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JP6376001B2 - 誘電体組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、誘電体組成物に関するものであり、特に車載用のような高温領域で使用される電子部品に関するものである。
例えば、積層セラミックコンデンサはその信頼性の高さやコストの安さから、多くの電子機器に用いられている。その中で、125℃や150℃などの高温での動作を保証しているものがあり、主に車載用で使用されている。近年、車載用で用いられる電子機器に対し、さらなる高温保証が要求される傾向がある。そのため、200℃以上という高温領域でも使用可能な積層セラミックコンデンサが必要とされる。
このような高温で動作保証する誘電体組成物には、静電容量の温度に対する変化(容量変化率)が小さく、比抵抗が低下しない特性であることが望ましい。
また高温環境下で耐圧が低下しないために、内部電極間を厚くする傾向があるが、積層セラミックコンデンサの高容量化には、厚みに依存しない誘電体組成物が求められている。
すなわち、高温で動作保証する積層セラミックコンデンサの誘電体組成物は、容量変化率が小さく、比抵抗及び比誘電率が高いことが必要である。
容量変化率が小さい誘電体としては、特許文献1に((CaSr1−x)O)((TiZr1−y)O)、0≦x≦1、0≦y≦0.10、0.75≦m≦1.04の磁器組成物が開示されている。
しかしながら、前記磁器組成物は、比誘電率が29〜45程度と低く、所望の容量を得ることができないという問題があった。
また、特許文献2には、CaO、TiO2、及びSiO2の3成分組成において、TiO2の一部がSnO2,MnO2,及びZrO2からなる群から選択される1種あるいは2種以上の成分により置換されている組成を備える、磁器組成物が開示されている。
しかし、前記磁器組成物は、ミリ波周波数帯域での大きな誘電正接(tanδ)を有する誘電体材料に関するものであり、高温環境下における誘電特性について、何ら開示されていない。
特開平10−335169号公報 特開2002−293616号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、高温環境下において、容量変化率が小さく、比誘電率や比抵抗が高い誘電体組成物、及び電子部品を提供するものである。
上記目的を達成するため、本発明の誘電体組成物は、主成分が一般式(Ca1−aSr(Ti1−bZr(Si1−cGeで示され、x、y、z、a、b、cはそれぞれ、0.9≦x≦1.1、0.9≦y≦1.1、0.9≦z≦1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1である(但し、a=c=0は除く)ことを特徴とする。
本発明の誘電体組成物は、上記範囲を満たすことにより、容量変化率が小さく、比誘電率および比抵抗が高いものが得られる。
本発明の誘電体組成物は、CaTiSiO型構造を有し、結晶中に存在するTiイオンはOイオンに囲まれている酸素八面体構造である。Caに対するSrの置換量を0から1.0にすることにより酸素八面体の体積を増加させることにより、高い比誘電率と、小さい容量変化率が得られる。
本発明の誘電体組成物は、Tiに対するZrの置換量を0から1.0にすることにより、小さい容量変化率と、高い比抵抗を得られる。Tiをよりイオン半径の大きいZrに置換することで酸素八面体中のZrイオンが酸素八面体の中心に位置する。それにより、自発分極を有さなくなるため、容量変化率が小さくなる。
本発明の誘電体組成物は、CaTiSiO型構造を有し、結晶中に存在するSiイオンはOイオンに囲まれている酸素四面体構造である。この酸素四面体は頂点の酸素を酸素八面体の頂点の酸素と共有した構造を有している。
本発明の誘電体組成物は、Siに対するGeの置換量を0から1.0にすることにより、小さい容量変化率と、高い比抵抗が得られる。Siをよりイオン半径の大きなGeに置換することで、酸素八面体の頂点の酸素を共有するSiの酸素四面体の体積が大きくなることで、隣接するTiの酸素八面体の体積を抑制して、Tiイオンが酸素八面体の中心に位置することで自発分極を有さなくなり容量変化率が小さくなっていると考えられる。
本発明の誘電体組成物は、CaとSrの合計の含有量xを0.9≦x≦1.1にすることにより、容量変化率が小さく、高い比誘電率と比抵抗が得られる。CaとSrの合計の含有量xを、0.9≦x≦1.1にすることで、酸素八面体を適度な体積に保つことができるため、TiイオンもしくはZrイオンが電界に対して変位しやすく、比誘電率が高くなると考えられる。
本発明の誘電体組成物は、TiとZrの合計の含有量yを0.9≦y≦1.1にすることにより、高い比誘電率と、小さい容量変化率と、高い比抵抗を得られる。TiとZrの合計の含有量yを0.9≦y≦1.1にすることで、酸素八面体の形状が安定し、TiイオンもしくはZrイオンが酸素八面体の中心に位置しやすくなるため容量変化率が小さくなっていると考えられる。
