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JP6299705B2 - 車両下部構造 - Google Patents

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Description

本発明は、車両下部構造に関し、特にフロントピラーとロッカとの結合部の構造に関する。
下記特許文献1に記載された車両側部構造では、フロントピラーアウタリインフォースメントの下端部と、ロッカアウタリインフォースメントの前端部とが、車両側面視で重なるように配置されている。なお、関連する技術としては、例えば下記特許文献2に記載されたものがある。
特開2015−058749号公報 特開2006−205901号公報
上記のような車両側部構造では、フロントピラーアウタリインフォースメントの下端部が、ロッカアウタリインフォースメントの前端部の側面に対して、例えばスポット溶接により結合(接合)される。このような構成の場合、微小ラップ衝突時などにフロントピラーアウタリインフォースメントに対して車両前方側から入力される衝突荷重が、主にスポット溶接の打点を経由してロッカアウタリインフォースメントに伝達される。その結果、上記各リインフォースメントが打点まわりで変形すること等により、衝突荷重の伝達ロスが発生する可能性がある。
本発明は上記事実を考慮し、フロントピラーに対して車両前方側から入力される衝突荷重を、ロッカ側へ効率良く伝達することができる車両下部構造を得ることを目的とする。
請求項1に記載の発明に係る車両下部構造は、フロントピラーに設けられ、ロッカを構成するパネルに下端部が結合されたフロントピラーリインフォースメントと、前記ロッカに設けられ、前記パネルに結合されると共に、前端が前記下端部の後端に対して車両後方から対向して配置され、少なくとも前記フロントピラーに対して車両前方側から衝突荷重が入力された際に、前記後端が前記前端に接触するロッカリインフォースメントと、を備えている。
請求項1に記載の発明では、少なくともフロントピラーに対して車両前方側から衝突荷重が入力された際には、フロントピラーリインフォースメントの下端部の後端が、ロッカリインフォースメントの前端に接触する。その結果、フロントピラーリインフォースメントの下端部の後端と、ロッカリインフォースメントの前端とが車両前後方向に突き合わされた状態で、フロントピラーリインフォースメントからロッカリインフォースメントに衝突荷重が伝達される。これにより、背景技術の欄に記載した車両側部構造(従来構造)のように、主にスポット溶接の打点を経由してフロントピラー側からロッカ側へ衝突荷重を伝達する構成と比較して、衝突荷重を効率良くロッカ側へ伝達することができる。
請求項2に記載の発明に係る車両下部構造は、請求項1において、前記前端と前記後端とが、通常時に隙間を隔てて離間している。
請求項2に記載の発明では、フロントピラーリインフォースメントの下端部の後端と、ロッカアウタリインフォースメントの前端とが、通常時に隙間を隔てて離間している。これにより、上記の隙間が設定されない構成と比較して、上記各リインフォースメントの寸法精度や、ロッカのパネルに対する上記各リインフォースメントの組付精度などを低下させることができる。
請求項3に記載の発明に係る車両下部構造は、請求項1又は請求項2において、前記下端部の後端側には、車両前後方向に延びる後端稜線部が形成され、前記ロッカリインフォースメントには、車両前後方向に延びる前端稜線部が形成され、前記後端における前記後端稜線部側の少なくとも一部と、前記前端における前記前端稜線部側の少なくとも一部とが、通常時に車両正面視で重なっている。
請求項3に記載の発明では、上記のように構成されているため、少なくともフロントピラーに対して車両前方側から衝突荷重が入力された際に、フロントピラーリインフォースメントの下端部の後端における後端稜線部側の少なくとも一部と、ロッカアウタリインフォースメントの前端における前端稜線部側の少なくとも一部とを接触させることができる。これにより、衝突荷重がフロントピラーリインフォースメントの後端稜線部側からロッカアウタリインフォースメントの前端稜線部側にダイレクトに伝達されるので、衝突荷重の伝達効率を向上させることができる。
請求項4に記載の発明に係る車両下部構造は、請求項1〜請求項3の何れか1項において、前記前端の一部と前記後端の一部とが、通常時に車両正面視で交差している。
請求項4に記載の発明では、上記のように交差していない構成と比較して、フロントピラーリインフォースメントの下端部の後端とロッカリインフォースメントの前端とを、前述したように接触させるための設定(各部材の設計や製造など)が容易になる。
