以下、図面を用いながら、開示の無線通信方法、無線通信システム、送信局、および受信局の実施形態について説明する。尚、便宜上別個の実施形態として説明するが、各実施形態を組み合わせることで、組み合わせの効果を得て、更に、有用性を高めることもできることはいうまでもない。
〔問題の所在〕
ここでは、各実施形態を説明する前の準備として、従来技術における問題の所在を説明する。この問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものであることに注意されたい。
まず、前述した2つのCoMP送信方式であるJTとDPSとの効果を詳細に比較検討する。
前述したようにJTは、CoMP適用対象のUE(CoMP対象UEと呼ぶ)に対し、協調する複数のTP(協調TPと呼ぶ)から同一の情報に基づくデータ信号を送信するものである。そのため、JTによれば、CoMP対象UEにおいて協調TPからの干渉が完全になくなる。さらに、JTによれば、協調TPからの送信信号が希望信号となるため、希望信号成分が増大することとなる。これらにより、JTを実施することで、CoMP対象UEの受信品質および通信効率(スループット)が向上するという利点があると考えられる。
次に、ある無線リソースに基づいてJTが実施された場合の、当該無線リソースを用いるCoMP適用対象外のUE(CoMP対象外UEと呼ぶ)への影響を考える。CoMP対象外UEにとって、協調TPから送信される信号は全て干渉信号となる。そのため、CoMP対象外UEにおいては、複数のTPがそれぞれ異なるUEに対してデータ信号を送信する通常のSTと比べて、干渉の度合いが同程度であると考えられる。
これに対し、前述したようにDPSは、CoMP対象UEに対し、瞬時の無線チャネル状態に基づき、協調TPから動的に選んだ1個のTPからデータ信号を送信し、残りのTPは無送信(Blanking)とするものである。そのため、DPSによれば、JTと同様に、CoMP対象UEにおいて協調TPからの干渉が完全になくなる。これにより、DPSを実施することで、CoMP対象UEの受信品質および通信効率(スループット)が向上するという利点があると考えられる。
なお、DPSではJTと異なり、協調TPのうちの1つのTPからのみ信号が送信されるため、STと比較して希望信号成分は増大しない。そのため、DPSによるCoMP対象UEにおける受信品質および通信効率の向上の効果は、JTにおける効果と比較すると小さいものであると考えられる。
次に、ある無線リソースに基づいてDPSが実施された場合の、当該無線リソースを用いるCoMP対象外UEへの影響を考える。DPSによれば、CoMP対象外UEが協調TPから受ける干渉信号は、協調TPのうちの1つのTPから送信される信号のみとなる。そのため、DPSを実施した場合のCoMP対象外UEにおける干渉の度合い(大きさ)は、JTと比較して小さくなると考えられる。
なお、DPSを実施した場合のCoMP対象外UEにおける干渉の度合いは、STと比較すると、同じか小さくなると考えられる。これは、STにおいては必ずしも複数TPのうちの一つのみから信号が送信されるわけではない(複数のTPがそれぞれ異なるUEに対してSTを行いうる)のに対し、DPSでは協調TPのうちの一つのみから信号が送信されるためである。
以上で比較検討したように、JTとDPSとの効果には差異があると考えられる。端的に述べると、JTとDPSとは、CoMP対象UEにおける受信品質または通信効率が向上する利点は共通するが、その向上の度合いはJTのほうがDPSよりも大きい。この点においてはJTがDPSよりも優れている。一方、JTとDPSはCoMP対象外UEに対する干渉を与えるものであるが、その干渉の度合いはDPSの方がJTよりも小さい。この点においてはDPSがJTよりも優れている。
そのため、JTとDPSにおいては一長一短があり、どちらかが優れているというものではない。また、JTとDPSとでどちらを実施すれば良いかは、送信に関する種々の状況に依存すると考えられる。例えばDPSにおける無送信(Blanking)による干渉低減の効果は、TPあたりのセクタ数、アンテナ数、TP間距離、送信電力等といった様々な要因で変化しうる。そのため各TPや各UEで同一のCoMP送信方式を適用するのは妥当性が低いと考えられる。
以上の考察に基づき、発明者は、CoMP送信を実施する場合に、送信の状況によらずJTまたはDPSを決め打ちで実施するような無線通信システムにおいては、CoMP送信の実施による効果を十分に得ることができないという問題を見出した。前述したようにこの問題は、発明者が従来技術を仔細に検討した結果として新たに見出したものであり、従来は知られていなかったものである。後述する本願の各実施形態は、この問題を解決するために発明者により創出されたものである。
本願の各実施形態を説明する前に、図2〜3に基づいて、前述した問題を有する無線通信システムの例を簡単に説明する。この説明は後述する本願実施形態との比較のために行うものであるため、ここでは処理の流れを簡単に説明するのみに留める。ここで登場する処理や用語の詳細な内容については、後述される本願の各実施形態の説明を適宜参照されたい。
図2は、CoMP送信を実施する場合に、送信の状況によらずJTを決め打ちで実施する無線通信システムの処理シーケンスを示す図である。図2にはTP1〜TP4と、TP1に接続するUE1が示されている。
図2のS101で各TPはCRM set(Coordinated Resource Management set)を決定し、S102で各TPはCRM setを配下のUEに送信する。ここでCRM setとは、TPが配下のUEに受信電力を測定させる対象となるTPの集合に相当する。図2では一例として、UE1のCRM setはTP1〜TP4から構成されるとする。S103でUEはCRM setで示された各TPからの受信電力を測定し、S104でUEは受信電力を接続TPに報告する。S105で各TPはS104の報告に基づいてCoMP measurement set(図では「Meas set」と記載)を決定し、S106で各TPはCoMP measurement setを配下のUEに送信する。ここでCoMP measurement setとは、TPが配下のUEに受信品質を測定させる対象となるTPの集合に相当する。図2では一例として、UE1のCoMP measurement set はTP1〜TP3から構成されるとする。S107でUEはCoMP measurement setで示された各TPからの受信品質を測定し、S108でUEは受信品質を接続TPに報告する。S109で各TPは協調スケジューリングを行う。図2の例で実施されるCoMP送信方式は常にJTのため、S109ではCoMP送信で協調するTPの集合に相当するCoMP Cooperating set(図では「Coop set」と記載)等を決定する。図2では一例としてTP1とTP2が協調スケジューリングによりCooperating setを構成している。最後にS110で各TPは、JTによりUEにデータの送信を行う。図2では、TP1とTP2がそれぞれUE1に対して物理下り共有チャネルであるPDSCH(Physical Downlink Shared CHannel)を介してデータを送信することによって、JTを実行する。
図3は、CoMP送信を実施する場合に、送信の状況によらずDPSを決め打ちで実施する無線通信システムの処理シーケンスを示す図である。
図3のS201〜S208は、図2のS201〜S208にそれぞれ対応するため、説明を割愛する。図3のS209で各TPは協調スケジューリングを行う。図3の例で実施されるCoMP送信方式は常にDPSのため、S209ではCoMP Cooperating setに加えて送信ポイントとなるTPの決定も行う。
図3では一例としてTP1とTP2が協調スケジューリングによりCooperating setを構成するとともに、DPSの送信ポイントはTP1となっている。最後にS210で各TPは、DPSによりUEにデータの送信を行う。図3では、送信ポイントであるTP1がUE1に対してPDSCHを介してデータを送信するとともに、TP2は無送信(Blanking)とすることによって、DPSを実行する。
〔第1実施形態〕
本願の第1実施形態は、無線通信システムがCoMP送信方式(JTとDPS)を送信の状況に応じて選択的に実施するものである。換言すると、本願の第1実施形態は、同一の無線リソースに基づいて送信を行う複数の送信局に含まれる第1送信局が、前記複数の送信局が前記無線リソースを用いて同一の受信局に同一のデータを送信する第1送信方式と、前記複数の送信局のうちの1つの送信局が前記無線リソースを用いる第2送信方式との選択を、前記複数の送信局による送信の状況に基づいて行うものである。
以下では図面に基づいて、第1実施形態の無線通信システムを具体的に説明する。図4は、第1実施形態の無線通信システムが協調送信(CoMP送信)を行う際の処理シーケンスの一例である。
