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JP6273804B2 - 繊維強化プラスチック成形体の製造方法 - Google Patents

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JP6273804B2 JP2013248968A JP2013248968A JP6273804B2 JP 6273804 B2 JP6273804 B2 JP 6273804B2 JP 2013248968 A JP2013248968 A JP 2013248968A JP 2013248968 A JP2013248968 A JP 2013248968A JP 6273804 B2 JP6273804 B2 JP 6273804B2
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Description

本発明は、繊維強化プラスチックからなる輸送機器などの構造部材で、特に複雑な形状を持つ桁材を得るために好適に用いられる繊維強化プラスチック成形体の製造方法に関するものである。
近年、輸送機器産業では原油燃料の高騰のあおりを受け、燃費の向上が求められている。殊に航空機業界においては、燃費がランニングコストに直結するためエアラインからの要望が強く、各航空機メーカーでは機体の軽量化を進めるために、比剛性や比強度に優れた繊維強化プラスチック(以下、FRPと略すことがある。)の適用を進めている。
FRP製の成形体は、主としてガラス繊維、炭素繊維およびポリアミド繊維などの強化繊維からなる繊維布帛と樹脂材料からなり、前記の繊維布帛には、予めマトリックス樹脂が含浸されたプリプレグや、マトリックス樹脂を後で注入するドライ基材等があり、それぞれオートクレーブやオーブン等で加熱され、加圧されながら脱気や樹脂含浸が行われ、マトリックス樹脂が硬化一体化され製造される。
上述のような成形方法で得られたFRP製の成形体が輸送機器等に用いられる構造部材の場合は、航空機用C型断面桁材に代表されるように複雑な形状のものが多く、形状出し(以下、賦形ということがある。)技術が重要となる。金属材料で形状出しを行う場合は機械加工を行うことができるが、FRPは繊維の切断が剛性や強度低下に直結するため、安易に機械加工を適用することができず、複雑な型に強化繊維基材を沿わせて成形することが必要である。
強化繊維を複雑な型に沿わせて賦形するには、種々の課題がある。例えば、型の谷形状に繊維が上手く沿わずに、型の谷形状部分と強化繊維の間に隙間が生じ所望の形状が得られないことがある。また、強化繊維を型に沿わせる際に、力を加えすぎて繊維の屈曲や配向角度のズレが生じ、所望の物性が得られないこともある。
加えて近年の航空機業界では、比較的近距離の都市間を乗り換えること無しに直接結ぶ、リージョナル路線が増加してきたこともあり、中小型旅客機の需要が急速に高まってきている。
従来、複合材料を採用してきた大型機に比べると、中小型機を構成する構造部材の形状は相対的に複雑になることから、中小型機構造部材にFRPを用いることは、上記のような課題に加え、より技術的難易度が高くなる。
上記のような課題を解決するために、賦形対象物を覆うラバーのうち、特定の位置のラバーを厚くするなどにより、賦形時ラバーにかかる張力を局所的に高め、型への追従性を向上する方法が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、このような方法では、賦形最終段階においてラバー張力が高い部分では型と底面の間に空間が出来やすく、その空間部において賦形対象物表面に皺など欠陥が発生しやすいという課題が生じる。また、厚みを変化させたラバーは、1つの型に対して専用のラバーを用意する必要があり、多品種生産する際にはそれぞれ専用ラバーが必要となり、必要なラバー材料費、加工費、保管場所および操作性の面で不利である。
また別に、プリプレグ積層体の最内層にシート材を貼り合せ、賦形する方法が提案されている(特許文献2参照。)。この提案の目的は、賦形時に型コーナー部で発生する強化繊維の浮き上がりに起因する皺発生を抑えることであり、型側面に谷形状を持った複雑形状に十分に追従できるものではなかった。
米国特許第2011/0127698号明細書 特開平6−071763号公報
しかしながら、上記の従来賦形技術では、複雑な形状を持つ雄型に対して、強化繊維積層体を十分に沿わせることができず、賦形後プリフォームは寸法精度に欠けるものであった。
