JP6247417B1 - スタッドボルトと被固定部材との固定構造、固定方法及びスタッドボルト - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、図11(A),(B)に示すように、スタッドボルト401は、一番外径の
大きいヘッド部405と、ヘッド部405から先端側にかけて、固定されるプーリ等の部品402の軸になる第一シャンク406と、第一シャンク406の環状溝410を有する肩部409からそれに続く第一シャンク406よりも径の小さい第二シャンク407を持ち、第二シャンク407よりも先端にはねじ軸408を持つ構造となっている。
このスタッドボルト401を、第二シャンク407よりも径が等しいか大きい穴を持つ被固定部材である金属板403に第二シャンク407を挿入し、第二シャンク407を冷間加工することで、軸方向には圧縮し、かつ径方向に膨張させた圧潰部407aを形成し、金属板403の穴のエッジ部403aに嵌合することで、第一シャンク406に挿入された部品402を金属板403に装着するようになっている。金属板403の穴のエッジ部403aは、環状溝410内に屈曲して入り込むようになっている。
また、膨張した圧潰部407aを金属板403の締結面の高さ以内に収めるため、第二シャンク407の加圧力を大きくすることが考えられるが、そうすると、金属板403の下穴のエッジ部403aに大きな曲げ応力が作用し、図11(B)中、二点鎖線で示すように、金属板403が第一シャンク406の周囲側に反るように大きく変形し、金属板403に固定された部品402がスムーズに動かないといった問題が発生する。
また、特許文献1には、第一シャンク406の肩部409に環状溝が存在しない例も開示されているが、膨張した第二シャンク407の圧潰部407aの材料が収まる部分がなく突出してしまい、金属板403の締結面と同等以下の高さにはできず、隙間は更に大きくなる。
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、スタッドボルトを被固定部材に対して強固にかしめ固定でき、しかもかしめた部分がねじ軸部が突出する側の被固定部材の板面から突出しない構成のスタッドボルトと被固定部材との固定構造、固定方法及びスタッドボルトを提供することにある。
前記かしめ軸部の外周には、前記被固定部材の固定穴の内周に形成された複数の軸方向溝に嵌合する軸方向に延びる凸条が設けられ、
前記凸条の前記ねじ軸部側の端部には、径方向外方に突出して前記被固定部材の固定穴の周縁部に係合する張出部が設けられ、
前記被固定部材の固定穴の周縁部には、前記張出部と共に局部的に窪んだ環状凹部が形成され、 前記環状凹部の内径は、前記凸条の付け根側の径である内径よりも大きく、外径よりも小さいことを特徴とする。
本発明によれば、被固定部材の固定穴の軸方向溝に、かしめ軸部の凸部が密に嵌合すると共に、被固定部材が凸条の端部に設けられた張出部が固定穴の周縁部に係合するので、被固定部材の厚みが薄くても、ねじり方向だけでなく、軸方向抜き荷重、軸直角方向の曲げ荷重等、種々の方向の荷重に対して、強固に接合することができる。
さらに、被固定部材の固定穴の周縁に、張出部と共に局部的に窪ませる環状凹部を形成することにより、張出部が被固定部材の板面から突出することがない。
このような構成とすれば、特に、部品からシャンク部に軸直角方向の曲げ荷重が作用した場合に部品を安定して支持することができる。
前記スタッド部は、カラーを介して部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、シャンク部の径は前記かしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径と同一径で、前記カラーの前記かしめ軸部側の端面が前記被固定部材に接触し、前記被固定部材を前記カラーのかしめ軸部側の端面と前記張出部の間で軸方向に挟み込む構成とすることもできる。
このような構成としても、部品からシャンク部に軸直角方向の曲げ荷重が作用した場合に部品を安定して支持することができる。
被固定部材には、更に別の被締付け板が重ねられ、前記ねじ軸部に螺合するめねじ部品によって締付け板が固定される構成とすることができる。