本発明の誘電体組成物は、SiとGeの合計の含有量zを0.9≦z≦1.1にすることにより、高い比誘電率と、小さい容量変化率と、高い比抵抗を得られる。SiとGeの合計の含有量zを0.9≦z≦1.1にすることで、SiもしくはGeの酸素四面体の体積が大きくなることで、隣接する酸素八面体の体積を抑制して、TiイオンもしくはZrイオンが酸素八面体の中心に位置することで容量変化率が小さくなっていると考えられる。
Mn、Coから選択される少なくとも1種の元素を含む第1副成分を有し、前記第1副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第1副成分≦10モルであることが好ましい。
本発明の誘電体組成物は、上記構成を有することにより、高い絶縁抵抗が得られる。
Mgを含む第2副成分を有し、該第2副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第2副成分≦10モルであることが好ましい。
本発明の誘電体組成物は、上記構成を有することにより、小さい容量変化率が得られる。
V、Nb、Taから選択される少なくとも1種の元素を含む第3副成分を有し、該第3副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第3副成分≦10モルであることが好ましい。
本発明の誘電体組成物は、上記構成を有することにより、小さい容量変化率が得られる。
Rの元素(ただし、Rは希土類元素から選択される少なくとも1種の元素)を含む第4副成分を有し、該第4副成分の含有量が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第4副成分≦10モルであることが好ましい。
本発明の誘電体組成物は、上記構成を有することにより、小さい容量変化率が得られる。
該第4副成分がY、Gd、Tb、Dy、Hoから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
本発明の誘電体組成物は、上記構成を有することにより、小さい容量変化率が得られる。
Si、Li、B、Alから選択される少なくとも1種の元素を含む第5副成分を有し、該第5副成分の含有量が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第5副成分≦20モルであることが好ましい。
本発明の誘電体組成物は、上記構成を有することにより、高い比抵抗が得られる。
本発明に係る誘電体組成物からなる、誘電体層を有する電子部品の用途は特に限定されないが、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップバリスタ、チップサーミスタ、薄膜コンデンサなどに有用である。
本発明に係る誘電体組成物は、容量変化率が小さく、比誘電率および比抵抗が高いため、高温で使用が可能な誘電体組成物および電子部品を提供することができる。
本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサの断面図 実施例1および比較例1の誘電体組成物の25℃から250℃での容量変化率のグラフ
以下、本発明の実施形態について説明する。
積層セラミックコンデンサを例示し説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す。積層セラミックコンデンサ1は誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
誘電体層2の厚みは、特に限定されず、積層セラミックコンデンサ1の用途に応じて適宜決定すれば良い。
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、Ni、Pd、Ag、Pd−Ag合金、CuまたはCu系合金が好ましい。なお、Ni、Pd、Ag、Pd−Ag合金、CuまたはCu系合金中には、P等の各種微量成分が0.1重量%程度以下含まれていてもよい。また、内部電極層3は、市販の電極用ペーストを使用して形成してもよい。内部電極層3の厚さは用途等に応じて適宜決定すればよい。
誘電体層2は一般式が(Ca1−aSr(Ti1−bZr(Si1−cGeであり、x、y、z、a、b、cはそれぞれ、0.9≦x≦1.1、0.9≦y≦1.1、0.9≦z≦1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1である(但し、a=c=0は除く)、誘電体組成物を用いていることを特徴とする。
次に、図1示す積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
本実施形態の積層セラミックコンデンサ1は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を塗布して焼成することにより製造される。以下、製造方法について具体的に説明する。
