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JP6246390B2 - 回路投入器及び回路投入システム - Google Patents

回路投入器及び回路投入システム Download PDF

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Description

本発明は電力送電網などで用いられる、充電されたコンデンサもしくは電源を他の回路に接続する回路投入器(閉路装置ともいう)及び回路投入システムに関する。
従来の技術として、充電されたコンデンサ等から成る回路において、一対の電極間の電圧が絶縁破壊電圧に達した時に、その電極間が短絡して閉路する自己放電形回路投入器の構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
また、真空容器内に配置した一対の電極の接触子を接触させることで電極間を導通状態にする構成が開示されている(例えば特許文献2参照)。
さらに、前記構成と同様に真空バルブを使用する回路投入器として、真空容器内に一対の主電極を対向配置し、その一方または両方の主電極に近接させて設けたトリガ電極に高電圧を印加することで、トリガ電極と主電極との間で微小放電を行わせ、これにより発生したプラズマを主電極に注入して主電極の間の絶縁を破壊してアークを発生させることで導通状態にするパルス形回路投入器の構成が開示されている(例えば特許文献3参照)。
また、電極材料が無酸素銅の場合の真空間隙の絶縁破壊特性を示したものがある(非特許文献1、本願添付図面の図6として引用)。また、電極材料が異なる場合の絶縁破壊電圧を示したものがある(非特許文献2、本願添付図面の図7として引用)。
特開平11−8043号公報(第4〜5頁、図1〜3) 特開平8−264082号公報(第4〜5頁、図1〜4) 特開平1−186780号公報(第3〜4頁、図1〜2) 佐藤伸治、小山健一、「不平等電界真空ギャップの破壊電界における電極面積効果」、電気学会論文誌A、124巻8号752頁、2004年 Moscik-Grzesiak,H 他,"Estimation of properties of contact materials used in vacuum interrupters based on investigations of the microdischarge phenomenon", IEEE Transaction on Components,Materials and Packaging-Part A,18巻,344−347頁,1995年6月
特許文献1のような回路投入器の場合、予め所定の電圧で絶縁破壊するような距離を隔てて配置された2つの電極間に電圧を印加して放電させることで回路を閉路する投入器であり、またその可動側電極の操作装置も、前記放電による電極表面状態の変化によって変わる絶縁破壊電圧を所定の範囲内に抑えるために電圧印加前に電極間隔を微小に調整する目的で備えられたものであるため、予め充電したコンデンサやリアクトルなどから成る回路を閉路する目的に合致せず、また実現性の点で問題があった。
一方、真空間隔は電極の表面状態に鋭利な突起などの凹凸がない場合には一般的に20kV/mmという高い絶縁破壊電界特性を有することが知られており、真空バルブを用いた回路投入器の場合、真空の高い絶縁耐力を利用するため、空気やSFガスなどの絶縁ガスを利用した場合に比べて短い極間距離で高い印加電圧に耐えられるが、真空中の絶縁性能は電極の表面状態に強く依存することが知られており、例えば陰極の電極表面に鋭利な突起が生じると、その先端で電界の集中による電子放出が生じ、その電流密度が大きいため著しく高温となって電極が溶融蒸発し、極間の絶縁性能低下による絶縁破壊が発生して放電へ進展する。電極表面に鋭利な突起が生じる要因として、電極の接触時に生じる溶着部を解離時に無理に引きはがすことが挙げられる。
