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JP6260076B2 - 分光装置 - Google Patents

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Description

本発明は、分光装置、波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器に関する。
従来、入射光から所定波長の光を取り出して測定するファブリーペロー型エタロン(波長可変干渉フィルター)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の装置は、反射膜が設けられた基板を互いに対向させ、基板間に圧電素子を設けられたファブリーペロー干渉部(波長可変干渉フィルター)と、圧電素子に対して電圧を印加する制御回路とを備えた可変干渉装置(光学モジュール)である。この光学モジュールでは、圧電素子に電圧を印加することで基板間の間隔を変化させて、波長可変干渉フィルターを透過する光の波長を変化させている。
また、上述のような波長可変干渉フィルターを用いて、入射光の分光スペクトルを測定する場合、波長可変干渉フィルターの反射膜の寸法を順次変化させ、透過した光を受光素子で受光する。これにより、所定の波長間隔となる測定対象波長の光の光量を取得することができ、測定対象波長に対して得られた光量をプロットすることで、分光スペクトルを測定することが可能となる。
特開平1−94312号公報
ところで、上記のように、波長可変干渉フィルターにより、所定の波長間隔毎の測定対象波長の光を透過させてその光量を取得し、取得した光量に基づいて分光スペクトルを測定する場合、各測定対象波長に対して正確な光量を取得することが必要とされる場合がある。このため、従来、波長可変干渉フィルターにおいて、透過波長の半値幅を小さくする構成が望まれていた。
しかしながら、透過波長の半値幅を小さくすると、その分、透過光の光量も減少してしまうため、SN比が悪化し、ノイズ成分の影響を受けやすくなるという課題があった。
本発明は、取り出された光の光量の増大を図れる分光装置、波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供する。
本発明の一態様の分光装置は、入射した光の一部を反射し、他の一部を透過する第一反射膜と、入射した光の一部を反射し、他の一部を透過し、前記第一反射膜に対向して設けられた第二反射膜と、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップの大きさを変更するギャップ変更部と、前記ギャップの大きさを変更することで、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間で干渉した光に基づいて得られる複数の測定対象波長の光に基づいて、所定の第一波長間隔で光学特性データを出力する処理部と、前記ギャップ変更部を制御して、前記測定対象波長の光を、前記第一波長間隔よりも大きい第二波長間隔で変化させるギャップ制御部と、を備え、前記処理部は、前記複数の測定対象波長の光に基づく計測スペクトルから、主成分となる波長成分を抽出して他の波長成分を除去するスペクトル推定を実施して、前記第一反射膜及び前記第二反射膜に入射する入射光の分光スペクトルを推定し、前記複数の測定対象波長の光の各々の半値幅は、測定波長域に亘って前記第一波長間隔及び前記第二波長間隔よりも大きく、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される複数の前記測定対象波長の光のうち少なくとも一つの光は、前記測定波長域において、2つ以上の極大値を有し、前記測定波長域は可視光域であることを特徴とする。
上記の本発明に係る分光装置は、入射した光の一部を反射し、他の一部を透過する第一反射膜と、入射した光の一部を反射し、他の一部を透過し、前記第一反射膜に対向して設けられた第二反射膜と、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップの大きさを変更するギャップ変更部と、前記ギャップの大きさを変更することで、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間で干渉した光に基づいて得られる複数の測定対象波長の光に基づいて、所定の第一波長間隔で光学特性データを出力する処理部と、を備え、前記複数の測定対象波長の光の各々の半値幅は、測定波長域に亘って前記第一波長間隔よりも大きいことを特徴とする。
上記の本発明に係る分光装置は、入射した光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜と、入射した光の一部を反射し一部を透過し、前記第一反射膜に対向して設けられた第二反射膜と、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップの大きさを変更するギャップ変更部と、前記ギャップ変更部により前記ギャップの大きさを変更することで前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間に入射した光を干渉させて取り出される複数の測定対象波長の光に基づいて、所定の第一波長間隔で光学特性データを出力する処理部と、を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間の入射光の干渉により取り出される前記複数の測定対象波長の光の半値幅は、前記第一波長間隔よりも大きいことを特徴とする。
本発明では、ギャップ変更部により第一反射膜及び第二反射膜の間のギャップ量を変化させることで、複数の測定対象波長の光を取り出し、処理部は、これらの複数の測定対象波長に基づいて、第一波長間隔毎の光学特性データを出力する。ここで、本発明では、複数の測定対象波長の光の少なくとも1つの光の光学特性において、半値幅が光学特性データのデータ出力間隔である第一波長間隔以上となる。このため、当該光には、測定対象波長の光だけでなく、第一波長間隔以上の波長域の光が含まれることになり、例えば測定対象波長の光のみを出力する場合に比べて取り出される光の光量を大きくすることができる。
また、本発明では、第一反射膜及び第二反射膜に入射する光を発光する光源の数を増やすことなく、また、光源の発光強度を上げることなく、上記のように光量増大を図ることができる。つまり、本発明では、構成の簡略化と、第一反射膜及び第二反射膜により取り出される光の光量の増加との双方を両立させることができる。そして、上記のように、第一反射膜及び第二反射膜により取り出される光の光量が増大することで、例えば処理部により光学特性データを処理する際に、ノイズ成分の影響を受けにくくなり、精度の高い光学特性データを出力することができる。
本発明の分光装置において、前記ギャップ変更部を制御して、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の間に入射した光を干渉させて取り出される測定対象波長の光を、前記第一波長間隔よりも大きい第二波長間隔で変化させるギャップ制御部を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される前記複数の測定対象波長の光のうち少なくとも一つの光の半値幅は、前記第二波長間隔よりも大きいことが好ましい。
本発明の分光装置では、処理部は、第一波長間隔よりも大きい第二波長間隔毎の測定対象波長の光に基づいて、第一波長間隔毎の光学特性データを出力する。そして、複数の測定対象波長の光の少なくとも1つの光の光学特性における半値幅は、測定対象波長の波長間隔である第二波長間隔よりも大きくなる。このため、本発明では、第一反射膜及び第二反射膜により取り出される光は、測定対象波長を中心として、更に広い波長域の光を含むことになり、その分、更に光量を大きくすることができる。
本発明の分光装置において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の光軸上に設けられた光学部材を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される光の光学特性と前記光学部材の光学特性とをかけ合せた特性における半値幅は、前記第二波長間隔よりも大きいことが好ましい。
ここで、光学部材とは、第一反射膜及び第二反射膜の光路上に配置される光学特性を有する部材であり、例えば、第一反射膜及び第二反射膜により取り出された光の光量を検出する検出部、第一反射膜及び第二反射膜に対して光を射出する光源、第一反射膜及び第二反射膜に入射させる光から所定波長域の光のみを取り出すバンドパスフィルター等のフィルタリング素子、レンズやミラー等が挙げられる。各光学部材の光学特性とは、当該光学部材を通過する光の光量に対して影響を及ぼす特性であり、例えば検出部では検出感度特性、光源では発光強度特性、フィルタリング素子やレンズでは光の透過率特性、ミラーでは反射率特性等となる。
本発明では、これらの光学部材の光学特性と、第一反射膜及び第二反射膜により構成される波長可変干渉フィルターにおける光学特性とをかけ合せた特性における半値幅が、測定波長間隔となるように、各光学部材、第一反射膜及び第二反射膜が設定されている。このような構成では、検出部で検出される光の光量を光学部材によらず増加させることができる。
本発明の分光装置において、前記処理部は、前記複数の測定対象波長の光に基づく計測スペクトルから、主成分となる波長成分を抽出して他の波長成分を除去するスペクトル推定を実施して、前記第一反射膜及び前記第二反射膜に入射する入射光の分光スペクトルを推定することが好ましい。
本発明では、処理部は、第一反射膜及び第二反射膜により取り出された光に基づいてスペクトル推定を実施する。このようなスペクトル推定では、主成分である測定対象波長を抽出して、その他の成分をカットするため、上記のように半値幅が広い波長可変干渉フィルターを用いた場合でも、精度よく主成分である測定対象波長の光量を推定することができ、精度の高い分光スペクトル推定を実施することができる。
