JP6116607B2 - ワンウェイクラッチ - Google Patents
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Description
上記したアイドルストップシステムでは、アイドルストップしてからエンジンが再始動するまでの間、ACGスタータを例えば圧縮行程終了後の位置まで逆回転させる所謂スイングバック制御を行うことで、エンジン再始動時にクランクシャフトが次の圧縮上死点にいたるまでにクランクシャフトを十分加速させ、再始動時に圧縮上死点を乗り越え易くしている。
ところで、特許文献2のようなパワーユニットを備えた鞍乗り型車両にも、特許文献1のようなACGスタータを用いたアイドルストップ制御を実施したい要望がある。しかしながら、クランクシャフトとプライマリドライブギヤとの間にエンジンブレーキ用のワンウェイクラッチを設けたパワーユニットの場合、クランクシャフト上にACGスタータを設けてスイングバックをすると、このスイングバックによってクランクシャフトが逆回転する際、プライマリドライブギヤがクランクシャフトに先んじて回転しようとする状況となる。このため、ワンウェイクラッチが係合し、プライマリドライブギヤにトルクが伝達されて車両が僅かに後退してしまう。
第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j,52d)が形成される内輪(52,52’,52”)と、
第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52,52’,52”)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
前記内輪(52,52’,52”)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52,52’,52”)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(54,81)と、
前記内輪(52,52’,52”)の前記カム面(52j,52d)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55,71)と、を備え、
前記第二移動体(55,71)は、前記カム面(52j,52d)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j,52d)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間で動力伝達を可能とするワンウェイクラッチ(50,70,80)において、
前記第一移動体(54,81)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(53,82)で構成され、
前記複数の分割体(53,82)の各々には、前記第二移動体(55,71)に当接する第一当接面(53a)と、前記外輪(51)の内周面(51a)に当接する第二当接面(53k,82c)と、が形成され、
前記第一移動体(54,81)は、付勢部材(57)により内輪(52,52’,52”)側に付勢され、
前記第一移動体(54,81)が規定回転数未満の場合には、前記第二移動体(55,71)と前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)の少なくとも一方との間に隙間(S)が形成され、
前記第一移動体(54,81)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(53,82)の前記第二当接面(53k,82c)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(54,81)を前記内輪(52,52’,52”)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(53,82)の前記第一当接面(53a)が前記第二移動体(55,71)に当接し、前記第二移動体(55,71)を前記係合位置(A2)に移動させ、該第二移動体(55,71)を前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)に係合させることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)をクラッチ周方向で付勢して前記第二移動体(55,71)を前記収容位置(A1)に戻すリターンスプリング(56)を備え、
前記リターンスプリング(56)は、前記内輪(52,52’,52”)と前記第一移動体(54,81)との間に形成されるスプリングポケット(58)に収容されることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、
前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)には係合凹部(52g)が設けられ、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)には前記係合凹部(52g)に入り込む係合凸部(53f)が設けられ、
前記係合凹部(52g)の内側面(52h)に前記係合凸部(53f)が当接することで、前記第一移動体(54,81)による前記第二移動体(55,71)の移動量が規定されることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52)と対向する面(53d,82a)には、前記係合凸部(53f)に隣接してクラッチ径方向外側に凹む逃げ部(53j)が形成され、
