以下、本発明をヒトの受精卵に適用した実施例について説明する。例えば、ヒトの受精卵を培養する場合には、通常、培養しながら受精卵の成育段階が判定され、これにより、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否かが判定される。本発明の成育情報管理システムは、マイクロウェルの拡大画像から、そのマイクロウェルと細胞の成育情報とを対応付けることにより、間違いのない成育情報の管理を実現するとともに、受精卵の特徴量を自動的に抽出して受精卵の成育段階の判定を可能にする。
図1は、本発明の成育情報管理システムの一実施形態の構成図を示す。成育情報管理システム1は、細胞培養容器100と、画像取得装置110と、第2識別子読取装置120と、成育情報管理装置130とから構成される。以下、成育情報管理システム1の各構成要素について説明する。
図1に示すように、細胞培養容器100は、第1識別子101と、第2識別子102とを有する。図2及び図3は、細胞培養容器100の具体的な構成を示す。本実施形態の細胞培養容器100は、底部103と側壁104とを有し、底部103に、細胞を収容するための複数のマイクロウェル105が配置されてなる細胞収容部106を有する。底部103の形状は特に制限されず、三角形および四角形等の多角形の形状でもよく、円(円形、略円形、楕円形および略楕円形を含む)の形状でもよく、側壁104は底部103の外縁を囲うように形成される。
通常、底部103と反対側は開口しており、開口部の形状は好ましくは底部103の形状と同一である。好ましくは、開口部が円形で、開口幅が、好ましくは30〜60mm、特に35mmのものが用いられる。これは従来の細胞培養に用いられている細胞培養容器と同等のサイズであり、汎用の細胞培養容器から簡便に作製できること、および既存の培養装置等に適合しやすいことから、上記のようなサイズのものが好ましい。なお、細胞培養容器100は、通常の細胞培養容器と同様に蓋を有していてもよい。
図3及び図4は、本発明の細胞培養容器の一実施形態の細胞収容部の拡大上面図を示す概略図である。複数のマイクロウェル105の近傍には、それぞれ、第1識別子101がマイクロウェル105ごとに対になって付されており、第1識別子101のその対となるマイクロウェル105に対する相対位置が、第1識別子101とマイクロウェル105の対ごとに異なることを特徴とする。第1識別子101のマイクロウェル105に対する相対位置が、マイクロウェル105ごとに異なることによって、マイクロウェル105と第1識別子101の対を1組観察するだけで、複数のマイクロウェル105における当該マイクロウェルの位置を特定することができる。第1識別子101は、各マイクロウェル105の近傍に付されていることから、高倍率で観察する際に、マイクロウェル105から観察位置を大きくずらす必要はなく、迅速な観察が可能になる。さらに、高倍率で細胞を撮影した際も、拡大検体画像には、マイクロウェル105とともに第1識別子101が撮影されることから、拡大検体画像に対して手作業で情報を付与する必要がなく、煩雑な作業を回避でき、作業者のミスによる関連付けの誤りが発生するリスクも回避できる。
マイクロウェル105は、壁面と開口部を有する凹部を形成し、細胞培養容器100の底部103に直接窪みとして設けられた凹部でもよいし、底部103から突出した部材により形成される凹部でもよい。したがって、上面視における各マイクロウェル105の開口部の面積は、換言すれば、マイクロウェル105の開口部の外縁が形成する図形の面積である。マイクロウェル105の開口部の外縁が形成する図形は特に制限されず、三角形および四角形等の多角形の形状、円(円形、略円形、楕円形および略楕円形を含む)の形状、あるいは、U字の形状等でもよいが、好ましくは円形である。なお、マイクロウェル105は、マイクロウェル105の中心に向かって階段状の凹部を形成するような形状でもよい。細胞などが中心位置へ流れ易くなるためである。
マイクロウェル105の開口部の外縁が円形である場合、開口幅は円の直径に等しく(図3のR)、その直径は、培養する細胞の最大寸法より大きいものとなる。なお、細胞培養容器100の上面視における各マイクロウェル105の開口部の面積は、好ましくは3mm2以下、より好ましくは1mm2以下、さらに好ましくは0.5mm2以下であり、好ましくは0.03mm2以上である。
本発明の細胞培養容器100の底部103には、マイクロウェル105が、好ましくは4個以上、さらに好ましくは8個以上、例えば10個以上で、好ましくは50個以下、より好ましくは30個以下の個数で配置されており、したがって、受精卵等の細胞を、1のマイクロウェル105に1個ずつ配置して、複数の細胞を培養することができる。
近接する複数のマイクロウェル105は、正方格子状又は最密充填状に配置されていることが好ましい。例えば、25個のマイクロウェルを5×5の正方格子状に配置する場合を挙げることができる。正方格子状又は最密充填状に配置することにより、細胞培養容器100の底部103における各マイクロウェル105の位置の特定が、第1識別子101との組み合わせでさらに容易になり、自動化処理に適用しやすい。
複数のマイクロウェル105の配置は、正方格子又は最密充填の配置から、一部が欠落したような配置でもよい。例えば、8個以上のマイクロウェルが、平行四辺形の辺上および頂点上に等しいピッチで配置され、細胞収容部を構成している場合が挙げられる。平行四辺形には、正方形、長方形、菱形およびそれ以外の平行四辺形が包含される。マイクロウェル105が平行四辺形の辺上および頂点上に配置されるとは、マイクロウェル105の開口部の外縁が形成する図形の重心が平行四辺形の辺上および頂点上に配置されることをさす。例えば、図3に示す実施形態では、8個のマイクロウェルが、正方形の4つの頂点に1つずつ配置され、かつ4つの辺の中点に1つずつ配置されている。
各マイクロウェル105と対になって付される第1識別子101の位置は、マイクロウェル105の内部、外部を問わないが、好ましくはマイクロウェル105の外部に配置される。マイクロウェル105の内部に設けると受精卵の観察を阻害する可能性や、受精卵の培養性能に影響を及ぼす可能性があるためである。好ましくは、図3及び図4に示すように、第1識別子101は、複数配置されたマイクロウェル105同士の隙間に付される。第1識別子101は、そのような隙間に配置可能なように十分微小なものである。第1識別子101のサイズは、好ましくはマイクロウェル105のサイズより小さい。
また、第1識別子101は、どのマイクロウェル105と対になっているかが明らかなように、対となるマイクロウェル105の十分近傍に付されることとなる。したがって、各第1識別子101は、好ましくは、すべてのマイクロウェル105の中で、対となるマイクロウェル105との距離が最も小さくなるように付される。第1識別子101とマイクロウェル105との距離は、マイクロウェル105の開口部が形成する図形の重心と第1識別子101が形成する図形の重心との距離として定義される。したがって、第1識別子101とマイクロウェル105との距離は、好ましくはマイクロウェル105の開口幅の1/2より大きく、マイクロウェル105間のピッチよりも小さい。
第1識別子101は、好ましくは細胞収容部106内のマイクロウェル105のすべてに付されるが、第1識別子101が付されていないマイクロウェル105が数個(例えば、細胞収容部106に含まれるマイクウェル全体の個数の10%以下で)含まれていてよい。細胞が収容されず、観察対象でないマイクロウェル105が存在する場合に、そのようなマイクロウェル105には第1識別子101は必要ないからである。第1識別子101は、対となるマイクロウェル105に好ましくは1つ付されるが、2つ以上の識別子が付されていてもよい。
