本発明の実施形態に係る後処理装置として、画像形成装置によって画像が印刷されたシート(用紙)に後処理を施すフィニッシャーを挙げる。
図1に示される画像形成装置1は、用紙に画像を印刷するプリンター2、印刷後の用紙に後処理を施すフィニッシャー3、および原稿シートから画像を光学的に読み取るイメージスキャナー4を一体化したMFPである。画像形成装置1のユーザーは、画像形成装置1をコピー機、プリンター、ファクシミリ機、ネットワークスキャナーなどとして使用することができる。
画像形成装置1は、フィニッシャー3の前方側に排紙トレイ36を配置したコンパクトタイプである。プリンター2の上にフィニッシャー3が配置され、さらにその上にフラットベッド型のイメージスキャナー4が配置されている。フィニッシャー3とイメージスキャナー4との間には、外部に開放された空間が存在する。プリンター2は、イメージスキャナー4の前縁よりも前方に張り出しており、プリンター2のこの張り出した部分に排紙トレイ36と操作パネル6とが配置されている。画像形成装置1の前面(正面)に向かって左側に排紙トレイ36があり、右側に操作パネル6がある。
なお、プリンター2は、印刷に使用する用紙を収容する2段構成の引出し式の用紙収納部2Aを有している。イメージスキャナー4には、原稿シートをイメージスキャナー4のプラテンガラス上に搬送するADF(Auto Document Feeder)5が取り付けられている。また、操作パネル6は、画面の表示およびタッチ入力の検出を担うタッチパネルディスプレイを備えている。
図2のように、画像形成装置1は、メインコントローラー11、プリントコントローラー12および後処理コントローラー13を備える。これらコントローラーは、それぞれが受け持つ制御のためのプログラムを実行するコンピューターとしてのCPU(Central Processing Unit)をそれぞれ有する。
メインコントローラー11は、画像形成装置1の全体の制御を受け持つ。メインコントローラー11は、ADF5、イメージスキャナー4、操作パネル6、通信インタフェース7、ストレージ8、およびプリントコントローラー12のそれぞれと通信する。メインコントローラー11は、操作パネル6を用いてユーザーが行なう操作または通信インタフェース7を介した外部機器からのアクセスによるジョブの投入を受け付け、ジョブに応じた指示を制御対象に与える。
プリントコントローラー12は、プリンター2に備わるプリンターエンジン20および用紙搬送機構21の制御を受け持つ。コピー、プリント、ファクシミリ受信といった印刷を伴うジョブ(印刷ジョブ)において、プリントコントローラー12は、メインコントローラー11からの指示を受けてプリンター2に印刷動作を行なわせる。その際、プリントコントローラー12は、後処理コントローラー13にフィニッシャー3の制御に必要な情報(用紙サイズ、印刷枚数、印刷部数、後処理のモードなど)を与える。
後処理コントローラー13は、フィニッシャー3に備わる整合機構136、排出機構137、プレスタック機構138、およびステープラー32の制御を受け持つ。後処理コントローラー13は、印刷後の用紙をこれに整合処理を施して排出する一連の動作をプリンター2の動作に同期して行なうように、プリントコントローラー12と連携してフィニッシャー3を制御する。
図3は、画像形成装置1における用紙の搬送に関わる部分の構成を示している。図3では、フィニッシャー3からみた前段の装置であるプリンター2の内部の構造が模式的に描かれている。図中の一点鎖線および二点鎖線は、用紙9(各種のサイズの用紙を総称)の搬送の経路を表わしている。
フィニッシャー3の下に配置されたプリンターエンジン20は、電子写真法によってカラーまたはモノクロの画像を印刷する。プリンターエンジン20は、帯電、露光、および現像を行なう一連の電子写真プロセスによってトナー像を形成し、中間転写ベルト201の外周面にトナー像を一次転写する。
カラー印刷では、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色のトナー像が、1つに重なるように一次転写され、モノクロ印刷では、例えばブラックのトナー像が一次転写される。一次転写されたトナー像は、二次転写ローラー61の配置された二次転写位置へ中間転写ベルト201によって運ばれ、用紙搬送機構21によって搬送される用紙9に二次転写される。
用紙搬送機構21は、搬送用の各種のローラー、これらローラーを回転させるモーター、回転力の伝達の断続のためのクラッチ、搬送切替え爪といった可動部材を作動させるソレノイドなどから構成される。用紙搬送機構21によって、次のように用紙9が搬送される。
プリンターエンジン20の下方に位置する用紙収納部2Aの2つの給紙カセット41,42の一方、またはプリンター2のハウジングの外面に取り付けられた可動式の手指しトレイ43から、給紙ローラー51,52,53および搬送ローラー54によって、用紙収納部2Aの上方のレジスト位置へ向けて用紙9が搬送される。レジスト位置は、搬送のタイミングを調整するためのレジストローラー55が配置された位置である。
レジストローラー55によって、用紙9は二次転写位置へ向けて上方へ送り出される。二次転写位置でトナー像が転写された用紙9は、定着ローラー63の配置された定着位置へ二次転写ローラー61によって送られる。定着位置を通過するとき、加熱と加圧とによってトナー像が用紙9に定着する。
片面印刷の場合、定着位置を通過した用紙9は、搬送路45を通るように搬送され、排紙ローラー56によってフィニッシャー3へ排出される。
両面印刷の場合、第1面の印刷を終えた状態の用紙9が、搬送路45から分岐した搬送路46を通るように搬送され、反転ローラー57によって表裏反転路47へ向けてスイッチバック搬送される。そして、用紙9は、表裏反転路47上の搬送ローラー58,59によってレジスト位置へ戻される。表裏反転路47を通過することにより、第2面が印刷面になるように用紙9の表裏が反転する。その後、二次転写位置および定着位置を通過して第2面の印刷を終えた用紙9は、搬送路45を通るように搬送されて、排紙ローラー56によってフィニッシャー3へ排出される。
排紙ローラー56によってプリンター2から排出された用紙9は、フィニッシャー3によって排紙トレイ36に排出される。これにより、ユーザーは、画像形成装置1による印刷動作の結果物として用紙9を受け取ることができる。
用紙搬送機構21は、用紙センサー71,72,73,74を有する。これら用紙センサー71,72,73,74は、それぞれが配置された位置(センサー位置)における用紙の有無を例えば光学的に検出する。用紙センサー71は、レジストローラー55の上流側の近傍に配置され、用紙センサー72は、搬送ローラー54の下流側の近傍に配置されている。用紙センサー73は、定着ローラー63と排紙ローラー56との間に配置され、用紙センサー74は、表裏反転路47上の搬送ローラー58の下流側の近傍に配置されている。用紙センサー71,72,73,74の出力する検出信号に基づいて、プリントコントローラー12によって搬送が制御される。
