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JP6372512B2 - 粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末、焼結体および耐熱部品 - Google Patents

粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末、焼結体および耐熱部品 Download PDF

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Description

本発明は、粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末、焼結体および耐熱部品に関するものである。
粉末冶金法では、金属粉末とバインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形して成形体を得た後、成形体を脱脂・焼結することにより、焼結体を製造する。このような焼結体の製造過程では、金属粉末の粒子同士の間で原子の拡散現象が生じ、これにより成形体が徐々に緻密化することによって焼結に至る。
例えば、特許文献1には、15〜30原子%の希土類金属を含み、残部が遷移金属からなる合金粉末が焼結されてなる光磁気記録媒体用ターゲットが提案されている。そして、このターゲットは、耐食性を改善する元素として、Ti、V、Nb、Ta等を15原子%以下で添加することが開示されている。これにより、特許文献1に記載の発明では、ターゲットの機械的強度の向上が図られている。
一方、特許文献2には、ZrおよびSiを含み、残部がFe、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種と不可避元素とで構成された粉末冶金用金属粉末が提案されている。このような粉末冶金用金属粉末によれば、焼結性の向上が図られることにより、高密度の焼結体を容易に製造することができる。かかる焼結体は、近年、各種機械部品や構造部品等に幅広く用いられるようになってきている。
ところが、焼結体の用途によっては、さらなる緻密化が必要とされている場合もある。このような場合、焼結体に対してさらに熱間等方加圧処理(HIP処理)のような追加処理を行うことで高密度化を図っているが、作業工数が大幅に増加するとともに高コスト化を免れない。
そこで、追加処理等を施すことなく、高密度の焼結体を製造可能な金属粉末の実現に期待が高まっている。
特開平8−302463号公報 特開2012−87416号公報
本発明の目的は、高密度の焼結体を製造可能な粉末冶金用金属粉末、コンパウンドおよび造粒粉末、ならびに高密度の焼結体および耐熱部品を提供することにある。
上記目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、Coが主成分であり、
Crが10質量%以上25質量%以下の割合で含まれ、
Niが5質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、
MoおよびWの少なくとも一方が合計で2質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.3質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.05質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、
Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、Coが主成分であり、
Crが15質量%以上24質量%以下の割合で含まれ、
Niが7質量%以上32質量%以下の割合で含まれ、
MoおよびWの少なくとも一方が合計で5質量%以上18質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.4質量%以上1.2質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.2質量%以上0.6質量%以下の割合で含まれ、
Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、Coが主成分であり、
Crが18質量%以上23質量%以下の割合で含まれ、
Niが9質量%以上36質量%以下の割合で含まれ、
MoおよびWの少なくとも一方が合計で7質量%以上16質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.5質量%以上1質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.3質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
これにより、合金組成の最適化が図られ、粉末冶金用金属粉末の焼結時の緻密化を促進することができる。その結果、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体を製造可能な粉末冶金用金属粉末が得られる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Feが0.5質量%以上5質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Feが0.8質量%以上3質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、さらに、Feが1質量%以上2.5質量%以下の割合で含まれていることが好ましい。
これにより、製造される焼結体の機械的特性をより高めることができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率を前記第1元素の原子量で除した値をX1とし、前記第2元素の含有率を前記第2元素の原子量で除した値をX2としたとき、X1/X2は、0.3以上3以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率を前記第1元素の原子量で除した値をX1とし、前記第2元素の含有率を前記第2元素の原子量で除した値をX2としたとき、X1/X2は、0.5以上2以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率を前記第1元素の原子量で除した値をX1とし、前記第2元素の含有率を前記第2元素の原子量で除した値をX2としたとき、X1/X2は、0.75以上1.3以下であることが好ましい。
これにより、粉末冶金用金属粉末が焼成されたとき、第1元素の炭化物等の析出と第2元素の炭化物等の析出のタイミングのずれを最適化することができる。その結果、成形体中に残存する空孔を内側から順次掃き出すようにして排出することができるので、焼結体中に生じる空孔を最小限に抑えることができる。したがって、高密度で焼結体特性に優れた焼結体を製造可能な粉末冶金用金属粉末が得られる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.05質量%以上0.6質量%以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.10質量%以上0.48質量%以下であることが好ましい。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.12質量%以上0.24質量%以下であることが好ましい。
これにより、製造される焼結体の高密度化が必要かつ十分なものとなる。
本発明の粉末冶金用金属粉末では、平均粒径が0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。
これにより、焼結体中に残存する空孔が極めて少なくなるため、特に高密度で機械的特性に優れた焼結体を製造することができる。
本発明のコンパウンドは、本発明の粉末冶金用金属粉末を含むことを特徴とする。
これにより、高密度の焼結体を製造可能なコンパウンドが得られる。
本発明の造粒粉末は、本発明の粉末冶金用金属粉末を含むことを特徴とする。
これにより、高密度の焼結体を製造可能な造粒粉末が得られる。
本発明の焼結体は、Coが主成分であり、
Crが10質量%以上25質量%以下の割合で含まれ、
Niが5質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、
MoおよびWの少なくとも一方が合計で2質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
Siが0.3質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
Cが0.05質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、
Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
これにより、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体が得られる。
本発明の耐熱部品は、本発明の焼結体を含むことを特徴とする。
これにより、追加処理を施すことなく、高密度で耐熱性に優れた耐熱部品が得られる。
本発明の耐熱部品の第1実施形態を適用したターボチャージャー用ノズルベーンを示す側面図(翼部を平面視したときの図)である。 図1に示すノズルベーンの平面図である。 図1に示すノズルベーンの背面図である。 本発明の耐熱部品の第2実施形態を適用した圧縮機翼を示す斜視図である。
以下、本発明の粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末、焼結体および耐熱部品について詳細に説明する。
[粉末冶金用金属粉末]
まず、本発明の粉末冶金用金属粉末について説明する。
粉末冶金では、粉末冶金用金属粉末とバインダーとを含む組成物を、所望の形状に成形した後、脱脂・焼結することにより、所望の形状の焼結体を得ることができる。このような粉末冶金技術によれば、その他の冶金技術に比べ、複雑で微細な形状の焼結体をニアネット(最終形状に近い形状)で製造することができるという利点を有する。
粉末冶金に用いられる粉末冶金用金属粉末としては、従来、その組成を適宜変えることにより、製造される焼結体の高密度化を図る試みがなされてきた。しかしながら、焼結体には空孔が形成され易いため、溶製材と同等の機械的特性を得るには、焼結体においてさらなる高密度化を図る必要があった。
そこで、従来では、得られた焼結体に対し、さらに熱間等方加圧処理(HIP処理)等の追加処理を施すことにより、高密度化を図ることもあった。しかしながら、このような追加処理は、多くの手間やコストを伴うため、焼結体の用途を広げる際の足かせとなる。
上記のような問題に鑑み、本発明者は、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体を得るための条件について鋭意検討を重ねた。その結果、金属粉末を構成する合金の組成を最適化することにより、焼結体の高密度化が図られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明の粉末冶金用金属粉末は、Coが主成分であり、Crが10質量%以上25質量%以下の割合で含まれ、Niが5質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、MoおよびWの少なくとも一方が合計で2質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、Siが0.3質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、Cが0.05質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、後述する第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、後述する第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。このような金属粉末によれば、合金組成の最適化が図られた結果、焼結時の緻密化を特に高めることができる。その結果、追加処理を施すことなく、高密度の焼結体を製造することができる。
そして、焼結体の高密度化が図られることで、機械的特性に優れた焼結体が得られることになる。このような焼結体は、例えば機械部品や構造部品といった外力(荷重)が加わる用途にも幅広く適用可能なものとなる。
なお、第1元素とは、Ti、V、Y、Zr、Nb、HfおよびTaの7元素からなる群から選択される1種の元素である。また、第2元素とは、前記7元素からなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が第1元素よりも大きい元素、または、前記7元素からなる群から選択される1種の元素であるとともに元素周期表における族が第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が第1元素より大きい元素である。
