以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の充放電試験システムの構成を示す図である。
図1に示すように、この第1実施形態の充放電試験システムは、試験対象のシステムである被試験システムBと試験システムAとを電力線PLを介して接続して構成される。
すなわちこの充放電試験システムは、被試験システムBと、この被試験システムBと対向(対抗)して接続した試験システムAとを備える。ここで、対向(対抗)とは双方のシステム間で充放電機能が等価なことをいう。
各蓄電池システム10〜10nは、蓄電池1a〜1nと、電力変換部としての双方向電力変換装置2b(以下「パワーコンディショニングサブシステム:PCS2b」と称す)とを少なくとも有している。これら蓄電池1a〜1nとPCS2bが主な試験対象となる。蓄電池1a〜1nは、電力系統の電力貯蔵または電力系統の安定化に使用されるものである。
各蓄電池システム10a〜10nは、例えば、PCS2bの電力(出入力)として100kW〜1000kW、容量(蓄電容量)として蓄電池1a〜1n合計で100kWh〜1000kWh程度を有する。
これら蓄電池システム10a〜10nが、例えば6つ接続された被試験システムBの場合、被試験システムB全体としては、電力600kW〜6000kW、容量600kWh〜6000kWh程度の大規模な電力と容量を有するものになる。したがって、被試験システムBでは、規模が多くなるほど、試験で充放電動作をさせるために必要な電力と容量を確保することが難しい。
そこで、この例では、各蓄電池システム10〜10n一つ一つと電力及び容量の規模が同等の試験システムAを用意し、各蓄電池システム10a〜10n毎に試験システムAを1対1に接続して試験システムAが試験を行う。
なお、試験システムAの規模が各蓄電池システム10a〜10nと同程度であることに制限されない。規模が大きい試験システムAの場合は、試験システムAのPCS2の電力(出力)を絞って、例えば蓄電池システム10aのPCS2bの電力に合わせ、充放電量の方については十分賄える容量があることを意味する。
また、試験システムAの規模が大きい場合、試験システムAのPCS2が必要な電力を確保できるならば、例えば、蓄電池システム10a、10b・・・と一括で試験をしてもよいことは言うまでもない。
試験システムAの規模を小さくした場合(PCS2の電力は被試験システムの1つの蓄電池システムのPCS2bと同程度で、蓄電池の容量が小さい場合のこと)は、充放電量を制限した範囲で試験を行うことを意味する。
試験システムAは、少なくとも一つ以上の試験用の蓄電池11a〜11n、試験用のPCS2、試験用の制御部としての制御装置3を少なくとも備える。
本実施形態では、PCS2及び蓄電池11a〜11nは、被試験システムBの複数の蓄電池システム10a〜10nの中の一つの蓄電池システムと同等の電力と容量を有するものとする。試験システムAは、各蓄電池システム10a〜10nと個別に接続して互いの蓄電池1a〜1n、11a〜11nの充放電動作が可能である。
試験用の蓄電池11a〜11nは、被試験システムBの蓄電池1a〜1nが放電する電力を貯蔵し、被試験システムBへ充電する電力を提供する。試験用のPCS2は、被試験システムBに対して、電圧源として電力のやりとりを行い、放電及び充電する電力の交直双方向変換を行う。
ここで、交直双方向変換とは、被試験システムBとやり取りする電力を交流から直流に変換して試験用の蓄電池11a〜11nに充電し、蓄電池11a〜11nから電力を取り出し、直流から交流に変換することをいう。
本実施形態では、試験システムAのPCS2は、電力線PL側への出力を電圧一定制御することで、試験システムAと被試験システムBを電力線PLで接続した系統内(外部の商用周波数の電力系統とは、独立し、本実施形態の充放電に供される系統内)で、PCS2は電圧源となる。PCS2は、電圧源として系統内の電圧を発生及び一定に制御することで、被試験システムBとの充放電を可能にしている。
図2に示すように、試験用の蓄電池11a〜11nは、直流電力P11a〜P11nを充放電する。試験用の蓄電池11a〜11nは、試験対象の蓄電池1a〜1nに対して電力を充放電するための試験用の蓄電池である。試験用の蓄電池11a〜11nは、試験用以外(例えば、外部の機器の非常用電源用、通常のEV車充電用、太陽光発電パネルPV、風力発電等の蓄電用など)にも利用可能である。
接続ユニット5は、試験用の蓄電池11a〜11nを並列に少なくとも一つ以上接続可能であり、試験用の蓄電地11a〜11nの接続部に設けた断路器52(図4参照)により蓄電地11a〜11nを接続部に接続および切り離し可能である。
PCS2は、試験用の蓄電池11a〜11nが放電する直流電力P11a〜P11nを交流電力P21に変換する。また、PCS2は、変圧器4により変換された被試験システムBからの交流電力P21を、直流電力P5に変換する。直流電力P5は接続ユニット5を介して直流電力P11a〜P11nに分配され、蓄電池11a〜11nが充電される。
変圧器4は、被試験システムBが取り扱える電圧レベルに変換して交流電力P13を被試験システムBへ供給(充電)する。また変圧器4は、被試験システムBが放電する交流電力P13を試験システムAで取り扱える電圧レベルの交流電力P21に変換する。
すなわち、変圧器4は、試験用のPCS2と被試験システムBのPCS2bの間に配置され、試験用のPCS2と被試験システムのPC2bとの電圧レベルに差がある場合に、電圧レベルの相互変換を行う。
ここで、制御装置3について説明する。
制御装置3は、試験用の蓄電池11a〜11nの放電及び充電を行うために、試験用の蓄電池11a〜11nと、試験用のPCS2を制御する。この制御により試験用PCS2は直流から交流、交流から直流への双方向に変換の切り替えが行われる。直流から交流の場合、試験用の蓄電池11a〜11nからPCS2を介して被試験システムBの蓄電池1a〜1nを充電するための交流出力し、交流から直流の場合、被試験システムBからの放電を取り込み、PCS2を介して試験用の蓄電池11a〜11nに貯蔵する。
すなわち、制御装置3は、PCS2を制御してPCS2で交直変換された電力により双方のシステムの蓄電池11a〜11n、1a〜1nに充放電動作を行わせることで被試験システムBの試験を行う。ここで、交直変換とは個々のシステム内で電力を交流から直流、直流から交流へ変換することをいう。
制御装置3は、試験用の蓄電池11a〜11nの状態信号S11a〜S11n、試験用の蓄電池11a〜11nへの制御信号C11a〜C11n、および試験用のPCS2の状態信号S2a、試験用のPCS2への制御信号S2bなどを、デジタルネットワークSNを介して送受信する。制御信号S2b、S3a、S3bは、アナログ信号(センサー情報や指令値など)または無電圧接点によるON/OFF信号(断路器52(図4参照)への開閉制御指令など)である。
制御装置3は、試験用の蓄電池11a〜11nおよび試験用のPCS2に対して監視および制御し、さらに制御装置3自身を動作させる制御電力P211として、PCS2から電力P21の供給を受ける。なお、制御装置3自身を動作させるための電力を得る方法としては、変圧器4の出力P13を折り返して制御装置3に供給してもよい。
制御装置3は、接続ユニット5の電圧検出器51(図4参照)から検出電圧S3aを受信する。制御装置3は、接続ユニット5の断路器52に対して開閉制御指令S3bを出力する。
制御装置3は、試験開始前に被試験システムBと通信ケーブルで接続される。制御装置3は、試験開始前の事前試験の際に被試験システムBの蓄電池1a〜1nの状態信号を、通信ケーブルを通じて取得し蓄電状況を監視する。
続いて、制御装置3の構成について説明する。
制御装置3は、監視部31、試験用の制御部32、メモリ33などを有する。
監視部31は、被試験システムBの蓄電池1a〜1nと試験システムAの蓄電池11a〜11nの蓄電状況を集計する。
監視部31は、起動時に、接続ユニット5の断路器52および各蓄電池11a〜11nの開閉器XN、XP(図3参照)を切り替え制御して接続ユニット5に接続された個々の蓄電池11a〜11nの蓄電量または蓄電率を計算し、その中から試験可能な蓄電池11a〜11nの蓄電量を総合して蓄電池11a〜11nの蓄電状況を求める。
