本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る超音波画像装置1の概観を示す図である。超音波画像装置1は、例えばハンディタイプの超音波測定装置である。超音波画像装置1は、位相反転法及びフィルター法を用いて画像を生成及び表示する。
超音波画像装置1は、主として、超音波プローブ10と、超音波測定装置本体20とを有し、超音波プローブ10と超音波測定装置本体20とはケーブル15により接続される。なお、超音波画像装置1は、ハンディタイプには限定されず、例えば据え置きタイプでもよいし、超音波プローブが本体に内蔵された一体型でもよい。
超音波プローブ10は、超音波トランスデューサーデバイス11を有する。超音波トランスデューサーデバイス11は、操作面に沿って対象物をスキャンしながら、対象物に対して超音波ビームを送信すると共に、超音波ビームによる超音波エコーを受信する。
圧電素子を用いるタイプを例にとれば、超音波トランスデューサーデバイス11は、複数の超音波トランスデューサー素子12(超音波素子アレイ、図2等参照)と、複数の開口がアレイ状に配置された基板とを有する。
図2は、超音波トランスデューサーデバイス11の超音波トランスデューサー素子12の構成例を示す。本実施の形態では、超音波トランスデューサー素子12として、薄手の圧電素子と金属板(振動膜)とを張り合わせたモノモルフ(ユニモルフ)構造を採用する。
図2(A)〜(C)に、超音波トランスデューサーデバイス11の超音波トランスデューサー素子12の溝成例を示す。図2(A)は、基板(シリコン基板)60に形成された超音波トランスデューサー素子12の、素子形成面側の基板60に垂直な方向から見た平面図である。図2(B)は、図2(A)のA−A’に沿った断面を示す断面図である。図2(C)は、図2(A)のB−B’沿った断面を示す断面図である。
超音波トランスデューサー素子12は、圧電素子部と、振動膜(メンブレン、支持部材)50とを有する。圧電素子部は、主として、圧電体層(圧電体膜)30と、第1電極層(下部電極)31と、第2電極層(上部電極)32とを有する。
圧電体層30は、例えばPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)薄膜により形成され、第1電極層31の少なくとも一部を覆うように設けられる。なお、圧電体層30の材料は、PZTに限定されるものではなく、例えばチタン酸鉛(PbTiO3)、ジルコン酸鉛(PbZrO3)、チタン酸鉛ランタン((Pb、La)TiO3)などを用いてもよい。
第1電極層31は、振動膜50の上層に、例えば金属薄膜で形成される。この第1電極層31は、図2(A)に示すように素子形成領域の外側へ延長され、隣接する超音波トランスデューサー素子12に接続される配線であってもよい。
第2電極層32は、例えば金属薄膜で形成され、圧電体層30の少なくともー部を覆うように設けられる。この第2電極層32は、図2(A)に示すように、素子形成領域の外側へ延長され、隣接する超音波トランスデューサー素子12に接続される配線であってもよい。
超音波トランスデューサー素子12の下部電極は、第1電極層31により形成され、上部電極は、第2電極層32により形成される。具体的には、第1電極層31のうちの圧電体層30に覆われた部分が下部電極を形成し、第2電極層32のうちの圧電体層30を覆う部分が上部電極を形成する。即ち、圧電体層30は、下部電極と上部電極に挟まれて設けられる。
開口40は、基板60(シリコン基板)の裏面(素子が形成されない面)側から反応性イオンエッチング(RIE)等によりエッチングすることで形成される。この開口40のサイズによって超音波の共振周波数が決定され、その超音波は圧電体層30側(図2(A)において紙面奥から手前方向)に放射される。
振動膜(メンブレン)50は、例えばSiO2薄膜とZrO2薄膜との2層構造により開口40を塞ぐように設けられる。この振動膜50は、圧電体層30及び第1、第2電極層31、32を支持すると共に、圧電体層30の伸縮に従って振動し、超音波を発生させる。
図3に、超音波トランスデューサーデバイス(素子チップ)11の構成例を示す。本構成例の超音波トランスデューサーデバイス11は、複数の超音波トランスデューサー素子群UG1〜UG64、駆動電極線DL1〜DL64(広義には第1〜第nの駆動電極線。nは2以上の整数)、コモン電極線CL1〜CL8(広義には第1〜第mのコモン電極線。mは2以上の整数)を含む。なお、駆動電極線の本数(n)やコモン電極線の本数(m)は、図3に示す本数には限定されない。
複数の超音波トランスデューサー素子群UG1〜UG64は、第2の方向D2(スキャン方向)に沿って64列に配置される。UG1〜UG64の各超音波卜ランスデューサー素子群は、第1の方向D1(スライス方向)に沿って配置される複数の超音波トランスデューサー素子を有する。
図4(A)に、超音波トランスデューサー素子群UG(UG1〜UG64)の例を示す。図4(A)では、超音波トランスデューサー素子群UGは第1〜第4の素子列により溝成される。第1の素子列は、第1の方向D1に沿って配置される超音波トランスデューサー素子UE11〜UE18により構成され、第2の素子列は、第1の方向D1に沿って配置される超音波トランスデューサー素子UE21〜UE28により構成される。第3の素子列(UE31〜UE38)、第4の素子列(UE41〜UE48)も同様である。これらの第1〜第4の素子列には、駆動電極線DL(DL1〜DL64)が共通接続される。また、第1〜第4の素子列の超音波卜ランスデューサー素子UE11〜UE48にはコモン電極線CL1〜CL8が接続される。
そして図4(A)の超音波トランスデューサー素子群UGが、超音波トランスデューサーデバイス11の1チャンネルを構成する。即ち、駆動電極線DLが1チャンネルの駆動電極線に相当し、送信回路からの1チャンネルの送信信号は駆動電極線DLに入力される。また駆動電極線DLらの1チャンネルの受信信号は駆動電極線DLから出カされる。なお、1チャンネルを構成する素子列数は図4(A)に示すような4列には限定されず、4列よりも少なくてもよいし、4列よりも多くてもよい。例えば図4(B)に示すように、素子列数は1列であってもよい。
図3の説明に戻る。駆動電極線DL1〜DL64(第1〜第nの駆動電極線)は、第1の方向D1に沿って配線される。駆動電極線DL1〜DL64のうちの第j(jは1≦j≦nである整数)の駆動電極線DLj(第jのチャンネル)は、第jの超音波トランスデューサー素子群UGjの超音波トランスデューサー素子12が有する第1電極層31に接続される。
超音波を出射する送信期間には、送信信号VT1〜VT64が駆動電極線DL1〜DL64を介して超音波トランスデューサー素子12に供給される。また、超音波エコー信号を受信する受信期間には、超音波トランスデューサー素子からの受信信号VR1〜VR64が駆動電極線DL1〜DL64を介して出カされる。
コモン電極線CL1〜CL8(第1〜第mのコモン電極線)は、第2の方向D2に沿って配線される。超音波トランスデューサー素子12が有する第2電極層32は、コモン電極線CL1〜CL8のうちのいずれかに接続される。具体的には、例えば図3に示すように、コモン電極線CL1〜CL8のうちの第i(iは1≦i≦mである整数)のコモン電極線CLiは、第i行に配置される超音波トランスデユ一サー素子が有する第2電極層32に接続される。
コモン電極線CL1〜CL8には、コモン電圧VCOMが供給される。このコモン電圧VCOMはー定の直流電圧であればよく、0V、即ちグランド電位(接地電位)でなくてもよい。
そして送信期間では、送信信号電圧とコモン電圧との差の電圧が超音波トランスデューサー素子に印加され、所定の周波数の超音波が放射される。
なお、超音波トランスデユーサー素子の配置は、図3に示すマトリックス配置に限定されず、隣接する2列の素子が互い違いにジグザグに配置されるいわゆる千烏配置等であってもよい。また図4(A)、(B)では、1つの超音波トランスデューサー素子が送信素子及び受信素子の両方に兼用される場合について示したが、本実施の形態はこれに限定されない。例えば、送信素子用の超音波トランスデューサー素子、受信素子用の超音波トランスデューサー素子を別々に設けて、アレイ状に配置してもよい。
