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JP6291151B2 - 口腔用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、口腔内でバイオフィルムを形成している細菌に対して優れた殺菌作用を発揮でき、う蝕予防、歯周病予防、口臭予防等に有用な口腔用組成物に関する。
現代社会では、食生活の多様化等により、う蝕、歯周病等の口腔内疾患が蔓延している。う蝕及び歯周病は、口腔内細菌が硬組織又は歯周ポケット内にバイオフィルムを形成することが発症に大きく関与している。また、口腔内に形成されたバイオフィルムは口臭の原因にもなっている。そのため、口腔内のバイオフィルム形成に関与する細菌を殺菌し、バイオフィルムの形成を抑制することが、口腔内を健常な状態に維持させる上で重要になっている。
従来、口腔用組成物の分野では、う蝕や歯周病を予防する手段として、種々の殺菌剤を配合することによりう蝕又は歯周病の原因菌を殺菌するという手段が用いられている。中でも、多くの口腔用組成物では、う蝕又は歯周病の原因菌の殺菌のために、塩化ベンゼトニウムや塩化セチルピリジニウム等のカチオン性殺菌剤が使用されている。しかしながら、バイオフィルムを形成した細菌は、分散浮遊状態にある細菌に比べて、殺菌剤や静菌剤等の微生物制御薬剤の影響を受けにくくなっている。そのため、う蝕又は歯周病の原因菌がバイオフィルムを形成している場合には、これらカチオン性殺菌剤の単独の使用では、う蝕又は歯周病の原因菌がバイオフィルムを形成している場合には満足できる殺菌効果が奏されないという問題点がある。
そこで、口腔用組成物においてカチオン性殺菌剤の抗菌力を効果的に発揮させる技術として、カチオン性殺菌剤とポリビニルアルコールを併用することによって殺菌剤の歯牙への吸着性を増強する技術(特許文献1)、カチオン性殺菌剤と、エリスリトール、キシリトール及びパラチニットから選ばれる1種又は2種以上と、マルチトール及び/又はラクチトールを併用することによって歯垢形成を抑制する技術(特許文献2)、カチオン性殺菌剤とポリビニルピロリドンを併用し、且つカチオン性殺菌剤以外の界面活性剤を無配合にすることによって、抗菌力を向上させる技術(特許文献3)が提案されている。
しかしながら、これらの技術でも、依然として、口腔内でバイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌効果が満足できるものではなく、より高い殺菌作用を備えた口腔用組成物の開発が切望されている。
一方、ケイヒ及びその抽出物が、S.mutans及びS.sobrinusが歯に付着するのを防止し得ることが知られている(特許文献4)。また、チョウジ及びその抽出物には、抗菌作用があることが知られている(特許文献5)。しかしながら、ケイヒ、チョウジ、又はその抽出物が、口腔内でバイオフィルムを形成している細菌に対する作用効果については何ら明らかにされていない。
特開2003−113059号公報 特開2006−117573号公報 特開平7−267840号公報 特開2001−89385号公報 特開2000−44419号公報
本発明は、口腔内でバイオフィルムを形成している状態の細菌に対して、優れた殺菌作用を示す口腔用組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、驚くべきことに、殺菌剤として塩化セチルピリジニウムを選択し、且つこれをケイヒ、チョウジ、又はそれらの抽出物と一体不可分の関係で組み合わせることにより、これらが相乗的に作用して、口腔内でバイオフィルムを形成している細菌に対して殺菌作用を顕著に発揮させることが可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
即ち、本発明は、下記に掲げる口腔用組成物を提供する。
項1. (A)塩化セチルピリジニウムと、(B)ケイヒ、チョウジ、及びそれらの抽出物からなる群より選択される少なくとも1種とを含有することを特徴とする、口腔用組成物。
項2. (A)成分100重量部当たり、(B)成分が(抽出物の場合は原料重量換算)が0.0005〜10000000重量部である、項1に記載の口腔用組成物。
項3. 製剤形態がトローチである、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4. う蝕予防剤又は歯周病予防剤である、項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5. 口臭予防剤である、項1〜3のいずれかに記載の口腔用組成物。