本発明の分光装置において、前記処理部は、前記計測スペクトルに対して、当該計測スペクトルを前記第一波長間隔毎の分光スペクトルに変換する変換行列を作用させて、前記分光スペクトルを推定することが好ましい。
本発明では、得られた計測スペクトルに対して変換行列を作用させるだけで容易に精度の高い分光スペクトルを推定することができる。
本発明の分光装置において、当該分光装置により分光測定を実施する測定波長域に対する、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の反射率の最小値は、75%以下30%以上であることが好ましい。
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜の測定波長域の反射率の最小値は75%以下30%以上であり、これにより、第一反射膜及び第二反射膜により取り出される光の光量を増加させることができる。すなわち、測定波長域に対する反射率が75%より大きい場合、透過光の光量が減少し、半値幅を上述したような条件に設定することができなくなる(半値幅が狭くなる)。また、反射率の最小値が30%未満である場合、波長可変干渉フィルターとしての機能が低下してしまい、適切な光を取り出すことが困難となる。つまり、測定波長域内のほぼ全ての波長に対して、第一反射膜及び第二反射膜を用いた多重干渉作用を受けずに透過してしまうことになる。
これに対して、本発明では、反射率の最小値を上記のように設定することで、波長可変干渉フィルターは、所定の測定対象波長を中心とした波長域の光を、十分な光量で取り出すことができる。
本発明の分光装置において、前記第一反射膜又は前記第二反射膜は、Ag又はAg合金であり、厚み寸法が40nm以下15nm以上であることが好ましい。
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜として、Ag金属膜又はAg合金膜が15nm〜40nmの厚み寸法で形成されている。このような構成では、第一反射膜及び第二反射膜の反射率の最小値を、上述したような75%以下30%以上の範囲に設定することができる。また、Ag金属膜やAg合金膜は、広い波長域に対して反射率特性を有するため、例えば可視光から近赤外光に亘る波長域を測定波長域として設定することができる。
本発明の分光装置において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、TiO単層膜により構成されていることが好ましい。
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜がTiO単層膜により構成されているので、Ag金属膜やAg合金膜等を用いる場合に比べて、膜劣化を抑制でき、分光装置の長寿命化をも図ることができる。
本発明の分光装置において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、ITO単層膜により構成されていることが好ましい。
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜がITO単層膜により構成されている。この場合でも、上述した発明と同様、Ag金属膜やAg合金膜等を用いる場合に比べて、膜劣化を抑制できる。また、ギャップ変更部が電極を有する場合、第一反射膜や第二反射膜の帯電を除去する電極を設ける場合、及び第一反射膜及び第二反射膜間のギャップ間隔を測定するための電極を設ける場合等において、第一反射膜及び第二反射膜と、これらの電極とを同時に(1工程で)形成することができる。したがって、波長可変干渉フィルターの製造効率性を向上させることができる。
本発明の分光装置において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により構成される干渉フィルターの最小透過率は、当該分光装置により分光測定を実施する測定波長域内の各波長の光に対して、5%以上45%未満であることが好ましい。
本発明では、第一反射膜及び第二反射により構成される干渉フィルターの最小透過率が5%以上45%未満であり、測定波長域内の各波長の光に対して透過特性を有している。これにより、測定対象波長を中心とした所定波長域の光に加え、その他の測定波長域内の各波長の光を取り出されることになり、光量の増大を図ることができる。
本発明の分光装置において、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される複数の前記測定対象波長の光のうち少なくとも一つの光は、当該分光装置により測定を実施する測定波長域において、2つ以上の極大値を有することが好ましい。
本発明では、測定対象波長に対応したピーク波長以外に、光透過率が極大となる他の波長が存在する。このような場合、これらの透過率が極大となる波長において、透過光の光量を更に大きくすることができる。
本発明の波長可変干渉フィルターは、入射した光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜と、入射した光の一部を反射し一部を透過し、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向して設けられた第二反射膜と、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップを変更するギャップ変更部と、を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の反射率の最小値は、75%以下30%以上であることを特徴とする。
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜の測定波長域の反射率の最小値は75%以下30%以上である。
測定波長域に対する反射率が75%より大きい場合、透過光の光量が減少し、波長可変干渉フィルターの光学特性において半値幅が狭くなる。また、反射率の最小値が30%未満である場合、波長可変干渉フィルターとしての機能が低下してしまい、適切な光を取り出すことが困難となる。
これに対して、本発明の波長可変干渉フィルターでは、スペクトル曲線の半値幅を広くでき、測定対象波長の光を中心とした広い波長域の光が得られ、光量を増加させることができる。したがって、光量不足によってノイズの影響を受けやすくなる等の不都合を抑制できる。
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一反射膜又は前記第二反射膜は、Ag又はAg合金であり、厚み寸法が40nm以下15nm以上であることが好ましい。
本発明では、第一反射膜及び第二反射膜として、Ag金属膜又はAg合金膜が15nm〜40nmの厚み寸法で形成されているので、第一反射膜及び第二反射膜の反射率の最小値を、上述したような75%以下30%以上の範囲に適切に設定することができる。また、Ag金属膜やAg合金膜は、広い波長域に対して反射率特性を有するため、例えば可視光から近赤外光に亘る波長域を測定波長域として設定することができる。
本発明の光学フィルターデバイスは、入射した光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜、入射した光の一部を反射し一部を透過し、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向して設けられた第二反射膜、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップを変更するギャップ変更部を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の反射率の最小値は、75%以下30%以上であり、前記第一反射膜又は前記第二反射膜は、Ag又はAg合金であり、厚み寸法が40nm以下15nm以上であることを特徴とする。
本発明では、上記発明と同様に、波長可変干渉フィルターにより取り出された光のスペクトル曲線の半値幅を広くでき、光量を増加させることができる。
また、波長可変干渉フィルターが筐体内部に収納される構成となるため、第一反射膜や第二反射膜への異物の付着を抑制でき、反射膜の劣化や、測定精度の低下を抑制できる。さらに、筐体により波長可変干渉フィルターが保護されるので、衝撃等の外力に対しても強くなる。
本発明の光学モジュールは、入射した光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜と、入射した光の一部を反射し一部を透過し、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向して設けられた第二反射膜と、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップを変更するギャップ変更部と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される光を検出する検出部と、を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の反射率の最小値は、75%以下30%以上であり、前記第一反射膜又は前記第二反射膜は、Ag又はAg合金であり、厚み寸法が40nm以下15nm以上であることを特徴とする。
本発明では、上記発明と同様に、第一反射膜及び第二反射膜の間で入射光を干渉させて取り出した際に、取り出された光のスペクトル曲線の半値幅を広くでき、光量を増加させることができる。したがって、ノイズの影響を受けにくく、精度の高い光量検出を実施することができる。
本発明の電子機器は、入射した光の一部を反射し一部を透過する第一反射膜と、入射した光の一部を反射し一部を透過し、前記第一反射膜に対してギャップを介して対向して設けられた第二反射膜と、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップを変更するギャップ変更部とを備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを制御する制御部と、を備え、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の反射率の最小値は、75%以下30%以上であり、前記第一反射膜又は前記第二反射膜は、Ag又はAg合金であり、厚み寸法が40nm以下15nm以上であることを特徴とする。