図4においては、2つのTPであるTP1〜TP2と、UEとが示されている。ここで、UEはTP1に接続しているとする。ここで接続とは、UEがTPの配下(管理下)にあるということである。CoMPではない通常の1対1の送信(ST)においては、UEは接続しているTPとの間でデータ信号や制御信号の送受信を行う。UEとTPとの接続関係は網側で管理される。
図4のS301において、各TP(TP1とTP2)は、送信の状況を認識する。ここで送信とは、各TP自身による送信であってよい。この場合、送信の状況は、各TP自身による送信に関するあらゆる状況を含みうる。一例としては、送信の状況は、各TPによる送信信号により他TP(例えばTP1にとってTP2やその他TP)に与える干渉の度合い(大きさ)とすることができる。他の例としては、送信の状況は、UEに送信するデータの量や重要度(QoS等)とすることができる。あるいは、送信の状況は、TPが送信する信号(ダウンリンク信号)に基づく種々の測定結果(UEにおいて測定される受信電力や受信品質等)とすることができる。また、送信の状況はこれらを単独で用いてもよいし、適宜組み合わせてもよい。
図4のS302において、各TPは、S301で認識した送信の状況に基づいてCoMP送信方式を選択(決定)する。ここでCoMP送信方式は、JTとDPSとのいずれかである。なお、前述したように、DPSの代わりにCS/CBを用いることもできる。また、送信の状況に応じて、CoMP送信のみならずSTを選択できるようにしてもよい。
S302におけるCoMP送信方式の選択は、送信の状況に関するあらゆる基準に基づくものであってよい。一例としては、各TPによる送信信号により他TPに与える干渉の度合い(大きさ)を「送信の状況」とする場合、当該干渉の度合いが比較的小さい場合にJTを選択し、比較的大きい場合にDPSを選択することができる。他の例としては、UEに送信するデータの量や重要度(QoS等)を「送信の状況」とする場合、当該データの量が比較的大きい場合や当該重要度が比較的高い場合にJTを選択し、当該データの量が比較的小さい場合や当該重要度が比較的低い場合にDPSを選択することができる。あるいは、各TPが送信する信号(ダウンリンク信号)に基づく種々の測定結果(UEにおいて測定される受信電力や受信品質等)を「送信の状況」とする場合、当該測定結果が比較的悪い場合にJTを選択し、比較的良い場合にDPSを選択することができる。また、CoMP送信方式の選択の基準については、これらを単独で用いてもよいし、適宜組み合わせてもよい。
図4のS302においては、一例として、TP1はDPSを選択したとする。またTP2もDPSを選択したとする。
図4のS303において、TP1とTP2とがUEに対する協調スケジューリングを行う。なお、S303は、TP1においてUE宛のデータが発生した場合に行われる。
UEに対する協調スケジューリングは、TP1が主導となって行う。協調スケジューリングはいくつかの処理を含む。TP1は、協調スケジューリングにおいて、CoMP送信を行うか、CoMP送信を行う場合はどのTPと協調するか、CoMP送信を行う場合はどの無線リソース(周波数・時間)を用いるか、等の決定を行う。また、この例ではTP1とTP2とはS302においていずれもDPSを選択しているので、協調スケジューリングにおいては、実際に送信を行う送信ポイント(TP)の決定も行う。ここでは一例として、実際に送信を行う送信ポイントをTP1とするとともに、TP2は無送信とすることを決定したとする。
これらの決定は、順次行われてもよいし、並列又は一括して行われてもよい。またこれらの決定に際して、TP1は他のTP(TP2やTP3)から適宜情報の受信または送信を行ってもよい。
またTP1は、協調スケジューリングにおいて、先に決定したことを協調セルであるTP2に対して通知する。具体的には例えば、TP1はTP2に対して、協調セルとして決定したこと、協調送信に用いる無線リソース等を通知する。また、JTやDPSを行う際には、TP1はTP2にUE宛のデータを送信することで、協調TP間でデータの共有を行う。
図4のS304において、TP1とTP2とがUEに対して協調送信を行う。S304でTP1とTP2とは、S302でそれぞれが決定した協調送信をUEに対して行う。この例ではTP1とTP2とはS302においていずれもDPSを選択しているので、S303で決定した無線リソースおよび送信ポイントに基づいて、UEに対してデータの送信を行う。この例ではS303で送信ポイントをTP1と決定しているので、TP1が無線リソースを用いてUEへの送信を行い、TP2は当該無線リソースにおいて無送信とする。以上により、第1実施形態に基づくCoMP送信の処理が実現される。
図4に基づいて説明した第1実施形態によれば、S302で各TPは種々の送信の状況に基づいてCoMP送信方式を選択することができる。これにより、JTが相対的に有利な場面とDPSが相対的に有利な場面とでこれらを使い分けることが可能となる。したがって第1実施形態によれば、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
ところで、先に述べたように図4は第1実施形態の処理の一例であり、一例として、S302においてTP1とTP2がいずれもDPSを選択した場合を説明したが、S302の選択はこれに限られないことは言うまでもない。例えば、S302においてTP1とTP2がいずれもJTを選択する場合も当然に考えられる。この場合には、S304において、TP1とTP2の両方がUEに対して無線リソースを用いて送信を行う。
また、例えば、S302においてTP1とTP2の一方がJTを選択し、他方がDPSを選択する場合も考えられる。このように協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合に各TPがどのように振る舞うかについては、以下で述べるようにいくつかの協調方法が考えられる。
図5Aは、協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合の第1の協調方法を示す図である。図5Aに示すように、第1の協調方法においては、JTを選択した全TPが送信を行う。また、DPSを選択したTPの中で動的に選択された1つのTPが送信を行うとともに、残りのTPは無送信(Blanking)とする。第1の協調方法は、JTとDPSとの単純な組合せに相当する。
図5Bは、協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合の第2の協調方法を示す図である。図5Bに示すように、第2の協調方法においては、JTを選択した全TPが送信を行うとともに、DPSを選択した全TPが無送信(Blanking)とする。第2の協調方法は、JTを選択したTPが送信を行っているため、DPSを選択したTPは敢えて送信する必要はないという考え方に基づいている。
また、協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合において、協調するTP間で協調スケジューリング時等にCoMP送信方式を統一させる(擦り合わせる)処理を行うようにしてもよい。例えば、協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合に、接続TPが選択したCoMP送信方式に、協調する他TPが合わせる方法が考えられる。また、別の例として、協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合に、協調セル間の多数決でCoMP送信方式を統一する方法が考えられる。協調セル間で選択したCoMP送信方式が異なる場合には、これらの協調方法のいずれか又は組合せに基づいて、各TPは協調送信を行うことができる。
以上説明した第1実施形態の無線通信システムによれば、JTとDPSとを送信の状況に応じて選択的に実施することができる。これにより、JTが相対的に有利な場面とDPSが相対的に有利な場面とでこれらを使い分けることが可能となる。したがって第1実施形態によれば、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
〔第2実施形態〕
本願の第2実施形態は、第1実施形態における「送信の状況」の具体例として、TPの送信に基づいて発生する干渉を取り扱うものである。また、そのためにTPは、当該TPによる送信に基づいて発生する干渉に関する情報を他TPから受信するものである。換言すると、本願の第2実施形態は、第1実施形態の無線通信システムにおいて、送信局が送信の状況に関する情報(具体例としては他送信局に与える干渉に関する情報)を受信し、当該情報に基づいてCoMP送信方式を選択するものである。
以下では図面に基づいて、第2実施形態の無線通信システムを具体的に説明する。図6は、第2実施形態の無線通信システムが協調送信を行う際の処理シーケンスの一例を説明する図である。第2実施形態においては、第1実施形態と共通する点も多いため、以下では第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
