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JP6358352B1 - 微生物発電装置及び微生物発電方法 - Google Patents

微生物発電装置及び微生物発電方法 Download PDF

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Abstract

【課題】イオン透過性非導電性膜の透気度が適切であり、安定して高い発電量が得られる微生物発電装置を提供する。【解決手段】負極6を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室4と、該負極室4に対しイオン透過性非導電性膜2を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜2に接するエアーカソードを有する正極室3とを備えた微生物発電装置において、前記イオン透過性非導電性膜2がガーレー値1,000sec/100mL以上の親水性非導電性膜であることを特徴とする微生物発電装置。【選択図】図1

Description

本発明は、微生物の代謝反応を利用する発電装置に関する。本発明は特に、有機物を微生物に酸化分解させる際に得られる還元力を電気エネルギーとして取り出す微生物発電装置に関する。
微生物を用いた発電装置として、特許文献1には、正極室と負極室とを区画する電解質膜に接するように、正極板として多孔質体を設置し、正極室に空気を流通させ、多孔質体の空隙中で空気と液とを接触させるものが記載されている。なお、以下、このように正極室内に空気等の酸素含有ガスを流通させ、酸素を電子受容体として利用する正極を「エアーカソード」と称す場合がある。
エアーカソードを用いる微生物発電装置であれば、カソード液が不要で、また、正極室に単に酸素含有ガスを流通させるのみで良く、カソード液中への曝気の必要がないといった利点がある。
特許文献2には、正極室と負極室を区隔するイオン透過性膜として、非導電性物質よりなる紙、織布、不織布、ハニカム成形体、または格子状成形体を用いた微生物発電装置が記載されている。このようなイオン透過性膜は、イオン交換膜に比べて安価である。
特開2004−342412号公報 特開2009−231229号公報
エアーカソードを用いた微生物発電装置で、正極室と負極室を区隔するイオン透過性膜に数種類の紙、織布、不織布など用いた装置を作成して運転したところ、高い発電量が得られるものと得られないものがあった。検討の結果、イオン透過性膜の透気性が発電性能に影響していることが分かった。高い発電量を得るにはイオン透過性の高い膜が好ましいが、一般にイオン透過性の高い膜は空気を透過しやすい傾向にある。イオン透過性が高くても空気が透過しやすい膜では、カソードからアノードに透過する空気(酸素)量が多くなり、アノードで好気反応による有機物分解が起きてしまい、発電効率が低下する。言い換えると、発電微生物は嫌気性条件下で有機物を酸化できるが、酸素があると増殖できずに他の好気性微生物が繁殖してしまうため発電効率が下がり、最悪の場合は隔膜やアノードにスライムが発生・付着してしまう懸念がある。ここで、殺菌剤を使用すると好気性微生物は除去されるものの発電微生物も影響を受ける上に、隔膜や電極触媒が劣化して性能が下がってしまうので殺菌剤を使用することは望ましくない。
本発明は、イオン透過性非導電性膜の透気度が適切であり、安定して高い発電量が得られる微生物発電装置を提供することを目的とする。
本発明の微生物発電装置は、負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とを備えた微生物発電装置において、前記イオン透過性非導電性膜がガーレー値1,000sec/100mL以上の親水性非導電性膜であることを特徴とする。
本発明の一態様では、前記イオン透過性非導電性膜は、非導電性物質よりなる紙、織布、又は不織布である。
ガーレー値が低い、すなわち、空気が透過しやすいイオン透過性非導電性膜を備えた微生物発電装置では、カソードからアノードに透過する空気(酸素)量が多く、アノードで好気反応による有機物分解が起きてしまい、発電効率が低下する。一方、ガーレー値が高い、すなわち、空気が透過しにくいイオン透過性非導電性膜を備えた微生物発電装置では、アノードで好気反応が起こりにくく、発電反応効率を向上させることができる。
本発明の微生物発電装置では、ガーレー値が1,000sec/100mL以上のイオン透過性膜を用いており、発電効率が高い。
本発明の一実施形態に係る微生物発電装置の断面模式図である。
以下、図1を参照して本発明の微生物発電装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の微生物発電装置の概略的な構成を示す模式的断面図である。