本発明の口腔用組成物は、口腔内でバイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌作用が強く、う蝕や歯周病の発症要因となるバイオフィルムを除去して、う蝕や歯周病を効果的に予防することができる。
また、本発明の口腔用組成物は、歯周病及び口臭の原因菌であるフゾバクテリウム・ヌクレアータム及びポルフィロモナス・ジンジバリスがバイオフィルムを形成している場合に対して、殺菌作用をとりわけ強く発揮できるので、歯周病予防や口臭予防に対して特に有効である。
試験例2の結果、即ち、各試験液について、バイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌作用を評価した結果を示す図である。 試験例2の結果、即ち、各試験液について、バイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌作用を評価した結果を示す図である。
本発明の口腔用組成物は、塩化セチルピリジニウム(以下、(A)成分と表記することもある)と、(B)ケイヒ、チョウジ、及びそれらの抽出物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、(B)成分と表記することもある)とを含有することを特徴とする。以下、本発明について詳述する。
(A)成分として使用される塩化セチルピリジニウムは、IUPAC名で1−ヘキサデシルピリジニウムクロリドと呼ばれるカチオン性殺菌剤である。本発明に使用される塩化セチルピリジニウムは、水和物の形態のものであってもよい。
本発明の口腔用組成物において、(A)成分の含有量については、特に制限されるものではなく、その形態や期待される効果等に基づいて適宜設定すればよいが、例えば、当該口腔用組成物の総量当たり、0.0001〜20重量%、好ましくは0.001〜2重量%、更に好ましくは0.01〜0.2重量%が挙げられる。
(B)成分として使用されるケイヒ(桂皮)とは、クスノキ科ニッケイ属(和名:クスノキ属)のCinnamomum cassia Blume又はその近縁植物の枝からはぎ取られた樹皮である。本発明において使用されるケイヒは、粉砕物、細切物、及びこれらの乾燥物のいずれであってもよい。ケイヒは、ケイヒ末として、商業的に販売されているので、本発明では、簡便には商業的に入手したものを使用してもよい。
また、(B)成分として使用されるケイヒの抽出物とは、ケイヒを抽出処理することにより得られる成分である。
ケイヒの抽出物の製造原料として使用されるケイヒは、ケイヒそのまま、その粉砕物又は細切物であってもよく、また乾燥後、必要に応じて粉砕又は細切したものであってもよい。
ケイヒの抽出物の製造に使用される抽出溶媒としては、例えば、水;メタノール,エタノール,プロパノール及びブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコール;酢酸エチルエステル等の低級アルキルエステル;エチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のグリコール類;その他エチルエーテル、アセトン、酢酸;これらの混合物等の極性溶媒を挙げることができる。これら抽出溶媒の中でも、口腔内のバイオフィルム形成に関与する細菌に対して一層効果的な殺菌作用を備えさせるという観点から、好ましくは、水、炭素数1〜4の低級アルコール、及びこれらの混合物、更に好ましくは水が例示される。
ケイヒの抽出物の製造において採用される抽出方法については、特に制限されず、植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法であればよい。例えば抽出溶媒中にケイヒを冷浸、温浸等によって浸漬し、必要に応じて撹拌する方法;パーコレーション法;水蒸気蒸留法等を挙げることができる。得られた抽出液を、必要に応じてろ過または遠心分離によって固形物を除去することにより、ケイヒの抽出物が回収できる。本発明の口腔用組成物では、上記抽出処理により得られた液状の抽出物をそのまま使用してもよいが、必要に応じて、一部又は全ての溶媒を除去して濃縮物若しくは乾燥物として使用してもよい。また、これらの濃縮物若しくは乾燥物を更に精製処理に供してもよく、更にこれらを適当な溶剤に溶解もしくは懸濁して用いることもできる。
ケイヒの抽出物は、エキスや流エキス剤等として、商業的に販売されているので、本発明では、簡便には商業的に入手したものを使用してもよい。
また、(B)成分として使用されるチョウジ(丁子、丁香)とは、フトモモ科(Myrtaceae)のSyzygium aromaticum Merr. et Perry(Eugenia caryophyllata Thunberg)の蕾み又は葉である。本発明において使用されるチョウジは、粉砕物、細切物、及びこれらの乾燥物のいずれであってもよい。チョウジは、チョウジ末として、商業的に販売されているので、本発明では、簡便には商業的に入手したものを使用してもよい。