図6のS401において、各TP(TP1とTP2)は、他TPから干渉情報を受信する。ここで、各TPが受信する干渉情報とは、当該TPによる無線送信に基づいて他TPが受ける干渉に関する情報である。ここでは一例として、干渉情報は、TPによる無線送信に基づいて他TPが受ける干渉の度合い(大きさ)を示す情報とすることができる。なお、他TPが受ける干渉には、他TPそのものが受ける干渉のみならず、他TPの配下のUE(他TPに接続するUE)が受ける干渉を含むものとしてもよい。
干渉情報の受信は、受動的に行われてもよいし、他TPに干渉情報を要求するための情報を送信する等により能動的に行われてもよい。また、干渉情報を送信する他TPは、定期的にもしくは所定の事象を検出した場合に干渉情報を送信するようにしてもよい。干渉情報の送信は1対1で行われてもよいし、複数のTP間で相互に情報を交換したり、転送するようにしてもよい。
干渉情報は、他TPから受信することができるが、これに限られない。TPは干渉情報を上位装置から受信することもできる。また、TPは干渉情報を他TPの配下のUEから受信することとしてもよいし、自分の配下のUEから受信することとしてもよい。
図6のS402において、各TPは、CoMP送信方式を選択する。ここで、各TPは、S401で受信した干渉情報に基づいて、CoMP送信方式を選択することとする。例えば、干渉情報が示す「干渉の度合い」が比較的小さい場合にJTを選択し、比較的大きい場合にDPSを選択することができる。S402においては、一例として、TP1はDPSを選択したとする。またTP2もDPSを選択したとする。
図6のS403において、TP1とTP2とがUEに対する協調スケジューリングを行う。S403は図4のS303と同様なので詳細な説明は割愛する。
図6のS404において、TP1とTP2とがUEに対して協調送信を行う。S404でTP1とTP2とは、S402でそれぞれが決定した協調送信をUEに対して行う。この例ではTP1とTP2とはS402においていずれもDPSを選択しているので、S403で決定した無線リソースおよび送信ポイントに基づいて、UEに対してデータの送信を行う。S404は図4のS304と同様なので詳細な説明は割愛する。以上により、第2実施形態に基づくCoMP送信の処理が実現される。
図6に基づいて説明した第2実施形態によれば、S402で各TPは当該TPの送信に基づく干渉の度合い(大きさ)に基づいてCoMP送信方式を選択することができる。また、TPは自分の送信に基づく干渉の度合いを自分で測定したり、配下のUEに測定させるのは困難であるが、第2実施形態によれば当該干渉の度合いを他TPから受信することができる。これにより、JTが相対的に有利な場面(干渉が比較的小さい場合)とDPSが相対的に有利な場面(干渉が比較的大きい場合)とでこれらを使い分けることが可能となる。したがって第1実施形態によれば、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
なお、先に述べたように、第2実施形態においては、第1実施形態における「送信の状況」の具体的な一例として、送信信号が発生させる干渉を取り扱った。しかしながら、送信信号が発生させる干渉は「送信の状況」の一例にすぎず、本実施形態における送信信号が発生させる干渉は「送信の状況」に含まれる他の様々なものと置き換えることができることに注意する。
〔第3実施形態〕
本願の第3実施形態は、本願の第2実施形態の一例に相当しており、当該第2実施形態を現実のLTEシステムに合わせてより具体的かつ詳細に述べたものである。
以下では図面に基づいて、第3実施形態の無線通信システムを具体的に説明する。図7は、第3実施形態の無線通信システムが協調送信を行う際の処理シーケンスの一例を示す図である。
図7には5個のTPであるTP1〜TP5と、3個のUEであるUE1〜UE3が示されている。UE1はTP1に接続しており、UE2とUE3はTP5に接続しているものとする。
なお、図7においては、図の複雑化を避けるため、TP2〜TP4に接続するUEは明示してはいないが、特に断りのない限り、これらのTPにも一つ以上のUEが接続しているものとする。自分に接続するUE(配下のUE)に対するTP2〜TP4の振る舞いは、特に断りがない限り、TP1やTP5と同様であると考えて良い。
まずS501で、各TPは、配下のUEに対してCRM set(CoMP Resource Management set)を決定する。CRM setとは、TPがUEに対してCoMPを行うために、当該UEに受信電力を測定させるTPの集合(接続TPを含む)である。言い換えると、UEは自分に対して決定されたCRM setに含まれるTPに対して、受信電力を測定する。CRM setは、TPが配下のUEに対してCoMP送信を行う際に協調するTPを選択するための、第1段階目の絞り込みを通過したTPの集合と解することもできる。なお、LTE-Aにおいては、CRM setに含まれるTPの数は最大で8個(接続TPを含む)と規定されている。
各TPは、配下の各UEに対してそれぞれCRM setを決定する。各TPが決定するCRM setは、配下のUE間で同じでも良いし異なっていてもよい。また、各TPは任意の規則でCRM setを決めることができる。例えば、TPは比較的近くに配置されている他TP(周辺TPまたは隣接TPと呼ぶことがある)をCRM setに含めることができる。
図7のS501では、例えば、TP1はUE1に対してCRM setを決定する。ここでは一例として、TP1がUE1に対して決定したCRM setには、TP1〜TP4が含まれているものとする。
また図7のS501では、TP5はUE2およびUE3に対してそれぞれCRM setを決定する。さらに、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。TP1がUE1に対してCRM setを決定するのと同様に、これらTPは配下の各UEに対してそれぞれCRM setを決定する。
図7のS502で各TPは、S501で決定したCRM setを示す情報を、対応するUEに送信する。CRM setの送信は、例えば下りのRRCシグナリングにより行うことができる。ここで、CRM setを示す情報において、CRM setに含まれる各TPは、例えばセルIDで示される。また、CRM setを示す情報には、当該CRM setに含まれる各TP(セルID)に対し、当該TPが使用する周波数(中心周波数)に関する情報を含めることができる。
図7のS502では、例えば、TP1はUE1に対してCRM setを示す情報を送信する。また図7のS501では、TP5はUE2およびUE3に対してそれぞれCRM setを示す情報を送信する。また、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。TP1がUE1に対してCRM setを示す情報を送信するのと同様に、これらTPは配下の各UEに対してそれぞれCRM setを示す情報を送信する。
図7のS503で各UEは、S502で受信した情報で示されたCRM setに含まれる各TPに対し、それぞれ受信電力を測定する。受信電力の測定は、例えば各TPによる送信信号に含まれる下りの参照信号(パイロット信号と呼ばれることもある)を用いて行うことができる。下りの参照信号にはいくつかの種類があるが、ここでは一例として、セル固有参照信号(CRS:Cell-specific Reference Signal)を用いる場合を説明する。なお、本実施形態では特に断りがない限り、各TPはそれぞれセルを形成しており、したがってTPとセルは1対1で対応するものとする。
参照信号(例えばCRS)を用いた受信電力の測定は具体的には以下の手順で行う。UEはまず、S502で受信した情報で示されたCRM setに含まれるTPを1つ選び、当該TPの使用する周波数のDL無線信号を観測する。これによりUEは、DL無線信号から同期信号を検出する。そしてUEは、検出した同期信号のパターンに基づいてセル識別番号を求める。LTEシステムにおいては同期信号としてP−SS(Primary - Synchronization Signal)とS−SS(Secondary - Synchronization Signal)の2つがあり、これらからそれぞれグループ内セル番号(3種類)とセルグループ番号(168種類)を求める。そして、グループ内セル番号とセルグループ番号とからセル識別番号(3*168=504種類)を求める。