本発明では、上記発明と同様に、波長可変干渉フィルターにより取り出された光のスペクトル曲線の半値幅を広くでき、光量を増加させることができ、ノイズ成分の影響を受けにくくなる。このため、処理部における処理精度が向上する。
本発明に係る第一実施形態の分光測定装置の概略構成を示すブロック図。 第一実施形態の波長可変干渉フィルターの断面図。 従来の分光スペクトルの測定方法の概略を説明するための図。 従来の方法により推定された分光スペクトル、及び実際の分光スペクトルを示す図。 本実施形態の波長可変干渉フィルターの光学特性(透過率特性)を示す図。 図5の光学特性における各波長の半値幅を示した図。 従来の波長可変干渉フィルターの光学特性を示す図。 図7の光学特性における各波長に対する半値幅を示した図。 波長可変干渉フィルターの光学特性における半値幅と、ディテクターで光を受光した際に出力される電流(PD電流)との関係を示す図。 第一実施形態の波長可変干渉フィルターを用いて、分光処理部により推定された分光スペクトルを示す図。 第一実施形態の波長可変干渉フィルターを用い、従来の測定方法により測定された分光スペクトルを示す図。 波長可変干渉フィルターの半値幅を変化させた場合に、第一実施形態の分光測定部により推算された分光スペクトルと実際の分光スペクトルとの差(実線)、従来の測定方法により測定された分光スペクトルと実際の分光スペクトルとの差(破線)を示した図。 本発明に係る第二実施形態の波長可変干渉フィルターの光学特性を示す図。 第二実施形態において、スペクトル浮き領域における透過率の最小値を45%以上にした場合のスペクトル推定結果を示す図。 本発明に係る第三実施形態の光学フィルターデバイスを示す断面図。 本発明の電子機器(分光装置)の一例である測色装置の概略構成を示す図。 本発明の電子機器(分光装置)の一例であるガス検出装置の一例を示す概略図。 図17のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。 本発明の電子機器(分光装置)の一例である食物分析装置の概略構成を示す図。 本発明の電子機器(分光装置)の一例である分光カメラの概略構成を示す図。
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
[分光測定装置の構成]
図1は、本発明に係る第一実施形態の分光測定装置(分光装置)の概略構成を示すブロック図である。
分光測定装置1は、本発明の分光装置、及び電子機器に相当し、測定対象Xで反射された測定対象光に基づいて、測定対象光のスペクトルを測定する装置である。なお、本実施形態では、測定対象Xで反射した測定対象光を測定する例を示すが、測定対象Xとして、例えば液晶パネル等の発光体を用いる場合、当該発光体から発光された光を測定対象光としてもよい。
この分光測定装置1は、図1に示すように、光学モジュール10と、制御部20と、を備えている。
[光学モジュールの構成]
次に、光学モジュール10の構成について、以下に説明する。
光学モジュール10は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、ディテクター11(検出部)と、I−V変換器12と、アンプ13と、A/D変換器14と、電圧制御部15(ギャップ制御部)とを備えて構成される。
ディテクター11は、波長可変干渉フィルター5を透過した光を受光し、受光した光の光強度に応じた検出信号(電流)を出力する。
I−V変換器12は、ディテクター11から入力された検出信号を電圧値に変換し、アンプ13に出力する。
アンプ13は、I−V変換器12から入力された検出信号に応じた電圧(検出電圧)を増幅する。
A/D変換器14は、アンプ13から入力された検出電圧(アナログ信号)をデジタル信号に変換し、制御部20に出力する。
電圧制御部15は、波長可変干渉フィルター5の後述する静電アクチュエーター56に印加し、波長可変干渉フィルター5から印加電圧に応じた目的波長の光を透過させる。
(波長可変干渉フィルターの構成)
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
本実施形態の波長可変干渉フィルター5は、いわゆるファブリーペローエタロンである。この波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、固定基板51と、可動基板52とを備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば各種ガラスや、水晶、シリコンなどにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、固定基板51の第一接合部513及び可動基板52の第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜などにより構成された接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
固定基板51には、固定反射膜54(第一反射膜)が設けられ、可動基板52には、可動反射膜55(第二反射膜)が設けられており、これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1(ギャップ)を介して対向配置されている。そして、波長可変干渉フィルター5には、この反射膜間ギャップG1のギャップ量を調整(変更)するのに用いられる静電アクチュエーター56(ギャップ変更部)が設けられている。この静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた固定電極561と、可動基板52に設けられた可動電極562とにより構成されている。これらの固定電極561,可動電極562は、電極間ギャップを介して対向し、静電アクチュエーター56(ギャップ変更部)として機能する。ここで、これらの固定電極561,可動電極562は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。なお、図2では、電極間ギャップのギャップ量が、反射膜間ギャップG1のギャップ量より大きい例を示すが、電極間ギャップが反射膜間ギャップG1よりも小さくなる構成などとしてもよい。
以下、波長可変干渉フィルター5の構成についてより詳細に説明する。
固定基板51には、エッチングにより電極設置溝511および反射膜設置部512が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、静電アクチュエーター56に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
電極設置溝511は、例えば、固定基板51の平面中心点を中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、前記平面視において、電極設置溝511の中心から可動基板52側に突出して形成されている。この電極設置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなる。
また、図示は省略するが、固定基板51には、電極設置溝511から、固定基板51の外周縁に向かって延出する電極引出溝が設けられており、電極設置溝511に設けられた固定電極561の引出電極が設けられている。
電極設置溝511の電極設置面511Aには、固定電極561が設けられている。より具体的には、固定電極561は、電極設置面511Aのうち、後述する可動部521の可動電極562に対向する領域に設けられている。また、固定電極561上に、固定電極561及び可動電極562の間の絶縁性を確保するための絶縁膜が積層される構成としてもよい。また、固定電極561には、固定引出電極が接続されており、この固定引出電極は、上述した電極引出溝から固定基板51の外周部に引き出され、電圧制御部15に接続されている。
なお、本実施形態では、電極設置面511Aに1つの固定電極561が設けられる構成を示すが、例えば、平面中心点を中心とした同心円となる2つの電極が設けられる構成(二重電極構成)などとしてもよい。
反射膜設置部512は、上述したように、電極設置溝511と同軸上で、電極設置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜設置部512の可動基板52に対向する反射膜設置面512Aを備えている。
この反射膜設置部512には、固定反射膜54が設置されている。
この固定反射膜54は、分光測定装置1により分光スペクトルを測定する対象となる波長域(測定波長域)の光に対して反射率及び透過率を有する光学膜により形成されている。具体的には、固定反射膜54は、測定波長域に対して、反射率の最小値が75%以下であり、最大値が30%以上である光学特性を有する光学膜により構成されている。ここで、反射率の最小値が75%を超える場合、波長可変干渉フィルター5の半値幅が狭くなり、ディテクター11で受光される光量が低下してしまう。また、反射率の最小値が30%未満である場合、波長可変干渉フィルター5における波長選択機能が低下しまう。つまり、測定対象波長における各波長の光がほぼ透過してしまうことになり、所定波長に対する光量を受光できず、分光スペクトルの測定精度が低下してしまう。これに対して、上記のように、固定反射膜54が、反射率の最小値が75%以下、30%以上である光学特性を有している場合、波長可変干渉フィルター5における波長選択機能の低下を抑えつつ、十分な光量の光を透過させてディテクター11で受光させることができ、測定精度の向上を図ることが可能となる。