以上説明したように、本発明に係る車両下部構造では、フロントピラーに対して車両前方側から入力される衝突荷重を、ロッカ側へ効率良く伝達することができる。
本発明の実施形態に係る車両下部構造が適用された車両の左側部の部分的な構成を示す側面図である。 図1に示される構成の一部を車両後方斜め上方側から見た斜視図である。 図1に示される構成の一部を車両後方斜め下方側から見た斜視図である。 図1のF4−F4線に沿った切断面を拡大して示す拡大断面図である。 図1のF5−F5線に沿った切断面を拡大して示す拡大断面図である。 同車両下部構造が備えるフロントピラーリインフォースメント及びロッカアウタリインフォースメントの部分的な構成を示す側面図である。 同車両下部構造のフロントピラーに対して車両前方側から衝突荷重が入力された際の状況を説明するための斜視図である。 本発明の実施形態に対して実施したCAE解析による微小ラップ衝突の衝突途中の状況を示す側面図である。 本発明の実施形態における上記CAE解析でのフロントピラーの変位と時間との関係を示す線図である。 本発明の実施形態において、上記CAE解析によりフロントピラーリインフォースメントの下端部が受ける荷重と時間との関係を示す線図である。 本発明の実施形態における上記CAE解析での衝突終了後の状況を示す側面図である。 本発明の実施形態と同様の構造が適用された実際の車両を用いた微小ラップ衝突試験の結果を示す斜視図である。 本発明の実施形態と同様の構造が適用された実際の車両を用いた微小ラップ衝突試験により、フロントピラーリインフォースメントの下端部の後端が、ロッカアウタリインフォースメントの前端に接触した状態を示す斜視図である。 図13に示される構成を図13とは異なる角度から見た斜視図である。 本発明の実施形態の変形例を示す図4の一部に対応した断面図である。
以下、図1〜図14を用いて、本発明の実施形態に係る車両下部構造10について説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印LH、矢印UPは、車両の前方向(進行方向)、左方向、上方向をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両左右方向(車両幅方向)の左右、車両上下方向の上下を示すものとする。
(全体構成)
先ず、本実施形態に係る車両下部構造10の全体構成について説明し、次いで、本実施形態の要部について説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る車両下部構造10が適用された車両12(自動車)は、車体側部の下部において車両前後方向に延びるロッカ14と、ロッカ14の前端部から車両上方側へ延びるAピラー(フロントピラー)16とを備えている。ロッカ14及びAピラー16は、車体の骨格を成す閉断面状の部材であり、図示しないルーフサイドレール及びセンタピラーと共に乗員乗降用のドア開口部18を形成している。なお、この車両12では、車体の左側部と右側部の構成が左右対称な以外は同様とされているため、以下、左側部の構成について説明し、右側部の構成についての説明を省略する。
図1〜図5に示されるように、ロッカ14は、ロッカアウタパネル20を備えている。このロッカアウタパネル20は、本発明における「ロッカを構成するパネル」に相当する。このロッカアウタパネル20は、板金製であり、車両前後方向を長手方向とする長尺状に形成されると共に、車両正面視で車両幅方向内側へ開口した断面ハット形状を成している。具体的には、図4及び図5に示されるように、ロッカアウタパネル20は、板厚方向を車両幅方向として配置された側壁部20Aと、側壁部20Aの車両上下端から車両幅方向内側へ延出された上壁部20B及び下壁部20Cと、上壁部20Bの車両幅方向内端から車両上方側へ延出されたフランジ20Dと、下壁部20Cの車両幅方向内端から車両下方側へ延出されたフランジ20Eと、を含んで構成されている。このロッカアウタパネル20の前端開口部は、ロッカアウタパネル20の前端部の内側に接合されたバルク部材22によって閉塞されている。
また、ロッカ14は、図4及び図5に示されるように、ロッカアウタパネル20の車両幅方向内側に配置されたロッカインナパネル24(図3では図示省略)を備えている。このロッカインナパネル24は、板金製であり、車両前後方向を長手方向とする長尺状に形成されると共に、車両正面視で車両幅方向外側へ開口した断面ハット形状を成している。具体的には、ロッカインナパネル24は、板厚方向を車両幅方向にして配置された側壁部24Aと、側壁部24Aの車両上下端から車両幅方向外側へ延出された上壁部24B及び下壁部24Cと、上壁部24Bの車両幅方向内端から車両上方側へ延出されフランジ24Dと、下壁部24Cの車両幅方向内端から車両下方側へ延出されたフランジ24Eと、を含んで構成されている。