次にUEは、DL信号中の参照信号(CRS等)を受信する。ここで、CRSは、セル識別子によりスクランブリングされるとともに、セル識別子により無線フレーム上の配置が決まっている。そのため無線端末は、先に求めたセル識別子に基づいてCRSを特定することができる。そして無線端末は参照信号(CRS等)受信電力を測定する。受信電力としては例えば、参照信号(CRS等)の単純な受信電力値であるRSRP(Reference Signal Received Power)を用いることができる。また、受信電力としては他に、RSRQ(Reference Signal Received Quality)(=受信電力値/総電力値)等を用いることもできる。
図7のS503では、例えばUE1は、S502で受信した情報で示されたCRM setに含まれるTP1〜TP4に対し、それぞれ受信電力を測定する。またS503では、UE2またはUE3はそれぞれ、CRM setに含まれるTPに対し、それぞれ受信電力を測定する。さらに、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。UE1がCRM setに含まれるTPに対してそれぞれ受信電力を測定するのと同様に、これらUEもそれぞれCRM setに含まれるTPに対してそれぞれ受信電力を測定する。
図7のS504で各UEは、S503で測定したTP毎の受信電力を含む報告(以下では受信電力報告と呼ぶことがある)をTPに送信する。受信電力報告には、CRM setに含まれる各TPの受信電力が、各TPの識別子(セルID等)と対応付けられて含まれる。受信電力報告は、例えば上りのRRCシグナリングを用いて送信される。
図7のS504では、例えば、UE1はTP1に対して受信電力報告を送信する。またS504では、UE2およびUE3はTP5に対してそれぞれ送信電力報告を送信する。また、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。UE1がTP1に対して受信電力報告を送信するのと同様に、これらUEは接続TPに対してそれぞれ受信電力報告を送信する。
図7のS505で各TPは、S504で受信した受信電力報告に含まれるTP毎の受信電力に基づいて、CoMP measurement setを決定する。ここでCoMP measurement setとは、あるTPがあるUEに対してCoMPを行うために、当該UEに受信品質を測定させるTPの集合(接続TPを含む)である。言い換えると、UEは自分に対して決定されたCoMP measurement setに含まれるTPに対して、受信品質を測定する。CoMP measurement setは、CRM setの部分集合となる。CoMP measurement setは、TPが配下のUEに対してCoMPを行う際に協調するTPを選択するための、第2段階目の絞り込みを通過したTPの集合と解することもできる。なお、LTE-Aにおいては、CoMP measurement setに含まれるTPの数は最大で3個(接続TPを含む)と規定されている。
各TPは、配下の各UEに対してそれぞれCoMP measurement setを決定する。各TPが決定するCoMP measurement setは、配下のUE間で同じでも良いし異なっていてもよい。また、各TPは、S504で受信した受信電力報告に基づいて、任意の規則でCoMP measurement setを決めることができる。例えば、TPは、接続セル(通常は受信電力報告中で受信電力が最大となる)に加えて、受信電力報告中で受信電力の差が接続セルと規定値以下であるTPを最大2個選び、CoMP measurement setとすることができる。他の例としては、TPは受信電力報告中で受信電力が大きいTPの上位3個を、CoMP measurement setとすることができる。
図7のS505では、例えば、TP1はUE1に対してCoMP measurement setを決定する。ここでは一例として、TP1がUE1に対して決定したCoMP measurement setには、TP1〜TP3が含まれているものとする。
また図7のS505では、TP5はUE2およびUE3に対してそれぞれCoMP measurement setを決定する。さらに、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。TP1がUE1に対してCoMP measurement setを決定するのと同様に、これらTPは配下の各UEに対してそれぞれCoMP measurement setを決定する。
次にS506で各TPは、S505で決定したCoMP measurement setを示す情報を、対応するUEに送信する。CoMP measurement setを示す情報の送信は、例えば下りのRRCシグナリングにより行うことができる。ここで、CoMP measurement setを示す情報において、CoMP measurement setに含まれる各TPは、例えばセルIDで示される。また、CoMP measurement setを示す情報には、当該CoMP measurement setに含まれる各TP(セルID)に対し、当該TPが使用する周波数(中心周波数)に関する情報を含めることができる。
図7のS506では、例えば、TP1はUE1に対してCoMP measurement setを示す情報を送信する。また、前述したように図示されていないが、各TPの配下には1つ以上のUEが接続している。TP1がUE1に対してCoMP measurement setを示す情報を送信するのと同様に、各TPは配下の各UEに対してそれぞれCoMP measurement setを示す情報を送信する。
図7のS507〜S508で各TPは、S504で受信した受信電力報告に含まれるTP毎の受信電力に基づいて、TP個別干渉情報を生成する。ここでTP個別干渉情報とは、当該TPが他TPによる無線送信に基づいて受ける干渉に関する情報である。このTP個別干渉情報をTP間で例えば交換することで、各TPは自己の無線送信により他TPに与えている干渉の度合いを見積もることができ、その度合いに基づいて各TPはCoMP送信方式を決定するのである。
各TPは、最も単純な方法によれば、干渉情報を次のようにして生成することができる。各TPは、まずS507でUE個別干渉情報を生成し、次にS508でUE個別干渉情報に基づいてTP個別干渉情報を生成する。ここで、UE個別干渉情報とは、当該UEが接続TP以外のTPによる無線送信に基づいて受ける干渉に関する情報である。
今、あるTPの配下にN個のUEが存在しているとする。このとき、TPはS504において、N個の各UEから受信電力報告を受信する。
まずS507でTPは例えば、配下のUE毎に、当該UEに対する干渉の度合いが大きくなりうる他TPを抽出したリスト(UE個別干渉リストと呼ぶ)を生成する。これは、例えば、N個の受信電力報告毎に、受信電力の差が接続TPと規定値以下であるような他TPを抽出することで実現することができる。このように生成したUE個別干渉リストは、当該UEが接続TP以外のTPから受ける干渉の度合いを示す情報となっている。そのため、例えばこのUE個別干渉リストを、前述した「UE個別干渉情報」として用いることができる。
次にS508でTPは例えば、UE毎に作成したN個のUE個別干渉情報において、他TP毎に登場回数(リストアップされた回数)をカウントする。そしてTPは例えば、N個のUE個別干渉情報における登場回数が規定回数以上であった他TPを選んでリスト化する(これをTP個別干渉リストと呼ぶ)。TP個別干渉リストにおいては、例えば、N個のUE個別干渉リストにおける登場回数が多い順に他TP(セルIDで示す)を並べることができる。このように生成したTP個別干渉リストは、あるTPの配下のUEが他TPから受ける干渉の度合いを示す情報となっている。言い換えれば、TP個別干渉リストは、当該TPが他TPによる無線送信に基づいて受ける干渉に関する情報である。そのため、例えばこのTP個別干渉リストを、前述した「干渉情報」として用いることができる。
ところで、前述したように、TPはTP個別干渉リストを受信電力報告に基づいて生成する。ここで、受信電力報告に含まれる他TP(CRM set中の他TP)には、後にTPとCoMP送信を行う協調TPを構成する可能性があるものが含まれている。前述したように、CoMP送信が行われる場合は、JTとDPSのいずれであっても、協調TPから干渉は受けない。そのため、TP個別干渉リストを干渉情報(あるTPの配下のUEが他TPから受ける干渉の度合いを示す情報)として用いるためには、協調TPとなりうるTPはTP個別干渉リストから除外しておいた方が都合が良いと考えられる。
以上の考えに基づき、TP個別干渉リストの生成手順を次のように修正することができる。前述した手順では、UE個別干渉リストを生成する際に、各受信電力報告において受信電力の差が接続セルと規定値以下である他TPを抽出していた。修正手順では、例えば、ここで抽出された他TPからCoMP measurement set(S505で決定)に含まれるTPを除外して、UE個別干渉リストを生成する。こうすることで、UE個別干渉リストから協調TPが除外され、ひいてはTP個別干渉リストから協調TPが除外されることになる。CoMP measurement setは協調TPのセットと同一ではないものの、協調TPはCoMP measurement setから選ばれるためである。これにより、干渉を発生させる可能性が高い他TP(協調TPにならない他TPのうちで受信電力が大きいもの)をTP個別干渉リスト(干渉情報)において示すことができるようになる。