また、(B)成分として使用されるチョウジの抽出物とは、チョウジを抽出処理することにより得られる成分である。
チョウジの抽出物の製造原料として使用されるチョウジは、チョウジそのまま、その粉砕物又は細切物であってもよく、また乾燥後、必要に応じて粉砕又は細切したものであってもよい。チョウジの抽出物の製造法は、上記ケイヒの抽出物の場合と同様である。
チョウジの抽出物は、エキスや流エキス剤等として、商業的に販売されているので、本発明では、簡便には商業的に入手したものを使用してもよい。
本発明において、(B)成分として、ケイヒ、ケイヒの抽出物、チョウジ、及びチョウジの抽出物の中から1種を選択して使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の口腔用組成物において、(B)成分の含有量については、特に制限されるものではなく、(B)成分の種類、口腔用組成物の形態や期待される効果等に基づいて適宜設定すればよいが、例えば、当該口腔用組成物の総量当たり、(B)成分(抽出物の場合は原料換算)が0.0001〜10重量%、好ましくは0.001〜5重量%、更に好ましくは0.01〜5重量%に当量が挙げられる。ここで、上記含有量は、ケイヒ及び/又はチョウジを使用する場合はその含有量を示し、ケイヒの抽出物及び/又はチョウジの抽出物を使用する場合は、原料重量換算、即ち抽出処理に供したケイヒ及び/又はチョウジの重量に換算した含有量を示す。
また、本発明の口腔用組成物において、(A)成分と(B)成分の比率としては、口腔内でバイオフィルムを形成している細菌に対して一層効果的な殺菌作用を備えさせるという観点から、(A)成分100重量部当たり、(B)成分が0.0005〜10000000重量部、好ましくは0.05〜500000重量部、更に好ましくは0.5〜50000重量部、特に好ましくは0.7〜5000重量部が挙げられる。ここで、上記比率は、ケイヒ及び/又はチョウジを使用する場合はその重量の比率を示し、ケイヒの抽出物及び/又はチョウジの抽出物を使用する場合は、原料重量換算、即ち抽出処理に供したケイヒ及び/又はチョウジの重量に換算した比率を示す。
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、口腔用組成物の製剤形態に応じて、当該技術分野で通常使用される成分を含有していてもよい。このような成分としては、例えば、研磨剤、防腐剤、塩化セチルピリジニウム以外の殺菌剤、抗菌剤、消炎剤、グルコシルトランスフェラーゼ(GTase)阻害剤、プラーク抑制剤、知覚過敏抑制剤、歯石予防剤、粘着剤、粘稠剤、賦形剤、滑沢剤、香料、甘味剤、清涼化剤、色素、消臭剤、界面活性剤、pH調整剤等が挙げられる。
研磨剤としては、例えば、第2リン酸カルシウム(2水和物又は無水物)、第1リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、不溶性メタリン酸ナトリウム、不溶性メタリン酸カリウム、酸化チタン、ゼオライト、無水ケイ酸、含水ケイ酸、ケイ酸チタニウム、ケイ酸ジリコニウム、研磨性シリカ等の各種シリカ系研磨剤;合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
防腐剤、殺菌剤、抗菌剤としては、例えば、安息香酸類、サリチル酸類、ソルビン酸類、パラベン類、塩化デカリニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
消炎剤としては、例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第1スズ等のフッ化物、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシアラントイン、アズレン、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、塩化ナトリウム、ビタミン類等が挙げられる。
GTase阻害剤としては、例えば、アカバナ科マツヨイグサ属植物の抽出物、ブドウ科ブドウ属植物の抽出物、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫、タステイン、タンニン類、エラグ酸、ポリフェノール、ウーロン茶抽出物、緑茶抽出物、センブリ、タイソウ、ウイキョウ、芍薬、ゲンチアナ、センソ、龍胆、黄連等が挙げられる。
プラーク抑制剤としては、例えばクエン酸亜鉛やグルコン酸等が挙げられる。