第1識別子101の形状、すなわち第1識別子101が形成する図形の形状は、特に制限されない。図形の例として、文字、数字、多角形などの図形、矢印、線(バー)、ドット、QRコード、バーコードおよびこれらの組合せが挙げられる。受精卵等の細胞を個別に収容するのに好適な微小なマイクロウェル105の近傍に、好ましくは当該マイクロウェル105よりサイズの小さい第1識別子101を付すことから、第1識別子101の形状は、成形が容易な単純な形状であることが好ましい。細胞培養容器100は、射出成型で製造される場合が多いため、あまり複雑な形状を微小なサイズで成形することが困難だからである。第1識別子101の形状は単純であっても、すなわち第1識別子101自体が持つ情報が少なくても、マイクロウェル105との相対位置という情報を付加することによって、各マイクロウェル105の位置を特定することができる。また、第1識別子101を複雑な形状とすると、細胞培養容器100の製造時における歩留りが低下するおそれがあるが、単純な形状とすることで、歩留りの低下を回避でき、製造コストを下げることができる。
したがって、第1識別子101は、好ましくはドット状または線状(バー状)の形状を有する。図3及び図4は、ドット状の第1識別子101の例である。この例では、8個のマイクロウェル105が、正方形の4つの頂点に1つずつ配置され、かつ4つの辺の中点に1つずつ配置され、細胞収容部106を構成している。そして、ドット状の第1識別子101が、各マイクロウェル105の近傍に1つずつ付されている。第1識別子101のその対となるマイクロウェル105に対する相対位置が、第1識別子101とマイクロウェル105の対ごとに異なる。
第1識別子101のその対となるマイクロウェル105に対する相対位置が、第1識別子101とマイクロウェル105の対ごとに異なることには、第1識別子101とその対となるマイクロウェル105との距離が、対ごとに異なること、ならびに第1識別子101のその対となるマイクロウェル105に対する角度が異なることが包含される。
第1識別子101とマイクロウェル105との距離については上述のとおりであるが、第1識別子101のマイクロウェル105に対する角度αについては、以下のように定義することができる。例えば図3及び図4に示す実施形態において、角度αは、上面視において細胞培養容器100の底部103に一本の直線Xを引いた場合に、当該直線Xに平行な直線と、マイクロウェル105の重心と第1識別子101の重心とを通る直線Yとがなす角度と定義することができる(図4)。そして、角度αを、マイクロウェル105と第1識別子101の対ごとに異なるよう配置することで、複数のマイクロウェル105における特定のマイクロウェル105の位置を特定することができる。距離と角度を組み合わせて情報量を増大させることもできる。この実施形態では、第1識別子101のマイクロウェル105に対する角度αが、対ごとに異なることから、一対のマイクロウェル105と第1識別子101を観察するだけで、各マイクロウェル105の位置を特定することができる。
また、図5及び図6は、線状の第1識別子101の例である。この例では、8個のマイクロウェル105が、正方形の4つの頂点に1つずつ配置され、かつ4つの辺の中点に1つずつ配置され、細胞収容部106を構成している。そして、線状の第1識別子101が、各マイクロウェル105の近傍に1つずつ付されている。
図6は、それぞれ図5における位置A、E、Hのマイクロウェル105と第1識別子101の対の顕微鏡画像を表す。この実施形態では、第1識別子101とマイクロウェル105との距離は、いずれの対についてもほぼ同一であるが、第1識別子101のマイクロウェル105に対する角度α及び/又は線(バー)の長さが、対ごとに異なることから、一対のマイクロウェル105と第1識別子101を観察するだけで、各マイクロウェル105の位置を特定することができる。さらに、いずれの第1識別子101も、同方向を向いた線状であり、かつマイクロウェル105に対して右側に付されていることから、高倍率で撮影されたマイクロウェル105と第1識別子101の一対の拡大画像においても、第1識別子101の位置と線(バー)の向きに基づいて、撮影時の細胞培養容器の向きを特定できる。ここでいう「向き」は自転角度であって、角度αとは異なる。例えば、図4の実施形態においてドットを線(バー)に置き換えた場合、線がドットの位置で直線Xに対して回転(自転)する角度、すなわち直線Xと識別子の線がなす角度をさす。この向きの情報量を使って、細胞培養容器の向きを特定することができる。
また、複数のマイクロウェル105にそれぞれ付される複数の第1識別子101が、同一軸上に配置されることが好ましい場合もある。ここで複数のマイクロウェル105とは、細胞収容部106内のすべてのマイクロウェル105である必要はなく、好ましくはそのうちの2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは4以上の、その重心が同一軸上にある複数のマイクロウェルをさす。重心が同一軸上にある複数のマイクロウェル105に、それぞれ付される複数の第1識別子101が、同一軸上に配置されることで、高倍率観察において、観察対象となるマイクロウェル105を変更する場合に、細胞培養容器100をレンズに対してX軸またはY軸方向にのみ動かすことで、マイクロウェル105と第1識別子101の対を捕えることができるため、迅速な観察が可能となる。
次に、第2識別子102について説明する。細胞培養容器100には、第2識別子102が付されている。第2識別子102の例として、文字、数字、多角形などの図形、QRコード、バーコード、ICタグ、ドットパターン(コード化パターン)およびこれらの組合せが挙げられる。ここで、ドットパターン(コード化パターン)の技術について簡単に説明する。ドットパターンは、例えば、電子ペン用の専用ペーパーの表面に印刷される。ドットパターンは、約0.3mm間隔の格子状の上に配置された縦横6×6=36ドットの組合せである。縦横6×6個のドットが、専用ペーパー上のどの部分から6×6ドットを取ってもユニークなパターンとなるように配置されている。これら36個のドットにより形成されるドットパターンは位置座標(例えば、そのドットパターンがその専用ペーパー上のどの位置にあるのか)と専用ペーパー毎に固有の識別子であるドットパターンアドレスを保持している。各ドットは、格子の基準位置からのシフト方向によって、予め決められた情報に対応付けられる。すなわち、この技術によれば、各ドットの格子の基準位置からのシフト方向を、文字、数字などに対応させることにより、ドットパターンを第2識別子102に対応させることが可能となる。なお、ドットパターンの撮影は、カメラを内蔵した電子ペン等の読取手段によって行うことができる。ここで説明したドットパターンの技術については、特開2004−252607号公報や特開2004−054375号公報にも記載されており、これらの文献に記載の技術を利用することができる。第2識別子102は、細胞培養容器100の側壁104あるいは底部103に付されてもよい。また、細胞培養容器100が蓋を備える場合には、第2識別子102は蓋に付されてもよい。第2識別子102は、細胞培養容器100毎に異なり、第2識別子102を認識することにより、細胞培養容器100を特定することができる。
高倍率でマイクロウェル105と第1識別子101の対を1つ撮影し、これを繰り返して複数の対を撮影する場合、撮影する際の細胞培養容器100の向きを常に一定とする必要がある。そうでなければ、上記の角度αに、細胞培養容器100自体の傾きが含まれてしまい、細胞培養容器100上では相対位置が異なるにもかかわらず、拡大画像上では相対位置が区別できない場合があるからである。撮影する際の細胞培養容器100の向きを常に一定とする観点から、細胞培養容器100には、第1識別子101及び第2識別子102とは別の、細胞培養容器100の向きを特定するための第3識別子を付すことが好ましい。