そこで本発明の目的は、上記従来の賦形技術の課題を解決しようとするものであり、皺などの欠陥が無く、雄型の形状に追従した寸法精度の良いFRP成形体の賦形を実現する繊維強化プラスチック成形体の製造方法を提供することにある。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法は、雄型の上に強化繊維積層体を配置する積層体配置工程と、前記強化繊維積層体の上から賦形ラバーを配置する賦形ラバー配置工程と、前記賦形ラバーと前記雄型との間の密閉された空間を減圧することにより、前記強化繊維積層体を雄型に密着させる賦形工程を少なくとも含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法であって、雄型は、上面部と前記上面部と略垂直の面状の側面部からなり、前記側面部に少なくとも1箇所の谷形状を有するとともに、前記強化繊維積層体の表面の一部に剛性シートを配置する工程を含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法である。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法は、雄型の上に強化繊維積層体を配置する積層体配置工程と、前記強化繊維積層体の上から賦形ラバーを配置する賦形ラバー配置工程と、前記賦形ラバーと前記雄型との間の密閉された空間を減圧することにより、前記強化繊維積層体を雄型に密着させる賦形工程を少なくとも含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法であって、前記強化繊維積層体の表面の少なくとも一部に、剛性シートに他のシート材を組み合わせて面内方向に曲げ剛性が変化する剛性シート加工体を配置する工程を含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法である。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法の好ましい態様によれば、面内方向に曲げ剛性が変化する剛性シート加工体が、
A.剛性を付与したい部位の剛性シートの厚みを厚くする、
B.剛性を付与したい部位の剛性シートを複数枚重ねる、
C.剛性を付与したい部位の剛性シートの材質をヤング率の高い材質に変える、
D.剛性を弱めたい部位の剛性シートの厚みを薄くする、および
E.剛性を弱めたい部位の剛性シートを切り抜く、
のいずれかの方法により作成されるものである。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法の好ましい態様によれば、剛性シートのヤング率が3GPa以上で、かつ、厚みが0.1〜0.5mmである。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法の好ましい態様によれば、前記の雄型は、上面部と前記上面部と略垂直の面状の側面部からなり、前記側面部に少なくとも1箇所の谷形状を有するものである。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法の好ましい態様によれば、前記の剛性シートまたは剛性シート加工体を前記の雄型側面の谷形状部分に掛からないように配置することである。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法の好ましい態様によれば、前記の剛性シートまたは剛性シート加工体を前記の強化繊維積層体と前記のラバーの間に配置することである。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法の好ましい態様によれば、前記の強化繊維積層体は、少なくとも片面に樹脂材料が付与されたドライ基材もしくはプリグレグで構成されていることである。
本発明によれば、積層体表面に皺やブリッジなどの欠陥を発生させることなく、型の谷形状にも追従した寸法精度に優れる強化繊維積層体を賦形することが可能になり、寸法精度、表面品位および機械強度に優れる繊維強化プラスチック成形体を確実に得ることができる。
図1は、本発明の繊維化プラスチック成形体の製造方法の一実施態様を説明するための概略断面図である。 図2は、図1の構成を鉛直方向から俯瞰した平面図である。 図3は、本発明で用いられる雄型を例示説明するための斜視図である。 図4は、賦形工程における強化繊維積層体の形状を例示説明するための斜視図である。