次に、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
まず、一般式(Ca1−aSr(Ti1−bZr(Si1−cGeが所望の割合となるように原料を用意し、混合し、800℃以上で熱処理(仮焼成)を実施し、仮焼粉を得ることができる。
原料には、Caや、Sr、Ti、Zr、Si、Geを主として構成する酸化物やその混合物を原料粉として用いることができる。さらには、焼成により上述した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。具体的には、Caの原料としてCaOを用いてもよいし、CaCOを用いてもよい。
好ましくは、Mn、Coから選択される少なくとも1種の元素を含む第1副成分を有し、前記第1副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第1副成分≦10モルである。さらに好ましくは0.1モル≦第1副成分≦5モルである。
好ましくは、Mgを含む第2副成分を有し、前記第2副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第2副成分≦10モルである。さらに好ましくは0.1モル≦第2副成分≦5モルである。
好ましくは、V、Nb、Taから選択される少なくとも1種の元素を含む第3副成分を有し、前記第3副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第3副成分≦10モルである。さらに好ましくは0.1モル≦第3副成分≦5モルである。
好ましくは、Rの元素(ただし、Rは希土類元素から選択される少なくとも1種の元素)を含む第4副成分を有し、前記第4副成分の含有量が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第4副成分≦10モルである。さらに好ましくは0.1モル≦第4副成分≦5モルである。
好ましくは、前記第4副成分がY、Gd、Tb、Dy、Hoから選択される少なくとも1種である。
好ましくは、Si、Li、B、Alから選択される少なくとも1種の元素を含む第5副成分を有し、前記第5副成分の含有量が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第5副成分≦20モルである。さらに好ましくは0.1モル≦第5副成分≦5モルである。
副成分の原料としては、副成分の酸化物やその混合物を原料粉として用いることができる。さらには、焼成により上述した酸化物や複合酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等から適宜選択し、混合して用いることもできる。具体的には、Mgの原料としてMgO用いても良いし、MgCOを用いても良い。
この主成分の仮焼粉と副成分の原料粉を混合し、乾燥することにより、誘電体組成物原料を準備する。また、主成分の仮焼粉と副成分の原料粉の混合は、後述する塗料化の際に行っても良い。
この誘電体組成物原料を塗料化して、誘電体層用ペーストを調製する。誘電体層用ペーストは、誘電体原料と有機ビヒクルとを混練した有機系の塗料であってもよく、水系の塗料であってもよい。
有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。用いる有機溶剤も特に限定されず、印刷法やシート法など、利用する方法に応じて、テルピネオール、ブチルカルビトール、アセトン等の各種有機溶剤から適宜選択すればよい。
また、誘電体層用ペーストを水系の塗料とする場合には、水溶性のバインダや分散剤などを水に溶解させた水系ビヒクルと、誘電体原料とを混練すればよい。水系ビヒクルに用いる水溶性バインダは特に限定されず、たとえば、ポリビニルアルコール、セルロース、水溶性アクリル樹脂などを用いればよい。
内部電極層用ペーストは、上記した各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に上記した導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
外部電極用ペーストは、上記した内部電極層用ペーストと同様にして調製すればよい。
上記した各ペースト中の有機ビヒクルの含有量に特に制限はなく、通常の含有量、たとえば、バインダは1〜5重量%程度、溶剤は10〜50重量%程度とすればよい。また、各ペースト中には、必要に応じて各種分散剤、可塑剤、誘電体、絶縁体等から選択される添加物が含有されていてもよい。これらの総含有量は、10重量%以下とすることが好ましい。
印刷法を用いる場合、誘電体層用ペーストおよび内部電極層用ペーストを、PET等の基板上に印刷、積層し、所定形状に切断した後、基板から剥離してグリーンチップとする。
また、シート法を用いる場合、誘電体層用ペーストを用いてグリーンシートを形成し、この上に内部電極層用ペーストを印刷した後、これらを積層してグリーンチップとする。
