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JP6159268B2 - イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有するフィルムコーティング製剤 - Google Patents

イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有するフィルムコーティング製剤 Download PDF

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Description

本発明は、安定性に優れたフィルムコーティング製剤に関する。
総合感冒薬等の一般用医薬品は、複数の有効成分が配合されるため、製剤中に添加した成分間の配合変化が問題となる場合がある。例えば、解熱鎮痛剤や総合感冒薬に配合される非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のイブプロフェンは、昇華性を持つ苦味成分であり、融点が75 〜 77℃ と低いことから、他剤との配合による融点降下による湿潤等によって、有効成分の含量低下や外観変化等を引き起こすことが報告されている(特許文献1)。特にイブプロフェンとトラネキサム酸を含有する固形製剤は、常温保存では長期間に安定であるが、高温保存では製剤が膨張して、ひび割れなどが生じることが知られている(特許文献2)。
イブプロフェンとトラネキサム酸を含有する固形製剤において、係る配合変化を回避し、安定な製剤を得る方法として、イブプロフェンを含む顆粒とトラネキサム酸を含む顆粒を顆粒分けして多顆粒化製剤とする方法や、顆粒にコーティングする方法が知られている。しかしながら、多顆粒製剤においてもイブプロフェンとの接触を完全に回避することは困難である。また、顆粒コーティング法は均一にコーティングを施す製造難度が高く、また製造コストが高い問題点があった。
一方、イブプロフェンとトラネキサム酸含有の固形製剤において、製剤の膨張を直接的に解決する手段として、製剤全体をフィルムコーティング等で被覆して製剤の膨張を押え込むことが考えられる。しかしながら、膨張の程度が大きいことから、一般的なフィルムコーティング基材のヒプロメロースを用いた場合は膨張を抑えられないばかりか、フィルムコーティング層の割れも認められた。また、ポリエチレングリコール等の可塑剤等を配合した水溶性のフィルムコーティングを施した場合は、膨張によるフィルムコート層の割れや、素錠のひび割れ等の外観変化は改善できたが、素錠内部の配合変化で生じた湿潤部分のフィルムコーティング皮膜内へのしみ出し、イブプロフェンの昇華による瓶の曇りを防ぐことができなかった。その結果、イブプロフェンの苦味マスキングが不十分になる、イブプロフェン含有製剤の崩壊時間が延長する等の問題があった。
また、従来から行われているように、イブプロフェンとトラネキサム酸を含む固形製剤を、低温(1〜25℃)保存することにより膨張を抑制するということも可能ではあるが、流通上や保管の問題、さらに使用上の利便性が低く現実的な解決方法とは言いがたい。(特許文献2)
一方、イブプロフェンとトラネキサム酸を含む固形製剤において、イブプロフェンの昇華を抑制した固形製剤として、イブプロフェンとトラネキサム酸を含む内層と、ポリビニルアルコール及びケイ酸を外層に含む固形製剤が開示されている(特許文献3)。
特開平6−9382号公報 特開2010−30903号公報 特開2009−7295号公報
本発明の課題は、イブプロフェンとトラネキサム酸を配合した固形製剤において、薬効成分が、薬効成分を含有する固形製剤から、それを被膜するフィルムコーティング層中にしみ出すことがなく、製剤が膨張した際にもフィルムコート層に亀裂を生じない安定なフィルムコーティング製剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ね、その結果、イブプロフェンとトラネキサム酸を含有する固形製剤、好ましくは錠剤を、ポリビニルアルコールとヒプロメロースを含有するフィルムコーティング層で被膜することにより、湿潤したイブプロフェンがフィルムコーティング層中にしみ出すことがなく、製剤が膨張した際にもフィルムコート層に亀裂を生じない安定なフィルムコーティング製剤が調製できることを見出した。特にポリビニルアルコールとヒプロメロースの重量比を一定範囲内に調整したフィルムコーティング層とすることにより、安定な製剤を製造できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(6)を提供するものである。
(1)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、
ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被膜した、フィルムコーティング製剤。
(2)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤が、イブプロフェンを含む顆粒剤とトラネキサム酸を含有する顆粒剤とを含む固形製剤である、(1)に記載のフィルムコーティング製剤。
(3)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤が、イブプロフェンを含む顆粒剤とトラネキサム酸を含有する顆粒剤とを含み、打錠成型した錠剤である、(1)に記載のフィルムコーティング製剤。
(4)ポリビニルアルコールが部分けん化物である、(1)〜(3)のいずれか1に記載のフィルムコーティング製剤。
(5)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、
ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被膜することを特徴とする、安定なフィルムコーティング製剤の製造方法。