前記逃げ部(53j)の内側には、前記係合凸部(53f)を基端側ほど漸次末広がりとする逃げ曲面(53i)が形成されることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とを前記内輪(52,52’,52”)の外周面(52d)上に配置した状態で、前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とがクラッチ周方向で連続するように配置されることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記内輪(52,52’,52”)に対する滑動面とされ、
前記第一移動体(54,81)には、前記外輪(51)の前記内周面(51a)と対向する前記第二当接面(53k,82c)が前記滑動面とは別に形成され、
前記第二当接面(53k,82c)は、前記各分割体(53,82)のクラッチ径方向の幅よりもクラッチ周方向に長く形成されることを特徴とする。
請求項7に記載した発明は、
前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う円周面で構成され、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記円周面に整合する曲面で構成されることを特徴とする。
請求項8に記載した発明は、
前記内輪(52”)の前記第一移動体(81)と対向する面(52d)には、クラッチ周方向に対して傾斜するくさび面(52k)が形成され、
前記くさび面(52k)は、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させる方向へ前記第一移動体(81)が前記内輪(52”)に対して相対回動したときのみに、前記第一移動体(81)を外周側に移動させて前記外輪(51)と係合させるように傾斜することを特徴する。
請求項9に記載した発明は、
前記内輪(52’)の前記第一移動体(54)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う前記カム面としての外周面(52d)とされ、
前記第二移動体(71)は、前記収容位置(A1)から前記係合位置(A2)に移動する際の姿勢変化により、前記係合位置(A2)で前記外輪(51)の内周面(51a)と前記内輪(52’)の外周面(52d)とに係合することを特徴とする。
請求項10に記載した発明は、
第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j)が形成される内輪(52)と、
第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
前記内輪(52)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(61)と、
前記内輪(52)の前記カム面(52j)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55)と、を備え、
前記第二移動体(55)は、前記カム面(52j)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間で動力伝達を可能とし、
前記カム面(52j)は、前記内輪(52)が前記第二移動体(55)に対してクラッチ周方向の一方向に相対回動したときのみに、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させるように傾斜するワンウェイクラッチ(60)において、
前記第一移動体(61)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(62)で構成され、
前記複数の分割体(62)の各々には、前記第二移動体(55)に当接する当接面(53a)と、前記第二移動体(55)とクラッチ径方向で重複する重複部(63)と、が設けられ、
前記重複部(63)の外周面は外周係合面(62c)とされ、前記重複部(63)の内周面は内周係合面(62e)とされ、
前記第一移動体(61)は、付勢部材(57)により前記内輪(52)側に付勢され、
前記第一移動体(61)が規定回転数未満の場合には、前記各分割体(62)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に隙間(S)が形成され、
前記第一移動体(61)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(62)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(61)を前記内輪(52)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(62)の前記当接面(53a)が前記第二移動体(55)に当接し、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させ、
前記係合位置(A2)に移動した前記第二移動体(55)が、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記内周係合面(62e)に係合するとともに、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)を前記外輪(51)の内周面(51a)に係合させることを特徴とする。