また、監視部31は、蓄電池11a〜11nと蓄電池1a〜1nの蓄電状況とを基に蓄電池11a〜11nが試験対象の蓄電池1a〜1nを、試験可能か否かを判定する判定部として機能する。
制御部32は、監視部31により蓄電池11a〜11nが蓄電池1a〜1nを試験可能であると判定された場合に、予めメモリ33に設定された所定の試験手順(プログラム)に従ってPCS2を制御し、試験対象の蓄電池1a〜1nと試験用の蓄電池11a〜11nとの間で充放電を行わせ、試験を実施する。
この他、制御装置3は、蓄電装置11a〜11nおよびPCS2と状態量および制御指令を送受するために信号伝送インターフェースを備える。デジタル信号、アナログ信号、ON/OFF無電圧接点信号に対応する。デジタル信号の場合は、多様な通信ネットワークSN(ポイントツーポイント、マルチドロップ、スター構成、リング構成、バス構成等)で構成できる。
本実施形態では、PCS2と制御装置3の情報伝送にアナログ信号および無電圧接点信号S2bを使用しているが、これもPCS2の多様なインターフェースに対応するため、重要な制御指令は、より信頼性の高い方式(無電圧接点によるワイヤによる情報ON/OFF信号)を選んでもよい、
また、PCS2内で各々計測された検出情報などは通常アナログ情報の場合が多く、直接アナログ信号として受け渡してもよい。なお、本実施例が図2に示した信号伝送の構成に限定されるものではない。
制御装置3は、上記I/F以外に、主機能である監視・制御はマイクロコンピュータ等によるプログラム制御により動作する。
続いて、制御装置3の制御機能を説明する。
制御装置3は、試験システムAに対する起動シーケンスを備えており、起動シーケンスに従い、蓄電池11a〜11n、PCS2へ信号伝送(S3、S11a〜S11n、S2b)により指令を出し、各々を起動させる。
また、蓄電池11a〜11nの各電池管理部から各蓄電素子Eの電圧情報、電流情報、動作・イベント情報等(S11a〜S11n)、及びPCS2に内蔵させているセンサからPCS2内の変換回路における電圧情報、電流情報、動作・イベント情報(S2a、S2b)などを収集し、当該情報を基に蓄電池11a〜11n、PCS2の異常および故障を監視しながら、PCS2の双方向変換及び電圧源として動作するように制御する。
これらの制御により、試験システムAは、被試験システムBへの充放電を安定して実施できる。なお、制御装置3は異常および故障を検出した場合は、PCS2の動作停止や必要に応じて蓄電池11a〜11n内の保護回路(直流開閉器XP、XN)を動作させることで、試験システムAを停止させ、被試験システムBから解列させる(切り離す)。
以上、蓄電装置11〜1n、制御装置3、PCS2の動作により、被試験システムBへの充放電試験を実施できる。
ここで、制御装置3による蓄電池11a〜11nの状態の測定動作を説明する。
制御装置3は、起動シーケンスに基づき開閉制御指令S3bを発行し断路器52および個々の蓄電池11a〜11n内の開閉器を開閉動作させることで、個々の蓄電池11a〜11nの状態データを集計し、個々の蓄電池11a〜11nが使用できるか否かを判定する。
起動シーケンスは、例えば、断路器52を開放させる開閉制御指令S3bを送ることで断路器52を開放し、蓄電池11a〜11nをPCS2から切り離した上で、蓄電池11a以外の蓄電池11b〜11nの蓄電池管理器112へ正極側直流開閉器XPを開放させる制御信号C11b〜C11nを送ることで、蓄電池11aだけの蓄電容量と電圧を計測し、計測データとして取得する。
この動作を次の蓄電池11b以降についても行い、全ての蓄電池11a〜11nの蓄電容量と電圧を計測した計測データを取得し、一定の閾値に満たない蓄電池を試験に使えないものとして通知する。
以下、起動シーケンスに基づく制御装置3の動作を説明する。
制御装置3は、起動する際に、接続ユニット5に開閉制御指令S3bを出力し、また各蓄電池11a〜11nに制御信号C11a〜C11nを順に出力し、蓄電池11a〜11n一つずつの状態を検出(計測)していく。
制御装置3は、起動時に初めに、回路を開放するための開閉制御指令S3bを発行し接続ユニット5に設けた断路器52を「開」とし、回路を切り離す。このため、その後、蓄電池11a〜11nを起動しても回路はオープンなので、蓄電池11a〜11nは充放電せず、電力P11a〜P11nは発生しないが、オープン電圧は発生する。電圧検出器51は、試験システムAの起動時に、このオープン電圧を計測する。
蓄電池11a〜11nを1つ起動する毎に、電力P51のラインのオープン電圧が電圧検出器51により検出され、制御装置3に通知される。制御装置3は、予め設定された閾値と検出されたオープン電圧とを比較して、オープン電圧に異常がなければ、順次、全蓄電池11a〜11nを起動していく。
制御装置3は、全蓄電池11a〜11nの起動完了後に、回路を接続するための開閉制御指令S3bを断路器52へ発行し、断路器52にて回路を閉し、PCS2と回路を接続する。
制御装置3は、PCS2に対して変換指令S2bを出力し、この変換指令S2bを受けたPCS2は、蓄電池11a〜11nと充放電を開始する。
なお、本実施形態では、断路器52を接続ユニット5に内蔵しているが、PCS2が内蔵してもよい。この場合、制御装置3からPCS2への指令S2bにより断路器52を制御する。蓄電池11a〜11bが充放電しないようにできるのであれば、オープン電圧が測定できるので、断路器52は充放電に供される試験システムA内のどの回路部分に配置してもよい。
これらの制御により、試験システムAは、被試験システムBへの充放電試験を実施できるようになる。なお、制御装置3は、異常および故障を検出した場合は、PCS2の動作停止や必要に応じて蓄電池11a〜11n内の保護回路(直流開閉器XP、XN)を動作させることで、試験システムAを停止させ、被試験システムBから開放する。
以上、蓄電池11a〜11n、制御装置3、PCS2の動作により、被試験システムBへの充放電試験を実施できる。
蓄電池11a〜11nは、みな同様に構成されており、この中の一つ、例えば蓄電池11aの構成を、図3を参照して説明する。
図3に示すように、蓄電池11aは、蓄電器111と蓄電池管理器112とを有する。蓄電器111は、複数の蓄電素子EをヒューズHなどの保護回路を介して直列に接続したものである。この蓄電素子Eとしては、例えば二次電池(リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、NAS電池、レドックスフロー電池など)などを用いる。
複数の蓄電素子Eは、直列接続または並列接続することで所定の容量および所定の直流・電圧を得る。なお、本実施形態は、複数の蓄電素子Eを接続する仕方に制限されるものではなく、例えば直列接続と並列接続とを組み合せてもよい。
また、複数の蓄電素子Eを一つのモジュールとし、そのモジュール同士を直列または並列に接続して所定の容量および電圧を得る蓄電器としてもよい。なお、図3では、蓄電素子Eを単純に直列接続した例を示している。
図3において、蓄電素子Eは、正極端子P1および負極端子N1を両端に備える直列接続回路において、蓄電素子Eの正極側に直流開閉器XP、負極側に直流開閉器XNを設けている。なお、このような開閉器は、正極側または負極側の一方だけに設けてもよい。
蓄電池管理器112は、各蓄電素子Eの電気量や温度等の状態信号S111を監視し、制御装置3から受信された状態計測を指示する制御信号C11a〜C11nによって状態信号S11a〜S11nを制御装置3へ返す(送る)。
また、蓄電池管理器112は、制御装置3から直流開閉器XP、XNの開閉を指示する制御信号C11aが受信されることによって、制御信号S111P、S111Nを出し直流開閉器XP、XNの開閉を制御する。つまり蓄電池管理器112は、電気量や温度等の状態信号S11aおよび制御装置3からの制御信号C11aなどの制御信号を送受信する。
なお、保護の信頼性を上げるために、制御装置3からの指令(制御信号)だけでなく、蓄電池管理器の自律的判断、若しくは開閉器XP、XNの直接(手動)操作用ハンドルによる開閉操作できるようにしてもよい。