ここで、TP個別干渉リストのその他の変形例(バリエーション)を述べる。上記で説明したTP個別干渉リストの生成においては、UE毎に作成したN個のUE個別干渉リストにおいて、他TP毎に登場回数をカウントすることで、TP個別干渉リストを生成している。しかしながら、UE毎に作成したN個のUE個別干渉リストにおいて、単純にOR取りをすることによって、TP個別干渉リストを生成してもよい。
また、上記で説明したTP個別干渉リストの生成における修正手順では、各受信電力報告において受信電力の差が接続セルと規定値以下である他TPを抽出し、ここで抽出された他TPからCoMP measurement setに含まれるTPを除外して、UE個別干渉リストを生成していた。しかしながら、抽出された他TPからCoMP measurement setに含まれるTPの全てを除外する代わりに、CoMP measurement setに含まれるTPのうちで受信電力が大きい方から規定個数だけを除外して、UE個別干渉リストを生成してもよい。
図7のS507では、例えば、TP1はS504でUE1から受信した受信電力報告に含まれるTP毎の受信電力に基づいて、干渉情報を生成する。またS506では、TP5はUE2およびUE3からそれぞれ受信した受信電力報告に含まれるTP毎の受信電力に基づいて、干渉情報を生成する。さらに、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。TP1が干渉情報を生成するのと同様に、これらTPはそれぞれ干渉情報を生成する。
次にS509で各TPは、S507で生成した干渉情報(例えばTP個別干渉リスト)を送受信する。各TPは干渉情報を他TPに送信するとともに、他TPから干渉情報を受信する。干渉情報の送受信は、例えばX2インターフェースや光ファイバー等を介して行うことができる。
本実施形態では、各TPによる干渉情報の送受信は、干渉情報の相互交換により実現することとする。干渉情報の送受信の態様には様々なものが考えられるが、どのような方法であってもかまわない。例えば、干渉情報はマルチキャストまたはブロードキャストにより送受信されてもよいし、TPからTPへとバケツリレー式に転送されてもかまわない。また、例えば干渉情報は送信先に応じてカスタマイズされて送信されることも可能である。
S509における干渉情報の送受信(交換)の範囲は、任意の規則に従うこととしてよい。例えば各TPは、自分が生成した干渉情報(TP個別干渉リスト)に含まれる他TPから、干渉情報を受信するようにしてもよい。あるいは、例えば各TPは、配下のUEそれぞれに対して決定したCRM setに1度以上登場する全てのTPから、干渉情報を受信するようにしてもよい。
図7のS509では、例えば、TP1〜TP5がS507で生成した干渉情報(例えばTP個別干渉リスト)を互いに送受信する。
次にS510で各TPは、S509で他TPから受信した干渉情報(例えばTP個別干渉リスト)に基づいて、CoMP送信方式を選択(決定)する。これは例えば以下のようにして行う。各TPは、S509で受信した全ての干渉情報(TP個別干渉リスト)に基づいて、当該TPが他TPに与える干渉の度合いを見積もる。この見積もりは例えば、受信した全てのTP個別干渉リストのうち、当該TP(自分)が登場する回数(リストアップされているTP個別干渉リストの個数)をカウントすることによって実現することができる。そして各TPは当該TPが他TPに与える干渉の度合いの大小を判定し、比較的小さい場合にはCoMP送信方式としてJTを選択し、比較的大きい場合にはCoMP送信方式としてDPSを選択する。この判定は、カウントした値が規定値以上であるか未満であるかを判定することで実現できる。
図7のS510では、例えば、TP1はS509でTP2〜TP5から受信した干渉情報(例えばTP個別干渉リスト)に基づいて、CoMP送信方式を選択(決定)する。図7では、一例として、TP1はDPSを選択したものとする。また、TP2とTP3はそれぞれDPSとJTを選択したものとする。なお、UE1のCoMP measurement setがTP1〜TP3という前提のために特に図示してはいないが、TP4とTP5もCoMP送信方式を選択することができるのは言うまでもない。
図7のS511で各UEは、S506で受信した情報で示されたCoMP measurement setに含まれる各TPに対し、それぞれ受信品質を測定する。受信品質の測定は、例えば各TPによる送信信号に含まれる下りの参照信号(本実施形態では上述したようにCRSに相当)を用いて行うことができる。
各UEは、CoMP measurement setに含まれる各TPに対し、S503で説明したようにCRSを受信する。そして各UEは、受信したCRSに基づいて、CoMP measurement setに含まれる各TPからの受信品質を求める。受信品質は、LTEで規定されている下り信号の受信品質を示す指標であるCQI(Channel Quality Indicator)を用いることができる。
ここで、LTEで規定されているCQIを簡単に説明する。CQIは、UEで測定されたDL無線信号の信号対干渉雑音比(SINR:Signal to Interference Noise Ratio)に基づいて、CQIに対応する送信フォーマットを適用したデータ信号を受信した場合にブロック誤り率(BLER:BLock Error Rate)が10%になるように算出される。CQIは、システム帯域幅あるいはサブバンド(システム帯域幅を分割したもの)毎に定義することができる。LTEでは、CQIは4ビットの制御情報であり、16種類の値を取りうる。本実施形態においてはCQIを、CoMP送信において協調するTPを選択(絞込み)するために用いる。LTEシステムにおいては、CQIはこの他にも、下りのスケジューリング(リソース割当て)や適応変調(AMC:Adaptive Modulation and Coding)等といった様々な用途に用いられる。
図7のS511では、例えばUE1は、S506で受信した情報で示されたCoMP measurement setに含まれるTP1〜TP3に対し、それぞれ受信品質を測定する。また、前述したように図示されていないが、他TPの配下にも1つ以上のUEが接続している。UE1がCoMP measurement setに含まれるTPに対してそれぞれ受信品質を測定するのと同様に、これらUEもそれぞれCoMP measurement setに含まれるTPに対してそれぞれ受信品質を測定する。
図7のS512で各UEは、S511で測定したTP毎の受信品質(CQI)を含む報告(以下では受信品質報告と呼ぶことがある)をTPに送信する。受信品質報告には、CoMP measurement setに含まれる各TPのCQIが、各TPの識別子(セルID等)と対応付けられて含まれる。受信品質報告は、例えば上りのRRCシグナリングや上り物理制御チャネル(PUCCH: Physical Uplink Control Channel)を用いて送信される。
図7のS512では、例えば、UE1はTP1に対して受信品質報告を送信する。また、前述したように図示されていないが、他TPの配下には1つ以上のUEが接続している。UE1がTP1に対して受信品質報告を送信するのと同様に、これらUEは接続TPに対してそれぞれ受信品質報告を送信する。
なお、図7においてS506は、S507〜S510よりも時系列的に前である要に記載されているが、その必要はないことに注意する。各TPは、S506を、S505の後で且つS512の前であれば、いつでも行うことができる。また、S511〜S512は、S507〜S510よりも時系列的に後であるように記載されているが、その必要はないことに注意する。例えば各TPは、S511〜S512を、S506の後で且つS513(後述)の前であれば、いつでも行うことができる。ただし、S511とS513と間のタイムラグが広がると、後述する協調スケジューリングが適切に行われない可能性があることには注意が必要である。
次にS513において各TPは、S512で受信した受信品質報告に基づいて、CoMP送信を踏まえたスケジューリングを行う。CoMPを行わない通常のスケジューリングでは、各TPが配下のUEに対して無線リソースの割当を行えばよいが、CoMPを行うためにはTP間で協調してスケジューリングを行う必要がある。そのため、CoMP送信を行うためのスケジューリングを協調スケジューリングと呼ぶことがある。
