JP6239390B2 - 時計部品用接着剤、ムーブメントおよび時計 - Google Patents
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また、てんぷは、てん輪と、てん輪の回転中心となるてん真と、アルキメデス曲線に沿うように渦巻状に形成され拡縮によりてん輪を所定の振動周期で往復回転させるひげぜんまいと、ひげぜんまいの内端部をてん真に固定するためのひげ玉と、ひげぜんまいの外端部をてんぷ受けに固定するためのひげ持と、により形成されている。
まず、作業者は、熱可塑性の接着剤の塊を粉砕して形成されたペレット状の接着剤粒子から、凹部に挿入可能な大きさの接着剤粒子を選定する。続いて、作業者は、ひげ持の被固定部に形成された凹部に、選定した接着剤粒子を挿入して充填する。続いて、作業者は、手作業によりひげ持の被固定部とひげぜんまいの外端部との位置合わせを行いつつ、接着剤粒子を溶融および再度固化させる。これにより、ひげぜんまいの外端部は、ひげ持に対して位置合わせされた状態で接着剤粒子により固定される。
また、本発明の時計は、第一時計部品と第二時計部品とが固定されている上述のムーブメントを備えたことを特徴としている。
以下では、機械式の腕時計(請求項の「時計」に相当、以下、単に「時計」という。)、この時計に組み込まれたムーブメントおよびムーブメントを構成するてんぷについて説明したあと、時計部品用接着剤の詳細について説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
図1に示すように、本実施形態の時計1のコンプリートは、図示しないケース裏蓋、およびガラス2からなる時計ケース3内に、ムーブメント100と、時に関する情報を示す目盛り等を有する文字板11と、時を示す時針12、分を示す分針13および秒を示す秒針14を含む指針と、を備えている。文字板11には、日付を表す数字を明示させる日窓11aが開口している。これにより、時計1は、時刻に加え、日付を確認することが可能とされている。
図2に示すように、機械式時計のムーブメント100は、基板を構成する地板144を有している。地板144の巻真案内穴102には、巻真110が回転可能に組み込まれている。この巻真110は、おしどり103、かんぬき105、かんぬきばね107および裏押さえ109等を含む切換装置によって、巻真110の軸線方向の位置が決められている。
そして巻真110を回転させると、つづみ車(不図示)の回転を介してきち車112が回転する。きち車112の回転により丸穴車114および角穴車116が順に回転し、香箱車120に収容されたぜんまい(不図示)が巻き上げられる。
ぜんまいの復元力により香箱車120が回転すると、香箱車120の回転により二番車124、三番車126、四番車128およびがんぎ車130が順に回転する。これら香箱車120、二番車124、三番車126および四番車128は、表輪列を構成する。
また、筒かなの回転に基づいて日の裏車(不図示)の回転を介して筒車(不図示)が回転し、この筒車に取り付けられた時針12(図1参照)が「時」を表示するようになっている。
がんぎ車130の外周には歯132が形成されている。アンクル142は、地板144とアンクル受138との間で回転可能に支持されており、一対のつめ石142a,142bを備えている。アンクル142の一方のつめ石142aが、がんぎ車130の歯132に係合した状態で、がんぎ車130は一時的に停止している。
てんぷ10は、てんぷ受104と地板144との間において回転可能に支持されている。てんぷ10は、一定周期で往復回転することにより、アンクル142の一方のつめ石142aおよび他方のつめ石142bを、がんぎ車130の歯132に交互に係合および解除させ、がんぎ車130を一定速度で脱進させている。
図3に示すように、てんぷ10は、主にてん輪20と、てん真30と、ひげぜんまい40と、ひげ玉50と、ひげ持受60と、ひげ持70と、を備えている。なお、以下のてんぷ10の説明では、てんぷ10が往復回転する際の回転中心を中心軸Oとし、中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、中心軸Oと直交する方向を径方向といい、中心軸O周りに周回する方向を周方向という。
図4は、図3のA−A線に沿った断面図である。なお、図4において、地板144を挟んで紙面上側がムーブメント100(図2参照)の表側となっており、地板144を挟んで紙面下側がムーブメント100の裏側となっている。
てん輪20の環状部21は、中心軸Oと同軸に配置されている。
