JP6299281B2 - 車両用駆動装置の制御装置 - Google Patents
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Description
特許文献1に記載されている技術では、車輪の回転中に、変速装置を駆動力の伝達を行わないニュートラル状態とするように制御するニュートラル走行制御を行うように構成されている。引用文献1の技術では、ニュートラル走行制御中に、車速などに基づいて決定した目標変速段を形成する二つ係合装置の内の1つを係合状態に制御して、他方の係合装置を解放状態に制御して、変速装置をニュートラル状態にするように構成されている。
前記変速装置は、第一係合装置の係合と第二係合装置の係合により第一特定変速段が形成され、
前記車輪の回転中に、前記複数の係合装置の全てを解放状態とし前記変速装置が駆動力の伝達を行わないニュートラル状態となるように制御するニュートラル走行制御を行うニュートラル走行制御部を備え、
前記ニュートラル走行制御部は、前記ニュートラル状態から前記変速装置に変速段を形成させる復帰制御を行う際に、前記第一係合装置の係合圧を増加させる第一係合圧増加制御を行い、前記第一係合圧増加制御により、前記駆動力源側に駆動連結された前記変速装置の入力部材の回転速度が、前記変速装置に前記第一特定変速段が形成された場合の前記入力部材の回転速度に近づいた場合に、前記第二係合装置が解放状態に制御されているにもかかわらず係合状態であると判定し、それ以外の場合は、前記第二係合装置が解放状態であると判定する第二係合正常判定を行う点にある。
上記の特徴構成によれば、ニュートラル状態から変速装置に変速段を形成させる復帰制御を行う際に、第一係合装置の係合圧を増加させる第一係合圧増加制御が行われ、第一係合圧増加制御により、入力部材の回転速度が、第一特定変速段の同期回転速度に近づいた場合に、第二係合装置が解放状態に制御されているにもかかわらず係合状態であると判定することができる。よって、復帰制御を行う際に、第一係合装置の係合圧が増加されて第二係合正常判定が行われるので、第二係合装置が係合状態に固着している場合は、早期に固着を判定することができる。
また、第二係合装置が係合状態に固着していない場合は、いずれの変速段も形成させることなく、第二係合装置が解放状態であると判定することができる。このため、早期に、第二係合正常判定を完了して、変速装置に変速段を形成させることができる。
前記第二係合装置の係合と前記第三係合装置の係合により形成される前記高変速比段の一つの変速段である第二特定変速比段と、を備え、
前記ニュートラル走行制御部は、前記ニュートラル状態から前記変速装置に目標変速段を形成させる復帰制御を行う際に、前記目標変速段が、前記高変速比段の中で前記第二特定変速比段よりも変速比の小さい変速段である判定実行変速段である場合は、前記目標変速段を形成する前に、前記第一係合圧増加制御を行うと共に前記第二係合正常判定を行うと好適である。
前記第二係合正常判定により前記第二係合装置が係合状態であると判定した場合は、前記変速装置に前記第一特定変速段を形成させると好適である。
一方、第二係合正常判定により第二係合装置が係合状態であると判定した場合は、第二係合装置が係合固着している場合に適した第一特定変速段を早期に変速装置に形成させて、車両を走行させることができる。
よって、第一係合装置の係合圧が、判定係合圧まで増加した後に、第二係合正常判定を行うことで、第二係合正常判定の判定精度を向上させることができる。
本実施形態では、車両用駆動装置1は、車輪Wの駆動力源として内燃機関ENGと回転電機MGとを備えている。車両用駆動装置1には、内燃機関ENGと車輪Wとを結ぶ動力伝達経路に、変速装置TMが設けられている。回転電機MGは、変速装置TMを介さずに車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、内燃機関ENGは、変速装置TMを介して車両5の後輪に駆動連結され、回転電機MGは、車両5の前輪に駆動連結されている。変速装置TMは、複数の係合装置C1、B1、・・・を備えると共に当該複数の係合装置C1、B1、・・・の係合の状態に応じて変速比の異なる複数の変速段1st、2nd、・・・が選択的に形成される。
制御装置30は、ニュートラル走行制御部44などの機能部を備えている。
ニュートラル走行制御部44は、車輪Wの回転中に、複数の係合装置C1、B1、・・・の全てを解放状態とし変速装置TMが駆動力の伝達を行わないニュートラル状態となるように制御するニュートラル走行制御を行う。
以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1及び制御装置30について、詳細に説明する。