このように締付け板を固定する場合、張出部が環状凹部に収まっているので、被固定部材と締付け板を隙間なく密着させて接合することができる。
前記かしめ軸部には軸方向に延びる凸条が周方向に複数設けられ、
前記スタッドボルトの前記ねじ軸部を前記被固定部材の下穴に挿通し、前記かしめ軸部を前記被固定部材の下穴内周に圧入することにより、前記下穴内周に前記凸条を食い込ませ、
前記凸条の前記下穴のねじ軸部側に突出する端部をかしめることによって、径方向に膨張する張出部を形成し、該張出部を前記下穴の周縁部に係合させ、
さらに、前記被固定部材の下穴の周縁部を、前記張出部と共に局部的に窪ませて環状凹部を形成するもので、
前記環状凹部の内径は、前記凸条の付け根側の径である内径よりも大きく、外径よりも小さいことを特徴とする。
本発明のスタッドボルトと被固定部材との固定方法によれば、かしめ軸部を被固定部材の下穴内周に圧入し、凸条のねじ軸部側の端部をかしめるだけで、下穴内周に凸条を嵌合する軸方向溝を有する嵌合構造を形成できると共に、凸条の端部に下穴の周縁部に係合する張出部を成形することができる。さらに、張出部を含めて被固定部材の板面から窪ませることにより、張出部の被固定部材の板面からの突出を防止することができる。
また、かしめは、凸条の端部を部分的にかしめる構成なので、過大な圧着力が不要である。
前記スタッド部は、部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、該シャンク部はかしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径よりも大径で、前記シャンク部の前記かしめ軸部側の端部は、段差となる肩部を介してかしめ軸部に接続されており、前記肩部を前記被固定部材に接触し、前記被固定部材を前記肩部と前記張出部の間で軸方向に挟み込むように構成することもできる。
また、前記スタッド部は、カラーを介して部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、シャンク部の径は前記かしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径と同一径で、前記カラーの前記かしめ軸部側の端面を前記被固定部材に接触させ、前記被固定部材を前記カラーのかしめ軸部側の端面と前記張出部の間で軸方向に挟み込むように構成することもできる。
前記凸条のかしめは、前記ねじ軸部が挿通される穴を有するかしめ金型によって行い、かしめ金型の穴周縁には、前記環状凹部を形成するための環状凸部が設けられた構成とすることができる。
このように環状凸部を有するかしめ金型を用いることで、かしめ軸部の圧入、凸条のかしめ、さらに環状凹部の成形を、一つの金型で行うことができる。
前記かしめ軸部の外周には軸方向に延びる凸条が周方向に複数設けられ、
前記凸条の外径は、被固定部材の下穴の穴径よりも大径で、前記凸条の付け根側の内径は前記下穴の穴径よりも小径となっており、
前記凸条の長さは、前記被固定部材の厚さよりも長く、被固定部材よりも突出する前記凸条のねじ軸側の端部が、前記被固定部材に固定される際にかしめられる被かしめ部となり、 前記環状凹部の内径は、前記凸条の付け根側の径である内径よりも大きく、外径よりも小さいことを特徴とする。
前記かしめ軸部のねじ軸部側の端部には、ねじ軸部の先端に向かって徐々に小径となるように縮径するテーパ部が設けられている構成とすることができる。
このようにすれば、かしめ作業の際に、被固定部材の下穴とスタッドボルトのかしめ軸部の中心が自動調心され、凸条と下穴のエッジ部の位置を正確に位置決めすることができる。
前記凸条と凸条の間の谷部のスタッド部側の部分は、スタッド部側に向かって徐々に径方向外側に向かって傾斜する傾斜部となっている構成とすることができる。
このようにすれば、被固定部材の下穴に圧入する際に、谷部に進入する被固定部材の金属材がくさび状に圧縮されて谷部に密に接触し、接合強度が増大する。
また、前記かしめ軸部に設けられる複数の凸条は、ローレット加工部とすることができる。このようにすれば、簡単に凸条を形成することができる。
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係るスタッドボルトと被固定部材の一例としての金属薄板との固定構造、図2はスタッドボルトを示している。