以下、本発明の粉末冶金用金属粉末の合金組成についてさらに詳述する。なお、以下の説明では、粉末冶金用金属粉末を単に「金属粉末」ということもある。
(Cr)
Cr(クロム)は、製造される焼結体に耐食性および耐酸化性を付与する元素であり、Crを含む金属粉末を用いることで、長期にわたって高い機械的特性を維持し得る焼結体が得られる。このため、例えば高温に曝されたとしてもその機能を維持し得る構造部品を実現することができる。
金属粉末におけるCrの含有率は、10質量%以上25質量%以下とされるが、好ましくは15質量%以上24質量%以下とされ、より好ましくは18質量%以上23質量%以下とされる。Crの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐食性が不十分になり、耐熱性が低下する。一方、Crの含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、焼結性が低下し、焼結体の高密度化が困難になる。これにより、製造される焼結体の耐食性(耐熱性)を高めることが困難になる。
(Ni)
Ni(ニッケル)は、Crとともに添加されることにより、焼結体の表面に形成されるクロム酸化物層の孔食や腐食の進展速度が引き下げられ、焼結体の高温下での強度(耐熱性)を高める。また、オーステナイト化が図られることにより、高温下においても焼結体中の結晶相の安定化が図られるため、かかる観点からも焼結体の耐熱性を図ることができる。
金属粉末におけるNiの含有率は、5質量%以上40質量%以下とされるが、好ましくは7質量%以上37質量%以下とされ、より好ましくは9質量%以上36質量%以下とされる。Niの含有率が前記下限値を下回ると、耐食性や耐熱性が低下する。一方、Niの含有率が前記上限値を上回ると、相対的にCrやCoの含有量が低下するため、耐食性や耐熱性が低下する。
(MoおよびW)
Mo(モリブデン)およびW(タングステン)は、それぞれ製造される焼結体の耐熱性を強化する。MoおよびWは、それぞれCと結合して炭化物を形成するが、この炭化物が高温強度を高めると考えられる。また、Crと組み合わせて用いられることにより、高温下においても焼結体の機械的強度や硬度を高めることができる。したがって、焼結体の耐熱性を高めることができる。
金属粉末は、MoおよびWの少なくとも一方を含む。そして、金属粉末におけるMoおよびWの含有率は、MoおよびWの合計で2質量%以上20質量%以下とされるが、好ましくは5質量%以上18質量%以下とされ、より好ましくは7質量%以上16質量%以下とされる。MoおよびWの合計の含有率が前記下限値を下回ると、焼結体の耐熱性を十分に高めることができないおそれがある。一方、MoおよびWの合計の含有率が前記上限値を上回ると、金属間化合物が多く形成されて焼結体が脆化するおそれがある。
なお、金属粉末がMoとWの双方を含む場合、MoとWの比率は、特に限定されないものの、質量比で10:90以上90:10以下であるのが好ましく、20:80以上80:20以下であるのがより好ましい。
(Si)
Si(ケイ素)は、製造される焼結体の耐食性および機械的特性を高めるように作用する。Siの添加によって合金中では、Co等の金属元素の酸化物が還元される一方、Siの一部が酸化した酸化ケイ素が生成される。酸化ケイ素としては、SiO、SiO等が挙げられる。このような酸化ケイ素は、金属粉末の焼結時において金属結晶が成長する際に、金属結晶が著しく肥大化するのを抑制する。このため、Siが添加された合金では、金属結晶の粒径が小さく抑えられることとなり、焼結体の耐食性および機械的特性をより高めることができる。特に、Si原子が置換型元素としてCo原子を置換することにより、結晶構造がやや歪み、ヤング率が高くなる。したがって、Siを添加することにより、優れた機械的特性、特に優れたヤング率を得ることができる。その結果、より高い耐変形性を高温下でも有する焼結体が得られる。
金属粉末におけるSiの含有率は、0.3質量%以上1.5質量%以下とされるが、0.4質量%以上1.2質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上1質量%以下であるのがより好ましい。Siの含有率が前記下限値を下回ると、焼成条件によっては、酸化ケイ素の量が少なくなり過ぎるため、金属粉末の焼結時において金属結晶が肥大し易くなるおそれがある。一方、Siの含有率が前記上限値を上回ると、焼成条件によっては、酸化ケイ素の量が多くなり過ぎるため、酸化ケイ素が空間的に連続して分布する領域が生じ易くなる。この領域では、機械的特性が低下する可能性が高くなる。
(C)
C(炭素)は、後述する第1元素や第2元素と併用されることで、焼結性を特に高め、高密度化を図ることができる。具体的には、第1元素や第2元素は、それぞれがCと結合することにより、炭化物を生成する。この炭化物が分散して析出することにより、結晶粒の著しい成長を防止する効果が生じる。このような効果が得られる明確な理由は不明であるが、理由の1つとして、分散した析出物が障害となって結晶粒の著しい成長を阻害するため、結晶粒のサイズのバラツキが抑えられることが考えられる。これにより、焼結体中に空孔が生じ難くなるとともに、結晶粒の肥大化が防止されるため、高密度でかつ機械的特性の高い焼結体が得られる。
金属粉末におけるCの含有率は、0.05質量%以上0.8質量%以下とされるが、好ましくは0.2質量%以上0.6質量%以下とされ、より好ましくは0.3質量%以上0.5質量%以下とされる。Cの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、結晶粒が成長し易くなり、焼結体の機械的特性が不十分になる。一方、Cの含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、Cが多くなり過ぎるため、かえって焼結性が低下する。
(第1元素および第2元素)
第1元素および第2元素は、炭化物や酸化物(以下、まとめて「炭化物等」ともいう。)を析出させる。そして、この析出した炭化物等は、金属粉末が焼結するとき、結晶粒の著しい成長を阻害すると考えられる。その結果、前述したように、焼結体中に空孔が生じ難くなるとともに、結晶粒の肥大化が防止され、高密度でかつ機械的特性の高い焼結体が得られる。
加えて、詳しくは後述するが、析出した炭化物等が結晶粒界において酸化ケイ素の集積を促進し、その結果、結晶粒の肥大化を抑えつつ、焼結の促進と高密度化とが図られる。
ところで、第1元素および第2元素は、Ti、V、Y、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される2種の元素であるが、長周期型元素周期表の3A族または4A族に属する元素(Ti、Y、Zr、Hf)を含むことが好ましい。第1元素および第2元素の少なくとも一方として3A族または4A族に属する元素を含むことにより、焼結中において、金属粉末中に酸化物として含まれている酸素が除去され、金属粉末の焼結性を特に高めることができる。
また、第1元素は、前述したように、Ti、V、Y、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であればよいが、好ましくは前記群のうち、長周期型元素周期表の3A族または4A族に属する元素とされる。前記群のうちの3A族または4A族に属する元素は、金属粉末中に酸化物として含まれている酸素を除去し、金属粉末の焼結性を特に高めることができる。これにより、焼結後に結晶粒内に残存する酸素濃度の低減を図ることができる。その結果、焼結体の酸素含有率の低減を図り、高密度化を図ることができる。また、これらの元素は、活性が高い元素であるため、速やかな原子拡散をもたらすと考えられる。このため、この原子拡散が駆動力となって金属粉末の粒子間距離が効率よく縮まり、粒子間にネックを形成することによって成形体の緻密化が促進される。その結果、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
一方、第2元素は、前述したように、Ti、V、Y、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって、かつ、第1元素とは異なる元素であればよいが、好ましくは前記群のうち、長周期型元素周期表の5A族に属する元素とされる。前記群のうち5A族に属する元素は、特に、前述した炭化物等を効率よく析出させるため、焼結時の結晶粒の著しい成長を効率よく阻害することができる。その結果、微細な結晶粒の生成を促進させ、焼結体の高密度化と機械的特性の向上とを図ることができる。
なお、上述したような元素からなる第1元素と第2元素との組み合わせでは、それぞれの効果が互いに阻害し合うことなく発揮される。このため、このような第1元素および第2元素を含む金属粉末は、とりわけ高密度な焼結体を製造可能なものとなる。
また、より好ましくは、第1元素が4A族に属する元素であり、第2元素がNbである組み合わせが採用される。
また、さらに好ましくは、第1元素がZrまたはHfであり、第2元素がNbである組み合わせが採用される。
このような組み合わせが採用されることにより、上述した効果がより顕著になる。
また、これらの元素のうち、Zrはフェライト生成元素であるため、体心立方格子相を析出させる。この体心立方格子相は、他の結晶格子相に比べて焼結性に優れているため、焼結体の高密度化に寄与する。
金属粉末における第1元素の含有率は、0.01質量%以上0.5質量%以下とされるが、好ましくは0.03質量%以上0.2質量%以下とされ、より好ましくは0.05質量%以上0.1質量%以下とされる。第1元素の含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、第1元素を添加する効果が希薄になるため、製造される焼結体の高密度化が不十分になる。一方、第1元素の含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、第1元素が多くなり過ぎるため、前述した炭化物等の比率が多くなり過ぎて、かえって高密度化が損なわれる。
金属粉末における第2元素の含有率は、0.01質量%以上0.5質量%以下とされるが、好ましくは0.03質量%以上0.2質量%以下とされ、より好ましくは0.05質量%以上0.1質量%以下とされる。第2元素の含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、第2元素を添加する効果が希薄になるため、製造される焼結体の高密度化が不十分になる。一方、第2元素の含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、第2元素が多くなり過ぎるため、前述した炭化物等の比率が多くなり過ぎて、かえって高密度化が損なわれる。
なお、前述したように、第1元素および第2元素は、それぞれ炭化物等を析出させるが、第1元素として前述したように3A族または4A族に属する元素を選択し、第2元素として前述したように5A族に属する元素を選択した場合、金属粉末を焼結する際に、第1元素の炭化物等が析出するタイミングと第2元素の炭化物等が析出するタイミングとが互いにずれると推測される。このように炭化物等が析出するタイミングがずれることにより、焼結が徐々に進行することになるため、空孔の生成が抑えられ、緻密な焼結体が得られるものと考えられる。すなわち、第1元素の炭化物等と第2元素の炭化物等の双方が存在していることにより、高密度化を図りつつ、結晶粒の肥大化を抑制することが可能になると考えられる。
また、第1元素の含有率と第2元素の含有率の比率は、第1元素として選択された元素の原子量および第2元素として選択された元素の原子量を考慮して設定されるのが好ましい。
具体的には、第1元素をE1とし、第2元素をE2としたとき、第1元素E1の含有率(質量%)を第1元素の原子量で除した値を指数X1とし、第2元素E2の含有率(質量%)を第2元素の原子量で除した値を指数X2としたとき、指数X2に対する指数X1の比率X1/X2は0.3以上3以下であるのが好ましく、0.5以上2以下であるのがより好ましく、0.75以上1.3以下であるのがさらに好ましい。X1/X2を前記範囲内に設定することにより、金属粉末が焼成されたとき、第1元素の炭化物等の析出のタイミングと第2元素の炭化物等の析出のタイミングとのずれを最適化することができる。これにより、成形体中に残存する空孔を内側から順次掃き出すようにして排出することができるので、焼結体中に生じる空孔を最小限に抑えることができる。したがって、X1/X2を前記範囲内に設定することで、高密度で機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。また、第1元素の原子数と第2元素の原子数とのバランスが最適化されるため、第1元素によってもたらされる効果と第2元素によってもたらされる効果とが相乗的に発揮され、とりわけ高密度の焼結体を得ることができる。