また、超音波トランスデューサー素子12は、圧電素子を用いる形態に限定されない。例えば、c−MUT(Capacitive Micro−machined Ultrasonic Transducers)等の容量性素子を用いるトランスデューサーを採用してもよいし、バルクタイプのトランスデューサーを採用してもよい。
図1の説明に戻る。超音波測定装置本体20には、表示部21が設けられる。表示部21は、制御部22(図5参照)により生成された表示用画像データを表示する。表示部21は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等を用いることができる。
図5は、超音波測定装置本体20内に設けられた制御部22の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部22は、送信処理部110と、受信処理部120と、処理部130と、送信受信切り替えスイッチ140と、DSC(Digital Scan Converter)150と、制御回路160とを含む。なお、本実施の形態では、制御部22は超音波測定装置本体20に設けられているが、超音波プローブ10内に設けられていてもよい。
送信処理部110は、対象物に対して超音波を送信する処理を行う。送信処理部110は、送信パルス発生器111と、送信遅延回路113とを含む。
送信パルス発生器111は、送信パルス電圧を印加して超音波プローブ10を駆動させる。
送信遅延回路113は、送波フォーカシング制御を行い、送信パルス電圧に対応する超音波ビームを超音波プローブ10から対象物に対して出射する。そのために、送信遅延回路113は、送信パルス電圧の印加タイミングに関して、チャンネル間で時間差を与え、複数の振動素子から発生した超音波を集束させる。このように、遅延時間を変化させることにより、焦点距離を任意に変化させることが可能である。
送信受信切り替えスイッチ140は、超音波の送受信の切り替え処理を行う。送信受信切り替えスイッチ140は、送信時の振幅パルスが受信回路に入力されないように保護し、受信時の信号を受信回路に通す。
受信処理部120は、送信した超音波に対する超音披エコーの受信波(以下、受信波という)を受信する(受信処理)。受信処理部120は、受信遅延回路121と、フィルター回路123と、メモリー125とを含む。
受信遅延回路121は、受波ビームをフォーカシングする。ある反射体からの反射波は球面上に広がるため、受信遅延回路121は、各振動子に到達する時間が同じになるように遅延時間を与え、遅延時間を考慮して反射波を加算する。
フィルター回路123は、受信信号に対して帯域通過フィルターによりフィルター処理を行い、雑音を除去する。
メモリー125は、フィルター回路123から出カされた受信信号を記憶するもので、その機能はRAM等のメモリーやHDD等により実現できる。
処理部130は、受信処理部120から出力された受信信号に対して処理を行う。処理部130は、ハーモニック処理部131と、検波処理部133と、対数変換処理部135と、ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137と、STC(Sensitivity Time Control)139とを含む。なお、検波処理部133と、対数変換処理部135と、ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137と、STC139とは、本発明の画像生成部として機能する。
ハーモニック処理部131は、後に詳述する高調波成分の抽出処理を行う。
検波処理部133は、抽出されたハーモニック成分に対して、絶対値(整流)処理を行い、その後低域通過フィルターをかけて、非変調信号を抽出する。
対数変換処理部135は、抽出された非変調信号に対しLog圧縮を行い、受信信号の信号強度の最大部分と最小部分を同時に碓認しやすいように、表現形式を変換する。
ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137は、信号強度及び関心領域を調整する。具体的に、ゲイン調整処理では、Log圧縮後の入力信号に対して、直流成分を加える。また、ダイナミックレンジ調整処理では、Log圧縮後の入力信号に対して、任意の数を乗算する。
STC139は、深さに応じて増幅度(明るさ)を補正し、画面全体で一様な明るさの画像を取得する。
なお、処理部130の機能は、各種プロセッサー(CPU等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
DSC150は、Bモード画像データに走査変換処理を行う。例えば、DS150は、バイリニアなどの補間処理により、ライン信号を画像信号に変換する。DSC150は、画像信号を表示部21に出力する。これにより、画像が表示部21に表示される。
制御回路160は、送信パルス発生器111と、送信遅延回路113と、受信遅延回路121と、送信受信切り替えスイッチ140と、ハーモニック処理部131との制御を行う。
以上の超音波画像装置1の構成は、本実施の形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られない。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。超音波画像装置1の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
図6は、制御部22の少なくとも一部の概略構成の一例を示すブロック図である。図示するように、制御部22は、演算装置であるCPU(Central Processing Unit)221と、揮発性の記憶装置であるRAM(Random Access Memory)222と、不揮発性の記憶装置であるROM(Read Only Memory)223と、ハードディスクドライブ(HDD)224と、制御部22と他のユニットを接続するインターフェイス(I/F)回路225と、外部の装置と通信を行う通信装置226と、これらを互いに接続するバス227と、を備える。
上記の各機能部は、例えば、CPU221がROM223に格納された所定のプログラムをRAM222に読み出して実行することにより実現される。なお、所定のプログラムは、例えば、予めROM223にインストールされてもよいし、通信装置226を介してネットワークからダウンロードされてインストール又は更新されてもよい。
次に、本実施の形態における、上記構成からなる超音波画像装置1の処理について説明する。本実施の形態では、超音波エコーの画像の高分解能を実現するために、ハーモニックイメージング(ハーモニックイメージング法)を用いる。
ハーモニックイメージングとは、後述するハーモニック成分(高調波成分)を映像化する手法のことをいう。ここで、媒質中を伝搬する超音波(粗密波)の速度は、音圧の高い部分は早く、低い部分では遅くなるという性質がある。したがって、単純な正弦波であっても伝搬過程で徐々に歪みが生じて波形が変化し、基本波には含まれなかった基本周波数の整数倍の高調波成分(非線形成分とも言う)が含まれるようになる(非線形効果)。この非線形効果は、超音波の基本波成分の音圧の2乗に比例して大きくなり、また伝搬距離に比例して蓄積する。
ハーモニックイメージングは、超音波が組織を伝搬する時に組織自身から発生する高調波成分を映像化するティッシュハーモニックイメージングと、超音波造形剤の微小気抱が共振、崩壊する時に発生する高調波成分を映像化する造影ハーモニックイメージングの二つに大別される。本実施の形態では、ティッシュハーモニックイメージングを用いる。
また、ハーモニックイメージングには2つの利点がある。高調波成分の振幅は送信超音波の振幅の2乗に比例するという特徴があることから、高調波成分の振幅は、音圧の高い送信ビーム中央では強いが、ビーム中央から端になるほど急激に弱くなる。これにより、ハーモニックイメージングでは、非線形効果の生じる範囲はビーム中央に制限され、結果的に他の手法に比べて方位分解能が向上する。これが第1の利点である。