ロッカアウタパネル20のフランジ22D、22Eと、ロッカインナパネル24のフランジ24D、24Eとは、スポット溶接等の手段によって結合(接合)されている。これにより、ロッカアウタパネル20とロッカインナパネル24とによって、車両前後方向に延びる閉断面が形成されている。また、ロッカアウタパネル20とロッカインナパネル24との間には、板金製の隔壁パネル26が介在している。隔壁パネル26は、平板状に形成されており、板厚方向を車両幅方向にして配置されると共に、ロッカアウタパネル20のフランジ20D、20E、及びロッカインナパネル24のフランジ24D、24Eにスポット溶接等の手段によって結合(接合)されている。
ロッカアウタパネル20の内側には、板金製の内側リインフォースメント28が設けられている。内側リインフォースメント28は、車両正面視で車両幅方向内側へ開口した断面略U字形状に形成されている。具体的には、内側リインフォースメント28は、板厚方向を車両幅方向にして配置された側壁部28Aと、側壁部28Aの車両上下端から車両幅方向内側へ延出された上壁部28B及び下壁部28Cとを有している。側壁部28A、上壁部28B及び下壁部28Cは、スポット溶接等の手段によって、ロッカアウタパネル20の側壁部20A、上壁部20B及び下壁部20Cにそれぞれ結合されている。
さらに、内側リインフォースメント28の内側における上方角部には、板金製の補強パネル30が設けられている。補強パネル30は、車両正面視で略逆L字状に形成されており、スポット溶接等の手段によって、内側リインフォースメント28の側壁部28A及び上壁部28Bにそれぞれ結合されている。なお、詳細な説明は省略するが、ロッカインナパネル24の内側における上方角部には、断面略L字状の補強パネル32、34が結合されており、ロッカインナパネル24の下壁部24Cの下面には、下側リインフォースメント36が結合されている。
また、ロッカアウタパネル20の車両幅方向外側には、ロッカアウタリインフォースメント38(以下、ロッカアウタRF38と称する)が設けられている。このロッカアウタRF38は、本発明の「ロッカリインフォースメント」に相当する。このロッカアウタRF38は、ロッカ14の長手方向に延在し、ロッカ14を補強する高強度の板金製の部材であり、ロッカアウタパネル20に対して車両幅方向外側に重ね合わされて結合されている。
このロッカアウタRF38は、車両正面視で車両幅方向内側へ開口した断面略U字形状に形成されている。具体的には、ロッカアウタRF38は、図5に示されるように、板厚方向を車両幅方向にして配置された側壁部38Aと、側壁部38Aの車両上下端から車両幅方向内側へ延出された上壁部38B及び下壁部38Cとを備えている。
側壁部38Aは、ロッカアウタパネル20の側壁部20Aに対して車両幅方向外側に重ね合わされており、スポット溶接等の手段により側壁部20Aに結合されている。上壁部38Bは、ロッカアウタパネル20の上壁部20Bに対して車両上方側に重ね合わされており、スポット溶接等の手段により上壁部20Bに結合されている。下壁部38Cは、ロッカアウタパネル20の下壁部20Cに対して車両下方側に重ね合わされており、スポット溶接等の手段により下壁部20Cに結合されている。このロッカアウタRF38の前端(前側のコバ)39は、側壁部38A、上壁部38B及び下壁部38Cの各前端によって構成されており、ロッカアウタパネル20の前端よりも車両後方側に位置している。
一方、Aピラー16は、該Aピラー16の車両幅方向外側壁部を構成する板金製のサイドアウタパネル40を備えている。サイドアウタパネル40は、平面視で車両幅方向内側へ開口した断面ハット形状に形成されている。このサイドアウタパネル40の車両幅方向内側には、板金製のAピラーインナパネル42が結合されている。これにより、Aピラー16が閉断面状に形成されている。このAピラー16の車両前方には、フロントホイールハウス44が形成されており、当該フロントホイールハウス44内には、図示しない前輪が配設されている。なお、図1、10、11、14〜17においては、フロントサイドメンバに符号46を付し、フロントフェンダエプロンに符号48を付している。
Aピラー16の閉断面内には、フロントピラーリインフォースメント50(以下、AピラーRF50と称する)が設けられている。このAピラーRF50は、Aピラー16の長手方向に延在し、Aピラー16を補強する高強度の板金製の部材であり、下端部50Uがロッカアウタパネル20の前端部に結合され、ロッカアウタパネル20の前端部から車両上方側へ延びている。このAピラーRF50は、車両上下方向から見て車両幅方向内側に開口した断面略U字形状に形成されている。