本発明者らは、強化繊維積層体の賦形時において剛性シートを適切に使用することにより、皺などの欠陥が無く、雄型の形状に追従した寸法精度の良いFRP成形体の賦形を実現できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明に係るFRP成形体の製造方法においては、強化繊維積層体を賦形する際に剛性シートを使用することにより、減圧により強化繊維積層体が雄型に接触する順序を任意に制御することができ、寸法精度の良いFRP成形体を得ることができるのである。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法は、雄型の上に強化繊維積層体を配置する積層体配置工程と、前記強化繊維積層体の上から賦形ラバーを配置する賦形ラバー配置工程と、前記賦形ラバーと前記雄型との間の密閉された空間を減圧することにより、前記強化繊維積層体を雄型に密着させる賦形工程を少なくとも含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法であって、雄型は、上面部と前記上面部と略垂直の面状の側面部からなり、前記側面部に少なくとも1箇所の谷形状を有するとともに、前記強化繊維積層体の表面の少なくとも一部に剛性シートを配置する工程を含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法である。
本発明で用いられる剛性シートの形態としては、強化繊維積層体の少なくとも片面を全て覆う形態、もしくは曲げ剛性を付与したい部位のみを部分的に覆う形態から適宜選択することができる。
強化繊維積層体の少なくとも片面を全て覆う形態をとる場合は、賦形順序を制御するために、面内方向に曲げ剛性が変化する剛性シート加工体を用いることが好ましい。面内方向に曲げ剛性を変化させる手段としては、例えば、
A.剛性を付与したい部位の剛性シートの厚みを厚くする、
B.剛性を付与したい部位の剛性シートを複数枚重ねる、
C.剛性を付与したい部位の剛性シートの材質をヤング率の高い材質に変える、
D.剛性を弱めたい部位の剛性シートの厚みを薄くする、および
E.剛性を弱めたい部位の剛性シートを切り抜く、
などの方法をとることができる。
また、剛性シート加工体は、剛性シートに他のシート材を組み合わせることもできる。このとき他のシート材は剛性シートである必要は無く、剛性シート加工体面内の少なくとも一部のヤング率が3GPa以上であることで、後述するように曲げ剛性の分布を作ることができ、欠陥が無く、精度の良いFRP成形体を得ることが可能になる。
本発明に係るFRP成形体の製造方法においては、上記の剛性シートのヤング率が3GPa以上で、かつ、厚みが0.1〜0.5mmであることが好ましい。剛性シートのようなシート形状部材の曲げ剛性は、ヤング率×(厚み)で表され、剛性シートのヤング率はASTM−D−882を用いて測定することができる。
剛性シートのヤング率が3GPa未満では、賦形順序を制御するために必要な曲げ剛性が不足することがある。また、剛性シート厚みが0.1mm未満でも同様に曲げ剛性が不足することがある。一方、剛性シートの厚みが0.5mmより大きくなると、曲げ剛性が高くなりすぎて賦形が困難になったり、賦形後の強化繊維積層体表面に剛性シートの跡が大きく残り、FRP成形品の表面意匠性が損なわれる恐れがある。したがって、剛性シートの厚みは0.1〜0.45mmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.4mmである。
剛性シートは樹脂フィルムの他、形状記憶合金や超弾性合金などの金属板、ラバーシートなど種々の材質を使用することが可能であるが、加工のしやすさの観点から樹脂フィルムを用いることが好ましく、そのヤング率の範囲は3〜5GPaが好ましい。上記のような範囲のヤング率と厚みを満たす剛性シートとしては、ポリエステルフィルム(例えば、東レ(株)製“ルミラー”(登録商標))や、ポリフェニレンスルフィドフィルム(例えば、東レ(株)製“トレリナ”(登録商標))、およびポリイミドフィルム(例えば、東レデュポン(株)製“カプトン”(登録商標))などが挙げられる。
これらの剛性シートを使用することにより、強化繊維積層体面内で曲げ剛性の分布を効率的に作ることができ、優先的に雄型に接触する部分と、遅れて雄型に接触する部分とで賦形に要する時間に差を付け、より確実に欠陥が無く、精度の良いFRP成形体を得ることが可能になる。
上記の剛性シートもしくは剛性シート加工体(以下、まとめて「剛性シート群」と記す場合がある)を用いた賦形方法は、上面部と、前記上面部と略垂直の面状の側面部からなり、前記側面部に少なくとも1箇所の谷形状を有する雄型を用いた賦形を行う際に、大きな効果をもたらす。本発明中における雄型側面の谷形状とは、賦形後に強化繊維積層体が接する側面を1枚の面として見たときに周囲より高さが低い部分や、段差形状の脇に存在する凹側に屈曲している部分を指す。