なお、上述した例の他、例えば複数の蓄電素子Eをモジュール化して、モジュール同士で直並列の回路構成とした蓄電器においても、同様にモジュール接続回路にヒューズH、直流開閉器XP、NPを設けてよい。この場合、モジュール単位にその内部の蓄電素子Eに関する電気量および温度の情報を蓄電池管理器112へ送信される。
図4に示すように、蓄電池11a〜11nとPCS2は、直流電力路BLを介して並列(正極電圧ラインBLP、負極電圧ラインBLN)に接続して構成されている。このように各蓄電池11a〜11nを並列に接続することで、所定の蓄電容量を確保し、PCS2との間で直流電力を出し入れすることができる。本実施形態では、この並列接続部も含めて接続ユニット5として表現している。
蓄電池11a〜11nとPCS2との間には、接続ユニット5が接続されている。接続ユニット5には、電圧検出器51とスイッチ回路としての断路器52とを有する。電圧検出器51は、回路の総電力P51の電圧を検出する。断路器52は、回路を接続および切り離す。なお、電圧検出器51は、接続ユニットではなく、試験用のPCS2内の直流回路に設置してもよい。
(作用)
続いて、この実施形態の充放電試験システムの作用を説明する。
試験システムAは被試験システムBの各蓄電池システム10a〜10nと1対1の対抗を組み大電流の充放電を行う。なお、対抗は1対1に限定されず、蓄電池システム10a〜10nの容量次第では複数の蓄電池システム10a〜10nを組み合わせて適用できる。
試験システムAと被試験システムBは電力送受のため電力線PLで接続され、両システムを接続する回路の中で、試験システムAは電圧源として働く。これは、PCS2が被試験システムBに対する電圧源となることを意味する。これにより被試験システムBとの間で、交流電力を供給・吸収する。
この場合、試験システムAと被試験システムBの電力送受(符号P13)において、PCS2の入出力電圧範囲に合わせるために変圧器4が使われる。なお、当該入出力電圧レベルが被試験システムBと合えば、変圧器4は不要であり、直接入出力(充放電)してもよい。以上より、PCS2を電圧源とすることで、被試験システムBは電力系統に接続せず、試験システムAと接続すれば充放電試験が可能になる。
次に、蓄電池11a〜11nの充電方法について説明する。
充放電試験を実施する際に、試験前に、試験システムAの蓄電池11a〜11nに所定の充電量を貯蔵しておく必要があるためこの際の充電方法を説明する。ここでは、工場などの建屋内に設けられた電源から蓄電池11a〜11nを充電する例を説明する。
この場合、図1に示した被試験システムBと試験システムAを接続する前に、電力P13をやり取りする電力線PLには、被試験システムBではなく、建屋の3相交流電源などを接続し試験システムAと繋ぐ。
そして、試験システムAに対して建屋の3相交流電源から電力P13を入力し、PCS2を介して蓄電池11a〜11nに充電する。この充電動作は、図2において、被試験システムBの蓄電池1a〜1nを放電させるために電力P13を試験システムAが受け取る試験動作と同じ動作になる。
なお、建屋の3相交流電源から試験システムAの蓄電池11a〜11nを充電する場合は、建屋の電源容量に応じた電力量で充電することになる。通常、建屋の電力容量は小さいため、大充電ではなく、数時間かけて、建屋の電力容量を超えない範囲で蓄電池11a〜11nを充電することになる。したがって、この場合、試験開始前、工場等で深夜等に充電しておき、日中に、試験システムAと被試験システムBとを接続して充放電試験を行うなどの運用になる。
充放電の具体的な例は、以下の通りである。
試験システムAのPCS2の容量が例えば500kVA、蓄電池11a〜11nの総容量が1000kWh、被試験システムBの定格容量が500kVA、蓄電容量が500kWhの場合、さらに試験システムAおよび被試験システムBの蓄電量がそれぞれ充電率50%であった場合、被試験システムBには定格(例えば500kW)で充電率0%から100%までのエネルギーを供受させる試験(充放電試験)が可能となる。なお蓄電量とは各々のシステムに貯蔵されている電気エネルギーで充電量のことをいう。
ここで、図5及び図6を参照して試験システムAのPCS2の構成を説明する。
PCS2は、双方向電力変換を行う機器である。この双方向電力変換機能を実現するための回路として、例えばフルブリッジ回路などがある。
図5に示すように、PCS2は、変換回路21及び電力制御部20を有する。変換回路21は、相毎(U相、V相、W相)にそれぞれ4つのスイッチング素子Stから構成されるブリッジ回路と直流コンデンサCdを有する。
電力制御部20は、3相/dp変換部201、PI制御部203,204、dp/3相変換部205、PWM制御部206などを有する。この電力制御部20では、3相/dp変換部201により3相交流電圧を検出して、各相の変換回路21に対して制御電圧を出力し、それぞれの変換回路21のスイッチング素子Stのゲートを操作することで電圧が一定となるよう制御する。この場合、試験システムAが電圧源となるため、試験システムAと被試験システムBとを接続することで任意のシステム試験を実施することができる。
このPCS2の場合、ブリッジを構成する4つのスイッチング素子Stのうち2つをペアに交互にON/OFFさせて電流の方向を交互に変える。これにより入力側の直流電力は交流電力に変換されて出力側に送り出される。
逆に、当該出力側から交流電力を入力すると、当該ブリッジ回路は、整流回路として動作する。この場合、ブリッジ回路は、直流電力を生成して当該入力側に送り出す。これにより、PCS2は、電力源(電流源)として機能し、蓄電池11a〜11nを充電することができる。すなわちこのPCS2では、直流と交流の双方向変換を行うことができる。
試験用のPCS2を電力源として機能させ、例えば蓄電池11a〜11nを充電する場合、図6に示すように、3相/dp変換部202を設けて、3相交流から3相交流電流を検出して電力制御により、変換回路21のスイッチング素子Stのゲートを操作することで電力が一定となるように構成する。なお、本実施形態は、特定の電力変換方式だけに制限されるものではない。
次に、図7乃至図10を参照して制御装置3の監視部31が被試験システムBに対して試験システムAが試験可能か否かを判定する動作を説明する。
図7に示すように、試験システムAの蓄電池11a〜11nに貯蔵されている貯蔵電力量X2、試験システムAの蓄電池11a〜11nの充電状態から、さらに貯蔵可能な貯蔵可能電力量X1、被試験システムBの蓄電池1a〜1nに貯蔵されている貯蔵電力量(測定値)Y2、被試験システムBの蓄電池1a〜1nの充電状態から、さらに貯蔵可能な貯蔵可能電力量Y1とした場合、制御装置3では、監視部31が、各システムの蓄電池11a〜11nおよび蓄電池1a〜1nの電力貯蔵能力を、測定(計測)可能か否かを判定する。
ここで、監視部31は、蓄電池11a〜11nの能力を下記式(1)の条件を満たすか否かによって(図7のステップS331およびステップS332)、電力貯蔵能力が測定可能か否かを判定する(ステップS333またはステップS334)。
X1≧Y2かつX2≧Y1・・・式(1)
上記(1)式の条件を満たす場合(ステップS331のYesおよびステップS332のYes)、監視部31は、被試験システムBの電力貯蔵能力測定が可能と判定し(ステップS333)、条件を満たさない場合は(ステップS331のNoおよびステップS332のNo)、電力貯蔵能力測定が不可能と判定する(ステップS334)。
なお、被試験システムBの電力貯蔵能力は、
Y1+Y2 ・・・・・・・・式(2)
であるが、この判定をする段階では、被試験システムBの電力貯蔵能力は不明であるため、仮に設計値を使うことで、電力量(設計値)Yとし、実測できる電力量(測定値)Y2から、
Y1=Y−Y2 ・・・・・・式(3)
として貯蔵可能な電力量Y1を推定する。
なお、試験システムAは、設備であることから、一度、予め電力貯蔵能力を他の充放電試験器や電源などで測定しておき、この測定値(初期値)を使い、実測できる電力量X2から電力量X1を算出してよい。
他の充放電試験器や電源などによる測定では、試験システムAの貯蔵電力量を完放電状態から満充電状態まで充電、あるいは満充電状態から完放電状態まで放電し、その電力または電流の積算により電力貯蔵能力(Wh)が測定できる。