協調スケジューリングにおいては、各TPはいくつかの決定や処理を順に、または並列に、あるいは一括して行う。例えば各TPは、CoMP送信を行うか、行わないか(この場合はSTを行う)を決定する。また、各TPは、CoMPを行う場合に協調するTPの集合であるCoMP cooperation set(CoMP measurement setの全部または一部に相当する)を決定する。また、各TPは、S510で決定したCoMP送信方式がDPSである場合、CoMP cooperation setに含まれるTPから実際に送信を行うTPを決定する。各TPは、CoMPを行うか行わないかに関わらず、データをUEに送信するための無線リソース(周波数・時間)を決定する。また、JTやDPSを行う場合には、予めUE向けのデータをCoMP cooperation set内のTPで共有しておく必要がある。
協調スケジュールに関するこれらの決定や処理は、任意の手順や方法で行って良い。協調スケジューリングについては様々な手順や方法が考えられる為、ここでは一例を簡単に説明するに留めることとする。
例えばTPは、S512でUEから受信品質報告を得ることで、CoMP measurement setに含まれるTPそれぞれからの当該UEにおける受信品質(CQI)を得ることができる。またTPは例えば、S513において必要に応じて他TPから他TPの状況等(無線リソース使用量等)を得ることもできる。TPはこれらの情報に基づいて、当該UEがCoMP measurement set内の複数のTPの無線リソースを占有した場合のスループット(通信効率)と、各TPが非CoMP送信(ST)を行った場合の総スループットを見積もる。この見積もりはCoMP measurement set内のTPの組合せ毎に行うことができる。この見積もりにより、スループットを最適化するための送信方式として、CoMPの要否やCoMP cooperation setを決定することができる。また、DPSにおける送信ポイント(TP)も、この見積もりによって決定することができる。
図7の例では、TP1が配下のUE1に対し、TP2と協調してCoMP送信を行うと決定したとする。このとき、CoMP cooperation setはTP1とTP2とを含む集合となる。また、TP1とTP2とはいずれもCoMP送信方式としてDPSを選択しているので、送信ポイントの決定も行う。TP1とTP2は、送信ポイントをTP1と選択したとする。
最後にS514で各TPは、S513でスケジューリングの結果に基づいて、UEにデータを送信する。図7の例では、TP1とTP2とがUE1に対して協調してDPSによりデータを送信する。このときTP1はS513でUE1宛に割当てられた無線リソースを用いてUE1にデータを送信する。一方、TP2は同じ無線リソースに対して無線信号を送信しないBlankingを行う。これにより、協調送信であるDPSが実現される。
図7に基づいて説明した第3実施形態によれば、LTE無線通信システムを拡張した処理によって、S510で各TPは当該TPの送信に基づく干渉の度合い(大きさ)に基づいてCoMP送信方式を選択することができる。これにより、JTが相対的に有利な場面(干渉が比較的小さい場合)とDPSが相対的に有利な場面(干渉が比較的大きい場合)とでこれらを使い分けることが可能となる。したがって第3実施形態によれば、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
〔第4実施形態〕
第3実施形態においては、UEによって報告された受信電力に基づいて、TPが個別UE干渉情報を生成している(図7のS507)。これに対し、第4実施形態は、UEが受信電力に基づいて自ら個別UE干渉情報を生成し、当該個別UE干渉情報をTPに報告するものである。
第4実施形態は第3実施形態と多くの部分が共通する。そこで、ここでは第4実施形態において第3実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図8は、第4実施形態の無線通信システムが協調送信を行う際の処理シーケンスの一例を示す図である。図8のS601〜S606は、図7のS501〜S506にそれぞれ対応するため、ここでの説明は省略する。
図8のS607で各UEは、S603における受信電力の測定結果に基づいて、UE個別干渉情報を生成する。第3実施形態では各TPが受信電力報告に基づいてUE個別干渉情報を生成していたのに対し、第4実施形態では各UEが受信電力の測定結果に基づいてUE個別干渉情報を生成する。このUE個別干渉情報としては、例えば、第3実施形態で説明したUE個別干渉リストを用いることができる。また、UEは例えば、第3実施形態においてTPが生成したのと同様の手順により、UE個別干渉情報を生成することができる。具体的には、例えば、S603で測定した受信電力の差が接続TPと規定値以下であるような他TPを抽出したリスト(UE個別干渉リスト)を生成し、UE個別干渉情報とすることができる。なお、UE個別設定情報の生成に必要な規定値については、UEは予めTPから受信することとしてもよいし(例えばRRCシグナリングを用いる)、UEが自ら決めることとしてもよい。
また、第3実施形態と同様に、ここで抽出された他TPからCoMP measurement set(S606で受信)に含まれるTPを除外して、UE個別干渉リストを生成することもできる。こうすることで、UE個別干渉リストから協調TPが除外され、ひいてはTP個別干渉リストから協調TPが除外されることになる。CoMP measurement setは協調TPのセットと同一ではないものの、協調TPはCoMP measurement setから選ばれるためである。これにより、干渉を発生させる可能性が高い他TP(協調TPにならない他TPのうちで受信電力が大きいもの)をTP個別干渉リスト(干渉情報)において示すことができるようになる。
図8のS608で各UEは、S607で生成したUE個別干渉情報を、接続TPに送信する。UE個別干渉情報の送信は、例えば上りのRRCシグナリングを用いて送信される。
図8のS608では、例えば、UE1はTP1に対してUE個別干渉情報を送信する。またS608では、UE2およびUE3はTP5に対してそれぞれUE個別干渉情報を送信する。また、前述したように図示されていないが、TP2〜TP4の配下には1つ以上のUEが接続している。UE1がTP1に対してUE個別干渉情報を送信するのと同様に、これらUEは接続TPに対してそれぞれUE個別干渉情報を送信する。
図8のS609〜S615は、図7のS508〜S514にそれぞれ対応するため、ここでの説明は省略する。
図8に基づいて説明したように、第4実施形態によれば、第3実施形態と同様の効果が得られる。すなわち第4実施形態によれば、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
また、上述したように、受信電力を報告するTPの数はCRM setの最大サイズ(=8)に制約される。これに対し、UE個別干渉情報が対象とするTPは、この制約に縛られないですむ。これにより、第4実施形態によれば、UEが、第3実施形態よりも広範囲の他TPからの受信電力の報告が行える可能性がある。これにより、TPは、広範囲に与える干渉を考慮してCoMP送信方式を決定することも可能となる。
ここで、第4実施形態のUE個別干渉情報に関する変形例(バリエーション)を説明する。
UE個別干渉情報の情報量を少なく抑えるための変形例を説明する。例えばS607においてUEは、CoMP measurement set以外のTPで接続セルとの受信電力の差が既定値以内のTPが複数ある場合に、これらの中で受信電力が最小のTPの情報のみを含むような個別UE干渉情報を生成してもよい。この情報は、一般的には、当該UEに一定以上の干渉を与えている最も遠方のTPを表していると考えられる。S608でUEはUE個別干渉情報を接続TPに送信する。
これに対し、S609でTPは、UE個別干渉情報を集計して(例えばOR取りをして)、TP個別干渉情報を生成する。このリストは、当該TP配下のUEに一定以上の干渉を与えている遠方のTPのリストを表している。S610でTP個別干渉情報はTP間で送受信される。
S611でTPは、各TPから受信したTP個別干渉情報の解析結果に基づいて、CoMP送信方式を決定する。例えば、あるTP1において受信したTP nのリストの中に、TP1が含まれている場合、「TP1が干渉を与えている遠方のTPの中の1個はTP nである」と解釈することができる。また、TP1から見て、TP nとは異なる方角に位置するTP mのリストの中に、TP1が含まれている可能性があり、「TP1が干渉を与えている遠方のTPの中の別の1個はTP mである」と解釈することができる。
この例では、TP1では、例えば、干渉リストで自らが一定回数以上カウントされている場合に、自らが干渉を与えているTPの数が多い、つまり、自らがblankingする効果が大きいと判断することができる。または、自らが含まれていた干渉リストの送信元がTP1から一定以上離れている場合に(各TPの地理的位置を互いに知っている前提)、自らが干渉を与えている地理的領域が広い、つまり、自らがblankingする効果が大きいと判断することができる。