特許文献2のような回路投入器の場合、電極間に電圧が印加された状態で投入動作を行うと、主電極間の真空間隙の絶縁耐力が印加される電圧に耐えられなくなる時点でアークが生じ、その後主電極同士が接触する。この状態で次の投入動作に備えて主電極を開くと、溶着部が無理やり引きはがされることによって電極表面に突起が生じ、前述のメカニズムにより回路を開放する定常時の電極間の絶縁性能が著しく低下して、定常時に回路を良好に開路できなくなるという問題点があった。
また、特許文献3のようなパルス形回路投入器の場合は、主電極を接触させずに極間をアークで短絡して回路投入を行うため主電極表面に前述の突起は発生しないが、回路投入時にトリガ電極と主電極間を放電させるにはトリガ電極先端を高電界状態にする必要があり、必然的にトリガ電極径が小さくなる。そのため、投入動作時のトリガ電極消耗量が多く動作可能回数が少ないという問題点があった。また、トリガ電極と主電極間を放電させるためにトリガ電極に電圧を印加するパルス電源が必要であり、性能を長期間良好に維持するには、精密機器であるパルス電源を高頻度にメンテナンスする必要があった。
本発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、予め充電された回路を一方の電極を他方の電極に接近させる投入動作により閉路することが出来、投入動作により閉路した後も電極表面に極間の耐電圧性能を低下させる突起を生じさせず、パルス形回路投入器よりも動作回数が多く、かつトリガ電極及びパルス電源が不要な回路投入器及び回路投入システムを得ることを目的とする。
本発明に係る回路投入器は、真空容器内に対向配置された一対の電極の一方が他方の電極に対して進退可能に設けられた真空バルブと、所定時に前記電極の一方を前記電極の他方に向けて駆動させる操作装置とを備えた回路投入器であって、前記一対の電極間の離間距離dが、常にd>0であり、かつ、回路投入完了状態における前記一対の電極間の離間距離d1は、投入する回路の充電電圧Vによって前記一対の電極間の絶縁が破壊される距離d2よりも短く、投入動作後に前記一対の電極間が前記一対の電極を構成し回路投入時に発生するアークの熱で蒸発して発生する電極金属の蒸着物によって橋絡する距離d3よりも長くしたことを特徴とする。
本発明によれば、対向配置された一対の電極同士を接近させることで回路の充電電圧により極間の絶縁を破壊しアークを発生させて導通状態にするので、トリガ電極やパルス電源が必要なく、多数回動作とメンテナンス頻度抑制を両立することが出来る。また、放電開始後電極同士が接触しないため、電極位置を回路開放位置に戻す時に電極表面に電極溶着に起因する突起が生じず、定常時の極間絶縁性能を良好に保つことが出来る。
本発明の実施の形態1による回路投入器を概略的に示す構成図である。 図1に示す回路投入器を使用する直流電流遮断器の構成を概略的に示す回路図である。 図1に示す回路投入器の回路開放時及び回路投入時の状態を説明する図である。 ベローズの動作速度と動作可能回数との一般的な関係を概略的に示す図である。 図1に示す回路投入器の電極の構成図である。 非特許文献1に示された真空間隙の絶縁破壊電界における電極面積効果の特性を示す参考図である。 非特許文献2に示された電極材料の違いによる真空間隙の絶縁破壊電圧の特性を示す参考図である。 本発明の実施の形態2による回路投入器を概略的に示す構成図である。 本発明の実施の形態3による回路投入器を概略的に示す構成図である。 本発明の実施の形態4による回路投入システムを概略的に示す回路図である。 真空中の電極間距離と絶縁破壊電圧との一般的な関係を概略的に示す図である。 実施の形態4による回路投入システムを使用する直流電流遮断器の構成の一例を概略的に示す回路図である。 実施の形態4による回路投入システムにおける回路投入時に真空バルブに印加される電圧波形の変化の傾向を概略的に示した図である。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による回路投入器を概略的に示す構成図、図2は図1に示された回路投入器を使用する直流電流遮断器の構成を概略的に示す回路図である。図1において、回路投入器100は、同軸に配設された固定側絶縁円筒10a及び可動側絶縁円筒10bの軸方向の外側端部を固定側端板10c及び可動側端板10dでそれぞれ塞ぎ、中央部をアークシールド支持部10eにより閉止して構成される真空容器10内に、対向して配設された固定電極12A及び可動電極12B、一端が固定電極12Aと接続され他端側が固定側端板10cを気密に貫通しその貫通部で固定された固定通電軸13A、並びに一端部が可動電極12Bと固着され他端部が真空容器10の外部にベローズ11を介して気密を保持して軸方向に移動可能に引き出された可動通電軸13Bを有する真空バルブ1と、可動通電軸13Bの他端部に絶縁ロッド2を介して接続され可動電極12Bを軸方向に駆動する操作装置3を備えている。