上述した説明において、電力量の単位は[Wh]であるが、エネルギー量の単位として[Ah]を使用してもよい。[Ah]でも式(1)〜式(3)が適用できることは言うまでもない。以下同様である。
各蓄電池11a〜11n、1に電力貯蔵されている電力量X2、Y2を算出する上では、一般的に、電流積算によるエネルギー量[Ah]の算出や、開回路電圧を使用したSOC(State Of Charge:充電量)の推定からエネルギー量を求める方法、または、電力積算による電力量[Wh]の算出などが知られている。
以下、図8を参照して(1)式について説明する。
図8に示すように、試験システムAにおいて試験可能な蓄電池11a〜11nの充電能力として、既に充電済みの貯蔵電力量X2とこれからさらに充電可能な貯蔵可能電力量X1がある。また被試験システムBの充電能力として、既に充電済みの貯蔵電力量Y2とこれからさらに充電可能な貯蔵可能電力量Y1がある。
試験システムAの貯蔵可能電力量X1が被試験システムBの貯蔵電力量Y2よりも大きければ、被試験システムBの電力量を試験システムAに移動することができるため、被試験システムBの完放電状態を作り出すことができる。
また、試験システムAの貯蔵電力量X2が被試験システムBの貯蔵可能電力量Y1よりも大きければ、試験システムAの電力量を被試験システムBに移動して被試験システムBを満充電状態にすることができる。(1)式はこの条件を満たす。
なお(1)式の関係は、充放電に伴う電力の損失分を想定して、損失量αを用いて、
X1≧Y2+αかつX2≧Y1+α・・・式(4)
として判定してよい。
式(1)または式(4)による判定の結果、測定可能となれば、試験システムAを使い、被試験システムBに対して、その貯蔵電力量を完放電状態から満充電状態まで充電、または満充電状態から完放電状態まで放電させる。
この充放電動作を所定回数繰り返して電力または電流を積算することにより被試験システムBの電力貯蔵能力(Wh)を測定(算出)する。
(以上の方法を実現する方法)
図1および図2に示した試験システムAの制御装置3において、試験システムAの電力の測定値(初期値)を予め設定値として保持しておき、試験開始前に電気量X2を算出し、電気量Xから電気量X2を減算して電気量X1を得る。また、被試験システムB側の電気量Y1、Y2の計測データを取り込み、(1)式または(4)式の判定式で電力貯蔵能力を測定可能か否かを判定する。
なお、被試験システムBの電気量Y1、Y2の計測データは、試験システムAと被試験システムBの間に設けたデジタルネットワークSN(通信手段)を通じて試験システムAの制御装置3が受け取る。また、被試験システムB側での測定データを手動操作(USBメモリなどによるデータの移し替えなど)で制御装置3に受け渡すようにしてもよい。また、試験システムA,Bの外部に設置された特定のサーバ(エネルギー管理システム:EMS)等のコンピュータからLANなどを経由して計測データを取り込むようにしてもよい。
ここで示した、電気量Y1,Y2を試験システムAが取り込む構成や判定機能を制御装置3が備える構成は一例を示したに過ぎず、他の構成や判定方法を適用してもよい。
試験システムAは、被試験システムBに対して充放電を実施するが、実施したい試験項目に対して、試験システムA側の蓄電池11a〜11nのエネルギー量が、被試験システムBのエネルギー量に対して十分でない場合、あるいはエネルギー量が過剰である場合、充放電ができなくなる可能性がある。
そこで、本実施形態では、試験対象である被試験システムBの電力貯蔵能力を測定する際に、試験システムAおよび被試験システムBの電力量(Wh)またはエネルギー量(Ah)を測定(計測)および確認し、充放電が可能か否かを判定し充放電が可能であることを確認した上で当該試験を実施する。
(充放電試験が実施可能であるか否かを判定する方法について)
図1および図2の試験システムAは、被試験システムBに対して充放電を実施するが、特性試験や機能確認などの試験項目に対して、試験システムAのエネルギー量が十分でない場合、あるいはエネルギー量が過剰である場合、充放電の試験ができなくなる可能性がある。
これを回避するため、双方の電力量を比較して充放電試験が実施可能であるか否かを初めに判定する。例えば、蓄電池システムである被試験システムBの特性試験項目として蓄電池1a〜1nの直流抵抗測定(試験)を行う。
この場合、試験システムAと被試験システムBの各々の充電状態を計測するが、特定の条件でなければ、測定することができない。
そこで、本実施形態では、この特定の条件を判定する方法およびこの方法を実現する方法を説明する。本実施形態は、図1および図2の試験システムAに適用できる。なお、被試験システムBは、蓄電池システムであることから蓄電手段(蓄電池など)を備えていることは言うまでもない。
(試験システムAと被試験システムBとの貯蔵電力量の関係から特性測定が可能か否かを判定する方法)
図9を参照して試験システムAと被試験システムBとの貯蔵電力量の関係から抵抗測定が可能か否かを判定する方法について説明する。
試験システムAの蓄電池11a〜11nに貯蔵されている電力量X2、試験システムAの蓄電池11a〜11nの充電状態からさらに貯蔵可能な電力量X1、被試験システムBの蓄電池1a〜1nに貯蔵されている電力量Y2、被試験システムBの蓄電池1a〜1nに電力を充電した状態からさらに貯蔵可能な電力量Y1とした場合、制御装置3では、監視部31が、所定の閾値β1、β2を使い、各システムの蓄電池11a〜11nおよび蓄電池1a〜1nの特性を、測定(計測)可能か否かを判定する。
ここで、監視部31は、蓄電池11a〜11nの能力を下記式(5)の条件を満たすか否かによって(図9のステップS341およびステップS342)、電力貯蔵能力が測定可能か否かを判定する(ステップS343またはステップS344)。
X1≧β1かつX2+Y2≧β2・・・式(5)
監視部31は、上記式(5)の条件を満たす場合(ステップS341のYes,S342のYes)、被試験システムBの蓄電池の直流抵抗の測定(特性測定)が可能と判定し(ステップS343)、条件を満たさない場合は(ステップS341のNoおよびステップS342のNo)、特性測定が不可能と判定する(ステップS344)。
電力量X1、X2、Y1,Y2は、上述した図7で説明した方法で算出できる。なお、試験システムAと被試験システムBの充放電により、被試験システムBに対して、その貯蔵電力量を完放電状態から満充電状態まで充電、あるいは満充電状態から完放電状態まで放電させることで、電力または電流の積算により被試験システムBの電力貯蔵能力(Wh)を測定(算出)した電力量Yの値から、式(3)により電力量Y1を算出してもよい。
以下、図10を参照して式(5)について補足説明する。
式(5)の閾値β1、β2を決定する方法の一例を示す。
蓄電池の特性測定の一つである直流抵抗算出方法は、JEVS(日本電動車両規格:Japan Electric Vehicle Standard)D714で規定されている図8に示す方法がある。
JEVS規格では、図10に示すように、短時間(10秒間)の充電と放電を繰り返し(充電および放電の電流値を1/3Cから5Cまで変えて繰り返す。
ここで、1Cとは定格電流値で、1/3Cは定格の1/3倍、5Cは定格の5倍の電流値)、その時の電圧の立ち上がりと電流の値を用いて直流抵抗の算出を行う。
直流抵抗測定を行う条件として、被試験システムBの蓄電池のエネルギー状態をSOC(State Of Charge:充電量または充電率という)50%の状態にしておくこと、および短時間に大電流を流すことが必要となる。
以下、上記JEVSに規定された直流抵抗算出方法を行う場合について単位:エネルギー量の単位[Ah]を用いて説明する。エネルギー量は電力量[Wh]に置き換えてもよい。
試験システムAの貯蔵可能エネルギー量X1は、図10に示すJEVSのパターンでは、被試験システムBから、最大5Cの電流で10秒間のエネルギー量を受け入れる分が必要となる。被試験システムの電池容量(すなわち電力貯蔵能力)が20Ahであれば、5Cは100Aとなるため試験システムAの貯蔵可能エネルギー量X1は、100A×10秒=100A*0.00278hour=0.278Ahより大きい必要がある。
