以下に添付図面を参照し、本発明の実施の形態にかかる交流直流変換装置および圧縮機駆動装置ならびに空気調和機について説明する。なお、以下に示す実施の形態により本発明が限定されるものではない。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる交流直流変換装置の一構成例を示す図である。図1に示す例では、実施の形態1にかかる交流直流変換装置100は、交流電源1から供給される交流電力を直流電力に変換して直流負荷22に供給する構成としている。直流負荷22としては、例えば、交流直流変換装置100から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ(図示せず)を駆動するインバータ等を想定している。
図1に示すように、実施の形態1にかかる交流直流変換装置は、交流電源1にリアクタ2を介して並列接続される第1の整流器3および第2の整流器4と、整流器3の直流負荷22への出力端子間に直列接続された第1のコンデンサ7(高電位側)および第2のコンデンサ8(低電位側)と、整流器4の出力端子間に直列接続され、その接続点が第1のコンデンサ7および第2のコンデンサ8の接続点に接続された第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6と、第1のコンデンサ7に逆並列接続された逆電圧防止ダイオード9と、第2のコンデンサ8に逆並列接続された逆電圧防止ダイオード10と、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2を検出する第1の電圧検出回路11と、整流器3の出力端子間電圧(以下、単に「直流電圧」という)Vdcを検出する第2の電圧検出回路12と、交流電源1の電圧ゼロクロスを検出する電源ゼロクロス検出回路13と、交流電源1の電流(以下、単に「電源電流」という)Isを検出する電流検出部14と、直流電圧Vdcが所望の出力電圧値(後述する「目標直流電圧Vdc*」と同義)になるように第1および第2のスイッチング素子5,6を制御する制御部15と、制御部15から出力される第1のスイッチング素子5の駆動信号Saを、第1のスイッチング素子5を駆動できる電圧に変換する駆動回路16と、制御部15から出力される第2のスイッチング素子6の駆動信号Sbを、第2のスイッチング素子6を駆動できる電圧に変換する駆動回路17と、第1のスイッチング素子5に流れる電流を検出する電流検出部18と、第2のスイッチング素子6に流れる電流を検出する電流検出部19と、電流検出部18,19からの出力値に基づいて第1および第2のスイッチング素子5,6の過電流保護動作を行う過電流保護回路20と、第1および第2のスイッチング素子5,6の故障を報知する故障報知手段21とを備えている。なお、以下の説明では、交流電源1の実効電圧は200Vであるものとして説明する。
整流器3は、ダイオード3a〜3dがフルブリッジ接続されて構成されている。より具体的には、ダイオード3aのアノードとダイオード3bのカソードとが接続され、ダイオード3cのアノードとダイオード3dのカソードとが接続され、ダイオード3aおよびダイオード3cのカソード同士が接続され、ダイオード3bおよびダイオード3dのアノード同士が接続されている。ダイオード3aのアノードとダイオード3bのカソードとの接続点は、リアクタ2を介して交流電源1の一方端に接続され、ダイオード3cのアノードとダイオード3dのカソードとの接続点は、電流検出部14を介して交流電源1の他方端に接続されている。
整流器4は、ダイオード4a〜4dがフルブリッジ接続されて構成されている。より具体的には、ダイオード4aのアノードとダイオード4bのカソードとが接続され、ダイオード4cのアノードとダイオード4dのカソードとが接続され、ダイオード4aおよびダイオード4cのカソード同士が接続され、ダイオード4bおよびダイオード4dのアノード同士が接続されている。ダイオード4aのアノードとダイオード4bのカソードとの接続点は、リアクタ2を介して交流電源1の一方端に接続され、ダイオード4cのアノードとダイオード4dのカソードとの接続点は、電流検出部14を介して交流電源1の他方端に接続されている。
第1の電圧検出回路11は、整流器3の出力端子間に、高電位側から順に抵抗11a、抵抗11b、抵抗11cが直列接続され構成されている。抵抗11aと抵抗11bとの接続点は、第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6との接続点、および第1のコンデンサ7と第2のコンデンサ8との接続点に接続されている。抵抗11aの抵抗値と抵抗11bおよび抵抗11cの合成抵抗値とが略一致するように構成され、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1と第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2とが平衡状態を保つためのバランス抵抗を兼用した構成としている。抵抗11bと抵抗11cとの接続点は、制御部15に具備したA/D変換器15aに接続され、制御部15は、この抵抗11bと抵抗11cとの接続点の電圧値から第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2を得る構成としている。なお、図1に示す例では、第1の電圧検出回路11を3つの抵抗11a,11b,11cで構成する例を示しているが、例えば、抵抗11bおよび抵抗11cと抵抗値が等しい2つの抵抗を直列接続して抵抗11aを構成していてもよいし、上述したバランス抵抗とは別の構成としてもよいし、さらには、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2の検出が可能な既知の構成であればよく、この第1の電圧検出回路11の構成により本発明が限定されるものではない。
第2の電圧検出回路12は、整流器3の出力端子間に、高電位側から順に抵抗12a,抵抗12bが直列接続され構成されている。抵抗12aと抵抗12bとの接続点は、制御部15に具備したA/D変換器15bに接続され、制御部15は、この抵抗12aと抵抗12bとの接続点の電圧値から直流電圧Vdcを得る構成としている。なお、図1に示す例では、第2の電圧検出回路12を2つの抵抗12a,12bで構成する例を示しているが、直流電圧Vdcの検出が可能な既知の構成であればよく、この第2の電圧検出回路12の構成により本発明が限定されるものではない。
制御部15は、第1の電圧検出回路11の出力電圧値をA/D変換するA/D変換器15a、第2の電圧検出回路12の出力電圧値をA/D変換するA/D変換器15b、電流検出部14の出力値をA/D変換するA/D変換器15c、および故障判定手段15dを備えている。この制御部15は、例えば、マイクロコンピュータにて実現することができる。
ここで、本実施の形態では、図1に示すように、制御部15の基準グランドを直流電圧Vdcの負側電位と共通(非絶縁)にしているので、第1の電圧検出回路11および第2の電圧検出回路12の出力電圧値をそれぞれA/D変換器15aおよびA/D変換器15bに入力してA/D変換することにより、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2および直流電圧Vdcを得ることができる。なお、図1に示す例では、抵抗11bと抵抗11cとの接続点とA/D変換器15aとを直接接続し、抵抗12aと抵抗12bとの接続点とA/D変換器15bとを直接接続する構成としているが、抵抗11bと抵抗11cとの接続点とA/D変換器15aとの間、および、抵抗12aと抵抗12bとの接続点とA/D変換器15bとの間に、抵抗とコンデンサとからなるローパスフィルタを挿入すると、ノイズによる電圧誤検知の影響を軽減できることは言うまでもないが、図1に示す例では、このローパスフィルタの図示表示を省略している。
また、制御部15は、第1および第2のスイッチング素子5,6を制御する機能に加え、直流負荷22を制御する機能も有している。
各電流検出部14,18,19は、例えば、カレントトランスを用いて実現することができる。電流検出部14の出力は、制御部15に具備したA/D変換器15cに接続され、制御部15は、この電流検出部14の出力値から電源電流Isを得る構成としている。電流検出部18の出力値Isw1_levelおよび電流検出部19の出力値Isw2_levelは、過電流保護回路20に入力され、これら2つの出力値Isw1_level,Isw2_levelの少なくとも一方が後述する過電流保護レベルOC_LEVEL以上になったとき、制御部15から各駆動回路16,17に出力される第1および第2のスイッチング素子5,6の各駆動信号Sa,Sbを強制オフする。
本実施の形態では、図に示すように、第1および第2のコンデンサ7,8として有極性の電解コンデンサを用いて構成している。一般に、有極性の電解コンデンサは、逆電圧に対する耐力が1V程度と小さい。したがって、本実施の形態では、第1および第2のコンデンサ7,8にそれぞれ逆電圧防止ダイオード9,10を逆並列接続し、逆電圧が第1および第2のコンデンサ7,8に印加されるのを防止している。なお、本実施の形態では、直流負荷22が停止している場合において、第1および第2のコンデンサ7,8に逆電圧が印加されるのを防止することを目的としているので、逆電圧防止ダイオード9および10には電流容量が小さい(例えば1A程度)ものを選定すればよい。
また、図1に示す例では、第1および第2のスイッチング素子5,6としてIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いて構成した例を示しているが、他のスイッチング素子(例えば、MOSFET)を用いて構成してもよく、これら第1および第2のスイッチング素子5,6の構成により本発明が限定されるものではない。
故障報知手段21は、例えば、LED等により構成される。制御部15に具備された故障判定手段15dにおいて、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障していると判定した場合、制御部15は、例えば、故障報知手段21であるLEDを点滅させることでその故障を報知する。第1および第2のスイッチング素子5,6が正常である通常時においては、制御部15は、例えば、故障報知手段21であるLEDを点灯させることで、スイッチング素子5および6が正常であることを報知する。
つぎに、過電流保護回路20の構成について、図2を参照して説明する。図2は、実施の形態1にかかる交流直流変換装置における過電流保護回路の一構成例を示す図である。
図2に示す例では、過電流保護回路20は、コンパレータ20a、コンパレータ20b、AND回路20c、ラッチ回路20d、AND回路20e、およびAND回路20fを備え構成されている。
コンパレータ20aは、電流検出部18の出力値Isw1_levelと予め規定した過電流保護レベルOC_LEVELとを比較し、Isw1_level≧OC_LEVELである場合にはLoレベルを出力し、Isw1_level<OC_LEVELである場合にはHiレベルを出力する。同様に、コンパレータ20bは、電流検出部19の出力値Isw2_levelと過電流保護レベルOC_LEVELとを比較し、Isw2_level≧OC_LEVELである場合にはLoレベルを出力し、Isw2_level<OC_LEVELである場合にはHiレベルを出力する。
AND回路20cは、コンパレータ20aの出力とコンパレータ20bの出力との論理積を出力する。つまり、コンパレータ20aの出力とコンパレータ20bの出力とのうち、いずれか一方がLoレベルである場合にはLoレベルを出力し、両方共Hiレベルである場合にはHiレベルを出力する。
ラッチ回路20dは、通常時はHiレベルを出力しており、AND回路20cの出力がLoとなった場合に自身の出力をLoレベルにラッチ(保持)する。このラッチ回路20dの出力は、過電流検知信号OCとして制御部15に出力される。また、ラッチ回路20dは、制御部15からクリア信号CLRが入力された場合には、自身の出力をHiレベルにクリアする。
AND回路20eは、ラッチ回路20dの出力と制御部15から出力される第1のスイッチング素子5の駆動信号Saとの論理積を出力する。つまり、ラッチ回路20dの出力がLoレベルである場合、駆動回路16に出力する信号を強制的にLoレベルとする。同様に、AND回路20fは、ラッチ回路20dの出力と制御部15から出力される第2のスイッチング素子6の駆動信号Sbとの論理積を出力する。つまり、ラッチ回路20dの出力がLoレベルである場合、駆動回路17に出力する信号を強制的にLoレベルとする。なお、各駆動信号Sa,SbはHiアクティブ(Hiレベルで第1および第2のスイッチング素子5,6がオン、Loレベルで第1および第2のスイッチング素子がオフ)であり、駆動回路16,17に出力する信号を強制的にLoレベルとすることで、第1および第2のスイッチング素子5,6が強制的にオフ制御される。
