JP6157228B2 - 振動型アクチュエータの駆動装置及び駆動回路 - Google Patents
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Description
近年では、機器の高性能化、低消費電力化に伴い、高回転精度化、高効率化などが要求されている。
超音波モータは、DCブラシレスモータに代表される電磁モータに比して低速高トルク駆動が可能であるという特徴を有するが、上記要求に対応するためには課題も存在する。
例えば、弾性体と圧電素子とから成るステータと、移動体であるロータとの接触状態によっては、回転中に挙動が安定せず不要な振動を発生させる場合があり、異音や速度ムラ、或いは偏磨耗の原因となっていた。
具体的には、振動型アクチュエータへ印加する交流電圧を生成するパルス信号の幅を非周期的に変更する構成が採られている。
また、特許文献2において、モータ駆動用交流電圧の歪率を減少させる方法が提案されている。
具体的には、駆動用の正弦波に周波数可変PWMを用いて両者の位相関係を固定することにより歪率の低い正弦波を得るようにする概念が提案されている。
特許文献1の構成では、高精度の駆動制御を低コストで行う上で、必ずしも満足の得られるものではない。また、非周期的信号の重畳周期がモータ駆動用交流電圧の周期と等しいため、任意の周波数や振幅を有する信号を重畳することはできず、汎用性が低かった。
また、特許文献2では、概念のみが提案されており、本発明者らの検討によれば、ディジタル的に実装する上で周波数分解能の確保が困難であるなど、多くの解決すべき課題が存在する。
また、可変周期PWMでは、固定周期サンプリングされた任意の信号を重畳すると歪率が悪化する。
なお、以下の実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。
実施例1として、本発明を適用した振動型アクチュエータの駆動装置及び駆動回路の構成例について説明する。
本実施例の振動型アクチュエータの駆動装置は、交流電圧印加部による交流電圧の印加によって振動波が励起される振動体と、前記振動体に接触または間接的に接続される移動体とが、前記振動波によって発生する摩擦力によって相対移動するように構成される。
例えば、金属やセラミック製の弾性体をその固有振動モードの共振現象を利用して振動させ、弾性体に接触するロータを相対的に移動させるように構成される。励振するための加振力の発生源として、主に圧電素子が用いられる。
振動型アクチュエータは、加振周波数と同じ周波数の交流電圧を入力することで加振力を発生させることができる。
圧電素子を用いた振動型アクチュエータの構造やロータ回転原理および制御原理は公知の技術であるため、本実施例では詳細な説明を割愛し、一般的な±A相、±B相の4相電極構成である円環型の振動型アクチュエータの使用を想定して説明する。
図1は、不図示の指令部からの速度指令に応じて振動型アクチュエータの回転速度を制御するシステムを示している。
駆動周期指令に応じて4相の交流電圧を生成する交流電圧発生部(交流電圧印加部)2は、駆動信号生成器21とドライバ22を備える。
駆動信号生成器21は、駆動周期指令に応じてゲート信号を生成し、ドライバ22はゲート信号に従って、圧電素子1a、1b、1a−、1b−にそれぞれ90度の位相差を有する交流電圧φA、φB、−φA、−φBを印加する。
なお、簡単化のため、圧電素子1a−および1b−、交流電圧−φAおよび−φBについては、図示を省略している。
また、交流電圧φA、φB、−φA、−φBは、不図示のインダクタ通過後の信号であり、圧電素子1a、1b、1a−、1b−の容量成分と合わせたフィルタ効果によって高周波成分が除去され、速度指令に基づいた滑らかな交流波形を有する。
図中太線で示された矢印はベクトル信号であり、例えばゲート信号は4相駆動に対応して4本の信号で構成されることを示している。
制御部3は、減算器31と制御器32から成り、速度検出信号と、不図示の指令部からの速度指令との差分が減算器31で演算される。
この差分信号に基づいて、制御器32が公知のPID制御などにより交流電圧の周波数(以下、駆動周波数)をフィードバック制御する。
なお、実際には周波数の逆数である周期を扱った方が都合が良いため、制御器32の出力は駆動周波数の逆数である駆動周期とする。
また、図1ではシステムを機能別に交流電圧発生部2と制御部3に分類しているものの、ハードウェアとしての回路構成上は、制御部3と駆動信号生成器21がCPUやASIC、FPGAなどのデジタルICで構成されることが多く、電力ICやディスクリート回路で構成されるドライバ22と区別される。従って、制御部3と駆動信号生成器21は、デジタル回路で構成される。また、制御部3をアナログ回路、駆動信号生成器21をデジタル回路で構成し、間にA/D変換器を設ける構成としてもよい。
但し、これらはシステム構成の一例であり、同様の機能を実現できるものであれば、上記構成に限定されるものではない。しかし、駆動信号生成器21と制御部3が上記の通りデ
