JP6246390B2 - 回路投入器及び回路投入システム - Google Patents
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Description
また、真空容器内に配置した一対の電極の接触子を接触させることで電極間を導通状態にする構成が開示されている(例えば特許文献2参照)。
さらに、前記構成と同様に真空バルブを使用する回路投入器として、真空容器内に一対の主電極を対向配置し、その一方または両方の主電極に近接させて設けたトリガ電極に高電圧を印加することで、トリガ電極と主電極との間で微小放電を行わせ、これにより発生したプラズマを主電極に注入して主電極の間の絶縁を破壊してアークを発生させることで導通状態にするパルス形回路投入器の構成が開示されている(例えば特許文献3参照)。
また、電極材料が無酸素銅の場合の真空間隙の絶縁破壊特性を示したものがある(非特許文献1、本願添付図面の図6として引用)。また、電極材料が異なる場合の絶縁破壊電圧を示したものがある(非特許文献2、本願添付図面の図7として引用)。
一方、真空間隔は電極の表面状態に鋭利な突起などの凹凸がない場合には一般的に20kV/mmという高い絶縁破壊電界特性を有することが知られており、真空バルブを用いた回路投入器の場合、真空の高い絶縁耐力を利用するため、空気やSF6ガスなどの絶縁ガスを利用した場合に比べて短い極間距離で高い印加電圧に耐えられるが、真空中の絶縁性能は電極の表面状態に強く依存することが知られており、例えば陰極の電極表面に鋭利な突起が生じると、その先端で電界の集中による電子放出が生じ、その電流密度が大きいため著しく高温となって電極が溶融蒸発し、極間の絶縁性能低下による絶縁破壊が発生して放電へ進展する。電極表面に鋭利な突起が生じる要因として、電極の接触時に生じる溶着部を解離時に無理に引きはがすことが挙げられる。
特許文献2のような回路投入器の場合、電極間に電圧が印加された状態で投入動作を行うと、主電極間の真空間隙の絶縁耐力が印加される電圧に耐えられなくなる時点でアークが生じ、その後主電極同士が接触する。この状態で次の投入動作に備えて主電極を開くと、溶着部が無理やり引きはがされることによって電極表面に突起が生じ、前述のメカニズムにより回路を開放する定常時の電極間の絶縁性能が著しく低下して、定常時に回路を良好に開路できなくなるという問題点があった。
また、特許文献3のようなパルス形回路投入器の場合は、主電極を接触させずに極間をアークで短絡して回路投入を行うため主電極表面に前述の突起は発生しないが、回路投入時にトリガ電極と主電極間を放電させるにはトリガ電極先端を高電界状態にする必要があり、必然的にトリガ電極径が小さくなる。そのため、投入動作時のトリガ電極消耗量が多く動作可能回数が少ないという問題点があった。また、トリガ電極と主電極間を放電させるためにトリガ電極に電圧を印加するパルス電源が必要であり、性能を長期間良好に維持するには、精密機器であるパルス電源を高頻度にメンテナンスする必要があった。
図1は本発明の実施の形態1による回路投入器を概略的に示す構成図、図2は図1に示された回路投入器を使用する直流電流遮断器の構成を概略的に示す回路図である。図1において、回路投入器100は、同軸に配設された固定側絶縁円筒10a及び可動側絶縁円筒10bの軸方向の外側端部を固定側端板10c及び可動側端板10dでそれぞれ塞ぎ、中央部をアークシールド支持部10eにより閉止して構成される真空容器10内に、対向して配設された固定電極12A及び可動電極12B、一端が固定電極12Aと接続され他端側が固定側端板10cを気密に貫通しその貫通部で固定された固定通電軸13A、並びに一端部が可動電極12Bと固着され他端部が真空容器10の外部にベローズ11を介して気密を保持して軸方向に移動可能に引き出された可動通電軸13Bを有する真空バルブ1と、可動通電軸13Bの他端部に絶縁ロッド2を介して接続され可動電極12Bを軸方向に駆動する操作装置3を備えている。
図2のように構成された遮断器500は、図に示す遮断部55を流れる直流電流Iを遮断する場合、回路投入器100を投入することで、予め充電されたコンデンサ52からリアクトル53を通じて遮断部55へ前記直流電流Iと逆向きの電流を流し、電流零点を形成する。
従って上述の直流電流を遮断する遮断器500を構成する回路投入器100は、定常時にはその極間に印加される電圧を絶縁することで前記充電回路を良好に開路し、遮断時には前記充電回路を閉路する性能を備える必要がある。
図4はベローズの動作速度と動作可能回数との一般的な関係を概略的に示す図である。図において、縦軸はベローズの動作可能回数、横軸は動作速度を示している。図4に示すように、ベローズの動作速度を高めるほど動作可能回数が小さくなるので、回路投入器100はその必要動作回数に対して限界となる動作速度以下の速度で投入するように構成することが望ましい。