請求項2に記載した発明によれば、リターンスプリングを設けることで、内輪側から駆動力がかけられて第一移動体に対して内輪が回動する際の作動トルクを設定することができる。また、ワンウェイ作動後に内輪と第一移動体とを初期位置に戻ることができる。
請求項3に記載した発明によれば、カム面を第二移動体が移動する際に、規定量以上にカム面を移動してしまうことがある。この場合、クラッチ径方向外側へ第二移動体が規定量以上突出し、外輪の内周面と強固に係合することがある。このような係合をした場合、速やかな駆動力の切断を行い難くなる。しかし、係合凸部及び係合凹部の係合により第二移動体の規定量以上の移動を規制できるため、第二移動体の強固な係合を回避することができる。また、内輪から突出する凸の構造を設ける場合と比べて、第一移動体から突出する凸の構造を設けることで、第一移動体の重量を重くすることができ、遠心力の力をより大きくすることができる。
請求項4に記載した発明によれば、係合凸部の基端側の逃げ部を末広がりに構成することで、係合凸部の直近まで内輪の外周面との当接面(滑動面)を形成することができるとともに、係合凸部の基端での応力集中を避けることができる。
請求項5に記載した発明によれば、第一移動体と第二移動体とをクラッチ周方向で連続するように配置することで、複数の第一移動体の一つがクラッチ周方向に移動した際に、隣接する第二移動体と当接し移動させ、さらに、第二移動体は隣接する第一移動体もしくは第二移動体と当接し移動させることができる。これにより連続的に第一、第二移動体を移動させ、速やかにすべての第二移動体を係合可能状態にすることができる。
請求項6に記載した発明によれば、第一移動体をクラッチ径方向に長く構成することで、より多くの力を外輪の外周から受けて作動させることができる。また、第一移動体を大きく構成することが容易になり、より遠心力を大きくして速やかに第一移動体を作動させることができる。
請求項7に記載した発明によれば、内輪及び第一移動体の対向面を互いに整合する円周面で構成することで、引っかかりなくスムーズに第一移動体を移動させることができる。
請求項8に記載した発明によれば、第一移動体が遠心力により外輪の内周面に当接して内輪と相対回転した際に、第一移動体はくさび面上をその傾斜に沿って移動し、より外周側へ移動する。このため、第一移動体はさらに外輪の内周面に強く当接し、外輪の内周面と略一体に回動する。このため、外輪の回動と第一移動体との位相差を少なくし、第二移動体をすばやく係合状態へ移行させることができる。
請求項9に記載した発明によれば、内外輪間のカム部材の移動によりトルク伝達の可否を切り替えるため、内外輪にカム面を形成する等の必要がなくなり、工数削減を図ることができる。
請求項10に記載した発明によれば、請求項1同様、遠心力を第一移動体で受けることにより、速やかにトルク伝達状態へ移行することができる。さらに、第一移動体に重複部を設けることで、第一移動体の重量を増やすことができ、より遠心力を大きくすることができる。また、第二移動体と外輪の内周面を第一移動体の重複部を介して係合させることで、第一移動体の重複部に形状を変える等して係合部の面積を増大させ、内外輪の係合タイミング及び係合力等を容易に設定、変更することができる。
図1に示す自動二輪車(小型車両)101において、その車体フレーム102は複数種の鋼材を溶接等により一体に結合してなる。車体フレーム102は、前輪懸架系を操向可能に支持するヘッドパイプ103から下後方へ単一のメインチューブ108を延ばし、ヘッドパイプ103と乗員着座用のシート109との間を低部として跨り易さを向上させた所謂バックボーン型とされる。メインチューブ108の後端部の下方にはピボットブラケット110が延び、ピボットブラケット110には後輪懸架系のスイングアーム112の前端部が上下揺動可能に支持される。メインチューブ108の後端部の上後方にはシートフレーム113が延び、シートフレーム113上にシート109が配置されると共に、シートフレーム113とスイングアーム112との間には後輪懸架系のリアクッション114が配置される。図中符号104は前輪、符号105はフロントフォーク、符号106はステアリングステム、符号107は操向ハンドル、符号111は後輪をそれぞれ示す。
図2を併せて参照し、エンジン1は、クランクシャフト9の回転中心軸線(クランク軸線)C1を左右方向に沿わせた空冷単気筒エンジンであり、クランクケース2の前端部から前方に向けてシリンダ3を略水平に(詳細にはやや前上がりに)突出させる。
クランクシャフト9は、クランクピン9aを支持する左右クランクウェブ9bと、左右クランクウェブ9bから左右外側に突出する左右ジャーナル部9cと、左右ジャーナル部9cからさらに左右外側に延びる左右延長軸(第二の軸部材)9dと、を有する。
図中符号15はシリンダ3の左側部内に設けられるカムチェーン室、符号17はシリンダヘッド3bに取り付けられる点火プラグ、符号18はシリンダヘッド3bの上側(吸気側)に接続されるスロットルボディ、符号19はシリンダヘッド3bの下側(排気側)に接続される排気管をそれぞれ示す。
遠心クラッチ21は、右方に開放する有底円筒状をなしてクランクシャフト9の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター21aと、クラッチアウター21aの内周側でクランクシャフト9の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー21bと、クラッチアウター21aの内周側でクラッチインナー21bに拡開作動可能に支持される複数の遠心ウェイト21cと、を有する。図中符号26はクラッチインナー21bの右側に形成される遠心分離式のオイルフィルタを示す。