ここで、第1元素および第2元素の具体的な組み合わせの例について、上述した比率X1/X2の範囲に基づき、第2元素E2の含有率(質量%)に対する第1元素E1の含有率(質量%)の比率E1/E2についても算出する。
例えば、第1元素E1がZrであり、第2元素E2がNbである場合、Zrの原子量が91.2であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.29以上2.95以下であるのが好ましく、0.49以上1.96以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がHfであり、第2元素E2がNbである場合、Hfの原子量が178.5であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.58以上5.76以下であるのが好ましく、0.96以上3.84以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がTiであり、第2元素E2がNbである場合、Tiの原子量が47.9であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.15以上1.55以下であるのが好ましく、0.26以上1.03以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がNbであり、第2元素E2がTaである場合、Nbの原子量が92.9であり、Taの原子量が180.9であることから、E1/E2は0.15以上1.54以下であるのが好ましく、0.26以上1.03以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がYであり、第2元素E2がNbである場合、Yの原子量が88.9であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.29以上2.87以下であるのが好ましく、0.48以上1.91以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がVであり、第2元素E2がNbである場合、Vの原子量が50.9であり、Nbの原子量が92.9であることから、E1/E2は0.16以上1.64以下であるのが好ましく、0.27以上1.10以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がTiであり、第2元素E2がZrである場合、Tiの原子量が47.9であり、Zrの原子量が91.2であることから、E1/E2は0.16以上1.58以下であるのが好ましく、0.26以上1.05以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がZrであり、第2元素E2がTaである場合、Zrの原子量が91.2であり、Taの原子量が180.9であることから、E1/E2は0.15以上1.51以下であるのが好ましく、0.25以上1.01以下であるのがより好ましい。
また、第1元素E1がZrであり、第2元素E2がVである場合、Zrの原子量が91.2であり、Vの原子量が50.9であることから、E1/E2は0.54以上5.38以下であるのが好ましく、0.90以上3.58以下であるのがより好ましい。
なお、上述する組み合わせ以外についても、上記と同様にしてE1/E2を算出することができる。
また、第1元素E1の含有率と第2元素E2の含有率の合計をE1+E2としたとき、E1+E2は0.05質量%以上0.6質量%以下であるのが好ましく、0.10質量%以上0.48質量%以下であるのがより好ましく、0.12質量%以上0.24質量%以下であるのがさらに好ましい。第1元素の含有率と第2元素の含有率の合計を前記範囲内に設定することで、金属粉末が焼成される際に第1元素または第2元素が十分に作用するための量が確保されるので、製造される焼結体の高密度化が必要かつ十分なものとなる。
また、Siの含有率に対する第1元素E1の含有率と第2元素E2の含有率の合計の比率を(E1+E2)/Siとしたとき、(E1+E2)/Siは0.03以上2以下であるのが好ましく、0.05以上1以下であるのがより好ましく、0.1以上0.5以下であるのがさらに好ましい。(E1+E2)/Siを前記範囲内に設定することで、Siを添加した場合の靭性の低下等が、第1元素および第2元素の添加によって十分に補われる。その結果、高密度であるにもかかわらず、靭性といった機械的特性に優れ、かつ、Siに由来する耐食性にも優れた焼結体が得られる。
加えて、第1元素および第2元素が適量添加されることにより、焼結体中の結晶粒界において、第1元素の炭化物等および第2元素の炭化物等が「核」となり、酸化ケイ素の集積が起こると考えられる。酸化ケイ素が結晶粒界に集積することにより、結晶粒内の酸化物濃度が低下するため、焼結の促進が図られる。その結果、焼結体の高密度化がさらに促進されるものと考えられる。
さらには、析出した酸化ケイ素は、集積する過程において結晶粒界の三重点に移動し易いので、この点での結晶成長が抑制される(ピン留め効果)。その結果、結晶粒の著しい成長が抑制され、より微細な結晶を有する焼結体が得られる。このような焼結体は、機械的特性が特に高いものとなる。
さらには、Cの含有率に対する第1元素E1の含有率と第2元素E2の含有率の合計の比率を(E1+E2)/Cとしたとき、(E1+E2)/Cは0.05以上3以下であるのが好ましく、0.1以上2以下であるのがより好ましく、0.2以上1以下であるのがさらに好ましい。(E1+E2)/Cを前記範囲内に設定することで、Cを添加した場合の硬度の上昇および靭性の低下と、第1元素および第2元素の添加によってもたらされる高密度化とを両立させることができる。その結果、引張強さや靭性といった機械的特性に優れた焼結体が得られる。
なお、金属粉末には、Ti、V、Y、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される2種の元素が含まれていればよいが、この群から選択される元素であって、この2種の元素とは異なる元素がさらに含まれていてもよい。すなわち、金属粉末には、前記群から選択される3種以上の元素が含まれていてもよい。これにより、組み合わせ方によって多少異なるものの、前述した効果をさらに増強することができる。
(その他の元素)
本発明の粉末冶金用金属粉末は、上述した元素の他、必要に応じて、さらにFe、B、MnおよびSのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。なお、これらの元素は、不可避的に含まれていてもよい。
Fe(鉄)は、製造される焼結体に高い機械的特性を付与する。
金属粉末におけるFeの含有率は、特に限定されないが、0.5質量%以上5質量%以下であるのが好ましく、0.8質量%以上3質量%以下であるのがより好ましく、1質量%以上2.5質量%以下であるのがさらに好ましい。金属粉末におけるFeの含有率を前記範囲内に設定することにより、製造される焼結体の機械的特性をより高めることができる。
なお、Feの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、焼結体の機械的特性を十分に高めることができないおそれがある。一方、Feの含有率が前記上限値を上回ると、全体の組成によっては、焼結体の耐食性や耐酸化性が低下するおそれがある。
B(ホウ素)は、結晶粒界を強化して焼結体の高温強度および延性を向上させる。
金属粉末におけるBの含有率は、特に限定されないが、0.002質量%以上0.1質量%以下であるのが好ましく、0.004質量%以上0.05質量%以下であるのがより好ましく、0.006質量%以上0.02質量%以下であるのがさらに好ましい。Bの含有率を前記範囲内に設定することで、耐熱性および伸びに優れた焼結体が得られる。
なお、Bの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐熱性が低下したり脆性が増したりするおそれがある。一方、Bの含有率が前記上限値を上回ると、かえって耐熱性や延性が低下するおそれがある。
Mn(マンガン)は、Siと同様、製造される焼結体に耐食性および高い機械的特性を付与する。
金属粉末におけるMnの含有率は、特に限定されないが、0.005質量%以上0.3質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上0.1質量%以下であるのがより好ましい。Mnの含有率を前記範囲内に設定することで、高密度で機械的特性に優れた焼結体が得られる。また、高温時(赤熱時)の脆性の増大を抑制することができる。
なお、Mnの含有率が前記下限値を下回ると、全体の組成によっては、製造される焼結体の耐食性や機械的特性を十分に高められないおそれがあり、一方、Mnの含有率が前記上限値を上回ると、かえって耐食性や機械的特性が低下するおそれがある。
S(硫黄)は、製造される焼結体の被削性を高める。
金属粉末におけるSの含有率は、特に限定されないが、0.5質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上0.3質量%以下であるのがより好ましい。Sの含有率を前記範囲内に設定することで、製造される焼結体の密度の大幅な低下を招くことなく、製造される焼結体の被削性をより高めることができる。
この他、本発明の粉末冶金用金属粉末には、N、Al、P、Se、Te、Pd等が添加されていてもよい。その場合、これらの元素の含有率は、特に限定されないが、それぞれ0.05質量%以下であるのが好ましく、合計でも0.2質量%未満であるのが好ましい。なお、これらの元素は、不可避的に含まれていてもよい。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末には、不純物が含まれていてもよい。不純物としては、上述した元素以外の全ての元素が挙げられ、具体的には、例えば、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Sc、Zn、Ga、Ge、Ag、In、Sn、Sb、Os、Ir、Pt、Au、Bi等が挙げられる。これらの不純物の混入量は、各々の元素が前述した必須元素の各含有量よりも少なくなるように制御されているのが好ましい。また、これらの不純物の混入量は、各々の元素が0.03質量%未満となるように設定されるのが好ましく、0.02質量%未満となるように設定されるのがより好ましい。また、合計でも0.3質量%未満とされるのが好ましく、0.2質量%未満とされるのがより好ましい。なお、これらの元素は、その含有率が前記範囲内であれば、前述したような効果が阻害されないので、意図的に添加されていてもよい。
一方、O(酸素)も、意図的に添加されたり不可避的に混入したりしてもよいが、その量は0.8質量%以下程度であるのが好ましく、0.5質量%以下程度であるのがより好ましい。金属粉末中の酸素量をこの程度に収めることで、焼結性が高くなり、高密度で機械的特性に優れた焼結体が得られる。なお、下限値は特に設定されないが、量産容易性等の観点から0.03質量%以上であるのが好ましい。
Co(コバルト)は、本発明の粉末冶金用金属粉末を構成する合金のうち含有率が最も高い成分(主成分)であり、焼結体の特性に大きな影響を及ぼす。Coの含有率は、特に限定されないが、45質量%以上であるのが好ましく、50質量%以上であるのがより好ましい。
また、粉末冶金用金属粉末の組成比は、例えば、JIS G 1257(2000)に規定された鉄及び鋼−原子吸光分析法、JIS G 1258(2007)に規定された鉄及び鋼−ICP発光分光分析法、JIS G 1253(2002)に規定された鉄及び鋼−スパーク放電発光分光分析法、JIS G 1256(1997)に規定された鉄及び鋼−蛍光X線分析法、JIS G 1211〜G 1237に規定された重量・滴定・吸光光度法等により特定することができる。具体的には、例えばSPECTRO社製固体発光分光分析装置(スパーク放電発光分光分析装置、モデル:SPECTROLAB、タイプ:LAVMB08A)や、(株)リガク製ICP装置(CIROS120型)が挙げられる。
なお、JIS G 1211〜G 1237は、下記の通りである。
JIS G 1211(2011) 鉄及び鋼−炭素定量方法
JIS G 1212(1997) 鉄及び鋼−けい素定量方法
JIS G 1213(2001) 鉄及び鋼中のマンガン定量方法
JIS G 1214(1998) 鉄及び鋼−りん定量方法
JIS G 1215(2010) 鉄及び鋼−硫黄定量方法
JIS G 1216(1997) 鉄及び鋼−ニッケル定量方法
JIS G 1217(2005) 鉄及び鋼−クロム定量方法
JIS G 1218(1999) 鉄及び鋼−モリブデン定量方法
JIS G 1219(1997) 鉄及び鋼−銅定量方法
JIS G 1220(1994) 鉄及び鋼−タングステン定量方法
JIS G 1221(1998) 鉄及び鋼−バナジウム定量方法
JIS G 1222(1999) 鉄及び鋼−コバルト定量方法
