JP6139864B2 - 固体電解質成形体及びその製造方法、並びに全固体電池 - Google Patents
固体電解質成形体及びその製造方法、並びに全固体電池 Download PDFInfo
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Description
上記リチウムイオン二次電池には、電解質として有機系電解液が用いられている。有機系電解液は高いイオン伝導度を示すものの、液体でかつ可燃性であるため、漏洩、発火等の安全性が懸念されている。
また、特許文献1は、ヨウ化リチウムを添加することで電解質のイオン伝導度が1.0×10−3S/cmまで向上することを開示しているが、さらなるイオン伝導度の向上が必要であった。
1.構成成分として、アルカリ金属元素、リン、硫黄及びハロゲンを含む固体電解質からなり、前記固体電解質の粉体が互いに融着している固体電解質成形体。
2.前記固体電解質が、下記式(1)に示す組成を有する固体電解質である1に記載の固体電解質成形体。
LaMbPcSdXeOf …(1)
(式中、Lは、アルカリ金属を示し。
Mは、B、Al、Si、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組合せを示す。
XはI、Cl、Br、F、又はこれらの組合せを示す。
a〜fは、それぞれ0<a≦12、0≦b≦0.2、c=1、0<d≦9、0<e≦9、0≦f≦9を満たす。)
3.前記LがLiであり、前記XがBrであり、前記bが0である、2に記載の固体電解質成形体。
4.前記固体電解質が、下記成分(A)、(B)及び(C)を用いて得られる固体電解質である1〜3のいずれかに記載の固体電解質成形体。
(A)アルカリ金属硫化物
(B)M’mSnで表される化合物
(C)M''wXxで表わされる化合物
(式中、M’は、Li、Na、B、Al、Si、P、Ge、又はこれらの組み合わせを示す。
M''は、Li、Na、B、Al、Si、P、S、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組み合わせを示す。
XはF、Cl、Br、I、又はこれらの組み合わせを示す。
wは1又は2の整数を示す。
m、n及びxは、それぞれ1〜10の整数を示す。)
5.下記式(1)に示す組成を有する固体電解質の粉体を加圧成形する工程、及び
加圧成形により調製した圧粉体を熱処理する工程を含む、
固体電解質成形体の製造方法。
LaMbPcSdXeOf …(1)
(式中、Lは、アルカリ金属を示し。
Mは、B、Al、Si、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組合せを示す。
XはI、Cl、Br、F、又はこれらの組合せを示す。
a〜fは、それぞれ0<a≦12、0≦b≦0.2、c=1、0<d≦9、0<e≦9、0≦f≦9を満たす。)
6.前記LがLiであり、前記XがBrであり、前記bが0である、5に記載の固体電解質成形体の製造方法。
7.前記固体電解質の粉体を、下記成分(A)、(B)及び(C)を用いて調製する5又は6に記載の固体電解質成形体の製造方法。
(A)アルカリ金属硫化物
(B)M’mSnで表される化合物
(C)M''wXxで表わされる化合物
(式中、M’は、Li、Na、B、Al、Si、P、Ge、又はこれらの組み合わせを示す。
M''は、Li、Na、B、Al、Si、P、S、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組み合わせを示す。
XはF、Cl、Br、I、又はこれらの組み合わせを示す。
wは1又は2の整数を示す。
m、n及びyは、それぞれ1〜10の整数を示す。)
8.前記成分(A)がLi2Sであり、前記成分(B)がP2S5であり、前記成分(C)がLiBr又はPBr3である7に記載の固体電解質成形体の製造方法。
9.前記加圧成形の加圧処理を30〜400MPaで行う、5〜8のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
10.前記熱処理を150℃〜360℃で行う、5〜9のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
11.5〜10のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法により得られる固体電解質成形体。
12.1〜4及び11のいずれかに記載の固体電解質成形体を含む全固体電池。
本発明の固体電解質成形体は、構成成分として、アルカリ金属元素、リン、硫黄及びハロゲンを含む固体電解質からなり、前記固体電解質の粉体が互いに融着している。
本発明の固体電解質成形体は、好ましくは下記式(1)に示す組成を有する固体電解質からなり、当該固体電解質の粉体が互いに融着している。
LaMbPcSdXeOf …(1)
(式中、Lは、アルカリ金属を示し。
Mは、B、Al、Si、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組合せを示す。
XはI、Cl、Br、F、又はこれらの組合せを示す。
a〜fは、それぞれ0<a≦12、0≦b≦0.2、c=1、0<d≦9、0<e≦9、0≦f≦9を満たす。)
式(1)において、好ましくは、bは0であり、より好ましくは、a、c、d、e及びfの比(a:c:d:e:f)がa:c:d:e:f=1〜9:1:3〜7:0.05〜3:0〜2、さらに好ましくは、a:c:d:e:f=2〜6.5:1:3.5〜5:0.1〜1.5:0〜1である。最も好ましくは、a:c:d:e:f=2〜6.5:1:3.5〜4.95:0.1〜1.5:0〜0.5である。dは4であると好ましい。
また、fが0でない場合は、d+f=4となるように添加することが望ましい。