まず、図2を参照して、スタッドボルトについて説明する。
このスタッドボルト1は、スタッド部2と、スタッド部2から軸方向に延びるかしめ軸部3と、かしめ軸部3のスタッド部2と反対側の端部から軸方向に延びる完全ねじ山41を備えたねじ軸部4とを有している。
スタッド部2は、部品300を回転摺動自在に支持する円筒状のシャンク部21と、シャンク部21の前記かしめ軸部3と反対側の端部に設けられるシャンク部21より大径のヘッド部22と、を備えている。ヘッド部22の頂面には、センタを決めるセンタ穴22aが設けられている。シャンク部21は挿入される部品の軸となり、円滑な可動を実現するため、グリス等が保持できる溝や平担部を設ける形状にしても良い。
シャンク部21は、かしめ軸部3のシャンク部側の端部の径よりも大径で、シャンク部21のかしめ軸部3側の端部は、段差となる肩部23を介してかしめ軸部3に接続されている。肩部23は、スタッド部2の中心軸線に対して直交する円環状の平坦面によって構成されている。
ローレット加工部5は、図2(B)、(C)に詳細に示すように、被固定部材の一例としての金属薄板100の下穴101に固定される部分で、軸方向に延びる凸条51が周方向
に複数形成されている。この例では、凸条51の軸直角方向(スタッドボルトの中心軸線に対して直角方向)の断面形状は三角山形状で、凸条51が周方向に所定ピッチで繰り返し形成されている。
凸条51の径方向先端の外径D1は、固定される金属薄板100の下穴101の穴径D0よりも大径で(D1>D0)、凸条51の付け根側の径であるローレット加工部5の内径D2は、下穴101の穴径D0よりも小径(D0>D2)となっている(図2(B))。また、ローレット加工部5の内径D2は、ねじ軸部4の完全ねじ山41の外径(呼び径)dよりも大きく設定されている。
外径D1は、最終的にねじ軸部4の完全ねじ山41で締結する締付け板の下穴径を考慮すると、ねじ呼び径d+1mmまでに抑えることが望ましい。
凸条51の山数は、金属薄板100の下穴101挿入時における金属薄板100の接合状態を考慮すると、16〜40山に設定されることが好ましい。
ローレット加工部5のスタッド部側の端部は各凸条51の端部が接続される円環状部55で、凸条51と凸条51の間の谷部52には、ローレット加工部5の軸方向中途部位から軸方向スタッド部側に向けて徐々に大径となる三角形状の傾斜部52aが設けられている。傾斜部52aは凸条51の高さまで拡径して円環状部55につながっており、円環状部55が上記アール部55aを介して肩部23につながっている。
凸条51のねじ軸部側の端部は、金属薄板100にかしめ固定する際に、軸方向に所定長さだけかしめられる。かしめ後の特性を確保し、本発明のかしめ工法にて強固な接合を行うため、スタッド部2の肩部23からローレット加工部5の終端までの長さL1は、母材となる金属薄板100の板厚tよりも長くすることが必要である(L1>t)。
導入ねじ山42の開始位置は、めねじ部品との完全山の篏合比率を確保するため、スタッド部2の肩部23からの距離L2は、2ピッチ以内に収めることが好適である。
前記ねじの無い首部4Bの径及び移行ねじ部4Cの谷径d2は、めねじJIS規格値の
内径最小値よりも小さい径となっている。
スタッドボルト1は、スタッド部2のシャンク部21にプーリ等の部品300を回転自在に挿入した状態で、かしめ軸部3が薄板母材である金属薄板100の固定穴110に圧入固定され、金属薄板100の一方の面にはスタッド部2が突出し、他方の面にはねじ軸部4が突出する構造となっている。部品300の軸方向の厚みはシャンク部21の長さよりも短く、シャンク部21の肩部23が金属薄板100の一方の板面に接触し、シャンク部21に回転自在に装着される部品300は、スタッド部2のヘッド部22と金属薄板100によって、軸方向移動が規制されている。
固定穴110の内周形状は、ローレット加工部5の形状に倣った形状で、金属薄板100の下穴101にスタッドボルト1のローレット加工部5を圧入して形成される。すなわち、固定穴110の内周形状は、ローレット加工部5の凸条51が密に嵌合する軸方向溝112が周方向に複数形成され、軸方向溝112と軸方向溝112の間に、ローレット加工部5の谷部52に密に嵌合する内周凸部111が形成されている。さらに、内周凸部111のスタッド部側の端部には、ローレット加工部5の傾斜部52aが密に接触する内周傾斜部111aが形成されている。