具体的には、AピラーRF50は、板厚方向を車両幅方向として配置された側壁部50Aと、側壁部50Aの車両前後端から車両幅方向内側へ延出された前壁部50B及び後壁部50Cと、側壁部50Aの下端から車両幅方向内側へ延出された下壁部50Dと、を備えている。前壁部50Bの下端部は、前述したバルク部材22の前面に重ね合わされており、複数の前面打点W1(図7参照)において、スポット溶接によりバルク部材22に結合されている。
後壁部50Cの下部側は、車両下方側へ向かうほど車両後方側へ向かうように湾曲しており、側壁部50Aの下部側は、車両下方側へ向かうほど車両前後方向の寸法が車両後方側へ拡大している。後壁部50Cの下端部(後端部)は、ロッカアウタパネル20の上壁部20Bの上面に沿って車両後方側へ延びている。側壁部50Aの下端部は、ロッカアウタパネル20の側壁部20Aの前端部に対して車両幅方向外側に重ね合わされており、複数の側面打点W2(図1、2、6、7参照)において、スポット溶接により側壁部20Aに結合されている。
また、下壁部50Dは、ロッカアウタパネル20の下壁部20Cに対して車両下方側に重ね合わされており、複数の下面打点W3(図1参照)において、スポット溶接により下壁部20Cに結合されている。このAピラーRF50の下端部50Uの後端(後側のコバ)51は、側壁部50A及び後壁部50Cの各後端によって構成されている。なお、図1、2、6、7等においては、図面を見易くする関係から、上記の前面打点W1、側面打点W2、下面打点W3以外の打点(溶接打点)の図示を省略している。また、以下の説明では、上記の各打点を単に溶接打点と称する場合がある。
(本実施形態の要部)
次に、本実施形態の要部について説明する。
本実施形態では、ロッカアウタRF38の前端39は、AピラーRF50の下端部50Uの後端51(以下、単に「AピラーRF50の後端51」と称する場合がある)に対して車両後方から対向して配置されている。この「対向」は「向かい合って」と同義である。つまり、ロッカアウタRF38の前端39の全部又は一部(ここでは一部)が、AピラーRF50の後端51に対して、通常時に車両正面視で重なるように配置されている。また、ロッカアウタRF38の前端39と、AピラーRF50の後端51とは、通常時に隙間52を隔てて車両前後方向に離間している。この隙間52は、車両前後方向の寸法が、例えば5mm程度に設定されている。
また、本実施形態では、図1、2、4、6、7に示されるように、AピラーRF50の後端51側における上方角部には、車両前後方向に延びる後端稜線部R1が形成されている。この後端稜線部R1は、側壁部50Aと後壁部50Cとの間に形成された断面L字状の屈曲部である。同様に、図1、2、5、6、7に示されるように、ロッカアウタRF38の前端側の上方角部には、車両前後方向に延びる前端稜線部R2が形成されている。この前端稜線部R2は、側壁部38Aと上壁部38Bとの間に形成された断面L字状に屈曲部であり、ロッカアウタRF38の前端側だけでなく、ロッカアウタRF38の全長に亘って形成されている。そして、本実施形態においては、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側の少なくとも一部と、ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側の少なくとも一部とが、通常時に車両正面視で重なっている。
なお、上記の「AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側」とは、例えば、後端51のうち、車両上下方向中央よりも上側で且つ車両幅方向中央よりも車両幅方向外側の部位のことである。同様に、上記の「ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側」とは、例えば、前端39のうち、車両上下方向中央よりも上側で且つ車両幅方向中央よりも車両幅方向外側の部位のことである。
さらに、本実施形態では、複数の側面打点W2のうち、最も車両後方側に位置する側面打点W2(以下、側面打点W2Rと称する)は、AピラーRF50の下端部50Uの後端51側かつ下部側(ここでは下端側)に位置している。そして、図6に示されるように、後端稜線部R1の後端と側面打点W2Rとの距離をL1とし、前端稜線部R2の前端と側面打点W2Rとの距離をL2とした場合、L1≦L2の関係が成立するように構成されている。つまり、L1≦L2の関係が成立するように、隙間52、側面打点W2R、後端稜線部R1及び前端稜線部R2の配置が設定されている。
