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JP6172500B2 - モータ制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、シンクロナスリラクタンスモータを制御するモータ制御装置に関する。
電磁エネルギーの位置に対する変化によって発生するリラクタンストルクのみを利用して、ロータを回転させるリラクタンスモータが知られている。リラクタンスモータには、ステータおよびロータが突極部を有するスイッチトリラクタンスモータ(SRM:Switched Reluctance Motor)と、ステータがブラシレスモータと同様の構造のシンクロナスリラクタンスモータ(SynRM:Synchronous Reluctance Motor)とがある。
シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)は、ステータおよびロータのうち、ロータのみに突極部を有している。SynRMでは、ロータの突極部により、磁束の流れやすい突極部の方向(以下、「d軸方向」という)と磁束が流れにくい非突極部の方向(以下、「q軸方向」という)とがある。このため、d軸方向のインダクタンス(以下、「d軸インダクタンス」という)とq軸方向のインダクタンス(以下、「q軸インダクタンス」という)の差によりリラクタンストルクが発生し、このリラクタンストルクによってロータが回転する。
特開2002-305900号公報
長谷川 勝(中部大学)、道木 慎二(名古屋大学)、佐竹 明善(オークマ)、王 道洪(岐阜大学)、「永久磁石電動機・リラクタンスモータの駆動回路技術とドライブ制御技術 −6.リラクタンスモータ制御技術− 」、平成16年電気学会産業応用部門大会論文集、I−119〜I−124(2004)
SynRMのロータは磁石を有していないので、SynRMのロータを単に外力によって回転させただけでは誘起電圧は発生しない。このため、SynRMでは、ブラシレスモータと同様な方法で電力を取り出すことはできない。
この発明は、シンクロナスリラクタンスモータから電力を取り出すことが可能となるモータ制御装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の発明は、シンクロナスリラクタンスモータ(3)を制御するモータ制御装置(4)であって、制御モードとして、前記モータを回転駆動させるための駆動モードと、前記モータを外力によって回転させ、前記モータで発生した電力を回生する回生モードとがあり、前記回生モード時には、前記モータのロータ(100)を励磁するための電圧が前記モータに印加され、前記電圧は前記モータによって発生される誘起電圧よりも小さく設定される、モータ制御装置である。なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表すが、むろん、この発明の範囲は当該実施形態に限定されない。以下、この項において同じ。
この発明では、回生モード時には、シンクロナスリラクタンスモータが外力によって回転されるとともに、ロータを励磁するための電圧がシンクロナスリラクタンスモータに印加される。これにより、ロータが励磁されるので、ロータの回転により誘起電力が発生する。これにより、シンクロナスリラクタンスモータから電力を取り出すことが可能となる。
請求項2記載の発明は、前記モータに流れるモータ電流の指令値である電流指令値を設定する電流指令値設定手段(41)を含み、前記電流指令値設定手段は、前記制御モードが回生モードに変更されたときには、電流指令値を零に設定した後、電流指令値を予め設定された値に設定する手段(41,S1,S2)と、回生モード時において、前記駆動回路の電源と前記駆動回路との間に流れる電流の方向を監視し、前記電流の方向が前記電源側から前記駆動回路側に流れる方向となったときには、電流指令値を所定値だけ低下させる手段(S3,S4)とを含む、請求項1に記載のモータ制御装置である。
この構成では、回生モード時において、駆動回路32の出力電圧が電動モータ3によって発生される誘起電圧より大きくなった場合には、電流指令値が低下されるので、駆動回路32の出力電圧を電動モータ3によって発生される誘起電圧よりも小さくすることができる。