ここで、過電流保護回路20による過電流検出時における制御部15の動作について説明する。制御部15は、過電流検知信号OCがLoレベルであることを検知した場合、第1のスイッチング素子5の駆動信号Saおよび第2のスイッチング素子6の駆動信号Sbをオフすると共に、直流負荷22の運転範囲を制限する。そして、制御部15は、必要に応じて所定時間(例えば、10秒)経過後、ラッチ回路20にクリア信号CLRを出力して第1および第2のスイッチング素子5,6の強制オフ制御を解除し、直流電圧Vdcの状態に応じて、第1のスイッチング素子5の駆動信号Saおよび第2のスイッチング素子6の駆動信号Sbを出力すると共に、直流負荷22の運転範囲制限を解除する。
つぎに、第1および第2のスイッチング素子5,6の各状態における動作について、図3〜図6を参照して説明する。
図3は、第1および第2のスイッチング素子が双方ともオンである場合の動作例を示す図である。また、図4は、第1のスイッチング素子がオン、第2のスイッチング素子がオフである場合の動作例を示す図である。また、図5は、第1のスイッチング素子がオフ、第2のスイッチング素子がオンである場合の動作例を示す図である。また、図6は、第1および第2のスイッチング素子が双方ともオフである場合の動作例を示す図である。図3(a)、図4(a)、図5(a)、図6(a)は、電源電流Is≧0のときの動作例を示し、図3(b)、図4(b)、図5(b)、図6(b)は、電源電流Is<0のときの動作例を示している。なお、以下の説明では、交流電源1の電圧Vsを単に「電源電圧」といい、整流器3の入力側の電圧Vcを「コンバータ電圧」という。また、図3〜図6に示す例では、電源電流Isの流れる方向は、交流電源1からリアクタ2に流れる方向を正とし、電源電圧Vs、コンバータ電圧Vc、コンデンサ7の両端間電圧Vc1、コンデンサ8の両端間電圧Vc2、および直流電圧Vdcは、図3〜6に示す矢印の方向に電圧が印加されたときに正としている。
図3(a)に示す第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともオン、Is≧0である場合には、交流電源1→リアクタ2→ダイオード4a→第1のスイッチング素子5→第2のスイッチング素子6→ダイオード4d→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。また、図3(b)に示す第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともオン、Is<0である場合には、交流電源1→ダイオード4c→第1のスイッチング素子5→第2のスイッチング素子6→ダイオード4b→リアクタ2→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。このとき、電源電流Isの極性に関係なく、整流器3の入力端子間が短絡された状態(電源短絡モード)になるため、ダイオード4a〜4dおよび第1および第2のスイッチング素子5,6の順方向電圧を無視すると、コンバータ電圧Vc=0となる。
図4(a)に示す第1のスイッチング素子5がオン、第2のスイッチング素子6がオフ、Is≧0である場合には、交流電源1→リアクタ2→ダイオード4a→第1のスイッチング素子5→第2のコンデンサ8→ダイオード3d→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。また、図4(b)に示す第1のスイッチング素子5がオン、第2のスイッチング素子6がオフ、Is<0である場合には、交流電源1→ダイオード4c→第1のスイッチング素子5→第2のコンデンサ8→ダイオード3b→リアクタ2→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。このとき、電源電流Isの極性に関係なく、整流器3の入力端子間が第2のコンデンサ8と接続された状態(第1の倍電圧整流モード)になる。ここで、ダイオード3a〜3d,4a〜4dおよび第1のスイッチング素子5の順方向電圧を無視すると、Is≧0の場合はコンバータ電圧Vc=Vc2となり、Is<0の場合はコンバータ電圧Vc=−Vc2となる。
図5(a)に示す第1のスイッチング素子5がオフ、第2のスイッチング素子6がオン、Is≧0である場合には、交流電源1→リアクタ2→ダイオード3a→第1のコンデンサ7→第2のスイッチング素子6→ダイオード4d→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。また、図5(b)に示す第1のスイッチング素子5がオフ、第2のスイッチング素子6がオン、Is<0である場合には、交流電源1→ダイオード3c→第1のコンデンサ7→第2のスイッチング素子6→ダイオード4b→リアクタ2→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。このとき、電源電流Isの極性に関係なく、整流器3の入力端子間が第1のコンデンサ7と接続された状態(第2の倍電圧整流モード)になる。ここで、ダイオード3a〜3d,4a〜4dおよび第2のスイッチング素子6の順方向電圧を無視すると、Is≧0の場合はコンバータ電圧Vc=Vc1となり、Is<0の場合はコンバータ電圧Vc=−Vc1となる。
図6(a)に示す第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともオフ、Is≧0である場合には、交流電源1→リアクタ2→ダイオード3a→第1のコンデンサ7→第2のコンデンサ8→ダイオード3d→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。また、図6(b)に示す第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともオフ、Is<0である場合には、交流電源1→ダイオード3c→第1のコンデンサ7→第2のコンデンサ8→ダイオード3b→リアクタ2→交流電源1の経路で電源電流Isが流れる。このとき、電源電流Isの極性に関係なく、整流器3の入力端子間に第1および第2のコンデンサ7,8が直列接続された状態(全波整流モード)になる。ここで、ダイオード3a〜3dの順方向電圧を無視すると、Is≧0の場合はコンバータ電圧Vc=Vdc=Vc1+Vc2となり、Is<0の場合はコンバータ電圧Vc=−Vdc=−(Vc1+Vc2)となる。
続いて、電源ゼロクロス検出回路13の動作について、図7を参照して説明する。図7は、電源ゼロクロス検出回路の動作例を示す図である。図7(a)は電源電圧Vsを示し、図7(b)は電源ゼロクロス検出回路13の出力である電源ゼロクロス信号ZCを示している。
図7に示すように、本実施の形態では、電源ゼロクロス検出回路13は、電源電圧Vs≧0のときにHiレベル、電源電圧Vs<0のときにLoレベルとなる電源ゼロクロス信号ZCを出力する。制御部15は、電源ゼロクロス信号ZCがLoレベルからHiレベルに遷移するタイミングを電源電圧Vsのゼロクロスタイミングとして検出する。
続いて、交流電源1の電源力率が100%のときの電源電圧Vsとコンバータ電圧Vcとの関係について、図8を参照して説明する。図8は、交流電源1の電源力率が100%のときの電源電圧Vsとコンバータ電圧Vcとの関係を示す図である。図8において、Isは交流電源1の電流ベクトル、Vsは交流電源1の電圧ベクトル、Vcは前記整流器3の入力端子間の電圧ベクトル、ωsLIsの「ωs」は交流電源1の角速度周波数(交流電源1の周波数がfs[Hz]の場合、ωs=2π×fs[rad/s])、「L」はリアクタ2の容量である。
リアクタ2を純粋なL成分のみと考えた場合、交流電源1の電圧Vsと電流Isとが同相のとき、ベクトルVsとωsLIsの位相差は90度の関係になる。この関係を保つようにコンバータ電圧Vcを略正弦波状に制御することで、高調波規制値を満足しつつ高力率な交流直流変換装置を得ることが可能となる。ここで、ベクトルVsとVcとの位相差θc[rad]は、電源ゼロクロス信号ZCのゼロクロスタイミングを基準にコンバータ電圧Vcの略正弦波波形をθc/ωs[s]遅らせるように制御することで実現している。
制御部15に入力される目標直流電圧Vdc*への昇圧制御について、図9、図10を参照して説明する。図9は、目標直流電圧Vdc*が低い場合におけるコンバータ電圧ピーク付近の各駆動信号Sa,Sbの一例を示す図である。また、図10は、目標直流電圧Vdc*が高い場合におけるコンバータ電圧ピーク付近の各駆動信号Sa,Sbの一例を示す図である。図9、10において、Tcは単位時間、tz_1,tz_2は単位時間Tc当たりの全波整流モード時間、tb1_1,tb1_2は単位時間Tc当たりの第1の倍電圧整流モード時間、tb2_1,tb2_2は単位時間Tc当たりの第2の倍電圧整流モード時間である。
目標直流電圧Vdc*が低い場合は、図9に示すようにコンバータ電圧ピーク付近の全波整流モードの比率が大きくなるように第1および第2のスイッチング素子5,6を制御し、目標直流電圧Vdc*が高い場合は図10に示すようにコンバータ電圧ピーク付近の第1および第2の倍電圧整流モードの比率が大きくなるように第1および第2のスイッチング素子5,6を制御している。ここで、後述する第1および第2のコンデンサ7,8の両端間電圧が平衡になるように補正する制御(以下、「電圧バランス補正制御」という)を行なわない場合には、第1および第2の倍電圧整流モードの出力時間が単位時間Tc(例えば100μs)当たりで同じ(tb1_x=tb2_x×2、x=1,2)になるように制御することとなる。
続いて、電圧バランス補正制御について、図11を参照して説明する。図11は、第1および第2のコンデンサの電圧不平衡状態を示す図である。
上述したように、図4に示す第1のスイッチング素子5がオン、第2のスイッチング素子6がオフである場合には、電源電流Isの極性に関係なく、整流器3の入力端子間が第2のコンデンサ8と接続された状態(第1の倍電圧整流モード)となり、図5に示す第1のスイッチング素子5がオフ、第2のスイッチング素子6がオンである場合には、電源電流Isの極性に関係なく、整流器3の入力端子間が第1のコンデンサ7と接続された状態(第2の倍電圧整流モード)となる。このため、例えば、第1および第2のスイッチング素子5,6にスイッチングばらつきがあり、単位時間あたりの第1のスイッチング素子5のオン時間が第2のスイッチング素子6のオン時間より大きくなる場合は、図11に示すように、目標直流電圧Vdc*への昇圧動作の開始後において、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2は直流電圧Vdcに近づき、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1は0に近づく。逆に、単位時間あたりの第1のスイッチング素子5のオン時間が第2のスイッチング素子6のオン時間より小さくなる場合は、目標直流電圧Vdc*への昇圧動作の開始後において、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2は0に近づき、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1は直流電圧Vdcに近づく。
したがって、本実施の形態では、電圧バランス補正制御として、Vc1<Vc2となる場合は、第1のスイッチング素子5のオン時間を短くなるように駆動信号Saを補正する制御、および、第2のスイッチング素子6のオン時間を長くなるように駆動信号Sbを補正する制御のうちのいずれか一方あるいは両方を行い、Vc1>Vc2となる場合は、第1のスイッチング素子5のオン時間を長くなるように駆動信号Saを補正する制御、および、第2のスイッチング素子6のオン時間を短くなるように駆動信号Sbを補正する制御のうちのいずれか一方あるいは両方を行うことで、Vc1=Vc2となるように制御するようにしている。
ここで、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障している場合は、上述した電圧バランス補正制御を行ったとしても、実際には故障したスイッチング素子はオープン状態もしくはショート状態で制御不可能となるため、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1と第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2との均衡を保つことはできない。
例えば、第1のスイッチング素子5がショート故障している状態で、交流電源1が印加された場合は、図4(a),(b)に示すように、第2のコンデンサ8のみに充電される形となり、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1=0、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2=Vdcとなる。この状態で直流負荷22を継続して動作させた場合は、第1のコンデンサ7の逆電圧防止ダイオード9に電流容量以上の電流が流れて逆電圧防止ダイオード9も破損し、第1のコンデンサ7に逆電圧が印加される状態となり、第1のコンデンサ7も破損する虞がある。同様に、第2のスイッチング素子6がショート故障している状態で、交流電源1が印加された場合は、図5(a),(b)に示すように、第1のコンデンサ7のみに充電される形となり、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1=Vdc、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2=0となる。この状態で直流負荷22を継続して動作させた場合は、第2のコンデンサ8の逆電圧防止ダイオード10に電流容量以上の電流が流れて逆電圧防止ダイオード10も破損し、第2のコンデンサ8に逆電圧が印加される状態となり、第2のコンデンサ8も破損する虞がある。
