JP6275596B2 - テルミサルタンのアンモニウム塩の製造方法 - Google Patents
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Description
具体的には、まず、特定不純物A及びBを含むテルミサルタンの粗体を、エタノールなどのアルコールと水との混合溶媒中、−10℃以上35℃未満で、アンモニアと反応させ、テルミサルタンのアンモニウム塩とし溶解させる。続いて、当該テルミサルタンのアンモニウム塩の溶液に、0℃以上50℃以下で、酢酸エチルを加えテルミサルタンのアンモニウム塩を結晶化させ、続いて固液分離、乾燥することにより、特定不純物A及びBが大幅に低減されたテルミサルタンのアンモニウム塩を得ることができる。当該アンモニウム塩を、異なる乾燥条件によってさらに乾燥する、或いは、酢酸などの酸と中和することにより製造されるテルミサルタンは、上記の特定不純物A及びBの含有量が少なく、医薬品として好適に使用することができる。
以上より、当該テルミサルタンの精製方法は、テルミサルタンの粗体から、それに含まれる不純物群、特に特定不純物A及びBを除去することが可能な、非常に有用な精製方法である。
さらに、本発明者らは、当該特定不純物群C及びDが、他の公知の精方法によって低減可能かを検討した。具体的には、特定不純物C及びDを含むテルミサルタンの粗体を、アルコールなどの溶媒中、アンモニアなどの塩基と反応させ溶解させた後、酢酸などの酸とを混合することにより、テルミサルタンを精製する方法、或いは、上記テルミサルタンの粗体を、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒を用いた再結晶操作により、テルミサルタンを精製する方法について検討を行った。しかしながら、特許文献1に記載された精製方法と同様に、当該精製方法によっても特定不純物C及びDを低減することは、非常に困難であることが判明した。
上記の操作を実施することにより、当該操作を実施しない場合(特許文献1に記載の方法)と比較して、テルミサルタンのアンモニウム塩が結晶化する速度がより速やかとなる。通常、結晶化による精製操作においては、結晶化速度がより緩やかな方が、結晶内への不純物の取り込みが少なく、精製効果が増大することが一般的である。しかしながらテルミサルタンのアンモニウム塩の結晶化においては驚くべきことにそのような効果は得られないことを見出した。むしろ、上述の通り、結晶化速度が速やかとなることで、特定不純物C及びDの含有量を低減できる。その理由は、明らかではないが、結晶化速度の増大に伴い、得られるテルミサルタンのアンモニウム塩が小粒子径化し、その結果、テルミサルタンのアンモニウム塩の結晶内に上記の特定不純物群を取り込み難くなったと推測される。さらに、特許文献1に記載の方法における効果である、特定不純物A及びBの低減効果についても、本発明の方法においても同等の効果が得られる。
(テルミサルタンの粗体)
本発明におけるテルミサルタンの粗体は、特定不純物C及びDを含むものであれば、その合成方法等に制限されることなく使用することができる。ただし、特定不純物C及びDの構造、及び、当該不純物群がテルミサルタンの粗体に含まれる経緯は明白ではないが、4−メチル−6(1−メチルベンズイミダゾール−2−イル)−2−n−プロピル−1H−ベンズイミダゾールを出発物質としてテルミサルタンを合成した場合に、テルミサルタンの粗体に特定不純物C及びDが含まれると推測される。つまり、原料の4−メチル−6(1−メチルベンズイミダゾール−2−イル)−2−n−プロピル−1H−ベンズイミダゾールに、特定不純物C及びDとなり得る化合物が含まれ、それらがテルミサルタンの粗体を合成する過程において低減されること無く、特定不純物C及びDとしてテルミサルタンの粗体に残存するものと考えられる。
装置:液体クロマトグラフ装置及び質量分析計(Waters Corporation製)
検出器:紫外吸光光度計(Waters Corporation製)
測定波長:230nm
カラム:内径4.0mm、長さ12.5cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
移動相a:ギ酸アンモニウム0.63gを水1000mLに添加し溶解させた後、水で希釈したギ酸を加えて、pH3.0に調整した混合液。
移動相b:アセトニトリル800mLに、メタノール200mLを加えた混合液。
移動相の送液:移動相A及びBの混合比を表1のように変えて濃度勾配制御する。
カラム温度:35℃付近の一定温度。
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法(ESI)。
検出モード:正イオンモード。
本発明における混合溶媒は、水と炭素数が2〜12のアルコールと酢酸エチルから構成される。上記の水は、特に制限なく、水道水、イオン交換水、純水又は超純水な等が使用できるが、テルミサルタンを医薬品用途として使用する場合、イオン交換水、純粋、及び、超純水を使用することが好ましい。また、その使用量は、テルミサルタンの粗体1gに対し、0.5〜50mLである。これらの範囲において、テルミサルタンのアンモニウム塩を十分に溶解、結晶化させることができるが、中でも、操作性や回収率を考慮すると、1〜45mLがより好ましく、2〜40mLが最も好ましい。