ここで、本実施形態では、車両12が前面衝突(例えば、微小ラップ衝突)をした場合、図示しない前輪が車両後方へ移動して、ロッカ14の前端からAピラー16に干渉(当接)する。この場合、衝突荷重F(図7参照)が、前輪を介して主にAピラー16におけるロッカ14よりもやや上の部位に対して車両前方側から入力される。その結果、Aピラー16には、車両左側から見て時計回りのモーメントが作用し、AピラーRF50が、下端側を中心として車両幅方向の軸線回りに車両後方側へ回転変形する(図7の矢印T参照)。この際には、AピラーRF50の下端部50Uの後端側は、後端51付近に位置する側面打点W2Rを回転中心として回転変形する。これにより、AピラーRF50の後端51の上部側が、ロッカアウタRF38の前端39の上部側に接触(当接:干渉)するように構成されている。つまり、本実施形態では、Aピラー16に対して車両前方側から衝突荷重が入力された際のAピラー16の僅かな変形により、AピラーRF50の後端51がロッカアウタRF38の前端39と接触するように構成されている。
またこの場合、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側の少なくとも一部と、ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側の少なくとも一部とが、互いに接触(当接:干渉)するように構成されている。そして、AピラーRF50の後端51とロッカアウタRF38の前端39との接触により、後端51と前端39とが車両前後方向に突き合わされた状態になる。
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、車両12が前面衝突(例えば、微小ラップ衝突)をすることにより、Aピラー16に対して車両前方側から衝突荷重Fが入力されると、AピラーRF50の後端51の上部側が、ロッカアウタRF38の前端39の上部側に接触する。その結果、後端51と前端39とが車両前後方向に突き合わされた状態でAピラーRF50からロッカアウタRF38に衝突荷重が伝達される。これにより、背景技術の欄で説明した従来構造のように、主にスポット溶接の打点を経由して衝突荷重を伝達する構成と比較して、衝突荷重を効率良くロッカ14側へ伝達することができる。その結果、従来構造よりも車体の変形を抑制することができる。
しかも、本実施形態では、AピラーRF50の後端51側には、車両前後方向に延びる後端稜線部R1が形成されており、ロッカアウタRF38の前端39側には、車両前後方向に延びる前端稜線部R2が形成されている。また、後端51における後端稜線部R1側の少なくとも一部と、前端39における前端稜線部R2側の少なくとも一部とが、通常時に車両正面視で重なっている。そして、Aピラー16に対して車両前方側から衝突荷重Fが入力された際には、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側の少なくとも一部と、ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側の少なくとも一部とが接触する。
これにより、衝突荷重がAピラーRF50の後端稜線部R1側からロッカアウタRF38の前端稜線部R2側にダイレクトに伝達される。これらのAピラーRF50及びロッカアウタRF38は、後端稜線部R1側及び前端稜線部R2側において車両前後方向の剛性が高くなっているため、上記各稜線部R1、R2の側を経由して衝突荷重が伝達されることにより、衝突荷重の伝達ロスが少なくなる。しかも、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側が、ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側から高い反力を受けるため、Aピラー16の回転変形量が減少する。これらのことから、車体変形量を効果的に低減することができる。
また、上記のようにAピラーRF50の後端51とロッカアウタRF38の前端39との接触により衝突荷重を伝達するため、上記各RF38、50の間において、側面打点W2等の溶接打点に作用するせん断力が低減する。
さらに、本実施形態では、従来構造のようにAピラーRF50の下端部とロッカアウタRF38の前端部とが車両側面視で重ねられた構成ではないため、例えばロッカアウタRF38の車両前後方向の寸法を、従来構造よりも短く設定することができる。これにより、従来構造よりも車体を軽量化することができる。