また、例えば、第2のスイッチング素子6がオープン故障している状態で、直流電圧Vdcを目標直流電圧Vdc*になるように昇圧する制御を行った場合も、図4(a),(b)に示すように、第2のコンデンサ8のみに充電される形となり、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1=0、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2=Vdcとなる。この状態で交流直流変換装置100の昇圧動作を行い、直流負荷22を継続して動作させた場合は、第1のコンデンサ7の逆電圧防止ダイオード9に電流容量以上の電流が流れて逆電圧防止ダイオード9も破損し、第1のコンデンサ7に逆電圧が印加される状態となり、第1のコンデンサ7も破損する虞がある。同様に、第1のスイッチング素子5がオープン故障している状態で、直流電圧Vdcを目標直流電圧Vdc*になるように昇圧する制御を行った場合も、図5(a),(b)に示すように、第1のコンデンサ7のみに充電される形となり、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1=Vdc、第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2=0となる。この状態で交流直流変換装置100の昇圧動作を行い、直流負荷22を継続して動作させた場合は、第2のコンデンサ8の逆電圧防止ダイオード10に電流容量以上の電流が流れて逆電圧防止ダイオード10も破損し、第2のコンデンサ8に逆電圧が印加される状態となり、第2のコンデンサ8も破損する虞がある。
したがって、本実施の形態では、制御部15に故障判定手段15dを具備し、この故障判定手段15dを用いて、第1および第2のスイッチング素子5,6のショート故障およびオープン故障を判定し、第1もしくは第2のスイッチング素子5,6がショート故障もしくはオープン故障していると判定した場合には、交流直流変換装置100の昇圧動作を停止させ、直流負荷22の動作を停止させると共に、その故障を報知するようにしている。
ここで、故障判定手段15dによる第1および第2のスイッチング素子5,6の故障判定手法について説明する。本実施の形態では、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障した場合、上述した電圧バランス補正制御を行ったとしても、実際には故障したスイッチング素子はオープン状態もしくはショート状態で制御不可能となるため、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1と第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2との均衡を保つことはできないことを利用して、第1および第2のスイッチング素子5,6の故障判定を行う。
つまり、本実施の形態では、故障判定手段15dは、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が予め規定した電圧値Vx(例えば、Vx=50V)以下になったことを故障判定条件とし、この故障判定条件を満たす場合に(Vc1≦VxもしくはVc2≦Vx)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障していると判定する。なお、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1は、第2の電圧検出回路12の出力値から得た直流電圧Vdcと第1の電圧検出回路11の出力値から得た第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2との差から得ることができる。
以下、故障判定手段15dの判定結果に基づく動作について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。図12は、実施の形態1にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の判定結果に基づく動作フローチャートである。
図12に示すフロー処理は、直流負荷22を動作させている間の所定周期毎(例えば50ms毎)に実施するものとする。なお、図示していないが、制御部15は、運転指令の入力に伴い直流負荷22を動作させ、直流負荷22が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になったときに交流直流変換装置100を動作開始、つまり、上述した目標直流電圧Vdc*への昇圧制御を行なう。また、この昇圧制御を行う際には、上述した電圧バランス補正制御を併用するものとする。なお、交流直流変換装置の昇圧動作開始前は、各駆動信号Sa,SbをLoレベル出力しているものとする。ただし、直流負荷22を動作させる前から第1もしくは第2のスイッチング素子5,6のどちらか一方がショート故障している場合は、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が0に近い状態になる。そのため、後述する図12のステップST101の条件を満たすときは直流負荷22の動作および昇圧動作を開始させないものとする。
故障判定手段15dは、故障判定条件を満たしているか否か、つまり、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が予め規定した電圧値Vx(例えば、Vx=50V)以下(Vc1≦VxもしくはVc2≦Vx)であるか否かを判定する(ステップST101)。
故障判定手段15dにおける故障判定条件を満たしている、つまり、Vc1≦VxもしくはVc2≦Vxを満たしている場合(ステップST101;Yes)、制御部15は、各駆動信号Sa,SbをLoレベル出力とし、交流直流変換装置100の昇圧動作を停止させる(ステップST102)と共に、直流負荷22の動作を停止させる(ステップST103)。そして、故障報知手段21であるLEDを点滅させて(故障表示)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6が故障したことを報知する(ステップST104)。
続いて、故障判定手段15dは、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障判定を行った回数(以下、「故障判定回数」という)をカウントし(ステップST105)、当該故障判定回数が規定値Nx(例えば、Nx=3回)以上であるか否かを判定する(ステップST106)。故障判定回数がNx以上である場合には(ステップST106;Yes)、制御部15は、直流負荷22の動作および交流直流変換装置100の昇圧動作開始を禁止する処理を行い(ステップST107)、本フロー処理を終了する。一方、故障判定回数がNx未満である場合には(ステップST106;No)、制御部15は、予め規定した時間Tx(例えば、Tx=3分)後に直流負荷22の動作および交流直流変換装置100の昇圧動作を開始させるための処理を行い(ステップST108)、本フロー処理を終了する。
故障判定手段15dにおける故障判定条件を満たしていない、つまり、Vc1≦VxおよびVc2≦Vxのいずれも満たしていない場合(ステップST101;No)、故障判定手段15dは、さらに直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)であるか否かを判定し(ステップST109)、直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*未満(Vdc<Vdc*)であれば(ステップST109;No)、本フロー処理を終了する。
直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)である場合(ステップST109;Yes)、故障判定手段15dは、故障判定回数をクリアする(ステップST110)と共に、故障報知手段21であるLEDを点灯させ(正常表示)、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が正常であることを報知し(ステップST111)、本フロー処理を終了する。
なお、直流電圧Vdcおよび第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2の変動が大きい場合には、これらVdcおよびVc2を故障判定手段15dにおける故障判定に支障のない程度にフィルタ処理(例えば、フィルタ時定数10ms)した安定した値を用いて故障判定を行ってもよいことは言うまでもない。また、上述した図12に示すフロー処理における故障判定回数のカウント(ステップST105)、故障判定回数の判定(ステップST106)、および昇圧動作開始処理(ステップST108)は、故障判定手段15dにおける誤判定を想定したものであり、故障判定手段15dにおける誤判定を考慮する必要がない場合には省略可能である。つまり、交流直流変換装置100の昇圧動作および直流負荷22の動作を停止し(ステップST102、ステップST103)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障を報知した後(ステップST104)、直流負荷22の動作および交流直流変換装置100の昇圧動作開始を禁止する処理を行う(ステップST107)ようにすればよい。
なお、本実施の形態では、故障判定手段15dは、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が予め規定した電圧値Vx(例えば、Vx=50V)以下になったことを故障判定条件とし、この故障判定条件を満たす場合に(Vc1≦VxもしくはVc2≦Vx)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障していると判定するようにしたが、例えば、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が第1および第2のコンデンサ7,8の最大定格電圧付近まで上昇した場合に、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障していると判定することも考えられる。しかしながら、第1もしくは第2のスイッチング素子5,6がオープン故障している状態では、目標直流電圧Vdc*になるように昇圧制御を行ったとしても、適正な昇圧制御ができないため、上述したように第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が第1および第2のコンデンサ7,8の最大定格電圧近くになったことにより第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がオープン故障していると判定することは困難である。また、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障している状態では、目標直流電圧Vdc*になるように昇圧制御をした場合には、電源電圧Vsが高いときにも電源短絡モードが発生するため、過電流保護回路20により過電流が検出され、駆動信号Sa,Sbが出力されず強制的にLoレベル信号となり、第1および第2のスイッチング素子5,6が強制オフ制御されて昇圧制御が行えない状態となる。そのため、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障している場合においても、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が第1のおよび第2のコンデンサ7,8の最大定格電圧近くになったことにより第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障していると判定することは困難である。