そして、実施例1と同様に、自らがblankingする効果が大きいと判断した場合に、CoMP送信方式としてDPSを選択することができる。
以上の変形例によれば、UE個別干渉情報の情報量を少なく抑えることができ、その結果、シグナリングに要する無線リソースの使用を抑えることが可能となる。
〔第5実施形態〕
第5実施形態は、第4実施形態の変形例であり、UEが受信電力に基づいて自ら個別UE干渉情報を生成し、当該個別UE干渉情報をTPに報告するものである。
第5実施形態は第4実施形態と多くの部分が共通する。そこで、ここでは第4実施形態において第3実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図9は、第5実施形態の無線通信システムが協調送信を行う際の処理シーケンスの一例を示す図である。図9のS701〜S705は、図8のS601〜S605にそれぞれ対応するため、ここでの説明は省略する。
図9のS706でUEは、UE個別干渉情報を生成する。図9のS706における処理は、図8のS607における処理と類似するが、一部が次のように異なるものとなる。
図9のS706の時点ではUEはCoMP measurement setを受信していない。そのため第5実施形態では、第4実施形態のS607について説明したように、UE個別干渉情報においてCoMP measurement setに含まれるTPを除外することはできない。そのため、第5実施形態で生成するUE個別干渉情報は、CoMP measurement set(ひいてはCoMP coordination set)を含むものとなる。図9のS707は、図8のS608と対応するので説明は省略する。
図9の708でTPは、TP個別干渉情報を生成する。このときTPは、TP個別干渉情報からCoMP measurement set(S705で決定)に含まれるTPを除外することができる。また、TPはこのとき、TP個別干渉情報からCoMP measurement setに含まれるTPを全て除外せず、受信電力が大きい方から規定個数のTPを除外するようにしてもよい。
図9のS709〜S715は、図8のS610〜S611、S606、S612〜S615にそれぞれ対応するため、ここでの説明は省略する。
図9に基づいて説明したように、第5実施形態によれば、第4実施形態と同様の効果が得られる。すなわち第5実施形態によれば、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
〔その他の実施形態〕
上記第3〜第5実施形態においては、TP毎に異なる物理セルID(セルID)が付与されているという前提の下、セルIDに基づいて生成される参照信号であるCRS(セル固有参照信号)を用いて各TPからの受信電力や受信品質を測定している。また、TP個別干渉情報等において、TPの識別子としてこのセルIDを用いている。しかしながら、LTE−Aにおいては複数のTPがセルIDを共有するシナリオ(CoMP deployment scenario 4)が知られている。このようなシナリオではCRSを用いて各TPからの受信電力や受信品質を測定できないとともに、TPの識別子としてセルIDを用いることもできないと考えられる。
そこで上記のようなシナリオに対応するため、LTEで新たに導入された参照信号であるCSI−RS(Channel State Information Reference Signal)に基づく、第3〜第5実施形態の変形例を説明する。
まず、CSI−RSについて説明する。CSI−RSはLTE Release 10で導入された品質測定用の参照信号である。CSI−RSは疑似ランダム系列を用いて生成されるが、疑似ランダム系列の初期値パラメータは式(1)で定義されているようにセルID (NIDcell)の関数となっている。そのため、CSI−RSはセル間で準直交するように設計されている。
このようにCSI−RSはセルIDに基づいて生成されるため、前述したような複数TPにおいてセルIDを共有するシナリオにおいては、このままでは利用が難しいと考えられる。そこでLTE Release 11において、セルIDを共有する複数TPを識別するために、CSI−RSの拡張が図られている。具体的には、各TPは、式(1)でセルIDの代わりにパラメータXを用いる。ここで、各TPにおいてパラメータXを異なる値とすることができる。そこで、第3〜第5実施形態において、このように拡張されたCSI−RSをCRSの代わりに用いることで、複数TPにおいてセルIDを共有するシナリオにおいても本願発明を実現することが可能となる。
以下では本変形例を第3実施形態に適用する場合を、第3実施形態の処理フローを示す図7に沿って具体的に説明する。先に述べたように、本変形例は第5実施形態についても同様にして適用することが可能である。
図7のS501で各TPはCRM setを決定し、S502で各TPはCRM setを各UEに送信する。第3実施形態ではCRM setにおける各TPの識別子は物理セルID(セルID)を用いたが、本変形例では前述したパラメータXを用いることができる。
図7のS503で各UEは、各TPからの参照信号の受信電力の測定を行う。第3実施形態では各TPから送信されたDL信号に含まれるCRSに基づいて受信電力を測定したが、本変形例ではCSI−RSに基づいて受信電力を測定する。UEが各TPからのCSI−RSを検出するためには、当該TPに対応するパラメータXが必要となる。UEはCRM setに含まれるパラメータXを用いて、各TPからのCSI−RSを検出し、当該CSI−RSに基づいて受信電力の測定を行う。
図7のS504以降においても、第3実施形態で各TPの識別子として物理セルID(セルID)を用いたが、本変形例では前述したパラメータXを用いることができる。また、S511で各UEは各TPからの参照信号の受信品質の測定を行うが、各UEはS503と同様にして(ただしCRM setではなくCoMP measurement set中のパラメータXを用いる)CSI−RSを検出し、当該CSI−RSに基づいて受信品質の測定を行う。
なお、上記の説明では各TPの識別子として、前述したパラメータXを用いたが、これ以外の識別子を用いてもよい。例えば、各TPの識別子としてアンテナポート番号を使用することができる。また、各TPの識別子として新たなインデックス等を定義して用いてもよい。
以上説明した本変形例によれば、複数TPにおいてセルIDを共有するシナリオにおいても本願発明を実現することが可能となる。これにより、複数TPにおいてセルIDを共有するシナリオにおいても、CoMPの実施による効果を十分に発揮することが可能となる。
〔各実施形態の無線通信システムのネットワーク構成〕
次に図10に基づいて、第1実施形態の無線通信システム1のネットワーク構成を説明する。図10に示すように、無線通信システム1は、基地局10と、無線端末20とを有する。基地局10は、セルC10を形成している。無線端末20はセルC10に存在している。なお、本願においては基地局10を「送信局」、無線端末20を「受信局」と称することがあることに注意されたい。
基地局10は、有線接続を介してネットワーク装置3と接続されており、ネットワーク装置3は、有線接続を介してネットワーク2に接続されている。基地局10は、ネットワーク装置3およびネットワーク2を介して、他の基地局とデータや制御情報を送受信可能に設けられている。
基地局10は、無線端末20との無線通信機能とデジタル信号処理及び制御機能とを分離して別装置としてもよい。この場合、無線通信機能を備える装置をRRH(Remote Radio Head)、デジタル信号処理及び制御機能を備える装置をBBU(Base Band Unit)と呼ぶ。RRHはBBUから張り出されて設置され、それらの間は光ファイバなどで有線接続されてもよい。また、基地局10は、マクロ基地局、ピコ基地局等の小型基地局(マイクロ基地局、フェムト基地局等を含む)の他、様々な規模の基地局であってよい。また、基地局10と無線端末20との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(無線端末20との送受信及びその制御)も本願の基地局10に含まれることとしてもよい。
一方、無線端末20は、無線通信で基地局10と通信を行う。
無線端末20は、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータ(Personal Computer)、無線通信機能を有する各種装置や機器(センサー装置等)などの端末であってよい。また、基地局10と端末との無線通信を中継する中継局が使用される場合、当該中継局(基地局10との送受信及びその制御)も本稿の無線端末20に含まれることとしてもよい。