遠心ウェイト21cは、クランクシャフト9の回転数(回転速度)の上昇に伴い拡開作動し、所定回転数以上でクラッチアウター21aの内周面に摩擦係合して、遠心クラッチ21を動力伝達可能な接続状態とする。
多板クラッチ22は変速用クラッチであり、右方に開放する有底円筒状をなしてメインシャフト5の右端部に相対回転可能に支持されるクラッチアウター22aと、クラッチアウター22aの内周側に配置されてメインシャフト5の右端部に一体回転可能に支持されるクラッチインナー22bと、クラッチアウター22a及びクラッチインナー22b間で軸方向に積層される複数のクラッチ板22cと、を有する。クラッチアウター22aの底壁左側には、プライマリドリブンギヤ20bが一体回転可能に支持される。
ACGスタータ27は、三相交流式の発電電動機であり、エンジン1を始動するスタータモーターとして機能すると共に、エンジン1の運転に伴い発電する交流発電機としても機能する。ACGスタータ27の作動は、図3に示すECU(Electronic Control Unit)200により制御される。
ステージ判定部204は、ローター角度センサー28の出力信号に基づいて、クランクシャフト9の一回転をステージ#0〜#35の36ステージに分割し、ローター角度センサー28が点火パルサーとして発生するパルス信号の検知タイミングを基準ステージ(ステージ#0)として現在のステージを判定する。
ステージ通過時間検知部205は、ステージ判定部204が新たなステージを判定してから次のステージを判定するまでの時間に基づいて、当該ステージの通過時間Δtnを検知する。
デューティー比設定部207は、ステージ判定部204による判定結果に基づいて、モータードライブ回路201の各パワーFETに供給するゲート電圧のデューティー比を動的に制御する。
なお、図中符号はシフトスピンドルの右側部に固定されて不図示のシフトドラムを連係させるマスターアーム、符号はシフトスピンドルの右端部に固定されて多板クラッチ22を連係させるクラッチアームをそれぞれ示す。
図4、図5を参照し、ワンウェイクラッチ50は、クランクシャフト9と同軸の円環状のもので、クラッチアウター21aの内周側カラー部21dに一体回転可能に外嵌する内輪52と、クラッチインナー21bの外周側カラー部21eに一体に設けられる外輪51と、内外輪52,51間に配置される複数(3つ)の分割体53を有する第一移動体54と、内外輪52,51間のトルク伝達要素であり分割体53の数と同数の第二移動体55と、分割体53の数と同数のリターンスプリング56と、リング状の付勢部材57と、を有する。
以下、ワンウェイクラッチ50の軸方向をクラッチ軸方向、径方向をクラッチ径方向、周方向をクラッチ周方向という。図中矢印Fはクランクシャフト9の正転方向、矢印Rはクランクシャフト9の逆転方向をそれぞれ示す。
分割体53の内周面(円周面)53dは、外輪51の内周面(円周面)51aに対向、整合する。分割体53の内周面53dは、外輪51の内周面51aに係合可能な係合面とされる。分割体53の外周面53kは、分割体53の径方向の幅よりもクラッチ周方向に長く構成される。分割体53の外周面53kのクラッチ軸方向の中央部には、クラッチ周方向に沿って延びる溝部53nが形成される。溝部53nは、複数の分割体53に跨って円環形状に連続し、この溝部53nに付勢部材57が嵌め込まれる。
具体的に、第二移動体55が係合位置A2にあるとき、内輪52が第二移動体55に対して一方向(正転方向)に回動すると、第二移動体55が外輪51の内周面51aと内輪52のカム面52jとの間に噛み込まれ、内輪52の一方向(正転方向)の回動の駆動力が外輪51に伝達可能となる。
内輪52の軸方向一側面には、クランクシャフト9の第一油路9eと連通する油溝52kがクラッチ径方向に沿うように形成される。油溝52kは、例えばカム面52jの数と同数設けられ、各カム面52とクラッチ周方向の位置をラップさせる。各油溝52kには、クランクシャフト9内の第一油路9から第二及び第三油路9f,9gを介して導かれたエンジンオイルをカム面52j周辺に供給可能とする。
まず、第一移動体54が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体54の分割体53が遠心力でクラッチ径方向外側に移動し、分割体53の外周面53kが外輪51の内周面51aに当接する。このとき、分割体53と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により分割体53が加減速し、内輪52と分割体53との間に相対回転が生じる。
このように設定することにより、遠心式の発進クラッチを有する小型車両用の内燃機関に、キックスタータ16を装備するために、伝動軸上にワンウェイクラッチ50を設けたものであっても、始動電動機兼用の発電機装置を装着し、高効率のスイングバック制御を行うことができる。
一方、本実施形態のワンウェイクラッチ50では、キックの踏み込みの勢いを利用してワンウェイ作動状態となるので、キックスタータの回転想定域の内、速度V1より低い回転速度域(破線で示す領域)からキック駆動が有効になり、クランキングのキックストロークが確保される。