まず、本実施形態に係る車両用駆動装置1の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る車両用駆動装置1の駆動伝達系及び油圧供給系の構成を示す模式図である。なお、この図2は、軸対称の構成を一部省略して示している。この図において、実線は駆動力の伝達経路を示し、破線は作動油の供給経路を示し、一点鎖線は電力の供給経路を示している。本実施形態では、車両用駆動装置1は、車輪Wの駆動力源としての内燃機関ENGの回転駆動力を、トルクコンバータTCを介して変速装置TMに伝達し、変速装置TMで変速して車輪W側に伝達するように構成されている。変速装置TMは、入力軸Iに伝達された回転駆動力を変速して出力ギヤOに伝達するように構成されている。
第一遊星歯車機構PG1は、図2に示すように、複数のピニオンギヤP1を支持するキャリアCA1と、ピニオンギヤP1にそれぞれ噛み合うサンギヤS1及びリングギヤR1と、の三つの回転要素を有したシングルピニオン型の遊星歯車機構とされている。第二遊星歯車機構PG2は、第一サンギヤS2及び第二サンギヤS3の二つのサンギヤと、リングギヤR2と、第一サンギヤS2及びリングギヤR2の双方に噛み合うロングピニオンギヤP2並びにこのロングピニオンギヤP2及び第二サンギヤS3に噛み合うショートピニオンギヤP3を支持する共通のキャリアCA2と、の四つの回転要素を有したラビニヨ型の遊星歯車機構とされている。
第二遊星歯車機構PG2の第一サンギヤS2は、第三クラッチC3の係合により第二中間軸M2を介して第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第一ブレーキB1によりケースCSに選択的に固定される。第二サンギヤS3は、第一クラッチC1の係合により第一中間軸M1を介して第一遊星歯車機構PG1のキャリアCA1と選択的に一体回転するように駆動連結される。キャリアCA2は、第二クラッチC2の係合により入力軸Iと選択的に一体回転するように駆動連結されるとともに、第二ブレーキB2又はワンウェイクラッチFの係合によりケースCSに選択的に固定される。ワンウェイクラッチFは、一方向の回転のみを阻止することによりキャリアCA2を選択的にケースCSに固定する。リングギヤR2は、出力ギヤOと一体回転するように駆動連結されている。
本実施形態では、図4の作動表に示すように、変速装置TMは変速比(減速比)の異なる六つの変速段(第一変速段1st、第二変速段2nd、第三変速段3rd、第四変速段4th、第五変速段5th、及び第六変速段6th)を前進段として備えている。これらの変速段を構成するため、変速装置TMは、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2を備えてなる歯車機構と、6つの係合装置C1、C2、C3、B1、B2、Fと、を備えて構成されている。ワンウェイクラッチFを除くこれら複数の係合装置C1、B1、・・・の係合及び解放を制御して、第一遊星歯車装置P1及び第二遊星歯車装置P2の各回転要素の回転状態を切り替え、複数の係合装置C1、B1、・・・の中のいずれか二つを選択的に係合することにより、6つの変速段が切り替えられる。なお、変速装置TMは、上記6つの変速段のほかに、一段の後進段Revも備えている。
本実施形態では、変速装置TMが有するワンウェイクラッチFを除く複数の係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、いずれも摩擦係合装置とされている。具体的には、これらは油圧により動作する多板式クラッチや多板式ブレーキにより構成されている。これらの係合装置C1、C2、C3、B1、B2は、油圧制御装置PCから供給される油圧により、係合の状態が制御される。なお、ロックアップクラッチLCも摩擦係合装置である。
回転電機MGは、非回転部材に固定されたステータと、このステータと対応する位置で径方向内側に回転自在に支持されたロータと、を有している。回転電機MGのロータは、変速装置TMを介さずに車輪Wに駆動連結されている。本実施形態では、図1に示すように、回転電機MGは、変速装置TMが駆動連結された後輪ではなく、前輪に駆動連結されている。回転電機MGは、直流交流変換を行うインバータを介して蓄電装置としてのバッテリに電気的に接続されている。そして、回転電機MGは、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。すなわち、回転電機MGは、インバータを介してバッテリからの電力供給を受けて力行し、或いは車輪Wから伝達される回転駆動力により発電し、発電された電力は、インバータを介してバッテリに蓄電される。ここで、車輪Wから伝達される回転駆動力には、車輪W及び路面を介して伝達された内燃機関ENGの駆動力も含まれる。