焼成前に、グリーンチップに脱バインダ処理を施す。脱バインダ条件としては、昇温速度を好ましくは5〜300℃/時間、保持温度を好ましくは180〜500℃、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間とする。また、焼成雰囲気は、空気もしくは還元雰囲気とする。
また、焼成時の保持温度は、好ましくは1000〜1400℃、より好ましくは1100〜1360℃である。保持温度が上記範囲未満であると緻密化が不十分となり、前記範囲を超えると、内部電極層の異常焼結による電極の途切れや、内部電極層構成材料の拡散による容量変化率の悪化が生じやすくなる。
これ以外の焼成条件としては、昇温速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間、温度保持時間を好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは1〜3時間、冷却速度を好ましくは50〜500℃/時間、より好ましくは200〜300℃/時間とする。
上記した脱バインダ処理において、Nガスや混合ガス等を加湿するには、たとえばウェッター等を使用すればよい。この場合、水温は5〜75℃程度が好ましい。また、脱バインダ処理、焼成およびアニールは、連続して行なっても、独立に行なってもよい。
上記のようにして得られたコンデンサ素子本体に、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、外部電極用ペーストを塗布して焼成し、外部電極4を形成する。そして、必要に応じ、外部電極4表面に、めっき等により被覆層を形成する。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
以下、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
原料として、CaCO、SrCO、TiO、ZrO、SiO、GeOの各粉末を用意した。
これらを組成が表1となるように秤量して、ボールミルにて湿式混合した後、乾燥して各混合粉を得た。そして、これらの混合粉を800℃で仮焼し、仮焼粉を得た。
次いで、上記とは別に、副成分が表1となるように第1〜第5副成分の原料を準備した。なお、これら第1〜第5副成分の添加量は、主成分100モルに対する、添加量である。
次いで、上記仮焼粉と、第1〜第5副成分原料とを、秤量して混合し、乾燥することにより、誘電体組成物原料を準備した。
このようにして得られた誘電体組成物原料:100重量部と、ポリビニルブチラール樹脂:10重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレート(DOP):5重量部と、溶媒としてのアルコール:100重量部とをボールミルで混合してペースト化し、誘電体層用ペーストを作製した。
また、上記とは別に、Pd粒子:44.6重量部と、テルピネオール:52重量部と、エチルセルロース:3重量部と、ベンゾトリアゾール:0.4重量部とを、3本ロールにより混練し、スラリー化して内部電極層用ペーストを作製した。
そして、作製した誘電体層用ペーストを用いて、PETフィルム上に、乾燥後の厚みが7μmとなるようにグリーンシートを形成した。次いで、この上に内部電極層用ペーストを用いて、内部電極層を所定パターンで印刷した後、PETフィルムからシートを剥離し、内部電極層を有するグリーンシートを作製した。次いで、内部電極層を有するグリーンシートを複数枚積層し、加圧接着することによりグリーン積層体とし、このグリーン積層体を所定サイズに切断することにより、グリーンチップを得た。
次いで、得られたグリーンチップについて、脱バインダ処理(昇温速度:10℃/時間、保持温度:400℃、温度保持時間:8時間、雰囲気:空気中)で行い、焼成(昇温速度:200℃/時間、保持温度:1000〜1400℃、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、雰囲気:空気中)で行い積層セラミック焼成体を得た。
次いで、得られた積層セラミック焼成体の端面をサンドブラストにて研磨した後、外部電極としてIn−Ga共晶合金を塗布し、図1に示す積層セラミックコンデンサと同形状の実施例1から47及び比較例1から8の積層セラミックコンデンサを得た。得られた積層セラミックコンデンサのサイズは、いずれも3.2mm×1.6mm×1.2mmであり、誘電体層の厚み5.0μm、内部電極層の厚み1.5μm、内部電極層に挟まれた誘電体層の数は10とした。
得られた実施例1から47及び比較例1から8の積層セラミックコンデンサについて、比誘電率(ε)、温度に対する静電容量の変化(容量変化率)、比抵抗を下記に示す方法により測定した。
[比誘電率(ε)]
積層セラミックコンデンサに対し、25℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの信号を入力し、静電容量Cを測定した。そして、比誘電率ε(単位なし)を、誘電体層の厚みと、有効電極面積と、測定の結果得られた静電容量Cとに基づき算出した。結果を表1に示す。比誘電率は高いほうが好ましく、55以上を良好であると判断した。