第3識別子は、拡大検体画像を撮影する際に用いることから、目視で確認できるものであることが好ましい。したがって、細胞培養容器100の上面視において、第3識別子の面積は、マイクロウェル105の開口部の面積より大きいことが好ましい。第3識別子は、底部103上であって、複数のマイクロウェル105が配置されてなる細胞収容部106の外側に付すことが好ましい(例えば図2の107)。第3識別子は細胞培養容器100の側壁104に付してもよい。あるいは、細胞培養容器100自体の形状により、細胞培養容器の向きを常に一定とすることも可能である。すなわち、細胞培養容器100の側壁104の外周形状を細胞培養容器の向きを特定できる形状、例えば円が欠けた形状とすることにより、撮影する際の細胞培養容器100の向きを常に一定とすることも可能である。この場合、細胞培養容器の形状は、細胞培養容器100の向きを特定できる限り、特に制限されない。
あるいは、第1識別子101が線状であれば、ドット状の場合と異なり、二次元の情報を有することから、第3識別子がなくても、高倍率で撮影されたマイクロウェル105と第1識別子101の対の拡大画像において、細胞培養容器の向きをある程度特定することができる。すなわち、いずれの第1識別子101も、細胞培養容器100の上面視において、同方向を向いた線状とすることで、高倍率で撮影されたマイクロウェル105と第1識別子101の対の拡大画像においても、線(バー)の向きに基づいて、撮影時の細胞培養容器の向きをある程度特定できる。
また、細胞収容部106内の複数のマイクロウェル105すべてについて、第1識別子101をマイクロウェルの右側のみ、左側のみ、上側のみ、又は下側のみに付すことにより、高倍率で撮影されたマイクロウェル105と第1識別子101の対の拡大画像においても、細胞培養容器100の向きを特定することができる。対象のマイクロウェル105ごとに第1識別子101のおおまかな位置がある程度決まっているため、高倍率で手動にて受精卵を撮影する際に撮影位置を決めやすい。ここで、マイクロウェルの右側、左側、上側、又は下側とは、マイクロウェルの重心まわり360°を4つに分けたそれぞれの範囲と定義することができ、例えば、図4に示すαが45〜135°の範囲を上側と定義できる。したがって、識別子をマイクロウェルの上側のみに付す場合であっても、その範囲内でマイクロウェルごとに相対位置を異なるようにすることは可能である。
次に、成育情報管理システム1の他の構成要素について説明する。画像取得装置110は、細胞培養容器100のマイクロウェル105内の細胞及び第1識別子101を含む拡大検体画像を撮影するものであり、例えば、顕微鏡である。画像取得装置110として、例えば、1/2インチのCCD素子、4、10、20倍の対物レンズを備えたものがよく用いられる。
第2識別子読取装置120は、細胞培養容器100の第2識別子102を読み取る装置である。第2識別子読取装置120については、第2識別子102に対応した装置を採用すればよく、例えば、公知の文字・図形認識装置、カメラ、バーコードスキャナ、ICタグリーダーなどが挙げられる。
成育情報管理装置130は、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの情報処理装置によって構成されている。この情報処理装置は、中央演算処理部(CPU:Central Processing Unit)などのプロセッサと、メモリやハードディスクなどの記憶装置131と、キーボード、マウスなどの入力部132と、ディスプレイなどの出力部133とを備えている。なお、図1では、成育情報管理装置130を1つの情報処理装置として示しているが、これに限定されない。成育情報管理装置130の構成要素をネットワーク上の複数の情報処理装置に分散して構成してもよい。また、各種テーブル及びデータベースなどは、他の情報処理装置あるいはネットワーク上のサーバに格納されてもよい。
次に、本実施形態の成育情報管理システム1で使用される各種情報について説明する。記憶装置131には、検体情報データベース141と、ウェル設計情報142、第2識別子対応テーブル143と、成育情報データベース144と、判定プロファイルテーブル145とが格納されている。なお、これら各種テーブル及びデータベースについて、以後の説明では「テーブル」構造を用いて説明するが、必ずしもテーブルによるデータ構造で表現されていなくても良く、他のデータ構造で表現されていても良い。そのため、データ構造に依存しないことを示すために、以下では、各種テーブル及びデータベースを単に「情報」と呼ぶことがある。
図7は、検体情報データベース141の一例である。検体情報データベース141は、細胞培養容器内の細胞(受精卵などの個別管理が必要な細胞)に関する各種情報を格納する。検体情報データベース141は、患者ID701、施術日時702と、細胞培養容器ID(容器ID)703と、ウェルID704とを構成項目として含む。患者ID701は、患者を一意に識別する番号である。患者ID701を、細胞培養容器ID703及びウェルID704に対応付けることにより、ヒトの不妊治療の際などのID管理に適用が可能となる。施術日時702は、施術日時を示す数字の列である。後述するが、受精卵の成育段階を判定する場合、施術日時からの経過時間に基づいて判定する場合がある。このような場合、検体情報データベース141において施術日時などの基準となる情報を管理することが好ましい。細胞培養容器ID703は、細胞培養容器100を一意に識別する番号である。また、ウェルID704は、細胞培養容器100内の各マイクロウェル105の位置を識別するIDである。ウェルID704によって、マイクロウェル105内部に配置した細胞(受精卵など)の検体の情報を管理することができる。
ウェル設計情報142は、少なくとも第1識別子対応テーブルを含む。図8は、第1識別子対応テーブルの一例である。第1識別子対応テーブルは、ウェルID801と、第1識別子101とマイクロウェル105との相対位置を示す情報802(ここでは、第1識別子101のマイクロウェル105に対する角度α)とを構成項目として少なくとも含む。したがって、一対のマイクロウェル105と第1識別子101を観察するだけで、各マイクロウェル105の位置(ウェルID1002)を特定することができる。本実施例では、マイクロウェルの位置に関する情報としてウェルID801を用いているが、これに限定されず、マイクロウェルの位置を特定できる情報であれば他の形式も可能である。
なお、第1識別子対応テーブルにおいて、角度αの値は所定の幅を持たせて設定されてもよい。後述する成育情報管理装置130における画像処理において誤差が生じる可能性があるためである。また、図8では、角度αの情報のみを示しているが、第1識別子101が線(バー)の場合、第1識別子101とマイクロウェル105との相対位置を示す情報(角度α)及び/又は第1識別子101自体が有する情報(線の長さや向きなど)を格納してもよい。また、上述したように、第1識別子101としては、文字、数字、多角形などの図形、矢印、線(バー)、ドット、QRコード、バーコードおよびこれらの組合せが挙げられる。したがって、第1識別子対応テーブルには、これらに対応する第1識別子101に関する情報が格納されていればよい。また、上述では、1つの第1識別子対応テーブルを示したが、細胞培養容器ごとに第1識別子101の数や配列(アライメント)などが変わる場合は、細胞培養容器のタイプごとに第1識別子対応テーブルを保持してもよい。
また、ウェル設計情報142は、第1識別子対応テーブルの他に、例えば、マイクロウェル105の形状、マイクロウェル105の開口部の外縁の寸法、マイクロウェル105の開口部の面積、マイクロウェル105間のピッチなどの設計情報を含んでもよい。また、ウェル設計情報142は、各マイクロウェル105と対となる第1識別子101の設計情報を含んでもよい。第1識別子101の設計情報は、第1識別子101の形状、サイズ、位置などの情報である。
