JP6104440B1 - 血液採取器及び血液収容器を含む血液採取器具 - Google Patents

Abstract

【課題】微量の試料を採取する場合でも、微量の試料をその後の検査に適した状態で採取できる血液採取器具を提供することを目的とする。【解決手段】本発明に係る血液採取器具は、毛細管現象により血液を吸引して保持する内部空間を備えた上部及び下部に開口部を有するピペットチップ形状の血液採取器と、前記血液採取器により採取された血液を収容可能な内壁及び底部が親水性処理された血液収容器と、血液収容器を密閉するための密閉蓋とを備える血液採取器具が提供される。係る血液採取器具においては、血液を内部空間に吸引し保持した前記血液採取器の下部開口部を、前記血液収容器の内壁又は底部に接触させると、血液が血液採取器具から血液収容器具へと容易に移動する。【選択図】 図５

Description

本発明は、微量な血液を採取するための、血液採取器及び血液収容器を含む血液採取器具に関する。

生体内における変調や疾患は、生体反応として体液、例えば、血液、尿、唾液等の成分の変化に表れることが知られている。そこで、体液中に含まれる成分を測定、分析することにより、体調の変化をモニターしたり、疾患を検出したりすることが行われている。
特に、血液成分を測定する血液検査は、病状などを調べるために有効な手段として、また健康管理のための手段として広く行われている。

血液の成分の測定の際には、必要な量の血液、特に末梢血を確実に採取することが求められる。そして採取した血液は、血液収容器中に移された後、所定の目的に応じて分析にかけられる。

採血器と採血用ボトルからなる採血キットが提案されている（特許文献１）。そこでは、採血器は、先端に配置された血液凝固防止液を含有した円柱状の一時吸液する吸液体と吸液体の後面を押して吸液体を分離する押圧体からなり、一方、採血用ボトルには薬液が入っている。そして、採血用ボトルに採血器を押し込んで採血器の押圧体を押すと採血器の先端から血液が薬液中に溶出するようになっている。しかしながら、採取した血液は薬液中に混合するため、採取血液の血漿を分離できないばかりか、血液中の特定の成分の量を正確に測定することができない。

また、スポイト筒と可撓性のキャップが連通している使い捨てピペットを用いた微量採血器が提案されている（特許文献２）。この採血器では、液体を一時吸液した後、圧縮すること或いは気体を吹き付けることによって吸液している液体を放出できるようになっている。

同様に、液体を吸引する吸引部と吸引部が吸引した体液を排出するための気体を通す通気路を有する本体部と、本体部と吸引部の間に設けられた阻止部とを備える体液採取器と、体液採取部により採取された体液を収容可能な体液収容器からなる、体液採取装置が提案されている（特許文献３）。ここでは、体液採取器の吸引部に吸引された体液は、本体部に接続された圧力発生部により発生させられた圧力により、吸引部から体液収容器へと移される。

採取した血液を用いた血液検査は、自動分析装置を用いて行うが、血液採取器を用いて採血した血液を血液収容器へと移すことが必要となる。
しかしながら、上記のような従来の採取装置では、吸引した体液を排出するために圧力を用いており、放出時にかかる力により溶血等の問題が生じる恐れがあり、且つ利便性を追求するのであれば、使用する容器自体で血液収容器へ血液を移すことが好ましい。

特開２００６−２８８６８０号公報 特開２００５−０１７２８１号公報 ＷＯ２０１５／０３４００９号公報

本発明は、上記の問題に鑑み、微量の試料を採取する場合でも、微量の試料をその後の検査に適した状態で採取できる利便性に優れた血液採取器具を提供することを目的とする。

本発明に係る血液採取器具は、毛細管現象により血液を吸引して保持する内部空間を備えた上部及び下部に開口部を有するピペットチップ形状の血液採取器と、前記血液採取器により採取された血液を収容可能な内壁及び底部が親水性処理された血液収容器と、血液収容器を密閉するための密閉蓋とを備える血液採取器具である。そして、血液を内部空間に吸引し保持した前記血液採取器の下部開口部を、前記血液収容器の内壁又は底部に接触させると、血液が血液採取器から血液収容器具へと容易に移動する。

本発明によれば、特別な吐出機構を用いることなく、血液を血液採取器から血液収容器へと容易に移すことができ、また、血液の吐出時に余分な力や圧力がかからないので、溶血等の問題も生じることなく採取した血液を血液収容器に収容できる。このような血液は、その後の血液分析に適したものである。

本発明にかかる血液採取器具の第一の態様の構成を示す図である。 本発明にかかる血液採取器具の血液採取器を用いて血液の採取を行う一つの態様の説明図である。 本発明の第一の態様の血液採取器具において、血液採取器から血液収容器への血液の移動を説明した図である。 本発明の第一の態様の血液採取器具において、血液採取器から血液収容器への血液の移動の別の様式を説明した図である。 本発明にかかる血液採取器具の第二の態様の構成を示す図である。