四本のアーム部23は、それぞれ周方向に90°ピッチとなるように、略等間隔に形成されている。図4に示すように、四本のアーム部23の連結部25には、中心軸Oと同軸の嵌合孔25aが形成されている。連結部25の嵌合孔25aは、てん真30のてん輪固定部31に例えば外嵌圧入されている。これにより、てん輪20は、てん真30に外嵌固定されて、てん真30とともに回転可能とされている。
てん真30は、てん輪固定部31と、てん輪固定部31よりもてんぷ受104側(図4における上側)に形成されたひげ玉固定部32と、を備えている。てん輪固定部31およびひげ玉固定部32は、それぞれ中心軸Oと同軸の円柱状に形成されている。
また、てん真30は、軸方向の両端に、先細りに形成されたほぞ33を備えている。てん真30は、一方のほぞ33aがてんぷ受104に不図示の軸受を介して枢支され、他方のほぞ33bが地板144に不図示の軸受を介して枢支されることにより、中心軸O周りに回転可能となっている。
図3に示すように、ひげぜんまい40は、例えば鉄やニッケル等の金属材料からなる薄板ばねであり、複数の巻き数をもった渦巻状のひげぜんまい本体部41と、ひげぜんまい本体部41の外周側の円弧部42と、により形成されている。ひげぜんまい40は、ひげぜんまい本体部41の渦巻形状が、いわゆるアルキメデス曲線に沿うように形成されている。これにより、ひげぜんまい40を軸方向から見たときに、径方向に隣り合うひげぜんまい本体部41同士が略等間隔となるように配置される。
ひげぜんまい本体部41の内端部43(すなわちひげぜんまい40の内端部43)は、ひげ玉50に対して例えば溶接により固定される。ひげぜんまい40は、内端部43をひげ玉50に溶接することにより、ひげ玉50を介しててん真30に連結される。
ひげ玉50は、例えば筒部51がてん真30に外嵌圧入されて固定されている。
支持部53は、筒部51のてんぷ受104側(図4参照)の端部において、径方向の外側に突出形成されている。支持部53の外側面は、ひげぜんまい40の内端部43が溶接等により固定される固定面55となっている。
図5(a)および図5(b)に示すように、ひげ持70は、例えばニッケルやニッケル合金等の金属材料により、先端部71に凹部75を有する円筒状に形成されている。なお、以下では、ひげ持70の中心軸をCとして説明する。
ひげ持70の基端部72は、例えばひげ持受60(図4参照)に対して接着剤により固定されている。
続いて、実施形態に係る時計部品用接着剤80の詳細について説明する。
図5および図6に示すように、時計部品用接着剤80は、ひげ持70に形成された凹部75の内形状に対応した外形状を有するペレット状の接着剤体81からなり、例えば虫体被覆物等の天然樹脂、またはフェノール樹脂やポリアミド樹脂、エチレン酢酸ビニル等からなる合成樹脂等の材料を主成分とする熱可塑性の接着剤である。
接着剤体81は、全体として円柱状に形成されており、ひげ持70の中心軸Cに沿う挿入方向(図6における矢印参照)に沿って移動されて、ひげ持70の中心軸Cと同軸となるように凹部75内に挿入配置される。
本実施形態の収納部85は、接着剤体81をひげ持70の凹部75に挿入配置したときに、ひげ持70の切欠部77に対応する位置において、ひげ持70の中心軸Cと交差するとともにひげ持70の径方向に沿うように形成された溝部85Aとなっている。
溝部85Aの内形は、ひげ持70の径方向の外側から見たとき、ひげぜんまい40の外端部45の外形とほぼ同等となっている。すなわち、溝部85Aの幅は、ひげぜんまい40の外端部45における径方向に沿う厚さとほぼ同一となっている。また、溝部85Aの深さは、ひげぜんまい40の外端部45における軸方向に沿う幅とほぼ同一となっている。ひげぜんまい40の外端部45は、溝部85Aに挿入配置されることにより、溝部85A内に収納されるとともに、溝部85Aによって位置決めされる。
具体的には、まず、接着剤体81の外形に対応して形成された複数の凹部を有するマスクを用意する。次いで、マスクの凹部に対して、接着剤原料を溶融させつつスキージ等により充填する。次いで、凹部に充填された接着剤原料を冷却して固化させる。最後に、マスクの凹部から固化した接着剤原料を取り出す。以上により、ペレット状の接着剤体81からなる時計部品用接着剤80を形成することができる。なお、収納部85である溝部85Aは、雄型を使用して形成してもよいし、切削等の機械加工により形成してもよい。