すなわち、雄型の側面部に上記のような谷形状がある場合、谷形状部分の両側にある山形状部分−山形状部分の間で強化繊維積層体がブリッジングと呼ばれる強化繊維の突っ張りを引き起こし、谷形状部分においては強化繊維積層体が型から浮いた状態となりやすく、十分に雄型に沿いきれず寸法不良や成形品物性の低下などの欠陥を引き起こす。したがって、上記の方法により強化繊維積層体が雄型に接触する順序を制御し、谷形状部分から優先的に賦形することにより、ブリッジングを抑制することができ、寸法精度の良いFRP成形体を得ることができる。
また、賦形後に型の山形状または谷形状に起因する剛性シート群の重なりや隙間が生じると予測されるような場所には、適宜剛性シート群に切れ込みを入れることにより、それらを解消することができる。また、曲げ剛性を付与したい部位のみを部分的に覆う形態をとる場合には、当該部位の剛性を高めることができれば良く、一様な曲げ剛性を持った剛性シートであってもよいし、上述したように剛性シート内で曲げ剛性を変化させた剛性シート加工体でもよい。
また、上記の剛性シート群の曲げ剛性が、上記雄型側面の谷形状に対して略並行(好ましくは±10°以内、より好ましくは±5°以内)に分布していることが好ましい。これによって、賦形順序をより正確に制御することができ、強化繊維積層体がより正確に谷形状に沿って雄型に密着され、より精度の良いFRP成形体の賦形が可能になる。
また、上記の剛性シート群の曲げ剛性が高い部分を上記雄型側面の谷形状部分に掛からないように配置することが好ましい。すなわち、雄型側面の山形状部分に密着する部分の強化繊維積層体の曲げ剛性を周囲の曲げ剛性より高くすることにより、山形状部分の賦形順序を意図的に遅らせることができ、谷形状部分から優先的に賦形することが可能となるので、ブリッジングを抑制し、寸法精度の良いFRP成形体を得ることができる。
上記の剛性シート群は、前記の強化繊維積層体と上記の賦形ラバーの間に配置することが好ましい。すなわち強化繊維積層体の上面(外側表面)に剛性シート群を配置することにより、強化繊維積層体内面の雄型への追従を邪魔せずに、寸法精度良くFRP成形体を賦形することができる。
ただし、剛性シート群を強化繊維積層体の下面(内側表面)に配置する場合でも、本発明の賦形順序を制御する効果を得ることができる。剛性シート群を強化繊維積層体の下面に配置する場合、賦形後に剛性シート群の形状が強化繊維積層体に転写され、表面品位の低下が懸念されるので、剛性シート群の厚みが薄いものを使用したり、剛性シート群が賦形後に密着する部分の雄型の表面を剛性シート群の厚み分だけ切削し、剛性シート群の端部の段差を解消するような加工を施すことが望ましい。
また、強化繊維積層体と剛性シート群を、2枚の賦形ラバーで上下から挟み込んでから雄型の上面に配置し、賦形する形態を採ることもできる。2枚の賦形ラバーで強化繊維積層体を挟み込んだ後、2枚の賦形ラバー間を吸引することにより、強化繊維積層体の面外方向から面圧を加えることが可能となり、賦形時の強化繊維の浮き上がりを押さえることができ、より表面品位に優れるFRP成形体を得ることが可能になる。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法においては、上記の賦形工程の前後に前記の強化繊維積層体を加熱する工程および前記強化繊維積層体を冷却する工程を含めることができる。強化繊維積層体が後述のドライ基材である場合は、表面に付与されている樹脂材料が分解しない温度で加熱し、また、強化繊維積層体が後述のプリプレグの場合は、マトリックス樹脂の硬化や分解が過度に進行しない温度で加熱することにより、樹脂材料やマトリックス樹脂を軟化させ、賦形工程に要する時間の短縮や賦形後の強化繊維積層体の品位を向上させることができる。上記の加熱温度は、40℃〜120℃が好ましく、より好ましくは50℃〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。
加熱機構としては、熱媒配管や電気ヒーターをツール板や雄型内に配置する手段や、装置全体を加熱炉やIRヒーターで加熱する手段等をとることができる。このとき、賦形ラバーの材質は前記の加熱により永久変形しないことが好ましい。賦形ラバーの材質としては、具体的には、ネオプレン、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴムおよびフッ素ゴムなどが挙げられるが、加熱や真空吸引の際に所望形状に賦形でき、かつ、繰り返し使用できるものであればこれらに限らない。