画像形成装置1に投入される印刷ジョブの多くは、複数の用紙9を使用する。言い換えれば、多くの印刷ジョブの印刷枚数は複数である。例えば複数枚の原稿シートのそれぞれの片面の画像をコピーする片面印刷ジョブでは、原稿シートと同じ枚数の用紙9を使用する。複数の用紙9を使用する印刷ジョブが投入された場合、用紙搬送機構21は、給紙カセット41,42の一方また手指しトレイ43から次々に用紙9を引き出して搬送する。この場合、画像の印刷された複数の用紙9が1枚ずつ順々にフィニッシャー3に排出される。
さて、画像形成装置1のフィニッシャー3は、基本的には、印刷ジョブごとに排紙トレイ36に用紙9を排出する。すなわち、印刷枚数が2以上である印刷ジョブでは、印刷枚数分の用紙9が搬入されるのを待ち、搬入された印刷枚数分の用紙9を一括に排紙トレイ36に排出する。また、印刷枚数が1である印刷ジョブでは、1枚の用紙9が搬入されると、直ちにこの用紙9を排紙トレイ36に排出する。
ただし、このように印刷ジョブごとに排出する場合の他に、1つの印刷ジョブについて排紙トレイ36への排出を複数回行なう場合がある。すなわち、印刷部数が2以上である印刷ジョブでは、各部の印刷枚数分の用紙9が搬入されるごとに、フィニッシャー3は排紙トレイ36への排出を行なう。また、印刷部数が1であっても、印刷枚数が多数であって1回の排出の許容枚数(例えば200枚)を超える場合、許容枚数分の用紙9が搬入された段階で、フィニッシャー3はいったん許容枚数分の用紙9を排紙トレイ36に排出する。
本実施形態のフィニッシャー3は、印刷後の処理として、搬入された用紙9に整合処理を施す。また、印刷ジョブの設定でステープルモードが選択された場合には、フィニッシャー3は、整合処理を施した複数の用紙9からなるシート組にこれを綴じるステープル処理を施す。整合処理およびステープル処理を施すための機構をフィニッシャー3は備えている。
以下、フィニッシャー3の構成、通常時の動作、および特徴的な動作である異常時の動作を順に説明する。
図4はフィニッシャー3を左前方の斜め上からみた斜視図であり、図5はフィニッシャー3の要部の上面図である。図6(A)は搬入時のフィニッシャー3の要部の状態を示す正面図であり、図6(B)は排出時のフィニッシャー3の要部の状態を示す正面図である。
フィニッシャー3は、図4〜図6に示されるように、整合トレイ33、プレスタック板35、先端整合棒301、後端整合棒302、手前整合板303、奥整合板304、押出し板305、押えレバー307、一対の保持爪308およびステープラー32を有する。
整合トレイ33は、プリンター2から搬入される用紙9を支持するシート台である。この整合トレイ33の上に、プリンター2から送り出された用紙9(図4〜6では不図示)が自由落下する。プリンター2からの送出しの方向(搬入方向)M1は、図5または図6における右から左へ向かう方向である。
整合トレイ33は、用紙9が搬入されるのを待つとき、図4および図6(A)に示されるように、搬入方向M1の上流側(右側)が下流側(左側)よりも低くなるように傾斜している。これにより、落下して整合トレイ33に載った後に用紙9が下流側へ惰性で進むのが抑えられ、用紙9の搬入方向M1の位置のばらつきが小さくなるので、整合処理における先端整合棒301の移動距離を最小限にすることができる。
整合トレイ33が傾斜している状態(これを降下状態という)で、先端整合棒301を用いて“FD方向の整合動作”が行なわれるとともに、手前整合板303と奥整合板304とを用いて“CD方向の整合動作”が行なわれる。FD方向は、図5に示されるとおり、用紙9の搬入方向M1と平行な方向であり、CD方向は、整合トレイ33の上面に沿いかつFD方向と直交する方向である。
FD方向の整合動作は、用紙9の落下する領域の外側で待機している先端整合棒301を、用紙9の後端が壁面(または後端整合棒302)にちょうど当接する位置まで用紙9を押すように、搬入方向M1の上流側へ移動させる動作である。CD方向の整合動作は、用紙9の落下する領域のCD方向の両側で待機している手前整合板303と奥整合板304とを、これらの間の距離が用紙9のCD方向の長さとなるように近づける動作である。以下では、FD方向の整合動作とCD方向の整合動作とを総称して“整合動作”ということがある。
整合動作は、整合トレイ33の上に用紙9が載るごとに行なわれる。つまり、1回の排出の対象がシート組ではなく1枚の用紙9である場合にも、整合動作が行なわれる。整合動作によって同じサイズの用紙9は整合トレイ33上の同じ位置に位置決めされる。したがって、1回の排出の対象が3枚以上の用紙9で構成されるシート組である場合、最後の用紙9が整合トレイ33の上に載る時点で、既に載っている複数の用紙9の位置が揃っている。そして、最後の用紙9が載った後の整合動作が終わった時点で、シート組について施すべき整合処理が完了する。
排出の対象(シート組または1枚の用紙9)を排紙トレイ36に排出するとき、図6(B)のように、整合トレイ33は、降下状態における低い側(右側)を上昇させることによって、対象の支持面(上面)が水平になる状態(これを上昇状態という)とされる。上昇状態にすることで、支持面の全体が排紙トレイ36よりも高くなり、押出しによる排出が可能になる。
排紙トレイ36への排出には、押出し板305が用いられる。押出し板305は、整合トレイ33の奥側(背面側)の端縁に近いホームボジションから手前(前面側)へ向かってCD方向に移動する。これにより、整合トレイ33上の用紙9が整合トレイ33から押し出されて排紙トレイ36に排出される。
プレスタック板35は、“プレスタック”と呼称する処理を行なうための構成要素である。プレスタックとは、整合トレイ33の上に新たに用紙9を載せてはいけない期間において、プリンター2から搬入される用紙9を整合トレイ33の上流で待機させておく処理である。整合トレイ33の上に新たに用紙9を載せてはいけない期間は、排出の対象が整合トレイ33の上に存在する期間および排出が終わってから整合トレイ33が降下状態に戻るまでの期間である。
プレスタックを行なう必要のある状況はしばしば起こる。例えば、画像形成装置1が接続されるネットワーク上のパーソナルコンピューターから次々に印刷ジョブが投入されたり、印刷ジョブの実行中にファクシミリ受信が行なわれてその受信データを印刷する印刷ジョブが実行待ちになったりする状況が挙げられる。このような状況では、実行中の印刷ジョブが終わると、直ちに次の印刷ジョブの実行が開始される。また、印刷部数が複数である印刷ジョブにおいても、1つの部に対応する用紙9が排出されていないときに、次の部に対応する用紙9がフィニッシャー3に搬入されるという状況が生じる。