JIS G 1223(1997) 鉄及び鋼−チタン定量方法
JIS G 1224(2001) 鉄及び鋼中のアルミニウム定量方法
JIS G 1225(2006) 鉄及び鋼−ひ素定量方法
JIS G 1226(1994) 鉄及び鋼−すず定量方法
JIS G 1227(1999) 鉄及び鋼中のほう素定量方法
JIS G 1228(2006) 鉄及び鋼−窒素定量方法
JIS G 1229(1994) 鋼−鉛定量方法
JIS G 1232(1980) 鋼中のジルコニウム定量方法
JIS G 1233(1994) 鋼−セレン定量方法
JIS G 1234(1981) 鋼中のテルル定量方法
JIS G 1235(1981) 鉄及び鋼中のアンチモン定量方法
JIS G 1236(1992) 鋼中のタンタル定量方法
JIS G 1237(1997) 鉄及び鋼−ニオブ定量方法
また、C(炭素)およびS(硫黄)の特定に際しては、特に、JIS G 1211(2011)に規定された酸素気流燃焼(高周波誘導加熱炉燃焼)−赤外線吸収法も用いられる。具体的には、LECO社製炭素・硫黄分析装置、CS−200が挙げられる。
さらに、N(窒素)およびO(酸素)の特定に際しては、特に、JIS G 1228(2006)に規定された鉄および鋼の窒素定量方法、JIS Z 2613(2006)に規定された金属材料の酸素定量方法も用いられる。具体的には、LECO社製酸素・窒素分析装置、TC−300/EF−300が挙げられる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末の平均粒径は、0.5μm以上30μm以下であるのが好ましく、1μm以上20μm以下であるのがより好ましく、2μm以上10μm以下であるのがさらに好ましい。このような粒径の粉末冶金用金属粉末を用いることにより、焼結体中に残存する空孔が極めて少なくなるため、特に高密度で機械的特性に優れた焼結体を製造することができる。
なお、平均粒径は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
また、粉末冶金用金属粉末の平均粒径が前記下限値を下回った場合、成形し難い形状を成形する際に成形性が低下し、焼結密度が低下するおそれがあり、前記上限値を上回った場合、成形時に粒子間の隙間が大きくなるので、やはり焼結密度が低下するおそれがある。
また、粉末冶金用金属粉末の粒度分布は、できるだけ狭いのが好ましい。具体的には、粉末冶金用金属粉末の平均粒径が前記範囲内であれば、最大粒径が200μm以下であるのが好ましく、150μm以下であるのがより好ましい。粉末冶金用金属粉末の最大粒径を前記範囲内に制御することにより、粉末冶金用金属粉末の粒度分布をより狭くすることができ、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
なお、上記の最大粒径とは、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から99.9%となるときの粒径のことをいう。
また、粉末冶金用金属粉末の粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたとき、S/Lで定義されるアスペクト比の平均値は、0.4以上1以下程度であるのが好ましく、0.7以上1以下程度であるのがより好ましい。このようなアスペクト比の粉末冶金用金属粉末は、その形状が比較的球形に近くなるので、成形された際の充填率が高められる。その結果、焼結体のさらなる高密度化を図ることができる。
なお、前記長径とは、粒子の投影像においてとりうる最大長さであり、前記短径とは、長径に直交する方向においてとりうる最大長さである。また、アスペクト比の平均値は、100個以上の粒子について測定されたアスペクト比の値の平均値として求められる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末のタップ密度は、3.5g/cm以上であるのが好ましく、4g/cm以上であるのがより好ましい。このようにタップ密度が大きい粉末冶金用金属粉末であれば、成形体を得る際に、粒子間の充填性が特に高くなる。このため、最終的に、特に緻密な焼結体を得ることができる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末の比表面積は、特に限定されないが、0.1m/g以上であるのが好ましく、0.2m/g以上であるのがより好ましい。このように比表面積の広い粉末冶金用金属粉末であれば、表面の活性(表面エネルギー)が高くなるため、より少ないエネルギーの付与でも容易に焼結することができる。したがって、成形体を焼結する際に、成形体の内側と外側とで焼結速度の差が生じ難くなり、内側に空孔が残存して焼結密度が低下するのを抑制することができる。
また、本発明の粉末冶金用金属粉末は、単一の組成の粒子のみからなる粉末(プレアロイ粉末)であってもよいが、互いに組成の異なる複数種の粒子を混合してなる混合粉末(プレミックス粉末)であってもよい。プレミックス粉末の場合、それ全体で前述したような組成比を満たしていればよい。これにより、プレミックス粉末は、前述したのと同様の効果をもたらし、高密度な焼結体の製造を可能にする。
プレミックス粉末の具体例としては、例えば、前述した組成比からC(炭素)を減じた粉末とC粉末(炭素粉末)との混合粉末や、前述した組成比から第1元素および第2元素を減じた粉末と第1元素の粉末と第2元素の粉末との混合粉末等が挙げられる。なお、混合粉末における複数種の粉末の組み合わせは、特に限定されず、いかなる組み合わせであってもよい。
[焼結体の製造方法]
次に、このような本発明の粉末冶金用金属粉末を用いて焼結体を製造する方法について説明する。
焼結体を製造する方法は、[A]焼結体製造用の組成物を用意する組成物調製工程と、[B]成形体を製造する成形工程と、[C]脱脂処理を施す脱脂工程と、[D]焼成を行う焼成工程と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
[A]組成物調製工程
まず、前述した実施形態に係る粉末冶金用金属粉末と、バインダーとを用意し、これらを混練機により混練し、混練物を得る。
この混練物(本発明のコンパウンドの実施形態)は、粉末冶金用金属粉末を含み、これが均一に分散している。すなわち、混練物は、粉末冶金用金属粉末と、その粒子同士を結着するバインダーと、を含む。このような混練物(コンパウンド)によれば、高密度の焼結体を容易に製造することができる。
本発明の粉末冶金用金属粉末は、例えば、アトマイズ法(例えば、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、高速回転水流アトマイズ法等)、還元法、カルボニル法、粉砕法等の各種粉末化法により製造される。
このうち、本発明の粉末冶金用金属粉末は、アトマイズ法により製造されたものであるのが好ましく、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造されたものであるのがより好ましい。アトマイズ法は、溶融金属(溶湯)を、高速で噴射された流体(液体または気体)に衝突させることにより、溶湯を微粉化するとともに冷却して、金属粉末を製造する方法である。粉末冶金用金属粉末をこのようなアトマイズ法によって製造することにより、極めて微小な粉末を効率よく製造することができる。また、得られる粉末の粒子形状が表面張力の作用により球形状に近くなる。このため、成形した際に充填率の高いものが得られる。すなわち、高密度な焼結体を製造可能な粉末を得ることができる。
なお、アトマイズ法として、水アトマイズ法を用いた場合、溶融金属に向けて噴射される水(以下、「アトマイズ水」という。)の圧力は、特に限定されないが、好ましくは75MPa以上120MPa以下(750kgf/cm以上1200kgf/cm以下)程度とされ、より好ましくは、90MPa以上120MPa以下(900kgf/cm以上1200kgf/cm以下)程度とされる。
また、アトマイズ水の水温も、特に限定されないが、好ましくは1℃以上20℃以下程度とされる。
さらに、アトマイズ水は、溶湯の落下経路上に頂点を有し、外径が下方に向かって漸減するような円錐状に噴射される場合が多い。この場合、アトマイズ水が形成する円錐の頂角は、10°以上40°以下程度であるのが好ましく、15°以上35°以下程度であるのがより好ましい。これにより、前述したような組成の粉末冶金用金属粉末を、確実に製造することができる。
また、水アトマイズ法(特に高速回転水流アトマイズ法)によれば、とりわけ速く溶湯を冷却することができる。このため、広い合金組成において高品質な粉末が得られる。
また、アトマイズ法において溶湯を冷却する際の冷却速度は、1×10℃/s以上であるのが好ましく、1×10℃/s以上であるのがより好ましい。このような急速な冷却により、均質な粉末冶金用金属粉末が得られる。その結果、高品質な焼結体を得ることができる。
なお、このようにして得られた粉末冶金用金属粉末に対し、必要に応じて、分級を行ってもよい。分級の方法としては、例えば、ふるい分け分級、慣性分級、遠心分級のような乾式分級、沈降分級のような湿式分級等が挙げられる。
一方、バインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等の各種有機バインダーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、バインダーの含有率は、混練物全体の2質量%以上20質量%以下程度であるのが好ましく、5質量%以上10質量%以下程度であるのがより好ましい。バインダーの含有率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに、密度を高め、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、これにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。すなわち、高密度でかつ寸法精度の高い焼結体を得ることができる。
また、混練物中には、必要に応じて、可塑剤が添加されていてもよい。この可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
さらに、混練物中には、粉末冶金用金属粉末、バインダー、可塑剤の他に、例えば、滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物を必要に応じ添加することができる。
なお、混練条件は、用いる粉末冶金用金属粉末の金属組成や粒径、バインダーの組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げれば、混練温度:50℃以上200℃以下程度、混練時間:15分以上210分以下程度とすることができる。
また、混練物は、必要に応じ、ペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1mm以上15mm以下程度とされる。
なお、後述する成形方法によっては、混練物に代えて、造粒粉末を製造するようにしてもよい。これらの混練物および造粒粉末等が、後述する成形工程に供される組成物の一例である。
本発明の造粒粉末の実施形態は、前述した実施形態に係る粉末冶金用金属粉末を含み、これに造粒処理を施すことにより、複数個の金属粒子同士をバインダーで結着してなるものである。このような造粒粉末によれば、高密度の焼結体を容易に製造することができる。
造粒粉末の製造に用いられるバインダーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンまたはこれらの共重合体等の各種樹脂や、各種ワックス、パラフィン、高級脂肪酸(例:ステアリン酸)、高級アルコール、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド等の各種有機バインダーが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
このうち、バインダーとしては、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンを含むものが好ましい。これらのバインダー成分は、結着性が高いため、比較的少量であっても効率よく造粒粉末を形成することができる。また、熱分解性も高いことから、脱脂および焼成の際に、短時間で確実に分解、除去することが可能になる。
また、バインダーの含有率は、造粒粉末全体の0.2質量%以上10質量%以下程度であるのが好ましく、0.3質量%以上5質量%以下程度であるのがより好ましく、0.3質量%以上2質量%以下であるのがさらに好ましい。バインダーの含有率が前記範囲内であることにより、著しく大きな粒子が造粒されたり、造粒されていない金属粒子が大量に残存してしまったりするのを抑制しつつ、造粒粉末を効率よく形成することができる。また、成形性が向上するため、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、バインダーの含有率を前記範囲内としたことにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を最適化して、最終的に得られる焼結体の寸法精度の低下を防止することができる。