知覚過敏抑制剤としては、例えば、硝酸カリウム、塩化ストロンチウム等が挙げられる。
歯石予防剤としては、例えば、ポリリン酸塩類、ゼオライト、エタンヒドロキシジホスフォネート等が挙げられる。
粘着剤としては、例えば、プルラン、プルラン誘導体、デンプン等の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩類(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム等)、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩(ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体等)、メタアクリル酸類の共重合体(メタアクリル酸とアクリル酸
n−ブチルの重合体、メタアクリル酸とメタアクリル酸メチルの重合体およびメタアクリル酸とアクリル酸エチルの重合体等)等のセルロース系高分子物質;カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の合成高分子物質;レクチン、アルギン酸、アルギン酸塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸マグネシウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸トリイソプロパノールアミン、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸ブチルアミン、アルギン酸ジアミルアミン等)、コンドロイチン硫酸ナトリウム、寒天、キトサン、カラギーナン等の天然系高分子物質;コラーゲン、ゼラチン等のアミノ酸系高分子物質;アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、キサンタンガム、ローカストビンガム、グアガム、タマリンドガム、ジェランガム等のゴム系高分子物質等が挙げられる。
粘稠剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクトール等がある。粘結剤としては、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキエチルセルロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カーボポール、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガム、ラポナイト、増粘性シリカ等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、マンニトール、デンプン、デキストリン、結晶セルロース、リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、フマル酸ステアリルナトリウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられる。
香料としては、例えば、天然香料(ウイキョウ油等)、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、アスパルテーム、キシリトール、水飴、蜂蜜、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、エリスリトール、糖類(乳糖、白糖、果糖、ブドウ糖等)等が挙げられる。
清涼化剤としては、例えば、メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、これらを含む精油等が挙げられる。
色素としては、例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、塩化亜鉛、銅クロロフィリンナトリウム、コーヒー生豆抽出物、ゴボウパウダー、緑茶等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N−ラウロイルザルコシン酸ナトリウム、N−ミリストリルザルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N−メチル−N−アシルタウリンナトリウム等の陰イオン性界面活性剤;ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等両性界面活性剤;塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等が挙げられる。