図9は、第2識別子対応テーブル143の一例である。第2識別子対応テーブル143は、細胞培養容器ID901と、第2識別子情報902と、容器タイプ903とを構成項目として少なくとも含む。このテーブルを用いて、細胞培養容器100に付された第2識別子102から各細胞培養容器100を特定することができる。なお、容器タイプ903は、細胞培養容器のタイプを示す情報である。上述したように、細胞培養容器ごとに第1識別子の数や配列などが変わる場合がある。したがって、容器タイプ903の情報を持つことにより、容器タイプ903に対応する第1識別子対応テーブルを選択することができる。
図10は、成育情報データベース144の一例である。成育情報データベース144は、画像取得装置110から取得した拡大検体画像と、この画像に関連する各種情報を格納する。成育情報データベース144は、細胞培養容器ID1001と、ウェルID1002と、成育情報1003とを構成項目として含む。このように、成育情報データベース144では、成育情報1003と、細胞培養容器ID1001及びウェルID1002とが対応付けられている。成育情報1003は、画像情報1004と、画像内のウェルに受精卵が有るか否かを示す情報1005と、画像内のウェル内の細胞の第1の特徴量を示す情報1006と、画像内のウェル内の細胞の第2の特徴量を示す情報1007と、画像情報を取得した日時1008を含む。第1の特徴量を示す情報1006は割球の直径の情報であり、第2の特徴量を示す情報1007は割球の数の情報である。この例では、画像情報1004に対して2つの特徴量の情報を管理しているが、この例に限定されず、1つあるいは2つ以上の特徴量を管理してもよい。また、特徴量も図10の例に限定されず、特徴量の様々な種類については後述する。さらに、成育情報として、特徴量とともに、細胞の成育段階を示す情報(Veek、Gardnerなどの分類のグレード情報)が格納されてもよい。ここで、細胞の成育段階とは、1つの細胞全体の成育段階を意味し、以下では、1つの受精卵の成育段階を例として説明する。
したがって、成育情報データベース144を参照することにより、各画像情報1004が、どのマイクロウェルの拡大検体画像に対応し、かつ、そのマイクロウェル内の細胞の成育段階の情報も同時に管理することができる。また、成育情報データベース144と検体情報データベース141の両方を参照することにより、各画像情報1004が、どのマイクロウェルの拡大検体画像に対応し、かつ、どの患者のいつの施術日時に対応するものであるかを管理することができる。なお、本実施形態では、成育情報データベース144を作成しているが、検体情報データベース141に画像情報や成育情報を登録できる項目を設け、検体情報データベース141に拡大検体画像及び成育情報を登録する形式でもよい。
図11は、判定プロファイルテーブル145の一例である。判定プロファイルテーブル145は、細胞の成育段階を判定するための判定情報を格納するものである。判定プロファイルテーブル145は、適用時期1101と、グレード1102と、条件1103とを構成項目として含む。後述するが、受精卵の成育段階を判定する場合、施術日時からの経過時間に基づいて判定する場合がある。適用時期1101は、施術日時(培養開始日時)からの経過時間を示す。条件1103は、その適用時期1101の場合に拡大検体画像から算出されるべき特徴量の情報と、その特徴量が満たすべき条件の情報を格納している。これにより、施術日時からの経過時間に応じて、算出すべき細胞の特徴量、及び、受精卵の成育状態を判定するための判定条件を切替えることが可能となる。例えば、図11の例において、経過時間が2〜3日の場合は、Veekの評価を考慮した第1レコードのプロファイルが選択される。また、経過時間が4〜5日の場合は、Gardnerの評価を考慮した第2レコードのプロファイルが選択される。Veek、Gardnerについての詳細は後述する。条件1103を満たした場合のグレードの情報は、グレード1102に格納される。このグレード1102の情報を用いて、受精卵の成育段階(あるいは、受精卵の良否)を判定することが可能となる。
次に、成育情報管理装置130について詳しく説明する。図1に示すように、成育情報管理装置130は、第1識別子認識処理部151と、第2識別子認識処理部152と、特徴量算出処理部153と、データベース作成処理部154とを備える。成育情報管理装置130は、これらの処理部151〜154により、画像取得装置110で撮影した拡大検体画像を解析し、上述した各種テーブルなどに基づいて拡大検体画像情報、ウェルID、及び成育情報を対応付ける。これにより、マイクロウェルに対して成育情報を一意に識別することが可能となる。
本実施形態では、成育情報管理装置130の各処理部151〜154を、コンピュータ上で実行されるプログラムの機能として実現してもよい。すなわち、各処理部151〜154は、プログラムコードとしてメモリに格納して、CPUが各プログラムコードを実行することによって各処理部151〜154が実現されてもよい。以下に各処理部151〜154について説明する。
第1識別子認識処理部151は、細胞培養容器100のマイクロウェル105内の細胞及び第1識別子101を含む拡大検体画像を画像取得装置110から受け取り、拡大検体画像に対して輪郭線抽出処理を実行する。輪郭線抽出処理としては、当業者に公知の技術を適用できる。輪郭線抽出処理の一例として、拡大検体画像に対して白と黒の2階調の画像に変換する2値化処理を実行し、2値化された画像で輪郭線を抽出する処理が挙げられる。なお、通常、観察の対象物が透明で、境界の濃淡さが付きにくいため、画素値の変化に対して微分演算を行った後に、2階調の画像に変換する処理を実行してもよい。また、その他の輪郭線抽出処理としては、特開2011−192109号公報に記載の技術を用いてもよい。この文献では、基準プロファイルと候補プロファイルと作成し、基準プロファイルと候補プロファイルとの類似性を示す類似度を算出することで、受精卵の輪郭を決定しているが、この技術をマイクロウェルの輪郭線や第1識別子の輪郭線の決定に適用してもよい。第1識別子認識処理部151は、輪郭線抽出処理によって、マイクロウェル105の開口部の外縁が形成する図形の輪郭線(以下、「外周輪郭線」と呼ぶ)と、第1識別子101が形成する図形の輪郭線とを抽出し、輪郭線抽出画像を出力する(図12)。
また、第1識別子認識処理部151における輪郭線抽出処理の後に、補間処理及び/又は領域定義処理を実行してもよい。補間処理とは、予め用意しておいたパターンと輪郭線抽出画像とを組み合わせることで、輪郭線の途切れた部分を推定して補間する処理である。例えば、輪郭線抽出処理のみだと、マイクロウェル105の外周輪郭線や第1識別子101が形成する図形の輪郭線が途切れ途切れになる場合がある。したがって、マイクロウェル105の形状のパターンと、第1識別子101の形状のパターンとを予め登録しておき、輪郭線抽出画像に対してそれぞれのパターンを重ね合わせて、それぞれの輪郭線を補間する。また、領域定義処理とは、輪郭線で囲まれた領域を定義する処理である。例えば、輪郭線抽出画像上の輪郭線が途切れ途切れの場合には、輪郭線の補間処理後に補間された輪郭線で囲まれた領域を定義する。この領域定義処理を行うことで、その後に行うパターンマッチングを行う範囲や輪郭線で囲まれた領域の寸法あるいは面積の計算の領域を決定することができる。
第1識別子認識処理部151は、輪郭線抽出画像に対してパターン検出処理を実行する。ここで、パターン検出処理とは、輪郭線抽出画像においてどの輪郭線がマイクロウェル105の外周輪郭線であるか、および、どの輪郭線が第1識別子101の輪郭線であるかを検出することである。パターン検出処理としては、当業者に公知の技術を適用できる。一例として、マイクロウェル105の形状のテンプレートと、第1識別子101の形状のテンプレートとを予め成育情報管理装置130に格納しておき、それぞれのテンプレートによってパターンマッチングする方法がある。第1識別子認識処理部151は、それぞれのテンプレートに対して所定の類似度以上の部分をマイクロウェル105の輪郭線あるいは第1識別子101の輪郭線として検出する。なお、画像取得装置110の拡大倍率に対応させてテンプレートを適宜拡大/縮小させてもよい。
