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JP6278781B2 - タイヤ加硫方法 - Google Patents

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本発明は、タイヤを加硫成形するタイヤ加硫方法に関する。
空気入りタイヤの製造工程においては、従来より、未加硫状態のタイヤを加硫金型内に装填する一方でタイヤの内部に加硫ブラダーを装着して、加硫ブラダーにより形成されるタイヤの内部空間に高温のスチームおよび常温のガス(不活性ガス)を順に供給すると共に、加熱された加硫金型を閉状態にしてタイヤを金型の成形面に押し当てながらタイヤの内側と外側の両側から加熱加圧することにより、タイヤの加硫成形を行っている。
このとき、上記したタイヤの内部空間に対しては、図3に示すように、まず、高温のスチームを供給して当初圧力P1から加熱最高圧P2まで昇圧させた後、タイヤが加硫温度に加熱されるまでこの加熱最高圧P2を維持する。その後、供給する気体を高温のスチームから常温のガスに切り替えて加圧最高圧P3まで昇圧させた後、加硫の完了までこの加圧最高圧P3を維持する。加硫完了後は、タイヤの内部空間からスチームやガスを外部へ排気して、当初圧力P1まで戻した後、加硫後のタイヤを取り出す。
特開2002―36245号公報
しかしながら、上記の加硫方法に用いられるガスは常温であるため、タイヤを昇温させるための熱源とはならず、昇温カーブが緩やかになったり、温度低下が生じたりする。このため、所定の加硫時間にタイヤに与えられるトータル熱量が低下し、従来は、この熱量の低下を加硫時間の延長により補っていた。この結果、加硫時間が長くなって生産効率の低下を招く原因となっていた。
そこで、本発明は、従来よりも短時間で加硫を行って、生産効率を向上させることができるタイヤ加硫方法を提供することを課題とする。
請求項1に記載の発明は、
加硫金型内に装填されたタイヤの内部空間にスチームを供給して一定の圧力に維持することにより前記タイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させる昇温工程と、昇温した前記タイヤの内部空間にガスを供給した後に一定の圧力に維持することにより前記タイヤを加熱加圧して加硫する加硫工程と、加硫後前記タイヤの内部空間のスチームおよびガスを排気する排気工程とを備えたタイヤ加硫方法であって、
前記加硫工程の途中において、前記タイヤの内部空間からスチームおよびガスを排気して前記タイヤの内部空間の圧力を低下させた後、前記タイヤの内部空間にスチームを供給して前記タイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させ、再度、前記タイヤの内部空間にガスを供給した後に圧力を維持し、
前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気により、前記タイヤの内部空間の圧力を5〜15秒間で1200〜2000kPa低下させる
ことを特徴とするタイヤ加硫方法である。
請求項2に記載の発明は、
前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気を、前記タイヤの内部温度が予め設定した最高温度に達する直前に行うことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫方法である。
請求項3に記載の発明は、
前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気を、加硫開始から3〜20分後に行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫方法である。
請求項に記載の発明は、
前記タイヤが大型タイヤであって、
前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気により、前記タイヤの内部空間の圧力を、2500kPaから500〜1000kpaまで低下させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫方法である。
請求項に記載の発明は、
前記タイヤが小型タイヤであって、
前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気により、前記タイヤの内部空間の圧力を、2200kPaから500〜1000kpaまで低下させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫方法である。
請求項に記載の発明は、
前記加硫工程における前記タイヤの内部空間にスチームを供給する時間が、0.1〜4.0分であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のタイヤ加硫方法である。
本発明によれば、従来よりも短時間で加硫を行って、生産効率を向上させることができるタイヤ加硫方法を提供することができる。
本発明の実施の形態に係るタイヤ加硫方法における加硫成形中のタイヤの内部空間における圧力の経時的変化を示す図である。 実施例および比較例のタイヤ内部温度と加硫時間との関係を示す図である。 従来のタイヤ加硫方法における加硫成形中のタイヤの内部空間における圧力の経時的変化を示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づき説明する。