本発明の口腔用組成物は、その製剤形態に応じて、可食性の担体、又は薬学的に許容される担体を含むことができる。このような担体については、製剤形態に応じて、使用し得るものが知られており、本発明の口腔用組成物では、目的の製剤形態に応じて、上記担体を適宜選択して適用量含有させればよい。
本発明の口腔用組成物の形状については、特に制限されず、液状、固形状、半固形状(ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。本発明の口腔用組成物は、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り、可食性、非可食性の別を問わない。例えば、食品(機能性食品、健康保健用食品、病者用食品等を含む)形態であっても、また医薬品(医薬部外品を含む)又は口腔化粧料の形態であってもよい。
本発明の口腔用組成物の製剤形態は、口腔内に適用されて口腔内で一定時間滞留し得るものである限り制限されないが、例えば、トローチ、可食性フィルム、チューインガム、キャンディ、グミキャンディ、タブレット、顆粒、細粒、粉末、カプセル等の可食性口腔用剤;液体歯磨剤、練歯磨剤、潤製歯磨剤、粉歯磨剤、洗口剤(マウスウォッシュ)、マウスリンス、含嗽剤、口中清涼剤(マウススプレー等)、口腔用パスタ剤、歯肉マッサージクリーム等の口腔衛生剤が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、トローチ、キャンディ、タブレット、液体歯磨き、練歯磨き、潤製歯磨き、洗口剤(マウスウォッシュ)、マウスリンス、含嗽剤、口中清涼剤(マウススプレー等)、歯肉マッサージクリーム等の口腔衛生剤が挙げられ、更に好ましくは、トローチ、キャンディ、タブレット、練歯磨きが挙げられる。
本発明の口腔用組成物は、口腔内に適用することにより、う蝕や歯周病の発症要因となるバイオフィルム形成を形成している状態の細菌を効果的に殺菌できるので、口腔内のバイオフィルム除去剤、特にう蝕予防剤や歯周病予防剤として使用できる。また、フゾバクテリウム・ヌクレアータム(Fusobacterium nucleatum)及びポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)は、歯周病の主要な原因菌であることが知られているが、本発明の口腔用組成物は、フゾバクテリウム・ヌクレアータム及びポルフィロモナス・ジンジバリスが形成しているバイオフィルムに対して、顕著に優れた殺菌作用を示し、これらの歯周病原因菌が形成したバイオフィルムを効果的に除去できるので、歯周病予防剤として特に好適に使用される。
更に、口腔内で形成されるバイオフィルムは口臭の原因にもなっているので、本発明の口腔用組成物は、口腔内のバイオフィルム形成を抑制することにより、口臭を予防することができ、口臭予防剤として使用することもできる。
本発明の口腔用組成物の口腔内への適用量については、(A)成分の含有量、(B)成分の種類や含有量、口腔用組成物の製剤形態、期待される効果等に応じて適宜設定されるが、例えば、1日に1〜6回の頻度で、1回当たり、本発明の口腔用組成物の適用量を、(A)成分の適用量が1〜6mg程度に相当する量に設定すればよい。
以下に、実施例等に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、以下に示す単位「w/v%」は、100mL当たりに含まれる各成分の重量(g)である。
試験例1
塩化セチルピリジニウム及びケイヒについて、バイオフィルムを形成しているフゾバクテリウム・ヌクレアータム及びポルフィロモナス・ジンジバリスに対する殺菌作用を評価するために以下の試験を行った。
1.試験方法
表1に示す組成の試験液を以下の手法で調製した。セチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)(和光純薬工業株式会社製)を蒸留水に溶解し、その後、ろ過滅菌フィルターを用いて滅菌して、0.02w/v%のCPC水溶液を作製した。別途、ケイヒ末(日本粉末薬品株式会社製)を蒸留水に懸濁し、1w/v%のケイヒ末懸濁液を作製し、これを37℃で時々軽く振り混ぜながら5分間インキュベートした後に、3000rpmで3分間遠心して、上澄みを回収し、これを1w/v%のケイヒ末水溶液とした。1w/v%のケイヒ末水溶液をろ過滅菌フィルターを用いて滅菌し、その後、蒸留水で100倍希釈して、0.01w/v%のケイヒ水溶液を作製した。斯して得られた0.02w/v%のCPC水溶液、0.01w/v%のケイヒ末水溶液、及び滅菌蒸留水を適宜混合することにより、表1に示す試験液を調製した。