さらに、造粒粉末中には、必要に応じて、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、脱脂促進剤、界面活性剤等の各種添加物が添加されていてもよい。
一方、造粒処理としては、例えば、スプレードライ(噴霧乾燥)法、転動造粒法、流動層造粒法、転動流動造粒法等が挙げられる。
なお、造粒処理では、必要に応じて、バインダーを溶解する溶媒が用いられる。かかる溶媒としては、例えば、水、四塩化炭素のような無機溶媒や、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、セロソルブ系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、芳香族複素環化合物系溶媒、アミド系溶媒、ハロゲン化合物系溶媒、エステル系溶媒、アミン系溶媒、ニトリル系溶媒、ニトロ系溶媒、アルデヒド系溶媒のような有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上の混合物が用いられる。
造粒粉末の平均粒径は、特に限定されないが、10μm以上200μm以下程度であるのが好ましく、20μm以上100μm以下程度であるのがより好ましく、25μm以上60μm以下程度であるのがさらに好ましい。このような粒径の造粒粉末は、良好な流動性を有し、成形型の形状をより忠実に反映させ得るものとなる。
なお、平均粒径は、レーザー回折法により得られた質量基準での累積粒度分布において、累積量が小径側から50%になるときの粒径として求められる。
[B]成形工程
次に、混練物または造粒粉末を成形して、目的の焼結体と同形状の成形体を製造する。
成形体の製造方法(成形方法)としては、特に限定されず、例えば、圧粉成形(圧縮成形)法、金属粉末射出成形(MIM:Metal Injection Molding)法、押出成形法、3次元成形法(3D造形法)等の各種成形法を用いることができる。
このうち、圧粉成形法の場合の成形条件は、用いる粉末冶金用金属粉末の組成や粒径、バインダーの組成、およびこれらの配合量等の諸条件によって異なるが、成形圧力が200MPa以上1000MPa以下(2t/cm以上10t/cm以下)程度であるのが好ましい。
また、金属粉末射出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80℃以上210℃以下程度、射出圧力が50MPa以上500MPa以下(0.5t/cm以上5t/cm以下)程度であるのが好ましい。
また、押出成形法の場合の成形条件は、諸条件によって異なるものの、材料温度が80℃以上210℃以下程度、押出圧力が50MPa以上500MPa以下(0.5t/cm以上5t/cm以下)程度であるのが好ましい。
このようにして得られた成形体は、金属粉末の複数の粒子の間隙に、バインダーが一様に分布した状態となる。
また、3次元成形法の具体例としては、例えば、材料押出堆積法、マテリアルジェッティング法、バインダージェッティング法、光造形法等が挙げられる。
なお、作製される成形体の形状寸法は、以降の脱脂工程および焼成工程における成形体の収縮分を見込んで決定される。
[C]脱脂工程
次に、得られた成形体に脱脂処理(脱バインダー処理)を施し、脱脂体を得る。
具体的には、成形体を加熱して、バインダーを分解することにより、成形体中からバインダーを除去して、脱脂処理がなされる。この脱脂処理は、例えば、成形体を加熱する方法、バインダーを分解するガスに成形体を曝す方法等が挙げられる。
成形体を加熱する方法を用いる場合、成形体の加熱条件は、バインダーの組成や配合量によって若干異なるものの、温度100℃以上750℃以下×0.1時間以上20時間以下程度であるのが好ましく、150℃以上600℃以下×0.5時間以上15時間以下程度であるのがより好ましい。これにより、成形体を焼結させることなく、成形体の脱脂を必要かつ十分に行うことができる。その結果、脱脂体の内部にバインダー成分が多量に残留してしまうのを確実に防止することができる。
また、成形体を加熱する際の雰囲気は、特に限定されず、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、大気のような酸化性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が挙げられる。
一方、バインダーを分解するガスとしては、例えば、オゾンガス等が挙げられる。
なお、このような脱脂工程は、脱脂条件の異なる複数の過程(ステップ)に分けて行うことにより、成形体中のバインダーをより速やかに、そして、成形体に残存させないように分解・除去することができる。
また、必要に応じて、脱脂体に対して切削、研磨、切断等の機械加工を施すようにしてもよい。脱脂体は、硬度が比較的低く、かつ比較的可塑性に富んでいるため、脱脂体の形状が崩れるのを防止しつつ、容易に機械加工を施すことができる。このような機械加工によれば、最終的に寸法精度の高い焼結体を容易に得ることができる。
[D]焼成工程
前記工程[C]で得られた脱脂体を、焼成炉で焼成して焼結体を得る。
この焼結により、粉末冶金用金属粉末は、粒子同士の界面で拡散が生じ、焼結に至る。この際、前述したようなメカニズムによって、脱脂体が速やかに焼結される。その結果、全体的に緻密な高密度の焼結体が得られる。
焼成温度は、成形体および脱脂体の製造に用いた粉末冶金用金属粉末の組成や粒径等によって異なるが、一例として980℃以上1450℃以下程度とされる。また、好ましくは1050℃以上1350℃以下程度とされる。
また、焼成時間は、0.2時間以上7時間以下とされるが、好ましくは1時間以上6時間以下程度とされる。
なお、焼成工程においては、途中で焼成温度や後述する焼成雰囲気を変化させるようにしてもよい。
焼成条件をこのような範囲に設定することにより、焼結が進み過ぎて過焼結となり結晶組織が肥大化するのを防止しつつ、脱脂体全体を十分に焼結させることができる。その結果、高密度であり、かつ特に機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。
また、焼成温度が比較的低温であることから、焼成炉による加熱温度を一定に制御し易く、したがって、脱脂体の温度も一定になり易い。その結果、より均質な焼結体を製造することができる。
さらには、前述したような焼成温度は、一般的な焼成炉で十分に実現可能な焼成温度であるため、安価な焼成炉が利用可能であるとともに、ランニングコストも抑えることができる。換言すれば、前記焼成温度を超える場合には、特殊な耐熱材料を用いた高価な焼成炉を利用する必要があり、しかもランニングコストも高くなるおそれがある。
また、焼成の際の雰囲気は、特に限定されないが、金属粉末の著しい酸化を防止することを考慮した場合、水素のような還元性ガス雰囲気、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧雰囲気等が好ましく用いられる。
なお、上述した一連の工程に代えて、すなわち、組成物調製工程、成形工程、脱脂工程および焼成工程に代えて、金属粉末にレーザー等のエネルギー線を照射して焼結させることにより焼結体を製造するようにしてもよい。この方法では、平らに敷き詰めた金属粉末に対してレーザー等のエネルギー線を照射し、照射領域において金属粉末を焼結させることにより、照射領域の形状に応じた任意の形状の焼結体を製造する(粉末焼結積層造形法)。これにより、より簡易に焼結体を製造することができる。
このようにして得られた焼結体は、前述した実施形態に係る粉末冶金用金属粉末の組成を有するものとなる。
すなわち、本実施形態に係る焼結体は、Coが主成分であり、Crが10質量%以上25質量%以下の割合で含まれ、Niが5質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、MoおよびWの少なくとも一方が合計で2質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、Siが0.3質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、Cが0.05質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、前述した第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、前述した第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする。
このような焼結体は、追加処理を施すことなく、高密度で機械的特性に優れたものとなる。すなわち、本発明の粉末冶金用金属粉末とバインダーとを含む組成物を、成形した後、脱脂・焼結して製造された焼結体は、従来の金属粉末を焼結してなる焼結体に比べて相対密度が高くなる。よって、本発明であれば、HIP処理のような追加処理を施さなければ到達し得なかった高密度の焼結体を、追加処理なしに実現することができる。
具体的には、本発明によれば、粉末冶金用金属粉末の組成によって若干異なるものの、一例として従来よりも2%以上の相対密度の向上が期待できる。
その結果、得られた焼結体の相対密度は、一例として97%以上になることが期待できる(好ましくは98%以上、より好ましくは98.5%以上)。このような範囲の相対密度を有する焼結体は、粉末冶金技術を利用することで目的とする形状に限りなく近い形状を有するものであるにもかかわらず、溶製材に匹敵する優れた機械的特性を有するものとなるため、ほとんど後加工を施すことなく各種の機械部品や構造部品等に適用可能なものとなる。
また、得られた焼結体は、追加処理を施さなくても十分に高い密度と機械的特性とを有しているが、さらなる高密度化および機械的特性の向上を図るために、各種の追加処理が施されてもよい。
この追加処理としては、例えば、前述したHIP処理のような高密度化を図る追加処理であってもよく、各種焼き入れ処理、各種サブゼロ処理、各種焼き戻し処理、各種焼き鈍し処理等であってもよい。これらの追加処理は単独で行われてもよく、複数が組み合わされて行われてもよい。
また、上述した焼成工程や各種追加処理においては、金属粉末中(焼結体中)の軽元素が揮発し、最終的に得られる焼結体の組成は、金属粉末中の組成から若干変化している場合もある。
例えば、Cについては、工程条件や処理条件に応じて異なるものの、最終的な焼結体における含有率が、粉末冶金用金属粉末における含有率の5%以上100%以下の範囲内(好ましくは30%以上100%以下の範囲内)で変化する可能性がある。
また、Oについても、工程条件や処理条件に応じて異なるものの、最終的な焼結体における含有率が、粉末冶金用金属粉末における含有率の1%以上50%以下の範囲内(好ましくは3%以上50%以下の範囲内)で変化する可能性がある。
一方、前述したように、製造された焼結体は、必要に応じて行われる追加処理の一環でHIP処理に供されてもよい。ただし、本発明で得られる焼結体は、焼成工程の終了時点ですでに十分な高密度化が図られている。このため、さらにHIP処理を施したとしても、それ以上の高密度化は進み難い。
加えて、HIP処理では、圧力媒体を介して被処理物(焼結体)を加圧する必要があるため、被処理物が汚染されたり、汚染に伴って被処理物の組成や物性が意図しない変化を生じたり、汚染に伴って被処理物が変色したりするおそれがある。また、加圧されることにより被処理物内において残留応力が発生あるいは増加し、これが経時的に解放されるのに伴って変形や寸法精度の低下といった不具合の発生を招くおそれがある。
これに対し、本発明によれば、このようなHIP処理を施すことなく、十分に密度の高い焼結体を製造可能であるため、HIP処理を施した場合と同様の高密度化および高強度化が図られた焼結体を得ることができる。そして、このような焼結体は、汚染や変色、意図しない組成や物性の変化等が少なく、変形や寸法精度の低下といった不具合の発生も少ないものとなる。よって、本発明によれば、機械的強度および寸法精度が高く、耐久性に優れた焼結体を効率よく製造することができる。
また、本発明で製造された焼結体は、機械的特性を向上させる目的の追加処理をほとんど必要としないため、組成や結晶組織が焼結体全体で均一になり易い。このため、構造的な等方性が高く、形状によらず全方位からの荷重に対する耐久性に優れたものとなる。
[耐熱部品]
≪第1実施形態≫
本発明の耐熱部品は、例えば過給機用部品に適用可能である。後述する過給機用部品は、本発明の耐熱部品の第1実施形態であって、本実施形態に係る焼結体を含む。すなわち、後述する過給機用部品は、その少なくとも一部が本実施形態に係る焼結体で構成されている。このような過給機用部品は、追加処理を施すことなく、高密度で耐熱性に優れた耐熱部品となる。