また、金属薄板100の固定穴110のスタッド部側の開口縁には、かしめ軸部3のスタッド部側の端部に位置するアール部55aが食い込み、肩部23が金属薄板100のスタッド部側の板面に接触する。
金属薄板100の固定穴110の周縁部には、張出部54と共に局部的に窪ませる環状凹部102が形成されている。環状凹部102の内径D3は、ローレット加工部5の内径D2よりも大きく(図1(D))、外径D1よりも小さい(図1(C))。また、環状凹部102の外径D4は、ローレット加工部5の外径D1よりも大きい(図1(C))。
張出部54は、凸条51のねじ軸部側の端部をかしめて形成された部分であり、凸条51の頂部は、張出部54からねじ軸部側の先端にかけて、かしめ時に削られ、環状凹部102の内周壁の一部を構成する円弧面となっている。
まず、図3を用いて、上記スタッドボルト1のかしめ構造に使用されるかしめ金型200について説明する。
かしめ金型200は、スタッドボルト1のねじ軸部4が挿入可能な断面円形の孔201を備えた円筒体であって、ねじ軸部4が挿入される側の端面に開口する孔201の開口縁には環状凸部202が突出している。
環状凸部202の内径は孔201の内径Daと同一径で、ローレット加工部5の外径D1よりも小径で、かつ、内径D2よりも大径に構成されている。この寸法関係は、金属薄板100の下穴101の穴径D0と同じであるが、この環状凸部202の内径Daと下穴101の穴径D0は同じであっても、異なっていてもよい。かしめ金型200の内径Daはねじ軸部4のねじ外径dよりも大きい径であり、口元には通常ボルトのねじ山の頂部とほぼ同程度の大きさのRが付与されている。
環状凸部202の外径Dbは、スタッド部2のシャンク部21の外径Dsよりも小さく、ローレット加工部5の外径D1よりも大きい。また、環状凸部202の金型面200aから隆起する高さT1は、母材の金属薄板100の板厚の10%〜50%程度である。
次に、図4を参照して、上記かしめ金型200を用いたスタッドボルト1と金属薄板100との固定方法を説明する。
まず、かしめ金型200に、スタッドボルト1のスタッド部2に部品300を組み込んだ状態で、母材となる金属薄板100の下穴101にねじ軸部4を挿入し(図4(A)参照)、かしめ金型200の孔201にスタッドボルト1のねじ軸部4を差し込む(図4(B)参照)。
この状態から、スタッドボルト1のヘッド部22とかしめ金型200間を、不図示のプレスによって軸方向に圧縮し(冷間加工)、ローレット加工部5を金属薄板100の下穴101内周に圧入すると共に、下穴101のねじ軸部4側に突出するローレット加工部5の軸方向端部をかしめることによって、捩じり方向及び軸方向に相対移動不能に固定する(図4(C)参照)。
この加工により、母材となる金属薄板100の下穴101内壁にローレット加工部5が
喰いこむとともに、板厚方向に突き出たローレット加工部5を据え込んで径方向に膨張し、金属薄板100が、ローレット加工部5の膨張した張出部54とスタッド部2の肩部23とで挟み込まれることで、金属薄板100の厚みが薄くても、強固に接合することができる。
図5(A)、(B)は、図4(B)の位置に対応し、金属薄板100の下穴101のスタッド部側のエッジ部101aが、凸条51のねじ軸部側の端面に当接した状態を示している。金属薄板100の下穴101とスタッドボルト1の中心軸がずれていても、テーパ部53によって自動調心され、下穴101のエッジが凸条51の内径と外径の中間位置に位置決めされる。図では、かしめ金型200の環状凸部202の内径と金属薄板100の下穴101の穴径D0が同一としているが、同一である必要は無い。
この状態で、プレスで圧縮していくと、図5(C),(D)に示すように、母材となる
金属薄板100の下穴101内壁にローレット加工部5が圧入される。この圧入により、金属薄板100の下穴101内周がローレット加工部5の形状に倣って塑性変形し、ローレット加工部5の凸条51に対応する軸方向溝112と、ローレット加工部5の谷部52に対応する内周凸部111が形成されていく。