15mL遠沈管に液体培地(5μg/mlヘミン及び0.5μg/mlメナジオン添加GAMブイヨン培地)10mLを入れ、そこへ25%グリセロールストック(−80℃で凍結)状態のポルフィロモナス・ジンジバリスとフゾバクテリウム・ヌクレアータムを各々適量植菌し、35℃で2〜3日間嫌気培養した。これらの2菌種の培養液を液体培地でOD660が0.002となるよう希釈し、両希釈液を1:1の容量比で混合した。この混合液を96ウェルプレートへ200μL/ウェルとなるよう分注し、35℃で7日間嫌気培養することにより、ウェル中でバイオフィルムを形成させた。次いで、ウェルの壁面に付着しているバイオフィルムが残存するように、ウェル中の培養液をやさしく除き、その後、ウェルに表1に示す各試験液を220μLずつやさしく添加し、室温で5分間静置した。その後、各ウェルから試験液を除去し、50mMのHEPESバッファー200μLをやさしく添加した。その後、各ウェルを最小出力で10秒間超音波処理し、ウェル中のバイオフィルムを剥離・分散させて、菌懸濁液を得た。なお、この超音波処理条件では、試験に使用した細菌が死なないことを予め確認している。得られた菌懸濁液を50mMのHEPESバッファーを用いて適宜希釈し、希釈液100μLを平板培地(5μg/mlヘミン、0.5μg/mlメナジオン、及び1.5%寒天末添加GAMブイヨン培地)に塗布して、2〜3日間嫌気培養を行い、形成されたコロニー数をカウントすることにより、残存細菌数を求めた。
2.試験結果
得られた結果を表1に示す。表1には、比較例1の試験液における残存細菌数を1とした場合の各試験液における相対残存菌数を示した。本試験の結果から、CPC単独(比較例1)又はケイヒ単独(比較例2)の場合では、バイオフィルムを形成している細菌を僅かに殺菌するに止まっており、バイオフィルムに深在する細菌を殺菌できなかった。一方、CPCとケイヒを併用した場合(実施例1)では、バイオフィルムを形成している細菌を大幅に死滅させることができ、バイオフィルムに深在する細菌も殺菌できることが示唆された。この結果から、CPCとケイヒを併用することにより、バイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌効果が相乗的に増強されて奏されることが明らかとなった。
Figure 0006291151
試験例2
CPC及びケイヒの濃度を変えたこと以外は、上記試験例1と同様の方法で、バイオフィルムを形成しているフゾバクテリウム・ヌクレアータム及びポルフィロモナス・ジンジバリスに対する殺菌作用を評価した。本試験で使用した試験液のCPC及びケイヒの濃度は、表2に示す通りである。
Figure 0006291151
得られた結果を図1及び2に示す。この結果からも、CPCとケイヒを併用することによって、バイオフィルムを形成している細菌に対して、優れた殺菌効果が奏されることが確認された。特に、CPC100重量部に対して、ケイヒが0.7〜5000重量部の比率を充足する場合に、バイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌効果が格段顕著になることが確認された。
試験例3
ケイヒ末の代わりにチョウジ末(日本粉末薬品株式会社製)を使用したこと以外は、上記試験例1と同様の方法で、バイオフィルムを形成しているフゾバクテリウム・ヌクレアータム及びポルフィロモナス・ジンジバリスに対する殺菌作用を評価した。本試験で使用した試験液のCPC及びチョウジの濃度は、表3に示す通りである。
得られた結果を表3に示す。表3には、比較例1の試験液における残存細菌数を1とした場合の各試験液における相対残存菌数を示した。本試験の結果から、CPC単独(比較例1)の場合では、バイオフィルムを形成している細菌を僅かに殺菌するに止まっており、また、バイオフィルムに深在する細菌を殺菌できず、更にチョウジ単独(比較例3)の場合では、バイオフィルムを形成している細菌を殆ど殺菌できていなかった。これに対してCPCとチョウジを併用した場合(実施例23)では、バイオフィルムを形成している細菌を大幅に死滅させることができ、バイオフィルムに深在する細菌も殺菌できることが示唆された。この結果から、CPCとチョウジを併用することにより、バイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌効果が相乗的に増強されて奏されることが明らかとなった。
Figure 0006291151
比較試験例1