ジタル回路で構成される場合には、周波数分離能が確保できる等、特に本願の利点が大きい。これらをアナログ回路で構成した場合、回路の安定性等別の観点での課題を生ずるものの、周波数分解能に関しては原理的に問題とならない。一方これらをデジタル回路で構成する場合、システム全体の動作速度はシステムクロックの周波数によって制限されるため、振動型アクチュエータの駆動波形(印加電圧波形)のように、比較的高い周波数を有する電圧信号をPWMによって再現するには、次のような課題が生ずる。正弦波状が望ましい駆動波形の歪率低減を優先してPWM周期を短くすると、周波数分解能即ち速度制御の分解能が悪化し、周波数分解能を優先してPWM周期を長くすると駆動波形の歪率が悪化する。即ち、デジタル回路では、駆動波形の歪率低減と周波数分解能を両立することが困難である。この課題を解消するには、極めて高い周波数のシステムクロックを用意すればよいものの、放射ノイズやコストの観点で現実的ではない。システムクロックを上昇させずに上記課題を解消できるのが、本願にて開示される技術の大きな利点の1つである。
PWM可変周期設定部201は、制御部3からの駆動周期指令に基づいて、PWM半周期毎に最適なPWM半周期設定値と、その更新タイミングを示すトリガ信号を出力する。データ読出し部(駆動波形情報出力部)202は、正弦波を構成する複数の固定位相情報を有しており、前述のトリガ信号に同期して順に出力する。
データ読出し部202から出力された正弦波信号は乗算器203で所望のゲインに調整され、可変周期PWM信号生成部204に渡される。
可変周期PWM信号生成部204では、前述のPWM半周期設定値、ゲイン調整された正弦波信号、トリガ信号に基づき、周期が可変であるPWMで表現されたゲート信号を出力する。
なお、本実施例ではPWMキャリアとして三角波を使用するため、PWM半周期の値を取り扱い、トリガ信号もPWM半周期の更新タイミングに対応する。
PWMキャリアとして鋸歯状波を用いる場合は、PWM半周期の代わりにPWM1周期の値を取り扱い、トリガ信号の更新タイミングもPWM1周期とすればよい。
また、本実施例では正弦波を構成する固定位相データを32点としているものの、第一象限以外のデータは第一象限のデータを元に演算すれば8点即ち1/4のデータ量で済む。
入力された駆動周期指令は、1bit右シフトを行うシフトレジスタ301で半分の値となり、駆動半周期の理想値が算出される。
この値は、4bit右シフトを行うシフトレジスタ302によって1/16倍され、これがPWM半周期の基準値となる。
なお、本実施例の演算における小数点以下の値は、全て切り捨て処理を行うものとする。次にこの基準値は、4bit左シフトを行うシフトレジスタ303によって16倍され、駆動半周期の基準値となる。
これは、一般的な固定周期PWMを行った場合の駆動半周期に相当する。
本実施例では、駆動周期の1/16倍をPWM周期としており、かつ前述の通り小数点以下の切り捨て処理を行うため、駆動半周期の理想値と基準値の間には最大15の誤差(図3中における減算器304の出力)が発生する。これが駆動周波数(周期)に対する分解能の悪化要因となる。
この誤差を無くして周波数分解能を確保するために、周期調整部305では、駆動周期が1周する期間に16回存在するPWM1周期のうち、この誤差が示す回数だけランダムに
、駆動半周期の基準値に1を加算してPWM半周期設定値として出力する。
このとき、前述した駆動半周期の理想値は2631、PWM半周期の基準値は164となる。
これを16倍した駆動半周期の基準値は2624となり、理想値との誤差は7となる。
ここで、周期調整部305は、PWM周期16回のうち7回をランダムに選択し、そのときのPWM半周期設定値を165、それ以外の16−7=9回のPWM半周期設定値を164と設定するように動作する。
この結果、実際の駆動半周期は164×9+165×7=2631となって理想値との誤差は解消され、PWMによる周波数分解能の悪化を回避できる。
なお、1加算するPWM半周期の選択をランダムに行うことの目的は、周期的に選択した場合のように特定の周波数成分が重畳される現象が発生するのを防ぐことである。
なお、以上の説明では、印加電圧の目標周期において整数回存在するPWM周期の内、シフト演算による誤差に相当する回数だけPWM周期を1加算することにより該PWM周期を適宜可変調整する例について説明したが、これに限られるものではない。上記PWM周期を1減算させることにより該PWM周期を適宜可変調整するようにしてもよい。
正弦波信号である駆動波形に対して、ランダムに変化するPWM半周期に応じたゲイン調整を乗算器402で行った後、比較器403で三角波との大小比較することによって、可変周期PWM信号であるゲート信号が生成される。
図中(a)は可変周期PWM信号の生成過程を示しており、細実線が三角波発生部401の出力、太実線が可変周期PWM信号生成部204へ入力される駆動波形である。
図中(b)は周期調整部305から出力されるトリガ信号を、図中(c)は同じく周期調整部305から出力されるPWM半周期設定値を示しており、164や165等の数値は、前述した例に基づいている。
図中(c)のPWM半周期設定値は、周期調整部305によって所望の回数分ランダムに調整される。