各元素の組成比は、固体電解質又は固体電解質前駆体(固体電解質ガラス)を製造する際の原料化合物の配合量を調整することにより制御できる。
LaMbPcSdXe…(1’)
(式中、Lは、アルカリ金属を示し。
Mは、B、Al、Si、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組合せを示す。
XはI、Cl、Br、F、又はこれらの組合せを示す。
a〜eは、それぞれ0<a≦12、0≦b≦0.2、c=1、0<d≦9、0<e≦9を満たす。)
好ましくは、bは0であり、より好ましくは、a、c、d、eの比(a:c:d:e)がa:c:d:e=1〜9:1:3〜7:0.05〜3、さらに好ましくは、a:c:d:e=2〜6.5:1:3.5〜5:0.1〜1.5である。最も好ましくは、a:c:d:e=2〜6.5:1:3.5〜4.95:0.1〜1.5である。
dは4であると好ましい。
Lのアルカリ金属は、Li、Na、K、Rb、Ce及びFrから選択される1つ以上が挙げられ、好ましくはLi及びNaから選択される1つ以上であり、より好ましくはLiである。
Mは、好ましくはB、Al、Si、又はこれらの組み合わせである。
Xは、好ましくはI、Br又はClであり、より好ましくはBrである。
尚、固体電解質粉体が融着していることは、固体電解質成形体を走査型電子顕微鏡を用いて観察し、固体電解質粉体同士の界面の境目が観察できないことにより確認できる。
尚、算出密度とは、固体電解質粉体のみからなる成形体を、黒鉛5mg及び固体電解質粉体5mgの混合粉体からなる電極2枚で挟持した成形体の理論上の密度をいい、具体的には下記式を用いて算出することができる。
算出密度=((5mg+5mg)×2+成形体に用いた固体電解質粉体の質量)/成形体の体積
(1)原料
固体電解質成形体を構成する固体電解質は、例えば下記成分(A)、(B)及び(C)を用いることにより調製できる。
(A)アルカリ金属硫化物
(B)M’mSnで表される化合物
(C)M''wXxで表わされる化合物
(式中、M’は、Li、Na、B、Al、Si、P、Ge、又はこれらの組み合わせを示す。
M''は、Li、Na、B、Al、Si、P、S、Ge、As、Se、Sn、Sb、Te、Pb、Bi、又はこれらの組み合わせを示す。
XはF、Cl、Br、I、又はこれらの組み合わせを示す。
wは1又は2の整数を示す。
m、n及びxは、それぞれ1〜10の整数を示す。)
硫化リチウムは、特に制限なく使用できるが、高純度のものが好ましい。硫化リチウムは、例えば、特開平7−330312号、特開平9−283156号、特開2010−163356、特開2011-84438、特開2011−136899に記載の方法により製造することができる。
また、水溶媒中で水酸化リチウムと硫化水素とを10℃〜100℃で反応させて、水硫化リチウムを生成し、次いでこの反応液を脱硫化水素化することにより硫化リチウムを合成できる(特開2011−84438)。
また、N−メチルアミノ酪酸リチウムの含有量が0.15質量%以下であると、N−メチルアミノ酪酸リチウムの劣化物がリチウムイオン電池のサイクル性能を低下させることがない。このように不純物が低減された硫化リチウムを用いると、高イオン伝導性電解質が得られる。
一方、特開2010−163356に記載の硫化リチウムの製法で製造した硫化リチウムは、硫黄酸化物のリチウム塩等の含有量が非常に少ないため、精製せずに用いてもよい。
好ましい精製法としては、例えば、国際公開WO2005/40039号に記載された精製法等が挙げられる。具体的には、上記のようにして得られた硫化リチウムを、有機溶媒を用い、100℃以上の温度で洗浄する。
五硫化二リン(P2S5)は、工業的に製造され、販売されているものであれば、特に限定なく使用することができる。
ハロゲン元素を含む化合物である(C)M''wXxで表わされる化合物は、具体的には、LiF,LiCl,LiBr,LiI,BCl3,BBr3,BI3,AlF3,AlBr3,AlI3,AlCl3,SiF4,SiCl4,SiCl3,Si2Cl6,SiBr4,SiBrCl3,SiBr2Cl2,SiI4,PF3,PF5,PCl3,PCl5,PBr3,PI3,P2Cl4,P2I4,SF2,SF4,SF6,S2F10,SCl2,S2Cl2,S2Br2,GeF4,GeCl4,GeBr4,GeI4,GeF2,GeCl2,GeBr2,GeI2,AsF3,AsCl3,AsBr3,AsI3,AsF5,SeF4,SeF6,SeCl2,SeCl4,Se2Br2,SeBr4,SnF4,SnCl4,SnBr4,SnI4,SnF2,SnCl2,SnBr2,SnI2,SbF3,SbCl3,SbBr3,SbI3,SbF5,SbCl5,PbF4,PbCl4,PbF2,PbCl2,PbBr2,PbI2,BiF3,BiCl3,BiBr3,BiI3,TeF4,Te2F10,TeF6,TeCl2,TeCl4,TeBr2,TeBr4,TeI4、NaI,NaF,NaCl,NaBr等が挙げられ、好ましくLiCl,LiBr,LiI,PCl5、PCl3、PBr5及びPBr3であり、より好ましくはLiCl,LiBr,LiI及びPBr3である。
尚、上記(C)成分に替えて、例えばPOCl3やPOBr3のような(C)式で表される化合物の酸化物を用いることもできる。
(i)成分(C)のM''がリン以外の場合、例えば成分(A):(B)のモル比は65:35〜85:15であり、好ましくは(A):(B)=67:33〜83:17(モル比)であり、さらに好ましくは(A):(B)=67:33〜80:20(モル比)であり、最も好ましくは(A):(B)=72:28〜78:22(モル比)である。
また、この時、成分(A)及び(B)のモル量の合計に対する(C)のモル量の比は、好ましくは50:50〜99:1であり、より好ましくは[(A)+(B)]:(C)=55:45〜97:3(モル比)であり、さらに好ましくは[(A)+(B)]:(C)=60:40〜96:4(モル比)であり、特に好ましくは[(A)+(B)]:(C)=70:30〜96:4(モル比)である。