超音波画像に現れる主なノイズの原因には、多重反射によるノイズとサイドローブによるノイズとがある。ここで、反射した超音波エコーは音庄が低く、高調波成分自体が発生しない。そのため、多重反射によるノイズが低減される。さらに、サイドローブは音圧が低く、サイドローブでも高調波成分自体が発生しない。そのため、サイドローブによるノイズも低減される。このように、ハーモニックイメージングでは、多重反射によるノイズもサイドローブによるノイズも低減することができる。これが第2の利点である。
高調波成分を抽出するには、フィルター法及び位相反転法の少なくとも1つが用いられる。
フィルター法とは、周波数フィルター(ハイパスフィルター)により基本波成分と高調波成分とを分離し、2次高調波成分だけを抽出し、映像化する手法である。例えば、2次高調波成分を分離、抽出する場合を説明する。基本波帯域の中心周波数がf0であり、2次高調波帯城の中心周波数が2f0であるとすると、受信する基本波成分と2次高調波成分はそれぞれある帯域幅を有しているため、基本波成分と2次高調波成分とが重複して両者を分離できなくなる。その結果、画像が劣化する。この基本波成分と2次高調波成分との重複を少なくするためには、パルス幅を長くする必要性がある。しかし、パルス幅が長くなると距離分解能が低下する。なぜならば、距離分解能は、数式(1)に示すようにパルス幅に比例するからである。
位相反転法は、フィルター法の欠点を改善するために開発された手法である。この手法は、同一方向に続けて2回の超音波の送信を行う。2回目の送信波は、1回目の送信波に対して位相が180°異なるという特微がある。そして、生体や造影剤から反射して戻ってくる受信波は、その非線形な伝播特性により高調波成分を含むため、歪んだ波形となる。送信波を1回目と2回目とで反転させているために基本波成分は反転しているが、2次高調波成分は反転していない(同相)という関係がある。結果として、2回の受信波を加算すると、基本波成分は除去され、2次高調波成分は振幅が2倍になって残るため、2次高調波成分のみを映像化することが可能となる。また、2次高調波成分のみが抽出できるため、広帯域送受信が可能となり、フィルター法の欠点である距離分解能の低下も改善する。
しかしながら、高調波成分のパルス幅nλ(波数×波長)は基本波と同じとなるため、高調波成分をそのまま使用する場合には、距離分解能を向上させることはできない。そのため、高調波成分を1波だけ抽出することで、より距離分解能の向上を図ることができる。さらに、高調波成分の次数をより高くすることで、より波長を短くし、より距離分解能の向上を図ることができる。例えば、2次高調波成分の波長は基本波の1/2であるのに対し、3次高調波成分の波長は基本波の1/3と短くなる。
本実施の形態は、2次より高い次数の高調波成分(例えば、3次高調波成分)を1波だけ抽出してハーモニックイメージングを行う点に特徴がある。以下、超音波画像装置1の特徴的な処理について説明する。
図7〜13は、第1の実施の形態における超音波画像装置1が高調波成分を抽出して画像を表示する(ハーモニックイメージング)処理について説明する。図7は、高調波成分の抽出を模式的に示す図であり、図8〜13は、ハーモニックイメージングの処理の流れを示すフローチャートである。
まず、図7を用いて、高調波成分の抽出について説明する。
周波数1fの第1の超音波パルス(1波)と、周波数1fであり第1の超音波パルスに対して位相が180°異なる(位相が反転された)第2の超音波パルス(1波)とを送信し、第1の超音波パルスの受信信号と第2の超音波パルスの受信信号とを減算処理することで、基本波と3次高調波成分とを抽出する。基本波と3次高調波成分とが抽出された結果に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、3次高調波成分を抽出する。この3次高調波成分の周波数は3fであり、波数は3である(図7(A)参照)。
また、周波数1.5fの第3の超音波パルス(1波)と、周波数1.5fであり第3の超音波パルスに対して位相が180°異なる(位相が反転された)第4の超音波パルス(1波)とを送信し、第3の超音波パルスの受信信号と第4の超音波パルスの受信信号とを加算処理し、2次高調波成分を抽出する。この2次高調波成分の周波数は3fであり、波数は2である(図7(B)参照)。
そして、第1の超音波パルスと第2の超音波パルスとに基づく3次高調波成分(振幅をA倍処理したもの。後に詳述)と、第3の超音波パルスと第4の超音波パルスとに基づく2次高調波成分を減算処理する。この結果、周波数3fの1波が抽出される(図7(C)参照)。
次に、図8〜13を用いて、3次高調波成分のうちの1波に基づくハーモニックイメージングの処理の流れについて説明する。
制御回路160は、走査線番号mを1に初期設定(m=1)する(ステップS100)。走査線番号mは、図3に示すような超音波トランスデューサーデバイスを構成する超音波トランスデューサー素子群UG1〜UG64のうちのどの素子群であるかを示す番号である。例えば、任意の端に設けられた素子群、ここでは超音波トランスデューサー素子群UG1の走査線番号mを1とする。また、走査線番号1の素子群に隣接する素子群、ここでは超音波トランスデューサー素子群UG2の走査線番号mを2とする。このようにして、全ての素子群に走査線番号mを付与する。超音波トランスデューサー素子群UG1〜UG64と走査線番号mとの関係は、ROM等のメモリーに記憶しておけばよい。
制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1fで位相が0°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS101〜ステップS106)。
送信パルス発生器111は、周波数1fで位相が0°の超音波パルスを送信するためのパルス電圧を生成する(ステップS101)。送信遅延回路113は、送波フォーカシング制御を行い(ステップS102)、超音波プローブ10は、ステップS101で生成されたパルス電圧に対応する超音波ビームを対象物に対して出射する(ステップS103)。
制御回路160は、送信受信切り替えスイッチ140を介して送受信の切り替え処理を行う。超音波プローブ10は、出射した超音波ビームが対象物で反射し、帰ってきた受信波を受信して、受信した信号を受信処理部120に入力する。受信遅延回路121は、受信処理部120に入力された受信時の信号に対して遅延時間を与えて加算することで、受波ビームをフォーカシングする(ステップS104)。
フィルター回路123は、受信信号に対してバンドパスフィルター処理を行う(ステップS105)。制御回路160は、フィルター回路123から出力された信号をメモリー125に保存する(ステップS106)。
次に、制御回路160は、制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1fで位相が180°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS111〜ステップS116、図9参照)。すなわち、ステップS111〜ステップS116では、制御回路160は、ステップS101〜ステップS106で送受信した超音波パルスに対して位相が180°異なる(位相が反転された)の超音波パルスを送受信する。
送信パルス発生器111は、周波数1fで位相が180°の超音波パルスを送信するためのパルス電圧を生成する(ステップS111)。送信遅延回路113は、送波フォーカシング制御を行い(ステップS112)、超音波プローブ10は、ステップS111で生成されたパルス電圧に対応する超音波ビームを対象物に対して出射する(ステップS113)。ステップS114の処理はステップS104と同じであり、ステップS115の処理はステップS105と同じであり、ステップS116の処理はステップS106と同じであるため、説明を省略する。