ベローズ11の一端部(図1の上端部)はベローズカバー11aを介して可動通電軸13Bの外周面に気密に固着され、ベローズ11の他端部は可動側端板10dの図における上面に気密に固着されている。可動側端板10dにおける可動通電軸13Bの挿通部分にはガイド部材14が設置されており、可動通電軸13Bが固定電極12Aの方向に円滑に進退できるように構成されている。可動通電軸13Bにおける真空容器10の外側に導出された部分には外部の回路と接続するための可動導体4が電気的機械的に固定されている。アークシールド支持部10eには対向された固定電極12A及び可動電極12Bの周りを包囲するように円筒状に形成されたアークシールド15が取り付けられている。なお、対向する一対の電極である固定電極12Aと可動電極12Bとの離間距離をdとする。
図2の回路図は電力送電網で用いられ、事故時に送電網を流れる直流電流を遮断するための一般的な遮断器の構成である。図2において、遮断器500は、DC電源51によって充電されたコンデンサ52、リアクトル53及び回路投入器100から成る充電回路、及び避雷器54を、遮断部55へ並列接続して成る構成である。
図2のように構成された遮断器500は、図に示す遮断部55を流れる直流電流Iを遮断する場合、回路投入器100を投入することで、予め充電されたコンデンサ52からリアクトル53を通じて遮断部55へ前記直流電流Iと逆向きの電流を流し、電流零点を形成する。
従って上述の直流電流を遮断する遮断器500を構成する回路投入器100は、定常時にはその極間に印加される電圧を絶縁することで前記充電回路を良好に開路し、遮断時には前記充電回路を閉路する性能を備える必要がある。
実施の形態1の回路投入器100は前述の基本的な要求性能を満足すると共に、その代表的な特徴部分は、可動通電軸13Bは、その一端部に固着された可動電極12Bの位置を回路開放位置から投入位置まで動かすことが出来るが、回路開放位置から投入完了までの全ての過程で固定電極12Aと接触する(d=0となる)ことがない点にある。即ち、固定電極12Aと可動電極12Bの電極間の離間距離dは、常にd>0であり、かつ、回路投入完了状態における両電極間の離間距離d1は、投入する回路の充電電圧Vによって両電極間の絶縁が破壊される距離d2よりも短く、投入動作後に一対の電極間が前記一対の電極を構成しアーク電流値、電極径、形状、電極材料によって決まる回路投入時に発生するアークの熱で蒸発して発生する電極金属の蒸着物によって橋絡する距離d3よりも長くなるように構成されている。以下、更に詳細に説明する。
図3は図1に示す回路投入器の回路開放時及び回路投入時の状態を説明する図であり、(a)が回路開放時、(b)が回路投入時の状態である。図3(a)に示す回路開放時の固定電極12Aと可動電極12Bとの距離d0は、本回路投入器の極間に印加される電圧に対して十分耐え得る値に設定する。閉路する時には、図示しない制御装置から図3(a)に示す操作装置3に投入信号が発信され、可動電極12Bは可動通電軸13B及び絶縁ロッド2を介して操作装置3によって固定電極12Aに接近する。図3(b)に示す回路投入時の固定電極12A及び可動電極12Bの離間距離d1は、固定電極12Aと可動電極12Bの両電極間に印加される電圧に耐えることが出来ず、電極間の絶縁が破壊される距離d2以下に設定する。こうすることで、電極間にアークAが発生し、電極間が導通状態になり回路が投入される。
なお、回路投入器100の動作速度はベローズ11の機械的強度を考慮して決める必要がある。