輪郭線抽出画像においてマイクロウェル105の外周輪郭と第1識別子101の輪郭線を検出する処理としては、これに限定されず、他の方法でもよい。例えば、ウェル設計情報142内のマイクロウェル105の設計情報及び第1識別子101の設計情報を用いて検出を行ってもよい。例えば、輪郭線抽出画像上の輪郭線からなる図形の寸法や面積などの情報と、マイクロウェル105の設計情報及び第1識別子101の設計情報とを比較して、マイクロウェル105の外周輪郭線と第1識別子101の輪郭線を特定してもよい。
第1識別子認識処理部151は、輪郭線抽出画像に対して第1識別子101の認識処理を実行する。第1識別子認識処理部151は、第1識別子101のマイクロウェルに対する角度αを算出する(図13)。第1識別子101が線(バー)の場合、第1識別子認識処理部151は、角度α及び/又は線(バー)の長さを算出してもよい。その後、第1識別子認識処理部151は、算出された角度αによって第1識別子対応テーブルを参照し、算出された角度αに対応するウェルIDを出力する。
なお、第1識別子認識処理部151の処理はこれに限定されず、他の方法でもよい。第1識別子認識処理部151の処理では、マイクロウェル105と第1識別子101との相対的な位置関係からウェルIDへの対応づけができればよく、図14に示すように、マイクロウェルと第1識別子とを含む複数のテンプレートを用意して、テンプレートマッチングを行ってもよい。第1識別子対応テーブルにおいて、各テンプレートとウェルIDとが関連付けられていれば、テンプレートマッチングの結果から拡大検体画像とウェルIDとの対応付けが可能となる。
第2識別子認識処理部152は、第2識別子読取装置120で読み取った第2識別子102の情報によって第2識別子対応テーブル143を参照し、その情報に対応する細胞培養容器IDを出力する。なお、この方式とは別に、事前に細胞培養容器IDを別の方法で認識させておいて、第2識別子102を第2識別子読取装置120で読み取ることによって認識の正誤をチェックする方式でもよい。
特徴量算出処理部153は、まず、拡大検体画像からマイクロウェル105内に細胞があるか否かを判定する。例えば、図12の左側の図(輪郭線抽出前の拡大検体画像)は、マイクロウェル105内に細胞が存在する場合を示している。マイクロウェル105内に細胞が存在しない場合は、拡大検体画像においてマイクロウェル105内の画素値が一様な分布になる。例えば、特徴量算出処理部153は、マイクロウェル105内に画素値の変動があるかを判定し、マイクロウェル105内に細胞があるか否かを判定する。この判定処理は一例であり、細胞の有無が判定されれば、公知の他の手法を用いてもよい。ここでの判定結果は、成育情報データベース144の情報1005として登録することができる。
また、特徴量算出処理部153は、拡大検体画像の画像情報から各種特徴量を算出する。以下では一例として、ヒトの受精卵の特徴量について説明する。ヒトの受精卵を培養する場合、通常、受精後に受精卵の成育状態が段階的に判定され、これにより、子宮への移植に適した良質な受精卵であるか否かが判定される。
まず、培養開始後、2〜3日目の時期に行われる形態的評価について説明する。受精2〜3日後の3〜8細胞期胚の時点で胚のグレードを評価する方法がある。この評価では、一般的にVeekの分類が用いられている。Veekの分類では、細胞が均等に分かれており、かつ、フラグメンテーション(細胞くず)が少ない胚ほど良好とされている。
以下にVeekのグレードを示す。
グレード1:細胞(割球)の形態が均一でフラグメンテーションを認めない胚
グレード2:細胞(割球)の形態が均等であるが、わずかにフラグメンテーションを認めない胚
グレード3:細胞(割球)の形態が不均一な胚。または、少量のフラグメンテーションを認める胚。
グレード4:細胞(割球)の形態が均一又は不均一で、かなりのフラグメンテーションを認める胚。
グレード5:細胞(割球)をほとんど認めず、フラグメンテーションが著しい胚。
次に、Veekの分類を参考にした、特徴量算出処理部153による特徴量算出処理を説明する。図15は、拡大検体画像から細胞(割球)の均一度を算出する例を示す。図15では、拡大検体画像を簡略的なイラストで示す。なお、以下で説明する処理の主体は、特徴量算出処理部153である。
図15(a)は、本手法をわかりやすく説明するために、拡大検体画像の中で細胞の部分を切り出して示す。なお、特徴量算出処理部153は、拡大検体画像をそのまま画像処理してもよいし、拡大検体画像の細胞部分のみを切り出して画像処理を行ってもよい。上述したように、マイクロウェル105内の細胞の部分は、画素値が変動しており、公知の手法でエッジを検出できるため、細胞部分の画像を切り出すことは可能である。まず、拡大検体画像から割球の輪郭に対応するエッジを検出する。エッジ検出としては、Sobelフィルタ、Laplacianフィルタ、Cannyフィルタなどの公知の手法を用いることができる。なお、上述した第1識別子101を認識する際の輪郭線抽出処理などを用いてもよいし、輪郭線の途切れた部分を推定して補間する処理なども追加で行ってもよい。エッジ検出後に、割球の検出処理を行う。割球の検出処理としては、一例としてハフ変換を用いて円形を検出する方法がある。また、楕円フィッティングなどの公知の手法を用いて割球の検出を行ってもよい。
図15(b)は、割球の検出処理によって検出された部分を示す。よりわかりやすく説明するために、割球として検出された部分を太線として拡大検体画像に重なる形で示す。図15(b)に示すように、検出された各割球には、区別するために例えば、一時的に番号やIDなどが付される。ここでは、割球1〜4が検出されている。なお、ここで検出された割球の数を成育情報データベース144の第2の特徴量を示す情報1007として登録することができる。
次に、割球の均一性の指標となる特徴量を算出する。ここでは、円形度と直径について説明する。ここで、「円形度」は、円らしさを表す値であり、以下の式で定義することができる。
円形度=4πS÷L2
Sは、面積(画素数)であり、Lは周囲長である。この円形度は、値が1となる時、もっとも円に近いことを表す。図15(b)の例では、各割球のエッジで囲まれる画素数をSとして使用し、各割球のエッジの周囲長をLとして使用することで円形度を算出することができる。「直径」は、割球がほぼ円である場合は直径であり、楕円である場合は最大径であり、ひょうたん形など他の形の場合は重心を通る最大長さである。
図15(c)は、各割球について円形度と直径を算出した例を示す。このように割球ごとに特徴量を算出して、これらの全ての特徴量を成育情報として登録してもよいが、これらの複数の特徴量から、成育段階を評価するための所定のスコアを算出してもよい。ここでは、均一性(均一度)のスコアについて説明する。
均一性を示すスコアを一例として以下のように定義する。
均一性=(大きさ揃い度)+(円形度からのずれ度)
ここで、「大きさ揃い度」は、割球の直径の大きさのばらつきを示す値であり、直径の大きさが揃っているほど値は0に近くなり、ばらつきがあるほど値は大きくなる。例えば、以下の式で定義することができる。
大きさ揃い度=変動係数=標準偏差÷平均値
図15(c)の例では、大きさ揃い度は0.365となる。
「円形度からのずれ度」は、全ての割球に対して円形度からのずれを考慮した値であり、割球のそれぞれが円に近ければ値は0に近くなり、円からずれるほど値は大きくなる。例えば、以下の式で定義することができる。
円形度からのずれ度=1−円形度の平均値
図15(c)の例では、円形度からのずれ度は、0.25となる。最終的に、均一性は、大きさ揃い度(0.365)と円形度からのずれ度(0.25)の和から「7.9」となる。このように複数の特徴量から算出されたスコアを成育情報データベース144に登録してもよい。ここで説明したスコアの算出方法は一例であり、他の計算方法が用いられてもよい。例えば、重要な特徴量については重み付けなどをしてもよい。また、スコアを計算する際に、ここで説明した以外の特徴量を用いてもよい。