次に、制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1.5fで位相が0°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS121〜ステップS126、図10参照)。
送信パルス発生器111は、周波数1.5fで位相が0°の超音波パルスを送信するためのパルス電圧を生成する(ステップS121)。送信遅延回路113は、送波フォーカシング制御を行い(ステップS122)、超音波プローブ10は、ステップS121で生成されたパルス電圧に対応する超音波ビームを対象物に対して出射する(ステップS123)。ステップS124の処理はステップS104と同じであり、ステップS125の処理はステップS105と同じであり、ステップS126の処理はステップS106と同じであるため、説明を省略する。
次に、制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1.5fで位相が180°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS131〜ステップS136、図11参照)。すなわち、ステップS131〜ステップS136では、制御回路160は、ステップS121〜ステップS126で送受信した超音波パルスに対して位相が180°異なる(位相が反転された)超音波パルスを送受信する。
送信パルス発生器111は、周波数1.5fで位相が180°の超音波パルスを送信するためのパルス電圧を生成する(ステップS131)。送信遅延回路113は、送波フォーカシング制御を行い(ステップS132)、超音波プローブ10は、ステップS131で生成されたパルス電圧に対応する超音波ビームを対象物に対して出射する(ステップS133)。ステップS134の処理はステップS104と同じであり、ステップS135の処理はステップS105と同じであり、ステップS136の処理はステップS106と同じであるため、説明を省略する。
制御回路160は、ステップS101〜S136で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mが、走査線数Mより小さいか否かを判断する(ステップS137)。走査線数Mは、図3に示すような超音波トランスデューサーデバイスを構成する超音波トランスデューサー素子群UG1〜UG64の数であり、図3に示す例ではMは64である。
ステップS101〜S136で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さい場合(ステップS137でYES)は、制御回路160は、ステップS101〜S136で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mに1を追加して、走査線番号mを更新する(ステップS138)。これにより、ステップS101に処理が戻る。
一方、ステップS101〜S136で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さくない場合(ステップS137でNO)は、走査線番号mが走査線数Mと一致する場合、すなわちすべての超音波トランスデューサー素子群UGにおいて超音波パルスの送受信が終了した場合である。したがって、制御回路160は処理部130に指示を出し、処理部130はハーモニック処理を行う(ステップS141〜S156、図12、13参照)。
ハーモニック処理部131は、高調波成分を抽出する(ステップS141)。図13は、高調波成分を抽出する処理(ステップS141)の流れを示すフローチャートである。
ハーモニック処理部131は、ステップS106でメモリー125に保存された受信信号(周波数1fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)と、ステップS116でメモリー125に保存された受信信号(周波数1fで位相が180°の超音波パルスに基づく受信信号)とをメモリー125から取得し、これらを減算処理することにより、周波数1fの基本波成分と3次高調波成分を抽出する(ステップS1411)。
ハーモニック処理部131は、ステップS1411で抽出した基本波成分と3次高調波成分に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数1fの3次高調波成分を抽出する(ステップS1412)。
一方、ハーモニック処理部131は、ステップS126でメモリー125に保存された受信信号(周波数1.5fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)と、ステップS136でメモリー125に保存された受信信号(周波数1.5fで位相が180°の超音波パルスに基づく受信信号)とをメモリー125から取得し、これらを加算処理することにより、周波数1.5fの2次高調波成分を抽出する(ステップS1414)。
そして、ハーモニック処理部131は、ステップS1412で抽出した周波数1fの3次高調波成分とステップS1414で抽出された周波数1.5fの2次高調波成分との信号強度の最大値が同じとなるように、ステップS1412で抽出した周波数1fの3次高調波成分をA倍処理する(ステップS1413)。ここで、Aは、以下の数式(3)で算出される。
A=ステップS1414で抽出される周波数1.5fの2次高調波成分の信号強度の最大値/ステップS1412で抽出される周波数1fの3次高調波成分の信号強度の最大値 ・・・(3)
なお、ハーモニック処理部131がステップS1411〜S1414の処理を行う順番は任意である。例えば、ハーモニック処理部131は、ステップS1414の処理を、ステップS1411の処理の前に行ってもよいし、ステップS1411の処理とステップS1412の処理との間で行ってもよい。
ハーモニック処理部131はステップS1413で求められた周波数1fの3次高調波成分と、ステップS1414で求められた周波数1.5fの2次高調波成分とを減算処理する(ステップS1415)。これにより、周波数1fの3次高調波成分が1波だけ抽出される。
図12の説明に戻る。検波処理部133は、ステップS141で抽出された高調波成分に対して、絶対値(整流)処理後に、低域通過フィルターをかけて、非変調信号を抽出する、すなわち包絡線検波を行う(ステップS151)。対数変換処理部135は、対数変換処理を行う(ステップS152)。
ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137は、信号強度及び関心領域を調整する(ステップS153)。STC139は、深さに応じて増幅度(明るさ)を補正する(ステップS154)。
DSC150は、操作変換処理を行ってBモード画像データ(表示用画像データ)を生成して表示部21に出力する(ステップS155)。表示部21は、生成された表示用画像データを表示する(ステップS156)。これにより、図8〜図13に示す処理が終了する。
本実施の形態によれば、3次高調波成分のうちの1波のみを抽出することができる。その結果、パルス幅が小さくなり、距離分解能を向上させることができる。したがって、分解能の異方性を解消し、高品質な画像を得ることができる。
なお、高調波成分は、対象物の内部で他の周波数の波の成分と合成されたものが受信されるため、3次高調波成分のうちの1波を抽出する処理は、本実施の形態のように、回路内部で加算処理、減算処理を行うことでしか抽出することはできない。そして、加算処理、減算処理という簡単な処理で3次高調波成分のうちの1波を抽出することで、高速な処理をすることができる、すなわち処理時間を短くすることができる。
また、本実施の形態では、3次高調波成分を抽出するときに2つの受信信号を減算処理するため、3次高調波成分が加算されている。3次高調波成分は基本波より信号が弱くなるが、3次高調波成分を加算することにより、信号成分を増やし、S/N比(signal−noise ratio)を上げることができる。
また、本実施の形態では、所定の周波数の3次高調波成分3波のうちの1波を抽出するときに、所定の周波数の1.5倍の周波数の2次高調波成分を用いるため、算出に用いる2つの受信波のビーム幅の差を小さくし、方位方向に対するアーチファクトを低減することができる。