以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態にかかる血液採取器具を説明する。
（第一の態様）
本発明に係る血液採取器具の第一の態様は、
血液を吸引して保持する内部空間を備えた上部および下部に開口部を有するピペットチップ形状の血液採取器と、ここで、血液採取器の内部空間は、下部開口部および上部開口部が連絡し、少なくとも前記内部空間の一部は下部開口部から上部開口部に向かってテーパー形状を有し、そして、下部開口部を血液に接すると毛細管現象により血液を内部空間に吸引するように構成されている、
前記血液採取器により採取された血液を収容可能な血液収容器と、ここで、血液収容器は、前記血液採取器が挿入可能な空間を内部に有し、かつ、親水性処理された内壁及び底部を有する、
前記血液収容器を密閉するための密閉蓋と、
を備える血液採取器具であって、
血液を内部空間に吸引し保持した前記血液採取器の下部開口部を、前記血液収容器の内壁又は底部に接触させると、血液が血液採取器から血液収容器へと移動するように構成されている血液採取器具である。

図１は、本発明の第一の態様を示している。本発明の血液採取器具は、血液採取器１００と、血液収容器２００と、血液収容器を密閉するための密閉蓋３００より構成されている。

図２に示すように、血液採取器１００の下部開口部１１を血液１に接触させると、毛細管現象により血液は、血液採取器１００の内部空間内へと吸引される。吸引を助けるために、血液採取器を傾けると、より容易に血液の吸引ができる。図面には、血液の量を確認するための目盛り１２が示されているが、目盛りはつけてもつけなくてもよい。
血液の採取は、例えば、指先や耳たぶから末梢血を採取する場合は、指先や耳たぶに穿刺をした後、出てきた血液に血液採取器の下部開口部を接触させることにより毛細管現象や流体の流れによる陰圧によって血液採取器内へ血液が誘導され、血液の採取が可能である。

血液の採取においては、血液採取量には制限がなく、その後の目的に応じて血液量を可変する事ができる。本発明の血液採取器を用いると、微量の血液を任意の量（例えば、１０μL〜２００μLまでの任意の量）採取することが可能である。

図３は、吸引した血液を血液収容器へと移すために、血液を保持した血液採取器を血液収容器の内部へと入れた状態の図である。右図に示すように、血液採取器の下部開口部が、親水性処理された血液収容器の底部に接触すると、血液は、血液収容器へと容易に移動する。

なお、図４に示すように、血液を吸引保持した血液採取器の下部開口部を、親水性処理された血液収容器の側壁に接触させてもよい。係る場合にも、血液が重力と親水作用により、血液採取器から血液収容器に容易に移される。また、図４中の拡大図に示すように、血液採取器の先端口を斜めに加工しておくことも可能である。

本発明にかかる血液採取器具においては、血液採取器を用いて血液を採取した後、血液採取器の下部開口部を、血液収容器の内壁又は底部に接触させることにより、血液は、血液採取器から血液収容器へと容易に移動する。血液採取器の下部開口部を血液収容器の内壁又は底部に接触する前は、毛細管現象により吸引された血液は血液採取器内に保持されているが、親水性処理がなされた内壁又は底部に接触させると、血液は重力と親水作用で引き寄せられて、血液収容器へと移る。特に、血液の採取を容易にするために血液採取器の血液保持部の内壁が親水性処理されている場合には、血液収容器への血液の移動は重力のみでは不充分であり、血液収容器の内壁及び底部の親水性処理が必須となる。
本発明の器具を用いた血液収容器へ血液を移す工程においては、血液採取器内の血液を吐出させるための空気圧等の力は不要で、溶血等の問題が生じる心配がない。

（第二の態様）
本発明に係る血液採取器具の第二の態様は、第一の態様の血液採取器具において、血液収容器の底部に突起が形成されているものである。本発明の第二の態様の血液採取器具を用いて、血液を、血液採取器から血液収容器へと移す工程を図５に示す。突起部を含む底部は親水性処理がなされているので、血液採取器の下部開口部付近の血液が突起部と接触すると、血液が吐出し血液収容器へと容易に移される。

本発明の血液採取器具においては、血液が血液収容器へと移された後は、密閉蓋により血液収容器は密閉できる。その状態で、血液の輸送や保存が可能である。また、血液が血液収容器に収容された状態で、遠心分離をすることも可能であり、上清（血清又は血漿）と沈殿物（血球）に分離することができる。