プレスタック板35は、プレスタックを行なわない期間において、図4および図6(A)に示されるように、整合トレイ33と上面どうしがほぼ平坦に並ぶように(いわゆる面一となるように)配置される。この状態(これを退避状態という)のプレスタック板35は、プリンター2から整合トレイ33へ移動する用紙9の進行を妨げない。
一方、プレスタックを行なう期間において、プレスタック板35は、図6(B)に示されるとおり、プリンター2から整合トレイ33へ移動する用紙9が斜め上方に向かうように搬送空間内に突出する状態(これを作用状態という)とされる。プレスタック板35が搬送空間内に突出する(高さ)は可変であり、移動する後端整合棒302の位置に応じて調整することができる。
プレスタック板35を用いてプレスタックを行なう機能がフィニッシャー3に備わっているので、フィニッシャー3内に未排出の用紙9が存在するときに、画像形成装置1が印刷動作および用紙9の搬送を停止してフィニッシャー3による用紙9の排出を待つ必要がない。それは、フィニッシャー3がプリンター2から用紙9を受け入れることができるからである。フィニッシャー3による用紙9の排出中に印刷動作を行なうことで、排出中にわたって印刷動作を停止するのと比べて、画像形成装置1による印刷物の出力の生産性が高まる。
なお、図4に示される押えレバー307は、プレスタック板35によって支持された用紙9に当接してその位置ずれを抑える。図4〜6に示される保持爪308は、整合トレイ33が上昇状態に移行するときに、整合トレイ33の上の用紙9をその位置ずれを防ぐために上から押さえる。また、ステープラー32は、シート組にステープル処理を施す機能をフィニッシャー3に付加するユニットである。
図7のブロック図はフィニッシャー3の全体の概略の構成を示している。
用紙9に整合処理を施す整合機構136は、整合トレイ33、先端整合棒301、後端整合棒302、手前整合板303、奥整合板304および整合駆動部336から構成される。整合駆動部336は、後処理コントローラー13からの指示に従って、先端整合棒301、後端整合棒302および手前整合板303を駆動するとともに、整合トレイ33を昇降させる。
用紙9を排紙トレイ36に押し出す排出機構137は、押出し板305、保持爪308および排出駆動部337から構成される。排出駆動部337は、後処理コントローラー13からの指示に従って押出し板305および保持爪308を駆動する。本実施形態では、整合機構136の奥整合板304が、押出し板305に押されて手前側へ移動し、押出し板305による押圧が無くなると付勢部材の力によって奥側へ移動するように設けられている。このため、排出駆動部337は、整合動作に際して、奥整合板304を手前側へ移動させるために押出し板305を駆動する。
プレスタックのためのプレスタック機構138は、プレスタック板35、押えレバー307、およびプレスタック駆動部338から構成される。プレスタック駆動部338は、後処理コントローラー13からの指示に従って、プレスタック板35および押えレバー307を駆動する。
後処理コントローラー13は、CPU131、RAM(Random Access Memory)132、ROM(Read Only Memory)133、およびプリントコントローラー12との通信のためのインタフェース134を有する。ROM133には、フィニッシャー3を制御するプログラムが記憶されている。このプログラムは、適時にRAM132にロードされ、CPU131によって実行される。後処理コントローラー13は、搬入される用紙9のサイズ、搬送の進行状況、エラーの発生の有無といったフィニッシャー3の制御に必要な情報D1を、プリントコントローラー12から取得する。
なお、プリントコントローラー12は、プリンター2を制御するプログラムを実行するCPU121、RAM122、ROM123および後処理コントローラー13との通信のためのインタフェース124を有する。CPU121に用紙センサー71〜74の出力信号が入力される。
図8は後処理コントローラー13の機能構成を示している。後処理コントローラー13は、検知部141、可否判定部142、第1制御部143、第2制御部144、第3制御部145、シート判定部146、および取得部147を有している。これら要素は、CPU131がフィニッシャー3の制御のためのプログラムを実行することによって実現される機能要素である。
検知部141は、プリントコントローラー12からの通知を受けることによって、異常シートが搬入されることを検知する。異常シートは、印刷ジョブの設定されたサイズとは異なるサイズをもつサイズエラー用紙またはプリンター2内で設定どおりに搬送されなかったジャム用紙である。
可否判定部142は、検知部141によって異常シートの搬入されることが検知されときに、異常シートが搬入されるまでに、プレスタック機構138を異常シートの進行を妨げない退避状態から整合トレイ33の上流で異常シートを待機させる作用状態へ移行させることが可能であるかどうかを判定する。
第1制御部143は、移行させることが可能であると可否判定部142によって判定された場合に、異常シートを整合トレイ33の上流で待機させるように、プレスタック機構138を制御する。
第2制御部144は、移行させることが可能ではないと可否判定部によって判定された場合に、異常シートが搬入されるときに退避状態に保つようにプレスタック機構138を制御する。
第3制御部145は、適正な用紙とサイズエラー用紙とが重なって整合トレイ33に載っている場合に、取得部147によって取得された当該適正な用紙および当該サイズエラー用紙の搬送方向の長さどうしを比較し、長い方の長さを隔てた状態で先端整合棒301と後端整合棒302とが一体に移動するように整合機構136を制御する。
シート判定部146は、異常シートが前記排出機構による排出が可能なシートであるかどうかを判定する。また、取得部147は、フィニッシャー3に搬入される用紙9の搬送方向M1の長さをプリントコントローラー12から取得する。
図9はフィニッシャー3の通常時の動作を示す模式図であり、図10は図9に対応するタイミングチャートである。図9では、次々に搬入される計4枚の用紙9a,9b,9c,9dを2枚ずつ2つの組に分けて排出する場合が例に挙げられ、一連の動作が[1]〜[8]の段階に分けられている。そして、各段階におけるフィニッシャー3の要部の状態が左右に並ぶ2つの図によって示されている。左側の図は簡略化された正面図であり、右側の図は簡略化された斜視図である。