(ii)成分(C)のM''がリンである場合、例えば成分(A):(B)のモル比は60:40〜90:10であり、好ましくは(A):(B)=70:30〜90:10(モル比)であり、より好ましくは(A):(B)=72:28〜88:12(モル比)であり、さらに好ましくは(A):(B)=74:26〜86:14(モル比)であり、特に好ましくは(A):(B)=75:25〜85:15(モル比)であり、最も好ましくは、成分(A)が硫化リチウムであり、成分(B)五硫化二リンであって、(A):(B)=77:23〜83:17(モル比)である。
また、この時、成分(A)及び(B)のモル量の合計に対する(C)のモル量の比は、好ましくは50:50〜99:1であり、より好ましくは[(A)+(B)]:(C)=80:20〜98:2(モル比)であり、さらに好ましくは[(A)+(B)]:(C)=85:15〜98:2(モル比)であり、特に好ましくは[(A)+(B)]:(C)=90:10〜98:2である。
上記成分(A)〜(C)及び任意にガラス化促進剤等を用いて、以下の方法によりガラス状の固体電解質を製造することができる。
原料(例えば硫化ナトリウム、五硫化二リン、及びハロゲン化合物)を、上記配合比で混合し、溶融急冷法、メカニカルミリング法(以下、適宜「メカニカルミリング」を「MM」という。)、溶媒中で反応させるスラリー法、固相法等のいずれかにより処理することにより、ガラス状の固体電解質を製造することができる。
以下、各製造方法について説明する。
溶融急冷法は、原料を所定量混合し、所定温度で反応させた後、急速に冷却することによりガラス状の固体電解質を得る方法である。
例えば、乳鉢にて混合しペレット状にしたものを、カーボンコートした石英管中に入れ真空封入する。所定の反応温度で反応させた後、氷中に投入し急冷することにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
反応温度は、好ましくは400℃〜1000℃、より好ましくは、800℃〜900℃である。
反応時間は、好ましくは0.1時間〜12時間、より好ましくは、1〜12時間である。
上記反応物の急冷温度は、通常10℃以下、好ましくは0℃以下であり、その冷却速度は、通常1〜10000K/sec程度、好ましくは10〜10000K/secである。
MM法は、原料を所定量混合し、機械的なエネルギーを与えることによりガラス状の固体電解質を得る方法である。
機械的なエネルギーを与える方法は特に問わないが、例えば、各種ボールミルを例示することができる。
例えば、五硫化二燐(P2S5)、硫化リチウム(Li2S)及びハロゲン化合物を所定量乳鉢にて混合し、例えば、各種ボールミル等を使用して所定時間反応させることにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
上記原料を用いたMM法は、室温で反応させることができる。そのため、原料の熱分解が起らず、仕込み組成のガラス状の固体電解質を得ることができるという利点がある。
また、MM法ではガラス状の固体電解質の製造と同時に、微粉末化できるという利点もある。
MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
また、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
また、MM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。
MM処理時の原料温度は、室温から200℃まで必要に応じて加熱してもよい。
固相法は、原料を混合し所定温度で加熱することによりガラス状の固体電解質を得る方法である。例えば、五硫化二燐(P2S5)と硫化リチウム(Li2S)、及びハロゲン化合物を所定量乳鉢にて混合し、100〜900℃の温度で加熱することにより、ガラス状の固体電解質が得られる
接触法は、溶媒中で原料を接触させてガラス状の固体電解質を製造する方法である。
接触法によれば、メカニカルミリング装置のような特殊な設備を使用しなくともガラス状の固体電解質を製造できる。従って、安価に伝導性物質を製造することができる。また、メカニカルミリング処理をしないため、メカニカルミリング装置の壁面等が剥がれることによる不純物の発生を防止することができる。
また、メカニカルミリング装置を使用しないため、ボールとミル容器内に原料や固体電解質が付着するような欠点がない。
上記非プロトン性溶媒としては、非プロトン性有機溶媒(例えば、炭化水素系有機溶媒)、非プロトン性の極性有機化合物(例えばアミド化合物、ラクタム化合物、尿素化合物、有機イオウ化合物、環式有機リン化合物等)等が挙げられ、これらのうちいずれか1つを単独溶媒として、又はこれらのうちの2以上からなる混合溶媒として使用することができる。
飽和炭化水素としては、ヘキサン、ペンタン、2−エチルヘキサン、ヘプタン、デカン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素としては、ヘキセン、ヘプテン、シクロヘキセン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、トルエン、キシレン、デカリン、1、2、3、4−テトラヒドロナフタレン等が挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、特にトルエン、キシレンが好ましい。
当該他の溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エタノール、ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル等のエステル類等;ジクロロメタン、クロロベンゼン、フッ化ヘプタン、フッ化ベンゼン、2、3‐ジハイドロパーフルオロペンタン、1、1、2、2、3、3、4‐ヘプタフルオロシクロペンタン等のフッ素系化合物等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