血液収容器の内壁及び底部の親水性処理は、公知の方法を用いて行うことができ、これに限定されないが、例えば、エッチィング、フッ素処理、表面に凹凸や細かな傷の形成により、達成できる。例として、化学蒸着などの化学的処理により内壁表面に多孔質を形成すること、或いは、触媒を介して内壁表面上に親水性の官能基を導入することにより親水性を付与することができる。高分子化合物からなる材質、例えば、ポリプロピレンやポリカーボネイトの表面に親水性を付与する処理は公知であり、それらの方法を利用することができる。これに限定されないが、例えば、フッ素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いる方法や、榎本英彦、村田俊也、表面技術、Ｖｏｌ.５９, Ｎｏ.５, ｐ２８２−２８７（２００８）に記載の技術を用いることができる。

本発明の血液採取器１００内の採取後の血液を保持する部分（以下、本明細書では「血液保持部」という）は、その内径が連続的に大きくなっているピペットチップの試料吸引部の形状と同様の形状を形成している。血液保持部の容量は、好ましくは２００μL以下、より好ましくは１５０μＬ以下、さらに好ましくは１００μＬ以下である。

血液採取器１００の下端開口部の内径、及び血液保持部である胴体部分の内径は、毛細管現象の効果を得られる限り任意に定めることができる。血液採取器１００の下端開口部の内径は、これに限定されないが、例えば、０．１ｍｍ以上２．０ｍｍ未満、好ましくは０．３ｍｍ以上１．５ｍｍ未満、より好ましくは０．５ｍｍ以上１．０ｍｍ未満、さらに好ましくは０．７ｍｍ以上０．９mm未満が用いられる。これにより、毛細管現象により、下部開口部から血液を容易に採取できる。

血液採取器は、加工性・操作性等の点より、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン（ＡＢＳ）、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレートなどの高分子化合物の材質からなることが好ましい。

上記の例示した材質は水になじまない。それ故、溶液を吸引したのち吐出する目的のマイクロピペットのチップにおいては、吸引および吐出する動力を別途有しているため、チップ材質表面の疎水性は吸引した溶液を吐出する際に高い水切れを付与できる。しかしながら、毛細管現象を利用して血液を吸引する場合は、この性質は好ましくないため、本発明の器具における血液採取器においては、血液保持部はその内壁が親水性処理されていることが好ましい。内壁が親水性処理されていないと、血液を採取する際に血液がスムーズに流れ込み難いという問題を生じる。本発明の血液採取器においては、毛細管現象と内壁の親水性処理の効果が組み合わされて、目的量の血液を容易に採取することができる。

血液収容器の内壁及び底部の親水性処理は、公知の方法を用いて行うことができ、これに限定されないが、例えば、エッチィング、フッ素処理、表面に凹凸や細かな傷の形成により、達成できる。例として、化学蒸着などの化学的処理により内壁表面に多孔質を形成すること、或いは、触媒を介して内壁表面上に親水性の官能基を導入することにより親水性を付与することができる。高分子化合物からなる材質、例えば、ポリプロピレンやポリカーボネイトの表面に親水性を付与する処理は公知であり、それらの方法を利用することができる。これに限定されないが、例えば、フッ素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いる方法や、榎本英彦、村田俊也、表面技術、Ｖｏｌ.５９, Ｎｏ.５, ｐ２８２−２８７（２００８）に記載の技術を用いることができる。

血液収容器２００は、血液採取器１００が挿入できその下部開口部を収容器の壁面又は底部に接触可能であればその形状には制限がなく、材質についても制限がない。操作者による試料回収や把持性や輸送等を考慮すると透明度が高い硬質材料である事が好ましい。血液収容器２００の密閉蓋３００は、収容器を密閉できるものであれば、形状および材質に制限はないが、好ましくは、遠心分離時の溶出や内部試料の乾燥を防止できるものがよい。

なお、血液採取器で採取する血液の量は、目的とする検査、測定に応じて変更可能であり、それに応じて試料採取部の長さおよび径を調整できる。例えば、これに限定されないが、採取する試料の量は、１０μL〜３００μL、好ましくは１０μＬ〜２００μＬ、さらに好ましくは５０μＬ〜１００μＬの範囲で調整することができる。
また、血液採取器に、特定の量が採取されたことを示すガイド線１２を備えることにより、特定の量の血液の採取を正確に行うことができる。

本発明の血液採取器具を用いると、指先や耳たぶ等から採取した微量の末梢血液であっても、血液分析に適した良好な血液を調製することができる。このような血液は、希釈して用いることにより、従来の採血管等で採血した上腕静脈血の分析に用いている慣用のプロトコールや既存の分析装置で分析できる。すなわち、指先や耳たぶ等から採取した微量の末梢血液を用いて、従来と同様の血液分析ができる。
例えば、本発明の血液採取分器具を用いて採取した血液は、血液検査で通常用いられている、一般の生化学項目および／または免疫項目の検査、いわゆる、血液生化学検査に加え、癌マーカーやアレルギーのような特殊検査項目にも用いることができる。