以下の説明において、整合トレイ33を降下状態から上昇状態に移行させることを「整合トレイ33を上昇させる」といい、整合トレイ33を上昇状態から降下状態に移行させることを「整合トレイ33を降下させる」ということがある。
また、プレスタック板35を退避状態から作用状態に移行させることを「プレスタック板35を突出させる」といい、プレスタック板35を作用状態から退避状態に移行させることを「プレスタック板35を退避させる」ということがある。
通常時において、すなわちプリンター2から印刷ジョブの設定どおりのサイズの用紙9が設定どおり正しいタイミングで搬入される状況において、フィニッシャー3は次の[1]〜[8]の動作を行なう。
[1] 静止しているフィニッシャー3に、プリンター2から第1組の1枚目の用紙9aが搬入される。搬入された用紙9aは、降下状態の整合トレイ33上に自由落下する。このとき、用紙9aの後端部分は退避状態のプレスタック板35の上に載る。整合トレイ33の上に用紙9aが載ると、フィニッシャー3は、上述のとおり整合動作を行なう。
[2] プリンター2から第1組の2枚目の用紙9bが搬入されて1枚目の用紙9aの上に積み重なる。これによってシート組91が得られる。フィニッシャー3は、整合動作を行なう。
[3] 整合動作が完了した後、または整合動作と並行して、フィニッシャー3は、整合トレイ33とプレスタック板35とに跨っているシート組91を、その全体が整合トレイ33に載るように定められた排出待機位置まで後端整合棒302によってFD方向に移動させる。このとき、フィニッシャー3は、先端整合棒301をそれと後端整合棒302とでシート組91を挟んだ状態を保つように後端整合棒302と一体的に移動させる。これによって、シート組91の整合処理後の状態が乱れ難くなる。
このようにシート組91をFD方向に移動させる動作(これをFD搬送という)が行なわれているとき、第2組の1枚目(通算の3枚目)の用紙9cが搬入される。この用紙9cが整合トレイ33の上のシート組91に載らないようにするため、プレスタックを行なう必要がある。
なお、ステープルモードの場合、フィニッシャー3は、シート組91の整合処理が完了した後、手前整合板303と奥整合板304とで挟んだまま、シート組91をCD方向における綴じるのに適した位置までCD方向に移動させる。次に、先端整合棒301と後端整合棒302とで挟んだまま、シート組91をFD方向に移動させてステープラー32に位置決めする。そして、ステープラー32を作動させ、綴じられたシート組91をFD方向における排出に適した位置まで戻すためのFD搬送を行なう。
[4] FD搬送が完了した後、フィニッシャー3は、整合トレイ33を上昇させるとともに、プレスタック板35を突出させる。このとき、プレスタック板35から用紙9cの先端が突出してシート組91と当接する場合、用紙9cの先端部は整合トレイ33の上昇に追従して上昇する。
[5] 整合トレイ33が上昇状態になって排出の準備が整った後、フィニッシャー3は、押出し板305を奥側から手前側へ移動させてシート組91を排紙トレイ36に押し出す。その際、プレスタック板35で支持されている用紙9cが移動中のシート組91または押出し板305に触れたとしても用紙9cがずれないようにするため、押えレバー307で用紙9cをプレスタック板35に押し当てておく。
[6] シート組91の排出が完了した後、フィニッシャー3は、押出し板305を手前側から奥側へ移動させてホームポジションに復帰させる。押出し板305の移動中に搬入された第2組の2枚目(通算の4枚目)の用紙9dは、作用状態のプレスタック板35に支持されている用紙9cの上に重なる。
[7] 押出し板305がホームポジションに復帰した後、フィニッシャー3は、整合トレイ33を降下させ、これと並行してプレスタック板35を退避させる。プレスタック板35が退避状態になることで、プレスタック板35に支持されていた用紙9c,9dが整合トレイ33の上に載る。こうして得られた第2のシート組92は、[2]の段階のシート組91と同様に、整合トレイ33とプレスタック板35とに跨る。
[8] フィニッシャー3は、[2]の段階と同様に整合動作を行なう。すなわち、シート組92に整合処理を施す。そして、その後に、フィニッシャー3は、[3]〜[7]の各段階と同様の動作を行なってシート組92を排紙トレイ36に排出する。
次に、図11〜図17を参照しながら、フィニッシャー3の特徴的な動作である異常時の動作を説明する。本実施形態において、異常として第1の状況および第2の状況が想定されている。
第1の状況は、印刷ジョブにおいて設定されているサイズと異なるサイズをもつ用紙9である“サイズエラー用紙”がフィニッシャー3に搬入されるという状況である。以下、この第1の状況におけるフィニッシャー3の動作を、サイズエラー発生時の動作という。
第2の状況は、プリンター2内でのジャムの発生が検出されたという状況である。以下、この第2の状況におけるフィニッシャー3の動作を、ジャム発生時の動作という。
後処理コントローラー13は、第1の状況または第2の状況をプリントコントローラー12からの通知によって検知する。第1の状況または第2の状況を検知した後処理コントローラー13は、サイズエラー用紙またはプリンター2内で正しく搬送されなかった用紙9であるジャム用紙を、設定どおりのサイズをもちかつ正しく搬送された正常シートである適正な用紙9と分けて排出するようにフィニッシャー3を制御する。
フィニッシャー3は、プレスタック機構138を利用することによって、サイズエラー用紙(またはジャム用紙)を、適正な用紙9と分けて排出する。「分けて排出する」とは、一括に排出するのではなく、別々に排出することを意味する。
フィニッシャー3は、排出ごとに排紙トレイ36の上に載る印刷物の位置をずらす、いわゆるシフト排紙を行なうことができる。上述した構造をもつフィニッシャー3では、押出し板305で印刷物を押し出す前のFD搬送において、搬送の終了位置をFD方向に例えば数センチメートル程度ずれた予め定められた2つの位置(排出待機位置)の一方と他方とに搬送ごとに交互に切り替えることで、シフト排紙を実現することができる。
異常時の動作においてシフト排紙を行なうと、サイズエラー用紙(またはジャム用紙)と適正な用紙9とが排紙トレイ36の上にFD方向にずれて載る。FD方向にずれているので、ユーザーは、排紙トレイ36の上に積み重なったサイズエラー用紙(またはジャム用紙)と適正な用紙9とを容易に仕分けることができる。
ただし、ユーザーが排出ごとに排出後に直ちに排出されたものを排紙トレイ36から取り去る場合には、シフト排紙を行なわなくても、サイズエラー用紙(またはジャム用紙)と適正な用紙9とが一括ではなく別々にユーザーに渡る。
ここで、サイズエラー発生時の動作の説明に先立って、図3を参照してサイズエラー用紙の検出方法を説明する。