次に、フラグメンテーションの割合を算出する処理を説明する。図16は、拡大検体画像からフラグメンテーションの割合を算出する例を示す。図16では、拡大検体画像を簡略的なイラストで示す。まず、拡大検体画像から胚領域を抽出する。図15での処理と同様に、胚領域の抽出には、エッジ検出を用いることができる。エッジ検出としては、Sobelフィルタ、Laplacianフィルタ、Cannyフィルタなどの公知の手法を用いることができる。なお、上述した第1識別子101を認識する際の輪郭線抽出処理などを用いてもよいし、輪郭線の途切れた部分を推定して補間する処理なども追加で行ってもよい。エッジ検出後に、胚領域の検出処理を行う。胚領域の検出処理としては、一例としてハフ変換を用いて円形を検出する方法がある。また、楕円フィッティングなどの公知の手法を用いてもよい。図16(b)は、胚領域の検出処理によって検出された部分を示す。よりわかりやすく説明するために、胚領域として検出された部分を点線として拡大検体画像に重なる形で示す。
次に、フラグメンテーションの領域を抽出する。フラグメンテーションとは、胚の中にある割球とは異なる細胞破片(割球よりもサイズが小さい細胞くず)である。図16(a)の画像に示すように、フラグメンテーションの領域は、細胞破片が集まっている領域であるため、領域分割の手法を用いてフラグメンテーションの領域を抽出する。領域分割の手法としては、WaterShed、Split and Merge、Mean Shift、Grabcutなどの公知の手法を用いることができる。図16(c)は、フラグメンテーションの領域を抽出した例を示す。最終的に、胚領域として検出された部分に対するフラグメンテーションの領域の割合を算出する。この割合は、各部分に対応する画素数から算出することができる。図16(c)の例では、フラグメンテーションの割合は42%である。このように算出された特徴量を成育情報データベース144に登録してもよい。
次に、培養開始後、4〜5日目の時期に行われる形態的評価について説明する。受精4〜5日後の胚盤胞のグレードを評価する方法があり、Gardnerの分類が知られている。胚盤胞とは、卵割腔の形成後から着床前の胚形成初期に形成される構造のことである。胚盤胞は、内部細胞塊と栄養外胚葉とから構成される。内部細胞塊は、胚盤胞の内側に形成される細胞集団のことであり、将来胎児を形成することになる細胞集団である。栄養外胚葉は、内部細胞塊は異なる性質を持つ細胞集団であり、将来胎盤の一部を形成することになる細胞集団である。
Gardnerの分類では、胚盤胞の発育ステージを6段階、内部細胞塊と栄養外胚葉をそれぞれ3段階で評価し、それぞれの組み合わせで評価を行っている。一例として、図17は、ある段階の胚盤胞を示し、内部細胞塊と栄養外胚葉を簡略的に示す。図18は、内部細胞塊と栄養外胚葉のそれぞれの評価の例である。例えば、内部細胞塊の大きさや栄養芽細胞の均一性などが指標となる。
まず、内部細胞塊の評価について説明する。内部細胞塊の評価としては、内部細胞塊の大きさ、内部細胞塊の細胞の均一性、内部細胞塊の細胞同士が密に接するか、内部細胞塊の細胞数が多いか、などがある。特徴量算出処理部153は、以下に示すやり方で、拡大検体画像の画像情報から内部細胞塊の各種特徴量を算出する。図17では、内部細胞塊の領域が輪郭によって明確に示されているが、実際には、内部細胞塊は拡大検体画像において胚盤胞の内側でぼんやりと映る。したがって、一例として、胚盤胞を細かく(画素単位、あるいは、数画素単位で)区切り、区切られた部分ごとに内部細胞塊のエリアであるかを判定する。内部細胞塊のエリアは、画素値の情報、粒状度(画素値のばらつき)、空間周波数、あるいは、これらの情報の組み合わせなどで定義することができる。
内部細胞塊の大きさは、検出されたエリア内の最大長さ(エリア内の重心を通る最大長さ)やエリアの面積によって判定される。内部細胞塊の細胞の均一性は、検出されたエリア内の粒状度(画素値のばらつき)によって判定される。また、上述した割球の検出処理と同様に、内部細胞塊のエリア内のエッジを検出して内部細胞塊の細胞数を算出してもよい。さらに、エリア内の内部細胞塊の細胞間の距離(各細胞の重心間の距離)によって内部細胞塊の細胞同士が密に接するかを判定してもよい。
栄養外胚葉の評価としては、栄養外胚葉内の細胞数、栄養外胚葉内の均一性、などがある。特徴量算出処理部153は、以下に示すやり方で、拡大検体画像の画像情報から栄養外胚葉の各種特徴量を算出する。まず、栄養外胚葉が含まれる領域として、上述した内部細胞塊のエリア以外の領域を抽出する。その抽出されたエリア内で、上述と同様に、エッジ検出処理、細胞検出処理(ハフ変換、楕円フィッティング)を実行し、栄養外胚葉内の細胞数を算出する。栄養外胚葉内の均一性は、上記処理で検出された各細胞の粒状度のばらつきなどによって判定することができる。別の方法として、上記処理で検出された細胞のうち所定の直径以下の細胞数をカウントすることで、栄養外胚葉内の均一性を判定してもよい。
以上では、受精2〜3日後、及び4〜5日後に行われる形態的評価について説明したが、受精初期(約1日後)などにおいて形態的評価を行ってもよい。例えば、初期の評価方法として、前核期胚の形態的評価を用いてもよい。前核期胚とは、媒精後、約十数時間程度経過した胚である。卵子の中に精子が入り込むと、卵子由来の前核と、精子由来の前核が寄り添うように並ぶ。図19は、2つの前核及び前核内の核小体の形態を示す。図19(a)〜(c)に示すように、前核の大きさ、2つの前核間の距離や、前核内の核小体の配列などに違いがある。不妊治療の現場において、前核の大きさや配列、さらに、前核内の核小体の大きさや配列、対称性などでその後の胚発生に差が見られることが知られている。
特徴量算出処理部153は、以下に示すやり方で、拡大検体画像の画像情報から前核期胚の各種特徴量を算出してもよい。上述と同様に、エッジ検出処理、細胞検出処理(ハフ変換、楕円フィッティング)を実行し、所定の直径の範囲の細胞を前核として判定する。そして、前核と判定された部分に対して、前核の大きさ(直径や面積)、前核の明度(輝度)、2つの前核間の大きさの差(直径や面積の差)、2つの前核間の距離(重心間の距離)などを算出する。
また、同様のやり方で、前核と判定されたエリアに対して、核小体の検出処理を実行してもよい。細胞検出処理(ハフ変換、楕円フィッティング)を実行し、所定の直径の範囲(すなわち、所定のしきい値より小さい直径)の細胞を核小体として判定する。そして、核小体の大きさ(直径や面積)、核小体の数、核小体間の距離などを算出する。このように算出された特徴量を成育情報データベース144に登録してもよい。
以上、特徴量算出処理部153によって算出される特徴量を説明したが、上述したものに限定されない。上述した実施例では、Veek、Gardner、前核期胚の評価を説明したが、これらの一部の要素を実施してもよいし、これらに類似する他の分類が用いられてもよい。また、細胞の特徴量としては、細胞の数、細胞の形状、細胞の直径、細胞の領域の重心を通る最大長さ、円形度、細胞のアスペクト比、細胞の周囲長、細胞の面積、細胞の濃度(明度や輝度)、細胞の均一性(大きさのずれや画素値のばらつきなど)、全体に対する所定の細胞が占める割合(フラグメンテーションの割合など)、細胞の配列(細胞間の距離や複数の細胞の位置関係)、これらの組み合わせなどが挙げられる。