この微生物発電装置にあっては、槽体1内がイオン透過性非導電性膜2によって正極室3と負極室4とに区画されている。正極室3内には、イオン透過性非導電性膜2に接するように正極5が配置されている。
負極室4内には、導電性多孔質材料よりなる負極6が配置されている。この負極6は、ガーレー値1,000sec/100mL以上、好ましくは1,000〜6,000sec/100mLのイオン透過性非導電性膜2に、直に、又は1〜2層程度の微生物の膜を介して接しており、イオン透過性非導電性膜2がカチオン交換膜であれば、負極6からイオン透過性非導電性膜2にプロトン(H)が受け渡し可能となっている。
正極室3内は、空室であり、ガス流入口7から酸素含有ガス(本実施の形態においては、空気)が導入され、ガス流出口8から排出配管25を経て排ガスが流出する。
多孔質材料よりなる負極6に微生物が担持されている。負極室4には流入口4aから負極溶液Lを導入し、流出口4bから廃液を排出させる。なお、負極室4内は嫌気性とされる。
負極室4内の負極溶液Lは循環往口9、循環配管10、循環用ポンプ11及び循環戻口12を介して循環される。この循環配管10には、負極室4から流出してきた液のpHを測定するpH計14が設けられると共に、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ添加用配管13が接続され、負極溶液LのpHが7〜9となるように、必要に応じてアルカリが添加される。
正極室3内で生じた凝縮水は、図示しない凝縮水流出口から排水される。
正極5と負極6との間に生じた起電力により、端子20,22を介して外部抵抗21に電流が流れる。
正極室3に、酸素と炭酸ガスと水蒸気とを含む好気性生物処理排ガスを通気すると共に、必要に応じポンプ11を作動させて負極溶液Lを循環させることにより、負極室4内では、
(有機物)+HO→CO+H+e
なる反応が進行する。この電子eが負極6、端子22、外部抵抗21、端子20を経て正極5へ流れる。
上記反応で生じたプロトンHは、イオン透過性非導電性膜2を通って正極5に移動する。正極5では、
+4H+4e→2H
なる反応が進行する。
負極室4では、微生物による水の分解反応によりCOが生成することにより、pHが低下しようとする。そこで、pH計14の検出pHが好ましくは7〜9となるようにアルカリが負極溶液Lに添加される。このアルカリは、負極室6に直接に添加されてもよいが、循環水に添加することにより、負極室6内の全域を部分的な偏りなしにpH7〜9に保つことができる。
ガーレー値1,000sec/100mL以上のイオン透過性非導電性膜2として、好ましくは紙、織布、又は不織布を用いる。ガーレー値は、JIS P8117:2009によって測定される。ガーレー値は、膜の厚さ方向の空気の通り抜け難さを示し、紙などの透気度を表す試験方法として広く使われている。一定の圧力をかけたときに一定体積(100mL)の空気が透過するのに要した時間(sec)で表され、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方が膜の厚さ方向の連通性がよいことを意味し、その数値が大きい方が膜の厚さ方向の連通性が悪いことを意味する。連通性とは、厚さ方向の孔のつながり度合いである。
ガーレー値が低い、すなわち、空気が透過しやすいイオン透過性膜では、カソードからアノードに透過する空気(酸素)量が多く、アノードで好気反応による有機物分解が起きてしまい、発電効率が低下する。一方、ガーレー値が高い、すなわち、空気が透過しにくいイオン透過性膜では、アノードで好気反応が起こりにくく、発電反応効率を向上させることができる。
なお、イオン透過性膜は、負極室に保持される微生物及び電子供与体を含む液と接しており、液中のイオンを効率よくエアカソードに透過させるため、親水性(水に濡れやすい、水滴をつくらない、はじかない)を有することが望ましい。例えば、ポリオレフィン、ガラス、シリカなどの水の接触角90°以下の物質でつくられた紙、織布又は不織布や、上記物質で表面加工された膜(紙、織布又は不織布)が好ましい。
紙、織布、不織布を構成する非導電性材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルアルコール(PVA)、セルロース、酢酸セルロース等が好適である。プロトンを透過させ易くするために、イオン透過性非導電性膜は厚さが10μm〜1000μm特に25〜100μm程度の薄いものが好ましい。
次に、この微生物発電装置の微生物、負極溶液などのほか、負極及び正極の好適な材料等について説明する。