請求項3記載の発明は、制御モードとして、前記駆動モードと、前記回生モードと、前記モータが外力によって回転されたとしても誘起電圧を発生させない無負荷回転モードとがあり、前記無負荷回転モード時には、前記モータへの電力の供給が停止される、請求項1または2に記載のモータ制御装置である。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用されたエネルギー蓄積装の概略構成を示す模式図である。 図2は、電動モータの構成を説明するための図解図である。 図3は、駆動回路の構成を示す電気回路図である。 図4は、複数の電機子電流I毎に取得した電流位相角βに対するモータトルクTの特性データの一例を示すグラフである。 図5は、各電機子電流Iに対してモータトルクTが最大となる電流位相角βの実測データと、各電機子電流IとモータトルクTが最大となる電流位相角βとの関係を近似的に表した直線とを示すグラフである。 図6は、回生モード時の電流指令値設定部の動作を説明するためのフローチャートである。
以下では、この発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ制御装置が適用されたエネルギー蓄積装置の概略構成を示す模式図である。
エネルギー蓄積装置1は、電気エネルギーをフライホイールに機械エネルギーとして変換・蓄積し、停電時等の電気エネルギー必要時に、フライホイールに蓄積された機械エネルギーを電気エネルギーに変換して電源に供給する装置である。エネルギー蓄積装置1は、フライホイール2と、フライホイール2を回転させるためのシンクロナスリラクタンスモータ(以下、「電動モータ3」という)と、電動モータ3を制御するためのモータ制御装置4とを含む。フライホイール2の回転軸は、電動モータ3の出力軸に図示しないカップリングを介して連結されている。
モータ制御装置4による電動モータ3の制御モードには、駆動モードと、無負荷回転モードと、回生モードとがある。駆動モードとは、電動モータ3を駆動してフライホイール2を回転させるモードである。無負荷回転モードとは、電動モータ3への電力の供給を停止して、フライホール2をその慣性力によって回転させるモードである。回生モードとは、電動モータ3をフライホイール2の慣性によって回転させ、フライホイールに蓄積された機械エネルギーを電気エネルギーに変換して電源に供給するモードである。
通常時においては、モータ制御装置4は、フライホイール2が所定の回転速度以上の速度で回転し続けるように、駆動モードによる制御と無負荷回転モードによる制御とを間隔をおいて交互に行う。そして、停電時等の電気エネルギー必要時には、モータ制御装置4は、回生モードで電動モータ3を制御する。
電動モータ3は、前述したようにシンクロナスリラクタンスモータであり、図2に図解的に示すように、周方向に間隔をおいて配置された複数の突極部を有するロータ100と、電機子巻線を有するステータ105とを備えている。電機子巻線は、U相のステータ巻線101、V相のステータ巻線102およびW相のステータ巻線103が星型結線されることにより構成されている。
各相のステータ巻線101,102,103の方向にU軸、V軸およびW軸をとった三相固定座標(UVW座標系)が定義される。また、ロータ100の回転中心側から外周部へ磁束の流れやすい突極部の方向にd軸方向をとり、ロータ100の回転中心側から外周部へ磁束が流れにくい非突極部の方向にq軸方向をとった二相回転座標系(dq座標系。実回転座標系)が定義される。dq座標系は、ロータ100の回転角(ロータ回転角)θに従う実回転座標系である。ロータ回転角θ(電気角)は、この実施形態では、隣接する2つの突起部(d軸)のうちの基準となる一方の突極部(d軸)のU軸から反時計回りの回転角として定義される。基準となる前記一方の突極部の方向を+d軸方向といい、それに隣接する他方の突極部の方向を−d軸方向ということにする。+d軸に対して電気角で+90度回転した軸を+q軸とい、+d軸に対して電気角で−90度回転した軸を−q軸ということにする。ロータ100(突極部)に生じる磁極(N極およびS極)は、dq座標系における電流ベクトルIの方向によって決定される。ロータ回転角θを用いることによって、UVW座標系とdq座標系との間での座標変換が行われる(たとえば、特開2009−137323号公報の式(1),(2)参照)。
図2において、Iは、回転磁界をつくるための電流ベクトル(電機子電流ベクトル)である。βは電流位相角であり、電機子電流ベクトルIとd軸との位相差である。