CPC(和光純薬工業株式会社製)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)(大阪化成株式会社製)、塩酸クロルヘキシジン(CHX)(相互薬工株式会社製)、トリクロサン(TC)(BASFジャパン株式会社製)、ケイヒ末(日本粉末薬品株式会社製)、アセンヤク末(日本粉末薬品株式会社製)を使用して、上記試験例1と同様の方法で、バイオフィルムを形成しているフゾバクテリウム・ヌクレアータム及びポルフィロモナス・ジンジバリスに対する殺菌作用を評価した。なお、なお、各試験液に配合したケイヒ末及びアセンヤク末については、試験例1で調製した0.01w/v%のケイヒ末水溶液と同様の方法で、0.01w/v%の濃度の水溶液を調製し、CPC、IPMP、CHX及びTCについては、試験例1で調製した0.02w/v%のCPC水溶液と同様の方法で、0.02w/v%の濃度の水溶液を調製し、これらを使用した。本試験で使用した試験液の組成は、表4に示す通りである。
得られた結果を表4に示す。表4には、比較例1の試験液における残存細菌数を1とした場合の各試験液における相対残存菌数を示した。本試験の結果から、CPCとアセンヤクを併用すると、CPC単独の場合と比較してバイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌作用が減弱することが分かった。また、IPMP、CHX又はTCとケイヒを併用しても、IPMP、CHX、又はTC単独の場合と比較して、バイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌作用が減弱することが分かった。
以上の結果から、上記試験例で認められたバイオフィルムを形成している細菌に対する殺菌作用の顕著な向上は、CPCとケイヒの組み合わせ、又はCPCとチョウジの組み合わせを選択した場合において認められる特有の現象であることが明らかとなった。
Figure 0006291151
試験例4
表5に示す試験液を上記試験例及び比較試験例と同様の方法で調製した。この試験液をバイオフィルムに作用させた後に、バイオフィルムの細菌臭の経時的変化を測定した。具体的には、試験例1と同様の方法で、96ウェルプレートの各ウェル中に、ポルフィロモナス・ジンジバリスとフゾバクテリウム・ヌクレアータムを用いてバイオフィルムを形成させた。次いで、ウェルの壁面に付着しているバイオフィルムが残存するように、ウェル中の培養液をやさしく除き、その後、ウェルに表5に示す各試験液を220μLずつやさしく添加し、室温で5分間静置した。その後、各ウェルを最小出力で10秒間超音波処理し、ウェル中のバイオフィルムを剥離・分散させて、菌懸濁液を得た。なお、この超音波処理条件では、試験に使用した細菌が死なないことを予め確認している。得られた菌懸濁液100μLを液体培地(5μg/mlヘミン、0.5μg/mlメナジオンを含むGAMブイヨン培地)10mLに添加し、25℃で120時間嫌気培養を行った。嫌気培養期間中、経時的に培養液の臭気を確認し、以下の判定基準に従って評価した。
<臭気の判定基準>
○:悪臭(細菌臭)は全く感じられない(培地の臭いのみが感じられる)
△:僅かに悪臭(細菌臭)が感じられる
×:強い悪臭(細菌臭)が感じられる
得られた結果を表5に示す。この結果から、CPCとケイヒを併用した場合(実施例1)及びCPCとチョウジを併用した場合(実施例23)では、嫌気培養を行っても、細菌から発生する悪臭が殆ど嗅知されず、バイオフィルムを形成している細菌が十分に殺菌されていることが示された。一方、CPC単独の場合(比較例1)及びCPCとアセンヤクを併用した場合(比較例4)では、培養時間の経過と共に、細菌から発生する悪臭が強くなったことから、バイオフィルムを形成している細菌を効果的に殺菌できなかったことが確認された。
Figure 0006291151

Claims (5)

  1. (A)塩化セチルピリジニウムと、(B)ケイヒの水抽出物とを含有し、
    口腔内で形成されているバイオフィルム中の細菌殺菌するために使用される、
    ことを特徴とする、口腔内のバイオフィルム殺菌用の口腔用組成物(但し、クランベリー又はその抽出物を含む場合を除く)。
  2. (A)成分100重量部当たり、(B)成分(原料重量換算)が0.0005〜10000000重量部である、請求項1に記載の口腔内のバイオフィルム殺菌用の口腔用組成物。
  3. 製剤形態がトローチである、請求項1又は2に記載の口腔内のバイオフィルム殺菌用の口腔用組成物。
  4. バイオフィルムが形成されている口腔においてう蝕予防用又は歯周病予防用として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔内のバイオフィルム殺菌用の口腔用組成物。
  5. バイオフィルムが形成されている口腔において口臭予防用として用いられる、請求項1〜3のいずれかに記載の口腔内のバイオフィルム殺菌用の口腔用組成物。
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