なお、本実施の形態では、3次高調波成分を例に高調波成分のうちの1波のみを抽出する処理について説明したが、3次以上の高調波成分全てに対して同様の処理を行うことができる。本実施の形態では、周波数1fの超音波と、周波数1.5fの超音波との受信信号に基づいて3次高調波成分1波を抽出したが、これを3次以上の高調波成分に一般化する場合には、周波数f1の超音波と、周波数f1のx/(x−1)倍(周波数1fより高い周波数)の周波数f2の超音波との受信信号に基づいてN次高調波成分1波を抽出すればよい。なお、xは3以上の自然数である。
具体的には、4次高調波成分のうちの1波を抽出するには、周波数f1の超音波と、周波数f1の4/3倍の超音波を送信し、周波数f1の超音波の受信信号から4次高調波成分(波数は4)を抽出し、周波数4/3×f1の超音波の受信信号から3次高調波成分(波数は3)を抽出し、4次高調波成分から3次高調波成分を減算することで4次高調波成分の1波のみが抽出される。また、4次高調波成分のうちの1波を抽出するには、周波数f1の超音波と、周波数5/4×f1の超音波を送信し、周波数f1の超音波の受信信号から5次高調波成分(波数は5)を抽出し、周波数5/4×f1の超音波の受信信号から4次高調波成分(波数は4)を抽出し、5次高調波成分から4次高調波成分を減算することで4次高調波成分の1波のみが抽出される。
ただし、高調波成分の次数が高くなるにつれて振幅が小さくなる。例えば、基本波の振幅が0.88である場合に、2次高調波成分の振幅は0.35、3次高調波成分の振幅は0.21である。したがって、3次以上の高調波成分全てに対して、高調波成分のうちの1波を抽出して画像を生成する処理を行うことができるが、3次高調波成分のうちの1波を抽出して画像を生成することがより望ましい。
<第2の実施の形態>
第1の実施の形態に係る超音波画像装置1は、位相反転法及びフィルター法を用いて3次高調波成分のうちの1波を抽出したが、3次高調波成分のうちの1波を抽出するのに位相反転法及びフィルター法の両方を用いなくてもよい。
第2の実施の形態に係る超音波画像装置2は、位相反転法を用いず、フィルター法を用いて3次高調波成分のうちの1波を抽出するものである。以下、超音波画像装置2について説明する。なお、超音波画像装置2の構成は超音波画像装置1の構成(図1〜6参照)と同一であるため、超音波画像装置2の構成についての説明を省略し、超音波画像装置2がハーモニック成分を抽出して画像を表示する処理についてのみ説明する。また、超音波画像装置1の処理と同一の部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
まず、図14を用いて、超音波画像装置2における高調波成分の抽出について説明する。
周波数1fの超音波パルス(1波)を送信し、この超音波パルスの受信信号に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、3次高調波成分を抽出する。この3次高調波成分の周波数は3fであり、波数は3である(図14(A)参照)。
また、周波数1.5fの超音波パルス(1波)を送信し、この超音波パルスの受信信号に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、2次高調波成分を抽出する。この2次高調波成分の周波数は3fであり、波数は2である(図14(B)参照)。
そして、周波数1fの超音波パルスに基づく3次高調波成分(振幅をA倍処理したもの、後に詳述)と、周波数1.5fの超音波パルスに基づく2次高調波成分を減算処理する。この結果、周波数3fが1波だけ抽出される(図14(C)参照)。
次に、図15〜18を用いて、3次高調波成分のうちの1波に基づくハーモニックイメージングの処理の流れについて説明する。
制御回路160は、走査線番号mを1に初期設定(m=1)する(ステップS100)。制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又はステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1fで位相が0°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS101〜ステップS106、図15参照)。
制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1.5fで位相が0°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS121〜ステップS126、図16参照)。
制御回路160は、ステップS101〜S126で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mが、走査線数Mより小さいか否かを判断する(ステップS137)。ステップS101〜S126で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さい場合(ステップS137でYES)は、制御回路160は、ステップS101〜S136で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mに1を追加して、走査線番号mを更新する(ステップS138)。これにより、処理がステップS101に戻る。
ステップS101〜S126で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さくない場合(ステップS137でNO)は、走査線番号mが走査線数Mと一致する場合、すなわちすべての超音波トランスデューサー素子群UGにおいて超音波パルスの送受信が終了した場合である。したがって、制御回路160は処理部130に指示を出し、処理部130はハーモニック処理を行う(ステップS142〜S156、図17、18参照)。
ハーモニック処理部131は、高調波成分を抽出する(ステップS142)。図18は、高調波成分を抽出する処理(ステップS142)の流れを示すフローチャートである。
ハーモニック処理部131は、ステップS106でメモリー125に保存された受信信号(周波数1fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数1fの3次高調波成分を抽出する(ステップS1421)。
一方、ハーモニック処理部131は、ステップS126でメモリー125に保存された受信信号(周波数1.5fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数1.5fの2次高調波成分を抽出する(ステップS1423)。
そして、ハーモニック処理部131は、ステップS1421で抽出した3次高調波成分とステップS1423で抽出された2次高調波成分との信号強度の最大値が同じとなるように、ステップS1421で抽出した3次高調波成分をA倍処理する(ステップS1422)。ここで、Aは、以下の数式(4)で算出される。
A=ステップS1423で抽出される周波数1.5fの2次高調波成分の信号強度の最大値/ステップS1421で抽出される周波数1fの3次高調波成分の信号強度の最大値 ・・・(4)
なお、ハーモニック処理部131がステップS1421〜S1423の処理を行う順番は任意である。例えば、ハーモニック処理部131は、ステップS1423の処理を、ステップS1421の処理の前に行ってもよいし、ステップS1421の処理の後に行ってもよい。
ハーモニック処理部131はステップS1422で求められた周波数1fの3次高調波成分と、ステップS1423で求められた周波数1.5fの2次高調波成分とを減算処理する(ステップS1424)。これにより、周波数1fの3次高調波成分の1波が抽出される。
図17の説明に戻る。検波処理部133は、ステップS142で抽出された高調波成分に対して、絶対値(整流)処理後に、低域通過フィルターをかけて、非変調信号を抽出する、すなわち包絡線検波を行う(ステップS151)。対数変換処理部135は、対数変換処理を行う(ステップS152)。
ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137は、信号強度及び関心領域を調整する(ステップS153)。STC139は、深さに応じて増幅度(明るさ)を補正する(ステップS154)。
DSC150は、操作変換処理を行ってBモード画像データ(表示用画像データ)を生成して表示部21に出力する(ステップS155)。表示部21は、生成された表示用画像データを表示する(ステップS156)。これにより、図15〜18に示す処理が終了する。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様、3次高調波成分から基本波の2倍の波数を打ち消し、1波を抽出することができる。そして、抽出する波数を1つにするため、距離分解能の低下を改善し、高品質な画像を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、2回の送受信で1ラインのデータが生成できる(第1の実施の形態では、4回の送受信が必要)ため、時間分解能(フレームレート)を向上させることができる。
なお、本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、3次以上の高調波成分全てに対して適用することができる。
<第3の実施の形態>
第2の実施の形態に係る超音波画像装置2は、周波数1fの超音波パルスと、周波数1.5fの超音波パルスとに基づいて、周波数1fの超音波パルスの3次高調波成分のうちの1波を抽出したが、周波数1fの超音波パルスの3次高調波成分のうちの1波を抽出する方法はこれに限られない。
第3の実施の形態に係る超音波画像装置3は、周波数1fの超音波パルスと、周波数3fの超音波パルスとに基づいて、周波数1fの超音波パルスの3次高調波成分のうちの1波を抽出するものである。以下、超音波画像装置3について説明する。なお、超音波画像装置3の構成は超音波画像装置1の構成(図1〜6参照)と同一であるため、超音波画像装置3の構成についての説明を省略し、超音波画像装置3がハーモニック成分を抽出して画像を表示する処理についてのみ説明する。また、超音波画像装置1及び超音波画像装置2の処理と同一の部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
まず、図19を用いて、超音波画像装置3における高調波成分の抽出について説明する。
周波数1fの超音波パルス(1波)を送信し、この超音波パルスの受信信号に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、3次高調波成分を抽出する。この3次高調波成分の周波数は3fであり、波数は3である(図19(A)参照)。
また、周波数3fの超音波パルス(2波)を送信し、この超音波パルスの受信信号に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、基本波成分を抽出する。この基本波成分の周波数は3fであり、波数は2である(図19(B)参照)。
そして、周波数1fの超音波パルスに基づく3次高調波成分(振幅をA倍処理したもの、後に詳述)と、周波数3fの超音波パルスの基本波成分を減算処理する。この結果、周波数3fの超音波が1波だけ抽出される(図19(C)参照)。
次に、図20〜23を用いて、3次高調波成分のうちの1波基づくハーモニックイメージングの処理の流れについて説明する。
制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、走査線番号mを1に初期設定(m=1)する(ステップS100)。制御回路160は、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS168で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1fで位相が0°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS101〜ステップS106、図20参照)。
次に、制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS168で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数3fで位相が0°の超音波2波を送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS161〜ステップS166、図21参照)。
送信パルス発生器111は、周波数3fで位相が0°の超音波パルス(2波)を送信するためのパルス電圧を生成する(ステップS161)。送信遅延回路113は、送波フォーカシング制御を行い、超音波プローブ10は、ステップS161で生成されたパルス電圧に対応する超音波ビームを対象物に対して出射する(ステップS162)。ステップS163の処理はステップS103と同じであり、ステップS164の処理はステップS104と同じであり、ステップS165の処理はステップS105と同じであり、ステップS166の処理はステップS106と同じであるため、説明を省略する。
制御回路160は、ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mが、走査線数Mより小さいか否かを判断する(ステップS167)。当該処理は、ステップS137と同じである。
一方、ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さい場合(ステップS167でYES)は、制御回路160は、ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mに1を追加して、走査線番号mを更新する(ステップS168)。当該処理は、ステップS138と同じである。
ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さくない場合(ステップS167でNO)は、走査線番号mが走査線数Mと一致する場合、すなわちすべての超音波トランスデューサー素子群UGにおいて超音波パルスの送受信が終了した場合である。したがって、制御回路160は処理部130に指示を出し、処理部130はハーモニック処理を行う(ステップS171〜S186、図22、23参照)。
ハーモニック処理部131は、高調波成分を抽出する(ステップS171)。図23は、高調波成分を抽出する処理(ステップS171)の流れを示すフローチャートである。
ハーモニック処理部131は、ステップS106でメモリー125に保存された受信信号(周波数1fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数1fの3次高調波成分を抽出する(ステップS1711)。ステップS1711の処理は、ステップS1421の処理と同一である。
一方、ハーモニック処理部131は、ステップS166でメモリー125に保存された受信信号(周波数3fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数3fの基本波成分を抽出する(ステップS1713)。
ハーモニック処理部131は、ステップS1711で抽出した周波数1fの3次高調波成分と、ステップS1713で抽出した周波数3fの基本波成分との信号強度の最大値が同じとなるように、ステップS1421で抽出した3次高調波成分をA倍処理する(ステップS1712)。ここで、Aは、以下の数式(5)で算出される。
A=ステップS1713で抽出される周波数3fの基本波成分の信号強度の最大値/ステップS1711で抽出される周波数1fの3次高調波成分の信号強度の最大値 ・・・(5)
なお、ハーモニック処理部131がステップS1711〜S1713の処理を行う順番は任意である。例えば、ハーモニック処理部131は、ステップS1713の処理を、ステップS1711の処理の前に行ってもよいし、ステップS1711の処理の後に行ってもよい。