車両用駆動装置1の油圧制御系は、車両の駆動力源や専用のモータによって駆動されるオイルポンプMP、EPから供給される作動油の油圧を所定圧に調整するための油圧制御装置PCを備えている。油圧制御装置PCは、各係合装置C1、B1・・・、LCなどに対して供給される油圧を調整するための複数のリニアソレノイド弁などの油圧制御弁を備えている。油圧制御弁は、制御装置30から供給される油圧指令の信号値に応じて弁の開度を調整することにより、当該信号値に応じた油圧の作動油を各係合装置C1、B1・・・、SSCなどに供給する。制御装置30から各リニアソレノイド弁に供給される信号値は電流値とされている。そして、各リニアソレノイド弁から出力される油圧は、基本的に制御装置30から供給される電流値に比例する。
油圧制御装置PCは、油圧調整用のリニアソレノイド弁から出力される油圧(信号圧)に基づき一又は二以上の調整弁の開度を調整することにより、当該調整弁からドレインする作動油の量を調整して作動油の油圧を一又は二以上の所定圧に調整する。所定圧に調整された作動油は、それぞれ必要とされるレベルの油圧で、変速装置TMが有する複数の係合装置C1、B1・・・及びロックアップクラッチLC等に供給される。
次に、車両用駆動装置1の制御を行う制御装置30及び内燃機関制御装置31の構成について、図3を参照して説明する。
制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、CPU等の演算処理装置を中核部材として備えるとともに、当該演算処理装置(コンピュータ)からデータを読み出し及び書き込みが可能に構成されたRAM(ランダム・アクセス・メモリ)や、演算処理装置からデータを読み出し可能に構成されたROM(リード・オンリ・メモリ)等の記憶装置等を有して構成されている。そして、制御装置のROM等に記憶されたソフトウェア(プログラム)又は別途設けられた演算回路等のハードウェア、或いはそれらの両方により、制御装置30の各機能部41〜46などが構成されている。また、制御装置30の制御ユニット32〜34及び内燃機関制御装置31は、互いに通信を行うように構成されており、センサの検出情報及び制御パラメータ等の各種情報を共有するとともに協調制御を行い、各機能部41〜46の機能が実現される。
アクセル開度センサSe5は、アクセルペダルの操作量を検出するためのセンサである。制御装置30は、アクセル開度センサSe5の入力信号に基づいてアクセル開度を検出する。
車両制御ユニット34は、統合制御部46を備えている。統合制御部46は、内燃機関ENG、回転電機MG、変速装置TM、及びロックアップクラッチLC等に対して行われる各種トルク制御、及び各係合装置の係合制御等を車両全体として統合する制御を行う。
統合制御部46は、アクセル開度、車速、及びバッテリの充電量等に応じて、車輪Wの駆動のために要求されているトルクであって、駆動力源側から車輪W側に伝達される目標駆動力である車両要求トルクを算出するとともに、内燃機関ENG及び回転電機MGの運転モードを決定する。運転モードとして、回転電機MGのみを駆動力源として走行する電動モードと、少なくとも内燃機関ENGを駆動力源として走行するパラレルモードと、を有する。例えば、アクセル開度が小さく、バッテリの充電量が大きい場合に、運転モードとして電動モードが決定され、それ以外の場合、すなわちアクセル開度が大きい、もしくはバッテリの充電量が小さい場合に、運転モードとしてパラレルモードが決定される。
統合制御部46は、車速、変速入力要求トルク、及びシフト位置に基づいて、変速装置TMにおける目標変速段を決定する。ここで、変速入力要求トルクは、変速装置TMの入力軸Iに伝達される駆動力源の要求トルクであって、本実施形態では、内燃機関要求トルクとされる。
統合制御部46は、ROM等に格納された図6に示すような変速マップを参照し、車速及び内燃機関要求トルクに基づいて目標変速段を決定する。変速マップには複数のアップシフト線(実線)と複数のダウンシフト線(破線)とが設定されており、車速及び内燃機関要求トルクが変化して変速マップ上でアップシフト線又はダウンシフト線を跨ぐと、統合制御部46は、変速装置TMにおける新たな目標変速段を決定する。図6において、各シフト線に対応して示されている数字は第一変速段1stから第六変速段6thの各変速段を表しており、例えば、「5−6」は、第五変速段5thから第六変速段6thへのアップシフトを表しており、「6−5」は、第六変速段6thから第五変速段5thへのダウンシフトを表している。
また、統合制御部46は、運転者によるシフト位置の変更により、アップシフト要求又はダウンシフト要求があった場合に、目標変速段を変更する場合がある。なお、ダウンシフトとは変速比の小さい変速段から変速比の大きい変速段への変更を意味し、アップシフトとは変速比の大きい変速段から変速比の小さい変速段への変更を意味する。
内燃機関制御装置31は、内燃機関ENGの動作制御を行う内燃機関制御部41を備えている。本実施形態では、内燃機関制御部41は、統合制御部46から内燃機関要求トルクが指令されている場合は、内燃機関ENGが内燃機関要求トルクを出力するように制御するトルク制御を行う。