このような過給機用部品としては、例えば、ターボチャージャー用ノズルベーン、ターボチャージャー用タービンホイール、ウェストゲートバルブ、タービンハウジング等が挙げられる。これらの過給機用部品はいずれも、長期にわたって高温に曝されるとともに、場合によっては他の部品との間で摺動するため、耐摩耗性が要求される。前述したように、本発明の焼結体は、高密度であるため、優れた耐熱性および機械的特性を有する。このため、長期にわたる耐久性に優れた過給機用部品が得られる。
以下、過給機用部品の例として、ターボチャージャー用ノズルベーン(以下、省略して「ノズルベーン」ともいう。)について説明する。ノズルベーンは、可変容量型ターボチャージャーに用いられ、ノズル開度を調整することによって過給圧を制御するための弁体である。
図1は、本発明の耐熱部品の第1実施形態を適用したターボチャージャー用ノズルベーンを示す側面図(翼部を平面視したときの図)であり、図2は、図1に示すノズルベーンの平面図であり、図3は、図1に示すノズルベーンの背面図である。
図1に示すノズルベーン1は、軸部11および翼部12を有している。
軸部11は、その主要部の横断面形状が軸線13を中心軸とする円形をなしている。この軸部11は、その翼部12側(図1にて左側)の部分が図示しないノズルマウントに回動可能に支持され、翼部12とは反対側(図1にて右側)の部分が図示しないノズルプレートに固定される。これにより、軸線13まわりに翼部12を回動させてその角度を変化させることができ、ノズル開度を調整することができる。
また、軸部11の一端面(図1にて右側の端面)には、センター穴14が形成されている。このセンター穴14は、その横断面形状が円形をなし、その中心が軸線13に一致するように形成されている。
また、軸部11の一端側(図1にて右側)の外周面には、軸線13を介して互いに対向する一対の平坦部15(2面カット部)が設けられている(図3参照)。
このような各平坦部15は、図示しないレバープレートに形成された当て付け面に当て付けられた状態で用いられる。軸部11の軸線13まわりの回動角が規制され、ノズルベーン1の軸線13まわりの回動角を高精度に調整することができる。また、各平坦部15は、翼部12の突出方向(翼面)に対して角度θにて傾斜するように形成されている(図3参照)。
一方、軸部11の他端側(図1にて左側の端部)には、翼部12が設けられている。すなわち、翼部12は、軸部11の一方の端部から突出するように設けられている。
また、軸部11の他端側には、軸部11の外側に突出するフランジ部16が形成されている。
このような翼部12は、その平面視にて、図1に示すように、軸部11の軸線13に垂直な方向に延在する帯状をなしている。また、軸部11からの翼部12の突出長さは、一端側(図1にて下側)が他端側(図1にて上側)よりも長くなっている。
また、翼部12の平面視での幅方向(図1にて左右方向)での両端部における縁部には、面取り17、18が施されている。
また、図2、図3に示すように、翼部12は、その厚さ方向に若干湾曲している。また、翼部12は、その厚さが延在方向(突出方向)で各端へ向け漸減している。
以上のようなノズルベーン1は、本発明の焼結体の実施形態で構成されている。本発明の焼結体は高密度であるため、ノズルベーン1は優れた耐熱性および機械的特性を有し、耐摩耗性に優れたものとなる。また、ノズルベーン1は複雑な形状であっても寸法精度の高いものとなる。その結果、長期にわたる耐久性に優れた過給機を実現することができる。
≪第2実施形態≫
本発明の耐熱部品は、例えばジェットエンジン用部品や発電タービン用部品である圧縮機翼に適用可能である。かかる圧縮機翼は、本発明の耐熱部品の第2実施形態であって、その少なくとも一部が本発明の焼結体の実施形態で構成されている。
図4は、本発明の耐熱部品の第2実施形態を適用した圧縮機翼を示す斜視図である。図4に示す圧縮機翼2は、互いに同心状に設けられた内側リム21および外側リム22と、これらの間に設けられるとともに内側リム21の円周方向に並べられた翼部23と、を備えている。内側リム21および外側リム22は、それぞれ環状をなしている。また、翼部23は、湾曲した曲面を含む平板状をなしている。そして、翼部23の翼端(端面)が、内側リム21の外周面と外側リム22の内周面とに結合されている。なお、図4は、圧縮機翼2の一部を切り出して図示したものである。
このような圧縮機翼2は、ジェットエンジンや発電用ガスタービンを構成する部品の1つであり、翼部23が気体を受けることによって内側リム21のさらに内側に設けられているタービン軸を回転させる。これにより、ジェットエンジンや発電用ガスタービン内において圧縮機が気体を圧縮することができる。
内側リム21、外側リム22および翼部23は、互いに別の部材であってもよいが、図4に示す圧縮機翼2は、内側リム21と外側リム22と翼部23とが一体になっている。このため、各部の相対的な位置精度が高く、圧縮機翼としての性能に優れている。そして、圧縮機翼2の全体を本発明の焼結体の実施形態で構成することにより、寸法精度に優れた圧縮機翼2が得られる。
また、一般に圧縮機翼では、空力性能を向上させる必要性から、翼部の形状をより肉薄でかつ湾曲した曲面を含むような三次元形状にすることが求められている。
かかる問題に対し、圧縮機翼2の全体が粉末冶金法で製造された焼結体で構成されていることにより、肉薄でかつ複雑な三次元形状を有する翼部23を含んでいても、寸法精度の高い圧縮機翼2を実現することができる。
また、本実施形態に係る焼結体は、高密度で耐熱性に優れているため、圧縮機翼2の機械的特性の向上にも寄与する。すなわち、一般に圧縮機翼は、空気流路を構成する部品であるため、高温下でも振動に対して十分な疲労強度や耐摩耗性等が求められる。
かかる問題に対し、圧縮機翼2は、本実施形態に係る焼結体で構成されているため、高密度で耐熱性に優れるとともに十分な耐摩耗性を有している。したがって、長期にわたる耐久性に優れた圧縮機翼2が得られる。
さらには、各種成形法を用いて製造されるため、圧縮機翼2の製造にあたっては、焼結後の後加工がほとんど必要ないか、あるいは加工量を少なく抑えられる。また、前述したように、高密度化が図られているため、HIP処理のような追加処理も不要である。このため、製造コストの低減が図られるとともに、後加工痕がもたらす不具合の発生を最小限に留めることができる。
以上、本発明の粉末冶金用金属粉末、コンパウンド、造粒粉末、焼結体および耐熱部品について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の焼結体は、自動車用部品、自転車用部品、鉄道車両用部品、船舶用部品、航空機用部品、宇宙輸送機(例えばロケット等)用部品のような輸送機器用部品、パソコン用部品、携帯電話端末用部品のような電子機器用部品、冷蔵庫、洗濯機、冷暖房機のような電気機器用部品、工作機械、半導体製造装置のような機械用部品、原子力発電所、火力発電所、水力発電所、製油所、化学コンビナートのようなプラント用部品、時計用部品、金属食器、宝飾品、眼鏡フレームのような装飾品、手術用器具、人工骨、人工歯、人工歯根、歯列矯正用部品のような医療機器の他、あらゆる構造部品に用いられてもよい。
さらに、本発明の耐熱部品は、前述した過給機用部品、ジェットエンジン用部品および発電タービン用部品の他、例えば、原子力用部品、ガスタービン用部品のような各種発電関連部品、自動車エンジン用部品、ロケットエンジン用部品のような各種エンジン部品、ボイラー用部品、熱交換器用部品、排ガス処理設備用部品、加熱炉用部品、燃料電池用部品、耐熱ボルト、耐熱ばね、耐熱バルブ等、あらゆる耐熱部品にも適用可能である。
次に、本発明の実施例について説明する。
1.焼結体(Zr−Nb系)の製造
(サンプルNo.1)
[1]まず、水アトマイズ法により製造された表1に示す組成の金属粉末を用意した。なお、用意した金属粉末の平均粒径を表4に示す。
また、表1に示す粉末の組成は、誘導結合高周波プラズマ発光分析法(ICP分析法)により同定、定量した。なお、ICP分析には、(株)リガク製、ICP装置(CIROS120型)を用いた。また、Cの同定、定量には、LECO社製炭素・硫黄分析装置(CS−200)を用いた。さらに、Oの同定、定量には、LECO社製酸素・窒素分析装置(TC−300/EF−300)を用いた。
[2]次に、金属粉末と、ポリプロピレンおよびワックスの混合物(有機バインダー)とを、質量比で9:1となるよう秤量して混合し、混合原料を得た。
[3]次に、この混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
[4]次に、このコンパウンドを、以下に示す成形条件で、射出成形機にて成形し、成形体を作製した。
<成形条件>
・材料温度:150℃
・射出圧力:11MPa(110kgf/cm
[5]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で熱処理(脱脂処理)を施し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :500℃
・脱脂時間 :1時間(脱脂温度での保持時間)
・脱脂雰囲気:窒素雰囲気
[6]次に、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。これにより、焼結体を得た。なお、焼結体の形状は、直径10mm、厚さ5mmの円筒形状とした。
<焼成条件>
・焼成温度 :1250℃
・焼成時間 :3時間(焼成温度での保持時間)
・焼成雰囲気:アルゴン雰囲気
(サンプルNo.2〜30)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表1に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。なお、サンプルNo.30の焼結体については、焼成後、下記の条件でHIP処理を施した。また、サンプルNo.16、17の焼結体は、それぞれガスアトマイズ法により製造された金属粉末を用いて得られたものである。なお、表1には、備考欄に「ガス」と表記している。
<HIP処理条件>
・加熱温度 :1100℃
・加熱時間 :2時間
・加圧力 :100MPa
Figure 0006372512
なお、表1では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表1への記載は省略した。なお、表1に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
(サンプルNo.31)
[1]まず、表2に示す組成の金属粉末を、サンプルNo.1の場合と同様、水アトマイズ法により製造した。なお、用意した金属粉末の平均粒径を表5に示す。
[2]次に、スプレードライ法により、金属粉末を造粒した。このとき使用したバインダーはポリビニルアルコールであり、金属粉末100質量部に対して1質量部になる量を使用した。また、ポリビニルアルコール1質量部に対して50質量部の溶媒(イオン交換水)を使用した。これにより、平均粒径50μmの造粒粉末を得た。
[3]次に、この造粒粉末を、以下に示す成形条件で圧粉成形した。なお、この成形には、プレス成形機を使用した。また、作製する成形体の形状は、20mm角の立方体形状とした。
<成形条件>
・材料温度:90℃
・成形圧力:600MPa(6t/cm
[4]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で熱処理(脱脂処理)を施し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :450℃
・脱脂時間 :2時間(脱脂温度での保持時間)
・脱脂雰囲気:窒素雰囲気
[5]次に、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。これにより、焼結体を得た。
<焼成条件>
・焼成温度 :1250℃
・焼成時間 :3時間(焼成温度での保持時間)
・焼成雰囲気:アルゴン雰囲気
(サンプルNo.32〜45)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表2に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.31の場合と同様にして焼結体を得た。なお、サンプルNo.45の焼結体については、焼成後、下記の条件でHIP処理を施した。また、サンプルNo.38、39の焼結体は、それぞれガスアトマイズ法により製造された金属粉末を用いて得られたものである。なお、表2には、備考欄に「ガス」と表記している。
<HIP処理条件>
・加熱温度 :1100℃
・加熱時間 :2時間
・加圧力 :100MPa
Figure 0006372512
なお、表2においては、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表2への記載は省略した。なお、表2に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
(サンプルNo.46)