このような固定反射膜54としては、上記のような光学特性を有していれば、いかなる光学膜を用いてもよく、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜、単層の屈折層(例えばTiO単層膜や、SiO単層膜、ITO単層膜等)、誘電体多層膜、誘電体多層膜上に金属膜(又は合金膜)を積層した反射膜や、金属膜(又は合金膜)上に誘電体多層膜を積層した反射膜、単層の屈折層(TiOやSiO等)と金属膜(又は合金膜)とを積層した反射膜などを用いることができる。
特に、固定反射膜54として、Ag金属膜やAg合金膜を用いる場合、膜厚寸法が40nm以下、15nm以上に形成されていることが好ましい。Ag金属膜やAg合金膜は、特に、金属の中で、幅広い波長帯域に対して反射特性を示し、膜厚寸法が40nm以下、15nm以上である場合であれば、上記のような光学特性(反射率の最小値が75%以下30%以上)を満たすことができる。
また、固定反射膜54として、TiO単層膜やSiO単層膜、ITO単層膜を用いる場合、Ag金属膜やAg合金膜を用いる場合に対して、膜の劣化を抑制でき、波長可変干渉フィルター5の長寿命化を図れる。さらに、固定反射膜54がITO単層膜により構成し、かつ、固定電極561もITO単層膜により構成する場合では、固定反射膜54及び固定電極561を1工程で同時に形成することができ、製造効率性の向上をも図ることができる。
なお、固定反射膜54が上記のような光学特性(反射率特性)により構成された場合における波長可変干渉フィルター5の光学特性については、後述する。
また、固定基板51の光入射面(固定反射膜54が設けられない面)には、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
可動基板52は、平面中心点を中心とした円形状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、保持部522の外側に設けられた基板外周部525と、を備えている。
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも反射膜設置面512Aの外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動電極562及び可動反射膜55が設けられている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
可動電極562は、電極間ギャップを介して固定電極561に対向し、固定電極561と同一形状となる環状に形成されている。また、図示は省略するが、可動基板52には、可動電極562の外周縁から可動基板52の外周縁に向かって延出する可動引出電極が設けられている。この可動引出電極は、固定引出電極と同様に、電圧制御部15に接続される。
可動反射膜55は、可動部521の可動面521Aの中心部に、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向して設けられる。この可動反射膜55としては、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、可動部521よりも厚み寸法が小さく形成されている。このような保持部522は、可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により、可動部521を固定基板51側に変位させることが可能となる。この際、可動部521が保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、保持部522が静電引力により固定基板51側に引っ張られた場合でも、可動部521の形状変化が起こらない。したがって、可動部521に設けられた可動反射膜55の撓みも生じず、固定反射膜54及び可動反射膜55を常に平行状態に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点を中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
基板外周部525は、上述したように、フィルター平面視において保持部522の外側に設けられている。この基板外周部525の固定基板51に対向する面は、第一接合部513に対向する第二接合部523を備え、第二接合部523は、接合膜53により第一接合部513に接合されている。
[制御部の構成]
図1に戻り、分光測定装置1の制御部20について、説明する。
制御部20は、本発明の処理部に相当し、例えばCPUやメモリー等が組み合わされることで構成され、分光測定装置1の全体動作を制御する。この制御部20は、図1に示すように、フィルター駆動部21と、光量取得部22と、分光測定部23と、を備えている。また、制御部20は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成される記憶部30を備えている。この記憶部30には、各種データを記憶する記憶部30を備え、記憶部30には、静電アクチュエーター56を制御するためのV−λデータが記憶される。
このV−λデータには、波長可変干渉フィルター5を透過する光のピーク波長に対する、静電アクチュエーター56に印加する電圧値が記録されている。
フィルター駆動部21は、所定の測定波長域内の光を所定の測定波長間隔で波長可変干渉フィルター5を透過させる旨の指令信号を出力する。具体的には、フィルター駆動部21は、V−λデータに基づいて、測定波長間隔λc(例えばλc=20nm)毎の測定対象波長λn(n=0,1,2,3・・・)に対応する電圧値を読み込み、電圧値に対応する電圧を波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に順次印加するよう、電圧制御部15に制御信号を出力する。これにより、電圧制御部15は、静電アクチュエーター56に指令された電圧を印加し、反射膜間ギャップG1が順次切り替わることにより、波長可変干渉フィルター5から透過される光のピーク波長(中心波長)が順次変化する。
光量取得部22は、A/D変換器14から入力される信号(電圧)に基づいて、ディテクター11にて受光された光の光量(光強度)を取得する。
分光測定部23は、光量取得部22により取得された光量に基づいて、測定対象光のスペクトル特性を測定する。
ここで、本実施形態では、波長可変干渉フィルター5の光学特性において、半値幅が大きい場合であっても、測定対象Xで反射された測定光の分光スペクトルを精度よく算出するために、以下のようなスペクトル推定処理を実施する。
すなわち、分光測定部23は、以下に示す式(1)のように、光量取得部22により得られた計測スペクトル(各測定対象波長に対する光量)Dに対して、例えばメモリー等の記憶手段(図示略)に記憶された推定行列Ms(変換行列)を作用させることで、測定対象光(測定対象Xにより反射された光)の分光スペクトルSを推定する。
なお、推定行列Msは、分光測定装置1により、正確な分光スペクトルSが予め測定されている基準光を計測し、この計測により得られた計測スペクトルDと、正確な分光スペクトルSとから、算出される。
Figure 0006260076
上記式(1)において、「t」は、転置ベクトルを示している。式(1)において、分光スペクトルS及び計測スペクトルDは、「行ベクトル」で示されることから、これらの転置ベクトルは「列ベクトル」となる。
上記式(1)を、各要素を明示した状態で示すと、式(2)のようになる。
Figure 0006260076
上記式(2)において、計測スペクトルDは、分光測定装置1において計測する測定対象波長の数(バンド数)に相当する数の要素により構成される。また、本実施形態では、測定波長域(400nm〜700nm)を20nmピッチで測定する。この場合、上記式(2)では、d1〜d16の16個の要素から構成される。なお、これらのd1〜d16の要素は、それぞれ、各測定対象波長に対する光量取得部22により取得される光量となる。
また、分光スペクトルSは、推定しようとする波長の数(スペクトル点数)に相当する個数の要素から構成される。例えば、上記式(2)では、400nm〜700nmの対象波長域を、データ出力波長間隔λd(例えば、λd=5nmピッチ)の波長で分光スペクトルSを推定する。したがって、分光スペクトルSの行ベクトルの要素が61個に構成されている。すなわち、データ出力波長間隔λdは、本発明の第一波長間隔に相当する。
したがって、計測スペクトルDから分光スペクトルSを推定するための推定行列Msは、式(2)に示すように、61行×16列の行列となる。
ここで、計測スペクトルDの要素が16個であるのに対し、分光スペクトルSの要素が61個であるので、一組の計測スペクトルD及び分光スペクトルSだけでは、61行×16列の推定行列Msを決定することができない。したがって、この推定行列Msは、複数のサンプル光(予め分光スペクトルSが計測されている基準光)を分光測定装置1により計測することで決定される。
このような推定行列Msは、次のように決定する。つまり、予め分光スペクトルSが計測されている複数のサンプル光(基準光)を分光測定装置1で測定して各サンプル光に対する計測スペクトルDを取得する。このとき、計測スペクトルDは、標準白色板の測定スペクトルDwで割った分光反射率に対応する計測スペクトルに変換してあってもよい。
ここで、分光スペクトルSがスペクトル点数k(式(2)の場合では、61個)の要素を有するとし、サンプル数nのサンプル光を測定する場合、分光スペクトルSは、次式(3)のように行列Sの形で表すことができる。また、計測スペクトルDは、バンド数b(式(2)の場合では、16)の要素を持ち、サンプル数nのサンプル光に対してそれぞれ計測結果が得られる。したがって、計測スペクトルDは、次式(4)のように行列Dの形で表すことができる。
Figure 0006260076
そして、行列Sと、行列D及び推定行列Msの内積(Ms・D)との偏差を表す評価関数F(Ms)=|S−Ms・Dを設定し、この評価関数F(Ms)が最小となるように推定行列Msを決定する。すなわち、評価関数F(Ms)を推定行列Msで偏微分した値が0となるため、推定行列Msは、下記式(5)により決定することができる。