図4はベローズの動作速度と動作可能回数との一般的な関係を概略的に示す図である。図において、縦軸はベローズの動作可能回数、横軸は動作速度を示している。図4に示すように、ベローズの動作速度を高めるほど動作可能回数が小さくなるので、回路投入器100はその必要動作回数に対して限界となる動作速度以下の速度で投入するように構成することが望ましい。
図5は図1に示す回路投入器の電極の構成図である。電極12(固定電極12Aまたは可動電極12B)は何れも、対向する相手側の電極12に対面する部分でアークが発生するので、電極12の表面には耐アーク消耗性を強化した放電電極層121を電極基体120に固着させて構成されている。電極基体120には通電軸13(可動通電軸13Bまたは固定通電軸13A)の端部が接続される。放電電極層121として好ましく用いることができる材料としては、例えば銅などの導電性の優れた金属材料とタングステンといった耐アーク消耗性の高い金属材料との合金などを挙げることができ、通電軸13側の電極基体120の好適な材料としては、例えば銅などの導電性の優れた金属材料を挙げることができる。なお、図5に示す電極12の全体を耐アーク消耗性に優れた材料で構成しても良い。
図6は非特許文献1に示された真空間隙の絶縁破壊電界における電極面積効果の特性を示す参考図である。図は電極材料が無酸素銅の場合の真空間隙の絶縁破壊特性を示しており、縦軸はワイブル分布の中央値である50%絶縁破壊電界値(E50)を示し、横軸は陰極における最大電界の90%までの面積(S90)を示している。
なお、図6に示されたプロットの形状は電極の形状の違いを表しており、同図は電極材料が無酸素銅の場合の真空間隙の絶縁破壊電界E50は、電極の形状によらず、陰極における最大電界の90%までの面積(S90)が例えば200mmから1000mmの範囲では近似曲線で示すように、近似式 140×(S90)−0.225 で示される特性に依存することを示している。なお、この特性は図1に示した平板状の電極でも、電極の一部が盛り上がり不平等な電界を形成する形状でも変わらない。
前述の固定電極12A及び可動電極12Bの絶縁が両電極間の印加電圧によって破壊され回路が投入される瞬間の離間距離d2は、例えば図6に示されるような真空間隙の絶縁破壊特性に基づく近似式などによって決めればよく、d2を5mm以下に設定する場合は例えば両電極の間隙が5mmの状態におけるS90を1000mm、最大電界部の電界を29.6kV/mm以上にすればよい。
図7は非特許文献2に示された電極材料の違いによる真空間隙の絶縁破壊電圧の特性を示す参考図である。図における縦軸は絶縁破壊電圧、横軸は微小放電開始電圧を示している。図7に例示されるように、真空中の絶縁破壊電圧は電極材料によって多少変化することが知られている。例えば、タングステン70%と銅30%の合金W−Cu(30)の絶縁破壊電圧の中央値は銅(Cu)よりわずかに高く、その差は10%程度である。
このような公知の事実から、回路投入時に接近させる固定電極12A及び可動電極12Bの間の離間距離d1は以下の手順1)〜4)によって決めることが望ましい。
1)回路投入時に固定電極12A及び可動電極12Bの間の絶縁を回路に充電された電圧Vによって破壊させる両者の離間距離d2を決める。
2)離間距離d2における陰極側電極の有効面積(S90)が上記範囲内に収まり、かつ極間印加電圧による電極端部の最大電界値が上述の特性と材料による耐電圧性能の違いも考慮して求めた予想絶縁破壊電界値E50を上回るように固定電極12Aと可動電極12Bの形状を設計する。
3)離間距離d1を少なくともd2よりも短い距離に設定する。
4)またこの時、離間距離d1は絶縁破壊時に発生するアークの熱で蒸発した接点の金属が、消弧後に冷却して個体に戻る際に、電極間を物理的および電気的に橋絡する距離d3よりも長い距離とする。電極間が前記蒸発金属によって橋絡される距離はアーク電流値、電極径、形状、電極材料によって異なるため、d3はこれらパラメータによって決まる。
また、手順2)において、陰極側電極における端部の曲率を変えなければ表面の最大電界値はほぼ変わらないことを利用して、例えば電極の相手側の電極に対向する表面における外周端部を対向する相手側の電極の方向に盛り上げること、あるいは該外周端部よりも中心部を凹ませることで有効面積S90を増大させることもできる。