また、上記の賦形工程においては、賦形ラバーと雄型の間の密閉された空間を減圧する手段として、真空ポンプを用いることができる。この賦形工程は、真空吸引により発生する力と賦形ラバーの張力が釣り合うところで終了するので、賦形が終了した時点で雄型と強化繊維積層体の密着すべき側面の密着高さは、少なくとも成形後に製品として使用するラインまで密着していることが望ましい。さらに、強化繊維積層体を賦形して得られる成形品の形態安定性やコンシステンシーを考慮すると、前記の強化繊維積層体の全面が雄型側面に密着していることが好ましい。したがって、賦形ラバーの張力は、上記のとおり前記の強化繊維積層体の全面が雄型側面に密着できる範囲であることが好ましい。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法において、賦形後に強化繊維積層体を冷却する工程を含める場合、後の工程で一旦雄型から強化繊維積層体を脱型し、別の型に乗せかえるときなどの強化繊維積層体の戻り(いわゆる、スプリングバック)を抑えることができるが、この脱型操作を必要としない場合は、冷却を行わずにそのまま後の加熱成形工程を行うこともできる。
本発明で用いられる強化繊維積層体としては、少なくとも片面に樹脂材料が付与されたドライ基材、もしくはプリグレグで構成されている形態のものを挙げることができる。ドライ基材を用いる場合は、上記の賦形工程の後に樹脂注入と加熱工程を行うことにより、また、プリプレグを用いる場合は、オートクレーブを用いる加熱工程を行うことにより、FRP成形体を得ることができる。
本発明で用いられる強化繊維積層体を構成する強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維などが挙げられる。中でも、炭素繊維は、比強度および非弾性率に優れ、さらに耐吸水性にも優れているので、特に好ましく用いられる。強化繊維はその形態としては、織物、編み物、組み物、不織布および一方向に引き揃えられた強化繊維シートなどが挙げられる。
ドライ基材に付与されている樹脂材料は、賦形後の強化繊維積層体同士の結着剤として機能させる目的から熱可塑性樹脂を主成分とすることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、およびフェノキシ樹脂から少なくとも1種であることが好ましく、それらの中でもポリアミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂がとりわけ好ましく用いられる。また、樹脂材料の形態としては、繊維、フィルムおよび粒子状等が挙げられるが、中でも粒子状であることが好ましい。
また、プリプレグに含浸されている「マトリックス樹脂」は、熱硬化性樹脂であっても熱可塑性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂の場合、その主材は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂およびシリコン樹脂などを例示することができ、これらは1種類だけであってもよく、あるいは2種類以上を混合して使用することもできる。これら熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂に採用する場合、前記の熱硬化性樹脂に適切な硬化剤や反応促進剤を添加することが可能である。
また、熱可塑性樹脂の場合、その主材は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、PPS樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、およびポリイミド樹脂などを例示することができ、これらは1種類だけであってもよく、あるいは2種類以上を混合して使用することもできる。これら熱可塑性樹脂は、単独でも、混合物でも、また共重合体であっても良い。混合物の場合には、相溶化剤を併用することができる。さらに、難燃剤として、臭素系難燃剤、シリコン系難燃剤、赤燐などを加えることができる。
プリプレグに用いられるマトリックス樹脂と、ドライ基材を複数枚積層した積層体に注入されるマトリックス樹脂は、同一であっても良く、特に区別するものではない。
次に、本発明の一実施態様を図1〜図4を用いて説明する。
図1は、本発明の繊維化プラスチック成形体の製造方法の一実施態様を説明するための概略断面図であり、図2は、図1の構成を鉛直方向から俯瞰した平面図である。
まず、図1と2において、雄型5の上面に強化繊維積層体1および剛性シート2を配置する。図1では、雄型5の上面に直接強化繊維積層体1を配置し、その上面に剛性シート2を配置する形態を示しているが、賦形後の脱型を容易にする目的で強化繊維積層体1の上下に離型フィルムや離型布(図示せず。)を配置することもできる。