この場合、式(5)の閾値β1は、0.278Ahとなる。また、試験システムAの貯蔵エネルギー量X2と被試験システムBの貯蔵エネルギー量Y2の和は、被試験システムBがSOC50%であること、被試験システムBに最大5Cの電流で10秒間充電するために、試験システムAは0.278Ahを供給する必要があることから、試験システムAと被試験システムBの両システム合わせて10Ah+0.278Ah以上の貯蔵エネルギーが必要である。よって、この場合、閾値β2は10.278Ahとなる。
なお、充放電に伴う電力の損失分を想定して、損失量αを用いて、
X1≧β1+αかつX2+Y2≧β2+α・・・式(6)
として判定してもよい。
以上の方法を実現する例を説明する。
図1および図2の試験システムAの制御装置3において、試験システムAの電力貯蔵能力の測定値(初期値)Xを予め設定値として保持しておき、試験開始前に電気量X2を算出し、XからX2を減算してX1を得て、また、被試験システムB側の電気量Y1、Y2のデータを取り込み、式(5)または式(6)の判定を行えばよい。
被試験システムBの電気量Y1、Y2のデータは、試験システムAと被試験システムBの間に新たな通信手段を設けて、試験システムAの制御装置3が入力する。また、制御装置3へマニュアル(人手)でデータ入力する構成でもよい。
また、特定のサーバ(エネルギー管理システム:EMS)等の両システム外に設置された計算機等、クラウドシステム等から通信で取り込む構成でもよい。
なお、本実施例で示した方法が、電気量Y1,Y2を試験システムAが取り込む構成や、判定機能を制御装置3に備えるよう構成することは一例であり、本実施形態の判定方法の適用を制限するものではない。
(試験)
ここで、試験システムAが被試験システムBに対して行う試験について説明する。
試験システムAが被試験システムBに対して行う試験としては、下記第1の試験〜第5の試験などがある。第1の試験は、例えば被試験システムBを構成するPCS2および接続される蓄電池が設計通りに起動シーケンスを確認する試験である。
第2の試験は、被試験システムBが有するPCS2bおよびPCS2bに接続される蓄電池1a〜1nが異常時に保護動作により協調して停止することを確認する試験である。第3の試験は、被試験システムBを構成するPCS2が指定の有効電力あるいは無効電力を出力あるいは入力(吸い込み)することが可能であることを確認する試験である。
第4の試験は、被試験システムBを構成する蓄電池の貯蔵能力(電池容量)が設計通りであることを確認する試験である。第5の試験は、被試験システムBを構成する蓄電池の内部状態が正常であること、例えば蓄電池の直流抵抗が仕様範囲内であることを確認する試験である。
第1試験では、まず初めに試験システムAを起動し交流電力が電圧、周波数が安定である状態とした上で、被試験システムBの直流電源である蓄電池機能を起動する。
蓄電池の状態が正常であることを自己診断した後、蓄電池システム10a〜10nの中で接続されている蓄電池システムのPCS2bを起動する。
PCS2は、一般的に図5に示したように直流コンデンサCdを備えており、直流電源からコンデンサへの初期充電、試験システムAによって確立された交流電力の安定性判定、また必要であれば蓄電池機能あるいは被試験システムBを統合的にコントロールする装置との通信確認の健全性などを起動シーケンスの中で実施した後、起動状態が確立されることを確認する。
第2の試験では、前述のように試験システムAにより交流電力を安定とした状態および被試験システムBが起動している状態において、例えば蓄電池管理器の機能を停止させて、被試験システムBのPCS2bの直流電圧が低下したことを検知して異常を検知して安全に機能停止することや、試験システムAの機能を停止させて、交流電圧の低下や、周波数の適正値からの逸脱などを検出して、被試験システムBが異常を検知して安全に機能停止することなどを確認する。
第3の試験では、前述のように試験システムAにより交流電力を安定とした状態および被試験システムBが起動している状態において、被試験システムBの有効電力出力を設定し、被試験システムBのPCS2bによって、設定された有効電力が出力されていることを確認する。
この場合、被試験システムBから試験システムAに対してエネルギーの流入があり、結果的に試験システムAが備える蓄電池に対して充電が行われる。このため、試験システムAは発電機能だけを有する装置ではなく、かならず電力貯蔵機能が必要となる。
確認試験では、被試験システムBの有効電力の出力設定だけでなく、同様に入力設定や、無効電力の入出力設定およびその設定どおりの入出力が実施されていることも確認する。
第4の試験では、前述のように試験システムAにより交流電力を安定とした状態および被試験システムBが起動している状態において、被試験システムBが具備する蓄電池をいったん完放電状態まで放電する。
完放電状態とは、被試験システムBが具備する蓄電池の仕様によるもので、蓄電池毎に定められるものである。例えばある蓄電池では蓄電池を構成する最小単位の電池(セルと呼ぶことが多い)の電圧を測定し、放電によって構成するセル電圧のいずれか一つが電池の仕様によって決められる電圧に到達した時点を完放電状態とする、などと定めている。
この場合、被試験システムBから試験システムAに対してエネルギーの流入があり、結果的に試験システムAが備える蓄電池11a〜11nに対して充電が行われる。このため、試験システムAは発電機能だけを有する装置ではなく、かならず電力貯蔵機能が必要となる。
また、試験システムAが備える蓄電池11a〜11nが充電できる電力容量は被試験システムBが備える蓄電池1a〜1nが完全放電状態まで放電する電力量よりも大きいことが必要となる。
完全放電状態から、次に被試験システムBに対して充電を実施し、被試験システムBの蓄電池1a〜1nを満充電状態とする。満充電状態もそれぞれの電池によって定められる状態であり、完全放電状態と同様に、例えば蓄電池を構成するセルの電圧のいずれかが充電によって電池の仕様によって定められる電圧に到達した時点を満充電状態となどと定めている。
この場合、試験システムAから被試験システムBに対してエネルギーの流入があり、結果的に試験システムAが備える蓄電池11a〜11nから放電が行われる。試験システムAが備える蓄電池11a〜11nが保有する電力量が被試験システムBが備える蓄電池1a〜1nを完放電状態から満充電状態まで充電する電力量より大きいことが必要となる。
完放電状態から、満充電状態まで充電したとき、この間に充電された電力量がすなわち被試験システムBが備える蓄電池1a〜1nの充電時の貯蔵能力(電池容量)となる。
また、被試験システムBが備える蓄電池1a〜1nを満充電状態から、完放電状態まで放電し、その間に放電された電力量を放電時の貯蔵能力(電池容量)として、前述の充電時の貯蔵能力とともに設計通りであることを確認する。
第5の試験では、前述のように試験システムAにより交流電力を安定とした状態および被試験システムBが起動している状態において、被試験システムBが備える蓄電池1a〜1nの直流抵抗を測定する。例えば特性測定の一つである直流抵抗方法を適用した電力パターンを与えることでは、JEVS(日本電動車両規格:Japan Electric Vehicle Standard) D714で規定されている方法などがある。
このようなパターンを与える場合、被試験システムBから試験システムAに対してエネルギーの流入があり、結果的に試験システムAが備える蓄電池11a〜11nに対して充電が行われる。このため、試験システムAは、発電機能だけを有する装置ではなく、必ず電力貯蔵機能が必要となる。
直流抵抗は、蓄電池の劣化とともに値が大きくなることが知られており、この値が仕様の範囲内であることを確認することが、電池の正常性つまり劣化していない電池であることを確認することになる。
一方で、上記試験を実施し、試験システムAと被試験システムBの間の電力のやり取りを実施する中で、装置の発熱などによるエネルギー損失から、蓄電池に蓄えられているエネルギーは減少していくため、試験システムAへ充電する必要が生じてくる。
この際には、試験システムAを被試験システムBから切り離し、交流系統に接続した状態で充電する必要がある。