接触(反応)工程時の温度は、通常50℃以上300℃以下であり、好ましくは60℃以上250℃以下であり、より好ましくは70℃以上200℃以下である。
また、接触工程時の時間は、通常5分以上200時間以下、好ましくは10分以上100時間以下である。接触工程時の時間が5分未満であると反応が不十分のおそれがある。接触時間が短すぎると原料が残ってしまうおそれがある。
尚、温度や時間は、いくつかの条件をステップにして組み合わせてもよい。例えば、接触開始から1時間は100℃で接触させ、1時間後10時間の間は150℃で加熱する等である。
湿式メカニカルミリング法は、原料を溶媒中でメカニカルミリング処理して製造する方法である。
湿式メカニカルミリング法は、溶媒を加えた状態でメカニカルミリング処理を施すことで、処理時の増粒効果を抑制し、合成反応を効率的に促進できる。これにより、均一性に優れ、未反応原料の含有率が低いガラス状の固体電解質を得ることができる。また、原料や反応物の器壁等への固着を防止することができ、製品の歩留を向上できる。
遊星型ボールミルは、ポットが自転回転しながら、台盤が公転回転し、非常に高い衝撃エネルギーを効率良く発生させることができる。また、ビーズミルも好ましい。
また、ボールミルのボールは異なる径のボールを混合して使用してもよい。
上記の他、MM処理の際のミル内の温度を調整してもよい。MM法の条件としては、例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を数十〜数百回転/分とし、0.5時間〜100時間処理すればよい。
メカニカルミリング処理後の結果物を乾燥し、溶媒を除去することにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
スラリー合成法は、原料に溶媒中で力学的なエネルギーを与える力学的なエネルギー供与手段と、原料を溶媒中で接触させる接触手段と、力学的なエネルギー供与手段と接触手段を連結する連結手段と、連結手段を通して、原料及び/又は原料の反応物を力学的なエネルギー供与手段と接触手段との間を循環させる循環手段とを備える製造装置を用いてガラス状の固体電解質を製造する方法である。反応生成物を乾燥し、溶媒を除去することにより、ガラス状の固体電解質が得られる。
上記原料及び溶媒は、湿式メカニカルミリング法の原料及び溶媒と同様のものが使用できる。
製造装置1は、原料を粉砕しつつ反応させてガラス状の固体電解質を合成する粉砕機(粉砕合成手段)10と、原料を反応させてガラス状の固体電解質を合成する反応槽(合成手段)20とを備える。反応槽20は容器22と撹拌翼24からなり、撹拌翼24はモータ(M)により駆動される。
反応槽20の容量と粉砕機10の容量との比率は任意でよいが、通常反応槽20の容量は、粉砕機10の容量の1〜100倍程度である。
メカニカルミリング法と接触法の交互実施は、原料をメカニカルミリング処理する工程と、原料を溶媒中で接触させる接触工程とを含み、当該メカニカルミリング処理工程及び当該接触工程を交互に繰り返し行う方法である。
メカニカルミリング処理の回転速度及び回転時間は特に限定されないが、回転速度が速いほど、ガラス状の固体電解質の生成速度は速くなり、回転時間が長いほどガラス状の固体電解質ヘの原料の転化率は高くなる。例えば、遊星型ボールミル機を使用した場合、回転速度を250回転/分以上300回転/分以下とし、5分以上50時間以下処理すればよい。
上記処理時間は、遊星型ボールミル機に原料及びガラス状の固体電解質が留まっている時間を示す。従って、原料及びガラス状の固体電解質が遊星型ボールミル機と反応槽を循環するが、反応開始から終了までに原料及びガラス状の固体電解質が遊星型ボールミル機に留まっている時間の合計になる。
上記時間が短いと未反応の原料が残るおそれがあると共に上記時間が長いと粉砕機の容量を大きくし、一度に収納できる原料及びガラス状の固体電解質の量を多くするか、下記する反応終了までの時間が長くなるという問題が発生するおそれがある。
接触工程の時間は、5分以上200時間以下が好ましい。
ここで、上記接触工程の時間は、反応槽に原料及びガラス状の固体電解質が留まっている時間を示す。従って、原料及びガラス状の固体電解質が遊星型ボールミル機と反応槽を循環するが、反応開始から終了までに原料及びガラス状の固体電解質が反応槽に留まっている時間の合計になる。
粒径の測定方法は、レーザー回折式粒度分布測定方法により行うことが好ましい。レーザー回折式粒度分布測定方法は、組成物を乾燥せずに粒度分布を測定することができる。レーザー回折式粒度分布測定方法では、組成物中の粒子群にレーザーを照射して、その散乱光を解析することで粒度分布を測定する。
まず、装置の分散槽に脱水処理されたトルエン(和光純薬製、製品名:特級)110mlを入れ、さらに分散剤として脱水処理されたターシャリーブチルアルコール(和光純薬製、特級)を6%添加する。
上記混合物を十分混合した後、測定対象である「乾燥した固体電解質又はその前駆体」を添加して粒子径を測定する。測定対象の添加量は、マスターサイザー2000で規定されている操作画面で、粒子濃度に対応するレーザー散乱強度が規定の範囲内(10〜20%)に収まるように加減して加える。この範囲を超えると多重散乱が発生し、正確な粒子径分布を求めることができなくなるおそれがある。また、この範囲より少ないとSN比が悪くなり、正確な測定ができないおそれがある。マスターサイザー2000では、測定対象の添加量に基づき、レーザー散乱強度が表示されるので、上記レーザー散乱強度に入る添加量を見つけるとよい。