また、内燃機関制御部41は、ニュートラル走行制御部44などから始動指令があった場合は、スタータ13に電力を供給するリレー回路をオンにするなどして、スタータ13に電力を供給させて内燃機関ENGを回転させると共に、内燃機関ENGへの燃料供給及び点火などを開始して、内燃機関ENGの燃焼を開始させる。
回転電機制御ユニット32は、回転電機MGの動作制御を行う回転電機制御部42を備えている。本実施形態では、回転電機制御部42は、統合制御部46から回転電機要求トルクが指令されている場合は、回転電機MGが回転電機要求トルクを出力するように制御する。具体的には、回転電機制御部42は、インバータが備える複数のスイッチング素子をオンオフ制御することにより、回転電機MGの出力トルクを制御する。
動力伝達制御ユニット33は、変速装置TMの制御を行う変速制御部43と、ロックアップクラッチLCの制御を行うロックアップ制御部45と、を備えている。
ロックアップ制御部45は、ロックアップクラッチLCの係合の状態を制御する。本実施形態では、ロックアップ制御部45は、ロックアップクラッチLCに供給される油圧が、統合制御部46から指令されたロックアップクラッチLCの油圧指令に一致するように、油圧制御装置PCに備えられた各リニアソレノイド弁に供給される信号値を制御する。
変速制御部43は、変速装置TMが備えた複数の係合装置C1、B1、・・の係合及び解放を制御して、変速装置TMの状態を制御する。
本実施形態では、変速制御部43は、油圧制御装置PCを介して変速装置TMに備えられた複数の係合装置C1、B1・・・に供給される油圧を制御することにより、各係合装置C1、B1・・・を係合又は解放して、統合制御部46から指令された目標変速段を変速装置TMに形成させる。具体的には、変速制御部43は、油圧制御装置PCに各係合装置の目標油圧(油圧指令)を指令し、油圧制御装置PCは、指令された目標油圧(油圧指令)に応じた油圧を各係合装置に供給する。本実施形態では、変速制御部43は、油圧制御装置PCが備えた各油圧制御弁に供給される信号値を制御することにより、各係合装置に供給される油圧を制御するように構成されている。
3−4−2−1−1.ニュートラル走行制御
変速制御部43は、ニュートラル走行制御部44を備えている。
ニュートラル走行制御部44は、車輪Wの回転中に、複数の係合装置C1、B1、・・・の全てを解放状態に制御して変速装置TMを駆動力の伝達を行わないニュートラル状態とするように制御するニュートラル走行制御を行う。ニュートラル状態では、変速装置TMにいずれの変速段も形成されておらず、変速装置TMの入力軸Iと出力ギヤOとの間で駆動力の伝達を行わない。
本実施形態では、ニュートラル走行制御部44は、油圧制御装置PCに指令する、全ての係合装置C1、B1、・・・の目標油圧(油圧指令)を、各係合装置が解放状態になる油圧(例えばゼロ)まで低下させる。
ニュートラル走行制御は、例えば、車輪Wの回転中に、車速等に応じた車両の走行抵抗に対して車両要求トルクが微小となる所定の緩やかな減速運転状態となった場合等に実行される。ニュートラル走行制御中は、内燃機関ENGと車輪Wとの間の駆動連結が非連結状態になり、車両は空走状態になる。このニュートラル走行制御中は、エンジンブレーキが働かない状態となり、車両の走行抵抗による緩やかな車両の減速が実現される。ここで、エンジンブレーキが働く状態とは、車輪Wの回転により内燃機関ENGが回転駆動されて、内燃機関ENGの回転抵抗により出力ギヤOに負の駆動力が伝達される状態である。
ここで、ニュートラル走行制御条件は、本例では車速、アクセル開度、及びシフト位置に基づいて予め定められている。例えば、車速がゼロより大きく、アクセル開度が車速に応じて設定される所定範囲内であり且つ、シフト位置が「Dレンジ」であることが、ニュートラル走行制御条件として定められている。ニュートラル走行制御部44は、ニュートラル走行制御条件が満たされた場合に、ニュートラル走行制御条件が成立したと判定する。一方、ニュートラル走行制御部44は、運転者がアクセルペダルを踏み込む等して、アクセル開度が所定範囲外になった場合、もしくは、運転者がシフト位置を「Dレンジ」以外のレンジ、例えば「2レンジ」等に変更した場合等、ニュートラル走行制御条件が満たされなくなった場合は、ニュートラル走行制御条件が不成立となったと判定する。
ニュートラル走行制御部44は、ニュートラル走行制御中に、アクセル開度の増加などにより、ニュートラル走行制御条件が不成立となった場合に、変速装置TMに変速段を形成させて通常走行に復帰させる復帰制御を実行する。
本実施形態では、ニュートラル走行制御部44は、目標変速段が、後述する判定実行変速段(本例では、第三変速段3rdが該当)でない場合は、目標変速段を変速装置TMに形成させるように構成されている。なお、目標変速段は、上記のように、統合制御部46により車速、変速入力要求トルク、及びシフト位置に基づいて決定された目標の変速段である。