以上説明したように、実施の形態1の交流直流変換装置によれば、交流電源にリアクタを介して並列接続される第1および第2の整流器と、第1の整流器の出力端子間に直列に接続された高電位側に位置する第1のコンデンサおよび低電位側に位置する第2のコンデンサと、第2の整流器の出力端子間に直列に接続され、その接続点が第1のコンデンサおよび第2のコンデンサの接続点に接続された第1のスイッチング素子および第2のスイッチング素子と、第1および第2のスイッチング素子を制御して直流負荷への出力電圧値の昇圧制御を行うと共に、第1および第2のコンデンサの各両端間電圧を平衡状態に保つ電圧バランス補正制御を行う制御部を備え、昇圧制御を行っている際に、第1および第2のスイッチング素子の故障判定処理を行なう故障判定手段を具備し、第1および第2のコンデンサのうちの何れか一方の両端電圧が規定値以下となった場合に、第1もしくは第2のスイッチング素子がショート故障もしくはオープン故障していると判定して昇圧制御を停止するすると共に、直流負荷の動作も停止するようにしているので、第1および第2のスイッチング素子の故障に起因する第1および第2のコンデンサへの逆電圧印加を防ぎ、二次破壊の発生を抑制することができるので、高価なバイポーラ電解コンデンサを用いることなく、有極性の安価な電解コンデンサを用いて安価に構成でき、さらには、第1および第2のスイッチング素子の故障を早期に発見できるので、故障原因の究明が容易となる。
また、故障判定手段が第1もしくは第2のスイッチング素子の故障を誤判定することが想定される場合には、故障判定手段が第1もしくは第2のスイッチング素子のショート故障もしくはオープン故障していると判定した回数が規定値(例えば3回)未満である場合に、故障判定時以降の規定時間経過後に、第1および第2のコンデンサの両端間電圧が共に規定値(例えば、50[V])を超す電圧にあるときは、直流負荷の動作を開始すると共に、交流直流変換装置の昇圧動作を開始することも可能である。
また、制御部の基準グランドを第1の整流器の負極側出力端子に非絶縁で接続し、直流電圧Vdcの負側電位と共通にしているので、例えば制御部としてA/D変換器を備えたマイクロコンピュータを使用した場合に、第1および第2の電圧検出回路の出力電圧値(抵抗分圧値)をマイクロコンピュータに備えたA/D変換器にて直接検出することができ、安価な構成で実現することができる。
さらに、故障判定手段が第1もしくは第2のスイッチング素子がショート故障もしくはオープン故障していると判定した際に、その故障を報知する故障報知手段を備えることで、第1もしくは第2のスイッチング素子の故障が発生したことを容易に認識することができる。
なお、上述した実施の形態1では、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が予め規定した電圧値Vx(例えば、Vx=50V)以下になったことを検出することにより第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障もしくはオープン故障していると判定するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、直流電圧Vdcの1/2の値と第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2の値との差の絶対値が予め規定した値(例えば、50V)以上になったことを検出することにより、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障判定を行うようにしてもよい。
また、上述した実施の形態1では、故障放置手段としてLEDを具備した構成を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、ブザーなどで故障を報知するようにしてもよい。
実施の形態2.
図13は、実施の形態2にかかる交流直流制御装置の一構成例を示す図である。なお、図1で説明した実施の形態1と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図13に示す例では、実施の形態1において説明した図1に示す構成に対し、直流負荷22に代えて、インバータ主回路23、三相の永久磁石電動機24、および圧縮機25を接続し、インバータ主回路23に直流電力を供給する構成とし、交流直流制御装置100aとインバータ主回路23とを含み圧縮機駆動装置200が構成されている。
図14は、インバータ主回路の一構成例を示す図である。図14に示すように、インバータ主回路23の入力端子P−N間に交流直流変換装置100aから直流電圧Vdcが印加され、インバータ主回路23の出力端子U〜Wに接続された永久磁石電動機24の各相巻線(図示せず)に三相交流電力を供給するように構成されている。
インバータ主回路23は、絶縁ゲート入力を持つ電力スイッチング素子SWa〜SWfと、電力スイッチング素子SWa〜SWfにそれぞれ逆並列接続されたダイオードDa〜Dfと、電力スイッチング素子SWa〜SWfを駆動する駆動回路GDa〜GDfとを含み構成されている。このインバータ主回路23は、例えば、IPM(Inteligent Power Module)により構成することができる。
圧縮機25は、三相の永久磁石電動機24の回転子(図示せず)と機械的に接続されており、インバータ主回路23により永久磁石電動機24が駆動され、永久磁石電動機24の回転子が回転することで圧縮動作を行う。
図13に示すように、本実施の形態にかかる交流直流変換装置100aでは、第1のコンデンサ7に逆電圧が印加されるのを防止するために逆並列接続された逆電圧防止ダイオード9−1と、第2のコンデンサ8に逆電圧が印加されるのを防止するために逆並列接続された逆電圧防止ダイオード10−1として、インバータ主回路23に流し得る電流値よりも電流容量が大きい、例えば、整流器3を構成するダイオード3a〜3dと同等以上の電流容量を有し、同等以上の冷却(図示せず)を行うことを前提としている。ただし、ダイオード3a〜3dの電流容量がインバータ主回路23に流し得る電流値に対して十分に余裕がある場合は、この限りではない。
また、本実施の形態にかかる交流直流変換装置100aでは、制御部15−1は、インバータ主回路23を制御する機能を有し、インバータ主回路23の電力スイッチング素子SWa〜SWfを駆動するための6つの駆動信号をそれぞれ駆動回路GDa〜GDfに出力する構成としている。また、実施の形態1では、故障判定手段15dにおいて第1もしくは第2のスイッチング素子5,6がショート故障もしくはオープン故障していると判定した場合、直流負荷22の動作を停止させるようにしたが、本実施の形態では、圧縮機25の運転範囲を制限するようにしている。この圧縮機25の運転範囲制限については後述する。
つぎに、実施の形態2における故障判定手段15dの故障判定結果に基づく動作について、図15を参照して説明する。図15は、実施の形態2にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の判定結果に基づく動作フローチャートである。なお、図12で説明した実施の形態1における故障判定手段15dの判定結果に基づく動作と同一または同等の処理には同一符号を付している。
図15に示すフロー処理は、圧縮機25を動作させている間の所定周期毎(例えば50ms毎)に実施するものとする。なお、図示していないが、制御部15−1は、運転指令の入力に伴い圧縮機25を動作させ、圧縮機25が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になったときに交流直流変換装置100aを動作開始、つまり、上述した目標直流電圧Vdc*への昇圧制御を行なう。また、この昇圧制御を行う際には、実施の形態1において説明した電圧バランス補正制御を併用するものとする。なお、交流直流変換装置100aの動作開始前は、各駆動信号Sa,SbをLoレベル出力しているものとする。
故障判定手段15dは、故障判定条件を満たしているか否か、つまり、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1もしくは第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2が予め規定した電圧値Vx(例えば、Vx=50V)以下(Vc1≦VxもしくはVc2≦Vx)であるか否かを判定する(ステップST101)。
故障判定手段15dにおける故障判定条件を満たしている、つまり、Vc1≦VxもしくはVc2≦Vxを満たしている場合(ステップST101;Yes)、制御部15−1は、各駆動信号Sa,SbをLoレベル出力とし、交流直流変換装置100aの昇圧動作を停止させる(ステップST102)と共に、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103a)。そして、故障報知手段21であるLEDを点滅させて(故障表示)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6が故障したことを報知する(ステップST104)。
続いて、故障判定手段15dは、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障判定を行った回数(以下、「故障判定回数」という)をカウントし(ステップST105)、当該故障判定回数が規定値Nx(例えば、Nx=3回)以上であるか否かを判定する(ステップST106)。故障判定回数がNx以上である場合には(ステップST106;Yes)、制御部15−1は、交流直流変換装置100aの昇圧動作開始を禁止する処理を行い(ステップST107a)、本フロー処理を終了する。一方、故障判定回数がNx未満である場合には(ステップST106;No)、制御部15−1は、予め規定した時間Tx(例えば、Tx=3分)後に交流直流変換装置100aの昇圧動作を開始させるための処理を行い(ステップST108a)、本フロー処理を終了する。
故障判定手段15dにおける故障判定条件を満たしていない、つまり、Vc1≦VxおよびVc2≦Vxのいずれも満たしていない場合(ステップST101;No)、故障判定手段15dは、さらに直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)であるか否かを判定し(ステップST109)、直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*未満(Vdc<Vdc*)であれば(ステップST109;No)、本フロー処理を終了する。
直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)である場合(ステップST109;Yes)、故障判定手段15dは、圧縮機25の運転範囲制限を解除し(ステップST112)、故障判定回数をクリアする(ステップST110)と共に、故障報知手段21であるLEDを点灯させ(正常表示)、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が正常であることを報知し(ステップST111)、本フロー処理を終了する。
図15に示す例において、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103a)とは、例えば、交流直流変換装置100aが昇圧動作を行わない、つまり、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能な状態とすることを示している。ここで、例えば、第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともショート故障した場合には、実施の形態において説明した図3に示す電源短絡モードとなり、コンバータ電圧Vc=0となるが、第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともショート故障することは極めて稀であり、第1および第2のスイッチング素子5,6のうちの少なくとも一方が正常であるかオープン故障している状態であれば、全波整流モードでの電力供給が可能となる。また、第1および第2のスイッチング素子5,6の一方がショート故障している場合は、図5もしくは図6の状態となるが、各逆電圧防止ダイオード9−1,10−1の電流容量を大きくすることで、継続して電力供給することが可能となるので、上述したように圧縮機25の運転範囲を制限することで、圧縮機25の継続運転が可能となる。
なお、直流電圧Vdcおよび第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2の変動が大きい場合には、これらVdcおよびVc2を故障判定手段15dにおける故障判定に支障のない程度にフィルタ処理(例えば、フィルタ時定数10ms)した安定した値を用いて故障判定を行ってもよいことは言うまでもない。また、上述した図15に示すフロー処理における故障判定回数のカウント(ステップST105)、故障判定回数の判定(ステップST106)、および昇圧動作開始処理(ステップST108a)は、故障判定手段15dにおける誤判定を想定したものであり、故障判定手段15dにおける誤判定を考慮する必要がない場合には省略可能である。つまり、交流直流変換装置100aの昇圧動作を停止して(ステップST102)、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103a)と共に、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障を報知した後(ステップST104)、交流直流変換装置100aの昇圧動作開始を禁止する処理を行う(ステップST107a)ようにすればよい。