測定対象の添加量はイオン伝導性物質の種類等により最適量は異なるが、概ね0.01g〜0.05g程度である。
結晶化温度(ピーク)は、示差熱−熱重量測定装置(メトラートレド社製TGA/DSC1)又は示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製Diamond DSC)を使用し、固体電解質約20mgを10℃/分で測定することで特定できる。
また、固体電解質(ガラス)は、2つの結晶化ピークがあり、2つの結晶化ピークが170℃以上330℃以下の範囲にあり、かつ2つの結晶化ピーク間の幅が20〜150℃であることがさらに好ましい。
また、2つの結晶化ピークが170℃以上330℃以下の範囲にあることがさらに好ましく、また2つの結晶化ピーク間の幅が30〜140℃であることがさらに好ましい。
また、固体電解質(ガラス)は、2つの結晶化ピークがあり、2つの結晶化ピークが175℃以上320℃以下の範囲にあり、かつ2つの結晶化ピーク間の幅が30〜140℃であることが特に好ましい。
また、2つの結晶化ピークが175℃以上320℃以下の範囲にあることが特に好ましく、また、2つの結晶化ピーク間の幅が35〜130℃であることが特に好ましい。また、固体電解質は、2つの結晶化ピークがあり、2つの結晶化ピークが180℃以上310℃以下の範囲にあり、かつ2つの結晶化ピーク間の幅が40〜120℃であることが最も好ましい。
本発明の固体電解質粉体が互いに融着した固体電解質成形体は、上記ガラス状の固体電解質を加圧成形し、加圧成形により得られた成形体を加熱処理することにより得られる。
このように圧力を印加し、熱処理することで、硫化物系電解質粉体は高密度で互いに融着し、広範囲のイオン伝導パスを形成することができる。
熱処理温度としては、通常、150℃〜360℃である。熱処理温度が150℃未満であると、高イオン伝導性の結晶ガラスが得られにくい場合があり、加熱処理温度が360℃超であると、イオン伝導性の低い結晶構造となるおそれがある。
加熱温度は、より好ましくは、(Tg+5℃)以上、(Tc+90℃)以下、さらに好ましくは、(Tg+10℃)以上、(Tc+80℃)以下である。
例えば、加熱温度は、150℃以上360℃以下であり、好ましくは160℃以上350℃以下であり、より好ましくは180℃以上310℃以下であり、さらに好ましくは180℃以上290℃以下であり、特に好ましくは190℃以上270℃以下である。
また、熱物性の測定により2つのピークがある場合は、低温側の第1結晶化ピークの温度をTc1とし、低温側のTc1と高温側の第2結晶化ピークの温度(Tc2)として、第1結晶化温度以上、第2結晶化温度以下で加熱すると好ましい。
昇温方法については特に指定がない。所定温度までゆっくり昇温してもよいし、急速に加熱してもよい。
尚、結晶化温度等は昇温速度等により変化することあり、熱処理する昇温速度に近い速度での測定でのTcを基準に選ぶ必要がある。従って、実施例以外の昇温速度で処理する場合は、最適な熱処理温度は変化するが、熱処理する昇温速度で測定されたTcを基準として上記条件にて熱処理することが望ましい。
昇温方法については特に指定がない。所定温度までゆっくり昇温してもよいし、急速に加熱してもよい。
加熱は、露点−40℃以下の環境下で行うことが好ましく、より好ましくは露点−60℃以下の環境下で行うことが好ましい。加熱時の気圧は、常圧であってもよく、減圧下であってもよい。雰囲気は、空気中であってもよく、不活性雰囲気下であってもよい。
電解質層に用いることができる本発明の固体電解質成形体は、結晶成分を有する固体電解質、ガラス状の固体電解質、又はこれらの混合物を使用して製造することが好ましく、加圧・加熱して電解質層を成形する場合は、ガラス状の固体電解質を含んでいた方が好ましい。また、結晶成分を有する固体電解質を用いて製造する場合であって、加圧・加熱して電解質を成形する場合は、結晶成分を有する固体電解質にはガラス成分が含まれていることが好ましい。また、固体電解質層は、固体電解質の板状体であってもよい。尚、固体電解質粒子の一部又は全部が溶解し、板状体になっている場合も含む。
本発明の固体電解質成形体は、加水分解しにくく、高いイオン伝導度を有するため、の二次電池の固体電解質層として好適に用いられる。
本発明の固体電解質成形体は、その用途に応じて、製造の際にバインダー(結着剤)、正極活物質、負極活物質、導電助剤を添加して、正極、電解質層、負極等、電池の構成材料として、及び電池を構成する部材(層)として使用できる。
また、セルロース系バインダー、スチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等の水系バインダーを用いることもできる。
例えば、V2O5、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(ここで、0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1−YCoYO2、LiCo1−YMnYO2、LiNi1−YMnYO2(ここで、0≦Y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2−ZNiZO4、LiMn2−ZCoZO4(ここで、0<Z<2)、LiCoPO4、LiFePO4、酸化ビスマス(Bi2O3)、鉛酸ビスマス(Bi2Pb2O5)、酸化銅(CuO)、酸化バナジウム(V6O13)、LixCoO2,LixNiO2,LixMn2O4,LixFePO4,LixCoPO4,LixMn1/3Ni1/3Co1/3O2,LixMn1.5Ni0.5O2等の酸化物が挙げられる。それ以外の正極活物質としては、例えば、硫化物系では、単体硫黄(S)、硫化チタン(TiS2)、硫化モリブデン(MoS2)、硫化鉄(FeS、FeS2)、硫化銅(CuS)及び硫化ニッケル(Ni3S2)、硫化リチウム(Li2S)、有機ジスルフィド化合物、カーボンスルフィド化合物、硫黄等が使用できる。好ましくは、高い理論容量を有するS、Li2Sが使用できる。