また、図5のPCS2は、指定の電力を入力できるような電力制御を実施する。PCS2には一例として図6に示すような電力制御回路20が設け、電力制御によりPCS2のスイッチング素子Stのゲートを操作することで指定の電力を入力できるようにする。
このように第1実施形態によれば、被試験システムBの各蓄電池システム10a〜10nに1対1で試験システムAを接続し、それぞれの蓄電池システム10a〜10nに対し試験システムAが電圧源として電力のやりとりを行うことにより、双方のシステムのPCS2,2b間で電力の交直相互変換を行い、交直変換した電力によって双方の蓄電池11a〜11n、1a〜1nに充放電動作を行わせることで被試験システムBを試験するので、試験対象のシステムが複数の蓄電池システム10a〜10nから構成される大規模な被試験システムBであった場合でも試験を行うことができる。
すなわち、電力系統から電力を出し入れすることなく、試験システムAと各蓄電池システム10a〜10nの充放電損失のみで試験を実施することができる。当該被試験システムBが大規模(出力増大)になるほど、電力系統に連系させた場合、試験システムAの充放電は電力系統の電力変動として大きな影響を発生させるが、この実施形態のように試験システムAと被試験システムBの各蓄電池システム10a〜10nを1対1に対抗(対向)して接続した場合では、電力変動の影響を受けることなく被試験システムBを試験することができる。
また、電力系統に連系する前に系統連系要件を満たしているか否かを判定した上で、系統連系要件を満たしている場合に試験を行うので、試験対象のシステムの試験を確実に行うことができる。
(第2実施形態)
図11は第2実施形態の充放電試験システムの構成を示す図である。なおこの第2実施形態を説明するにあたり、第1実施形態と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図11に示すように、この第2実施形態の充放電試験システムは、第1の収容部としてのコンテナ22を搭載したトレーラT1(第1搬送手段)と、第2の収容部としてのコンテナ23を搭載したトレーラT2(第2搬送手段)とを備える。
コンテナ22には、試験システムAの構成要素である試験用のPCS2、制御装置3、変圧器4が収容されている。またコンテナ23には、試験システムAの構成要素である試験用の蓄電池11a〜11nおよび接続ユニット5が収容されている。
電力P13は、変圧器4と被試験システムBとの間でやりとりされる交流の電力である。被試験システムB側の試験対象のPCS2bと試験システムAの試験用のPCS2とが同じ電圧である場合は、試験システムAの側の変圧器4を除いた構成としてもよい。
コンテナ22のPCS2とコンテナ23の接続ユニット5との間は主回路の電力路BL1が接続されている。コンテナ22,23間は、この電力路BL1を通じて電力P5(図2参照)がやり取りされる。
この実施形態の場合、PCS2および制御装置3を収容するコンテナ22と試験用の蓄電池11a〜11nを収容するコンテナ23とを分離するため、試験用の電池池11a~11nを収納した一方のコンテ22は、危険物管理および電池特性(機器発熱)に合わせた冷却管理の扱いを行う。
また、他方のコンテナ22は、危険物管理が不要であり、一般配電盤設備として取り扱える。また、蓄電容量を増強する場合は、追加する蓄電池を搭載した新たなコンテナへ、電力路BL1を分岐(並列回路になる)させて接続すればよい。
このため、この構成例では、増設用の蓄電池を元の蓄電池と並列に接続して蓄電容量を容易に増強することができる。
このように第2実施形態によれば、試験用の蓄電池11a〜11nを含む試験システムAをトレーラT1,T2で搬送可能すると共に、接続ユニット5で複数の試験用の蓄電池11a〜11nを増設可能としたことで、回路構成および接続構成の自由度が増し、搬送先の被試験システムBの条件(電力量、電圧など)に、試験システムAを合わせることができ、現地において多様な形態の被試験システムBに対応した試験を実施できる。
特に試験システムAを設置する場所の制約(スペースが狭い等)がある場合などにトレーラT1,T2を移動して縦列または並列に駐車して試験システムAを構成できるので、さまざまな試験条件に対応することができる。
また、2台のトレーラT1,T2に試験システムAの構成要素を分離して搭載し充放電試験システムを構成することで、所望の場所への試験システムAの搬入が容易に可能になり、搬送先に設置した被試験システムBの近傍に試験システムAを移動して設置および接続すれば(トレーラT1,T2に搭載したままであってもよい)、被試験システムBを他の送配電系統に接続することなく、いち早く充放電試験を実施することができる。
試験システムAと被試験システムBとを接続して充放電試験を実施する際に、被試験システムBで実施したい試験項目に対して、試験システムAのエネルギー量が十分でない場合、あるいはエネルギー量が過剰である場合、充放電ができなくなる可能性があるが、事前に試験システムA、被試験システムBの電力量[Wh]またはエネルギー量[Ah]を確認し、充放電が可能であることを判定した上で、試験対象である被試験システムBの特性試験または機能確認試験を実施する。
また、この第2実施形態では、試験用の蓄電池11a〜11nを搭載するコンテナ23と、試験用のPCS2および制御装置3を搭載定するコンテナ22とを分離したので、蓄電池11a〜11nを収納したコンテナ23は危険物管理および電池特性(機器発熱)に合わせた冷却管理の扱いを行い、一方のコンテナ22は危険物管理が不要であり、一般配電盤設備として取り扱える。
また、試験システムAの蓄電容量を増強する場合は、追加する試験用の蓄電池を搭載した新たなコンテナへ、電力路BL1を分岐(並列回路になる)させて接続すればよい。つまり蓄電池を並列に接続して試験用の蓄電容量を容易に増強できる。
すなわち、ある場所に設置した被試験システムBに、試験システムAを搬入して試験を実行する際の影響をできる限り少なくすることができる。
(第3実施形態)
図12は第3実施形態の構成を示す図である。なおこの第3実施形態を説明するにあたり、第1実施形態および第2実施形態と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
この第3実施形態において、図12には、試験システムAの各構成要素をコンテナに収納する際の配置の仕方の例を二つ示している。なお、図12では、装置間およびコンテナ間を接続するケーブル類などの構成は記載を省略している。また図12の例はコンテナ24またはコンテナ25内に、図2に示した試験システムAの構成要素を収容する場合の例である。
図11の例では、試験システムAの構成要素を二つのコンテナ22,23に分けて搭載したが、この変形例では、一つのコンテナ24に、試験用の蓄電池11a〜11n、試験用のPCS2、制御装置3、接続ユニット5、変圧器4のすべての構成要素を収納(搭載)する。これにより、1つのコンテナ24でシステムを構成し搬送(運搬)することができる。
つまりコンテナ24が収納可能な総重量および容積が既存コンテナの許容仕様を満足する場合は、構成要素を1つのコンテナ24に搭載できる。このコンテナ24の例では、変圧器4もコンテナ24の中に他の構成と共に収納されるので、特に変圧器4の騒音などもコンテナ24の内部に閉じ込めることができ、外部に対して防音できる効果(遮音効果)が得られる。
一方、コンテナ25の例は、コンテナ24に対して変圧器4をコンテナの外部に出した例である。変圧器4は、大容量のものほど重量・サイズが大きくなることから、1つのコンテナ24には収納できない場合がある。強いてコンテナ24に各要素を積載するには、コンテナ24が大型化し、特殊なトレーラが必要になり、試験システムAそのものの搬送に制約(法令で高速走行できなく、搬送に時を要する等)が生じ、また搬送コストも高くなる。
そこで、この場合、変圧器4をコンテナ25の収容物から省き、コンテナ25には、試験用の蓄電池11a〜11n、試験用のPCS2、制御装置3および接続ユニット5を収納(搭載)し、変圧器4を他のコンテナ(図示せず)に単独で搭載する構成とする。
変圧器4を単独でコンテナに搭載する場合は、搬送時のゆれと、運転時の発熱を考慮する必要があり、コンテナ内では変圧器4を固定するとともに、変圧器4を冷却するために冷却装置(エアコンディショナ、以下「エアコン」と称す)を設けてもよい。