以上説明したように、実施の形態2の交流直流変換装置によれば、第1および第2のスイッチング素子のうちの少なくとも一方が正常であるかオープン故障している状態であれば、全波整流モードでの電力供給が可能であり、第1および第2のコンデンサに逆電圧が印加されるのを防止するためにそれぞれ逆並列接続された逆電圧防止ダイオードとして、直流負荷として接続されたインバータ主回路に流し得る電流値よりも電流容量が大きいものを用いるようにしたので、圧縮機の運転範囲を通常時よりも制限、つまり、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能な状態に制限することで、第1および第2のコンデンサの二次破壊の発生を抑制しつつ、圧縮機の継続運転が可能となる。したがって、圧縮機により冷媒が循環される空気調和機に適用した場合においては、故障修理が行なわれるまで空気調和機の運転が不可能となる状況を回避することができる。
なお、第1および第2のスイッチング素子が正常であり、電圧バランス補正制御が正常に動作し、第1および第2のコンデンサの両端電圧が平衡状態を保っている通常状態においては、各逆電圧防止ダイオードには電流が流れないため、実施の形態1と同等の損失で動作させることができるという効果もある。
実施の形態3.
図16は、実施の形態3にかかる交流直流制御装置の一構成例を示す図である。なお、図1で説明した実施の形態1および図13で説明した実施の形態2と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図16に示す例では、実施の形態1において説明した図1に示す構成に対し、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の接続点と、第1のコンデンサ7および第2のコンデンサ8の接続点との間に保護スイッチ26を備えると共に、制御部15−2から出力される保護スイッチ26の駆動信号Scを、保護スイッチ26を駆動できる電圧に変換する駆動回路27を備えた構成とし、過電流保護回路20に代えて、過電流保護回路20−1を備え、実施の形態2において説明した図13に示す構成と同様に、インバータ主回路23、三相の永久磁石電動機24、および圧縮機25を接続し、インバータ主回路23に直流電力を供給する構成とし、交流直流制御装置100bとインバータ主回路23とを含み圧縮機駆動装置200aが構成されている。なお、インバータ主回路23の構成は、実施の形態2と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図17は、実施の形態3にかかる交流直流変換装置における過電流保護回路の一構成例を示す図である。なお、図2で説明した実施の形態1における過電流保護回路20と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明を省略する。
図17に示す例では、過電流保護回路20−1は、実施の形態1において説明した図2に示す構成に対し、AND回路20gをさらに備えている。AND回路20gは、ラッチ回路20dの出力と制御部15−2から出力される保護スイッチ26の駆動信号Scとの論理積を出力する。つまり、ラッチ回路20dの出力がLoレベルである場合、駆動回路27に出力する信号を強制的にLoレベルとする。
制御部15−2は、実施の形態1において説明した故障判定手段15dに代えて、故障判定手段15d−1を備えている。この故障判定手段15d−1は、実施の形態1において説明した機能に加え、後述する故障判定処理において、過電流保護回路20−1から出力される過電流検知信号OCを監視し、この過電流検知信号OCのLo/Hiレベルに応じて、第1および第2のスイッチング素子5,6のオープン故障およびショート故障を判定する機能を有している。
保護スイッチ26は、制御部15−2から出力される駆動信号ScがLoレベルである場合にオフ制御され、Hiレベルでオン制御されるように構成されている。この保護スイッチ26としては、半導体スイッチング素子で構成されていてもよいし、機械的に開閉制御される常開接点として構成されていてもよい。
つぎに、実施の形態3における故障判定手段15d−1の故障判定処理について、図18を参照して説明する。図18は、実施の形態3にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の動作フローチャートである。
図18に示すフロー処理は、交流直流変換装置100bの昇圧動作の停止中において、圧縮機25が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になったときに実施するものとする。なお、交流直流変換装置100bの昇圧動作の開始前は、制御部15−2は、各駆動信号Sa,Sb,Scを全てLoレベル出力し、交流直流変換装置100bが全波整流モードであるものとする。
交流直流変換装置100bの昇圧動作の停止中において、圧縮機25が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になると、制御部15−2は、過電流保護回路20−1のラッチ回路20dにクリア信号CLRを出力し(ステップST201)、ラッチ回路20dの出力のラッチ状態をクリア(Hiレベル)する。
続いて、制御部15−2は、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをHiレベルとして(ステップST202)第1のスイッチング素子5をオン制御する。
ここで、第2のスイッチング素子6がショート故障している場合には、図3(a),(b)に示す電源短絡モードとなり、電源電圧Vsが高い状態のときに第1および第2のスイッチング素子5,6に過電流が流れ、過電流保護回路20−1から出力される過電流検知信号OCがLoレベルとなる。一方、第2のスイッチング素子6が正常であるか、または、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がオープン故障している場合には、過電流検知信号OCがHiレベルとなる。
したがって、故障判定手段15d−1は、過電流検知信号OCがHiレベルであるか否かを判定し(ステップST203)、過電流検知信号OCがLoレベルである場合には(ステップST203;No)、第2のスイッチング素子6がショート故障しているものと判定する(ステップST204)。そして、制御部15−2は、駆動信号Sa,SbをLoレベルとして(ステップST205)第1および第2のスイッチング素子5,6をオフ制御し、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100bは全波整流モードとなる。
一方、過電流検知信号OCがHiレベルである場合には(ステップST203;Yes)、故障判定手段15d−1は、第2のスイッチング素子6がショート故障していないものと判定する(ステップST206)。そして、制御部15−2は、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをLoレベルとして(ステップST207)第1のスイッチング素子5をオフ制御し、第2のスイッチング素子6の駆動信号SbをHiレベルとして(ステップST208)第2のスイッチング素子6をオン制御する。
ここで、第1のスイッチング素子5がショート故障している場合には、図3(a),(b)に示す電源短絡モードとなり、電源電圧Vsが高い状態のときに第1および第2のスイッチング素子5,6に過電流が流れ、過電流保護回路20−1から出力される過電流検知信号OCがLoレベルとなる。一方、第1のスイッチング素子5が正常であるか、または、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がオープン故障している場合には、過電流検知信号OCがHiレベルとなる。
したがって、故障判定手段15d−1は、過電流検知信号OCがHiレベルであるか否かを判定し(ステップST209)、過電流検知信号OCがLoレベルである場合には(ステップST209;No)、第1のスイッチング素子5がショート故障しているものと判定する(ステップST210)。そして、制御部15−2は、駆動信号Sa,SbをLoレベルとして(ステップST205)第1および第2のスイッチング素子5,6をオフ制御し、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100bは全波整流モードとなる。
一方、過電流検知信号OCがHiレベルである場合には(ステップST209;Yes)、故障判定手段15d−1は、第1のスイッチング素子5がショート故障していないものと判定する(ステップST211)。そして、制御部15−2は、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをHiレベルとして(ステップST212)第1および第2のスイッチング素子5,6を双方ともオン制御する。
ここで、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が双方とも正常である場合には、図3(a),(b)に示す電源短絡モードとなり、電源電圧Vsが高い状態のときに第1および第2のスイッチング素子5,6に過電流が流れ、過電流保護回路20−1から出力される過電流検知信号OCがLoレベルとなる。一方、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6のいずれか一方あるいは両方がオープン故障している場合には、過電流検知信号OCがLoレベルとなる。
したがって、故障判定手段15d−1は、過電流検知信号OCがLoレベルであるか否かを判定し(ステップST213)、過電流検知信号OCがHiレベルである場合には(ステップST213;No)、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6のいずれか一方あるいは両方がオープン故障しているものと判定し(ステップST214)、駆動信号Sa,SbをLoレベルとして(ステップST205)、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100bは全波整流モードとなる。
一方、過電流検知信号OCがLoレベルである場合には(ステップST213;Yes)、故障判定手段15d−1は、第1および第2のスイッチング素子5,6が正常であるものと判定する(ステップST215)。そして、制御部15−2は、駆動信号Sa,Sbを一旦Loレベルとして(ステップST216)第1および第2のスイッチング素子5,6をオフ制御し、過電流保護回路20−1のラッチ回路20dにクリア信号CLRを出力して(ステップST217)ラッチ回路20dの出力のラッチ状態をクリア(Hiレベル)し、保護スイッチ26の駆動信号ScをHiレベルとして(ステップST218)、交流直流変換装置100bの昇圧動作を開始し(ステップST219)、本フロー処理を終了する。
つぎに、実施の形態3における故障判定手段15d−1の故障判定結果に基づく動作について、図19を参照して説明する。図19は、実施の形態3にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の判定結果に基づく動作フローチャートである。なお、図15で説明した実施の形態2における故障判定手段15dの判定結果に基づく動作と同一または同等の処理には同一符号を付している。
図19に示すフロー処理は、交流直流変換装置100bが昇圧動作している間の所定周期毎(例えば50ms毎)に実施するものとする。
故障判定手段15dは、図18に示す故障判定結果を用いて、第1および第2のスイッチング素子5,6が故障しているか否かを判定する(ステップST101a)。
第1および第2のスイッチング素子5,6が故障している場合(ステップST101a;Yes)、制御部15−2は、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103a)。そして、故障報知手段21であるLEDを点滅させて(故障表示)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6が故障したことを報知する(ステップST104)。
続いて、故障判定手段15d−1は、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障判定を行った回数(以下、「故障判定回数」という)をカウントし(ステップST105)、当該故障判定回数が規定値Nx(例えば、Nx=3回)以上であるか否かを判定する(ステップST106)。故障判定回数がNx以上である場合には(ステップST106;Yes)、制御部15−2は、交流直流変換装置100bの昇圧動作開始を禁止する処理を行い(ステップST107a)、本フロー処理を終了する。一方、故障判定回数がNx未満である場合には(ステップST106;No)、制御部15−2は、予め規定した時間Tx(例えば、Tx=3分)後に交流直流変換装置100bの昇圧動作を開始させるための処理を行い(ステップST108a)、本フロー処理を終了する。