次に、図9〜図11を参照して、本発明の第二実施形態におけるワンウェイクラッチについて説明する。なお、第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略する。
まず、第一移動体61が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体61の分割体62が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体62の外周面62bが外輪51の内周面51aに当接するが、このとき、分割体62と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により内輪52と分割体62との間に相対回転を生じさせる。すると、分割体62の第一当接面53aが第二移動体55に当接し、第二移動体55を係合位置A2へ移動させる。すると、第二移動体55が重複部63の内周係合面62eに当接して重複部63を外周側に押し上げ、重複部63の外周係合面62cを外輪51の内周面51aに当接させる。これにより、分割体62に対する内輪52の正転時、又は内輪52に対する分割体62の逆転時において、内外輪52,51間で第二移動体55及び重複部63を介して駆動力が伝達可能なワンウェイ作動状態となる。
また、ワンウェイクラッチ60の回転数が所定値未満である初期入力時でも、第一移動体61に対して内輪52が先んじて回動することで、速やかにワンウェイ作動状態とすることができる。
また、第二移動体55と外輪51の内周面51aとを第一移動体61の重複部63を介して係合させることで、第一移動体61の重複部63の形状を変える等して内外輪52,51の係合タイミング及び係合力等を容易に設定、変更することができる。
次に、図12及び図13を参照して、本発明の第三実施形態におけるワンウェイクラッチ70について説明する。なお、第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略する。
スプラグ71は、前記傾斜を大きくした傾斜姿勢(図12参照)で収容位置A1にあり、前記傾斜を小さくした起立姿勢(図13参照)に変化しつつ係合位置A2に移動する。
スプラグ71は、前記起立姿勢にあるときには、外輪51の内周面51a及び内輪52’の外周面52dに当接し、内外輪52’,51の間でトルク伝達を可能にする。
まず、第一移動体54が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体54の分割体53が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体53の外周面53kが外輪51の内周面51aに当接するが、このとき、分割体53と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により内輪52’と分割体53との間に相対回転を生じさせる。すると、分割体53の第一当接面53aがスプラグ71に当接し、収容位置A1で傾斜姿勢にあるスプラグ71を起立姿勢に変化させつつ係合位置A2に移動させる。これにより、分割体53に対する内輪52’の正転時、又は内輪52’に対する分割体53の逆転時において、内外輪52’,51間でスプラグ71を介して駆動力が伝達可能なワンウェイ作動状態となる。
また、ワンウェイクラッチ60の回転数が所定値未満である初期入力時でも、第一移動体61に対して内輪52’が先んじて回動することで、速やかにワンウェイ作動状態とすることができる。
また、ワンウェイクラッチ70によれば、内外輪52’,51間のトルク伝達要素にスプラグ71を用いることで、内輪52’に前記凹部52e及びカム面52jを形成する必要がなくなるために、大幅な工数削減を図ることができる。
次に、図14〜図16を参照して、本発明の第四実施形態におけるワンウェイクラッチ80について説明する。なお、第一実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略する。
換言すれば、くさび面52k及び分割側くさび面82bは、第二移動体55を係合位置A2に移動させる方向へ内輪52”が第一移動体81に対して正転(第一移動体81が内輪52”に対して逆転)したときのみに、分割体82を外周側に移動させ、分割体82の外周面82cと外輪51の内周面51aとを係合状態とするように傾斜する。
まず、第一移動体81が所定値以上の速度で回転する状態になると、クラッチ周方向で分割された第一移動体81の分割体82が遠心力でクラッチ径方向外側に移動する。これにより、分割体82の外周面82cが外輪51の内周面51aに当接するが、このとき、分割体82と外輪51との間に回転速度差があると、摩擦により内輪52”と分割体82との間に相対回転を生じさせる。このとき、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接によっても、分割体82が外周側に移動する。
このとき、くさび面52k及び分割側くさび面82bの摺接によって、分割体82が外周側へ移動して外輪51に係合することで、分割体82も内外輪52”,51間のトルク伝達要素となり、クラッチ容量が高められる。
また、ワンウェイクラッチ80の回転数が所定値未満である初期入力時でも、第一移動体81に対して内輪52”が先んじて回動することで、速やかにワンウェイ作動状態とすることができる。
そして、上記各実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
21f 伝動筒(第一の軸部材)