この圧入工程で、ローレット加工部5の凸条51が軸方向溝112に密に嵌合し、谷部52に内周凸部111が密に嵌合する嵌合状態となり、ねじり方向の耐トルク性が確保される。
これ以降は、図5(F)、(G)に示すように、ローレット加工部5の凸条51のうち、かしめ金型の穴径Daよりも径の大きい部分が、スタッド部2側に据え込まれて、かしめが開始する。このかしめによって、ローレット加工部5の凸条51のねじ軸部側の端部に、半径方向に突出する張出部54が形成される。張出部54は、かしめが進行するにしたがって、半径方向への張出量が大きくなり、環状凸部202の先端面と金属薄板100の当接面との間に、くさび状に進入する。
そして、図5(G)、(H)に示すように、金属薄板100のスタッド部側の締結面が、肩部23に当接した後、さらに、加圧することで、環状凸部202によって、固定穴110の周縁を押圧し、金型面200aが金属薄板100に当接するまでかしめ、かしめ圧着が終了する。固定穴110の周縁には、環状凸部202が食い込んだ環状凹部102が形成され、張出部54が、本来の厚さの金属薄板100のねじ軸部4側の板面から突き出ないように押さえ込まれている。
以上のとおり、かしめ金型200の環状凸部202の端面及び金型面200aとスタッド部の肩部23の平面同士が平行な状態で接触しながら圧入、かしめを行うことができ、金属薄板100の変形も生じることはない。
この加工に使用される金属薄板100の板厚は、1mm以下であり、適用されるねじの1ピッチ以下の厚みとなる。
なお、金属薄板100の板厚tが制限され、有効なローレット加工部5の長さ確保が困難な場合には、図6に示すように、スタッド部2の肩部23とローレット加工部5を繋ぐR部を、スタッド部2の肩部23側に凹ませるアンダーカット部24を設けることにより、長いローレット加工部5を金属薄板100の下穴101に篏合させることができる。
次に、本発明のスタッドボルトと金属薄板との固定構造を備えた構造体の強度試験結果
について説明する。
図7には、試験に供した構造体の構成例を示している。この構造体は、部品300を装着したスタッドボルト1と金属薄板100の組立体の金属薄板100に、締付け板310を重ね、ナット320で締め付け固定した。
この構造体に、種々の方向の荷重を負荷した結果、以下の通り、締結時のねじり強度や使用する上での要求接合強度を満足するものであった。
・軸方向抜き荷重について
ローレット加工部5の圧入のみでは、平均0.33kN(min0.25kN〜max0.41kN)に対し、
本発明では、平均0.70kN(min0.68kN〜max0.72kN)であった。
・軸直角方向曲げ荷重
ローレット加工部5の圧入のみでは、平均0.56kN(min0.50kN〜max0.61kN)に対し、
本発明では、平均0.77kN(min0.72kN〜max0.84kN)であった。
・ねじり分離強度
ねじ軸部4が破壊するまで締付けトルクを負荷しても、カシメ固定部に異常はなかった。
M6、強度区分9.8のねじ部をもつカシメ後のスタッドボルトに、トルクを負荷した結果、26N.mにてねじ軸部4が折損した。
*カシメ母材である金属薄板100の板厚1mm、締付け板310の板厚0.6mmにて試験実施。
上記実施形態では、スタッド部2は、部品300を摺動案内する円柱状のシャンク部21と、シャンク部21より大径のヘッド部22と、を備え、スタッド部2の肩部23はシャンク部21の肩部に相当しているが、このスタッド部2の構成については、図8(A)
乃至(H)に示すように、種々の構成とすることができる。以下の説明で、図1と同一の構成部分については、同一の符号を付して説明を省略するものとする。
他の形態1
図8(A)は、部品300が回転自在に挿入されるシャンク部21を、大径円筒状の第
1シャンク21Aと小径円筒形状の第2シャンク21Bの2段形状としたもので、小径の第2シャンク21Bの肩部23が金属薄板100に当接する。
一方、プーリ等の部品300は、第1シャンク21A外周に回転摺動自在に接触し、第2シャンク21Bは部品300を支持する軸ではなく、部品300の内周との間に隙間が形成されている。
他の形態2
図8(B),(C)は他の形態2を示し、(B)は部品と金属薄板を断面に示すスタッドボルトの正面図、(C)はシャンク部の軸直角方向の断面図である。