図1に戻り、モータ制御装置4は、マイクロコンピュータ31と、このマイクロコンピュータ31によって制御され、電動モータ3に電力を供給する駆動回路(インバータ回路)32と、電源としての蓄電池7と駆動回路32とを接続する接続線に流れる電流を検出する駆動電流検出部33と、電動モータ3の各相のステータ巻線101,102,103に流れる電流を検出する相電流検出部34とを備えている。駆動回路32と電動モータ3とを接続する接続線には、電流センサ6(図3に示す3つの電流センサ6,6,6を包括的に表したもの)が設けられている。
駆動回路32は、図3に示すように、三相ブリッジインバータ回路である。この駆動回路32では、電動モータ3のU相に対応した一対のFET(電界効果トランジスタ)11UH,11ULの直列回路と、V相に対応した一対のFET11VH,11VLの直列回路と、W相に対応した一対のFET11WH,11WLの直列回路とが、蓄電池(電源)7と接地8との間に並列に接続されている。また、各FET11UH〜11WLには、それぞれ回生ダイオード12UH〜12WLが、接地8側から蓄電池7側に順方向電流が流れるような向きで、並列に接続されている。
以下において、各相の一対のFETのうち、電源側のものを「ハイサイドFET」といい、接地側のものを「ローサイドFET」という場合がある。また、6つのFET11UH〜11WLを総称するときには、「FET11」ということにする。
電動モータ3のU相のステータ巻線101は、U相に対応した一対のFET11UH,11ULの間の接続点に接続されている。電動モータ3のV相のステータ巻線102は、V相に対応した一対のFET11VH,11VLの間の接続点に接続されている。電動モータ3のW相のステータ巻線103は、W相に対応した一対のFET11WH,11WLの間の接続点に接続されている。各相のステータ巻線101,102,103と駆動回路32とを接続するための各接続線には、各相の相電流i,i,iを検出するための電流センサ6,6,6が設けられている。電動モータ3側には、ロータの回転角(電気角)を検出するためのレゾルバ等の回転角センサ5が設けられている。電流センサ6,6,6の出力信号および回転角センサ5の出力信号は、モータ制御装置4に入力する。
図1に戻り、相電流検出部34は、電流センサ6,6,6の出力信号に基づいて、電動モータ3の各相のステータ巻線に流れる相電流i,i,i(以下、総称するときには「三相検出電流i,i,i」という)を検出する。これらは、UVW座標系における各座標軸方向の電流値である。
マイクロコンピュータ31は、CPUおよびメモリ(ROM,RΑMなど)を備えており、所定のプログラムを実行することによって、複数の機能処理部として機能するようになっている。この複数の機能処理部には、電流指令値設定部41と、電流位相角演算部42と、d軸電流指令値演算部43と、q軸電流指令値演算部44と、d軸電流偏差演算部45と、q軸電流偏差演算部46と、d軸PI(比例積分)制御部47と、q軸PI(比例積分)制御部48と、d軸指示電圧生成部49と、q軸指示電圧生成部50と、二相/三相座標変換部51と、PWM制御部52と、回転角演算部53と、三相/二相座標変換部54とが含まれている。
この実施形態では、電動モータ3の制御モードを表すモード指令信号は、外部からモータ制御装置4に入力されるようになっている。モータ制御装置4に入力されたモード指令信号は、電流指令値設定部41に与えられる。モード指令信号には、電動モータ3の電機子電流の大きさの指令値である電流指令値I が含まれる場合がある。
具体的には、駆動モードを表すモード指令信号は、駆動モードを表すコードと、予め設定された駆動モード時の電流指令値I (>0)とからなる。駆動モードを表すコードは、たとえば、プラスの符号である。この場合には、駆動モードを表すモード指令信号は、“+A”のように、プラスの符号と電流指令値I を表す数字A(>0)とから構成される。
無負荷回転モードを表すモード指令信号は、無負荷回転モードを表すコードからなる。無負荷回転モードを表すコードは、たとえば、0である。
回生モードを表すモード指令信号は、回生モード表すコードと、予め設定された回生モード時の電流指令値I (>0)とを含む。回生モードを表すコードは、たとえば、マイナスの符号である。この場合には、回生モードを表すモード指令信号は、“−B”のように、マイナスの符号と電流指令値I を表す数字B(>0)とから構成される。