50,60,70,80 ワンウェイクラッチ
51 外輪
51a 内周面
52,52’,52” 内輪
52d 外周面(カム面)、第一移動体と対向する面、円周面
52g 係合凹部
52j カム面
52k くさび面
53,62,82 分割体
53a 第一当接面、当接面
53d,82a 内輪と対向する面、外周面、曲面
53f 係合凸部
53h 内側面
53i 逃げ曲面
53j 逃げ部
53k,82c 第二当接面
54,61,81 第一移動体
55 第二移動体
56 リターンスプリング
57 付勢部材
58 スプリングポケット
62c 外周係合面
62e 内周係合面
63 重複部
71 スプラグ(第二移動体)
A1 収容位置
A2 係合位置
S 隙間
Claims (10)
- 第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j,52d)が形成される内輪(52,52’,52”)と、
第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52,52’,52”)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
前記内輪(52,52’,52”)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52,52’,52”)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(54,81)と、
前記内輪(52,52’,52”)の前記カム面(52j,52d)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55,71)と、を備え、
前記第二移動体(55,71)は、前記カム面(52j,52d)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j,52d)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52,52’,52”)との間で動力伝達を可能とするワンウェイクラッチ(50,70,80)において、
前記第一移動体(54,81)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(53,82)で構成され、
前記複数の分割体(53,82)の各々には、前記第二移動体(55,71)に当接する第一当接面(53a)と、前記外輪(51)の内周面(51a)に当接する第二当接面(53k,82c)と、が形成され、
前記第一移動体(54,81)は、付勢部材(57)により内輪(52,52’,52”)側に付勢され、
前記第一移動体(54,81)が規定回転数未満の場合には、前記第二移動体(55,71)と前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)の少なくとも一方との間に隙間(S)が形成され、
前記第一移動体(54,81)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(53,82)の前記第二当接面(53k,82c)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(54,81)を前記内輪(52,52’,52”)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(53,82)の前記第一当接面(53a)が前記第二移動体(55,71)に当接し、前記第二移動体(55,71)を前記係合位置(A2)に移動させ、該第二移動体(55,71)を前記外輪(51)及び前記内輪(52,52’,52”)に係合させることを特徴とするワンウェイクラッチ。 - 前記第一移動体(54,81)をクラッチ周方向で付勢して前記第二移動体(55,71)を前記収容位置(A1)に戻すリターンスプリング(56)を備え、
前記リターンスプリング(56)は、前記内輪(52,52’,52”)と前記第一移動体(54,81)との間に形成されるスプリングポケット(58)に収容されることを特徴とする請求項1に記載のワンウェイクラッチ。 - 前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)には係合凹部(52g)が設けられ、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)には前記係合凹部(52g)に入り込む係合凸部(53f)が設けられ、
前記係合凹部(52g)の内側面(52h)に前記係合凸部(53f)が当接することで、前記第一移動体(54,81)による前記第二移動体(55,71)の移動量が規定されることを特徴とする請求項1又は2に記載のワンウェイクラッチ。 - 前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52)と対向する面(53d,82a)には、前記係合凸部(53f)に隣接してクラッチ径方向外側に凹む逃げ部(53j)が形成され、
前記逃げ部(53j)の内側には、前記係合凸部(53f)を基端側ほど漸次末広がりとする逃げ曲面(53i)が形成されることを特徴とする請求項3に記載のワンウェイクラッチ。 - 前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とを前記内輪(52,52’,52”)の外周面(52d)上に配置した状態で、前記第一移動体(54,81)と前記第二移動体(55,71)とがクラッチ周方向で連続するように配置されることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。