電極形状の高電界部の面積S90を増大させる利点は、固定電極12A及び可動電極12Bの間の絶縁破壊電界値E50を低下させ、最接近したときの両電極の離間距離d1を大きくすることが出来る点である。
離間距離d1が微小である場合、操作装置3と可動電極12Bの間にある部品同士の接続部の緩みや工作誤差等による操作装置3の可動範囲のばらつきなどにより、投入動作時に設定した停止位置を超えて可動電極12Bが固定電極12Aに向かって移動して電極同士が衝突する危険があるが、有効面積S90を増大させて絶縁破壊電圧E50を低下させれば、離間距離d1が大きくなり、前記衝突の危険を減ずることが出来る。
上記のように構成にされた実施の形態1においては、固定電極12Aと可動電極12Bの電極間の離間距離dは、回路開放位置から投入完了までの全ての過程で常にd>0であり、かつ、回路投入完了状態における両電極間の離間距離d1は、投入する回路の充電電圧Vによって両電極間の絶縁が破壊される距離d2よりも短く、投入動作後に一対の電極間が金属の蒸着物によって橋絡する距離d3よりも長くなるように構成されている。そのため、定常時には図2に示す充電回路を良好に開路し、遮断時には充電回路を閉路するという基本的な要求性能を満足することはもとより、必要動作回数で決まる限界動作速度により高速に動作出来、また上述の手順1)〜4)により決定した離間距離d1まで固定電極12Aに対して可動電極12Bを接近させることで極間の絶縁を破壊して回路を閉路状態に出来るので、トリガ電極やパルス電源が必要なく、多数回動作とメンテナンス頻度抑制を両立することが出来る。更に、放電開始後、固定電極12Aと可動電極12Bとが接触しないため、定常の開路時に電極表面に電極溶着に起因する突起が生じず、回路投入器の極間絶縁性能を良好に保ち開路状態を維持することが出来る。そのため、装置の信頼性の向上を図ることができ、長寿命にすることもできるという顕著な効果を得ることができる。
実施の形態2.
図8は本発明の実施の形態2による回路投入器を概略的に示す構成図であり、可動電極12Bを固定電極12Aに接近させて両者の間に発生するアークAで回路を投入している状態を示している。図において、可動通電軸13Bにおける、ガイド部材14よりも操作装置3側に突出された部分の外周部には、外径がガイド部材14の内径よりも大きく形成された移動規制部材131が固着されており、可動通電軸13Bの固定電極12A方向への移動範囲が規制されている。その他の構成は実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
前記のように構成された実施の形態2においては、可動電極12Bを固定電極12Aに接近させる回路投入動作時に固定電極12A及び可動電極12Bの間が前述の方法により決定した離間距離d1になると、可動通電軸13Bに固定された移動規制部材131がガイド部材14の図における下面に干渉し、可動通電軸13Bの移動をすぐさま停止することが出来る。なお、ここでは可動通電軸13Bに固定された移動規制部材131とガイド部材14によって、可動通電軸13Bの対向する固定電極12A方向への移動範囲を規制するようにしているが、移動規制部材は可動通電軸13Bと真空容器10との間の任意の位置に互いに干渉して可動通電軸13Bの固定電極12A方向への移動範囲を規制するものであれば種々変形することが可能である。
前記のように、実施の形態2によれば、実施の形態1の効果に加えて、可動通電軸13Bの所定部がガイド部材14の内径よりも太く成形されているので、回路投入状態における固定電極12Aと可動電極12Bとの離間距離d1が微小な場合でも、より確実に両者の衝突を防ぐことが出来る。
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3による回路投入器を概略的に示す構成図であり、可動電極12Bを固定電極12Aに接近させて両者の間に発生するアークAで回路を投入している状態を示している。図において、可動通電軸13Bの先端部には回路投入時に対向する相手側に衝突することによって離間距離d1を確保するようにした絶縁物からなるストッパ16が可動電極12Bを貫通して突出するように取り付けられている。その他の構成は実施の形態1と同様である。