本実施の形態に係るタイヤ加硫方法は、従来のタイヤ加硫方法と同様に、加硫金型内に装填されたタイヤの内部空間にスチームを供給して一定の圧力に維持することにより前記タイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させる昇温工程と、昇温したタイヤの内部空間にガスを供給した後に一定の圧力に維持することによりタイヤを加熱加圧して加硫する加硫工程と、加硫後タイヤの内部空間のスチームおよびガスを排気する排気工程とを備えている。
しかし、本実施の形態のタイヤ加硫方法は、加硫工程の途中において、タイヤの内部空間からスチームおよびガスを排気してタイヤの内部空間の圧力を低下させた後、タイヤの内部空間にスチームを供給してタイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させ、再度、タイヤの内部空間にガスを供給した後に圧力を維持する点で従来のタイヤ加硫方法と異なる。
このように、加硫工程において、一旦、スチームおよびガスを排気してタイヤの内部空間の圧力を低下させた後、再度、スチームを供給することにより、加硫工程中のタイヤの内部空間に熱源が再度導入されて、タイヤ内部の温度を上昇させることができる。この結果、所定の加硫時間にタイヤに与えられるトータル熱量が低下することを抑制でき、従来の加流方法と異なり、加硫時間を延長することなくタイヤを適切に加硫成形することができ、生産効率を向上させることができる。
以下、本実施の形態に係るタイヤ加硫方法を図面を用いて具体的に説明する。
図1は本実施の形態に係るタイヤ加硫方法における加硫成形中のタイヤ内部における圧力の経時的変化を示す図である。図1において、横軸は時間経過を、縦軸はタイヤ内部の圧力を示している。
1.昇温工程
図1に示すように、本実施の形態では、最初に、タイヤの内部にスチームを供給して一定の圧力に維持することによりタイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させる(昇温工程T1)。具体的には、当初圧力P1(0kPa)から加熱最高圧P2(1300〜1700kPa)まで昇圧するようにスチームを供給し、タイヤが加硫温度に加熱されるまで圧力を維持する。そして、タイヤ内部温度が加流温度に達した後、次の加硫工程に進む。
2.加硫工程
本実施の形態に係る加硫方法は、加硫工程が、従来のようなガスを供給するガス供給工程だけではなく、1回目のガス供給工程の後、タイヤ内部からスチームおよびガスを排気してタイヤ内部の圧力を低下させる中間排気工程、タイヤ内部にスチームを供給してタイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させるスチーム供給工程、再度、タイヤ内部にガスを供給する2回目のガス供給工程によって構成されている。以下、この加硫工程を構成する各工程を説明する。
(1)1回目のガス供給工程
本実施の形態の加硫工程は、先ず、従来と同様に、昇温工程後のタイヤの内部空間にガスを供給する(1回目のガス供給工程T2)。具体的には、タイヤ内部の圧力が、加熱最高圧P2から加圧最高圧P3(2300〜2700kPa)まで昇圧するようにガスを供給し、圧力を所定の時間維持する。
(2)中間排気工程
次に、タイヤ内部からスチームおよびガスを排気し、タイヤ内部の圧力を加圧最高圧P3から中間排気圧P4まで低下させる(中間排気工程T3)。この中間排気工程T3は、加硫成形の進行によるタイヤの「ゴム流れ」が終わる際、即ちタイヤの内部空間の温度が最高内部温度に達する直前に行うことが好ましく、加硫開始から3〜20分の間に行うことが好ましい。また、5〜15秒間の短時間で一気に排気することが好ましい。
この加圧最高圧P3から中間排気圧P4までの圧力低下の程度は、1200〜2000kPaとすることが好ましく、例えば、トラック・バス用タイヤ(TBタイヤ)などの大型タイヤの場合、排気後の中間排気圧P4は、例えば、ガス供給後の加圧最高圧P3が2500kPaに設定され、排気後の中間排気圧P4が500〜1000kPaになるまで排気することが好ましい。
一方、乗用車用タイヤ(PCタイヤ)などの小型タイヤの場合、ガス供給後の加圧最高圧P3が2200kPaに設定され、排気後の中間排気圧P4が500〜1000kPaになるまで排気することが好ましい。
(3)スチーム供給工程
次に、タイヤ内部の圧力が中間排気圧P4から加熱最高圧P2まで昇圧するように、タイヤ内部にスチームを再度供給した後、加熱最高圧P2を所定時間維持する(スチーム供給工程T4)。このように、加硫工程の途中において熱源となるスチームをタイヤ内部に導入することにより、タイヤ内部温度を加硫温度まで短時間で昇温させて、所定の加硫時間にタイヤに与えられるトータル熱量を従来よりも多くすることができる。
加硫工程のスチーム供給工程T4の時間は、タイヤ性能変化の観点から、昇温工程T1の時間よりも短くすることが好ましく、0.1〜4.0分程度に設定することが好ましく、例えば、1.0分に設定する。
(4)2回目のガス供給工程
そして、本実施の形態では、加硫工程のスチーム供給工程T4により熱源をタイヤ内部に導入して従来よりも多くの熱量をタイヤに与えた後、ガスを供給して加熱最高圧P2から加圧最高圧P3まで昇圧させて、高温、高圧の状況を所定時間維持する(2回目のガス供給工程T5)ことによりタイヤを加硫成形する。
3.排気工程
加硫工程終了後は、加硫ブラダー内のスチームおよびガスを全て排気する(排気工程T6)。これにより、タイヤの加硫成形が終了し、加硫金型から取り出された加硫後のタイヤは次工程に搬送される。
以上のように、本実施の形態に係る加硫方法では、加硫工程において一旦タイヤ内部の圧力を低下させて熱源となるスチームを再度供給することにより、加硫工程中のタイヤ内部に熱源を導入してタイヤ内部の温度を上昇させることにより、従来よりも多くの熱量をタイヤに与えることができるため、所定の加硫時間にタイヤに与えられるトータル熱量が低下することを抑制できる。この結果、従来のように加硫時間を延長することなくタイヤを加硫成形することができ、生産効率を向上させることができる。