第1および第2のスイッチング素子5,6が故障していない場合(ステップST101a;No)、故障判定手段15d−1は、さらに直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)であるか否かを判定し(ステップST109)、直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*未満(Vdc<Vdc*)であれば(ステップST109;No)、本フロー処理を終了する。
直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)である場合(ステップST109;Yes)、故障判定手段15d−1は、圧縮機25の運転範囲制限を解除し(ステップST112)、故障判定回数をクリアする(ステップST110)と共に、故障報知手段21であるLEDを点灯させ(正常表示)、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が正常であることを報知し(ステップST111)、本フロー処理を終了する。
図19に示す例において、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103a)とは、例えば、交流直流変換装置100bが昇圧動作を行わない、つまり、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能な状態とすることを示している。ここで、例えば、第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともショート故障した場合には、実施の形態において説明した図3に示す電源短絡モードとなり、コンバータ電圧Vc=0となるが、第1および第2のスイッチング素子5,6が双方ともショート故障することは極めて稀であり、第1および第2のスイッチング素子5,6のうちの少なくとも一方が正常であるかオープン故障している状態であれば、全波整流モードでの電力供給が可能であるので、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能となるように、圧縮機25の運転範囲を制限することで、圧縮機25の継続運転が可能となる。
なお、直流電圧Vdcおよび第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2の変動が大きい場合には、これらVdcおよびVc2を故障判定手段15d−1における故障判定に支障のない程度にフィルタ処理(例えば、フィルタ時定数10ms)した安定した値を用いて故障判定を行ってもよいことは言うまでもない。また、上述した図19に示すフロー処理における故障判定回数のカウント(ステップST105)、故障判定回数の判定(ステップST106)、および昇圧動作開始処理(ステップST108a)は、故障判定手段15d−1における誤判定を想定したものであり、故障判定手段15d−1における誤判定を考慮する必要がない場合には省略可能である。つまり、交流直流変換装置100bの昇圧動作を停止して(ステップST102)、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103a)と共に、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障を報知した後(ステップST104)、交流直流変換装置100aの昇圧動作開始を禁止する処理を行う(ステップST107a)ようにすればよい。
図20は、実施の形態3にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の判定結果に基づく図19とは異なる動作フローチャートである。なお、図19で説明した故障判定手段15d−1の判定結果に基づく動作と同一または同等の処理には同一符号を付している。
上述した図19に示す例では、第1および第2のスイッチング素子5,6が故障している場合には、全波整流モードでの電力供給を行う例を示したが、図20に示す例では、第1および第2のスイッチング素子5,6の故障状態に応じて、全波整流モードと電源短絡モードとを併用して昇圧動作を行い、電力供給を行う例について説明する。
図20に示すフロー処理は、交流直流変換装置100bが昇圧動作している間の所定周期毎(例えば50ms毎)に実施するものとする。
故障判定手段15d−1は、図18に示す故障判定結果を用いて、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がオープン故障しているか否かを判定する(ステップST113)。
第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がオープン故障している場合(ステップST113;Yes)、制御部15−2は、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能となるように、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103b)。そして、故障報知手段21であるLEDを点滅させて(故障表示)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6が故障したことを報知する(ステップST104)。
続いて、故障判定手段15d−1は、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障判定を行った回数(以下、「故障判定回数」という)をカウントし(ステップST105)、当該故障判定回数が規定値Nx(例えば、Nx=3回)以上であるか否かを判定する(ステップST106)。故障判定回数がNx以上である場合には(ステップST106;Yes)、制御部15−2は、交流直流変換装置100aの昇圧動作開始を禁止する処理を行い(ステップST107a)、本フロー処理を終了する。一方、故障判定回数がNx未満である場合には(ステップST106;No)、制御部15−2は、予め規定した時間Tx(例えば、Tx=3分)後に交流直流変換装置100bの通常の昇圧動作を開始させるための処理を行い(ステップST108a)、本フロー処理を終了する。
第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がオープン故障していない場合(ステップST113;No)、故障判定手段15d−1は、図18に示す故障判定結果を用いて、第1のスイッチング素子5がショート故障しているか否かを判定する(ステップST114)。
第1のスイッチング素子5がショート故障している場合(ステップST114;Yes)、制御部15−2は、第2のスイッチング素子6の駆動信号SbをLo/Hi制御して、全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作を開始する(ステップST115)と共に、目標直流電圧値Vdc*を全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作で高調波規制値をクリアできる範囲の出力電圧範囲に制限し(ステップST116)、当該昇圧動作で得られる直流電圧Vdcで運転可能な状態となるように、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST117)。そして、故障報知手段21であるLEDを点滅させて(故障表示)、第1のスイッチング素子5がショート故障したことを報知する(ステップST118)。
第1のスイッチング素子5がショート故障していない場合(ステップST114;No)、故障判定手段15d−1は、図18に示す故障判定結果を用いて、第2のスイッチング素子6がショート故障しているか否かを判定する(ステップST119)。
第2のスイッチング素子6がショート故障している場合(ステップST119;Yes)、制御部15−2は、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをLo/Hi制御して、全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作を開始する(ステップST120)と共に、目標直流電圧値Vdc*を全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作で高調波規制値をクリアできる範囲の出力電圧範囲に制限し(ステップST116)、当該昇圧動作で得られる直流電圧Vdcで運転可能な状態となるように、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST117)。そして、故障報知手段21であるLEDを点滅させて(故障表示)、第1のスイッチング素子5がショート故障したことを報知する(ステップST118)。
第2のスイッチング素子6がショート故障していない場合(ステップST119;No)、故障判定手段15d−1は、さらに直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)であるか否かを判定し(ステップST109)、直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*未満(Vdc<Vdc*)であれば(ステップST109;No)、本フロー処理を終了する。
直流電圧Vdcが目標直流電圧Vdc*以上(Vdc≧Vdc*)である場合(ステップST109;Yes)、故障判定手段15d−1は、圧縮機25の運転範囲制限を解除し(ステップST112)、故障判定回数をクリアする(ステップST110)と共に、故障報知手段21であるLEDを点灯させ(正常表示)、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が正常であることを報知し(ステップST111)、本フロー処理を終了する。
なお、直流電圧Vdcおよび第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2の変動が大きい場合には、これらVdcおよびVc2を故障判定手段15d−1における故障判定に支障のない程度にフィルタ処理(例えば、フィルタ時定数10ms)した安定した値を用いて故障判定を行ってもよいことは言うまでもない。また、上述した図15に示すフロー処理における故障判定回数のカウント(ステップST105)、故障判定回数の判定(ステップST106)、および昇圧動作開始処理(ステップST108)は、故障判定手段15d−1における誤判定を想定したものであり、故障判定手段15d−1における誤判定を考慮する必要がない場合には省略可能である。つまり、交流直流変換装置100bの昇圧動作を停止して(ステップST102)、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能となるように、圧縮機25の運転範囲を制限する(ステップST103b)と共に、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6の故障を報知した後(ステップST104)、交流直流変換装置100bの昇圧動作開始を禁止する処理を行う(ステップST107a)ようにすればよい。
また、図20における全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作は、既知の技術を用いて実現することができる。この全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作手法により本発明が限定されるものではない。
以上説明したように、実施の形態3の交流直流変換装置によれば、第1および第2のコンデンサの接続点と第1および第2のスイッチング素子の接続点との間に保護スイッチを挿入し、第1もしくは第2のスイッチング素子が故障していると判定した場合には、第1および第2のスイッチング素子および保護スイッチをオフ制御した状態で全波整流モードで運転を継続可能であるので、第1および第2のコンデンサの二次破壊の発生を招くことなく、実施の形態2と同様に、圧縮機の運転範囲を通常時よりも制限、つまり、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能な状態に制限することで、圧縮機の継続運転が可能となる。したがって、圧縮機により冷媒が循環される空気調和機に適用した場合においては、故障修理が行なわれるまで空気調和機の運転が不可能となる状況を回避することができる。
また、第1もしくは第2のスイッチング素子がショート故障していると判定した場合には、保護スイッチをオフ制御した状態で、第1および第2のスイッチング素子の故障していない方を制御して、全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作を開始すると共に、目標直流電圧値Vdc*を電源短絡モードと全波整流モードとを併用した昇圧動作で高調波規制値をクリアできる範囲の出力電圧範囲に制限し、当該昇圧動作で得られる直流電圧Vdcで運転可能な状態となるように、圧縮機の運転範囲を制限することで、上述した全波整流モードで運転を継続する場合よりも圧縮機の運転範囲を拡大して動作させることが可能となる。
実施の形態4.