[1]まず、水アトマイズ法により製造された表3に示す組成のプレミックス粉末を用意した。なお、ここでいう「プレミックス粉末」とは、表3に示す組成比からC(炭素)成分を減じた粉末とC粉末との混合粉末を指す。また、用意した金属粉末(C成分を減じた粉末)の平均粒径を表6に示す。
[2]次に、プレミックス粉末と、ポリプロピレンおよびワックスの混合物(有機バインダー)とを、質量比で9:1となるよう秤量して混合し、混合原料を得た。
[3]次に、この混合原料を混練機で混練し、コンパウンドを得た。
[4]次に、このコンパウンドを、以下に示す成形条件で、射出成形機にて成形し、成形体を作製した。
<成形条件>
・材料温度:150℃
・射出圧力:11MPa(110kgf/cm
[5]次に、得られた成形体に対して、以下に示す脱脂条件で熱処理(脱脂処理)を施し、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :500℃
・脱脂時間 :1時間(脱脂温度での保持時間)
・脱脂雰囲気:窒素雰囲気
[6]次に、得られた脱脂体を、以下に示す焼成条件で焼成した。これにより、焼結体を得た。なお、焼結体の形状は、直径10mm、厚さ5mmの円筒形状とした。
<焼成条件>
・焼成温度 :1250℃
・焼成時間 :3時間(焼成温度での保持時間)
・焼成雰囲気:アルゴン雰囲気
(サンプルNo.47〜60)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表3に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.46の場合と同様にして焼結体を得た。なお、サンプルNo.60の焼結体については、焼成後、下記の条件でHIP処理を施した。
<HIP処理条件>
・加熱温度 :1100℃
・加熱時間 :2時間
・加圧力 :100MPa
Figure 0006372512
なお、表3においては、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表3への記載は省略した。なお、表3に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
2.焼結体(Zr−Nb系)の評価
2.1 相対密度の評価
表1〜3に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2501(2000)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対密度を算出した。
算出結果を表4〜6に示す。
2.2 硬度の評価
表1〜3に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2244(2009)に規定されたビッカース硬さ試験の試験方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、以下の評価基準にしたがって評価した。なお、評価にあたっては、各表の備考欄に「※1」と記載されているサンプルの硬さについて、それぞれの表に「※1の基準」と記載されているサンプルの硬さを100としたときの相対値を以下の評価基準に照らすことにより評価した。同様に、表1の備考欄に「※2」と記載されているサンプルの硬さについては、表1に「※2の基準」と記載されているサンプルの硬さを100としたときの相対値を、「※3」と記載されているサンプルの硬さについては、表1に「※3の基準」と記載されているサンプルの硬さを100としたときの相対値を、「※4」と記載されているサンプルの硬さについては、表1に「※4の基準」と記載されているサンプルの硬さを100としたときの相対値を、それぞれ以下の評価基準に照らすことにより評価した。
<ビッカース硬さの評価基準>
A:ビッカース硬さの相対値が110以上である
B:ビッカース硬さの相対値が105以上110未満である
C:ビッカース硬さの相対値が100以上105未満である
D:ビッカース硬さの相対値が100未満である
評価結果を表4〜6に示す。
2.3 引張強さ、0.2%耐力および伸びの評価
表1〜3に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2241(2011)に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さ、0.2%耐力および伸びを測定した。
そして、測定したこれらの物性値について、以下の評価基準にしたがって評価した。なお、評価にあたっては、各表の備考欄に「※1」と記載されているサンプルの物性値について、それぞれの表に「※1の基準」と記載されているサンプルの物性値を100としたときの相対値を以下の評価基準に照らすことにより評価した。同様に、表1の備考欄に「※2」と記載されているサンプルの物性値については、表1に「※2の基準」と記載されているサンプルの物性値を100としたときの相対値を、「※3」と記載されているサンプルの物性値については、表1に「※3の基準」と記載されているサンプルの物性値を100としたときの相対値を、「※4」と記載されているサンプルの物性値については、表1に「※4の基準」と記載されているサンプルの物性値を100としたときの相対値を、それぞれ以下の評価基準に照らすことにより評価した。
<引張強さの評価基準>
A:焼結体の引張強さの相対値が109以上である
B:焼結体の引張強さの相対値が106以上109未満である
C:焼結体の引張強さの相対値が103以上106未満である
D:焼結体の引張強さの相対値が100以上103未満である
E:焼結体の引張強さの相対値が97以上100未満である
F:焼結体の引張強さの相対値が97未満である
<0.2%耐力の評価基準>
A:焼結体の0.2%耐力の相対値が109以上である
B:焼結体の0.2%耐力の相対値が106以上109未満である
C:焼結体の0.2%耐力の相対値が103以上106未満である
D:焼結体の0.2%耐力の相対値が100以上103未満である
E:焼結体の0.2%耐力の相対値が97以上100未満である
F:焼結体の0.2%耐力の相対値が97未満である
<伸びの評価基準>
A:焼結体の伸びの相対値が115以上である
B:焼結体の伸びの相対値が110以上115未満である
C:焼結体の伸びの相対値が105以上110未満である
D:焼結体の伸びの相対値が100以上105未満である
E:焼結体の伸びの相対値が95以上100未満である
F:焼結体の伸びの相対値が95未満である
以上の評価結果を表4〜6に示す。
Figure 0006372512
Figure 0006372512
Figure 0006372512
表4〜6から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体(HIP処理を施した焼結体を除く。)に比べて、相対密度が高いことが認められた。また、引張強さ、0.2%耐力および伸びといった特性についても、有意差があることが認められた。
一方、実施例に相当する焼結体と、HIP処理を施した焼結体との間で、各物性値を比較したところ、いずれも同程度であることが認められた。
3.焼結体(Hf−Nb系)の製造
(サンプルNo.61〜74)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表7に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006372512
なお、表7では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表7への記載は省略した。なお、表7に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
(サンプルNo.75〜81)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表8に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.46の場合と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006372512
なお、表8では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表8への記載は省略した。なお、表8に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
4.焼結体(Hf−Nb系)の評価
4.1 相対密度の評価
表7、8に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2501(2000)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対密度を算出した。
算出結果を表9、10に示す。
4.2 硬度の評価
表7、8に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2244(2009)に規定されたビッカース硬さ試験の方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表9、10に示す。
4.3 引張強さ、0.2%耐力および伸びの評価
表7、8に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2241(2011)に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さ、0.2%耐力および伸びを測定した。
そして、測定した物性値について、2.3に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表9、10に示す。
Figure 0006372512
Figure 0006372512
表9、10から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べて、相対密度が高いことが認められた。また、引張強さ、0.2%耐力および伸びといった特性についても、有意差があることが認められた。
5.焼結体(Ti−Nb系)の製造
(サンプルNo.82〜91)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表11に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006372512
なお、表11では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表11への記載は省略した。なお、表11に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
6.焼結体(Ti−Nb系)の評価
6.1 相対密度の評価
表11に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2501(2000)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対密度を算出した。
算出結果を表12に示す。
6.2 硬度の評価
表11に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2244(2009)に規定されたビッカース硬さ試験の方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表12に示す。
6.3 引張強さ、0.2%耐力および伸びの評価
表11に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2241(2011)に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さ、0.2%耐力および伸びを測定した。
そして、測定した物性値について、2.3に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表12に示す。
Figure 0006372512
表12から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べて、相対密度が高いことが認められた。また、引張強さ、0.2%耐力および伸びといった特性についても、有意差があることが認められた。
7.焼結体(Nb−Ta系)の製造
(サンプルNo.92〜101)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表13に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006372512
なお、表13では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表13への記載は省略した。なお、表13に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
8.焼結体(Nb−Ta系)の評価