- 前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記内輪(52,52’,52”)に対する滑動面とされ、
前記第一移動体(54,81)には、前記外輪(51)の前記内周面(51a)と対向する前記第二当接面(53k,82c)が前記滑動面とは別に形成され、
前記第二当接面(53k,82c)は、前記各分割体(53,82)のクラッチ径方向の幅よりもクラッチ周方向に長く形成されることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。 - 前記内輪(52,52’,52”)の前記第一移動体(54,81)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う円周面で構成され、
前記第一移動体(54,81)の前記内輪(52,52’,52”)と対向する面(53d,82a)は、前記円周面に整合する曲面で構成されることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。 - 前記内輪(52”)の前記第一移動体(81)と対向する面(52d)には、クラッチ周方向に対して傾斜するくさび面(52k)が形成され、
前記くさび面(52k)は、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させる方向へ前記第一移動体(81)が前記内輪(52”)に対して相対回動したときのみに、前記第一移動体(81)を外周側に移動させて前記外輪(51)と係合させるように傾斜することを特徴する請求項1から6の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。 - 前記内輪(52’)の前記第一移動体(54)と対向する面(52d)は、クラッチ周方向に沿う前記カム面としての外周面(52d)とされ、
前記第二移動体(71)は、前記収容位置(A1)から前記係合位置(A2)に移動する際の姿勢変化により、前記係合位置(A2)で前記外輪(51)の内周面(51a)と前記内輪(52’)の外周面(52d)とに係合することを特徴とする請求項1から7の何れか一項に記載のワンウェイクラッチ。 - 第一の軸部材(21f)に接続されるとともに外周にカム面(52j)が形成される内輪(52)と、
第二の軸部材(9d)に接続されるとともに前記内輪(52)の径方向外側に配置される外輪(51)と、
前記内輪(52)と前記外輪(51)との間で前記内輪(52)及び前記外輪(51)に対して前記内輪(52,52’,52”)および外輪(51)の軸中心で相対回動可能に配置される第一移動体(61)と、
前記内輪(52)の前記カム面(52j)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に配置される第二移動体(55)と、を備え、
前記第二移動体(55)は、前記カム面(52j)上で収容位置(A1)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間の動力伝達を不能とし、前記カム面(52j)上で係合位置(A2)にあるとき、前記外輪(51)と前記内輪(52)との間で動力伝達を可能とし、
前記カム面(52j)は、前記内輪(52)が前記第二移動体(55)に対してクラッチ周方向の一方向に相対回動したときのみに、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させるように傾斜するワンウェイクラッチ(60)において、
前記第一移動体(61)は、クラッチ周方向に並ぶ複数の分割体(62)で構成され、
前記複数の分割体(62)の各々には、前記第二移動体(55)に当接する当接面(53a)と、前記第二移動体(55)とクラッチ径方向で重複する重複部(63)と、が設けられ、
前記重複部(63)の外周面は外周係合面(62c)とされ、前記重複部(63)の内周面は内周係合面(62e)とされ、
前記第一移動体(61)は、付勢部材(57)により前記内輪(52)側に付勢され、
前記第一移動体(61)が規定回転数未満の場合には、前記各分割体(62)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)と前記外輪(51)の内周面(51a)との間に隙間(S)が形成され、
前記第一移動体(61)が規定回転数以上の場合には、前記各分割体(62)が前記外輪(51)の内周面(51a)に前記付勢部材(57)の付勢力に抗して当接し、前記第一移動体(61)を前記内輪(52)に対して前記軸中心で相対回動させるとともに、前記各分割体(62)の前記当接面(53a)が前記第二移動体(55)に当接し、前記第二移動体(55)を前記係合位置(A2)に移動させ、
前記係合位置(A2)に移動した前記第二移動体(55)が、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記内周係合面(62e)に係合するとともに、前記第一移動体(61)の前記重複部(63)の前記外周係合面(62c)を前記外輪(51)の内周面(51a)に係合させることを特徴とするワンウェイクラッチ。
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