給紙カセット41または手指しトレイ43から用紙9を給紙する場合には、レジストローラー55の近傍の用紙センサー71の出力が用紙9の有ることを示す時間を計時し、給紙カセット42から用紙9を給紙する場合には、用紙センサー72の出力が用紙9の有ることを示す時間を計時する。つまり、用紙9の先端がセンサー位置に到着してから後端が通過するまでに要した搬送時間(T1)を計時する。
印刷ジョブで設定されている用紙サイズの搬送方向の長さ(Y)と用紙9の搬送速度(V)とで決まる長さ(Y)分の搬送時間(Y/V)と、計時した搬送時間(T1)とを比較する。搬送時間(Y/V)と搬送時間(T1)との差(Δ)が予め定められた誤差の範囲内であれば、用紙9は適正なサイズをもつ用紙であると判定し、差(Δ)が誤差の範囲外であれば、用紙9はサイズエラー用紙であると判定する。用紙9がサイズエラー用紙であると判定することが、サイズエラー用紙を検出することに相当する。
図11および図12は、サイズエラー発生時の動作の第1例を示している。これらの図では、動作過程における(A)〜(F)の各段階のフィニッシャー3の状態が模式的に描かれている。
図11に示される(A)の段階では、降下状態の整合トレイ33の上に、退避状態のプレスタック板35に跨るようにシート組93が載っている。そして、次にフィニッシャー3に搬入されるサイズエラー用紙9xが、用紙センサー73の間近まで搬送されてきている。(A)の段階のフィニッシャー3の状態は、シート組93に重ねて排出するべき用紙9が搬入されるのを待っている状態である。本例では、この(A)の段階で、フィニッシャー3の後処理コントローラー13が、次に搬入される用紙9がサイズエラー用紙9xであることを、プリンター2のプリントコントローラー12との通信によって検知するものとする。
サイズエラー用紙9xが搬入されることを検知した後処理コントローラー13は、サイズエラー用紙9xが搬入されるまでにプレスタックの準備を終えることが可能かどうかを判断し、可能であると判断した場合にプレスタックのための制御を開始する。このときの判断について、その方法を後述する。
プレスタックの準備として、フィニッシャー3は、後端整合棒302によってシート組93をFD搬送し、シート組93がプレスタック板35に載らない位置まで移動した後、プレスタック板35を突出させる(作用状態にする)。
図11の(B)の段階では、シート組93のFD搬送が終わっており、シート組93の全体が整合トレイ33に載っている。プレスタック板35は作用状態である。また、先端整合棒301は、搬入中のサイズエラー用紙9xが突き当たることのないように、整合トレイ33の端部まで移動して外側に倒れた退避状態とされている。先端整合棒301を退避状態とすることにより、サイズエラー用紙9xがどんなにFD方向に長い用紙9であったとしても、先端整合棒301が排紙ローラー56によるサイズエラー用紙9xの送り出しを妨げてジャムを発生させる、という不都合が起こらない。
(B)の段階のフィニッシャー3の状態は、プレスタックの準備を終えてサイズエラー用紙9xの搬入を待っている状態である。図示では、サイズエラー用紙9xの先端は既に排紙ローラー56を通過している。プレスタックの準備に引き続いて、フィニッシャー3は、シート組93の排出の準備として整合トレイ33を上昇させる。
図11の(C)の段階では、整合トレイ33は上昇状態になっている。サイズエラー用紙9xの先端部がプレスタック板35に当接しており、プレスタックが始まっている。この後、フィニッシャー3は、押出し板305を奥側から手前側へ移動させてシート組93を排紙トレイ36に排出する。
図12に示される(D)の段階では、排紙トレイ36の上にシート組93が排出されている。プレスタックは続いており、サイズエラー用紙9xの搬入はサイズエラー用紙9xの先端部が整合トレイ33の上方に達する状態まで進んでいる。フィニッシャー3は、整合トレイ33の上の押出し板305を手前側から奥側へ移動させてホームポジションへ復帰させる。
その後、フィニッシャー3は、次の整合動作の準備として、整合トレイ33を降下状態に戻す動作、後端整合棒302を上流側の移動端へ戻す動作、およびプレスタック板35を退避させる動作を並行して行なう。
図12の(E)の段階では、整合動作の準備が終わろうとしている。サイズエラー用紙9xの搬入が完了し、排紙ローラー56から離れてたサイズエラー用紙9xが、整合トレイ33とプレスタック板35とに跨ってこれらの上に載っている。
整合トレイ33を降下状態に戻した後、フィニッシャー3は、通常時と同様に先端整合棒301、手前整合板303、および奥整合板304を駆動する整合動作を行なう。すなわち、サイズエラー用紙9xに整合処理を施す。このとき、先端整合棒301を後端整合棒302との距離がサイズエラー用紙9xのFD方向の長さ(Y)になるように移動させる。長さ(Y)は、サイズエラー用紙9xの検出の際に計時された搬送時間(T1)に搬送速度(V)を乗じた積であり、例えばプリントコントローラー12によって求められて後処理コントローラー13に通知される。
整合処理を施した後、フィニッシャー3は、本来はシート組93に重ねて排出すべき用紙9が次に搬入され、かつその用紙9がサイズエラー用紙である場合には、次のサイズエラー用紙が搬入されて既に搬入済みのサイズエラー用紙9xの上に積み重なるのを待つ。これに対して、次に搬入される用紙9が適正なサイズの用紙9である場合、次に搬入される用紙9がシート組93とは元々異なる一群に属する場合、または搬入済みのサイズエラー用紙9xがシート組93と同じ一群の最終の用紙9である場合、フィニッシャー3はサイズエラー用紙9xを排出するための動作を開始する。
図12の(F)の段階では、サイズエラー用紙9xの排出の準備としてFD搬送が開始されようとしている。フィニッシャー3は、後端整合棒302と先端整合棒301とを一体的に移動させてサイズエラー用紙9xをFD搬送する。このとき、搬送の終了位置を先にシート組93をFD搬送したときの終了位置とずらすシフト搬送を行なう。
FD搬送が終了すると、フィニッシャー3は、整合トレイ33を上昇状態に移行させ、押出し板305によってサイズエラー用紙9xを排紙トレイ36に排出する。そして、排出が終わると、フィニッシャー3は、押出し板305をホームポジションへ戻し、整合トレイ33を降下させる。
図13はサイズエラー発生時の動作の第2例を示している。この第2例の動作は、サイズエラー用紙9yが搬入されるまでにプレスタックの準備を終えることができない場合に行なわれる。図13の例示にサイズエラー用紙9yは、これを使用する印刷ジョブで設定された適正なサイズの用紙9と比べてFD方向に長い用紙9である。