ハーモニック処理部131はステップS1712で求められた周波数1fの3次高調波成分と、ステップS1713で求められた周波数3fの基本波成分とを減算処理する(ステップS1714)。これにより、周波数1fの3次高調波成分が1波だけ抽出される。
図22の説明に戻る。検波処理部133は、ステップS171で抽出された高調波成分に対して、絶対値(整流)処理後に、低域通過フィルターをかけて、非変調信号を抽出する、すなわち包絡線検波を行う(ステップS181)。対数変換処理部135は、対数変換処理を行う(ステップS182)。
ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137は、信号強度及び関心領域を調整する(ステップS183)。STC139は、深さに応じて増幅度(明るさ)を補正する(ステップS184)。
DSC150は、操作変換処理を行ってBモード画像データ(表示用画像データ)を生成して表示部21に出力する(ステップS185)。表示部21は、生成された表示用画像データを表示する(ステップS186)。なお、ステップS181〜S186の処理は、ステップS151〜S156と同一である。これにより、図20〜23に示す処理が終了する。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態及び第2の実施の形態と同様、3次高調波成分から基本波の2倍の波数を打ち消し、1波を抽出することができる。その結果、距離分解能の低下を改善し、高品質な画像を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、2次高調波より振幅が高い、つまりS/N比の良い基本波を利用するため、3次高調波成分のうちの1波を抽出するときに、ノイズの影響により発生する残留成分を低くすることができる。その結果、距離方向のアーチファクトを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様、2回の送受信で1ラインのデータが生成できる(第1の実施の形態では、4回の送受信が必要)ため、時間分解能(フレームレート)を向上させることができる。
なお、本実施の形態は、第1の実施の形態と同様に、3次以上の高調波成分全てに対して適用することができる。本実施の形態では、周波数1fの超音波と、周波数3fの超音波との受信信号に基づいて3次高調波成分1波を抽出したが、これを3次以上の高調波成分に一般化する場合には、周波数f1の超音波1波と、周波数f1のx倍(周波数1fより高い周波数)の周波数f2の超音波x−1波との受信信号に基づいてN次高調波成分1波を抽出すればよい。なお、xは3以上の自然数である。
具体的には、4次高調波成分のうちの1波を抽出するには、周波数f1の超音波1波と、周波数f1の4倍の周波数f2の超音波3波とを送信し、周波数f1の超音波の受信信号から4次高調波成分(波数は4)を抽出し、周波数f2の超音波3波の受信信号から基本波成分(波数は3)を抽出し、4次高調波成分から基本波成分を減算することで4次高調波成分の1波のみが抽出される。5次高調波成分のうちの1波を抽出するには、周波数f1の超音波1波と、周波数f1の5倍の周波数f2の超音波4波とを送信し、周波数f1の超音波の受信信号から5次高調波成分(波数は5)を抽出し、周波数f2の周波数の超音波4波の受信信号から基本波成分(波数は4)を抽出し、5次高調波成分から基本波成分を減算することで5次高調波成分の1波のみが抽出される。
<第4の実施の形態>
第3の実施の形態に係る超音波画像装置3は、周波数1fの超音波パルスと、周波数3fの超音波パルスとに基づいて、フィルター法を用いて周波数1fの超音波パルスの3次高調波成分のうちの1波を抽出したが、周波数1fの超音波パルスの3次高調波成分のうちの1波を抽出する方法はこれに限られない。
第4の実施の形態に係る超音波画像装置3は、周波数1fの超音波パルスと、周波数3fの超音波パルスとに基づいて、フィルター法及び位相反転法を用いて周波数1fの超音波パルスの3次高調波成分のうちの1波を抽出するものである。以下、超音波画像装置4について説明する。なお、超音波画像装置4の構成は超音波画像装置1の構成(図1〜6参照)と同一であるため、超音波画像装置4の構成についての説明を省略し、超音波画像装置4がハーモニック成分を抽出して画像を表示する処理についてのみ説明する。また、超音波画像装置1及び超音波画像装置2及び超音波画像装置3の処理と同一の部分については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
まず、図24を用いて、超音波画像装置4における高調波成分の抽出について説明する。
周波数1fの第1の超音波パルス(1波)と、周波数1fであり第1の超音波パルスに対して位相が180°異なる(位相が反転された)第2の超音波パルス(1波)とを送信し、第1の超音波パルスの受信信号と第2の超音波パルスの受信信号とを減算処理することで、基本波と3次高調波成分とを抽出する。基本波と3次高調波成分とが抽出された結果に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、3次高調波成分を抽出する。この3次高調波成分の周波数は3fであり、波数は3である(図24(A)参照)。
また、周波数3fの超音波パルス(2波)を送信し、この超音波パルスの受信信号に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター)を行い、基本波成分を抽出する。この基本波成分の波長は3fであり、波数は2である(図24(B)参照)。
そして、周波数1fの超音波パルスに基づく3次高調波成分(振幅をA倍処理したもの、後に詳述)と、周波数3fの超音波パルスの基本波成分を減算処理する。この結果、周波数3fの超音波が1波だけ抽出される(図24(C)参照)。
次に、図25〜29を用いて、3次高調波成分のうちの1波に基づくハーモニックイメージングの処理の流れについて説明する。
次に、制御回路160は、走査線番号mを1に初期設定(m=1)する(ステップS100)。制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS168で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1fで位相が0°の超音波パルスを送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS101〜ステップS106、図25参照)。
それから、制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS168で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数1fで位相が180°の超音波パルス(1波)を送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS111〜ステップS116、図26参照)。
制御回路160は、制御回路160は、送信処理部110、受信処理部120等を介して、、ステップS100で初期設定された走査線番号m又は後述するステップS138で更新された走査線番号mの超音波トランスデューサー素子群UGから周波数3fで位相が0°の超音波パルス(2波)を送信し、その超音波エコーの受信波を超音波トランスデューサー素子群UGで受信する(ステップS161〜ステップS166、図27参照)。
制御回路160は、ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mが、走査線数Mより小さいか否かを判断する(ステップS167)。当該処理は、ステップS137と同じである。
ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さい場合(ステップS167でYES)は、制御回路160は、ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群の走査線番号mに1を追加して、走査線番号mを更新する(ステップS168)。当該処理は、ステップS138と同じである。