前記のように構成された実施の形態3においては、絶縁物からなるストッパ16が可動通電軸13Bの先端に可動電極12Bを貫通して取り付けられ、可動電極12Bを固定電極12Aに接近させる回路投入動作時に、固定電極12A及び可動電極12Bの間が離間距離d1になると、ストッパ20が固定電極に衝突して、すぐさま可動電極12Bの移動を停止することが出来る。このため上述した実施の形態1と同様の作用効果が得られる。また、実施の形態1の構成に加えてストッパ16が追加されているので、固定電極12A及び可動電極12Bの離間距離d1が微小な場合でもより確実に両者の衝突を防ぐことが出来る。なお、ストッパ16は固定側に取り付けても同様の効果を得ることが出来る。要するに、可動電極12Bと可動通電軸13Bで構成される移動子及び固定電極12Aと固定通電軸13Aで構成される固定子の少なくとも一方に設けられ、回路投入時に対向する相手側に衝突することによって離間距離d1を確保することができるものであればよく、移動子及び固定子の双方に取り付け、あるいは固定電極12A及び可動電極12Bの一方または双方に設けても良い。
ストッパ16の材質は電極投入の衝撃力で変形や破壊しにくいものが適しており、例えばガラス繊維などの繊維を構成樹脂の中に入れて強度を向上させた複合材料FRPなどが望ましい。
実施の形態4.
図10の回路図は本発明の実施の形態4による回路投入システム300を概略的に示す回路図である。本実施の形態の回路投入システム300は、実施の形態1から3に記載の回路投入器100を第1の回路投入器としたときに、この第1の回路投入器に少なくとも一つの真空容器内に対向配置され両者の距離が固定された一対の電極を有する第2の回路投入器200が直列に取り付けられている。
図11は真空中の電極間距離に対する絶縁破壊電圧の特性を概略的に示す参考図である。同図は前記電極間距離が10 mm以下の領域では電極間距離と絶縁破壊電圧が比例関係にあるが、それ以上の領域になると真空間隙の絶縁破壊電圧は電極間距離に比例せず、100mmでほぼ限界値に到達する。
このような一般によく知られた事実から、回路投入器を使用する充電回路の充電電圧が、真空中の電極間距離100 mmにおける絶縁破壊電圧に拮抗するほど高い場合、実施の形態1から3に記載の回路投入器では、定常時に前記充電回路を開路することが困難になる場合が生じ、また可能な場合でも、開路時の電極間距離の増大と前記真空間隙の絶縁破壊特性によって回路投入時に可動電極12Bの移動距離が長くなり、回路投入時間が増大する可能性がある。
前記のように構成された実施の形態4の回路投入システム300においては、前記回路投入システム開路時の絶縁破壊電圧を上昇させるため、電極間隔が固定された第2の回路投入器200を実施の形態1から3に記載の回路投入器に取り付けるため、第2の回路投入器200の電極形状、電極間の距離および電極材料によって決まる絶縁破壊電圧を、開路時に周囲の回路条件によって決まる印加電圧V1より高く設定すれば、回路投入システム300の開路時の絶縁破壊電圧を任意の値に上昇、および調整することが出来る。
また、本実施の形態における回路投入システム300によって充電回路を投入するには、第2の回路投入器200の電極形状、電極間の距離および電極材料によって決まる絶縁破壊電圧を、回路投入器100の動作およびその電極間を絶縁破壊させた時に周囲の回路条件によって決まる第2の回路投入器200に印加される電圧V2より低く設定すればよく、回路投入器100を動作させるだけで回路投入システム300を導通状態に出来る。
上述の第2の回路投入器200を実施の形態1から3に直列に接続した実施の形態4の回路投入システムにおける回路投入器100および第2の回路投入器200には、開路時に印加される直流電圧に対しては抵抗をそれぞれに対して並列に接続し、回路投入システム周辺で落雷が生じた時に印加される交流の過電圧に対してはコンデンサをそれぞれの回路投入器や複数の回路投入器にまたがるように並列に接続することで、回路投入器100が投入しない時にどれか一つの回路投入器の極間に意図しない過電圧が印加されて絶縁破壊しないような対策を講じることが望ましい。