式(D)において、Zはそれぞれ−S−又は−NH−であり、nは繰返数2〜300の整数である。)
正極活物質が粒子状である場合は、その平均粒径は、好ましくは0.1〜100μmの範囲内であり、より好ましくは、1〜50μmの範囲、特に好ましくは、1〜25μmの範囲である。正極活物質粒子の平均粒径が上記範囲を逸脱すると、稠密な正極活物質層が得られない場合がある。
例えば、炭素材料、具体的には、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び難黒鉛化性炭素等が挙げられる。又はその混合物でもよい。好ましくは、人造黒鉛である。
また、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素等の金属自体や他の元素、化合物と組合わせた合金を、負極材として用いることができる。中でも、高い理論容量を有するケイ素、スズ、リチウム金属が好ましい。
導電助剤としては、炭素材料、金属粉末及び金属化合物から選択される物質や、これらの混合物が挙げられる。
導電助剤の具体例としては、好ましくは炭素、ニッケル、銅、アルミニウム、インジウム、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、クロム、金、ルテニウム、白金、ベリリウム、イリジウム、モリブデン、ニオブ、オスニウム、ロジウム、タングステン及び亜鉛からなる群から選択される少なくとも1つの元素を含む物質であり、より好ましくは炭素単体、炭素、ニッケル、銅、銀、コバルト、マグネシウム、リチウム、ルテニウム、金、白金、ニオブ、オスニウム又はロジウムを含む金属単体、混合物又は化合物である。
特に導電助剤の炭素材料の具体例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、活性炭等が挙げられる。これらは単独でも2種以上でも併用可能である。
上記の導電助剤のなかでも、電子伝導性が高いアセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラックが好適である。
電解質層(シート)は、本発明の固体電解質成形体である。
電解質層は、使用目的に応じて固体電解質成形体及び他の電解質からなってもよい。
ポリマー系固体電解質は、特に制限はない。例えば、特開2010−262860に開示されているように、フッ素樹脂、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレートやこれらの誘導体、共重合体等の、ポリマー電解質として用いられる材料が挙げられる。
正極層において、正極活物質、電解質、導電助剤等の割合は、特に制限は無く公知の割合を用いることができる。
正極層の厚さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
正極層は、公知の方法により製造することができる。例えば、塗布法、静電法(静電スプレー法、静電スクリーン法等)により製造することができる。
電解質層の厚さは、0.001mm以上1mm以下であることが好ましい。
本態様では、正極層、電解質層及び負極層の少なくとも1つが本発明の固体電解質成形体からなっていればよい。
全固体電池100は、正極110及び負極130からなる一対の電極間に本発明の固体電解質成形体120が挟持されている。正極110及び負極130にはそれぞれ集電体140及び142が設けられている。
上記正極110及び負極130に、導電助剤として、電子が正極活物質内で円滑に移動するようにするために、上述の導電助剤を適宜添加してもよい。
簡便な装置や室温条件下、電解質の結晶状態を変化させない温度範囲で製膜できることから、ブラスト法やエアロゾルデポジション法が好ましい。
製造例1
[硫化リチウム(Li2S)の製造]
硫化リチウムの製造及び精製は、国際公開公報WO2005/040039A1の実施例と同様に行った。具体的には、下記のとおりである。
(1)硫化リチウムの製造
撹拌翼のついた10リットルオートクレーブにN−メチル−2−ピロリドン(NMP)3326.4g(33.6モル)及び水酸化リチウム287.4g(12モル)を仕込み、300rpm、130℃に昇温した。昇温後、液中に硫化水素を3リットル/分の供給速度で2時間吹き込んだ。
続いて、この反応液を窒素気流下(200cc/分)昇温し、反応した硫化水素の一部を脱硫化水素化した。昇温するにつれ、上記硫化水素と水酸化リチウムの反応により副生した水が蒸発を始めたが、この水はコンデンサにより凝縮し系外に抜き出した。水を系外に留去すると共に反応液の温度は上昇するが、180℃に達した時点で昇温を停止し、一定温度に保持した。脱硫化水素反応が終了後(約80分)反応を終了し、硫化リチウムを得た。
上記(1)で得られた500mLのスラリー反応溶液(NMP−硫化リチウムスラリー)中のNMPをデカンテーションした後、脱水したNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌した。その温度のままNMPをデカンテーションした。さらにNMP100mLを加え、105℃で約1時間撹拌し、その温度のままNMPをデカンテーションし、同様の操作を合計4回繰り返した。デカンテーション終了後、窒素気流下230℃(NMPの沸点以上の温度)で硫化リチウムを常圧下で3時間乾燥した。得られた硫化リチウム中の不純物含有量を測定した。
[電解質前駆体(硫化物系ガラス:Li2S/P2S5/LiBr=75/25/16.8):MM法]
製造例1で製造した硫化リチウムを用いて、国際公開公報WO07/066539の実施例1に準拠した方法で電解質前駆体(硫化物系ガラス)を製造した。