(6)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、
ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被膜することを特徴とする、フィルムコーティング製剤の安定化方法。
本発明により、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、湿潤したイブプロフェンのフィルムコーティング層中へのしみ出しがなく、固形製剤が膨張した際にもフィルムコート層に亀裂を生じない安定なフィルムコーティング製剤を調製することができる。
本発明における「ポリビニルアルコール(部分けん化物)」は、医薬品添加物事典2007に収載されており、例えば、商品名Jポバール(登録商標)(日本酢ビ・ポバール)、クラレポバール(登録商標)(クラレ)、ゴーセノール(登録商標)(日本合成化学工業)等として市販されており、容易に入手できる。
本発明における「ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)」も医薬品添加物辞典2007に収載されており、例えば、METLOSE(登録商標)60SH(信越化学工業)、TC−5(信越化学工業)、メトセル(登録商標)E(ダウケミカル日本)等として市販されており、容易に入手できる。
本発明における「イブプロフェン」及び「トラネキサム酸」は、第16改正日本薬局方に収載されており、容易に入手できる。
本発明は、「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」において、「(B)ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層」を含む、フィルムコーティング製剤である。「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」を、「(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層」で被覆することにより、固形製剤中のイブプロフェンのフィルムコーティング層へのしみ出しや、製剤が膨張した際のフィルムコート層の亀裂の発生を防止することができる。
本発明における「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」とは、イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する散剤、顆粒剤又は錠剤を意味する。ここで、散剤及び顆粒剤においては、イブプロフェンとトラネキサム酸が、同一の散剤又は顆粒剤に含まれていても、別々の散剤又は顆粒剤に含まれていてもよいが;イブプロフェン及びトラネキサム酸が、それぞれ別々に製剤化された散剤又は顆粒剤であるのが好ましい。また、「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する錠剤」の場合は、イブプロフェンを含む顆粒剤と、トラネキサム酸を含有する顆粒剤に、必要に応じて添加剤を加えて成型した錠剤が好ましい。
本発明における「(A)イブプロフェン及びトラネキム酸を含有する固形製剤」には、イブプロフェンやトラネキサム酸以外の薬物(有効成分)や一般的に使用される医薬品添加物を含んでいてもよい。なお、塩基性成分を含んでいる場合には固形製剤中のイブプロフェンがフィルムコーティング層へしみ出し易くなるので、フィルムコーティング層にポリビニルアルコール(部分けん化物)を添加した効果が、より発揮しやすくなる。
本発明の固形製剤中に含まれるイブプロフェンの含量は、固形製剤全体の重量の5〜90重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましい。また、粒状物中に含まれるトラネキサム酸の含量についても粒状物全体の重量の5〜90重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましい。
本発明における「(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層」は、ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを含有するフィルムコーティング剤で、上記「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」を被膜した層である。該フィルムコーティング層は、ポリビニルアルコール(部分けん化物)とヒプロメロースが、重量比4:1〜2:1で均一に混合されて配合されているのが好ましい。また、該フィルムコーティング層には、通常、フィルムコーティング剤として配合できる医薬品添加物を含有していてもよく、また、該フィルムコーティング層には、薬効成分、特にイブプロフェンやトラネキサム酸と配合変化を生じる薬効成分が含まれていてもよい。該フィルムコーティング層に含有できる薬効成分としては、具体的にはベラドンナ総アルカロイド、ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミン塩酸塩、およびベンフォチアミンからなる群より選択される1種または2種以上を好ましいものとして挙げることができる。
本発明におけるフィルムコーティング層に配合されるポリビニルアルコール(部分けん化物)と、ヒプロメロースの重量比は、4:1〜2:1の範囲であるが、重量比としては3:1〜2:1がより好ましく、3:1が特に好ましい。
本発明における「(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層」の配合量(被覆量)としては、フィルムコーティング製剤全体の重量に対し、1〜10重量%が好ましく、4〜8重量%がより好ましい。
