところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を160℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて内温が80℃になるまで冷却して、水性分散体(A)を得た。
ガラス容器を開封して、水性分散体(A)に、45.0gのテトラヒドロフラン、5.0gのN,N−ジメチルエタノールアミンおよび30.0gの蒸留水を添加した後、密閉し、撹拌翼の回転速度を300rpmとして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌して、追加分散処理をおこなった。
その後、空冷にて回転速度300rpmのまま攪拌しつつ、室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体(B)を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。得られた水性分散体の固形分濃度は、20質量%であった。得られた水性分散体の特性、および水性分散体からなるプライマーの塗膜性能を表2に示した。
ポリオレフィン樹脂として、実施例2ではポリオレフィン樹脂(P−2)を、また参考例2では(P−3)を、比較例2では(P−4)を、比較例3では(P−5)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、それぞれ水性分散体を得た。得られた水性分散体の特性、および水性分散体からなるプライマーの塗膜性能を表2に示した。
実施例1で得られた水性分散体に、架橋剤としてオキサゾリン(日本触媒社製、エポクロスWS−700、固形分25質量%)を、水性分散体の固形分100質量部に対して、実施例4では固形分1質量部添加し、また実施例5では固形分80質量部添加して、それぞれ乳白色の均一な水性分散体を得た。得られた水性分散体の特性、および水性分散体からなるプライマーの塗膜性能を表2に示した。
実施例1で得られた水性分散体に、γ線を実施例6では5kGy、実施例7では100kGy照射(コーガアイソトープ社製照射装置)し、それぞれ乳白色の均一な樹脂水性分散体を得た。得られた水性分散体の特性、および水性分散体からなるプライマーの塗膜性能を表2に示した。
実施例1に記載された方法で調製した水性分散体(A)について、追加分散処理をおこなわず、室温(約25℃)まで冷却した後、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)し、微白濁の水性分散体を得た。この際、フィルター上に樹脂はほとんど残っていなかった。次いで、得られた水性分散体を水で希釈し、固形分濃度を20質量%に調整した。得られた水性分散体の特性、および水性分散体からなるプライマーの塗膜性能を表2に示した。
実施例1において、不揮発性の水性化助剤であるノイゲンEA−190D(第一工業製薬社製、ノニオン性界面活性剤)を固形分全質量に対して3質量%となるように添加した以外は実施例1に準じた方法で樹脂の水性化を行って水性分散体を得た。得られた水性分散体の特性、および水性分散体からなるプライマーの塗膜性能を表2に示した。
比較例1、3では、水性分散体におけるポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径が本発明で規定する範囲を超えるものであったため、低温造膜性に劣り、得られた塗膜は、樹脂成形体に対する密着性や耐水密着性、耐ガソリン性が著しく低下した。
比較例2では、ポリオレフィン樹脂の重量平均粒子径が本発明で規定する範囲を超えるものであったため、低温造膜性に劣り、得られた塗膜は、樹脂成形体に対する密着性が劣り、またポリオレフィン樹脂のオレフィン成分におけるプロピレンの含有量が本発明で規定する範囲を超えるものであったため、得られた塗膜は、自動車塗料に対する密着性が著しく低下した。
参考例1では、水性分散体が、不揮発性水性化助剤乳化剤を含有するため、得られた塗膜は、樹脂成形体に対する耐水性や自動車塗料に対する密着性が著しく低下した。
Claims (7)
- ポリオレフィン樹脂と水性媒体を含有し、水溶性高分子の含有量がポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満である水性分散体からなるプライマーであって、
ポリオレフィン樹脂がオレフィン成分と不飽和カルボン酸成分とを含有し、
オレフィン成分がプロピレンを60〜95質量%含有し、エチレンを含有せず、
不飽和カルボン酸成分の含有量が、オレフィン成分の0.5〜15質量%であり、
ポリオレフィン樹脂の水性分散体中での重量平均粒子径が0.15μm以下であることを特徴とする樹脂成形体用プライマー。 - オレフィン成分がブテンを含有することを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体用プライマー。
- 水性分散体における不揮発性水性化助剤の含有量がポリオレフィン樹脂成分に対して0.5質量%未満であることを特徴とする請求項1または2記載の樹脂成形体用プライマー。
- 水性分散体がさらに架橋剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂成形体用プライマー。
- ポリオレフィン樹脂がγ線架橋されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂成形体用プライマー。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂成形体用プライマーから水性媒体を除去してなることを特徴とする塗膜。
- 請求項6記載の塗膜上に塗料が積層されてなることを特徴とする積層体。
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