（血液収容器の親水性処理例）
加工例１：エッチングによる試料採取器具の内壁及び底部の親水性処理
ＡＢＳで成型された血液収容器を、六化クロムを含有する溶液に１２分間浸漬し、ＡＢＳ表面のブタジエンを溶解させ、表面のエッチングホールを作製することにより微細な多孔質を形成させた。

加工例２：フッ素ガスと酸素ガスの混合ガスによる血液収容器の内壁及び底部の親水性処理
ポリカーボネイトで成型された血液収容器において、フッ素ガス処理による親水性処理を、特開２０１０−１５０４６０号公報を基礎とし高松帝酸株式会社（香川県高松市）に委託し、フッ素ガス分圧１．３３Ｐａ、酸素ガス分圧９３１００Ｐａ、処理温度２５℃、処理時間６００秒の条件のフッ素ガスと酸素ガスの混合ガスを用いて表面改質処理を行った。
なお本フッ素処理においては、フッ素ガスと酸素の高反応性を利用して、カルボキシル基や水酸基等の親水性を発現させることができる。

加工例３：界面活性剤塗布による血液収容器の内壁及び底部の親水性処理
図５に示される本発明の血液採取器具を用いて以下を行った。
ポリカーボネイトで成型され且つ突起部を有する血液収容器において、０．２％（ｗ／ｗ）ポリオキシエチレンソルビタンモノラウラート水溶液にて内壁及び底部を３０秒間浸漬したのち、純水で洗浄、よく乾燥させたことにより、界面活性剤塗布による親水性処理を行った。
着色溶液５０μｌを吸引している血液採取器先端を、血液収納器の突起部に触れると直ちに血液収納器に溶液が移行した。一方、上記親水処理を行っていない血液収納器に対して同様の操作を行っても、溶液が移行することはなかった。

１．血液
１１．下部開口部
１２．ガイド線
２１．突起部
１００．血液採取器
２００．血液収容器
３００．密閉蓋

Claims (5)

1. 血液を吸引して保持する内部空間を備えた上部および下部に開口部を有するピペットチップ形状の血液採取器と、ここで、血液採取器の内部空間は、下部開口部および上部開口部が連絡し、親水性処理された内壁を有する血液保持部を構成する前記内部空間の下部は下部開口部先端から上部開口部に向かってテーパー形状を有し、そして、下部開口部を血液に接すると毛細管現象により血液を内部空間に吸引するように構成されている、
   前記血液採取器により採取された血液を収容可能な血液収容器と、ここで、血液収容器は、前記血液採取器が挿入可能な空間を内部に有し、かつ、親水性処理された内壁及び底部を有する、
   前記血液収容器を密閉するための密閉蓋と、
   を備える血液採取器具であって、
   前記血液収容器の底部に、突起部が設けられ、前記血液保持部の保持された血液を前記突起部に接触させて前記血液収容器内に吐出する血液採取器具。
2. 血液を吸引して保持する内部空間を備えた上部および下部に開口部を有するピペットチップ形状の血液採取器と、ここで、血液採取器の内部空間は、下部開口部および上部開口部が連絡し、親水性処理された内壁を有する血液保持部を構成する前記内部空間の下部は下部開口部先端から上部開口部に向かってテーパー形状を有し、そして、下部開口部を血液に接すると毛細管現象により血液を内部空間に吸引するように構成されている、
   前記血液採取器により採取された血液を収容可能な血液収容器と、ここで、血液収容器は、前記血液採取器が挿入可能な空間を内部に有し、かつ、親水性処理された内壁及び底部を有する、
   前記血液収容器を密閉するための密閉蓋と、
   を備える血液採取器具であって、
   血液が前記血液保持部に保持された状態で前記血液採取器の下部開口部を、前記血液収容器の内壁又は底部に接触させた場合、前記血液採血器の毛細管現象に基づく血液の吸引力（Ｘ）と、血液の重力と血液収容器の親水性処理に基づく血液吐出力（Ｙ）が以下の関係：Ｘ＜Ｙ、となるように構成されている血液採取器具であり、
   前記血液収容器の底部に、突起部が設けられ、前記血液保持部の保持された血液を前記突起部に接触させて前記血液収容器内に吐出する血液採取器具。
3. 前記血液採取器または前記血液収容器の親水性処理が、エッチング、フッ素加工によりなされている請求項１又は２に記載の血液採取器具。
4. 前記血液収容器の親水性処理が、血液収容器の内壁及び底面の表面に凹凸又は小さな傷を形成することによりなされている請求項１又は２に記載の血液採取器具。
5. 前記下部開口部が、内径が、０．５ｍｍ以上１．０ｍｍ未満の開口部である請求項１〜４のいずれかひとつに記載の血液採取器具。

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