8.1 相対密度の評価
表13に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2501(2000)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対密度を算出した。
算出結果を表14に示す。
8.2 硬度の評価
表13に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2244(2009)に規定されたビッカース硬さ試験の方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表14に示す。
8.3 引張強さ、0.2%耐力および伸びの評価
表13に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2241(2011)に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さ、0.2%耐力および伸びを測定した。
そして、測定した物性値について、2.3に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表14に示す。
Figure 0006372512
表14から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べて、相対密度が高いことが認められた。また、引張強さ、0.2%耐力および伸びといった特性についても、有意差があることが認められた。
9.焼結体(Y−Nb系)の製造
(サンプルNo.102〜112)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表15に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006372512
なお、表15では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表15への記載は省略した。なお、表15に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
10.焼結体(Y−Nb系)の評価
10.1 相対密度の評価
表15に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2501(2000)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対密度を算出した。
算出結果を表16に示す。
10.2 硬度の評価
表15に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2244(2009)に規定されたビッカース硬さ試験の方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表16に示す。
10.3 引張強さ、0.2%耐力および伸びの評価
表15に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2241(2011)に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さ、0.2%耐力および伸びを測定した。
そして、測定した物性値について、2.3に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表16に示す。
Figure 0006372512
表16から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べて、相対密度が高いことが認められた。また、引張強さ、0.2%耐力および伸びといった特性についても、有意差があることが認められた。
11.焼結体(V−Nb系)の製造
(サンプルNo.113〜122)
粉末冶金用金属粉末の組成等を表17に示すように変更した以外は、それぞれサンプルNo.1の焼結体の製造方法と同様にして焼結体を得た。
Figure 0006372512
なお、表17では、各サンプルNo.の粉末冶金用金属粉末のうち、本発明に相当するものを「実施例」とし、本発明に相当しないものを「比較例」としている。
また、各粉末冶金用金属粉末には、微量の不純物が含まれていたが、表17への記載は省略した。なお、表17に記載した実施例に係る金属粉末のO(酸素)の含有率は、いずれも0.5質量%以下であった。
12.焼結体(V−Nb系)の評価
12.1 相対密度の評価
表17に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2501(2000)に規定された焼結金属材料の密度を測定する方法に準じて、焼結密度を測定するとともに、各焼結体を製造するのに用いた粉末冶金用金属粉末の真密度を参照して、各焼結体の相対密度を算出した。
算出結果を表18に示す。
12.2 硬度の評価
表17に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2244(2009)に規定されたビッカース硬さ試験の方法に準じて、ビッカース硬さを測定した。
そして、測定した硬さについて、2.2に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表18に示す。
12.3 引張強さ、0.2%耐力および伸びの評価
表17に示す各サンプルNo.の金属粉末を用いて製造された焼結体について、JIS Z 2241(2011)に規定された金属材料引張試験方法に準じて、引張強さ、0.2%耐力および伸びを測定した。
そして、測定した物性値について、2.3に記載した評価基準にしたがって評価した。
評価結果を表18に示す。
Figure 0006372512
表18から明らかなように、実施例に相当する焼結体は、比較例に相当する焼結体に比べて、相対密度が高いことが認められた。また、引張強さ、0.2%耐力および伸びといった特性についても、有意差があることが認められた。
なお、表1〜18に記載した例の他に、第1元素と第2元素の組み合わせ例として、Ti−Zr系、Zr−Ta系、およびZr−V系の金属粉末についても、上記と同様にして焼結体を製造したが、それぞれ、相対密度、硬度、引張強さ、耐力および伸びに関して上記と同様の傾向を示した。
1…ノズルベーン、2…圧縮機翼、11…軸部、12…翼部、13…軸線、14…センター穴、15…平坦部、16…フランジ部、17…面取り、18…面取り、21…内側リム、22…外側リム、23…翼部、θ…角度

Claims (17)

  1. Coが主成分であり、
    Crが10質量%以上25質量%以下の割合で含まれ、
    Niが5質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、
    MoおよびWの少なくとも一方が合計で2質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.3質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.05質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする粉末冶金用金属粉末。
  2. Coが主成分であり、
    Crが15質量%以上24質量%以下の割合で含まれ、
    Niが7質量%以上32質量%以下の割合で含まれ、
    MoおよびWの少なくとも一方が合計で5質量%以上18質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.4質量%以上1.2質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.2質量%以上0.6質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.03質量%以上0.2質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする粉末冶金用金属粉末。
  3. Coが主成分であり、
    Crが18質量%以上23質量%以下の割合で含まれ、
    Niが9質量%以上36質量%以下の割合で含まれ、
    MoおよびWの少なくとも一方が合計で7質量%以上16質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.5質量%以上1質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.3質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.05質量%以上0.1質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする粉末冶金用金属粉末。
  4. さらに、Feが0.5質量%以上5質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  5. さらに、Feが0.8質量%以上3質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  6. さらに、Feが1質量%以上2.5質量%以下の割合で含まれている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  7. 前記第1元素の含有率を前記第1元素の原子量で除した値をX1とし、前記第2元素の含有率を前記第2元素の原子量で除した値をX2としたとき、X1/X2は、0.3以上3以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  8. 前記第1元素の含有率を前記第1元素の原子量で除した値をX1とし、前記第2元素の含有率を前記第2元素の原子量で除した値をX2としたとき、X1/X2は、0.5以上2以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  9. 前記第1元素の含有率を前記第1元素の原子量で除した値をX1とし、前記第2元素の含有率を前記第2元素の原子量で除した値をX2としたとき、X1/X2は、0.75以上1.3以下である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  10. 前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.05質量%以上0.6質量%以下である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  11. 前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.10質量%以上0.48質量%以下である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  12. 前記第1元素の含有率と前記第2元素の含有率の合計が0.12質量%以上0.24質量%以下である請求項1ないし9のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  13. 平均粒径が0.5μm以上30μm以下である請求項1ないし12のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末。
  14. 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末を含むことを特徴とするコンパウンド。
  15. 請求項1ないし13のいずれか1項に記載の粉末冶金用金属粉末を含むことを特徴とする造粒粉末。
  16. Coが主成分であり、
    Crが10質量%以上25質量%以下の割合で含まれ、
    Niが5質量%以上40質量%以下の割合で含まれ、
    MoおよびWの少なくとも一方が合計で2質量%以上20質量%以下の割合で含まれ、
    Siが0.3質量%以上1.5質量%以下の割合で含まれ、
    Cが0.05質量%以上0.8質量%以下の割合で含まれ、
    Ti、V、Y、Zr、NbおよびHfからなる群から選択される1種の元素を第1元素とし、V、Zr、Nb、HfおよびTaからなる群から選択される1種の元素であって元素周期表における族が前記第1元素より大きい元素または元素周期表における族が前記第1元素と同じでかつ元素周期表における周期が前記第1元素より大きい元素を第2元素としたとき、
    前記第1元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれ、
    前記第2元素が0.01質量%以上0.5質量%以下の割合で含まれていることを特徴とする焼結体。
  17. 請求項16に記載の焼結体を含むことを特徴とする耐熱部品。
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