一方、ニュートラル走行制御部44は、復帰制御を実行する際に、目標変速段が判定実行変速段(第三変速段3rd)である場合は、第一係合圧増加制御及び第二係合制御判定を実行するように構成されている。
以下で、第一係合圧増加制御及び第二係合制御判定について詳細に説明する。
まず、第一係合圧増加制御及び第二係合制御判定に係る本実施形態の変速装置TMについて説明する。
変速装置TMは、図4の作動表に示すように、予め定められた複数の変速段である低変速比段(本例では、4th、5th、6thが該当)において共通して係合される第一係合装置(本例では、第二クラッチC2が該当)と、低変速比段(4th〜6th)よりも変速比が高い複数の変速段である高変速比段(本例では、1st、2nd、3rdが該当)において共通して係合される第三係合装置(本例では、第一クラッチC1が該当)と、を備えている。また、変速装置TMは、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合と第二係合装置(本例では、第一ブレーキB1が該当)の係合により形成される低変速比段(4th〜6th)の一つの変速段である第一特定変速比段(本例では、第六変速段6thが該当)と、第二係合装置(第一ブレーキB1)の係合と第三係合装置(第一クラッチC1)の係合により形成される高変速比段(1st〜3rd)の一つの変速段である第二特定変速比段(本例では、第二変速段2ndが該当)と、を備えている。
このような構成を有する変速装置TMでは、何らかの要因で第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態で固着していると、復帰制御を行う際、高変速比段(1st〜3rd)の中の一つの変速段(目標変速段)を形成するため、高変速比段(1st〜3rd)の共通係合装置である第三係合装置(第一クラッチC1)を係合すると、第二特定変速段(第二変速段2nd)が意図せず形成され、一方、低変速比段(4th〜6th)の中の一つの変速段(目標変速段)を形成するため、低変速比段(4th〜6th)の共通係合装置である第一係合装置(第二クラッチC2)を係合すると、第一特定変速段(第六変速段6th)が意図せず形成される。すなわち、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態で固着していると、復帰制御を行う際に形成する変速段(目標変速段)が、高変速比段(1st〜3rd)の変速段であるか、低変速比段(4th〜6th)の変速段であるかによって、意図せず形成される変速段が、第二特定変速段(第二変速段2nd)と第一特定変速段(第六変速段6th)とで異なる。
従って、ニュートラル走行制御部44は、復帰制御を行う際に、目標変速段が、高変速比段(1st〜3rd)の中で第二特定変速比段(第二変速段2nd)よりも変速比の小さい変速段である判定実行変速段(本例では、第三変速段3rdが該当)である場合は、目標変速段(第三変速段3rd)を形成する前に、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧を増加させる第一係合圧増加制御を行うと共に、第一特定変速段(第六変速段6th)が形成されるか否かを判定する第二係合正常判定を行うように構成されている。
ニュートラル走行制御部44は、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧を増加させる第一係合圧増加制御を行う。
本実施形態では、ニュートラル走行制御部44は、復帰制御において変速段を形成するために、第一係合装置(第二クラッチC2)を係合させる場合と同様の方法で、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧を増加させる。具体的には、ニュートラル走行制御部44は、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧を次第に増加させる。
ニュートラル走行制御部44は、第一係合圧増加制御により、駆動力源側に駆動連結された変速装置TMの入力軸Iの回転速度が、変速装置TMに第一特定変速比段(第六変速段6th)が形成された場合の入力軸Iの回転速度である同期回転速度に近づいた場合に、第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態に制御されているにもかかわらず係合状態であると判定し、それ以外の場合は、第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定する第二係合正常判定を行う。
本実施形態では、ニュートラル走行制御部44は、出力ギヤOの回転速度に第一特定変速比段(第六変速段6th)の変速比を乗算して、第一特定変速比段(第六変速段6th)の同期回転速度を算出する。