次に、賦形ラバー3で前記の雄型5、強化繊維積層体1および剛性シート2を覆い、ツール板4上に取り付けられたシール材6と前記の賦形ラバー3を密着させて、賦形ラバー3、ツール板4およびシール材6で密閉空間を形成する。
次に、上記の賦形ラバー3、ツール板4およびシール材6で形成された密閉空間中の空気を、吸引口7から排出することにより、本発明の繊維化プラスチック成形体を製造することができる。
図3は、本発明で用いられる雄型を例示説明するための斜視図である。
図3において、雄型5は側面に2箇所の雄型側面山形状部分11、およびそれらに挟まれる形で1箇所の雄型側面谷形状部分12を有する代表的な形状の雄型である。なお本発明はこの形状に限らず、側面に複数の谷形状部分を持つ雄型にも適用することができる。
また、図4(a)〜(c)は、賦形工程における強化繊維積層体の形状を例示説明するための斜視図である。次に、その賦形工程における強化繊維積層体の形状について、図4と図3を用いて説明する。
前記の図1のように、上記の賦形ラバー3、ツール板4およびシール材6で形成された密閉空間中の空気を、吸引口7から排出すると、強化繊維積層体1は、図4(a)〜(c)(および図3)に示されるように、雄型5の雄型上面8から、雄型肩部9、および雄型側面10の順に、賦形ラバー3により押さえつけられてゆき、最終的に雄型5の形状に賦形される。図4(b)は、その賦形工程の途中の強化繊維積層体1の形状を示すものであるが、雄型5の雄型側面山形状部分11に合わせて配置された剛性シート2の働きによって、雄型5の雄型側面谷形状部分12に対応する部分から優先的に賦形されていることを示している。この効果により、雄型5の雄型側面谷形状部分12に対応する部位の賦形後、強化繊維積層体1に皺やブリッジングなどの欠陥が発生せず、寸法精度の良好な成形品が得られる。
最後に、強化繊維積層体1としてドライ基材を用いる場合は、樹脂注入と加熱成形工程を行い、また、プリプレグを用いる場合は、オートクレーブを使用した加熱成形工程を行うことにより、FRP成形体を得ることができる。
次に、本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法について、実施例に基づいて詳細に説明する。
[実施例1]
(積層体配置工程)
まず、図1に示すように、ツール板4の面上に雄型5(材質:ポリウレタン、寸法:最大幅300mm、最小幅250mm、長さ600mm、高さ250mm、コーナー半径5mm)を配置した。次に、雄型5上に離型フィルム(東レ製“トヨフロン”(登録商標)、寸法(長さ600mm、幅600mm、厚さ0.05mm))、表面に粒子状樹脂を有する基材(東レ製“トレカ”(登録商標)、クロス:炭素繊維T800S、目付200g/m)を48枚擬似等方積層した強化繊維積層体1(寸法:長さ550mm、幅500mm)、および離型布(リッチモンド社製B4444、長さ600mm、幅600mm、厚さ0.05mm)を順に配置した。
(剛性シート配置工程)
図2に示すように、剛性シート2(東レ製“ルミラー”(登録商標)、寸法:長さ150mm、幅600mm、厚さ0.35mm)を、雄型5の雄型側面山形状部分11に沿うように、2箇所配置した。
(賦形ラバー配置工程)
上記の強化繊維積層体1および剛性シート2の上から、賦形ラバー3(クレハエラストマー社製SH950T)を配置し、賦形ラバー3、ツール板4およびシール材6で密閉空間を形成した。
(賦形工程)
密閉空間中の空気を、真空ポンプを使用してツール板4上に設けた吸気口7より排出し、強化繊維積層体1を雄型5に密着させた。その後、これら一連の構成部材を加熱炉に入れ80℃の温度で2時間保持した後、30℃以下まで冷却してから脱型した。賦形された強化繊維積層体は、皺やブリッジなどの品質不良が見られなかった。このようにして得られた強化繊維積層体に液状エポキシ樹脂を注入し、加熱硬化おこなうことにより、寸法精度、表面品位および機械強度に優れる繊維強化プラスチック成形体を得ることができた。
[実施例2]
実施例1に記載の剛性シート配置工程において、剛性シートa(寸法:長さ600mm、幅600mm)を配置した後、雄型5の雄型側面山形状部分11に沿う位置に剛性シートb(寸法:長さ150mm、幅600mm)を2箇所配置したこと以外は、実施例1と同様にして賦形をおこなった。賦形された強化繊維積層体は、皺やブリッジなどの品質不良が見られなかった。このようにして得られた強化繊維積層体に液状エポキシ樹脂を注入し、加熱硬化おこなうことにより、寸法精度、表面品位および機械強度に優れる繊維強化プラスチック成形体を得ることができた。
[比較例1]