Figure 0006260076
なお、上記では、基準光であるサンプル光の分光スペクトルSに誤差がないものとしたが、サンプル光の分光スペクトルSの誤差を考慮した推定行列Msを決定してもよい。つまり、サンプル光の分光スペクトルSは、マルチ分光測色計等の計測器を用いて測定されるが、当該計測器では、数nm程度の極めて狭い波長範囲の光を取り出して分光スペクトルSを測定する。このように極めて狭い波長範囲を取り出す場合、光量が小さく、SN比が低くなるため、誤差が重畳しやすくなる。このような場合では、主成分分析法を用いると、行列Snkは、主成分数をj、主成分値をa、主成分ベクトルをvとして、「Snk=anj・vjk」として表すことができ、サンプル光の誤差を考慮した推定行列Msを算出することもできる。
なお、上記のスペクトル推定処理に限定されず、その他の推定処理を実施してもよく、例えばウィナー推定法等を用いてもよい。
[波長可変干渉フィルター5の光学特性]
図3及び図4は、従来の分光スペクトルの測定方法の概略を説明するための図である。図3は、測定により得られた各測定対象波長の光の光量(ディテクター11からの電流値)を示す。図4は、従来の方法により推定された分光スペクトル、及び実際の分光スペクトルを示す図であり、破線は従来の方法により推定された分光スペクトル、実線は実際の分光スペクトルを示す。
また、図5は、本実施形態の波長可変干渉フィルター5の光学特性(透過率特性)を示す図であり、図6は、図5の光学特性における各波長の半値幅を示した図である。図7は、従来の波長可変干渉フィルターの光学特性を示す図であり、図8は図7の光学特性における各波長に対する半値幅を示した図である。
従来、分光測定装置等の電子機器において、正確な分光スペクトルを分析する場合、図3に示すように、波長可変干渉フィルターの反射膜間ギャップを順次切り替えることで、測定波長間隔λc毎の測定対象波長λn(n=0,1,2,3・・・)の光量を取得していた。そして、各測定対象波長に対する光量を、例えば波長と光量との関係を示すグラフ上にプロットし、これらを連結することで、図4に示すように、測定光の分光スペクトルを測定していた。このような従来の構成では、波長可変干渉フィルターにより、所望の測定対象波長の光を高分解能で透過させ、その他の波長域の光の透過を抑制する必要があり、図7及び図8に示すように、各測定対象波長の測定波長間隔に対して半値幅が小さくなるように、設定していた。例えば、図7の波長440nmのスペクトル曲線を例に採ると、半値幅W440´は、測定波長間隔λcよりも小さい。
つまり、ディテクターにより検出された光の光量を、測定対象波長に対する光量とする場合、精度の高い分光スペクトルを測定するために、測定対象波長以外の光を極力混在させないように、半値幅を小さく設定する必要があった。また、従来では、半値幅がデータ出力波長間隔(第一波長間隔)λd以上である場合、1つのデータに複数の測定対象波長の光量が含まれることになり、分光スペクトルの測定誤差が大きくなることが考えられる。このため、従来の方法により分光スペクトルを測定する場合では、波長可変干渉フィルターの半値幅をデータ出力波長間隔λdより狭めることが好ましいとされた。
しかしながら、このように、半値幅を狭める従来の波長可変干渉フィルターでは、当該波長可変干渉フィルターを透過する光の光量も減退してしまう。図9は、波長可変干渉フィルター5の光学特性における半値幅と、ディテクター11で光を受光した際に出力される電流(PD電流)との関係を示す図である。
図9に示すように、半値幅とディテクター11から出力されるPD電流とは、略比例の関係となり、半値幅が大きくなるに従って、ディテクター11から出力されるPD電流は線形的に増加する。したがって、上記のような従来の波長可変干渉フィルターでは、ディテクター11において十分な受光量を得ることができず、これによって、測定対象波長以外の他の波長の光等(例えば迷光など)によるノイズ成分の影響を受けやすく、測定誤差も生じやすくなる。
また、波長可変干渉フィルターの光学特性において、半値幅を極めて狭く設定した場合でも、完全に1つの波長の光に絞り込むことは困難である。例えば、図4の波長λ1のように、測定光の分光スペクトルが急激に変化する波長域では、実際の分光スペクトルと、計測により得られる光量(図3における電流値I1´)との間に誤差が生じてしまう。
これに対して、本実施形態では、図5及び図6に示すように、波長可変干渉フィルター5の半値幅が、より広く設定されている。具体的には、本実施形態の波長可変干渉フィルター5の半値幅は、データ出力波長間隔λd(第一波長間隔)以上、測定波長間隔(第二波長間隔)λc以上に設定されている。例えば、図5において、波長440nmをピーク波長とするスペクトル曲線での半値幅W440は、約80nmであり、測定波長間隔λc(=20nm)や、データ出力波長間隔λd(=5nm)と比べて、十分に大きい値となる。
[分光測定部23の分光スペクトル推定処理の精度]
上述したような本実施形態では、波長可変干渉フィルター5を透過した光に、測定対象波長を中心とした広い波長域の光が混在することになる。このような場合でも、分光測定部23は、ディテクター11により取得された計測スペクトルDに対して推定行列Msを作用させることで、分光スペクトルSを推定することで、測定対象波長λn以外の成分の光量をカットして、測定対象波長λnの主成分の光量を抽出することができ、より実際の分光スペクトルに近い、正確な分光スペクトルSを算出することができる。
すなわち、本実施形態では、ノイズ成分が混入した場合でも、精度よくこれらノイズ成分をカットすることができ、また、測定光の分光スペクトルが急激に変化する場合でも、精度よく不要な波長成分をカットすることができる。したがって、従来では、波長可変干渉フィルターの半値幅が限られた範囲でしか測定精度の高い分光スペクトルの測定ができなかったが、本実施形態では、半値幅がより広い範囲において、高精度な分光スペクトル推定を実施することができる。
図10は、本実施形態の波長可変干渉フィルター5を用いて、分光測定部23により推定された分光スペクトルを示す図である。図10において、実線は、実際の測定光の分光スペクトルを示し、プロット点は、データ出力波長間隔λd毎の分光スペクトルの推算値である。また、図11は、本実施形態の波長可変干渉フィルター5を用い、図3及び図4に示すような従来の測定方法により測定された分光スペクトルを示す図である。なお、図11において、実線は、実際の測定光の分光スペクトルを示し、プロット点は、測定波長間隔(λc)毎の計測値を通る曲線を設定し、当該曲線をデータ出力波長間隔λd毎に分割した点を示す。
また、図12は、波長可変干渉フィルター5の半値幅を変化させた場合に、本実施形態の分光測定部23により推算された分光スペクトルと実際の分光スペクトルとの差(実線)、従来の測定方法により測定された分光スペクトルと実際の分光スペクトルとの差(破線)を示した図である。
図11に示すように、従来のようにディテクター11により検出された光量値を、波長可変干渉フィルターを透過した測定対象波長の光の光量とした場合、実際の分光スペクトルとの乖離が大きく、測定精度が悪くなる。そして、実際の分光スペクトルと、測定により得られるスペクトルとの差を小さくするためには、図7に示すように、半値幅が狭い波長可変干渉フィルターを用いる必要が生じる。
これに対して、本実施形態の分光測定部23により分光スペクトル推定処理を実施した場合、図10に示すように、実際の分光スペクトルと略一致する分光スペクトルSを高精度に推算することができ、また、図5に示すように、半値幅が広い場合でも、精度が低下することがない。
[第一実施形態の作用効果]
本実施形態の分光測定装置1では、波長可変干渉フィルター5の光学特性(測定対象波長のスペクトル曲線)における半値幅は、分光測定部23における分光スペクトルSのデータ出力波長間隔λdや測定波長間隔λcよりも大きい。
このため、1つの測定対象波長の光だけではなく、当該測定対象波長を中心としたデータ出力波長間隔λd以上、測定波長間隔λc以上の波長域の光が、波長可変干渉フィルター5を透過することになる。したがって、波長可変干渉フィルター5を透過する光の光量が増大し、ディテクター11からの検出信号(電流)も大きくなるため、ノイズ成分の影響を低減でき、測定精度を向上させることができる。
一方、上述のようにピーク波長を中心とした複数波長の光が波長可変干渉フィルター5により取り出される構成において、ディテクター11により検出された光量をそのままピーク波長(測定対象波長)に対する光量とすると、誤差が大きくなってしまう。これに対して、本実施形態では、分光測定部23により、スペクトル推定を実施して、ディテクター11により得られた計測スペクトルから測定対象波長に対応する成分の光量を抽出し、その他の波長域の光量をカットしている。このような処理を実施することで、半値幅が大きい波長可変干渉フィルター5が用いられた場合であっても、精度の高い分光スペクトル推定処理を実施することができる。
より具体的には、本実施形態では、複数の測定対象波長に対する計測スペクトルの計測結果を行列Dとし、当該行列に対して推定行列Msを作用させることで、分光スペクトルSを推定している。推定行列Msは、分光測定装置1を用いて、分光スペクトルSが既知であるサンプル光を測定して、得られたスペクトルDと分光スペクトルSとに基づいて算出される行列である。したがって、上記のように、計測スペクトルDに対して推定行列Msを作用させることで、より精度の高い分光スペクトルSを推定することができる。
また、従来のように、ディテクター11により得られた計測スペクトルを分光スペクトルとする場合、測定光の分光スペクトルが特定波長域近傍で急激に変化する場合に誤差が大きくなっていた。波長可変干渉フィルター5の半値幅を狭めて精度を高める工夫等を行ったとしても、所定の1波長の光のみを取り出すことは困難であるため、上記のような誤差をなくすことは困難であり、また、上述したように、波長可変干渉フィルター5の半値幅を狭めると、ディテクター11で受光される光量が減退するため、光量不足(ノイズ成分等)による測定誤差が発生してしまう。これに対して、本実施形態のように、分光測定部23によるスペクトル推定を実施することで、測定光の分光スペクトルが特定波長域近傍で急激に変化する場合であっても、所定のデータ出力波長間隔λdで精度の高い分光スペクトルを推算することができる。