さらに、本発明は「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」において、
「(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層」で被膜することを特徴とする、安定なフィルムコーティング製剤の製造方法を提供するものである。
また、本発明は「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」において、
「(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層」で被膜することを特徴とする、フィルムコーティング製剤の安定化方法も同時に提供する。
本発明のフィルムコーティング製剤は、「(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤」と、これを被覆する「(B)必要に応じて薬効成分を含有する、重量比4:1〜2:1のポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを含有するフィルムコーティング層」の外側に、さらに「(C)薬効成分を含む第二のフィルムコーティング層」を有していてもよい。このように「(C)薬効成分を含む第二のフィルムコーティング層」を有する場合、「(B)重量比4:1〜2:1のポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロース、及び、必要に応じて薬効成分を含有するフィルムコーティング層」は、該フィルムコーティング製剤中において、アンダーコーティング層として「(A)イブプロフェン等」の薬物のしみ出しを防御する役割を果たす。
ここで、「(C)薬効成分を含む第二のフィルムコーティング層」に添加する添加剤としては、医薬品添加物事典2007、及び医薬品添加物ハンドブック2007に収載されている可塑剤、及びコーティング剤である添加剤を使用することが好ましく、例えばヒプロメロース、メタクリル酸コポリマーL、オパドライOY−6950、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分けん化物、ポリビニルアルコール共重合体、マクロゴール6000、酸化チタン、タルク等を好ましいものとして挙げることができる。 さらに、「(C)薬効成分を含む第二のフィルムコーティング層」の薬効成分としては、イブプロフェンと配合変化を生じるものが好ましく;具体的にはベラドンナ総アルカロイド、ブロムヘキシン塩酸塩、アンブロキソール塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミン塩酸塩、およびベンフォチアミンからなる群より選択される1種または2種以上が好ましい。
本発明のフィルムコーティング製剤において、最も好ましい態様としては、下記の(a)〜(f)を挙げることができる。
(a):(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する錠剤を、(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコーティング製剤。
(b):(A)イブプロフェンを含有する顆粒剤、及び、トラネキサム酸を含有する顆粒剤を含む錠剤を、(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコーティング製剤。
(c):(A)イブプロフェン、及び、トラネキサム酸を、それぞれ別々の顆粒剤中に含有する顆粒剤を含む錠剤を、(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコーティング製剤。
(d):(A)イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する錠剤を、(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被覆し、さらに、(C)薬効成分を含有する第二のフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコーティング製剤。
(e):(A)イブプロフェンを含有する顆粒剤、及び、トラネキサム酸を含有する顆粒剤を含む錠剤を、(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被覆し、さらに、(C)薬効成分を含有する第二のフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコーティング製剤。
(f):(A)イブプロフェン、及び、トラネキサム酸を、それぞれ別々の顆粒剤中に含有する顆粒剤を含む錠剤を、(B)ポリビニルアルコール(部分けん化物)及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被覆し、さらに、(C)薬効成分を含有する第二のフィルムコーティング層で被覆した、フィルムコーティング製剤。
本発明のフィルムコーティング製剤の製造方法としては、常法により調製すればよい。例えば、本発明の製剤の剤形が錠剤の場合、イブプロフェン、トラネキサム酸、さらに必要により他の薬効成分や医薬品添加物を添加し、必要に応じて造粒を行って顆粒剤(造粒物)を製造し、顆粒剤(造粒物)のまま、或いは該顆粒剤に添加剤を配合し、これを打錠成型して素錠を製造した後、フィルムコーティングを行うことによって製造することができる。ここで、顆粒剤の造粒方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよく、かかるフィルムコーティングの方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