具体的に、製造例1で製造した硫化リチウム0.337g(0.00717mol)と五硫化二リン(アルドリッチ社製)0.532g(0.00239mol)、臭化リチウム(アルドリッチ社製)0.140g(0.00161mol)をよく混合した。そして、この混合した粉末と直径10mmのジルコニア製ボール10ケと遊星型ボールミル(フリッチュ社製:型番P−7)アルミナ製ポットに投入し完全密閉するとともにこのアルミナ製ポット内に窒素を充填し、窒素雰囲気にした。
はじめの数分間は、遊星型ボールミルの回転を低速回転(100rpm)にして硫化リチウムと五硫化二リンを十分混合した。その後、徐々に遊星型ボールミルの回転数を上げ370rpmまで回転数を上げた。遊星型ボールミルの回転数を370rpmで20時間メカニカルミリングを行った。
図3に示差熱熱重量測定の示差熱分析結果を示す。また、そこから読み取れる第一結晶化温度(Tc1)、第二結晶化温度(Tc2)を表1に示す。
[電解質前駆体(硫化物系ガラス:Li2S/P2S5/LiI=75/25/16.8):MM法]
原料を硫化リチウム0.359g(0.0067mol)、五硫化二リン(アルドリッチ社製)0.574g(0.00258mol)、よう化リチウム(アルドリッチ社製)0.200g(0.00175mol)に変更した以外は、製造例2と同様にして電解質前駆体を製造し、評価した。
[電解質前駆体(硫化物系ガラス:Li2S/P2S5/LiCl=75/25/16.8):MM法]
原料として、硫化リチウム0.359g(0.00773mol)、五硫化二リン(アルドリッチ社製)0.574g(0.00258mol)、塩化リチウム(アルドリッチ社製)0.072g(0.00175mol)を用いた以外は、製造例2と同様にして電解質前駆体を製造し、評価した。
[電解質前駆体(硫化物系ガラス:Li2S/P2S5/PBr3=80/20/5):MM法]
原料を硫化リチウム0.397g(0.00844mol)と五硫化二リン(アルドリッチ社製)0.467g(0.00212mol)、三臭化リン0.147g(0.00058mol)に変更した以外は、製造例2と同様にして電解質前駆体を製造し、評価した。
[電解質前駆体(硫化物系ガラス:Li2S/P2S5/LiBr=75/25/16.8):スラリー合成法]
撹拌機がアシザワ・ファインテック社製スターミルミニツェア(0.15L)(ビーズミル)であって、当該撹拌機には0.5mmφジルコニアボール444gが仕込んであり、温度保持槽が撹拌機付の1.5Lガラス製反応器である図1に示す装置を用いて、電解質前駆体の製造を以下のように実施し、得られた電解質前駆体を評価した。
尚、上記計量、添加、密閉作業は全てグローブボックス内、窒素雰囲気下で実施し、使用する器具類は全て乾燥機で事前に水分除去したものを用いた。また、脱水トルエン中の水分量はカールフィッシャー法による水分測定で8.4ppmであった。
ポンプにより内容物を480mL/分の流量で温度保持槽とミルの間を循環させ、温度保持槽を80℃になるまで昇温した。
ミル本体は、液温が70℃に保持できるよう外部循環により温水を通水し、周速12m/sの条件で運転した。2時間ごとにスラリーを採取し、150℃にて乾燥し白黄色の粉体スラリー(クリーム状)を得た。
得られたスラリーをろ過・風乾後、160℃で2時間チューブヒーターにより乾燥し、固体電解質前駆体を粉体として得た。このときの回収率は95%であり、反応器内に付着物はみられなかった。
[電解質前駆体(硫化物系ガラス:Li2S/P2S5/LiBr=75/25/16.8):接触法]
製造例1で製造した硫化リチウム(LiS2)をジェットミル(株式会社アイシンナノテクノロジーズ)により粉砕し、平均粒径を0.3μmとした。その硫化リチウム1.0g(0.64mol)、五硫化二りん(P2S5)(アルドリッチ社)1.61g(0.21mol)及び臭化リチウム(LiBr)(アルドリッチ社)0.42g(0.15mol)を、窒素で置換した撹拌機付きのフラスコ内に入れ、水分含有量を10ppmとした50mlのキシレン(和光純薬工業株式会社)を加え、140℃で24時間接触させた。
この固体電解質前駆体のイオン伝導度は5×10−4S/cmであった。
尚、硫化リチウムの粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器LMS−30(株式会社セイシン企業)を用いて測定した。
粉体の場合、試料を断面10mmφ(断面積S=0.785cm2)、高さ(L)0.1〜0.3cmの形状に成形する。その後熱処理等を行う場合は熱処理を実施する。その試料片の上下から電極端子を取る。交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:5MHz〜0.5Hz、振幅:10mV)、Cole−Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、−Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
尚、リードの距離を約60cmとして測定した。
[固体電解質成形体の製造]
製造例2で得られた硫化物系固体電解質前駆体の粉体を錠剤成形機に充填し、185MPaの圧力を加えて、硫化物系電解質前駆体成形体を作製した。さらに、黒鉛10mgを成形体の両面に乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、固体電解質前駆体の成形体(直径約10mm、厚み約1mm)を作製した。
得られた前駆体成形体をガラス瓶に入れ、さらにアルゴン雰囲気のSUS管に入れて密閉し、220℃2時間の焼成処理を施し、評価用の固体電解質成形体を得た。
成形体の断面写真を図4に示す。この成形体の断面において、複数の粒子同士が融着しており、空隙が少ない成形体であることが確認された。
成形体断面における硫化物系電解質粉体の融着の観察は、下記のように評価した。結果を表2に示す。