ニュートラル走行制御部44は、入力軸Iの回転速度と第一特定変速比段(第六変速段6th)の同期回転速度との回転速度差が、予め定めた判定回転速度差以下になった場合に、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態であると判定し、判定回転速度差より大きい場合は、第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定する。
本実施形態では、ニュートラル走行制御部44は、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧が、第一特定変速比段(第六変速段6th)を形成可能な係合圧である判定係合圧まで増加した後に、第二係合正常判定を行うように構成されている。
具体的には、ニュートラル走行制御部44は、変速入力要求トルクに、第一特定変速比段(第六変速段6th)が形成された場合に第一係合装置(第二クラッチC2)に作用するギヤ比を乗算して第一係合装置(第二クラッチC2)の作用トルクを算出し、当該作用トルクを第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧(指令油圧)に変換して、判定係合圧を設定する。
よって、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧が、判定係合圧まで増加した後に、第二係合正常判定を行うことで、第二係合正常判定の判定精度を向上させることができる。
ニュートラル走行制御部44は、第二係合正常判定により第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定した場合は、変速装置TMに、判定実行変速段である目標変速段(第三変速段3rd)を形成させる。一方、ニュートラル走行制御部44は、第二係合正常判定により第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態であると判定した場合は、変速装置TMに第一特定変速比段(第六変速段6th)を形成させる。
本実施形態では、ニュートラル走行制御部44は、第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定した場合は、判定実行変速段である目標変速段(第三変速段3rd)が属する高変速比段(1st〜3rd)の共通係合装置である第三係合装置(第一クラッチC1)の係合圧の増加を開始し、その後、目標変速段(第三変速段3rd)を形成する残りの係合装置である第四係合装置(本例では、第三クラッチC3)の係合圧の増加を開始するように構成されている。そして、ニュートラル走行制御部44は、係合圧の増加により、第三係合装置(第一クラッチC1)及び第四係合装置(第三クラッチC3)を直結係合状態に移行させて、目標変速段(第三変速段3rd)を形成させる。
このように、判定実行変速段(第三変速段3rd)は、第三係合装置(第一クラッチC1)の係合と、第四係合装置(第三クラッチC3)の係合により形成される。
一方、ニュートラル走行制御部44は、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態であると判定した場合は、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧の増加を継続し、第一係合装置(第二クラッチC2)を直結係合状態に移行させるように構成されている。
また、ニュートラル走行制御部44は、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態であると判定した場合は、第二係合装置(第一ブレーキB1)の係合圧を増加させるように構成されている。このように、ニュートラル走行制御部44は、係合圧の増加により、第一係合装置(第二クラッチC2)及び第二係合装置(第一ブレーキB1)を、より確実に直結係合状態に移行させて、第一特定変速比段(第六変速段6th)を形成させる。
次に、ニュートラル走行制御の処理について、図7のフローチャートを参照して説明する。
まず、ニュートラル走行制御部44は、ステップ♯01で、上記のように、ニュートラル走行制御条件が成立しているか否かを判定する。ニュートラル走行制御部44は、ニュートラル走行制御条件が成立した場合(ステップ♯01:Yes)に、車輪Wの回転中に、複数の係合装置C1、B1、・・・の全てを解放状態に制御して変速装置TMを駆動力の伝達を行わないニュートラル状態とするように制御するニュートラル走行制御を開始する(ステップ♯02)。
そして、ニュートラル走行制御部44は、上記のように、目標変速段が判定実行変速段(本例では第三変速段3rd)であるか否かを判定する(ステップ♯04)。