電流指令値設定部41は、電動モータ3の電機子電流の大きさの指令値である電流指令値I を設定する。具体的には、モード指令信号によって示される制御モードが駆動モードである場合には、電流指令値設定部41は、モード指令信号に含まれている電流指令値Aを、電流指令値I として設定する。
モード指令信号によって示される制御モードが無負荷回転モードである場合には、電流指令値設定部41は、電流指令値I を零に設定する。また、モード指令信号によって示される制御モードが無負荷回転モードである場合には、電流指令値設定部41は、駆動回路32内の全てのFET11をオフにさせるための指令(以下「全FETオフ指令」という)を、PWM制御部52に与える。後述するように、PWM制御部52は、電流指令値設定部41から全FETオフ指令が与えられている場合には、駆動回路32内の全てのFET11をオフにさせる。
モード指令信号によって示される制御モードが回生モードである場合には、電流指令値設定部41は、電流指令値I を一旦零に設定し、その後に、電流指令値I をモード指令信号に含まれている電流指令値Bに設定する。そして、電流指令値設定部41は、駆動電流検出部33によって検出される駆動電流Iを監視し、検出された駆動電流の方向が、蓄電池7側から電動モータ3側に向かって流れる方向となった場合には、電流指令値I を下げる。この例では、駆動電流検出部33によって検出される駆動電流Iは、蓄電池7側から電動モータ3側に向かって流れている場合には正の値となり、電動モータ3側から蓄電池7側に向かって流れている場合には負の値となるものとする。
電流指令値設定部41によって設定された電流指令値I は、電流位相角演算部42に与えられるとともに、d軸電流指令値演算部43およびq軸電流指令値演算部44に与えられる。
電流位相角演算部42は、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値I と予め設定された電流位相角演算式とに基づいて、当該電流指令値I に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角β(電気角)[deg]を演算する。電流位相角演算式の作成方法について説明する。
電動モータ3を高効率で駆動するためには、電機子電流に対するモータトルクの比が大きくなるように電動モータ3を制御すればよい。
極対数がPであるシンクロナスリラクタンスモータにおけるモータトルクTは、次式(1)で表される。
T=P・(L−L)・i・i …(1)
はd軸インダクタンス[H]であり、Lはq軸インダクタンス[H]である。また、iはd軸電流[Α]であり、iはq軸電流[Α]である。
電機子電流の大きさをI[Α]とし、電流位相差をβ[deg]とすると、i=I・sinβ,i=I・cosβとなるので、モータトルクTは、次式(2)で表される。なお、電流位相差βは、回転磁界をつくるための電流ベクトル(電機子電流ベクトル)とd軸との位相差である。
T=(1/2)・P・(L−L)・I sin2β …(2)
したがって、d軸インダクタンスLおよびq軸インダクタンスLが電流位相角βによって変動しなければ、電流位相角βが45[deg]のときにモータトルクTは最大となる。しかしながら、SynRMでは、d軸インダクタンスLおよびq軸インダクタンスLがロータコアの磁気飽和の影響を受けて変動するため、モータトルクTは電流位相角βが45[deg]のときに必ずしも最大にならない。
そこで、この実施形態では、電動モータ3に対して予め実験を行うことにより、使用する電機子電流I(電流指令値I )の範囲において、複数の電機子電流I毎に電流位相角βに対するモータトルクTの特性データを取得する。
図4は、複数の電機子電流I毎に取得した電流位相角βに対するモータトルクTの特性データの一例を示すグラフである。図4の特性データは、前記非特許文献1に掲載のデータを転用したものである。図4では、横軸に電流位相角βをとり、縦軸にモータトルクTをとり、各電機子電流Iの電流位相角βに対するモータトルクTの特性を、それぞれ曲線で表している。
図4のグラフにおいて、各電機子電流Iに対応する電流位相角−モータトルク特性曲線上の最大トルク値を結ぶ曲線を直線近似することにより、電機子電流Iとその電機子電流Iに対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βとの関係を表す近似式を求める。具体的には、次式(3)に基づいて、電機子電流Iと電流位相角βとの関係を表す近似式を求める。なお、電機子電流Iが零のときにモータトルクが最大となる電流位相角βは45度になるものとする。