図21は、実施の形態4にかかる交流直流制御装置の一構成例を示す図である。なお、図16で説明した実施の形態3と同一または同等の構成部には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図21に示す例では、実施の形態3において説明した図16に対し、第1の電圧検出回路11−1を保護スイッチ26に対して交流電源1側に接続し、第1のコンデンサ7および第2のコンデンサ8のバランス抵抗として、実施の形態1において説明した第1の電圧検出回路11を構成する抵抗11a,11b,11cに代えて、同一の抵抗値を有するバランス抵抗28a,28bをそれぞれ第1のコンデンサ7および第2のコンデンサ8に並列に接続した構成とし、実施の形態3において説明した図16に示す構成と同様に、インバータ主回路23、三相の永久磁石電動機24、および圧縮機25を接続し、インバータ主回路23に直流電力を供給する構成とし、交流直流制御装置100cとインバータ主回路23とを含み圧縮機駆動装置200bが構成されている。なお、インバータ主回路23の構成は、実施の形態2と同様であるので、ここでは説明を省略する。
第1の電圧検出回路11−1は、整流器3の出力端子間に、高電位側から順に抵抗11a−1、抵抗11b−1、抵抗11c−1が直列接続され構成されている。抵抗11a−1と抵抗11b−1との接続点は、第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6と保護スイッチ26の一方端との接続点に接続されている。第1のコンデンサ7および第2のコンデンサ8のバランス抵抗としては、上述したようにバランス抵抗28a,28bを具備しているが、通常運転時においては、保護スイッチ26はオン制御されるため、第1のコンデンサ7の両端間電圧Vc1と第2のコンデンサ8の両端間電圧Vc2とが平衡状態を保てるように、抵抗11a−1の抵抗値と抵抗11b−1および抵抗11c−1の合成抵抗値とが略一致するように構成されている。抵抗11b−1と抵抗11c−1との接続点は、制御部15−3に具備したA/D変換器15aに接続され、制御部15−3は、この抵抗11b−1と抵抗11c−1との接続点の電圧値から第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6との接続点の電圧Vc2’を得る構成としている。なお、図21に示す例では、第1の電圧検出回路11を3つの抵抗11a−1,11b−1,11c−1で構成する例を示しているが、例えば、抵抗11b−1および抵抗11c−1と抵抗値が等しい2つの抵抗を直列接続して抵抗11a−1を構成していてもよいし、さらには、第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6との接続点の電圧Vc2’の検出が可能な既知の構成であればよく、この第1の電圧検出回路11−1の構成により本発明が限定されるものではない。
制御部15−3は、実施の形態3において説明した故障判定手段15d−1に代えて、故障判定手段15d−2を備えている。
実施の形態3における故障判定手段15d−1では、過電流保護回路20−1から出力される過電流検知信号OCを監視し、この過電流検知信号OCのLo/Hiレベルに応じて、第1および第2のスイッチング素子5,6のオープン故障およびショート故障を判定するものとしていたが、本実施の形態における故障判定手段15d−2では、交流直流変換装置100cの昇圧動作の停止中において、保護スイッチ26がオフ制御された状態で、第2の電圧検出回路12の出力値から得た直流電圧Vdcと、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得た第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6との接続点の電圧Vc2’との関係に基づいて、第1および第2のスイッチング素子5,6のオープン故障およびショート故障を判定するようにしている。
つぎに、実施の形態4における故障判定手段15d−2の故障判定処理について、図22および図23を参照して説明する。図22は、実施の形態4にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の動作フローチャートである。図23は、実施の形態4にかかる交流直流変換装置における故障判定手段の図22とは異なる動作フローチャートである。なお、図22に示す故障判定処理においては、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6のショート故障を判定し、図23に示す故障判定処理においては、第1のスイッチング素子5のショート故障と第2のスイッチング素子6のショート故障とを個別に判定する。
図22および図23に示すフロー処理は、交流直流変換装置100cの昇圧動作の停止中において、圧縮機25が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になったときに実施するものとする。なお、交流直流変換装置100cの昇圧動作の開始前は、制御部15−3は、各駆動信号Sa,Sb,Scを全てLoレベル出力し、交流直流変換装置100bが全波整流モードであるものとする。
ここで、図22および図23に示すフロー処理の初期状態、つまり、交流直流変換装置100cの昇圧動作の停止中において、第1のスイッチング素子5、第2のスイッチング素子6、および保護スイッチ26がオフ制御されている状態で、第1のスイッチング素子5がショート故障している場合には、図4(a),(b)において、第1のコンデンサ7に代えて抵抗11a−1が接続され、第2のコンデンサ8に代えて抵抗11b−1と抵抗11c−1とからなる直列回路が接続されている状態となる。そのため、電源電圧Vsがピーク付近のとき、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’は、電源電圧Vsの絶対値に近い値となり、第2の電圧検出回路12の出力値から得られる直流電圧Vdc以上の値となる。一方、第2のスイッチング素子6がショート故障している場合には、図5(a),(b)において、第1のコンデンサ7に代えて抵抗11a−1が接続され、第2のコンデンサ8に代えて抵抗11b−1と抵抗11c−1とからなる直列回路が接続されている状態となる。そのため、電源電圧Vsがピーク付近のとき、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’は、直流電圧Vdcから電源電圧Vsの絶対値を差し引いた値に近い値となり、0以下の値となる。
一方、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が何れも正常であるか、あるいは、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の一方あるいは両方がオープン故障している場合には、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’は、第2の電圧検出回路12の出力値から得られる直流電圧Vdcの半値と等しくなる。
つまり、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’が第2の電圧検出回路12の出力値から得られる直流電圧Vdcの半値に予め規定した電圧値Vy(例えば、Vy=50V)を加えた値以上であれば(Vc2’≧Vdc/2+Vy)、第1のスイッチング素子5がショート故障しているものと見做すことができ、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’が第2の電圧検出回路12の出力値から得られる直流電圧Vdcの半値から予め規定した電圧値Vy(例えば、Vy=50V)を差し引いた値以下であれば(Vc2’≦Vdc/2−Vy)、第2のスイッチング素子6がショート故障しているものと見做すことができる。
したがって、図22に示す例では、上記2つの条件式(Vc2’≧Vdc/2+Vy,Vc2’≦Vdc/2−Vy)を変形し、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たせば、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障しているものと見做せ、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たさない、つまり、|Vdc/2−Vc2’|<Vyを満たせば、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の何れもショート故障していないものと見做せることを利用している。
まず、故障判定手段15d−2は、圧縮機25が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になると、|Vdc/2−Vc2’|<Vyを満たすか否かを判定し(ステップST301)、|Vdc/2−Vc2’|<Vyを満たさない、つまり、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyである場合には(ステップST301;No)、第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6がショート故障しているものと判定し(ステップST302)、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100cは全波整流モードとなる。
一方、|Vdc/2−Vc2’|<Vyを満たす場合には(ステップST301;Yes)、故障判定手段15d−2は、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の何れもショート故障していないものと判定する(ステップST303)。そして、制御部15−3は、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをHiレベルとして(ステップST304)第1のスイッチング素子5をオン制御する。
ここで、第1のスイッチング素子5が正常である(オープン故障していない)場合には、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の何れもショート故障していないことから(ステップST303)、上述したように、電源電圧Vsがピーク付近のとき、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’は、電源電圧Vsの絶対値に近い値となり、第2の電圧検出回路12の出力値から得られる直流電圧Vdc以上の値となる。
つまり、Vc2’≧Vdc/2+Vy、また、これを変形した|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たせば、第1のスイッチング素子5が正常である(オープン故障していない)ものと見做せ、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たさない、つまり、|Vdc/2−Vc2’|<Vyを満たせば、第1のスイッチング素子5がオープン故障しているものと見做すことができる。
したがって、故障判定手段15d−2は、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たすか否かを判定し(ステップST305)、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たさない、つまり、|Vdc/2−Vc2’|<Vyである場合には(ステップST305;No)、第1のスイッチング素子5がオープン故障しているものと判定する(ステップST306)。そして、制御部15−3は、駆動信号Sa,SbをLoレベルとして(ステップST307)第1および第2のスイッチング素子5,6をオフ制御し、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100cは全波整流モードとなる。