負極溶液L中に含有させることで電気エネルギーを産生させる微生物は、電子供与体としての機能を有するものであれば特に制限されない。例えば、Saccharomyces、Hansenula、Candida、Micrococcus、Staphylococcus、Streptococcus、Leuconostoa、Lactobacillus、Corynebacterium、Arthrobacter、Bacillus、Clostridium、Neisseria、Escherichia、Enterobacter、Serratia、Achromobacter、Alcaligenes、Flavobacterium、Acetobacter、Moraxella、Nitrosomonas、Nitorobacter、Thiobacillus、Gluconobacter、Pseudomonas、Xanthomonas、Vibrio、Comamonas及びProteus(Proteus
vulgaris)の各属に属する細菌、糸状菌、酵母などを挙げることができる。このような微生物を含む汚泥として下水等の有機物含有水を処理する生物処理槽から得られる活性汚泥、下水の最初沈澱池からの流出水に含まれる微生物、嫌気性消化汚泥等を植種として負極室に供給し、微生物を負極に保持させることができる。発電効率を高くするためには、負極室内に保持される微生物量は高濃度であることが好ましく、例えば微生物濃度は1〜50g/Lであることが好ましい。
負極溶液Lとしては、微生物又は細胞を保持し、かつ発電に必要な組成を有する溶液が用いられる。例えば、呼吸系の発電を行う場合は、負極側の溶液としては、ブイヨン培地、M9培地、L培地、Malt
Extract、MY培地、硝化菌選択培地などの呼吸系の代謝を行うのに必要なエネルギー源や栄養素などの組成を有する培地が利用できる。また、下水、有機性産業排水、生ごみ等の有機性廃棄物を用いることができる。
負極溶液L中には、微生物又は細胞からの電子の引き抜きをより容易とするために電子メディエーターを含有させてもよい。この電子メディエーターとしては、例えば、チオニン、ジメチルジスルホン化チオニン、ニューメチレンブルー、トルイジンブルー−O等のチオニン骨格を有する化合物、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン等の2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン骨格を有する化合物、ブリリアントクレジルブルー、ガロシアニン、レソルフィン、アリザリンブリリアントブルー、フェノチアジノン、フェナジンエソスルフェート、サフラニン−O、ジクロロフェノールインドフェノール、フェロセン、ベンゾキノン、フタロシアニン、あるいはベンジルビオローゲン及びこれらの誘導体などを挙げることができる。
さらに、微生物の発電機能を増大させるような材料、例えばビタミンCのような抗酸化剤や、微生物中の特定の電子伝達系や物質伝達系のみを働かせる機能増大材料を溶解すると、さらに効率よく電力を得ることができるので好ましい。
負極溶液Lは、必要に応じ、リン酸バッファを含有していてもよい。
負極溶液Lは有機物を含むものである。この有機物としては、微生物によって分解されるものであれば特に制限はなく、例えば水溶性の有機物、水中に分散する有機物微粒子などが用いられる。負極溶液は、下水、食品工場排水などの有機性廃水であってもよい。負極溶液L中の有機物濃度は、発電効率を高くするために100〜10000mg/L程度の高濃度であることが好ましい。
正極室に流通させるガスとしては、空気が好ましいが、酸素を含んでいればよく、これに限定されない。
負極は、多くの微生物を保持できるよう、表面積が大きく空隙が多く形成され通水性を有する多孔体が好ましい。具体的には、少なくとも表面が粗とされた導電性物質のシートや導電性物質をフェルト状その他の多孔性シートにした多孔性導電体(例えばグラファイトフェルト、発泡チタン、発泡ステンレス等)が挙げられる。
このような多孔質の負極を直接に又は微生物層を介してイオン透過性非導電性膜に当接させた場合、電子メディエータを用いることなく、微生物反応で生じた電子が負極に渡るようになり、電子メディエータを不要とすることができる。
複数のシート状導電体を積層して負極としてもよい。この場合、同種の導電体シートを積層してもよく、異なる種類の導電体シート同士(例えばグラファイトフェルトと粗面を有するグラファイトシート)を積層してもよい。
負極は全体の厚さが3mm以上40mm以下、特に5〜20mm程度であることが好ましい。積層シートによって負極を構成した場合、シート同士の合わせ面(積層面)に沿って液が流れるように、積層面を液の流入口と流出口とを結ぶ方向に配向させるのが好ましい。
正極は、導電性基材と、該導電性基材に担持された酸素還元触媒とを有することが好ましい。