β={(βmax−βmin)/Iamax}・I+βmin …(3)
amaxは、電機子電流Iの最大値であり、この例では、Iamax=50[Α]である。βmaxは、電機子電流Iが最大値Iamaxである場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmax=66[deg]であるとする。βminは、電機子電流Iが最小値(零)である場合に、モータトルクTが最大値となる電流位相角βであり、この例では、βmin=45[deg]であるとする。
前記式(3)に、Iamax=50[Α]、βmax=66[deg]およびβmin=45[deg]を代入すると、次式(4)で表されるような近似式が得られる。
β=(21/50)・I+45 …(4)
図5の折れ線aは、各電機子電流Iに対してモータトルクTが最大となる電流位相角βの実測データを示すグラフである。図5の直線bは、前記式(4)で表される近似直線を示している。
前記近似式(4)内のIを電流指令値I に置き換えることにより、次式(5)で示されるように、電流指令値I から電流位相角βを演算するための演算式(電流位相角演算式)が得られる。
β=(21/50)・I +45 …(5)
電流位相角演算部42には、前述のようにして求められた電流位相角演算式(例えば前記式(5))が予め設定されている。電流位相角演算部42は、予め設定されている電流位相角演算式と、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値I とに基づいて、電流指令値I に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βを演算する。電流位相角演算部42によって演算された電流位相角βは、d軸電流指令値演算部43およびq軸電流指令値演算部44に与えられる。
d軸電流指令値演算部43は、電流指令値設定部41から与えられた電機子電流指令値I と電流位相角演算部42から与えられた電流位相角βとを用い、次式(6)に基づいてd軸電流の指令値i を演算する。
=I ・cosβ …(6)
q軸電流指令値生成部44は、電流指令値設定部41から与えられた電機子電流指令値I と電流位相角演算部42から与えられた電流位相角βとを用い、次式(7)に基づいてq軸電流の指令値i を演算する。
=I ・sinβ …(7)
d軸電流指令値i およびq軸電流指令値i を総称して、「二相指示電流i ,i 」という場合がある。
回転角演算部53は、回転角センサ25の出力信号に基づいて、電動モータ3のロータの回転角(ロータ回転角)θを演算する。
相電流検出部34によって検出された三相検出電流i,i,iは、三相/二相座標変換部54に与えられる。三相/二相座標変換部54は、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θを用いて、三相検出電流i,i,iをdq座標上でのd軸電流iおよびq軸電流i(以下、総称するときには「二相検出電流i,i」という。)に変換する。三相/二相座標変換部54によって得られたd軸電流iは、d軸電流偏差演算部45に与えられる。三相/二相座標変換部54によって得られたq軸電流iは、q軸電流偏差演算部46に与えられる。
d軸電流偏差演算部45は、d軸電流指令値i に対するd軸電流iの偏差を演算する。d軸電流偏差演算部45によって演算された電流偏差は、d軸PI制御部47に与えられて、PI演算処理を受ける。d軸指示電圧生成部49は、d軸PI制御部47の演算結果に応じて、d軸指示電圧v を生成する。
q軸電流偏差演算部46は、q軸電流指令値i に対するq軸電流iの偏差を演算する。q軸電流偏差演算部46によって演算された電流偏差は、q軸PI制御部48に与えられて、PI演算処理を受ける。q軸指示電圧生成部50は、q軸PI制御部48の演算結果に応じて、q軸指示電圧v を生成する。以下、d軸指示電圧v およびq軸指示電圧v を総称するときには「二相指示電圧v ,v 」という。
二相指示電圧v ,v は、二相/三相座標変換部51に与えられる。二相/三相座標変換部51は、回転角演算部53によって演算されたロータ回転角θを用いて、d軸指示電圧v およびq軸指示電圧v を、UVW座標系の指示電圧、すなわち、U相,V相およびW相の指示電圧v ,v ,v (以下、総称するときには「三相指示電圧v ,v ,v 」という。)に変換する。