[容量温度特性]
コンデンサ試料に対し、250℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件で静電容量を測定し、基準温度25℃における静電容量に対する変化率(容量変化率)を算出した。変化率の絶対値は低いほうが好ましく、±3.0%以内を良好であると判断した。
[比抵抗]
コンデンサ試料に対し、250℃において、デジタル抵抗メータ(ADVANTEST社製R8340)にて、測定電圧20V、測定時間60秒の条件で絶縁抵抗を測定した。コンデンサ試料の電極面積および誘電体厚みから比抵抗の値を算出した。比抵抗は高いほうが好ましく2×1011Ωcm以上を良好であると判断した。比抵抗が低いとコンデンサとしては漏れ電流が大きくなり、電気回路において誤動作を起こしてしまう。
Figure 0006376001
表1に示すように、実施例1から5と、比較例1を比較することで、誘電体組成物のSrの含有量が0以上1以下であるとき、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
また、実施例2から4では、Srの含有量が0.1以上0.9以下であるため、より比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。比較例1では、Srの含有量が0およびGeの含有量が0であるため、比誘電率が低く、比抵抗が低かった。
また、実施例6から10と、比較例1を比較することで、誘電体組成物のZrの含有量が0以上1以下であるとき、容量変化率が小さく、比誘電率および比抵抗が高いことがわかる。
また、実施例7から9では、Zrの含有量が0.1以上0.9以下であるため、より比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。比較例1では、Srの含有量が0およびGeの含有量が0であるため、比誘電率が低く、比抵抗が低かった。
また、実施例11から15と、比較例1を比較することで、誘電体組成物のGeの含有量が0以上1以下であるとき、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
実施例12から14では、Geの含有量が0.1以上0.9以下であるため、より比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。比較例1では、Srの含有量が0およびGeの含有量が0であるため、比誘電率が低く、比抵抗が低かった。
また、実施例3,16および17と、比較例2および3とを比較することで、誘電体組成物のCaとSrの合計の含有量が0.9以上1.1以下であるとき、比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。実施例3,16および17では、CaとSrの合計の含有量が0.95以上1.05以下であるため、より比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。比較例2では、CaとSrの合計の含有量が0.85であるため、比誘電率が低く、容量変化率が悪く、比抵抗が低かった。比較例3では、CaとSrの合計の含有量が1.15であるため、比誘電率が低く、容量変化率が悪く、比抵抗が低かった。
また、実施例3,18および19と比較例4および5とを比較することで、誘電体組成物のTiとZrの合計の含有量が0.9以上1.1以下であるとき、比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。実施例3,18および19では、TiとZrの合計の含有量が0.9以上1.1以下であるため、より比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。比較例4では、TiとZrの合計の含有量が0.85であるため、比誘電率が低く、容量変化率が悪く、比抵抗が低かった。比較例5では、TiとZrの合計の含有量が1.15であるため、比誘電率が低く、容量変化率が悪く、比抵抗が低かった。
また、実施例3,20および21と比較例6および7とを比較することで、誘電体組成物のSiとGeの合計の含有量が0.9以上1.1以下であるとき、比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。実施例3,20および21では、SiとGeの合計の含有量が0.9以上1.1以下であるため、より比誘電率が高く、容量変化率が小さいことがわかる。比較例6では、SiとGeの合計の含有量が0.85であるため、比誘電率が低く、容量変化率が悪く、比抵抗が低かった。比較例7では、SiとGeの合計の含有量が1.15であるため、比誘電率が低く、容量変化率が悪く、比抵抗が低かった。