ネットワーク装置3は、例えば通信部と制御部とを備え、これら各構成部分が、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。ネットワーク装置3は、例えばゲートウェイにより実現される。ネットワーク装置3のハードウェア構成としては、例えば通信部はインタフェース回路、制御部はプロセッサとメモリとで実現される。
なお、基地局、無線端末の各構成要素の分散・統合の具体的態様は、第1実施形態の態様に限定されず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することもできる。例えば、メモリを、基地局、無線端末の外部装置としてネットワークやケーブル経由で接続するようにしてもよい。
次に、図11〜図12に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置の機能構成を説明する。
図11は、基地局10の構成を示す機能ブロック図である。図11に示すように、基地局10は、送信部11と、受信部12と、制御部13とを備える。これら各構成部分は、一方向または双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
送信部11は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部11は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を送信する。下りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続状態の無線端末20に個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20に個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。送信部11が送信する信号の具体例としては、図4、6〜9で各TPから送信されている各信号が挙げられる。
受信部12は、無線端末20から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して第1無線通信で受信する。受信部12は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を受信する。上りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続状態の無線端末20から個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続状態の無線端末20から個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。受信部12が受信する信号の具体例としては、図4、6〜9で各TPが受信している各信号が挙げられる。
制御部13は、送信するデータや制御情報を送信部11に出力する。制御部13は、受信されるデータや制御情報を受信部12から入力する。制御部13は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の基地局からデータや制御情報を取得する。
制御部はこれら以外にも送信部11が送信する各種の送信信号や受信部12が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。制御部13が行う制御の具体例としては、図4、6〜9で各TPが行う処理に関する制御が挙げられる。
図12は、無線端末20の構成を示す機能ブロック図である。図12に示すように、無線端末20は、送信部21、受信部22と、制御部23とを備える。これら各構成部分は、一方向又は双方向に、信号やデータの入出力が可能なように接続されている。
送信部21は、データ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で送信する。なお、アンテナは送信と受信で共通でもよい。送信部21は、例えば上りのデータチャネルや制御チャネルを介して、上り信号を送信する。上りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を含む。また、上りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPUCCH(Physical Uplink Control Channel)を含む。送信する信号は例えば、接続する基地局10に個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続する基地局10に個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、送信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。送信部21が送信する信号の具体例としては、図4、6〜9で各UEから送信されている各信号が挙げられる。
受信部22は、基地局10から送信されたデータ信号や制御信号を、アンテナを介して無線通信で受信する。受信部22は、例えば下りのデータチャネルや制御チャネルを介して、下り信号を受信する。下りの物理データチャネルは例えば、個別データチャネルPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)を含む。また、下りの物理制御チャネルは例えば、個別制御チャネルPDCCH(Physical Downlink Control Channel)を含む。受信する信号は例えば、接続する基地局10から個別制御チャネル上で伝送されるL1/L2制御信号や、接続する基地局10から個別データチャネル上で伝送されるユーザデータ信号やRRC(Radio Resource Control)制御信号を含む。また、受信する信号は例えば、チャネル推定や復調のために用いられるリファレンス信号を含む。受信部22が受信する信号の具体例としては、図4、6〜9で各UEが受信している各信号が挙げられる。
制御部23は、送信するデータや制御情報を送信部21に出力する。制御部23は、受信されるデータや制御情報を受信部22から入力する。制御部23は、有線接続あるいは無線接続を介して、ネットワーク装置3や他の基地局からデータや制御情報を取得する。
制御部はこれら以外にも送信部21が送信する各種の送信信号や受信部22が受信する各種の受信信号に関連する種々の制御を行う。制御部23が行う制御の具体例としては、図4、6〜9で各UEが行う処理に関する制御が挙げられる。
最後に、図13〜図14に基づいて、各実施形態の無線通信システムにおける各装置のハードウェア構成を説明する。
図13は、基地局10のハードウェア構成を示す図である。図13に示すように、基地局10は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ31を備えるRF(Radio Frequency)回路32と、CPU(Central Processing Unit)33と、DSP(Digital Signal Processor)34と、メモリ35と、ネットワークIF(Interface)36とを有する。CPUは、スイッチ等のネットワークIF36を介して各種信号やデータの入出力が可能なように接続されている。メモリ35は、例えばSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)等のRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。送信部11及び受信部12は、例えばRF回路32、あるいはアンテナ31およびRF回路32により実現される。制御部13は、例えばCPU33、DSP34、メモリ35、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programming Gate Array)、LSI(Large Scale Integration)等が挙げられる。
図14は、無線端末20のハードウェア構成を示す図である。図14に示すように、無線端末20は、ハードウェアの構成要素として、例えばアンテナ41を備えるRF回路42と、CPU43と、メモリ44とを有する。さらに、無線端末20は、CPU43に接続されるLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置を有してもよい。メモリ44は、例えばSDRAM等のRAM、ROM、及びフラッシュメモリの少なくともいずれかを含み、プログラムや制御情報やデータを格納する。送信部21及び受信部22は、例えばRF回路42、あるいはアンテナ41およびRF回路42により実現される。制御部23は、例えばCPU43、メモリ44、不図示のデジタル電子回路等により実現される。デジタル電子回路としては例えば、例えばASIC、FPGA、LSI等が挙げられる。