PWM制御部52は、電流指令値設定部41から全FETオフ指令が与えられていない場合には、つまり、制御モードが駆動モードまたは回生モードである場合には、U相指示電圧v 、V相指示電圧v およびW相指示電圧v に基づいてU相PWM制御信号、V相PWM制御信号およびW相PWM制御信号を生成し、駆動回路32に供給する。駆動回路32内の各FET11は、PWM制御部52から与えられるPWM制御信号によって制御される。これにより、三相指示電圧v ,v ,v に相当する電圧が電動モータ3の各相のステータ巻線に印加されることになる。この実施形態では、制御モードが駆動モードまたは回生モードである場合には、駆動回路32によって正弦波状の駆動電圧(正弦波電圧)が生成される。
電流指令値設定部41から全FETオフ指令が与えられている場合には、つまり、制御モードが無負荷回転モードである場合には、PWM制御部52は、駆動回路32内の全てのFET11を常時オフ状態にさせる。つまり、電動モータ3への電力の供給が停止(禁止)される。これにより、駆動回路32の出力電圧は零となるため、電動モータ3はフライホイール2の慣性力よって回転されることになる。電動モータ3のロータは磁石を有していないので、無負荷回転モード時には、誘起電圧が発生しない。このため、回生電流が流れないので、電動モータ3は負荷にならない。これにより、フライホイール2の慣性力が低下しにくくなる。
以下、回生モード時の動作について詳しく説明する。
図6は、回生モード時の電流指令値設定部の動作を説明するためのフローチャートである。
モード指令信号によって示される制御モードが、駆動モードまたは無負荷回転モードから回生モードに変化したときには、電流指令値設定部41は、まず、電流指令値I を零に設定する(ステップS1)。これにより、PWM制御部52からは、モータ電流が零となるような、PWM信号が生成されるようになる。つまり、PWM制御部52からは、振幅が零の正弦波電圧が生成されるようになる。より具体的には、PWM制御部52からは、各FETに対して、デューティ比が50%のPWM信号(50%デューティのPWM信号)が生成されるようになる。
一定時間経過後に、電流指令値設定部41は、電流指令値I をモード指令信号に含まれている電流指令値Bに設定する(ステップS2)。この電流指令値Bは、電動モータ3のロータ100を励磁するための電圧を駆動回路32から発生させるための指令値である。ただし、前記電流指令値Bは、駆動回路32の出力電圧が電動モータ3によって発生される誘起電圧よりも小さくなるように設定されている。
これにより、PWM制御部52からは、モータ電流が電流指令値Bに応じた電流となるような、PWM信号が生成される。これにより、駆動回路32から、電動モータ3のロータ100を励磁するための正弦波電圧が出力される。
この後、電流指令値設定部41は、駆動電流検出部33によって検出される駆動電流Iが、零より小さいか否かを判別する(ステップS3)。つまり、電流指令値設定部41は、駆動電流Iが電動モータ3側から蓄電池7側に向かって流れているか否かを判別する。駆動電流Iが零より小さい場合には(ステップS3:YES)、電流指令値設定部41は、回生電流が流れていると判断し、ステップS5に移行する。
一方、前記ステップS3において、駆動電流Iが零以上の場合には(ステップS3:NO)、電流指令値設定部41は、駆動回路32の出力電圧が電動モータ3によって発生される誘起電圧以上になっていると判断し、電流指令値I を所定値γ(>0)だけ下げる(ステップS4)。これにより、駆動回路32の出力電圧を電動モータ3によって発生される誘起電圧よりも小さくすることができる。この後、ステップS5に移行する。
ステップS5では、電流指令値設定部41は、制御モードが回生モード以外の制御モードに変更されたか否かを判別する。制御モードが回生モード以外の制御モードに変更されていなければ(ステップS5:NO)、電流指令値設定部41は、ステップS3に戻る。一方、制御モードが回生モード以外の制御モードに変更されていれば(ステップS5:YES)、電流指令値設定部41は今回の回生モードに基づく処理を終了する。この場合には、電流指令値設定部41は、変更後の制御モードに応じた処理を行うことになる。