本実施形態では、測定波長域における固定反射膜54及び可動反射膜55の反射率の最小値は、75%以下であり、30%以上である。
測定波長域における固定反射膜54及び可動反射膜55の反射率の最小値が75%を超える場合、波長可変干渉フィルター5の光学特性において、ピーク波長に対する半値幅が狭まり、当該波長可変干渉フィルター5を透過する光の光量が減少する。一方、測定波長域における固定反射膜54及び可動反射膜55の反射率の最小値が30%を下回る場合、光量は増大するものの、固定反射膜54及び可動反射膜55による光の多重干渉の効果が得られない。すなわち、波長可変干渉フィルター5による波長選択機能が低下し、測定波長域の各波長の光が均一に波長可変干渉フィルター5を透過してしまう。
これに対して、上記のように、固定反射膜54及び可動反射膜55の反射率の最小値は、75%以下30%以上である場合、波長可変干渉フィルター5による波長選択性を維持しつつ、光量の増大を好適に図ることができる。
本実施形態では、固定反射膜54及び可動反射膜55として、広い波長域に対して反射特性を有するAg金属膜又はAg合金膜を用いることが好ましく、この場合、膜厚寸法を40nm以上、15nm以下に設定することが好ましい。このような構成では、固定反射膜54及び可動反射膜55の反射率の最小値を、75%以下、30%以上に設定することができる。
また、固定反射膜54及び可動反射膜55として、TiOやSiO、ITO等の単層膜を用いてもよい。このような反射膜54,55を用いる場合、Ag金属膜やAg合金膜を用いる場合に比べて、反射膜54,55の膜劣化を抑制できる。また、ITO単層膜を用い、静電アクチュエーター56を構成する固定電極561や可動電極562としてITO単層膜を用いる場合では、電極形成と反射膜形成とを同時に行うことができ、製造効率性の向上を図ることができる。
そして、上記のように、波長可変干渉フィルター5の半値幅を広げる構成では、反射膜54,55として選択の幅が広がり、波長可変干渉フィルター5における設計自由度が向上する。これにより、より安価な波長可変干渉フィルター5を製造することも可能であり、ひいては光学モジュール10や分光測定装置1等の電子機器のコスト低減をも図ることができる。
[第二実施形態]
次に、本発明に係る第二実施形態について、以下説明する。
上述した第一実施形態では、図5に示すように、波長可変干渉フィルター5の光学特性として、測定波長域(例えば400〜700nm)における透過率の最小値が約0%である例を示した。これに対して、第二実施形態では、透過率の最小値が0%ではない例を示す。
図13は、本実施形態の波長可変干渉フィルター5の光学特性を示す図である。
図13において、本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、測定対象波長において、最低20%程度の透過率を有している。つまり、反射膜間ギャップG1をどのような値に設定した場合でも、測定波長域内の全ての波長の光が20%以上透過するように設定され、スペクトル曲線全体が浮いた形となる。なお、図13に示すように、光学特性においてスペクトル曲線が浮いている領域をスペクトル浮き領域Uと称す。
このような光学特性を有する波長可変干渉フィルター5は、反射膜54,55として、TiOやSiO、ITO等の単層膜や、厚み寸法が小さい金属膜、金属合金膜を用いることで形成することができる。
また、図13では、スペクトル浮き領域Uとして、反射率の最低値が20%程度となる例を示すが、5%以上45%未満に設定されていればよい。
図14は、スペクトル浮き領域Uとして、透過率の最小値が45%に設定された波長可変干渉フィルター5を用い、分光スペクトル推定処理を実施した場合の結果を示す図である。
図10と図14とを比較すると分かるように、スペクトル浮き領域が45%を超える場合(透過率の最小値が45%を超える場合)、波長可変干渉フィルター5を透過した光から、主成分となる波長の光(ピーク波長に対応した光)を精度よく分離することが困難となり、分光スペクトル推定処理の精度が低下してしまう。
また、スペクトル浮き領域が5%未満(透過率の最小値が5%未満)であってもよいが、この場合、第一実施形態における波長可変干渉フィルター5の光学特性と大きな差が生じず、スペクトル浮き領域による光量増大の効果はあまり得られない。
したがって、スペクトル浮き領域Uを設ける場合、上記のように、透過率の最小値が5%以上45%未満となるように、当該スペクトル浮き領域Uを設定する。このようなスペクトル浮き領域Uを設けることで、測定対象波長における光の光量を更に向上させることができ、分光測定装置1における分光スペクトルの推定処理の精度を更に向上させることができる。
又、波長可変干渉フィルター5の光学特性として、図13に示すように、測定対象とする測定波長域内に、2つのピーク波長(例えば400nm及び680nm)が現れてもよい。このように、複数のピーク波長が設けられることで、波長可変干渉フィルター5の透過光量が増大し、測定精度を向上させることができる。なお、複数のピーク波長を有する場合でも、分光測定部23によるスペクトル推定処理により、各ピーク波長の成分値を正確に分析した分光スペクトルSを推算することができ、測定精度が低下しない。
[第二実施形態の作用効果]
本実施形態では、波長可変干渉フィルター5の光学特性は、測定波長域内の各波長に対して、5%以上45%未満の最小透過率を有している(スペクトルの浮き領域Uを有する)。つまり、反射膜間ギャップG1を所定の測定対象波長に合わせて変化させた場合、当該反射膜間ギャップG1に応じて、測定対象波長の光がピーク波長として最も多く透過されるが、その他の波長の光も5%以上45%未満の透過率で透過される。
このようなスペクトルの浮き領域Uを有する光学特性では、波長可変干渉フィルター5を透過する光の光量を増加させることができ、ディテクター11から出力される検出電流も大きくなるため、ノイズ等による影響を効果的に抑制することができる。
また、本実施形態に示すように、測定波長域内に、複数のピーク波長があってもよく、測定波長域の上限値及び下限値近傍に測定対象波長とは異なる他のピーク波長があってもよい。このような場合、測定対象波長とは異なるピーク波長に対応した光が透過されることで、光量を更に増加させることができる。
そして、上記のように、測定対象波長以外の光が波長可変干渉フィルター5を透過する場合でも、分光測定部23によるスペクトル推定を実施することで、精度の高い分光スペクトルSを推定することができる。
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態の分光測定装置1では、光学モジュール10に対して、波長可変干渉フィルター5が直接設けられる構成とした。しかしながら、光学モジュールとしては、複雑な構成を有するものもあり、特に小型化の光学モジュールに対して、波長可変干渉フィルター5を直接設けることが困難な場合がある。本実施形態では、そのような光学モジュールに対しても、波長可変干渉フィルター5を容易に設置可能にする光学フィルターデバイスについて、以下に説明する。
図15は、本発明の第三実施形態に係る光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図である。
図15に示すように、光学フィルターデバイス600は、波長可変干渉フィルター5と、当該波長可変干渉フィルター5を収納する筐体601と、を備えている。なお、本実施形態では、一例として第一実施形態の波長可変干渉フィルター5を例示するが、第二実施形態のようなスペクトル浮き領域Uが設けられた波長可変干渉フィルター5が用いられる構成としてもよい。
筐体601は、ベース基板610と、リッド620と、ベース側ガラス基板630と、リッド側ガラス基板640と、を備える。
ベース基板610は、例えば単層セラミック基板により構成される。このベース基板610には、波長可変干渉フィルター5の可動基板52が設置される。ベース基板610への可動基板52の設置としては、例えば接着層等を介して配置されるものであってもよく、他の固定部材等に嵌合等されることで配置されるものであってもよい。また、ベース基板610には、光通過孔611が開口形成される。そして、この光通過孔611を覆うように、ベース側ガラス基板630が接合される。ベース側ガラス基板630の接合方法としては、例えば、ガラス原料を高温で熔解し、急冷したガラスのかけらであるガラスフリットを用いたガラスフリット接合、エポキシ樹脂等による接着などを利用できる。
このベース基板610のリッド620に対向するベース内側面612には、波長可変干渉フィルター5の固定電極561に接続された引出電極、及び可動電極562に接続された引出電極のそれぞれに対応して内側端子部615が設けられている。なお、各引出電極と内側端子部615との接続は、例えばFPC615Aを用いることができ、例えばAgペースト、ACF(Anisotropic Conductive Film)、ACP(Anisotropic Conductive Paste)等により接合する。また、FPC615Aによる接続に限られず、例えばワイヤーボンディング等による配線接続を実施してもよい。
また、ベース基板610は、各内側端子部615が設けられる位置に対応して、貫通孔614が形成されており、各内側端子部615は、貫通孔614に充填された導電性部材を介して、ベース基板610のベース内側面612とは反対側のベース外側面613に設けられた外側端子部616に接続されている。
そして、ベース基板610の外周部には、リッド620に接合されるベース接合部617が設けられている。
リッド620は、図15に示すように、ベース基板610のベース接合部617に接合されるリッド接合部624と、リッド接合部624から連続し、ベース基板610から離れる方向に立ち上がる側壁部625と、側壁部625から連続し、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側を覆う天面部626とを備えている。このリッド620は、例えばコバール等の合金または金属により形成することができる。