一方、ステップS101〜S166で超音波パルスの送受信を行った超音波トランスデューサー素子群UGの走査線番号mが、走査線数Mより小さくない場合(ステップS167でNO)は、走査線番号mが走査線数Mと一致する場合、すなわちすべての超音波トランスデューサー素子群UGにおいて超音波パルスの送受信が終了した場合である。したがって、制御回路160は処理部130に指示を出し、処理部130はハーモニック処理を行う(ステップS172〜S186、図28、29参照)。
ハーモニック処理部131は、高調波成分を抽出する(ステップS172)。図29は、高調波成分を抽出する処理(ステップS172)の流れを示すフローチャートである。
ハーモニック処理部131は、ステップS106でメモリー125に保存された受信信号(周波数1fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)と、ステップS116でメモリー125に保存された受信信号(周波数1fで位相が180°の超音波パルスに基づく受信信号)をメモリー125から取得し、これらを減算処理することにより、周波数1fの基本波成分と3次高調波成分とを抽出する(ステップS1721)。ステップS1721の処理は、ステップS1411の処理と同一である。
ハーモニック処理部131は、ステップS1411で抽出した周波数1fの基本波成分と3次高調波成分とに対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数1fの3次高調波成分を抽出する(ステップS1722)。ステップS1722の処理は、ステップS1412の処理と同一である。
一方、ハーモニック処理部131は、ステップS166でメモリー125に保存された受信信号(周波数3fで位相が0°の超音波パルスに基づく受信信号)に対して周波数フィルター処理(バンドパスフィルター処理)を行い、周波数3fの基本波成分を抽出する(ステップS1724)。
ハーモニック処理部131は、ステップS1722で抽出した周波数1fの3次高調波成分とステップS1724で抽出された周波数3fの基本波成分との信号強度の最大値が同じとなるように、ステップS1722で抽出した3次高調波成分をA倍処理する(ステップS1723)。ここで、Aは、以下の数式(6)で算出される。
A=ステップS1724で抽出される周波数3fの基本波成分の信号強度の最大値/ステップS1722で抽出される周波数1fの3次高調波成分の信号強度の最大値 ・・・(6)
なお、ハーモニック処理部131がステップS1721〜S1724の処理を行う順番は任意である。例えば、ハーモニック処理部131は、ステップS1724の処理を、ステップS1721の処理の前に行ってもよいし、ステップS1721の処理の後で行ってもよい。
ハーモニック処理部131はステップS1413で求められた周波数1fの3次高調波成分と、ステップS1711で求められた周波数3fの基本波成分とを減算処理する(ステップS172)。これにより、周波数1fの3次高調波成分の1波が抽出される。
図28の説明に戻る。検波処理部133は、ステップS171で抽出された高調波成分に対して、絶対値(整流)処理後に、低域通過フィルターをかけて、非変調信号を抽出する、すなわち包絡線検波を行う(ステップS181)。対数変換処理部135は、対数変換処理を行う(ステップS182)。
ゲイン・ダイナミックレンジ調整部137は、信号強度及び関心領域を調整する(ステップS183)。STC139は、深さに応じて増幅度(明るさ)を補正する(ステップS184)。
DSC150は、操作変換処理を行ってBモード画像データ(表示用画像データ)を生成して表示部21に出力する(ステップS185)。表示部21は、生成された表示用画像データを表示する(ステップS186)。なお、ステップS181〜S186の処理は、ステップS151〜S156と同一である。これにより、図25〜29に示す処理が終了する。
本実施の形態によれば、2次高調波成分の周波数領域と3次高調波成分の周波数領域とで重複している部分を分離することができるため、広帯域送受信が可能となる。その結果、距離分解能を向上させ、高品質な画像を得ることができる。
また、本実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様に、2次高調波より振幅が高い、つまりS/N比の良い基本波を利用するため、3次高調波成分のうちの1波を抽出するときに、ノイズの影響により発生する残留成分を低くすることができる。その結果、距離方向のアーチファクトを低減することができる。
また、本実施の形態によれば、3回の送受信で1ラインのデータが生成できる(第1の実施の形態では、4回の送受信が必要)ため、時間分解能(フレームレート)を向上させることができる。
また、本実施の形態によれば、位相反転法により3次高調波成分を抽出するときに、2回分の受信信号を加算しているため、第3の実施の形態と比較して、S/N比を上げることができる。
なお、本実施の形態は、第3の実施の形態と同様に、3次以上の高調波成分全てに対して適用することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明した。第1の実施の形態〜第4の実施の形態は、それぞれ、他の実施の形態に対して以下に示すようなメリットがある。
第1の実施の形態は、第2の実施の形態〜第4の実施の形態に対して、2次高調波成分の周波数領域と3次高調波成分の周波数領域とで重複している部分を分離することができるため、広帯域送受信が可能となり、距離分解能が高くなるというメリットがある。
第1の実施の形態は、第2の実施の形態に対して、加算処理をするために抽出される3次高調波の振幅が高いというメリットがある。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、第3の実施の形態及び第4の実施の形態に対して、(1)減算処理に基本波成分を用いないため、送信する2つの周波数の差、つまりビーム幅の差が小さく、方位方向のアーチファクトが発生しにくい、(2)減算処理に用いる基本波成分の基となる超音波パルスの波長が長いため、周波数帯域が広い超音波トランスデューサー素子が必要ない、というメリットがある。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態に対して、超音波の送受信の回数が少なく、時間分解能が向上する、というメリットがある。
第3の実施の形態は、第1の実施の形態及び第4の実施の形態に対して、超音波の送受信の回数が少なく、時間分解能が向上する、というメリットがある。
第3の実施の形態及び第4の実施の形態は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態に対して、S/N比の良い基本波を利用することで、3次高調波成分のうちの1波を抽出するときにノイズの影響により発生する残留成分を低くし、距離方向のアーチファクトを低減することができる、というメリットがある。
第4の実施の形態は、第3の実施の形態に対して、(1)加算処理をするためにS/N比をよくすることができる、(2)広帯域送受信が可能となり、距離分解能を向上させ、高品質な画像を得ることができる、というメリットがある。
したがって、第1の実施の形態〜第4の実施の形態を、場合によって使い分けることで、より良いハーモニック処理を行うことができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、本発明は、超音波測定装置に限らず、超音波測定装置において行う画像処理方法、超音波測定装置に画像処理方法を行わせるプログラム、プログラムが格納された記憶媒体等として提供することもできる。
特に、上記実施の形態では、超音波測定装置本体20の内部に表示部21が設けられた超音波画像装置1、2、3、4を例に本発明を説明したが、表示部21は超音波画像装置1、2、3、4に設けられていなくてもよい。例えば、表示部を有さず、生成した表示用画像データを外部の表示装置へ出力する超音波測定装置として本発明に係る装置を提供してもよい。