○:硫化物系電解質粉体同士が融着している。
×:硫化物系電解質粉体同士が融着していない。
製造例2で得られた硫化物系電解質粉前駆体の粉体をアルゴン雰囲気下のSUS管に入れて密閉し、220℃2時間の焼成処理を施して、硫化物系固体電解質粉体を製造した。焼成処理して得られた硫化物系固体電解質粉体を錠剤成形機に充填し、10MPaの圧力を印加して、硫化物系固体電解質の成形体を作製した。さらに、黒鉛10mgを成形体の両面にそれぞれ乗せ、再度錠剤成形機にて圧力を加えることで、評価用固体電解質成形体(直径約10mm、厚み約1mm)を作製し、実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
断面SEMを図5に示すが、粒子が明確に分かれており融着してないことが分かる。
製造例2の硫化物系固体電解質前駆体の代わりに製造例3の硫化物系固体電解質前駆体を用い、成型体の熱処理を210℃、2時間とした以外は実施例1と同様にして硫化物系固体電解質成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
製造例2の硫化物系固体電解質前駆体の代わりに製造例4の硫化物系固体電解質前駆体を用い、成型体の熱処理を230℃、2時間とした以外は実施例1と同様にして硫化物系固体電解質成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
製造例2の硫化物系固体電解質前駆体の代わりに製造例5の硫化物系固体電解質前駆体を用い、成型体の熱処理を240℃、2時間とした以外は実施例1と同様にして硫化物系固体電解質成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
製造例2の硫化物系固体電解質前駆体の代わりに製造例6の硫化物系固体電解質前駆体を用い、成型体の熱処理を210℃、2時間とした以外は実施例1と同様にして硫化物系固体電解質成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
製造例2の硫化物系固体電解質前駆体の代わりに製造例7の硫化物系固体電解質前駆体を用い、成型体の熱処理を220℃、2時間とした以外は実施例1と同様にして硫化物系固体電解質成形体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
10 粉砕機(力学的エネルギー供与手段)
20 反応槽(接触手段)
22 容器
24 撹拌翼
26 冷却管
30 ヒータ
40 オイルバス
50 第1の連結管(連結手段)
52 第2の連結管(連結手段)
54 ポンプ(循環手段)
100 全固体電池
110 正極層
120 固体電解質層
130 負極層
140,142 集電体
Claims (13)
- 下記式(1’)に示す組成を有するガラスセラミックスである固体電解質からなり、
前記固体電解質の粉体が互いに融着している固体電解質成形体。
LaPcSdXe…(1’)
(式中、Lは、Liを示し、XはCl、Br又はこれらの組合せを示す。
a〜eは、それぞれ各元素の組成比を示し、a:c:d:e=2〜6.5:1:3.5〜4.95:0.1〜1.5を満たす。) - 前記eが、0.1〜0.337である請求項1に記載の固体電解質成形体。
- 前記XがBrである請求項1又は2に記載の固体電解質成形体。
- 下記式(1’)に示す組成を有する固体電解質の粉体を加圧成形する工程、及び
加圧成形により調製した圧粉体を熱処理する工程を含み、
前記熱処理後の固体電解質はガラスセラミックスである、
固体電解質成形体の製造方法。
LaPcSdXe…(1’)
(式中、Lは、Liを示し、XはCl、Br又はこれらの組合せを示す。
a〜eは、それぞれ各元素の組成比を示し、a:c:d:e=2〜6.5:1:3.5〜4.95:0.1〜1.5を満たす。) - 前記固体電解質の粉体を、下記成分(A)、(B)及び(C)を用いて調製する請求項4に記載の固体電解質成形体の製造方法。
(A)硫化リチウム
(B)M’mSnで表される化合物
(C)M''wXxで表わされる化合物
(式中、M’はPを示す。
M''は、Li、P又はこれらの組み合わせを示す。
XはCl、Br又はこれらの組み合わせを示す。
wは1又は2の整数を示す。
m、n及びxは、それぞれ1〜10の整数を示す。) - 前記eが、0.1〜0.337である請求項4又は5に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記XがBrである請求項4〜6のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記成分(A)がLi2Sであり、前記成分(B)がP2S5であり、前記成分(C)がLiBrである請求項5に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記成分(A)と成分(B)のモル比[(A):(B)]が72:28〜78:22である請求項8に固体電解質成形体の製造方法。
- 前記成分(A)及び(B)の合計と成分(C)のモル比[[(A)+(B)]:(C)]が70:30〜96:4である請求項8又は9に記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記加圧成形の加圧処理を30〜400MPaで行う、請求項4〜10のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 前記熱処理を150℃〜360℃で行う、請求項4〜11のいずれかに記載の固体電解質成形体の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の固体電解質成形体を含む全固体電池。
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