実施例1に記載の剛性シート配置工程を除いたこと以外は、実施例1と同様に賦形をおこなった。賦形された強化繊維積層体の内面コーナー部には、型の山形状部分―山形状部分の間にブリッジングに起因する皺が発生していた。このようにして得られた強化繊維積層体に液状エポキシ樹脂を注入し、加熱硬化おこなったが、実施例1により得られた繊維強化プラスチック成形体と比較し、寸法精度、表面品位および機械強度が劣る繊維強化プラスチック成形体が得られた。
[比較例2]
実施例2に記載の剛性シートbを配置しなかったこと以外は、実施例2と同様に賦形をおこなった。賦形された強化繊維積層体の内面コーナー部には、型の山形状部分―山形状部分の間にブリッジングに起因する皺が発生していた。このようにして得られた強化繊維積層体に液状エポキシ樹脂を注入し、加熱硬化おこなったが、実施例1により得られた繊維強化プラスチック成形体と比較し、寸法精度、表面品位および機械強度が劣る繊維強化プラスチック成形体が得られた。
本発明の繊維強化プラスチック成形体の製造方法は、型側面に谷形状を有する雄型を用いた、あらゆるFRPの成形(例えば、自動車、航空機、産業用途の型材および補強部材としてのスティフナや桁材。)に適用することができ、特に複雑な形状を持つ桁材の成形に好適なものである。
1 強化繊維積層体
2 剛性シート
3 賦形ラバー
4 ツール板
5 雄型
6 シール材
7 吸引口
8 雄型上面
9 雄型肩部
10 雄型側面
11 雄型側面山形状部分
12 雄型側面谷形状部分

Claims (8)

  1. 雄型の上に強化繊維積層体を配置する積層体配置工程と、前記強化繊維積層体の上から賦形ラバーを配置する賦形ラバー配置工程と、前記賦形ラバーと前記雄型との間の密閉された空間を減圧することにより、前記強化繊維積層体を雄型に密着させる賦形工程を少なくとも含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法であって、雄型は、上面部と前記上面部と略垂直の面状の側面部からなり、前記側面部に少なくとも1箇所の谷形状を有するとともに、前記強化繊維積層体の表面の一部に剛性シートを配置する工程を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  2. 雄型の上に強化繊維積層体を配置する積層体配置工程と、前記強化繊維積層体の上から賦形ラバーを配置する賦形ラバー配置工程と、前記賦形ラバーと前記雄型との間の密閉された空間を減圧することにより、前記強化繊維積層体を雄型に密着させる賦形工程を少なくとも含む繊維強化プラスチック成形体の製造方法であって、前記強化繊維積層体の表面の少なくとも一部に、剛性シートに他のシート材を組み合わせて面内方向に曲げ剛性が変化する剛性シート加工体を配置する工程を含むことを特徴とする繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  3. 面内方向に曲げ剛性が変化する剛性シート加工体が、
    A.剛性を付与したい部位の剛性シートの厚みを厚くする、
    B.剛性を付与したい部位の剛性シートを複数枚重ねる、
    C.剛性を付与したい部位の剛性シートの材質をヤング率の高い材質に変える、
    D.剛性を弱めたい部位の剛性シートの厚みを薄くする、および
    E.剛性を弱めたい部位の剛性シートを切り抜く、
    のいずれかの方法により作成されることを特徴とする請求項2に記載の繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  4. 剛性シートのヤング率が3GPa以上で、かつ、厚みが0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  5. 雄型は、上面部と前記上面部と略垂直の面状の側面部からなり、前記側面部に少なくとも1箇所の谷形状を有することを特徴とする請求項のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  6. 剛性シートまたは剛性シート加工体を雄型側面の谷形状部分に掛からないように配置することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  7. 剛性シートまたは剛性シート加工体を、強化繊維積層体と賦形ラバーの間に配置することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
  8. 強化繊維積層体は、少なくとも片面に樹脂材料が付与されたドライ基材もしくはプリグレグで構成されていることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化プラスチック成形体の製造方法。
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