図7に示す実施形態の第一変形例に係る時計部品用接着剤80のように、接着剤体81が収納部85(図6参照)を有していなくてもよい。この場合においても、実施形態と同様に、接着剤体81の選定を行う必要がない。また、ひげ持70の凹部75に適した大きさの接着剤体81を充填できる。したがって、上述の実施形態と同様に、ひげぜんまい40をひげ持70に対して、短時間で簡単に接着することができる。
実施形態では、収納部85が、ひげ持70の切欠部77に対応する位置において、ひげ持70の中心軸Cと交差するとともにひげ持70の径方向に沿うように形成された溝部85Aとなっていた(図5参照)。
これに対して、例えば、図8に示すように、収納部85が貫通孔85Bであってもよい。貫通孔85Bは、ひげ持70の切欠部77(図5参照)に対応する位置において、中心軸Cと交差するとともに、ひげ持70の径方向に沿うように接着剤体81を貫通している。この場合においても、貫通孔85Bにひげぜんまい40の外端部45を配置しつつ接着剤体81を溶融および固化することにより、実施形態と同様にひげ持70の中心に位置するように、ひげぜんまい40の外端部45をひげ持70の被固定部71aに対して接着することができる。したがって、ひげぜんまい40のばね定数および拡縮時の周期を高精度に設定できる。
図9に示す実施形態の第三変形例に係る時計部品用接着剤80のように、接着剤体81が、第一接着剤体81Aと第二接着剤体81Bとに分割形成されていてもよい。
第一接着剤体81Aと第二接着剤体81Bとには、それぞれ溝部85Cが形成されている。溝部85Cは、軸方向において互いに対向するように形成されており、第一接着剤体81Aと第二接着剤体81Bとが合体することで、貫通孔が形成されるようになっている。なお、図9に示す例において、溝部85Cは、第一接着剤体81Aと第二接着剤体81Bとに形成されているが、第一接着剤体81Aおよび第二接着剤体81Bの少なくともいずれか一方に形成されていればよい。
実施形態の第三変形例によれば、第一接着剤体81Aと第二接着剤体81Bとの間にひげぜんまい40の外端部45を配置しつつ、第一接着剤体81Aと第二接着剤体81Bとにより固定できる。したがって、ひげぜんまい40の外端部45の全周囲にわたって、溶融した第一接着剤体81Aおよび第二接着剤体81Bを密着させて強固に固定することができる。
Claims (10)
- ひげぜんまいとひげ持とを備える時計部品用構造体において、
前記ひげぜんまいが固定される前記ひげ持の被固定部に形成された凹部の内形状に対応した外形状を有する接着剤体を備えたことを特徴とする時計部品用構造体。 - 前記ひげ持が前記ひげぜんまいの外端部を配置可能な切欠部を有し、
前記接着剤体は、前記ひげ持の前記凹部に挿入されて、前記ひげぜんまいの前記外端部を前記ひげ持の前記被固定部に固定することを特徴とする請求項1に記載の時計部品用構造体。 - 前記接着剤体には、前記ひげぜんまいの前記外端部を収納する収納部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の時計部品用構造体。
- 前記収納部は、前記接着剤体を前記ひげ持の前記凹部に挿入配置したときに、前記切欠部に対応する位置において、前記ひげ持の中心軸と交差するとともに前記ひげ持の径方向に沿うように形成された溝部であることを特徴とする請求項3に記載の時計部品用構造体。
- 前記収納部は、前記接着剤体を前記ひげ持の前記凹部に挿入配置したときに、前記切欠部に対応する位置において、前記ひげ持の中心軸と交差するとともに前記ひげ持の径方向に沿うように前記接着剤体を貫通する貫通孔であることを特徴とする請求項3に記載の時計部品用構造体。
- 前記接着剤体は、第一接着剤体と第二接着剤体とに分割形成され、
前記収納部は、前記第一接着剤体および前記第二接着剤体の少なくともいずれか一方に形成されていることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の時計部品用構造体。 - 前記接着剤体は、前記凹部への挿入方向下流側の端部が先細りに形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の時計部品用構造体。
- 請求項1から7のいずれか1項に記載の時計部品用構造体を備えるムーブメント。
- 請求項8に記載のムーブメントを備えたことを特徴とする時計。
- 第一時計部品が固定される第二時計部品の被固定部に形成された凹部の内形状に対応した外形状であって前記凹部に向かって先細りの外形状を有する接着剤体を備えたことを特徴とする時計部品用接着剤。
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