本発明のフィルムコーティング製剤の製剤化に使用される医薬品添加物としては、薬学的に許容される担体、例えば賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、流動化剤、光沢化剤、発砲剤、防湿剤、界面活性剤、安定化剤、乳化剤、抗酸化剤、充填剤、防腐剤、保存剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、香料、芳香剤、着色剤、基剤、コーティング剤、糖衣剤、可塑剤、分散剤、消泡剤等が挙げられる。
本発明をより詳細に説明するため、以下に実施例及び比較例を記載する。
1.素錠の調製
(a)素錠1の調製
イブプロフェン(352.9g)、ヒプロメロース(70.6g)、クロスカルメロースナトリウム(42.4g)、D−マンニトール(117.6g)、及び適量の結晶セルロースを高速攪拌造粒機に投入、混合後に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(35.3g)を50質量%エタノール水溶液に混和させた液及び精製水を添加して練合し練合物を得た。当該の練合物を流動層乾燥機にて乾燥し、乾燥物を取り出し篩(20号)にて整粒した造粒末をA顆粒とした。トラネキサム酸(233.3g)、無水カフェイン(41.7g)、ヨウ化イソプロパミド(3.3g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(1.9g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(33.3g)、ベンフォチアミン(13.9g)、リボフラビン(6.7g)、ヘスペリジン(50.0g)、D−マンニトール(166.7g)、クロスカルメロースナトリウム(43.3g)、及び適量の結晶セルロースを高速攪拌造粒機に投入、混合後に、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加して練合し練合物を得た。当該の練合物を流動層乾燥機にて乾燥し、乾燥物を取り出し篩(20号)にて整粒した造粒末を調製してB顆粒とした。A粒、B粒、及びタルク、軽質無水ケイ酸を混合した後、直径9.5mmの臼、曲率半径13.5mmのR面の杵にて、打錠して1錠質量440mg、厚さ6.2mmの素錠1を得た。
(b)素錠2の調製
イブプロフェン(352.9g)、ジヒドロコデインリン酸塩(7.8g)、リボフラビン(4.7g)、ベンフォチアミン(19.6g)、ヒプロメロース(70.6g)、D−マンニトール(117.6g)、及び適量の結晶セルロースを高速攪拌造粒機に投入、混合後に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(35.3g)を50質量%エタノール水溶液に混和させた液及び精製水を添加して練合し練合物を得た。当該の練合物を流動層乾燥機にて乾燥し、乾燥物を取り出し篩(20号)にて整粒した造粒末をA顆粒とした。トラネキサム酸(233.3g)、ジヒドロコデインリン酸塩(7.8g)、無水カフェイン(41.7g)、ヨウ化イソプロパミド(3.3g)、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩(1.9g)、dl−メチルエフェドリン塩酸塩(33.3g)、リボフラビン(3.3g)、ヘスペリジン(50.0g)、D−マンニトール(166.7g)、クロスカルメロースナトリウム(73.3g)、及び適量の結晶セルロースを高速攪拌造粒機に投入、混合後に、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース水溶液を添加して練合し練合物を得た。当該の練合物を流動層乾燥機にて乾燥し、乾燥物を取り出し篩(20号)にて整粒した造粒末を調製してB顆粒とした。A粒、B粒、及びタルク、軽質無水ケイ酸を混合した後、直径9.5mmの臼、曲率半径13.5mmのR面の杵にて、打錠して1錠質量440mg、厚さ6.2mmの素錠2を得た。
2.試験用製剤の調製
下記の表1及び表3に示したポリビニルアルコール(以下、PVAと略する場合がある。)(部分けん化物)及びヒプロメロースの重量比、及びフィルムコーティング層の質量(被覆量;%)で比較例1〜4、及び実施例1〜4のフィルムコーティング錠を製造した。
(比較例1)
PVA(部分けん化物)(74.0g)、ヒプロメロース(14.8g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水(1332.0g)に分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が470mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(比較例2)
PVA(部分けん化物)(44.4g)、ヒプロメロース(44.4g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水1332.0gに分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が470mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(比較例3)
PVA(部分けん化物)(44.4g)、ヒプロメロース(44.4g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水1332.0gに分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が480mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(比較例4)