図12の回路図は一つの回路投入器100と3つの第2の回路投入器200から成る実施の形態4の回路投入システム300を使用する直流遮断器の構成の一例を概略的に示す回路図であり、DC電源51によって充電されたコンデンサ52、リアクトル53、及び回路投入システム300、開路時印加電圧均等用コンデンサ56および抵抗58で構成される充電回路、及び避雷器54を、遮断部55へ並列接続して成る構成である。回路投入システム300におけるインダクタンス成分57は、各真空バルブとコンデンサを接続する配線に寄生するインダクタンス成分を表わしており、通常配線1m当たり約1μHのインダクタンスが寄生する。
なお、上記インダクタンス成分57は、リアクトルなどのインダクタンス成分を有する回路素子の挿入によって任意の値に調整することも出来る。
図13は、図12の直流遮断器において遮断時に充電回路を回路投入システム300で投入した時の回路投入器100、および回路投入器100の隣の第2の回路投入器200の極間に印加される電圧波形を概略的に示している。
図(a)において、回路投入器100が動作すると、図(b)のようにその隣の第2の回路投入器200の極間には、もともと印加されていた電圧から回路投入器100投入後に分担される電圧への移行過程で過電圧が印加される。これは、回路投入器100の極間が導通状態になった後もそれと並列に接続されたコンデンサ56の電荷が配線のインダクタンス成分57によって瞬時に放電されないため、回路投入器100の隣の第2の回路投入器200には自身に並列に接続されたコンデンサの充電電圧と回路投入器100に並列に接続されたコンデンサの充電電圧の合算電圧が印加されるためである。この過渡過電圧の大きさは、回路投入システム300における回路投入器100および200の数や定常時印加電圧、コンデンサ56の容量、配線のインダクタンス成分57の値、コンデンサ56の接続箇所を決めれば一意に決定される。
つまり、上述の電圧V1は開路時に第2の回路投入器200と並列に接続される抵抗58によって分担される電圧であり、また上述の電圧V2は前記回路投入器100が導通状態になった直後に第2の回路投入器200に印加される過電圧となることから、第2の回路投入器200の電極形状、電極間の距離および電極材料は前述のV1およびV2を勘案して設定すればよい。
図12の直流遮断器において、前述の方法で電極形状、電極間の距離および電極材料を決めた第2の回路投入器を使用した回路投入システム300を適用すれば、遮断時に回路投入器100を動作させると、その隣の第2の回路投入器200が導通状態になり、その直後またその隣の第2の回路投入器に上述と同様の回路現象によって過電圧が印加されることで連鎖的に接続された全ての第2の回路投入器200が導通状態になる。
前記のように、実施の形態4の回路投入システムは、実施の形態1から3と同様の効果を得ることが可能である上、回路投入時に要する時間はほぼ変わらないまま、実施の形態1から3の一つの真空バルブから成る回路投入器では定常時に開路困難となる可能性がある高電圧の充電回路にも適用出来る利点がある。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態の一部または全部を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
1 真空バルブ、10 真空容器、10a 固定側絶縁円筒、10b 可動側絶縁円筒、10c 固定側端板、10d 可動側端板、10e アークシールド支持部、11 ベローズ、11a ベローズカバー、12 電極、12A 固定電極、12B 可動電極、120 電極基体、121 放電電極層、13 通電軸、13A 固定通電軸、13B 可動通電軸、131 移動規制部材、14 ガイド部材、15 アークシールド、16 ストッパ、2 絶縁ロッド、3 操作装置、4 可動導体、51 DC電源、52 コンデンサ、53 リアクトル、54 避雷器、55 遮断部、56 コンデンサ、57 インダクタンス成分、58 抵抗、100 回路投入器(第1の回路投入器)、200 第2の回路投入器、300 回路投入システム、500 遮断器、A アーク、d 一対の電極間の離間距離。