図13の(A)において、降下状態の整合トレイ33の上に、退避状態のプレスタック板35に跨るようにシート組93が載っている。次に搬入されるサイズエラー用紙9yが排紙ローラー56の間近まで搬送されてきており、フィニッシャー3へのサイズエラー用紙9yの搬入が間もなく始まろうとしている。図13の(A)のフィニッシャー3の状態は、サイズエラー用紙9yが搬入されるのを待っている状態である。
後処理コントローラー13がサイズエラー用紙9yが搬入されることを検知した時点で既にサイズエラー用紙9yが排紙ローラー56の近くまで搬送されている場合、プレスタックの準備が間に合わない。すなわち、プレスタック板35の上に一部が載っている用紙9をFD搬送によって整合トレイ33の上に移動させ、その後にプレスタック板35を作用状態にするという準備動作を行なう時間的余裕がない。この場合、後処理コントローラー13は、サイズエラー用紙9yとシート組93とを一括に排出する以下の動作をフィニッシャー3に行なわせる。
フィニッシャー3は、サイズエラー用紙9yを受け入れる準備として、図13(A)に示されるように、先端整合棒301をシート組93の近傍から整合トレイ301の端部に移動させて退避状態にする。図13の(A)に示される状態のフィニッシャー3にサイズエラー用紙9yが搬入され、図13の(B)のようにサイズエラー用紙9yがシート組93の上に積み重なる。
図13の(B)のように、フィニッシャー3は、通常時の動作と同様に先端整合棒301、手前整合板303および奥整合板304を駆動する整合動作を行なって、シート組93の上に載ったサイズエラー用紙9yに整合処理を施す。このとき、図示のとおりサイズエラー用紙9yはシート組93よりもFD方向に長いので、先端整合棒301はサイズエラー用紙9yと当接し、シート組93には当接しない。
整合動作に引き続いて、フィニッシャー3は、シート組93とそれに重なるサイズエラー用紙9yとで構成されるシート組94を排出するための準備動作を開始する。排出の準として、まず、フィニッシャー3は、シート組94を整合トレイ33上の排紙待機位置まで移動させるFD搬送を行なう。次に、フィニッシャー3は、シート組94を載せたまま整合トレイ33を上昇させる。
なお、図14に示されるように、シート組93の上にシート組93よりもFD方向に短いサイズエラー用紙9zが載る場合には、シート組93とサイズエラー用紙9zとで構成されるシート組94bのFD搬送が行なわれる。その際、サイズエラー用紙9zより長いシート組93に合わせて後端整合棒301と先端整合棒301との距離が調整されるので、シート組93に後端整合棒301と先端整合棒301とが圧接する。サイズエラー用紙9zはシート組93の移動に伴って移動する。
図13の(C)では、整合トレイ33が上昇状態になっている。また、次に搬入される用紙9についてプレスタックをするため、プレスタック板35が作用状態になっている。図13の(C)の状態で、フィニッシャー3は、押出し板305を駆動してシート組94を排紙トレイ36に排出する。
排出が終わると、フィニッシャー3は、通常時の動作および第1例の動作と同様に、押出し板305をホームポジションに戻し、整合トレイ33を降下させ、プレスタック板35を退避させる。
以上の第2例の動作では、適正なサイズの用紙9とサイズエラー用紙9yとがこれらを分けることなく排出される。しかし、プリンター2に搬送を中止させることなくサイズエラー用紙9yの搬入を受け入れるので、フィニッシャー3が第2例の動作を行なう場合にも、プリンター2による印刷の生産性は通常時と同じに保たれる。
図15は、サイズエラー発生時の動作の第3例を示している。この第3例の動作は、サイズエラー用紙9xが搬入されるまでにプレスタックの準備を行なう必要がない場合の動作である。つまり、フィニッシャー3内に用紙9が全く無く、用紙9の搬入をフィニッシャー3が待っているときに最初に搬入される用紙9がサイズエラー用紙9xである場合に、フィニッシャー3はこの第3例の動作を行なう。
図15中の(A)のように、整合トレイ33が降下状態であってフィニッシャー3内に用紙9が無いとき、サイズエラー用紙9xが搬入されることを検知した後処理コントローラー13は、直ちに先端整合棒301を退避状態にするようにフィニッシャー3を制御する。図15中の(A)のフィニッシャー3の状態は、サイズエラー用紙9xの搬入を待ち受ける状態である。
サイズエラー用紙9xが搬入された後、フィニッシャー3は、図13の第2例と同様の動作を行なう。すなわち、フィニッシャー3は、図中の(B)のようにサイズエラー用紙9xに整合処理を施し、サイズエラー用紙9xをFD搬送した後、図中の(C)のように整合トレイ33を上昇状態にしてサイズエラー用紙9xを排紙トレイ36に排出する。その際、必要に応じて次に搬入される用紙9についてプレスタックを行なう。排出が終わると、フィニッシャー3は、押出し板305をホームポジションに戻し、整合トレイ33を降下させる。プレスタックを行なった場合、フィニッシャー3は、適時にプレスタック板35を退避させる。
図16および図17はフィニッシャー3が行なうジャム発生時の動作を示している。図16の(A)から図16の(E)までの動作は、図11および図12に示したサイズエラー発生時の動作の第1例と同様であるので、ここでは説明を簡略にする。
図16の(A)では、整合トレイ33の上にシート組93が載っている。そして、ジャム用紙9jが、用紙センサー73の近傍まで搬送されてきている。
ジャム用紙9jが搬入されるまでにプレスタックの準備を終えることが可能であると判断した後処理コントローラー13が、プレスタックを行ないながらシート組93を排出するための準備をフィニッシャー3に開始させる。
後処理コントローラー13の指示に従って、フィニッシャー3は、後端整合棒302を用いてシート組93を排紙待機位置へ移動させるFD搬送を行なう。図16の(A)ではFD搬送が始まろうとしている。
図16の(B)では、FD搬送が終わり、先端整合棒301が整合トレイ33の端部に移動して退避状態になっている。プレスタック板35は作用状態である。
図16の(C)では、整合トレイ33が上昇状態になり、押出し板305によるシート組93の排出が始まろうとしている。ジャム用紙9jの先端部がプレスタック板35に当接してプレスタックが始まっている。
図17の(D)では、シート組93の排出が終わっている。整合トレイ33は上昇状態である。フィニッシャー3は、押出し板305をホームポジションへ復帰させる。
図17の(E)では、フィニッシャー3が、整合トレイ33を降下させる動作、後端整合棒302を上流側の移動端へ戻す動作、およびプレスタック板35を退避させる動作を並行して行なっている。ジャム用紙9jの搬入が終わり、整合トレイ33とプレスタック板35とに跨るようにこれらの上にジャム用紙9jが載っている。