また、実施例22から27を比較することで、第1副成分のMnの含有量が0モル以上10モル以下であるときは、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
また、実施例22および実施例28から32を比較することで、第2副成分のMgの含有量が0モル以上10モル以下であるときは、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
また、実施例22および実施例33から37を比較することで、第3副成分のVの含有量が0モル以上10モル以下であるときは、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
また、実施例22および実施例38から42を比較することで、第4副成分のYの含有量が0モル以上10モル以下であるときは、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
また、実施例22および実施例43から47を比較することで、第5副成分のSiの含有量が0モル以上20モル以下であるときは、比誘電率が高く、容量変化率が小さく、比抵抗が高いことがわかる。
Mnの代替物としてCoを用い、Vの代替物としてNbまたはTaを用い、Yの代替物としてGd、Tb、DyまたはHoを用い、Siの代替物としてLi、BまたはAlを用いた以外は、実施例1から47と同様にしてコンデンサ試料を作製し、同様に評価を行った。各副成分種および評価結果を表2に示す。なお、x、y、zはいずれも0である。また、第2副成分であるMgは0モルである。
Figure 0006376001
表2に示すように、Mnの代替物としてCoを用い、Vの代替物としてNbまたはTaを用い、Yの代替物としてGd、Tb、DyまたはHoを用い、Siの代替物としてLi、BまたはAlを用いた場合でも、同様な特性が得られることを確認できた。
これらから、誘電体組成物の組成を本発明所定の範囲とすることにより、高い比誘電率と小さい容量変化率を得られることが確認できた。
さらに、実施例3の試料について25℃から250℃の範囲で温度を変化させて比誘電率を測定した。測定結果について、比較例1の容量変化率と合わせて図2に示す。
図2より、比較例では温度が変化すると静電容量の変化が大きいのに対して、本発明に係る誘電体組成物を有する試料は静電容量の温度に対する変化が小さいことがわかる。
広範囲な温度領域において、温度特性が平坦なため、車載用としてエンジンルーム近傍など高温の環境での用途に適用できる。
本発明の誘電体組成物で構成される誘電体膜を備える薄膜コンデンサにも上記と同様な用途に適用できる。
1 積層セラミックコンデンサ
2 誘電体層
3 内部電極層
4 外部電極
10 コンデンサ素子本体

Claims (8)

  1. 主成分が、一般式(Ca1−aSr(Ti1−bZr(Si1−cGeで示され、x、y、z、a、b、cはそれぞれ、0.9≦x≦1.1、0.9≦y≦1.1、0.9≦z≦1.1、0≦a≦1、0≦b≦1、0≦c≦1である(但し、a=c=0は除く)、誘電体組成物。
  2. Mn、Coから選択される少なくとも1種の元素を含む第1副成分を有し、該第1副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第1副成分≦10モルである、請求項1に記載の誘電体組成物。
  3. Mgを含む第2副成分を有し、該第2副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第2副成分≦10モルである、請求項1または2に記載の誘電体組成物。
  4. V、Nb、Taから選択される少なくとも1種の元素を含む第3副成分を有し、該第3副成分が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第3副成分≦10モルである、請求項1から3のいずれかに記載の誘電体組成物。
  5. Rの元素(ただし、Rは希土類元素から選択される少なくとも1種の元素)を含む第4副成分を有し、該第4副成分の含有量が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第4副成分≦10モルである、請求項1から4のいずれかに記載の誘電体組成物。
  6. 前記第4副成分がY、Gd、Tb、Dy、Hoから選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の誘電体組成物。
  7. Si、Li、B、Alから選択される少なくとも1種の元素を含む第5副成分を有し、該第5副成分の含有量が、前記主成分100モルに対して、0モル≦第5副成分≦20モルである、請求項1から6のいずれかに記載の誘電体組成物。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の誘電体組成物からなる誘電体層を有する電子部品。

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