ここで、「細胞の数」とは、所定の領域内に含まれる細胞の数を意味する。所定の領域とは、1つの細胞の領域でもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域でもよい。例として、1つの受精卵内に含まれる割球の数や、内部細胞塊内に含まれる細胞の数である。また、前核期胚の場合では、「細胞の数」は、受精卵内に含まれる2つの前核のそれぞれの中の核小体の数でもよいし、2つの前核内の全体の核小体の数でもよい。「細胞の形状」とは、少なくとも1つの細胞の領域の輪郭線の形状を意味し、1つの細胞の輪郭線の形状でもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の輪郭線の形状でもよい。また、「細胞の直径」とは、少なくとも1つの細胞の領域の直径を意味し、細胞の形状が円形の場合に用いられる。「細胞の直径」は、1つの細胞の領域の直径でもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の直径でもよい。また、「細胞の領域の重心を通る最大長さ」とは、少なくとも1つの細胞の領域の重心を通る最大長さを意味し、例えば、細胞の形状が円形以外の場合に用いられる。「細胞の領域の重心を通る最大長さ」としては、1つの細胞の領域の重心を通る最大長さでもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の重心を通る最大長さでもよい。また、「円形度」は、上述した円形度を意味する。「細胞のアスペクト比」とは、少なくとも1つの細胞の領域の長径(あるいは長辺)と短径(あるいは短辺)との比率を意味し、1つの細胞の長径と短径との比率でもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の長径と短径との比率でもよい。また、「細胞の周囲長」とは、少なくとも1つの細胞の領域の輪郭線の周囲長を意味し、ある1つの細胞の輪郭線の周囲長でもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の周囲長でもよい。また、「細胞の面積」とは、少なくとも1つの細胞の領域の輪郭線で囲まれる面積を意味し、ある1つの細胞の面積でもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の面積でもよい。「細胞の濃度」とは、少なくとも1つの細胞内の明度や輝度などを意味し、ある1つの細胞の明度や輝度などでもよいし、内部細胞塊などの複数の細胞集団により得られる領域の明度や輝度でもよい。なお、複数の画素が含まれる場合には、「細胞の濃度」として、複数の画素から得られる所定の値(平均値、最大値、最小値など)を用いてもよい。「細胞の均一性」とは、複数の細胞の間での細胞の大きさ(直径や面積など)のずれや画素値のばらつきを意味する。また、「全体に対する所定の細胞が占める割合」とは、ある領域全体に対する少なくとも1つの細胞が占める割合を意味する。例えば、胚領域全体に対するフラグメンテーション(複数の細胞くず)の割合である。また、「細胞の配列」は、複数の細胞の配列を意味し、2つの細胞間の距離や複数の細胞の位置関係などが含まれる。また、「細胞の配列」としては、1つの特定の領域内に含まれる複数の細胞の配列(例えば、内部細胞塊内の複数の細胞間の距離や位置関係)や、複数の特定の領域に含まれる複数の細胞の配列(例えば、2つの前核内のそれぞれにおける核小体間の距離や位置関係、2つの前核内の核小体の配列の対称性)なども包含される。
また、特徴量算出処理部153は、上述した特徴量に基づいて、受精卵の成育段階や良否を判定してもよい。特徴量算出処理部153は、判定プロファイルテーブル145の条件1103を参照し、上述した特徴量が所定の条件を満たすかを判定し、これにより、条件を満たすグレード1102を出力してもよい。ここで出力されるグレード1102の情報を成育情報データベース144に登録してもよい。
さらに、特徴量算出処理部153は、培養開始日(基準時間)からの経過時間に基づいて、受精卵の成育段階を判定するためのプロファイルを切替えてもよい。図20は、培養開始日からの経過時間に応じて適用するプロファイルを説明する図である。図20に示すように、1日目には、上述した前核期胚の評価を用い、2〜3日目には、Veekの評価を用い、4〜5日目にはGardnerの評価を用いるようにしてもよい。判定プロファイルテーブル145には、適用時期(基準時間からの経過時間)1101の情報も格納されているため、特徴量算出処理部153は、基準時間(例えば、施術日時)と拡大検体画像の取得時間とから経過時間を算出し、判定プロファイルテーブル145を参照することにより、経過時間に応じたプロファイルを適用することができる。なお、ここでは、基準時間からの経過時間で、プロファイルを切替えることを説明したが、この手法に限定されない。特徴量算出処理部153は、検体拡大画像内の細胞の特徴量を算出した後に、特定の特徴量の値に基づいてプロファイルを切替えてもよい。この場合、判定プロファイルテーブル145に、特定の特徴量の条件を表す項目を追加すればよい。また、特徴量算出処理部153は、成育段階のグレードに基づいてプロファイルを切替えるようにしてもよい。例えば、前回の画像取得時にVeekのある特定の段階まで来ていた場合、今回はGardnerの評価用のプロファイルに切替えるというやり方でもよい。これは、成育情報データベース144にグレードの情報を保持することにより可能となる。
データベース作成処理部154は、第1識別子認識処理部151から出力されたウェルIDと、第2識別子認識処理部152から出力された細胞培養容器IDと、拡大検体画像の画像情報とを関連付けて成育情報データベース144に格納する。さらに、データベース作成処理部154は、特徴量算出処理部153によって判定された受精卵の有無の情報や、特徴量算出処理部153によって算出された各種特徴量の情報、拡大検体画像の取得時刻の情報を、細胞培養容器ID及びウェルIDと関連付けて成育情報データベース144に格納する。
次に、成育情報管理装置130における処理の流れについて説明する。図21は、成育情報管理システム1における処理の流れを説明するフローチャートである。
まず、所定の情報端末で成育情報管理プログラムを起動する(2101)。次に、第2識別子読取装置120によって、細胞培養容器100の第2識別子102を読み取る(2102)。次に、第2識別子認識処理部152が、読み取った第2識別子102の情報を用いて、第2識別子対応テーブル143を参照する。そして、第2識別子認識処理部152は、第2識別子102に対応する細胞培養容器IDを出力し、細胞培養容器IDの情報を一旦記憶装置等に記録する(2103)。次に、第2識別子認識処理部152が、第2識別子対応テーブル143の容器タイプ903の情報から、細胞培養容器ごとの第1識別子101のアライメントタイプを判定する(2104)。この第1識別子情報を第1識別子認識処理部151に出力し、これにより、以降の処理で、容器タイプ903に対応する第1識別子対応テーブルが選択されることになる。
次に、操作者は、入力部132を用いて画像取得装置110を操作し、マイクロウェル105及び第1識別子101がフレームに含まれるように焦点調整する(2105)。次に、画像取得装置110を操作し、マイクロウェル105及び第1識別子101を含む拡大検体画像を取得する(2106)。次に、第1識別子認識処理部151は、拡大検体画像内にマイクロウェル105と第1識別子101があるかを判定する(2107)。これは、拡大検体画像から輪郭線抽出画像を作成した後に、マイクロウェル105の輪郭線及び第1識別子101の輪郭線が検出されるかで判定することができる。ここで、拡大検体画像内にマイクロウェル105と第1識別子101が無い場合、その旨を出力部133において警告し(2108)、ステップ2105に戻る。
次に、拡大検体画像を取得した際の時刻情報を取得する(2109)。次に、第1識別子認識処理部151は、拡大検体画像内の第1識別子101を認識し、第1識別子対応テーブルを参照することにより、対応するウェルIDを出力する(2110)。次に、第1識別子認識処理部151は、細胞培養容器ID及びウェルIDを出力部133に表示し、操作者に対してこれらの情報が正しいかを問い合わせる(2111)。間違っている場合は、ステップ2102に戻る。