また、本実施形態では、図1、2、6に示されるように、AピラーRF50の後端51と、ロッカアウタRF38の前端39とが、通常時に隙間52を隔てて離間している。これにより、当該隙間52が設定されない構成と比較して、上記各RF38、50の寸法精度や、ロッカアウタパネル20に対する上記各RF38、50の組付精度などを低下させることができる。その結果、上記各RF38、50の製造や、ロッカアウタパネル20に対する上記各RF38、50の組み付け作業を容易にすることができる。
なお、車体の変形量を減少させるための対策としては、例えば、AピラーRF50とロッカアウタRF38との結合部周辺にバルク(補強部材)を追加することや、RF38、50間の溶接打点数を増加させることにより、RF38、50同士の結合剛性を向上させることが考えられる。しかしながら、バルクを追加すると、製造コスト及び車体の質量が増加することになる。また、溶接打点数を増やすと、タクトタイムおよび設備使用が増えるため、製造コストが増加することになる。
この点、本実施形態では、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側とロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側とが接触(干渉)することにより、AピラーRF50からロッカアウタRF38に衝突荷重がダイレクトに伝達される。これにより、衝突荷重の伝達ロスが小さくなると共に、RF38、50間の溶接打点に対する負荷が小さくなり、車体の変形量が減少する。その結果、上述の如き対策が不要になるので、製造コスト及び車体質量の低減に寄与する。
次に、本実施形態に係る車両下部構造10に対して実施したCAE(computer aided engineering)による微小ラップ衝突の解析結果について説明する。図8には、車両下部構造10に対して実施したCAE解析による微小ラップ衝突の衝突途中の状況が側面図にて示されている。また、図9には、上記CAE解析でのAピラー16の変位と時間との関係を示す線図が示されており、図10には、上記CAE解析によりAピラーRF50の下端部が受ける荷重と時間との関係が線図にて示されている。
図8に示されるように、車両下部構造10では、CAE解析による微小ラップ衝突の衝突途中において、ロッカ14の前端に対するAピラー16の前端の後退量L3が小さくなっている。また、図9に示されるように、衝突が発生してから所定時間(例えば15mmsec)が経過した時点T1以降において、Aピラー16前端の後端量の増加が少なくなっている。さらに、図10に示されるように、AピラーRF50の下端部が受ける荷重は、上記の時点T1以降で大きく上昇している。これは、AピラーRF50の後端51とロッカアウタRF38の前端39とが接触することにより、AピラーRF50がロッカアウタRF38から高い反力を受けたためであると考えられる(図8に二点鎖線で囲まれた領域A参照)。以上のことから、車両下部構造10では、AピラーRF50の後退量などの車体変形量が低減することが確認された。
次に、上記のCAE解析による衝突終了後の状況と、実際の車両を用いた微小ラップ衝突試験の結果とについて説明する。図11には、車両下部構造10における上記CAE解析での衝突終了後の状況が側面図にて示されている。また、図12には、車両下部構造10と同様の構造が適用された実際の車両を用いた微小ラップ衝突試験の結果が斜視図にて示されている。さらに、図13及び図14には、車両下部構造10と同様の構造が適用された実際の車両を用いた微小ラップ衝突試験により、AピラーRF50の後端51が、ロッカアウタRF38の前端39に干渉した状態が斜視図にて示されている。
図11に示されるCAE解析結果、及び図12に示される微小ラップ衝突試験結果の何れにおいても、車両下部構造10では、AピラーRF50の後退量が小さくなっており、ロッカ14の前端部14FがAピラーRF50の車両前方側に突出していない。また、AピラーRF50とロッカアウタRF38との間の溶接打点Wが破断していないことが確認された。
また、図13及び図14に示されるように、車両下部構造10では、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側と、ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側とが強く干渉している。この強干渉により、AピラーRF50とロッカアウタRF38との結合部強度が高くなっていると推定される。以上のように、CAE解析と実際の微小ラップ衝突試験とにおいて同様の結果を得ることができ、車両下部構造10による車体変形量の低減効果が確認された。