Opadry(登録商標)II85シリーズ(日本カラコン製のプレミックスフィルムコーティング基材[(PRODUCT IDENTIFIER、85F48011)で配合成分はPVA(部分ケン化物)、マクロゴール4000、酸化チタン、タルクである]を精製水(1332.0g)に分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が470mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(実施例1)
PVA(部分けん化物)(66.6g)、ヒプロメロース(22.2g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水(1332.0g)に分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が460mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(実施例2)
PVA(部分けん化物)(66.6g)、ヒプロメロース(22.2g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水(1332.0g)に分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が470mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(実施例3)
PVA(部分けん化物)(59.2g)、ヒプロメロース(29.6g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水(1332.0g)に分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠1(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が470mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
(実施例4)
PVA(部分けん化物)(66.6g)、ヒプロメロース(22.2g)、酸化チタン(29.6g)、タルク(29.6g)を約60℃に加温した精製水(1332.0g)に分散、溶解後に、冷却してフィルムコーティング溶液とした。素錠2(814g、約1850錠)をコーティングパン(ハイコーター30N、フロイント産業)に充填し、フィルムコーティング溶液を、1錠あたりの製剤の重量が470mgになるまで噴霧してフィルムコーティング錠を得た。
3.試験方法
(1)フィルムコーティング錠の保管条件、及び評価項目
調製した比較例1〜4、実施例1〜4のフィルムコーティング錠について各50錠を8K規格瓶に充填して密栓した後、60℃・2週間、50℃・2週間、50℃・2箇月の条件化に保管した。保管前及び保管後の検体ついて、性状、錠剤厚みを評価した。
(2)評価の方法
フィルムコーティング錠の性状に関しては、目視より評価した。目視での評価は5℃で保管した標準品を対照として、以下の基準の4段階で評価した。
性状(色調)変化の評価基準 A:変化なし、B:わずかな変化、C:変化あり、D:著しい変化
錠剤厚みについては、デジタルシックネスゲージ(n=10)にて測定した。
調製した比較例1〜4、及び実施例1〜4のフィルムコーティング製剤の評価結果を、それぞれ表2、及び表4に示した。表2及び表4に示したように、イブプロフェンとトラネキサム酸を含有する製剤(内核である素錠)を、ポリビニルアルコール(PVA)とヒプロメロースを含有するフィルムコーティング層で被膜することにより、湿潤したイブプロフェンのフィルムコーティング層中へのしみ出し、保管中の瓶の曇りが認められず、製剤が膨張した際にもフィルムコート層に亀裂を生じない安定な製剤が製造できることが判明した。
本発明は、イブプロフェン及びトラネキサム酸を配合した、保存安定性に優れたフィルムコーティング製剤の製造に利用できる。

Claims (6)

  1. イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、
    ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被膜した、フィルムコーティング製剤。
  2. イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤が、イブプロフェンを含む顆粒剤とトラネキサム酸を含有する顆粒剤とを含む固形製剤である、請求項1に記載のフィルムコーティング製剤。
  3. イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤が、イブプロフェンを含む顆粒剤とトラネキサム酸を含有する顆粒剤とを含み、打錠成型した錠剤である、請求項1に記載のフィルムコーティング製剤。
  4. ポリビニルアルコールが部分けん化物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルムコーティング製剤。
  5. イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、
    ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被膜することを特徴とする、安定なフィルムコーティング製剤の製造方法。
  6. イブプロフェン及びトラネキサム酸を含有する固形製剤において、
    ポリビニルアルコール及びヒプロメロースを、重量比4:1〜2:1で含有するフィルムコーティング層で被膜することを特徴とする、フィルムコーティング製剤の安定化方法。
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