ニュートラル走行制御部44は、目標変速段が判定実行変速段(第三変速段3rd)でないと判定した場合(ステップ♯04:No)は、目標変速段を形成する(ステップ♯14)。
ニュートラル走行制御部44は、第二係合正常判定により第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定された場合(ステップ♯07:Yes)は、上記のように、判定実行変速段である目標変速段(第三変速段3rd)を形成させる(ステップ♯08)。一方、ニュートラル走行制御部44は、第二係合正常判定により第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態であると判定された場合(ステップ♯07:No)は、上記のように、変速装置TMに第一特定変速比段(第六変速段6th)を形成させる(ステップ♯09)。
次に、復帰制御に第一係合圧増加制御及び第二係合正常判定に係る制御挙動について、図8から図10のタイムチャートを参照して説明する。
<比較例>
まず、図8を参照して、本実施形態の比較例を説明する。
図8に示す比較例では、目標変速段が判定実行変速段(第三変速段3rd)である場合に、本実施形態とは異なり、まず、低変速比段(4th〜6th)の中で、第一特定変速段(第六変速段6th)以外の変速段であって変速比の最も大きい変速段である前置目標変速段(本例では、第四変速段4thが該当)を形成するように制御し、第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定される場合は、その後、判定実行変速段である目標変速段(第三変速段3rd)を形成するように構成されている。
次に、図9を参照して、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合固着していない場合における、本実施形態に係る制御挙動について説明する。
本実施形態では、比較例のように、目標変速段(第三変速段3rd)を形成する前に、前置目標変速段(第四変速段4th)を形成するように構成されていない。代わりに、第一特定変速段(第六変速段6th)が属する低変速比段(4th〜6th)の共通係合装置である第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧を増加させる第一係合圧増加制御を行っている。
また、指令目標変速段を前置目標変速段(第四変速段4th)に設定することにより、入力軸Iの回転速度を、第一特定変速段(第三変速段6th)の同期回転速度よりも高い適切な回転速度に維持することができる。具体的には、ニュートラル走行制御部44は、変速段の形成中、入力軸Iの回転速度が、指令目標変速段の同期回転速度に近づくように、駆動力源の回転速度を制御するように構成されている。図9に示す例では、ロックアップクラッチLCが解放されており、トルクコンバータTCが滑っている分だけ、入力軸Iの回転速度は内燃機関ENGの回転速度よりも低くなっている。
よって、入力軸Iの回転速度は、第一特定変速段(第三変速段6th)の同期回転速度よりも高い、前置目標変速段(第四変速段4th)の同期回転速度付近に制御されている。よって、第二係合正常判定を行う際に、入力軸Iの回転速度が第一特定変速段(第六変速段6th)の同期回転速度に近づいたか否かを判定し易くなる。なお、入力軸Iの目標回転速度は、指令目標変速段の同期回転速度ではなく、第一特定変速段(第三変速段6th)の同期回転速度に対して予め定めた回転速度だけ高く設定されるように構成されてもよい。
また、ニュートラル走行制御部44は、第二係合装置(第一ブレーキB1)が解放状態であると判定した後、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧の増加を中止し、第一係合装置(第二クラッチC2)の係合圧を減少させて、第一係合装置(第二クラッチC2)を解放させている(時刻T13以降)。
次に、図10を参照して、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合固着している場合における、本実施形態に係る制御挙動について説明する。
時刻T22までは、図9の時刻T12までと同様であるので説明を省略する。
ニュートラル走行制御部44は、入力軸Iの回転速度と第一特定変速比段(第六変速段6th)の同期回転速度との回転速度差が、予め定めた判定回転速度差以下になっていると判定している(時刻T23)。その後、入力軸Iの回転速度は、第一特定変速比段(第六変速段6th)の同期回転速度まで低下し、回転速度差がゼロになっている。ニュートラル走行制御部44は、時刻T24で、回転速度差が判定回転速度差以下になっている期間が、予め定めた判定期間以上になったので、第二係合装置(第一ブレーキB1)が係合状態であると判定している。