図8(B)、(C)に示すように、この形態は、図1のシャンク部21に二面幅部21Cを設けたもので、シャンク部21の形状を円筒形でない軸形状としたものである。二面幅21Cを設けることで、軽量化が可能となる。
他の形態3
図8(D)は他の形態3を示している。
この形態3では、プーリ等の部品300が挿入されるシャンク部21Dの径を小さくして、カラー26を挿入した状態でローレット加工部5をかしめる構成となっている。すなわち、シャンク部21Dのカラー26が存在する位置の径を小さくして、図1のシャンク部21から、ローレット加工部5に接続する肩部23を無くしたものである。この場合、金属薄板100は、ローレット加工部5の凸部51をかしめた張出部とカラー26との間
で金属薄板100が軸方向に挟み込まれる。
他の形態4
図8(E),(F)は他の形態4を示し、(E)は部品と金属薄板を断面にして示すス
タッドボルトの正面図、(F)はスタッドボルトの平面図である。
図8(E),(F)に示すように、ヘッド部22Eの平面形状を、円形ではなく、角部
の丸い四角形状としたものである。なお、このヘッド部22Eの形状を、上記した他の形態1,2、3と組み合わせてもよい。
他の形態5
図8(G)は、プーリ等の部品300が位置するシャンク部21よりも下部にシャンク部21よりも径の大きい鍔部29を設けている。この鍔部29の下にあるローレット加工部5にて、金属薄板100にカシメ加工を行うものである。
また、図1のヘッド部の代わりに、シャンク部21の上端部に、円筒状の突起部27を設け、その突起部27よりも径の大きい内径を持ち、シャンク部21よりも径の大きい外径を持つワッシャ302を、突起部27を変形させながらかしめて、シャンク部21に部品300を挟み込む。
このワッシャ302の固定は、金属薄板100に対するローレット加工部5のかしめと同時に加工する。
他の形態6
図8(H)は、図8(G)と同様に、部品300が嵌合するシャンク部21よりも下方に、シャンク部21よりも大径の鍔部29を設け、この鍔部29の下にあるローレット加工部5を金属薄板100にかしめるものである。
この形態6では、シャンク部21の上端部に窪み28を設け、この窪み28の周辺部28aをシャンク部21の外径よりも拡張するように塑性変形させ、シャンク部21に部品300を挟み込むようになっている。この部品300の固定も、金属薄板100に対するローレット加工部5のかしめと同時に加工する。
図9は、スタッドボルトと被固定部材(金属薄板)との固定構造を示すものである。
この形態3においては、シャンク部21Dは、カラー26を介して部品300を回転摺動自在に支持するもので、シャンク部21Dの径は、かしめ軸部3のシャンク部21D側の端部であるアール部55aの最大径と同一の円柱形状である。カラー26は円筒形状で、軸方向の長さはシャンク部21Dの軸方向長さと同一で、金属薄板100に固定された状態で、カラー26の一方の端面26bがヘッド部22に当接し、他方の端面26aが金属薄板100のスタッド部2側の板面に接触している。このカラー26のかしめ軸部側の端面26aと張出部54の間で、金属薄板100が軸方向に挟み込まれる構成となっている
図9を図1と対比すると、図1のスタッド部2の肩部23に対応する部分が、シャンク部21C外周に嵌合するカラー26に置き換えられただけで、その他の構成は、図1と同じであり、詳細な説明は省略する。カラー26を用いることにより、種々の大きさの部品に対応することができる。
次に、図10を参照して、かしめ金型を用いたスタッドボルト1と金属薄板100との固定方法を説明する。
まず、スタッドボルト1のシャンク部21Dに、カラー26と部品300を組み込んだ状態で、母材となる金属薄板100の下穴101にねじ軸部4を挿入し(図10(A)参照)、かしめ金型200の孔201にねじ軸部4を差し込む(図10(B)参照)。
図示例では、カラー26はシャンク部21D外周に対して、自重によって下方に移動して金属薄板100上に当接した状態としているが、シャンク部21D外周に摩擦係合して、自重によっては軸方向に移動しない程度の嵌め合い寸法としてもよい。
この状態から、スタッドボルト1のヘッド部22とかしめ金型200間を、不図示のプレスによって軸方向に圧縮し(冷間加工)、ローレット加工部5を金属薄板100の下穴