<実施形態の補足説明>
なお、前記実施形態において、図15に示される変形例70のように、AピラーRF50の後端51の一部と、ロッカアウタRF38の前端39の一部とが、車両正面視で交差した構成にしてもよい。この変形例70では、AピラーRF50の後壁部50Cの後端側が車両正面視でクランク状に屈曲されることにより、後壁部50Cの後端側かつ車両幅方向外側に車両上方側へ突出した段部54が形成されている。また、ロッカアウタRF38の側壁部38Aの前端側が車両正面視でクランク状に屈曲されることにより、側壁部38Aの前端側かつ上端側に車両幅方向外側に突出した段部56が形成されている。これにより、AピラーRF50の後端51における後端稜線部R1側の一部と、ロッカアウタRF38の前端39における前端稜線部R2側の一部とが、車両正面視で交差した構成になっている。この変形例では、上記のように交差していない構成と比較して、Aピラー16に対する衝突荷重F(図7参照)の入力時に、AピラーRF50の後端51と、ロッカアウタRF38の前端39とを、稜線部R1、R2側において接触させるための設定(各部材の設計や製造など)が容易になる。換言すれば、衝突荷重Fの入力方向のずれ、上記各RF38、50の寸法誤差、ロッカアウタパネル20に対する上記各RF38、50の組付誤差などによらず、後端51と前端38とを確実に接触させることが可能になる。また、後端51と前端39とが接触した状態が、不用意に解除され難くすることができる。
また、前記実施形態では、AピラーRF50の後端51とロッカアウタRF38の前端39との間に隙間52が設定された構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、AピラーRF50の後端51とロッカアウタRF38の前端39とが、通常時に接触して配置された構成にしてもよい。
また、前記実施形態では、車両下部構造10が適用された車両12において、車体の左側部と右側部とが左右対称な以外は同様の構成とされた場合について説明したが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明に係る車両下部構造が、車体の左側部及び右側部の何れか一方だけに適用された構成にしてもよい。
また、前記実施形態では、AピラーRF50の下端部50Uと、ロッカアウタRF38とが、ロッカアウタパネル20に結合された構成にしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明は、フロントピラーリインフォースメントの下端部と、ロッカリインフォースメントとが、ロッカを構成する共通のパネルに結合されたものであればよい。
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が前記実施形態に限定されないことは勿論である。
10 車両下部構造
14 ロッカ
16 フロントピラー
20 ロッカアウタパネル(ロッカを構成するパネル)
38 ロッカアウタリインフォースメント(ロッカリインフォースメント)
39 前端
50 フロントピラーリインフォースメント
50U 下端部
51 後端
52 隙間
R1 後端稜線部
R2 前端稜線部

Claims (4)

  1. フロントピラーに設けられ、ロッカを構成するパネルに下端部が結合されたフロントピラーリインフォースメントと、
    前記ロッカに設けられ、前記パネルに結合されると共に、前端が前記下端部の後端に対して車両後方から対向して配置され、少なくとも前記フロントピラーに対して車両前方側から衝突荷重が入力された際に、前記後端が前記前端に接触するロッカリインフォースメントと、
    を備えた車両下部構造。
  2. 前記前端と前記後端とが、通常時に隙間を隔てて離間している請求項1に記載の車両下部構造。
  3. 前記下端部の後端側には、車両前後方向に延びる後端稜線部が形成され、
    前記ロッカリインフォースメントには、車両前後方向に延びる前端稜線部が形成され、
    前記後端における前記後端稜線部側の少なくとも一部と、前記前端における前記前端稜線部側の少なくとも一部とが、通常時に車両正面視で重なっている請求項1又は請求項2に記載の車両下部構造。
  4. 前記前端の一部と前記後端の一部とが、通常時に車両正面視で交差している請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の車両下部構造。
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