最後に、本発明のその他の実施形態について説明する。なお、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用されるものに限られず、矛盾が生じない限り、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
また、変速装置TMの係合装置C1、B1・・・は、摩擦係合装置以外の係合装置、例えば、噛み合いクラッチ(ドグクラッチ)であってもよい。
また、変速装置TMの係合装置C1、B1・・・は、油圧以外の駆動力、例えば、電磁石の駆動力、サーボモータの駆動力など、により制御される係合装置であってもよく、アクチュエータとして、電磁石、モータなどが用いられてもよい。
5 :車両
30 :制御装置
44 :ニュートラル走行制御部
C1 :第一クラッチ(第三係合装置)
C2 :第二クラッチ(第一係合装置)
C3 :第三クラッチ(第四係合装置)
B1 :第一ブレーキ(第二係合装置)
B2 :第二ブレーキ
ENG :内燃機関(駆動力源)
I :入力軸(入力部材)
MG :回転電機
O :出力ギヤ(出力部材)
Rev :後進段
TC :トルクコンバータ
TM :変速装置
W :車輪
1st :第一変速段
2nd :第二変速段(第二特定変速段)
3rd :第三変速段(判定実行変速段)
4th :第四変速段(前置目標変速段)
5th :第五変速段
6th :第六変速段(第一特定変速段)
1st〜3rd:高変速比段
4th〜6th:低変速比段
Claims (5)
- 駆動力源と車輪とを結ぶ動力伝達経路に、複数の係合装置を備えると共に当該複数の係合装置の係合の状態に応じて変速比の異なる複数の変速段が選択的に形成される変速装置が設けられた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
前記変速装置は、第一係合装置の係合と第二係合装置の係合により第一特定変速段が形成され、
前記車輪の回転中に、前記複数の係合装置の全てを解放状態とし前記変速装置が駆動力の伝達を行わないニュートラル状態となるように制御するニュートラル走行制御を行うニュートラル走行制御部を備え、
前記ニュートラル走行制御部は、前記ニュートラル状態から前記変速装置に変速段を形成させる復帰制御を行う際に、前記第一係合装置の係合圧を増加させる第一係合圧増加制御を行い、
前記第一係合圧増加制御により、前記駆動力源側に駆動連結された前記変速装置の入力部材の回転速度が、前記変速装置に前記第一特定変速段が形成された場合の前記入力部材の回転速度に近づいた場合に、前記第二係合装置が解放状態に制御されているにもかかわらず係合状態であると判定し、それ以外の場合は、前記第二係合装置が解放状態であると判定する第二係合正常判定を行う車両用駆動装置の制御装置。 - 前記変速装置は、予め定められた複数の変速段である低変速比段において共通して係合される前記第一係合装置と、前記低変速比段よりも変速比が高い複数の変速段である高変速比段において共通して係合される第三係合装置と、前記第一係合装置の係合と前記第二係合装置の係合により形成される前記低変速比段の一つの変速段である前記第一特定変速段と、
前記第二係合装置の係合と前記第三係合装置の係合により形成される前記高変速比段の一つの変速段である第二特定変速比段と、を備え、
前記ニュートラル走行制御部は、前記ニュートラル状態から前記変速装置に目標変速段を形成させる復帰制御を行う際に、前記目標変速段が、前記高変速比段の中で前記第二特定変速比段よりも変速比の小さい変速段である判定実行変速段である場合は、前記目標変速段を形成する前に、前記第一係合圧増加制御を行うと共に前記第二係合正常判定を行う請求項1に記載の車両用駆動装置の制御装置。 - 前記ニュートラル走行制御部は、前記第二係合正常判定により前記第二係合装置が解放状態であると判定した場合は、前記変速装置に前記目標変速段を形成させ、
前記第二係合正常判定により前記第二係合装置が係合状態であると判定した場合は、前記変速装置に前記第一特定変速段を形成させる請求項2に記載の車両用駆動装置の制御装置。 - 前記ニュートラル走行制御部は、前記第二係合正常判定により前記第二係合装置が係合状態であると判定した場合は、前記変速装置に前記第一特定変速段を形成させ、その後、前記第二係合装置以外の係合装置の係合により形成される判定用変速段を形成させるように制御し、前記判定用変速段を形成することができない場合は、前記第二係合装置が係合状態となる故障が発生していると判定する請求項2又は3に記載の車両用駆動装置の制御装置。
- 前記ニュートラル走行制御部は、前記第一係合装置の係合圧が、前記第一特定変速段を形成可能な係合圧まで増加した後に、前記第二係合正常判定を行う請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置の制御装置。
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