本発明におけるアンモニアの使用量は、テルミサルタン1モルに対して、2.0〜30.0モルである。アンモニアの量が2.0モル未満の場合には、溶解工程及び結晶化工程で温度を調整したとしても、特定不純物A、B、C、及びDを高度に低減できないため、好ましくない。一方、アンモニアの量が30.0モルを超える場合には、回収率が低下するため、好ましくない。アンモニアの量が2.0モル以上であれば、テルミサルタンの全量を溶解させることができ、その結果、特定不純物C及びDの低減効果を十分に得ることができる。一方、30.0モル以下であれば、テルミサルタンアンモニウム塩を十分に高い回収率で得ることができる。これらの範囲の中でも、テルミサルタンアンモニウム塩の回収率を考慮すると、2.0〜20.0モルが好ましく、2.0〜15.0モルがさらに好ましい。
本発明において、上記のテルミサルタンの粗体を、混合溶媒中、0〜30℃にてアンモニアを加えてアンモニウム塩化することにより溶解させる。当該溶解操作は、ガラス製容器、ステンレス製容器、テフロン(登録商標)製容器、グラスライニング容器等の容器にて実施し、さらに、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー等を用いて撹拌下で実施することが、溶解に要する時間が短縮されることから好ましい。また、アンモニアや溶媒が揮発することを抑制する目的から、還流冷却管等を取り付けることも好ましい。
(結晶化条件)
本発明において、上記の溶解工程で得られた溶液から0〜30℃にてテルミサルタンのアンモニウム塩を析出させ、テルミサルタンのアンモニウム塩を製造する。
当該条件によるHPLC分析では、テルミサルタンのアンモニウム塩及びテルミサルタンの保持時間は10.6分付近である。以下の実施例、比較例において、テルミサルタンのアンモニウム塩及びテルミサルタンの純度は、下記条件で測定される全ピーク(溶媒由来のピークを除く)の面積値の合計に対するテルミサルタンのアンモニウム塩及びテルミサルタンのピーク面積値の割合である。
装置:液体クロマトグラフ装置(Waters Corporation製)
検出器:紫外吸光光度計(Waters Corporation製)
測定波長:230nm
カラム:内径4.0mm、長さ12.5cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルが充填されたもの。
移動相i:りん酸二水素カリウム2.0g及び1−ペンタンスルホン酸ナトリウム3.4gを水1000mLに添加し溶解させた後、水で希釈したりん酸を加えて、pH3.0に調整した混合液。
移動相ii:アセトニトリル800mLに、メタノール200mLを加えた混合液。
移動相の送液:移動相A及びBの混合比を表2のように変えて濃度勾配制御する。
流量:毎分1.0mL
カラム温度:40℃付近の一定温度
測定時間:35分
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、4−メチル−6(1−メチルベンズイミダゾール−2−イル)−2−n−プロピル−1H−ベンズイミダゾール10.0g(32.9mmol)、2−プロパノール30mL、及びジメチルスルホキシド10mLを加え攪拌した。次いで、カリウムターシャリーブトキシド4.1g(36.1mmol)を加えた後、加温し45℃で1時間撹拌した。得られた白色スラリーを30℃付近に冷却した後、4′−(ブロモメチル)ビフェニル−2−カルボン酸メチルエステル11.0g(36.0mmol)を加え、30℃付近で6時間反応させた。反応終了後、水50mLを加え、25℃付近で1時間撹拌した後、減圧濾過により析出した結晶を濾別し、水10mLとアセトン10mLにより、濾別した結晶を洗浄した。得られた白色結晶を60℃で15時間、減圧下乾燥し、白色結晶としてメチル 4′−[[2−n−プロピル−4−メチル−6−(1−メチルベンズイミダゾール−2−イル)−ベンズイミダゾール−1−イル]−メチル]−ビフェニル−2−カルボキシレート16.5g(31.2mmol)を得た(収率94.8%)。
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、製造例1で得られたテルミサルタンの粗体10.0g(19.4mmol)、エタノール10mL、水50mL、及び酢酸エチル50mLを加え攪拌した。得られた白色スラリーに、25%アンモニア水5.9g(87.3mmol)を25℃で加え、5分間攪拌したところ、テルミサルタンの粗体が全量溶解した。次いで、得られた溶液に、テルミサルタンのアンモニウム塩0.01gを加え攪拌を継続したところ、白色結晶が析出した。さらに、25℃付近で3時間攪拌した後、減圧濾過により析出した結晶を濾別し、水20mL、酢酸エチル20mLにより、濾別した結晶を洗浄した。得られた白色結晶を30℃で25時間減圧下乾燥し、白色結晶としてテルミサルタンのアンモニウム塩9.8g(18.5mmol)を得た(収率95.1%、HPLC純度99.94%、特定不純物A:検出限界以下、特定不純物B:検出限界以下、特定不純物C:0.03%、特定不純物D:0.02%)。条件を表3、得られたテルミサルタンのアンモニウム塩の結果を表4に示した。