前記実施形態によれば、回生モード時には、電動モータ3のロータ100を励磁するための電圧が電動モータ3に印加される。これにより、電動モータ3のロータ100が磁化される。このため、フライホイール2の慣性力によってロータ100が回転されることにより、誘起電圧が発生する。これにより、電動モータ3から電力を取り出すことができるようになる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、前述の実施形態では、モード指令信号によって示される制御モードが、駆動モードまたは無負荷回転モードから回生モードに変更されたときには、電流指令値設定部41は、電流指令値I を一旦零に設定し、その後に、電流指令値I をモード指令信号に含まれている電流指令値Bに設定している。しかし、制御モードが、駆動モードまたは無負荷回転モードから回生モードに変更されたときには、電流指令値設定部41は、電流指令値I を一旦零に設定し、その後に、電流指令値I をモード指令信号に含まれている電流指令値Bまで徐々に大きくするようにしてもよい。
また、電流位相角演算部42は、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値I と、予め設定された電流位相角演算式(例えば式(5)参照)とに基づいて、当該電流指令値I に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βを演算している。しかし、電流位相角演算部42は、前記電流位相角演算式によって表される電流指令値I と電流位相角βとの関係を記憶したマップと、電流指令値設定部41から与えられた電流指令値I とに基づいて、当該電流指令値I に対してモータトルクが最大値に近い値となる電流位相角βを演算してもよい。
また、前述の実施形態では、前記式(3)に基づいて、各電機子電流Iに対応する電流位相角−モータトルク特性曲線上の最大トルク値を結ぶ曲線を直線近似し、得られた近似式に基づいて電流位相角演算式を求めている。しかし、最小二乗法等の他の方法によって、各電機子電流Iに対応する電流位相角−モータトルク特性曲線上の最大トルク値を結ぶ曲線を直線近似し、得られた近似式に基づいて電流位相角演算式を求めるようにしてもよい。さらに、d軸電流指令値演算部43およびq軸電流指令値演算部44において、d軸電流指令値およびq軸電流指令値を演算するために使用される電流位相角βを45[deg]に固定してもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1…エネルギー蓄積装置、2…フライホイール、3…電動モータ、4…モータ制御装置、7…蓄電池、31…マイクロコンピュータ、41…電流指令値設定部、52…PWM制御部、32…駆動回路、100…ロータ、FET11UH〜11WL…FET

Claims (3)

  1. シンクロナスリラクタンスモータを制御するモータ制御装置であって、
    制御モードとして、前記モータを回転駆動させるための駆動モードと、前記モータを外力によって回転させ、前記モータで発生した電力を回生する回生モードとがあり、
    前記回生モード時には、前記モータのロータを励磁するための電圧が前記モータに印加され、前記電圧は前記モータによって発生される誘起電圧よりも小さく設定される、モータ制御装置。
  2. 前記モータに流れるモータ電流の指令値である電流指令値を設定する電流指令値設定手段を含み、
    前記電流指令値設定手段は、
    前記制御モードが回生モードに変更されたときには、電流指令値を零に設定した後、電流指令値を予め設定された値に設定する手段と、
    回生モード時において、前記駆動回路の電源と前記駆動回路との間に流れる電流の方向を監視し、前記電流の方向が前記電源側から前記駆動回路側に流れる方向となったときには、電流指令値を所定値だけ低下させる手段とを含む、請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 制御モードとして、前記駆動モードと、前記回生モードと、前記モータが外力によって回転されたとしても誘起電圧を発生させない無負荷回転モードとがあり、前記無負荷回転モード時には、前記モータへの電力の供給が停止される、請求項1または2に記載のモータ制御装置。
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