このリッド620は、リッド接合部624と、ベース基板610のベース接合部617とが、接合されることで、ベース基板610に密着接合されている。
この接合方法としては、例えば、レーザー溶着の他、銀ロウ等を用いた半田付け、共晶合金層を用いた封着、低融点ガラスを用いた溶着、ガラス付着、ガラスフリット接合、エポキシ樹脂による接着等が挙げられる。これらの接合方法は、ベース基板610及びリッド620の素材や、接合環境等により、適宜選択することができる。
リッド620の天面部626は、ベース基板610に対して平行となる。この天面部626には、光通過孔621が開口形成されている。そして、この光通過孔621を覆うように、リッド側ガラス基板640が接合される。リッド側ガラス基板640の接合方法としては、ベース側ガラス基板630の接合と同様に、例えばガラスフリット接合や、エポキシ樹脂等による接着などを用いることができる。
[第三実施形態の作用効果]
上述したような本実施形態の光学フィルターデバイス600では、筐体601により波長可変干渉フィルター5が保護されているため、外的要因による波長可変干渉フィルター5の破損を防止できる。
[その他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上記第一及び第二実施形態において、測定波長域を400nm〜700nmとしたが、これに限定されず、その他の波長域を測定波長域としてもよい。
また、測定波長域内の各測定対象波長(測定波長間隔λc=20nmの波長)に対する光学特性(スペクトル曲線)の半値幅が全て30nm以上に設定されている例を示したが、これに限定されず、例えば、複数の測定対象波長の光のうち、少なくとも1つの光に対して半値幅が30nm以上の大きさを有し、他の測定対象波長において半値幅が20nm程度に設定された光学特性であってもよい。
さらに、図5や図13において、本発明の波長可変干渉フィルター5の光学特性の例を示したがこれに限定されない。本発明では、波長可変干渉フィルター5だけでなく、この波長可変干渉フィルター5上に配置される複数の光学部材の光学特性を考慮した特性、すなわち、光学モジュール全体の光学特性における半値幅が測定波長間隔以上に設定されていてもよい。
例えば、図1に示すような光学モジュール10では、波長可変干渉フィルター5の光学特性と、ディテクター11における感度特性とをかけ合せた特性の検出信号(電流)が当該ディテクター11から出力される。したがって、十分な光量を取得するために、この波長可変干渉フィルター5の光学特性と、ディテクター11における感度特性とをかけ合せた特性が図5や図13に示すような光学特性となり、各波長に対する半値幅が測定波長間隔λc以上に設定されていればよい。
また、光学モジュール10として、さらに、測定対象に対して光を射出する光源を備えている場合、波長可変干渉フィルター5の光学特性、ディテクター11における感度特性、及び光源の発光強度特性とをかけ合せた光学モジュール10全体の光学特性における半値幅が測定波長間隔以上となるように、波長可変干渉フィルター5の構成や、光学部材を設定する。なお、光学モジュール10として、レンズや、透過ガラス板、バンドパスフィルター等のフィルタリング素子、及びミラー部材等が、波長可変干渉フィルター5の光路上に設けられる場合では、これらの光学部材の光学特性(透過率特性や反射率特性)をも考慮して、これらの光学特性をかけ合せた特性における各波長に対する半値幅が測定波長間隔以上となるように、各光学部材の特性や、波長可変干渉フィルター5の反射膜54,55を設定すればよい。
図5や図13において、各測定対象波長に対する各スペクトル曲線において、半値幅が測定波長間隔λc(データ出力波長間隔λd)以上となる例を示したが、これに限定されない。例えば、測定波長域内の複数の測定対象波長のうちのいずれか1つの測定対象波長の光学特性において、半値幅が測定波長間隔λcとなり、他の測定対象波長の光学特性では、半値幅が測定波長間隔λcより小さくなる構成としてもよい。
上記実施形態では、ギャップ変更部として、固定電極561及び可動電極562により構成される静電アクチュエーター56を例示したが、これに限定されない。
例えば、固定基板51に設けられる第一誘電コイルと、可動基板52に設けられる第二誘電コイルまたは永久磁石とにより構成される誘電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。
更に、静電アクチュエーター56の代わりに圧電アクチュエーターを用いる構成としてもよい。この場合、例えば保持部522に下部電極層、圧電膜、及び上部電極層を積層配置させ、下部電極層及び上部電極層の間に印加する電圧を入力値として可変させることで、圧電膜を伸縮させて保持部522を撓ませることができる。
さらには、電圧印加により反射膜間ギャップG1のギャップ量を変化させる構成に限られず、例えば、固定基板51及び可動基板52の間の空気圧を変化させることで、反射膜間ギャップG1のギャップ量を調整する構成なども例示できる。
また、本発明の分光装置、電子機器として、上記各実施形態では、分光測定装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光装置、光学モジュール、及び電子機器を適用することができる。
例えば、図16に示すように、本発明の分光装置及び電子機器を、色を測定するための測色装置に適用することもできる。
図16は、波長可変干渉フィルターを備えた測色装置400の一例を示すブロック図である。
この測色装置400は、図16に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置410と、測色センサー420(光学モジュール)と、測色装置400の全体動作を制御する制御装置430(処理部)とを備える。そして、この測色装置400は、光源装置410から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー420にて受光し、測色センサー420から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
光源装置410、光源411、複数のレンズ412(図16には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して例えば基準光(例えば、白色光)を射出する。また、複数のレンズ412には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置410は、光源411から射出された基準光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置410を備える測色装置400を例示するが、例えば検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置410が設けられない構成としてもよい。
測色センサー420は、図16に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過する光を受光するディテクター11と、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56への印加電圧を制御する電圧制御部15とを備える。また、測色センサー420は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー420は、波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光をディテクター11にて受光する。
制御装置430は、測色装置400の全体動作を制御する。
この制御装置430としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。そして、制御装置430は、図16に示すように、光源制御部431、測色センサー制御部432、および測色処理部433などを備えて構成されている。
光源制御部431は、光源装置410に接続され、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置410に所定の制御信号を出力して、所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部432は、測色センサー420に接続され、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー420にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の指令信号を測色センサー420に出力する。これにより、測色センサー420の電圧制御部15は、制御信号に基づいて、静電アクチュエーター56に電圧を印加し、波長可変干渉フィルター5を駆動させる。
測色処理部433は、本発明の処理部であり、ディテクター11により検出された受光量から、検査対象Aの色度を分析する。具体的には、測色処理部433は、上記第一及び第二実施形態と同様、ディテクター11により得られた光量を計測スペクトルDとして、推定行列Msを用いて分光スペクトルSを推算することで検査対象Aの色度を分析する。
また、本発明の電子機器の他の例として、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムが挙げられる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器等のガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