溶解条件、各溶媒の使用量、及び、結晶化条件を変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。条件を表3、得られたテルミサルタンのアンモニウム塩の結果を表4に示した。
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、実施例1で得られたテルミサルタンのアンモニウム塩8.0g(15.1mmol)、メタノール100mLを加え攪拌した。得られた溶液に、活性炭0.40gを25℃で加え、30分間攪拌した。減圧濾過により活性炭を除去した後、得られた溶液に、酢酸5.4g(90.6mmol)とメタノール20mLとの混合物を少しずつ添加したところ、白色結晶が析出した。酢酸とメタノールとの混合物を2時間で全量滴下した後、5℃付近まで冷却し、5℃付近で1時間攪拌した。続いて、減圧濾過により析出した結晶を濾別し、メタノール20mLにより、濾別した結晶を2回洗浄した。得られた白色結晶を80℃で25時間減圧下乾燥し、白色結晶としてテルミサルタン7.2g(14.0mmol)を得た(収率93.0%、HPLC純度99.95%、特定不純物A:検出限界以下、特定不純物B:検出限界以下、特定不純物C:0.03%、特定不純物D:0.02%)。
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、製造例1で得られたテルミサルタンの粗体10.0g(19.4mmol)、メタノール120mL、アンモニア0.50g(29.1mmol)を含むアンモニア水2.0gを加え攪拌した。得られた溶液に、活性炭0.50gを25℃で加え、30分間攪拌した。減圧濾過により活性炭を除去した後、得られた溶液に、酢酸6.8g(113.3mmol)とメタノール20mLとの混合物を少しずつ添加したところ、白色結晶が析出した。酢酸とメタノールとの混合物を全量滴下した後、5℃付近まで冷却し、5℃付近で1時間攪拌した。続いて、減圧濾過により析出した結晶を濾別し、メタノール20mLにより、濾別した結晶を2回洗浄した。得られた白色結晶を80℃で25時間減圧下乾燥し、白色結晶としてテルミサルタン9.2g(17.9mmol)を得た(収率92.2%、HPLC純度99.68%、特定不純物A:0.07%、特定不純物B:0.06%、特定不純物C:0.08%、特定不純物D:0.07%)。
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、製造例1で得られたテルミサルタンの粗体10.0g(19.4mmol)とN,N‘−ジメチルホルムアミド100mLを加え、80℃付近まで加温した。80℃付近で15分間攪拌したところ、テルミルタンが全て溶解した。得られた溶液を5℃付近まで徐々に冷却し、5℃付近で2時間攪拌したところ、白色結晶が析出した。続いて、減圧濾過により析出した結晶を濾別し、N,N’−ジメチルホルムアミド5mLにより、濾別した白色結晶を2回洗浄した。得られた白色結晶を90℃で25時間減圧下乾燥し、白色結晶としてテルミサルタン7.2g(14.0mmol)を得た(収率72.0%、HPLC純度99.74%、特定不純物A:0.06%、特定不純物B:0.05%、特定不純物C:0.07%、特定不純物D:0.06%)。
攪拌翼、温度計を取り付けた200mLの三つ口フラスコに、製造例1で得られたテルミサルタンの粗体10.0g(19.4mmol)、エタノール10mL、及び水50mLを加え攪拌した。得られた白色スラリーに、25%アンモニア水5.9g(87.3mmol)を25℃で加え、15分間攪拌したところ、テルミサルタンの粗体が全量溶解した。次いで、得られた溶液に酢酸エチル50mL及びテルミサルタンのアンモニウム塩0.01gを加え攪拌を継続したところ、白色結晶が析出した。さらに、25℃付近で3時間攪拌した後、減圧濾過により析出した結晶を濾別し、水20mL、酢酸エチル20mLにより、濾別した結晶を洗浄した。得られた白色結晶を30℃で25時間減圧下乾燥し、白色結晶としてテルミサルタンのアンモニウム塩9.8g(18.5mmol)を得た(収率95.1%、HPLC純度99.82%、特定不純物A:検出限界以下、特定不純物B:検出限界以下、特定不純物C:0.09%、特定不純物D:0.07%)。
溶解条件、各溶媒の使用量、及び、結晶化条件を変更した以外は、実施例1と同様にして実施した。条件を表3、得られたテルミサルタンのアンモニウム塩の結果を表4に示した。
Claims (2)
- 請求項1に記載の方法で製造された前記テルミサルタンのアンモニウム塩と酢酸とを反応させて前記テルミサルタンのアンモニウム塩を中和することにより、前記テルミサルタンを析出させる結晶化工程を含むことを特徴とする前記テルミサルタンの製造方法。
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