Claims (9)

  1. 真空容器内に対向配置された一対の電極の一方が他方の電極に対して進退可能に設けられた真空バルブと、所定時に前記電極の一方を前記電極の他方に向けて駆動させる操作装置とを備えた回路投入器であって、前記一対の電極間の離間距離dが、常にd>0であり、かつ、回路投入完了状態における前記一対の電極間の離間距離d1は、投入する回路の充電電圧Vによって前記一対の電極間の絶縁が破壊される距離d2よりも短く、投入動作後に前記一対の電極間が前記一対の電極を構成し回路投入時に発生するアークの熱で蒸発して発生する電極金属の蒸着物によって橋絡する距離d3よりも長くしたことを特徴とする回路投入器。
  2. 前記距離d2が、前記一対の電極の間に前記充電電圧Vが印加された時の陰極側の電極表面における最大電界値よりも、前記陰極側の電極表面積のうち前記最大電界値の90%までの電界範囲の面積(S90)に対して求められた近似式で決まるワイブル分布の中央値である50%絶縁破壊電界値(E50)の方が大きくなるように決められてなることを特徴とする請求項1記載の回路投入器。
  3. 前記操作装置の操作距離を、前記一対の電極間の回路開放時における離間距離d0よりも短くしたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の回路投入器。
  4. 前記対向配置された一対の電極の内、陰極側の電極における対向面の表面形状を、対向する電極に向かって、その外周部が中央部よりも突出するように形成し、最大電界値の90%までの面積(S90)が増大するようにしたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の回路投入器。
  5. 一端部が前記対向配置された一対の電極の一方と固定され、他端部が前記真空容器に対してその外側に気密を保持して移動可能に引き出された可動通電軸と、この可動通電軸と前記真空容器との間に設けられ、前記可動通電軸の前記他方の電極方向への移動範囲を規制する移動規制部材を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の回路投入器。
  6. 一端部が前記対向配置された一対の電極の一方に固定され、他端部が前記真空容器に対してその外側に気密を保持して移動可能に引き出された可動通電軸を有する移動子と、一端部が前記一対の電極の他方に固定され、他端部が前記真空容器に対してその外側に引き出された通電軸を有する固定子と、前記移動子及び前記固定子の少なくとも一方に設けられ、回路投入時に対向する相手側に衝突することによって前記離間距離d1を確保するようにした絶縁物からなるストッパと、を備えたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の回路投入器。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載の回路投入器を第1の回路投入器として、前記第1の回路投入器に少なくとも一つ接続された第2の回路投入器を備えた回路投入システムであって、
    前記第2の回路投入器は少なくとも1つの真空容器内に対向配置され両者の距離が固定された一対の電極を有することを特徴とする回路投入システム。
  8. 前記第2の回路投入器の絶縁破壊電圧は、開路状態において前記第2の回路投入器に印加される電圧より高く、前記第1の回路投入器が絶縁破壊された閉路状態において第2の回路投入器に印加される電圧より低く設定されたことを特徴とする請求項7記載の回路投入システム。
  9. 前記第1の回路投入器および前記第2の回路投入器に抵抗がそれぞれ並列に接続されるとともに、コンデンサが前記第1の回路投入器および前記第2の回路投入器のそれぞれ、または複数にまたがるように並列に接続されたことを特徴とする請求項7または請求項8記載の回路投入システム。
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