(試験システムAを収容するコンテナの特徴について)
試験システムAの各要素をトレーラTに搭載して搬送する上で考慮することは、コンテナの外側に取り付ける外装品(エアコン室外機、換気扇ダクト等)を搬送時に取り外す必要がないように、例えばコンテナの短面側に外装品を取り付け、コンテナの長面は平面とする。これによりコンテナの輸送、現地工事の手間を省くことができる。
また、被試験システムBが屋外設置の場合、試験システムAのコンテナも屋外に配置するケースが多い。このため試験システムAのコンテナの天井部は、雨水の流れをよくする形状または構造にしておくことがよい。
このように第3実施形態によれば、コンテナ24またはコンテナ25の配置のように試験システムAの構成要素をトレーラTに搭載し、充放電試験システムを構成することで、所望の場所への試験システムAの搬入が容易に可能になり、搬送先に設置した被試験システムBの近傍に試験システムAを移動して設置および接続すれば(トレーラT1,T2に搭載したままであってもよい)、被試験システムBを他の送配電系統に接続することなく、いち早く充放電試験を実施することができる。
なお、本実施形態では、コンテナ24とコンテナ25の2つのコンテナに構成要素を切り離して収容した例を示したが、さらに細かく構成要素を分けて多数のコンテナに収容することや、特定の機器だけをコンテナに収納せず外部に一部の屋外設置のように配置する構成であってもよい。コンテナへの収容の仕方やコンテナの数の違いで、実施形態の効果に制約が生じないことは言うまでもない。
(第4実施形態)
図13は第4実施形態の構成を示す図である。なおこの第4実施形態を説明するにあたり、第1実施形態乃至第3実施形態と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図13に示すように、第4実施形態は、試験用の蓄電池11a〜11n、接続ユニット5、試験用のPCS2、制御装置3、変圧器4を収容したコンテナ26と、増設用の新たな蓄電池12a〜12nを収納したコンテナ27とを備える。なお、コンテナ26に変圧器4を収容しているが、コンテナ26とは別に変圧器4を配置、または別のコンテナに変圧器4を収容してもよい。
この第4実施形態では、コンテナC26内の接続ユニット5とPCS2を接続する主回路の電力路BL1は分岐してコンテナ27の接続ユニット5に接続されており、電力路BL1を通じて電力P11a〜P11nがやり取り(充放電)される。
この第4実施形態において、コンテナ26に搭載された試験システムAの蓄電容量を増強する場合、別の蓄電池12a〜12nを収納したコンテナ27を追加接続すればよく、容易に試験用の蓄電容量を増強できる。
なお、この第4実施形態は、第3実施形態と比較して、一台のコンテナ26で試験システムAを構成することができ、試験用の蓄電容量の増強が不要な場合にはコンテナ1台の運用だけで済むという利点がある。
上記第4実施形態では、新たな試験用の蓄電容量の増強を、試験用の蓄電池12a〜12nを収納したコンテナ27を増設して、接続ユニット5と試験用のPCS2の間の電力路BL1から分岐接続することを説明したが、試験用の蓄電池11a〜11nと接続ユニット5の間の電力路(図2では電力P11a〜11nをやり取りするライン)から分岐させた分岐路を、蓄電池12a〜12nだけを収納したコンテナ27に接続してもよい。
またコンテナ27に収容された蓄電池12a〜12を、コンテナ26内に配置されている接続ユニット5に直接接続してもよい。さらにコンテナ26,27がトレーラにて搬送できることは言うまでもない。この際、トレーラは複数の車両を使用してもよい。
なお、複数のコンテナ26,27に構成要素を収容して試験システムAを構成する場合、例えばコンテナ26,27間を接続するケーブル類の引き回しが問題になるが、各コンテナ26,27の側面などにアクセスパネルを設け、アクセスパネル内にケーブル接続用コネクタ、端子台を収容する。そして、アクセスパネルに接続したケーブルでコンテナ26,27間を接続することで、ケーブル配線にかかるコストを削減することができる。
(第5実施形態)
図14は第5実施形態の構成を示す図である。なおこの第5実施形態を説明するにあたり、第1実施形態乃至第4実施形態と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図14に示すように、第5実施形態は、試験用の蓄電池11a〜11n、試験用のPCS2、電力変換装置7および逆流防止ダイオードDI1を収納したコンテナ28と、このコンテナ28の屋根部(上部)に配置された太陽光発電パネルPVとを備える。なおこの図14には記載していないが、図2で説明した他の構成要素も備えられているものとする。
電力変換装置7は、直流を電圧レベルの異なる直流に変換するチョッパである。電力変換装置7は、太陽光発電パネルPVが太陽光発電した電力を試験システムAの直流回路に供給するために電圧レベルを調整する。
この第5実施形態の場合、試験システムAを収納したコンテナ28の上部に太陽光発電パネルPVを設置し、太陽光発電パネルPVが発電した直流電力を、電力路DC1を通じて電力変換装置7に入力する。電力変換装置7は、蓄電池11a〜11nとPCS2を接続する主回路の電力路BLへ逆流防止ダイオードDI1を介して太陽光発電パネルPVで発電した電力を供給することで、蓄電池11a〜11nを充電する。
この第5実施形態では、PCS2の変換停止をさせた状態では、蓄電池11a〜11nに電力を充電する。また、試験システムAと被試験システムBを接続して充放電試験を実施している間、太陽光発電で発電した電力を試験システムAの蓄電池11a〜11nに補充できるので、試験システムA自身のPCS2の変換損失で失われる電力損失分を補うことができる。
なお、この第5実施形態は、図2の試験システムAに、電力変換装置2、太陽光発電パネルPVを追加し配線する構成にも適用でき、同様の効果を奏することは言うまでもない。
この際、図2に示した接続ユニット5と蓄電池11a〜11nを繋ぐ電力路(回路)にこの第5実施形態と同様に太陽光発電パネルPVの電力を、逆流防止ダイオードDI1を介して供給するよう構成すればよい。
(第6実施形態)
図15に示すように、第6実施形態は、図2に示した試験システムAの各構成要素の他に、電力変換装置8および逆流防止ダイオードDI2をコンテナ29に収納したものである。
電力変換装置8は、開閉器221、保護リレー222、変換部223を有する。保護リレー222は、受電事故・故障を検出する。開閉器221は保護リレー222から出力された制御指令によって電力路を「開」または「閉」する。
変換部223は、配電系統および柱上トランスTRから受電した低圧配電系統の電力を試験システムAで利用可能な電力に変換する。例えば交流300Vを交流200Vに変圧する。
なお、図15では、図2に示した各構成要素や信号伝送、電力の流れおよび要素間の接続など、同じものは図示を省略している。また図示しない変圧器4はコンテナ29の外に配置してもよい。
保護リレー222は、開閉器221と変換部223との間の短絡事故などを検出した場合、開閉器221に制御指令を出し、電力路を「開」とする(すなわち受電路を切り離す)ことで、配電系統および柱上トランスTRへの過負荷、さらに保護リレー222(自装置)の故障が波及することを防止する。
第6実施形態の場合、試験用のPCS2の変換停止をさせた状態では、蓄電池11a〜11nに電力を充電する。
また、試験システムAと被試験システムBを接続して充放電試験を実施している間も試験システムAへ配電系統から電力を補充できるので、試験システムA自身の試験用のPCS2の変換損失で失われる電力損失を補うことができる。
また、配電系統の柱上トランスTRの容量内での受電であり、配電系統には影響を与えない。さらに電力変換装置8の保護機能により、万が一、試験システムAの事故や故障が生じたとしても配電系統側に影響は及ぼすことがない。
なお、この第6実施形態は、電力変換装置7と太陽光発電パネルPVを追加して配線する第5実施形態の構成においても適用でき、同様の効果を奏することは言うまでもない。
この場合、図2に示した接続ユニット5と試験用の蓄電池11a〜11nとを繋ぐ電力路(回路)に第6実施形態と同様に太陽光発電パネルPVの電力を供給するよう構成すればよい。