101内周に圧入すると共に、下穴101のねじ軸部4側に突出するローレット加工部5の軸方向端部をかしめることによって、捩じり方向及び軸方向に相対移動不能に固定する(図10(C)参照)。かしめ終了時点では、カラー26の上端面26bがスタッド部2のヘッド部22の下面に当接し、下端面26aが金属薄板100の上面に当接する。
すなわち、図10(D)に拡大して示すように、母材となる金属薄板100の下穴101内壁にローレット加工部5が喰いこむとともに、板厚方向に突き出たローレット加工部5が据え込まれ、凸条51の下穴11のねじ軸部4側に突出する端部がかしめられて径方向に突出し、下穴101の周縁部に係合する張出部54が形成される。この張出部54とカラー26の下端面26aとの間で、金属薄板100を挟み込み、さらに、金属薄板100の下穴101の周縁部を、張出部54と共に局部的に窪ませて環状凹部102を形成する。
なお、ローレット加工部5のかしめ工程の詳細は、図5に示した上記実施形態の肩部23をカラー26に置き換えただけであり、詳細な説明は省略する。
また、先端にあるねじ軸部4を使用して様々な締付け板へ締結する際、その板厚が、適用されるねじの1ピッチ以下の厚みでも締結することが可能となった。
2 スタッド部
21 シャンク部、22 ヘッド部、22a センタ穴
23 肩部、24 アンダーカット部
21A 第1シャンク、21B 第2シャンク
21C 二面幅
21D シャンク部
26 カラー、26a下端面、26b上端面
27 突起部
28 窪み、28a周辺部
29 鍔部
3 かしめ軸部
4 ねじ軸部
4A 平行ねじ部、4B 首部、4C 移行ねじ部、4D アール部
41 完全ねじ山、42 導入ねじ山
5 ローレット加工部
51 凸条、51a 端部、52 谷部、52a 傾斜部
53 テーパ部、54 張出部、55 円環状部
100 金属薄板
101 下穴、102 環状凹部、
110 固定穴、111 内周凸部、112 軸方向溝
112a 内周傾斜部
200 かしめ金型
200a 金型面、201 孔、202 環状凸部
300 部品
310 締付け板
320 ナット(めねじ部材)
D0 下穴101の穴径
D1 凸条51の外径、D2 凸条51の内径
D3 環状凹部102の内径、D4 環状凹部102の外径
Da 孔201の内径
Ds シャンク部21の外径
t 金属薄板101の板厚
T1 環状凸部202の高さ
Claims (12)
- スタッド部と、該スタッド部から軸方向に延びるかしめ軸部と、該かしめ軸部の前記スタッド部と反対側の端部から軸方向に延びるねじ軸部とを有し、前記かしめ軸部が被固定部材の固定穴に固定され、前記被固定部材の一方の面にはスタッド部が突出し、他方の面にはねじ軸部が突出する構造のスタッドボルトと被固定部材との固定構造において、
前記かしめ軸部の外周には、前記被固定部材の固定穴の内周に形成された複数の軸方向溝に嵌合する軸方向に延びる凸条が設けられ、
前記凸条の前記ねじ軸部側の端部には、径方向外方に突出して前記被固定部材の固定穴の周縁部に係合する張出部が設けられ、
前記被固定部材の固定穴の周縁部には、前記張出部と共に局部的に窪んだ環状凹部が形成され、
前記環状凹部の内径は、前記凸条の付け根側の径である内径よりも大きく、外径よりも小さいことを特徴とするスタッドボルトと被固定部材との固定構造。 - 前記スタッド部は、部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、該シャンク部は前記かしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径よりも大径で、前記シャンク部の前記かしめ軸部側の端部は、段差となる肩部を介して前記かしめ軸部に接続されており、前記肩部は前記被固定部材に接触し、前記被固定部材を前記肩部と前記張出部の間で軸方向に挟み込む構成となっている請求項1に記載のスタッドボルトと被固定部材との固定構造。