整合トレイ33が降下状態に戻り、後端整合棒302が移動端へ戻り、プレスタック板35を退避状態に戻った後、フィニッシャー3は、図17の(F)のようにジャム用紙9jを収容したまま静止する。すなわち、整合機構136、排出機構137およびプレスタック機構138が動作を停止する。これは、どのように歪曲しているのか不明であるジャム用紙9jを収容したまま動作を続けると、フィニッシャー3内で新たにトラブルの発生するおそれがあるからである。
動作の停止した状態は、例えばユーザーがフィニッシャー3からジャム用紙9jを取り除いた後、操作パネル6を用いてリセットをし、そのことがメインコントローラー11から通知されたとき、後処理コントローラー13によって解除される。
図18のフローチャートは、サイズエラー発生時の動作を含むフィニッシャー3の動作のフローを示している。
印刷ジョブの実行開始がプリンター2から通知されてフィニッシャー3が用紙9の搬入を待っている状態において、後処理コントローラー13は、次に搬入される用紙9がサイズエラー用紙9x、9yであるかどうかをチェックする(S01)。ステップS01のチェック結果がNOである場合、後処理コントローラー13は、フィニッシャー3に通常の動作を行なわせる。
通常の動作の流れ(フロー)は次のとおりである。
フィニッシャー3は、用紙9の搬入が完了するのを待つ(S02)。搬入が完了すると(S02でYES)、フィニッシャー3は整合動作を行なう(S03)。前のステップS02において搬入の完了をチェックした用紙91が、印刷ジョブにおいて一括に排出すべき一群の用紙9のうちの最後に搬入される最終用紙でなければ(S04でNO)、フローはステップS01に戻る。
ステップS04のチェック結果がYESである場合、フィニッシャー3は、一括に排出すべき一群の用紙9からなるシート組91(図9参照)を排出するための排出準備(S05)、シート組91の排出(S06)、および整合トレイ33への次の搬入を可能にするための搬入準備(S07)を順に行なう。
搬入準備が完了すると、以前にプリスタックされた用紙9であってプリスタック板35の退避に伴って整合トレイ33の上に載った用紙9が有るかどうかを、後処理コントローラー13がチェックする(S08)。このチェックでは、ステップS05の排出準備の開始からステップS07の搬入準備の終了までの期間中に用紙9がフィニッシャー3に搬入された場合に、プリスタックされた用紙9が有ると判断されてチェック結果がYESになる。
ステップS08のチェック結果がYESである場合、後処理コントローラー13が、現状の識別のためのサイズエラーフラグがON(セット状態)であるかどうかをチェックする(S15)。このチェックの結果がYESである場合、プリスタックされた用紙9がサイズエラー用紙9xであると判断されてフローはステップS14(異常用紙の排出ルーチン)へ進む。
サイズエラーフラグがOFF(リセット状態)であって、ステップS15のチェック結果がNOである場合、フローはステップS03に戻る。
プレスタックされた用紙9がなかったので、ステップS08のチェック結果がNOである場合、後処理コントローラー13は、プリンター2で印刷ジョブの実行が続いているかどうかをチェックする(S09)。印刷ジョブの実行が続いている場合(S09でYES)、フローはステップS01へ戻る。印刷ジョブの実行が続いていない場合(S09でNO)、フローは終了する。この場合、フィニッシャー3は、以後に印刷ジョブが実行されるまで待機する。
一方、上述のステップS01のチェック結果がYESである場合、後処理コントローラー13は、フィニッシャー3にサイズエラー発生時の動作を行なわせるための処理を実行する。
後処理コントローラー13は、サイズエラーフラグをONにし(S10)、整合トレイ33の上に1枚以上の用紙9が載っているかどうかをチェックする(S11)。このチェックは、制御シーケンスのうちの現在の段階が、用紙9が載っていると推定される段階であるかを確認する処理である。
ステップS11のチェック結果がNOである場合、後処理コントローラー13は、直ちに、上述の図15の(A)のように先端整合棒301を退避させる(S13)。
ステップS11のチェック結果がYESである場合、後処理コントローラー13は、プレスタックが可能であるかどうか、すなわちサイズエラー用紙9xが搬入されるまでにプレスタックの準備を終えることができるかどうかをチェックする(S12)。ステップS12のチェック結果がYESである場合、フローはステップS05へ進む。この場合、ステップS05からステップS07において、図11の例示のように、既に搬入されている適正なサイズの用紙9が排出され、その間に搬入が進められるサイズエラー用紙9xについてプレスタックが行なわれる。
ステップS14の異常用紙の排出ルーチンが実行された場合、フローはステップS14からステップS09へ進む。
ここで、ステップS12に係るプレスタックの可否を判断する方法を説明する。
後端整合棒302の整合動作の終了時の位置からプレスタック板35を突出させるのに支障のない位置までのFD搬送の移動距離をMD[mm]とし、FD搬送の移動速度をMV[mm/s]とする。そうすると、FD搬送の開始からプレスタック板35を突出させてよい状態になるまで時点までの時間PT1[ms]は、PT1[ms]=(MD/MV)×1000となる。
また、プリンター2がサイズエラー用紙9xを検出した時点のサイズエラー用紙9xの先端の位置から作用状態のプレスタック板35における当該サイズエラー用紙9xの先端が当接する位置までの距離をXD[mm]とし、サイズエラー用紙9xの搬送速度をFV[mm/s]とする。そうすると、サイズエラー用紙9xがプレスタック板35に到達するまでの時間FT[ms]は、FT[ms]=(XD/FV)×1000となる。
時間PT1[ms]と時間FT[ms]とを比較して、時間PT1[ms]の方が短ければ、プレスタックが可能であると判断し、時間PT1[ms]の方が長ければ、プレスタックが可能ではないと判断する。
図19は図18のステップS14の異常用紙の排出ルーチンのフローチャートである。
後処理コントローラー13は、サイズエラー用紙9xの搬送方向M1の長さY9xを、これを測定するプリントコントローラー12から取得する(S41)。ただし、サイズエラー用紙9xの先端および後端がそれぞれプリンター2内の搬送路上の同じ位置を通過した時刻を後処理コントローラー13がプリントコントローラー12から取得し、後処理コントローラー13が長さY9xを算出してもよい。
後処理コントローラー13は、取得した長さY9xに基づいて、サイズエラー用紙9xの排出が可能であるかどうかを判断する(S42)。長さY9xが、サイズエラー用紙9xの先端が整合トレイ33から張り出さない範囲内に定められた閾値以下である場合、後処理コントローラー13は排出が可能であると判断する。そして、長さY9xが閾値を超える場合、後処理コントローラー13は排出が可能ではないと判断する。