図17は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図18は、図17のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図17に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、及び排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、及び受光素子137(検出部)等を含む検出装置と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。
また、図18に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
更に、ガス検出装置100の制御部138は、図18に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、及び排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。また、ガス検出装置100には、V−λデータを記憶する記憶部(図示略)を備える。電圧制御部146は、記憶部に記憶されるV−λデータに基づいて、波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加する電圧を制御する。
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光が射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。なお、吸引口120Aには、除塵フィルター120A1が設けられ、比較的大きい粉塵や一部の水蒸気などが除去される。
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、及びレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146に対して制御信号を出力する。これにより、電圧制御部146は、上記第一実施形態に示すように、記憶部から測定対象波長に対応する電圧値を読み込み、その電圧を波長可変干渉フィルター5の静電アクチュエーター56に印加し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。ここで、波長可変干渉フィルター5の反射膜間ギャップG1を変化させることで、測定波長域に対して、所定の測定波長間隔毎の計測スペクトルDを取得し、信号処理部144は、これらの計測スペクトルDに対して推定行列を作用させて分光スペクトルSを推定する。そして、この推定された分光スペクトルSに基づいて、ラマン散乱光のスペクトルデータを取得し、このスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定することで物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
なお、上記図17及び図18において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
図19は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。
この食物分析装置200は、図19に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯・消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224(処理部)と、記憶部225と、を備えている。
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により、波長可変干渉フィルター5は、上記第一実施形態または第二実施形態に示すような駆動方法で駆動される。これにより、波長可変干渉フィルター5から目的波長を中心とした波長域の光が取り出される。そして、取り出された光は、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。すなわち、上述した第一実施形態の分光測定部23と同様の処理を実施して、得られた複数の分光画像における各画素に対する計測スペクトルから、分光スペクトルを推算する。
また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、及びその含有量を求める。また、得られた食物成分及び含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。更に、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、更には、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにして得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
また、図19において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
更には、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
更には、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図20は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図20に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図20に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
また、光学モジュール及び電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、及び電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等に適宜変更できる。
1…分光測定装置(分光装置、電子機器)、5…波長可変干渉フィルター、10…光学モジュール、11…ディテクター(検出部)、15…電圧制御部、20…制御部(処理部)、23…分光測定部、51…固定基板、52…可動基板、54…固定反射膜(第一反射膜)、55…可動反射膜(第二反射膜)、56…静電アクチュエーター(ギャップ変更部)、100…ガス検出装置(分光装置、電子機器)、144,224…信号処理部(処理部)、200…食物分析装置(分光装置、電子機器)、300…分光カメラ(分光装置、電子機器)、400…測色装置(分光装置、電子機器)、G1…反射膜間ギャップ。

Claims (8)

  1. 入射した光の一部を反射し、他の一部を透過する第一反射膜と、
    入射した光の一部を反射し、他の一部を透過し、前記第一反射膜に対向して設けられた第二反射膜と、
    前記第一反射膜と前記第二反射膜との間のギャップの大きさを変更するギャップ変更部と、
    前記ギャップの大きさを変更することで、前記第一反射膜と前記第二反射膜との間で干渉した光に基づいて得られる複数の測定対象波長の光に基づいて、所定の第一波長間隔で光学特性データを出力する処理部と、
    前記ギャップ変更部を制御して、前記測定対象波長の光を、前記第一波長間隔よりも大きい第二波長間隔で変化させるギャップ制御部と、
    を備え、
    前記処理部は、前記複数の測定対象波長の光に基づく計測スペクトルから、主成分となる波長成分を抽出して他の波長成分を除去するスペクトル推定を実施して、前記第一反射膜及び前記第二反射膜に入射する入射光の分光スペクトルを推定し、
    前記複数の測定対象波長の光の各々の半値幅は、測定波長域に亘って前記第一波長間隔及び前記第二波長間隔よりも大きく、
    前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される複数の前記測定対象波長の光のうち少なくとも一つの光は、前記測定波長域において、2つ以上の極大値を有し、
    前記測定波長域は可視光域であることを特徴とする分光装置。
  2. 請求項に記載の分光装置において、
    前記第一反射膜及び前記第二反射膜の光軸上に設けられた光学部材を備え、
    前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出される光の光学特性と前記光学部材の光学特性とをかけ合せた特性における半値幅は、前記第二波長間隔よりも大きいことを特徴とする分光装置。
  3. 請求項に記載の分光装置において、
    前記処理部は、前記計測スペクトルに対して、当該計測スペクトルを前記第波長間隔毎の分光スペクトルに変換する変換行列を作用させて、前記分光スペクトルを推定することを特徴とする分光装置。
  4. 請求項1から請求項のいずれかに記載の分光装置において、
    当該分光装置により分光測定を実施する前記測定波長域に対する、前記第一反射膜及び前記第二反射膜の反射率の最小値は、75%以下30%以上であることを特徴とする分光装置。
  5. 請求項に記載の分光装置において、
    前記第一反射膜又は前記第二反射膜は、Ag又はAg合金であり、厚み寸法が40nm以下15nm以上であることを特徴とする分光装置。
  6. 請求項1から請求項のいずれかに記載の分光装置において、
    前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、TiO単層膜により構成されていることを特徴とする分光装置。
  7. 請求項1から請求項のいずれかに記載の分光装置において、
    前記第一反射膜及び前記第二反射膜は、ITO単層膜により構成されていることを特徴とする分光装置。
  8. 請求項1から請求項のいずれかに記載の分光装置において、
    前記第一反射膜及び前記第二反射膜により構成される干渉フィルターの最小透過率は、当該分光装置により分光測定を実施する前記測定波長域内の各波長の光に対して、5%以上45%未満であることを特徴とする分光装置。
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