1.実施例、比較例
(1)実施例
上記した実施の形態に係る加硫方法に基づいて、タイヤサイズが11R22.5のTB−Rタイヤの加硫成形を行った。なお、昇温工程T1の時間を4.0分に設定し、加硫工程における各工程は、1回目のガス供給工程T2の時間を6.0分、中間排気工程T3の時間を10秒、スチーム供給工程T4の時間を1.0分間、2回目のガス供給工程T5の時間を26.0分に設定した。
また、加熱最高圧P2は1500kPa、加圧最高圧P3は2500kPa、中間排気圧P4は550kPaに設定した。
(2)比較例
従来の加硫方法に従い、加硫工程の途中において、ガスの排気とその後のスチーム供給を行わず、ガスを供給して加圧最高圧P3(2500kPa)まで加圧した後、38.0分間維持したことを除いて、実施例と同じ条件でタイヤの加硫成形を行った。
2.評価
タイヤ内部の温度を測定し、実施例と比較例について、時間経過に伴うタイヤ内部温度の経緯を評価するサーモテストを行った。結果を図2に示す。なお、図2中の縦軸は温度(℃)であり、横軸は時間(分)であり、Aは実施例のタイヤ内部の温度変化、Bは比較例のタイヤ内部の温度変化、Cは実施例の加硫量、Dは比較例の加硫量を示している。
図2より、Aに示す実施例では下降し始めたタイヤ内部温度が2回目のスチーム供給により再度上昇して温度低下が遅くなっており、Bに示す比較例ではタイヤ内部温度の低下がAの実施例よりも早くなっていた。そして、Cに示す実施例の加硫の熱量(加硫量)は2回目のスチーム供給により急激に増加していたことに対して、Dに示す比較例では加硫の熱量の増加が緩やかであった。
このことから、加硫工程において、タイヤ内部の圧力を一旦低下させて熱源となるスチームを供給することによりタイヤ内部温度を上昇させることができるため、所定の加硫時間にタイヤに与えられるトータル熱量が低下することを抑制して、従来のように加硫時間を延長することなく、適切な温度、圧力でタイヤを加硫成形できることが確認された。
具体的には、適切な温度と圧力でタイヤを加硫成形するために必要な時間の比率が、実施例:比較例で100:110になり、実施例では、加硫時間を比較例から1.0分短縮しても、適切な温度、圧力でタイヤを加硫成形できることが確認された。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
P1 当初圧力
P2 加熱最高圧
P3 加圧最高圧
P4 中間排気圧
T1 昇温工程
T2 1回目のガス供給工程
T3 中間排気工程
T4 スチーム供給工程
T5 2回目のガス供給工程
T6 排気工程

Claims (6)

  1. 加硫金型内に装填されたタイヤの内部空間にスチームを供給して一定の圧力に維持することにより前記タイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させる昇温工程と、昇温した前記タイヤの内部空間にガスを供給した後に一定の圧力に維持することにより前記タイヤを加熱加圧して加硫する加硫工程と、加硫後前記タイヤの内部空間のスチームおよびガスを排気する排気工程とを備えたタイヤ加硫方法であって、
    前記加硫工程の途中において、前記タイヤの内部空間からスチームおよびガスを排気して前記タイヤの内部空間の圧力を低下させた後、前記タイヤの内部空間にスチームを供給して前記タイヤの内部温度を加硫温度まで昇温させ、再度、前記タイヤの内部空間にガスを供給した後に圧力を維持し、
    前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気により、前記タイヤの内部空間の圧力を5〜15秒間で1200〜2000kPa低下させる
    ことを特徴とするタイヤ加硫方法。
  2. 前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気を、前記タイヤの内部温度が予め設定した最高温度に達する直前に行うことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫方法。
  3. 前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気を、加硫開始から3〜20分後に行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタイヤ加硫方法。
  4. 前記タイヤが大型タイヤであって、
    前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気により、前記タイヤの内部空間の圧力を、2500kPaから500〜1000kpaまで低下させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫方法。
  5. 前記タイヤが小型タイヤであって、
    前記加硫工程における前記タイヤの内部空間からのスチームおよびガスの排気により、前記タイヤの内部空間の圧力を、2200kPaから500〜1000kpaまで低下させることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫方法。
  6. 前記加硫工程における前記タイヤの内部空間にスチームを供給する時間が、0.1〜4.0分であることを特徴とする請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のタイヤ加硫方法。
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