なお、図6に示されたプロットの形状は電極の形状の違いを表しており、同図は電極材料が無酸素銅の場合の真空間隙の絶縁破壊電界E50は、電極の形状によらず、陰極における最大電界の90%までの面積(S90)が例えば200mm2から1000mm2の範囲では近似曲線で示すように、近似式 140×(S90)−0.225 で示される特性に依存することを示している。なお、この特性は図1に示した平板状の電極でも、電極の一部が盛り上がり不平等な電界を形成する形状でも変わらない。
前述の固定電極12A及び可動電極12Bの絶縁が両電極間の印加電圧によって破壊され回路が投入される瞬間の離間距離d2は、例えば図6に示されるような真空間隙の絶縁破壊特性に基づく近似式などによって決めればよく、d2を5mm以下に設定する場合は例えば両電極の間隙が5mmの状態におけるS90を1000mm2、最大電界部の電界を29.6kV/mm以上にすればよい。
このような公知の事実から、回路投入時に接近させる固定電極12A及び可動電極12Bの間の離間距離d1は以下の手順1)〜4)によって決めることが望ましい。
2)離間距離d2における陰極側電極の有効面積(S90)が上記範囲内に収まり、かつ極間印加電圧による電極端部の最大電界値が上述の特性と材料による耐電圧性能の違いも考慮して求めた予想絶縁破壊電界値E50を上回るように固定電極12Aと可動電極12Bの形状を設計する。
3)離間距離d1を少なくともd2よりも短い距離に設定する。
4)またこの時、離間距離d1は絶縁破壊時に発生するアークの熱で蒸発した接点の金属が、消弧後に冷却して個体に戻る際に、電極間を物理的および電気的に橋絡する距離d3よりも長い距離とする。電極間が前記蒸発金属によって橋絡される距離はアーク電流値、電極径、形状、電極材料によって異なるため、d3はこれらパラメータによって決まる。
電極形状の高電界部の面積S90を増大させる利点は、固定電極12A及び可動電極12Bの間の絶縁破壊電界値E50を低下させ、最接近したときの両電極の離間距離d1を大きくすることが出来る点である。
離間距離d1が微小である場合、操作装置3と可動電極12Bの間にある部品同士の接続部の緩みや工作誤差等による操作装置3の可動範囲のばらつきなどにより、投入動作時に設定した停止位置を超えて可動電極12Bが固定電極12Aに向かって移動して電極同士が衝突する危険があるが、有効面積S90を増大させて絶縁破壊電圧E50を低下させれば、離間距離d1が大きくなり、前記衝突の危険を減ずることが出来る。
図8は本発明の実施の形態2による回路投入器を概略的に示す構成図であり、可動電極12Bを固定電極12Aに接近させて両者の間に発生するアークAで回路を投入している状態を示している。図において、可動通電軸13Bにおける、ガイド部材14よりも操作装置3側に突出された部分の外周部には、外径がガイド部材14の内径よりも大きく形成された移動規制部材131が固着されており、可動通電軸13Bの固定電極12A方向への移動範囲が規制されている。その他の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
図9は本発明の実施の形態3による回路投入器を概略的に示す構成図であり、可動電極12Bを固定電極12Aに接近させて両者の間に発生するアークAで回路を投入している状態を示している。図において、可動通電軸13Bの先端部には回路投入時に対向する相手側に衝突することによって離間距離d1を確保するようにした絶縁物からなるストッパ16が可動電極12Bを貫通して突出するように取り付けられている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
図10の回路図は本発明の実施の形態4による回路投入システム300を概略的に示す回路図である。本実施の形態の回路投入システム300は、実施の形態1から3に記載の回路投入器100を第1の回路投入器としたときに、この第1の回路投入器に少なくとも一つの真空容器内に対向配置され両者の距離が固定された一対の電極を有する第2の回路投入器200が直列に取り付けられている。
図(a)において、回路投入器100が動作すると、図(b)のようにその隣の第2の回路投入器200の極間には、もともと印加されていた電圧から回路投入器100投入後に分担される電圧への移行過程で過電圧が印加される。これは、回路投入器100の極間が導通状態になった後もそれと並列に接続されたコンデンサ56の電荷が配線のインダクタンス成分57によって瞬時に放電されないため、回路投入器100の隣の第2の回路投入器200には自身に並列に接続されたコンデンサの充電電圧と回路投入器100に並列に接続されたコンデンサの充電電圧の合算電圧が印加されるためである。この過渡過電圧の大きさは、回路投入システム300における回路投入器100および200の数や定常時印加電圧、コンデンサ56の容量、配線のインダクタンス成分57の値、コンデンサ56の接続箇所を決めれば一意に決定される。