このように第6実施形態によれば、低圧配電系統の柱上トランスTRに試験システムAを接続し、試験システムAが柱上トランスTRから受電(充電)して試験用の蓄電池11a〜11nを充電するので、試験開始前および試験中に試験システムA内で損失する充電量を補強することができる。
(第7実施形態)
図16を参照して第7実施形態を説明する。図16において図2と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。また図16では、図2に示した各構成要素や信号伝送、電力の流れおよび要素間の接続など、同じものは図示を省略している。なお、この第7実施形態では変圧器4は必須ではない。
図16に示すように、コンテナ30に設置された充電器9および逆流防止ダイオードDI3を備える。充電器9は試験用の蓄電池11a〜11nに充電された電力を取り出し、電気自動車EVなどの受電機器に供給する。
逆流防止ダイオードDI3は、PCS2と蓄電池11a〜11nとの間の電力路BLと充電器9との間に接続する
すなわち、この第7実施形態は、図1に示した試験システムAの各構成要素の他に、充電器9および逆流防止ダイオードDI3をコンテナ30に収納したものである。
この第7実施形態では、試験用の蓄電池11a〜11nとPCS2との間の電力Pのやり取り(充放電)を行う電力路BLと新たに設置した充電器9との間を、逆流防止ダイオードDI3を介して接続する。
充電器9は、電力路BL側の直流電力を受け、充電用の電力DC2(交流電力または直流電力)を出力し、コンテナ30の外の電気自動車EV等を充電する。
電気自動車EVを直流充電する場合は、充電器9はDC/DC電力変換器(チョッパ回路等)を用い、交流充電する場合は、DC/AC電力変換器を用いる。
DC/AC電力変換器を用いる場合、商用交流電力を供給することで、家電等の交流駆動機器にも電力を供給できる。また、直流充電の場合、充電器9を、例えば日本のCHAdeMO規格に準拠した充電器とすることで、高速充電が可能になる。
この第7実施形態は、試験システムAが試験用途だけでなく、例えば、災害等で電力供給ができない場所に搬送すれば、非常用電源としても利用できる。
また、この第7実施形態では、充電器9を新たに設けたが、充電器9のない図2の構成において、変圧器4の出力P211を非常用電力として利用できる。例えば、低圧3相電源(非常用電源)として適用できることは言うまでもない。
(第8実施形態)
図17を参照して第8実施形態を説明する。図17において図2と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図17に示すように、この第8実施形態は、制御装置3に設けられた無停電電源器34(以下UPS34と称す)と電力変換装置6とを有する。
電力変換装置6は、試験用の蓄電池11a〜11nからの放電が試験用のPCS2において交流電力に変換された電力P21(P211)、被試験システムBからの放電電力P13、または外部の電力系統から取り込み、取り込んだ電力を直流の電力P212にして制御装置3のUPS34に供給し充電する。
電力変換装置6は、電力P21(P211)の電圧レベルがUPS34の入力許容電圧レベルに適合していない場合に導入され、電力変換装置6が電圧の調整(変換)を行う。
UPS34は、電力変換装置6により変換された電力P211により充電され、充電された電力を制御装置3の各部(監視部31、制御部32、メモリ33)を動作させる制御電源として供給する。つまりUPS34は、制御装置3に制御電源を供給すると共に、外部からの電力供給がない場合のバックアップ電源となる。
なおこの図17では図示していないが、電力P211ではなく、充放電試験システムAと被試験システムBの間でやり取り(充放電)される電力P13を制御装置3のUPS34に取り込んでもよい。この場合も電圧レベルが適合しなければ、電力変換装置6を介することになる。
この第8実施形態では、UPS34を制御装置3に組み込んで構成したが、UPS34を制御装置3から分離してもよい。また、装置を動作させるための制御電源としては、蓄電池11a〜11nおよびPCS2も必要である。このため、これら蓄電池11a〜11nおよびPCS2を動作させる制御電源を、図17に例示したUPS34から供給するようにしてもよい。一台のUPS34では容量が不足する場合、UPS34を複数台配置すればよい。
(第9実施形態)
図18を参照して第9実施形態を説明する。図18において図2と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図18に示すように、制御装置3に端子台35を設ける。端子台35は外部商用交流電源から、装置を動作させるための制御電源(電力)の供給を受けるためのものである。
外部の商用交流電源から、制御装置3を動作させる制御電源として電力P22を受けるよう構成する場合、外部商用電源が不安定である場合が想定される。例えば安定した外部電力系統から電力が配電されないか、または停電か瞬断が発生する場合がある。このような場合、各装置の停止を回避する必要がある。
そこで、この場合、端子台35を経由して受けた電力を、図14で説明したUPS34の充電用の電力として利用し、充電したUPS34から安定した電力を制御装置3へ供給する。
また、ここで示した端子台35を各蓄電池11a〜11n及びPCS2に適用し、これらに外部商用交流電源を取り込み、制御電源としてもよい。なお、試験用の蓄電池11a〜11n、試験用のPCS2および制御装置3は、装置をプログラム動作させるマイクロプロセッサ等を搭載させているので、装置内部のAC/DC変換器により制御電源(交流電力)を直流電力に変換することで、当該マイクロプロセッサ等の制御電源とする。
これ以外にも、試験用の蓄電池11a〜11n、試験用のPCS2および制御装置3の制御電源をとる構成は種々考えられるが、制御電源をとる構成は実施形態に制限されるものではない。
(第10実施形態)
図19を参照して第10実施形態を説明する。図19において図2と同じ構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
図19に示すように、第10実施形態は、変圧器4をタップ付き変圧器とした例である。タップ40は電圧のレベルを切り替え可能なものである。
この第10実施形態の場合、タップ40を選択して回路を接続することで巻線41の巻線比を切り替えることにより、PCS2に適した電圧レベルと被試験システムBの充放電の電圧レベルを調整(変換)する。
例えば、PCS2の交流電力が300V、被試験システムBの充放電電圧レベルが200Vの場合、変圧器4により300V→200V、逆の場合は300V←200Vで電圧をレベル変換する。
被試験システムBの充放電電圧のレベルが300Vの場合は変圧器4の巻線比(タップ)を切り替えることで、同じ変圧器4を介して300V→300Vで電力のやり取りが可能である。
また、このタップ数を増やすことで、被試験システム側の多様な充放電電圧レベルに一つの変圧器4で対応できる。例えば日本では配電系統で200Vが多いが、海外の配電系統では電圧レベルが異なる。なおタップ付きとせず、所定レベルの変換比で固定した変圧器を用いてもよいことは言うまでもない。
本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
また上記実施形態に示した制御装置3の各構成要素を、コンピュータのハードディスク装置などのストレージにインストールしたプログラムで実現してもよく、また上記プログラムを、コンピュータ読取可能な電子媒体:electronic mediaに記憶しておき、プログラムを電子媒体からコンピュータに読み取らせることで本発明の機能をコンピュータが実現するようにしてもよい。電子媒体としては、例えばCD−ROM等の記録媒体やフラッシュメモリ、リムーバブルメディア:Removable media等が含まれる。さらに、ネットワークを介して接続した異なるコンピュータに構成要素を分散して記憶し、各構成要素を機能させたコンピュータ間で通信することで実現してもよい。当然、クラウドコンピューティング等上で、制御装置3の構成要素のすべて、または一部を構成してもよい。