導電性基材としては、導電性が高く、耐食性が高く、厚みが薄くても十分な導電性と耐食性、更には導電性基材としての機械的強度を有するものであれば良く、特に制限はないが、グラファイトペーパー、グラファイトフェルト、グラファイトクロス、ステンレスメッシュ、チタンメッシュ等を用いることができ、これらのうち、特に耐久性と加工のしやすさ等の点から、グラファイトペーパー、グラファイトフェルト、グラファイトクロス等のグラファイト系基材が好ましく、とりわけグラファイトペーパーが好ましい。なお、これらのグラファイト系基材はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂によって疎水化されたものであっても良い。
正極の導電性基材の厚さは、厚過ぎると酸素の透過が悪くなり、薄過ぎると、基材に必要な強度等の要求特性を満たすことができないことから、20〜3000μm程度であることが好ましい。
酸素還元触媒としては、白金等の貴金属のほか、安価で且つ触媒活性が良好であるところから、二酸化マンガン等の金属酸化物が好適であり、その担持量は、0.01〜2.0mg/cm程度とすることが好ましい。
以下、実施例及び比較例について説明する。
以下の実施例及び比較例では、次の構造を有する微生物発電装置を用い、イオン透過性膜として互いに異なるものを用いた。
<微生物発電装置の構造>
7cm×25cm×2cm(厚さ)の負極室に、厚さ1cmのグラファイトフェルトを2枚重ねて充填して負極を形成した。この負極に対して、イオン透過性非導電性膜を介して正極室を形成した。正極室は7cm×25cm×0.5cm(厚さ)であり、PTFEで撥水処理した厚さ160μmのカーボンペーパー(東レ株式会社製)に、田中貴金属社製Pt触媒(Pt担持カーボンブラック,Pt含有量50重量%)を5重量%ナフィオン(登録商標)溶液(デュポン社製)に分散させた液を、付着量が0.4mg/cmとなるように塗布し、50℃で乾燥させて得られたものを正極として、上記膜と密着させた。負極のグラファイトフェルトと正極のカーボンペーパーには、ステンレス線を導電性ペーストで接着して電気引出し線とし、2Ωの抵抗で接続した。
負極室には、pHを7.5に維持し、酢酸1,000mg/Lとリン酸及びアンモニアを含む負極溶液を通液した。この負極溶液は予め、別水槽で35℃に加温してから負極室へ10mL/minで通液することにより、負極室の温度を35℃に加温した。なお、負極溶液の通液に先立って、他の微生物発電装置の流出液を植菌として通液した。正極室には、常温の空気を0.5L/minの流量で通気した。
イオン透過性非導電性膜として、以下のようにガーレー値が80sec/100mL(比較例1)、600sec/100mL(比較例2)、1200sec/100mL(実施例1)又は4500sec/100mL(実施例2)のポリオレフィン(ポリプロピレン)製不織布(厚さ30〜40μm)を用いた4系列をそれぞれ1ヶ月間運転した。結果は次の通りであった。
[比較例1](ガーレー値80sec/100mL)
負極溶液の通液開始直後から発電量の上昇が見られず、1ヶ月の間、負極室1mあたりの発電量は0.2〜0.5W(0.2〜0.5W/m)で推移した。
[比較例2](ガーレー値600sec/100mL)
負極溶液の通液開始から発電量は上昇したが、5日後に30W/mに達したのをピークに低下し、10日後以降は10W/m前後で推移した。
[実施例1](ガーレー値1,200sec/100mL)
負極溶液の通液開始から発電量は上昇し、5日後に200W/mに達した後、約2週間に渡り、170〜210W/mで推移し、1ヶ月後も150W/mを維持していた。
[実施例2](ガーレー値4,500sec/100mL)
負極溶液の通液開始から発電量は上昇し、7日後に180W/mに達した後、1ヶ月後まで160〜180W/mで安定して推移した。
以上のことから、ガーレー値1,000sec/100mL以上の不織布を用いることにより、高い発電量が長期間にわたり安定して維持されることが認められた。
1 槽体
2 イオン透過性非導電性膜
3 正極室
4 負極室
5 正極
6 負極

Claims (2)

  1. 負極を有し、微生物及び電子供与体を含む液を保持する負極室と、該負極室に対しイオン透過性非導電性膜を介して隔てられており、該イオン透過性非導電性膜に接するエアーカソードを有する正極室とを備えた微生物発電装置において、前記イオン透過性非導電性膜がガーレー値1,000sec/100mL以上の親水性非導電性膜であり、前記イオン透過性非導電性膜は、非導電性物質よりなる紙、織布、又は不織布であることを特徴とする微生物発電装置。
  2. 請求項1の微生物発電装置を用いる微生物発電方法であって、前記ガーレー値1,000sec/100mL以上のイオン透過性非導電性膜によって正極室から負極室への酸素透過を抑制することを特徴とする微生物発電方法。
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