つまり、上述の電圧V1は開路時に第2の回路投入器200と並列に接続される抵抗58によって分担される電圧であり、また上述の電圧V2は前記回路投入器100が導通状態になった直後に第2の回路投入器200に印加される過電圧となることから、第2の回路投入器200の電極形状、電極間の距離および電極材料は前述のV1およびV2を勘案して設定すればよい。
Claims (9)
- 真空容器内に対向配置された一対の電極の一方が他方の電極に対して進退可能に設けられた真空バルブと、所定時に前記電極の一方を前記電極の他方に向けて駆動させる操作装置とを備えた回路投入器であって、前記一対の電極間の離間距離dが、常にd>0であり、かつ、回路投入完了状態における前記一対の電極間の離間距離d1は、投入する回路の充電電圧Vによって前記一対の電極間の絶縁が破壊される距離d2よりも短く、投入動作後に前記一対の電極間が前記一対の電極を構成し回路投入時に発生するアークの熱で蒸発して発生する電極金属の蒸着物によって橋絡する距離d3よりも長くしたことを特徴とする回路投入器。
- 前記距離d2が、前記一対の電極の間に前記充電電圧Vが印加された時の陰極側の電極表面における最大電界値よりも、前記陰極側の電極表面積のうち前記最大電界値の90%までの電界範囲の面積(S90)に対して求められた近似式で決まるワイブル分布の中央値である50%絶縁破壊電界値(E50)の方が大きくなるように決められてなることを特徴とする請求項1記載の回路投入器。
- 前記操作装置の操作距離を、前記一対の電極間の回路開放時における離間距離d0よりも短くしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路投入器。
- 前記対向配置された一対の電極の内、陰極側の電極における対向面の表面形状を、対向する電極に向かって、その外周部が中央部よりも突出するように形成し、最大電界値の90%までの面積(S90)が増大するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の回路投入器。
- 一端部が前記対向配置された一対の電極の一方と固定され、他端部が前記真空容器に対してその外側に気密を保持して移動可能に引き出された可動通電軸と、この可動通電軸と前記真空容器との間に設けられ、前記可動通電軸の前記他方の電極方向への移動範囲を規制する移動規制部材を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の回路投入器。
- 一端部が前記対向配置された一対の電極の一方に固定され、他端部が前記真空容器に対してその外側に気密を保持して移動可能に引き出された可動通電軸を有する移動子と、一端部が前記一対の電極の他方に固定され、他端部が前記真空容器に対してその外側に引き出された通電軸を有する固定子と、前記移動子及び前記固定子の少なくとも一方に設けられ、回路投入時に対向する相手側に衝突することによって前記離間距離d1を確保するようにした絶縁物からなるストッパと、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の回路投入器。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載の回路投入器を第1の回路投入器として、前記第1の回路投入器に少なくとも一つ接続された第2の回路投入器を備えた回路投入システムであって、
前記第2の回路投入器は少なくとも1つの真空容器内に対向配置され両者の距離が固定された一対の電極を有することを特徴とする回路投入システム。 - 前記第2の回路投入器の絶縁破壊電圧は、開路状態において前記第2の回路投入器に印加される電圧より高く、前記第1の回路投入器が絶縁破壊された閉路状態において第2の回路投入器に印加される電圧より低く設定されたことを特徴とする請求項7記載の回路投入システム。
- 前記第1の回路投入器および前記第2の回路投入器に抵抗がそれぞれ並列に接続されるとともに、コンデンサが前記第1の回路投入器および前記第2の回路投入器のそれぞれ、または複数にまたがるように並列に接続されたことを特徴とする請求項7または請求項8記載の回路投入システム。
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