- 前記スタッド部は、カラーを介して部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、該シャンク部の径は前記かしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径と同一径で、前記カラーの前記かしめ軸部側の端面が前記被固定部材に接触し、前記被固定部材を前記カラーの前記かしめ軸部側の端面と前記張出部の間で軸方向に挟み込む構成となっている請求項1に記載のスタッドボルトと被固定部材との固定構造。
- 前記被固定部材には、更に別の締付け板が重ねられ、前記ねじ軸部に螺合するめねじ部品によって前記締付け板が固定される請求項1乃至3のいずれかの項に記載のスタッドボルトと被固定部材との固定構造。
- スタッド部と、該スタッド部から軸方向に延びるかしめ軸部と、該かしめ軸部の前記スタッド部と反対側の端部から軸方向に延びるおねじを備えたねじ軸部と、を有するスタッドボルトを、固定用の下穴を備えた被固定部材に固定するスタッドボルトと被固定部材との固定方法において、
前記かしめ軸部には軸方向に延びる凸条が周方向に複数設けられ、
前記スタッドボルトの前記ねじ軸部を前記被固定部材の下穴に挿通し、前記かしめ軸部を前記被固定部材の下穴内周に圧入することにより、前記下穴内周に前記凸条を食い込ませ、
前記凸条の前記下穴のねじ軸部側に突出する端部をかしめることによって、径方向に膨張する張出部を形成し、該張出部を前記下穴の周縁部に係合させ、
さらに、前記被固定部材の下穴の周縁部を、前記張出部と共に局部的に窪ませて環状凹部を形成するもので、
前記環状凹部の内径は、前記凸条の付け根側の径である内径よりも大きく、外径よりも小さいことを特徴とするスタッドボルトと被固定部材との固定方法。 - 前記スタッド部は、部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、該シャンク部は前記かしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径よりも大径で、前記シャンク部の前記かしめ軸部側の端部は、段差となる肩部を介して前記かしめ軸部に接続されており、前記肩部は前記被固定部材に接触し、前記被固定部材を前記肩部と前記張出部の間で軸方向に挟み込む構成となっている請求項5に記載のスタッドボルトと被固定部材との固定方法。
- 前記スタッド部は、カラーを介して部品を回転摺動自在に支持するシャンク部を備え、該シャンク部の径は前記かしめ軸部の前記シャンク部側の端部の径と同一径で、前記カラー
の前記かしめ軸部側の端面が前記被固定部材に接触し、前記被固定部材を前記カラーの前記かしめ軸部側の端面と前記張出部の間で軸方向に挟み込む構成となっている請求項5に記載のスタッドボルトと被固定部材との固定方法。 - 前記凸条のかしめは、前記ねじ軸部が挿通される穴を有するかしめ金型によって行うもので、該かしめ金型の穴周縁には、前記環状凹部を形成するための環状凸部が設けられている請求項5乃至7のいずれかの項に記載のスタッドボルトと被固定部材との固定方法。
- スタッド部と、該スタッド部から軸方向に延び、被固定部材の下穴に固定するためのかしめ軸部と、該かしめ軸部の前記スタッド部と反対側の端部から軸方向に延びるねじ軸部とを有するスタッドボルトであって、
前記かしめ軸部の外周には軸方向に延びる凸条が周方向に複数設けられ、
前記凸条の外径は、被固定部材の下穴の穴径よりも大径で、前記凸条の付け根側の内径は前記下穴の穴径よりも小径となっており、
前記凸条の長さは、前記被固定部材の厚さよりも長く、被固定部材よりも突出する前記凸条のねじ軸側の端部が、前記被固定部材に固定される際にかしめられる被かしめ部となり、
前記環状凹部の内径は、前記凸条の付け根側の径である内径よりも大きく、外径よりも小さいことを特徴とするスタッドボルト。 - 前記かしめ軸部の前記ねじ軸部側の端部には、前記ねじ軸部の先端に向かって徐々に小径となるように縮径するテーパ部が設けられていることを特徴とする請求項9に記載のスタッドボルト。
- 前記凸条と凸条の間の谷部の前記スタッド部側の部分は、前記スタッド部側に向かって徐々に径方向外側に向かって傾斜する傾斜部となっている請求項9又は10に記載のスタッドボルト。
- 前記かしめ軸部に設けられる複数の凸条は、ローレット加工部である請求項9乃至11のいずれかの項に記載のスタッドボルト。
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