排出が可能ではないと後処理コントローラー13が判断した場合(S42でNO)、フローの示す動作は終了する。この場合、フィニッシャー3は静止し、ユーザーがサイズエラー用紙9xを取り除くまで、整合トレイ33の上にサイズエラー用紙9xが載ったままとなる。
排出が可能であると判断した場合(S42でYES)、後処理コントローラー13は、ステップS43〜S45の処理を実行する。これにより、フィニッシャー3は、図13の例示のように動作する。すなわち、サイズエラー用紙9yを含むシート組94をFD搬送させながらプレスタック板35を突出させ(S43)、シート組94を排出する(S44)。そして、フィニッシャー3は、搬入準備(S45)として、押出し板305をホームポジションへ戻し、整合トレイ33を降下させ、プレスタック板35を退避させる。
ステップS45の次のステップS46において、後処理コントローラー13がサイズエラーフラグをOFFにする。フローは図18のフローにリターンする。
ここで、ステップS41に係るサイズエラー用紙9xの搬送方向の長さY9xを測定する方法を説明する。
サイズエラー用紙9xの検出に際して、検出に用いる用紙センサー71,72の出力を監視し、用紙センサー71,72のセンサー位置をサイズエラー用紙9xが通過するときの用紙センサー71,72の出力が用紙9の有ることを示すON期間T9x[ms]を計時する。サイズエラー用紙9xの搬送速度をV[mm/s]とすると、サイズエラー用紙9xの長さY9xは、Y9x[mm]=(V/1000)×T9xの式で表わされる演算によって求めることができる。
図20は、ジャム発生時の動作を含むフィニッシャーの動作のフローチャートである。
印刷ジョブの実行開始がプリンター2から通知されてフィニッシャー3が用紙9の搬入を待っている状態において、後処理コントローラー13は、次に搬入される用紙9がジャム用紙9jであるかどうかをチェックする(S21)。ステップS21のチェック結果がNOである場合、後処理コントローラー13は、フィニッシャー3に通常の動作を行なわせる。
通常の動作のフローは図18と同様である。すなわち、図20のステップS22〜S29のフローは図18のステップS02〜S09のフローと同様である。したがって、ステップS22〜S29のフローについて、重複する説明を省略する。
ステップS28のチェック結果がYESである場合、後処理コントローラー13は、現状の識別のためのジャムフラグがONであるかどうかをチェックする(S35)。このチェックの結果がYESである場合、後処理コントローラー13は、プリスタックされた用紙9がジャム用紙9jであると判断して、ジャムフラグをOFFにする(S34)。この後、フローは直ちに終了する。この場合、ジャム用紙9jではない適正なサイズの用紙9が整合トレイ33の上に載り、さらにその上にジャム用紙9jが載った状態でフィニッシャー3は静止する。
一方、上述のステップS21のチェック結果がYESである場合、後処理コントローラー13は、フィニッシャー3にジャム発生時の動作を行なわせるための処理を実行する。
後処理コントローラー13は、ジャムフラグをONにし(S30)、図18のステップ11と同様に、整合トレイ33の上に1枚以上の用紙9が載っているかどうかをチェックする(S31)。
ステップS31のチェック結果がNOである場合、後処理コントローラー13は、直ちに、ジャム用紙9jを受け入れる準備として先端整合棒301を退避させる(S33)。この直後にジャムフラグがOFFにされ(S34)、図示のフローの動作が終わってフィニッシャー3は静止する。
ステップS31のチェック結果がYESである場合、後処理コントローラー13は、プレスタックが可能であるかどうか、すなわちジャム用紙9jが搬入されるまでにプレスタックの準備を終えることができるかどうかをチェックする(S32)。ステップS32のチェック結果がNOである場合、後処理コントローラー13は、直ちに先端整合棒301を退避させ(S33)、ジャムフラグがOFFにする(S34)。図示のフローの動作が終わってフィニッシャー3は静止する。
ステップS32のチェック結果がYESである場合、フローはステップS25へ進む。この場合、ステップS25からステップS27において、図11の例示のように、既に搬入されている適正なサイズの用紙9が排出され、その間に搬入が進められるジャム用紙9jについてプレスタックが行なわれる。
本実施形態によると、サイズエラー用紙9x、9y、9zが検出されたときに、プリンター2が用紙9の搬送を停止せずに印刷動作を続行させることができるので、サイズエラー用紙9x、9y、9zが給紙されることに起因する印刷の生産性の低下を抑えることができる。
また、プレスタックの準備が間に合わない場合であっても整合トレイ33上の搬送済みの用紙9を排出するので、整合トレイ33上に用紙9を残したまま動作を停止する構成とは違って、排紙トレイ36からの取り出しと比べて面倒な整合トレイ33からの用紙9を取り出しをユーザーが行なう必要がない。つまり、搬送済みの用紙9の排出には、ユーザーの負担を軽減する効果がある。
本実施形態によると、適正なサイズの用紙9とサイズエラー用紙9xとが位置をずらして排出されるので、給紙カセット41,42のいずれかにサイズの異なる複数の用紙9が装填され、かつこれら複数の用紙9が1つの印刷ジョブで使用されたとしても、ユーザーは排出されたサイズの異なる複数の用紙9を容易に区別することができる。給紙カセット41,42への混載の生じ易いサイズ間の寸法差が小さいサイズの組み合わせとして、A4サイズ(210×297mm)、レターサイズ(8.5×11inch)およびインボイスサイズ(8.3×11inch)のうちの2つまたは全部を選ぶ組み合わせがある。
画像形成装置1、プリンター2、フィニッシャー3の全体または各部の構成、処理内容、処理順序などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。例えば、整合トレイ33と排紙トレイ36とがCD方向に並ぶ構造に限らず、これらがFD方向に並ぶ構造の画像形成装置にも本発明を適用することができる。必ずしも後処理コントローラー13とその制御対象である機構部とは1つのユニットとして一体化される必要はない。
画像形成装置1における最終段の装置であるフィニッシャー3を後処理装置として例示した。しかし、これに限らず、後処理装置は、ユーザーが受け取る印刷物を作成する途中段階でシートに処理を施す装置であってもよい。また、後処理装置は、印刷用の用紙9以外のシートに整合処理または他の処理を施す装置であってもよい。