一方、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たす場合には(ステップST305;Yes)、故障判定手段15d−2は、第1のスイッチング素子5が正常であるものと判定する(ステップST308)。そして、制御部15−3は、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをLoレベルとして(ステップST309)第1のスイッチング素子5をオフ制御し、第2のスイッチング素子6の駆動信号SbをHiレベルとして(ステップST310)第2のスイッチング素子6をオン制御する。
ここで、第2のスイッチング素子6正常である(オープン故障していない)場合には、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の何れもショート故障していないことから(ステップST303)、上述したように、電源電圧Vsがピーク付近のとき、第1の電圧検出回路11−1の出力値から得られる電圧Vc2’は、直流電圧Vdcから電源電圧Vsの絶対値を差し引いた値に近い値となり、0以下の値となる。
つまり、Vc2’≦Vdc/2−Vyまた、これを変形した|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たせば、第2のスイッチング素子6が正常である(オープン故障していない)ものと見做せ、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たさない、つまり、|Vdc/2−Vc2’|<Vyを満たせば、第2のスイッチング素子6がオープン故障しているものと見做すことができる。
したがって、故障判定手段15d−2は、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たすか否かを判定し(ステップST311)、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たさない、つまり、|Vdc/2−Vc2’|<Vyである場合には(ステップST311;No)、第2のスイッチング素子6がオープン故障しているものと判定する(ステップST312)。そして、制御部15−3は、駆動信号Sa,SbをLoレベルとして(ステップST307)第1および第2のスイッチング素子5,6をオフ制御し、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100cは全波整流モードとなる。
一方、|Vdc/2−Vc2’|≧Vyを満たす場合には(ステップST311;Yes)、故障判定手段15d−2は、第2のスイッチング素子6が正常であるものと判定する(ステップST313)。そして、制御部15−3は、駆動信号SbをLoレベルとして(ステップST314)第2のスイッチング素子6をオフ制御し、過電流保護回路20−1のラッチ回路20dにクリア信号CLRを出力して(ステップST315)ラッチ回路20dの出力のラッチ状態をクリア(Hiレベル)し、保護スイッチ26の駆動信号ScをHiレベルとして(ステップST316)、交流直流変換装置100cの昇圧動作を開始し(ステップST317)、本フロー処理を終了する。
つぎに、図23に示す故障判定処理について説明する。図22に示す例では、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6の何れがショート故障しているかは判別できないが、図23に示す例では、第1のスイッチング素子5がショート故障していると見做せる条件式(Vc2’≧Vdc/2+Vy)、および、第2のスイッチング素子6がショート故障していると見做せる条件式(Vc2’≦Vdc/2−Vy)から、第1のスイッチング素子5がショート故障していないと見做せる条件式(Vdc/2−Vc2’>−Vy)、および、第2のスイッチング素子6がショート故障していないと見做せる条件式(Vdc/2−Vc2’<Vy)を導出し、これらの条件式を用いて、第1のスイッチング素子5のショート故障、および、第2のスイッチング素子6のショート故障を判別する例を示している。
故障判定手段15d−2は、圧縮機25が予め規定した負荷(例えば500W)以上の状態になると、Vdc/2−Vc2’>−Vyを満たすか否かを判定し(ステップST301a)、Vdc/2−Vc2’>−Vyを満たさない、つまり、Vdc/2−Vc2’≦−Vyである場合には(ステップST301a;No)、第1のスイッチング素子5がショート故障しているものと判定し(ステップST302a)、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100cは全波整流モードとなる。
Vdc/2−Vc2’>−Vyを満たす場合には(ステップST301a;Yes)、第1のスイッチング素子5がショート故障していないものと判定する(ステップST303a)。
また、故障判定手段15d−2は、Vdc/2−Vc2’<Vyを満たすか否かを判定し(ステップST301b)、Vdc/2−Vc2’<Vyを満たさない、つまり、Vdc/2−Vc2’≧Vyである場合には(ステップST301b;No)、第2のスイッチング素子6がショート故障しているものと判定し(ステップST302b)、本フロー処理を終了する。なお、このとき、交流直流変換装置100cは全波整流モードとなる。
Vdc/2−Vc2’<Vyを満たす場合には(ステップST301b;Yes)、第2のスイッチング素子6がショート故障していないものと判定する(ステップST303b)。
以下の処理については、図22に示す故障判定処理と同様であるので省略する。
なお、上述した図22および図23に示す故障判定処理は、交流直流変換装置100cの昇圧動作の停止中において実施するものであるので、第2の電圧検出回路12の出力値から得られる直流電圧Vdcは、電源電圧Vsが一定である条件下では一定と見做すことができる。したがって、Vdc/2−Vyを第1の閾値、Vdc/2+Vyを第2の閾値として規定すれば、第1のスイッチング素子5、第2のスイッチング素子6が共にオフ制御されている場合には、Vc2’が第1の閾値以下(Vc2’≦Vdc/2−Vy)であれば、第2のスイッチング素子6がショート故障しているものと判定することができ、Vc2’が第2の閾値以上であれば(Vc2’≧Vdc/2+Vy)、第1のスイッチング素子5がショート故障しているものと判定することができる。
また、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が何れもショート故障していない条件下において(ステップST303,ステップST303a,ステップST303b)、第1のスイッチング素子5の駆動信号SaをHiレベルとして(ステップST304)第1のスイッチング素子5をオン制御している場合には、Vc2’が第2の閾値以上(Vc2’≧Vdc/2+Vy)であれば、第1のスイッチング素子5が正常に動作しオープン故障していないものと判定することができる。さらに、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が何れもショート故障していない条件下において(ステップST303,ステップST303a,ステップST303b)、第2のスイッチング素子6の駆動信号SbをHiレベルとして(ステップST310)第2のスイッチング素子6をオン制御している場合には、Vc2’が第1の閾値以下(Vc2’≦Vdc/2−Vy)であれば、第2のスイッチング素子6が正常に動作しオープン故障していないものと判定することができる。つまり、Vc2’が第1の閾値よりも大きく、且つ、第2の閾値よりも小さい場合には(Vdc/2−Vy<Vc2’<Vdc/2+Vy)、第1のスイッチング素子5および第2のスイッチング素子6が何れもオープン故障しているものと判定することができる。
つぎに、実施の形態4における故障判定手段15d−2の故障判定結果に基づく動作について説明する。
図22に示す故障判定動作により第1のスイッチング素子5もしくは第2のスイッチング素子6のショート故障を判定した場合には、実施の形態3において説明した図19のフロー処理と同一の処理を行えばよい。また、図23に示す故障判定動作により第1のスイッチング素子5のショート故障と第2のスイッチング素子6のショート故障とを個別に判定した場合には、同様に図19のフロー処理と同一の処理を行うことも可能であるし、実施の形態3において説明した図20のフロー処理と同一の処理を行うことも可能である。
なお、直流電圧Vdcおよび第1のスイッチング素子5と第2のスイッチング素子6との接続点の電圧Vc2’の変動が大きい場合には、これらVdcおよびVc2’を故障判定手段15d−2における故障判定に支障のない程度にフィルタ処理(例えば、フィルタ時定数10ms)した安定した値を用いて故障判定を行ってもよいことは言うまでもない。
以上説明したように、実施の形態4の交流直流変換装置によれば、実施の形態3と同様に、第1および第2のコンデンサの接続点と第1および第2のスイッチング素子の接続点との間に保護スイッチを挿入し、第1もしくは第2のスイッチング素子が故障していると判定した場合には、第1および第2のスイッチング素子および保護スイッチを開制御した状態で全波整流モードで運転を継続可能であるので、第1および第2のコンデンサの二次破壊の発生を招くことなく、実施の形態2と同様に、圧縮機の運転範囲を通常時よりも制限、つまり、全波整流モードで出力される直流電圧Vdcで運転可能な状態に制限することで、圧縮機の継続運転が可能となる。したがって、圧縮機により冷媒が循環される空気調和機に適用した場合においては、故障修理が行なわれるまで空気調和機の運転が不可能となる状況を回避することができる。
また、第1もしくは第2のスイッチング素子がショート故障していると判定した場合には、保護スイッチをオフ制御した状態で、第1および第2のスイッチング素子の故障していない方を制御して、全波整流モードと電源短絡モードとを併用した昇圧動作を開始すると共に、目標直流電圧値Vdc*を電源短絡モードと全波整流モードとを併用した昇圧動作で高調波規制値をクリアできる範囲の出力電圧範囲に制限し、当該昇圧動作で得られる直流電圧Vdcで運転可能な状態となるように、圧縮機の運転範囲を制限することで、上述した全波整流モードで運転を継続する場合よりも圧縮機の運転範囲を拡大して動作させることが可能となる。
また、実施の形態3のように第1および第2のスイッチング素子のショート故障およびオープン故障を判定する際に第1および第2のスイッチング素子に過電流を流す必要がないため、第1および第2のスイッチングへの負担を軽減できるという効果もある。
なお、上述した実施の形態においては、交流電源の実効電圧は200Vであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、交流電源の実効電圧が100Vの場合でも適用可能であることは言うまでもない。
また、上述した実施の形態の交流直流変換装置、および、交流直流変換装置から供給される直流電力を交流電力に変換して圧縮機の永久磁石電動機を駆動するインバータ主回路を直流負荷として具備した圧縮機駆動装置は、圧縮機により冷媒が循環する構成の空気調和機に適用して好適であり、上述した実施の形態において説明した各効果を得ることができる。
また、以上の実施の形態に示した構成は、本発明の構成の一例であり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、一部を省略する等、変更して構成することも可能であることは言うまでもない。