次に、特徴量算出処理部153は、拡大検体画像から細胞の特徴量を算出する(2112)。ここでの処理の流れは後述する。その後、データベース作成処理部154は、第1識別子認識処理部151から出力されたウェルIDと、第2識別子認識処理部152から出力された細胞培養容器IDと、拡大検体画像の画像情報とを関連付けて成育情報データベース144に登録する(2113)。さらに、データベース作成処理部154は、特徴量算出処理部153によって判定された受精卵の有無の情報や、各種特徴量の情報、拡大検体画像の取得時刻の情報を、細胞培養容器ID及びウェルIDと関連付けて成育情報データベース144に登録する(2114)。
図22は、図21のステップ2112の具体的な処理の流れを説明するフローチャートである。以下の処理の主体は、特徴量算出処理部153である。まず、拡大検体画像から受精卵の有無を判定する(2201)。次に、判定プロファイルテーブル145を参照することにより、使用するプロファイルを選択する(2202)。例えば、施術日時と拡大検体画像の取得時間とから経過時間を算出し、判定プロファイルテーブル145の適用時期1101を参照することにより、経過時間に応じたプロファイルを選択することができる。
次に、選択したプロファイルに応じた特徴量を算出する(2203)。例えば、図11の1番目のレコードの場合、特徴量として、割球及びフラグメンテーションの特徴量が算出される。次に、算出された特徴量に基づいてスコアが計算される(2204)。最後に、判定プロファイルテーブル145を参照することにより、グレードが判定される(2205)。ここでは、ステップ2203で算出した特徴量が判定プロファイルテーブル145の条件1103を満たすか否かかが判定され、条件を満たす場合は対応するグレード1102が出力される。なお、スコアやグレードの情報は、その後、出力部133に表示されてもよいし、成育情報データベース144に登録されてもよい。
以上のように、本実施例によれば、拡大検体画像に対して自動でウェルIDが対応づけられるため、手作業で拡大検体画像と成育情報とを対応付ける手間がなくなり、しかも、手作業による対応付けのミスの危険性が低減する。また、ウェルIDだけでなく、細胞培養容器IDも拡大検体画像と対応付けることができ、拡大検体画像に対して検体情報の全てを一意に識別することが可能となる。また、拡大検体画像に対して、特徴量だけでなく画像取得時刻の情報も対応付けられるため、受精卵の成育段階の判定に関する情報が管理し易くなる。また、従来では、拡大検体画像を見た操作者が目視で細胞の特徴量を判定し、受精卵の成育段階を判定していたが、本実施例によれば、拡大検体画像から自動的に特徴量を計算し、しかも、その特徴量に基づいて受精卵の成育段階も自動的に判定することができる。
次に、本発明の別の実施例について説明する。図23は、成育情報データベース144の別の形態を示す図である。図10と同じ構成要素については同じ番号を付して、説明を省略する。顕微鏡等の画像取得装置110からは、画像を取得した際の深さ情報も取得することが可能である。したがって、成育情報データベース144に深さ情報(受精卵の最上端部から下方向への深さ)1009の項目を追加し、成育情報1003とともに深さ情報1009も管理してもよい。
深さ情報1009を管理することにより、2次元の画像情報1004だけでなく、3次元の画像情報も管理することが可能となる。例えば、ある細胞に対して複数の深さで画像情報1004を取得する(例えば、図23の第1〜第3レコード)。成育情報管理システム1は、これらの複数の深さに対応する複数の画像を積層する(深さ方向に重ねる)ことにより、3次元ポリゴンのグラフィックを作成するようにしてもよい。2次元の画像から3次元ポリゴンへのモデル化は、当業者に周知の手法を用いればよい。これにより、受精卵の立体的な情報も管理することができる。また、3次元ポリゴンを参照することにより、受精卵の発育段階を立体的な表示で判定することも可能となる。この実施例の場合、3次元ポリゴンの情報を用いて、細胞の体積を算出し、細胞の体積を特徴量として成育情報データベース144に登録してもよい。ここで、「細胞の体積」とは、少なくとも1つの細胞の体積を意味する。「細胞の体積」は、受精卵全体の体積でもよいし、受精卵内のある特定の領域(少なくとも1つの細胞)の体積でもよい。また、3次元ポリゴンの情報から受精卵全体の形状を判定し、形状の情報を特徴量として成育情報データベース144に登録してもよい。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることがあり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
例えば、上述したように、成育情報管理装置130の構成要素をネットワーク上の複数の情報処理装置に分散して構成してもよい。例えば、成育情報管理システムは、画像取得装置110に接続された端末(第1の情報処理装置)と、記憶装置などを備えるサーバ(第2の情報処理装置)とから構成されてもよい。各種テーブル及びデータベースなどは、対応する処理に応じて端末あるいはサーバに格納される。一例として、図21のステップ2101〜2111を端末で行い、ステップ2112〜2114をサーバで行ってもよい。この場合、ステップ2111において端末が、各種情報(細胞培養容器ID、ウェルID、拡大検体画像)をサーバへ送信し、サーバが、各種情報を受信し、特徴量の抽出及び記憶装置への登録処理を行えばよい。また、別の例では、ウェルIDと第1識別子101の対応付けの処理もサーバ側で行ってもよい。この場合、端末が、細胞培養容器IDの情報とともに拡大検体画像の情報をサーバに送信し、サーバがその後の処理を実行するようにすればよい。
上述では培養対象としてヒトの受精卵の例を説明したが、これに限定されない。培養対象となる細胞は、例えば、受精卵、卵細胞、ES細胞(胚性幹細胞)およびiPS細胞(人工多能性幹細胞)が挙げられる。卵細胞は、未受精の卵細胞をさし、未成熟卵母細胞および成熟卵母細胞が含まれる。受精卵は、受精後、卵割により2細胞期、4細胞期、8細胞期と細胞数が増えていき、桑実胚を経て、胚盤胞へと発生する。受精卵には、2細胞胚、4細胞胚および8細胞胚などの初期胚、桑実胚、胚盤胞(初期胚盤胞、拡張胚盤胞および脱出胚盤胞を含む)が含まれる。胚盤胞は、胎盤を形成する潜在能力がある外部細胞と胚を形成する潜在能力がある内部細胞塊からなる胚を意味する。ES細胞は胚盤胞の内部細胞塊から得られる未分化な多能性または全能性細胞をさす。iPS細胞は、体細胞(主に線維芽細胞)へ数種類の遺伝子(転写因子)を導入することにより、ES細胞に似た分化万能性を持たせた細胞をさす。すなわち、細胞には、受精卵や胚盤胞のように複数の細胞の集合体も包含される。
また、本発明は、好ましくは哺乳動物および鳥類の細胞、特に哺乳動物の細胞の培養に好適である。哺乳動物は、温血脊椎動物をさし、例えば、ヒトおよびサルなどの霊長類、マウス、ラットおよびウサギなどの齧歯類、イヌおよびネコなどの愛玩動物、ならびにウシ、ウマおよびブタなどの家畜が挙げられる。本発明は、ヒトの受精卵の培養の場合に特に好適である。
また、上述したように、成育情報管理装置130の各処理部は、実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードで実現してもよい。この場合、プログラムコードを記録した記憶媒体を情報処理装置に提供し、その情報処理装置(またはCPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、およびそれを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどが用いられる。
また、図面における情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての情報線を示しているとは限らない。全ての構成が相互に接続されていてもよい。