実施例2として、実施例1と異なる形態の振動型アクチュエータの駆動装置及び駆動回路の構成例について説明する。
実施例2において、任意波形の同期重畳以外の基本的な構成は、実施例1と同様である。したがって、実施例1と重複する説明は省略する。本実施例では、駆動信号生成部は、固定周期サンプリングされた任意波形情報を、駆動波形情報出力部からトリガ信号に同期した駆動波形情報の出力タイミングと同期化する同期部を備える。
図6は、本実施例における駆動信号生成器21の内部構成を示すブロック図である。
実施例1で説明した図2の構成に比して、不図示の外部装置から供給される任意波形データと、それが入力される同期器205と、乗算器206と、加算器207とが付与されている。
同期器205は、所定の固定周期でサンプリングされた任意波形データに対して、本実施例の特徴である、トリガ信号に基づく可変周期サンプリングに対応したデータへの同期化即ち可変サンプリングレート変換を行う。
同期器205から出力された同期化済み任意波形信号は乗算器206で所望のゲインに調整され、加算器207において、データ読出し部202から乗算器203を経た正弦波データと加算された後、可変周期PWM信号生成部204に渡される。
なお、任意波形データは、ドライバの回路数、即ち本実施例では4相分個別に利用することが出来る。
同期器205は、CICフィルタを構成する微分器501および502、積分器503および504、シフトレジスタ505と、トリガ信号に基づき周期可変PWMの動作タイミングに合わせてデータを出力する出力レジスタ506とから成る。CICフィルタはサンプリングレート変換に用いられる。
本実施例では微分器と積分器をそれぞれ2つずつ直列接続する2段CICフィルタを用いている。
微分器501および502が任意波形データと同じ固定サンプル周期で動作する一方、積分器503および504がシステムクロックで動作することで、システムクロック周期でのデータ補間を行うことができる。
CICフィルタでは、積分器の動作クロックを微分器の動作クロックで除した商と段数の積に相当するゲイン調整を行う必要がある。
シフトレジスタ505はこのゲイン調整の役割を担っており、任意波形データの固定サンプル周期とシステムクロック周期の倍数分とCICフィルタの段数分の積の逆数を入力に対して乗じるのと等価な桁数だけ右シフトを行う。
例えば、システムクロックが実施例1と同じ200MHzで、任意波形データの固定サンプル周期がシステムクロック周期(5nsec)の128倍である640nsecであるとき、シフトレジスタ505は入力を7bit×2段=14bit分右シフトする。
これは入力を(128×128)分の1にするのと等価である。
なお、説明の簡単化のためシフトレジスタを用いたが、実際には十分な桁数を用意したレジスタの読出し位置を適切に設定した回路構成とすることで、シフト操作と等価の動作をシステムクロック周期で高速に行うことができる。
出力レジスタ506がトリガ信号入力時にデータ更新することにより、システムクロック周期でデータ更新されている、出力レジスタ506への入力信号が、トリガ信号に同期した任意波形出力として出力される。
図中(a)は同期器205へ入力される任意波形データであり、本例では前述した640nsec周期でサンプリングされた30kHzの正弦波を表している。同(b)は微分器501の出力波形、同(c)は微分器502の出力波形、以下、同(d)は積分器503の、同(e)は積分器504、同(f)はシフトレジスタ505の、同(g)は出力レジスタ506の出力波形である。
(a)が入力サンプル周期で2回微分されて(c)となり、次いでシステムクロック周期で2回積分されて(e)となる。
この段階で、元の入力波形(a)と比較してシステムクロック周期で補間されていることと、振幅調整が必要なことがわかる。
14bitシフトによる振幅調整をしたものが(f)であり、元の振幅に戻っている。最
後に、(f)をトリガ信号によって後段の動作タイミングに同期化したものが(g)であり、同期器205によって低歪率な可変レート変換が実現されていることがわかる。
なお、本実施例においては可変レート変換部としてCICフィルタを内包した構成例を示したが、無論本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、同様の機能を実現できる構成であればよい。
任意波形を適宜用意することで、例えばランダムノイズ信号を駆動信号に重畳して振動型アクチュエータの伝達特性の測定を行ったり、駆動周波数と異なる周波数の正弦波信号あるいはインパルス信号を駆動信号に重畳して振動型アクチュエータの振動特性の解析などを行うことが可能となる。
2:交流電圧発生部
3:制御部
12:速度検出器
21:駆動信号生成器
22:ドライバ
31:減算器
32:制御器
201:PWM可変周期設定部
202:データ読出し部
203,206,402:乗算器
204:可変周期PWM信号生成部
205:同期器
207:加算器
Claims (9)
- 振動型アクチュエータの振動体に印加する印加電圧の少なくとも周波数または振幅を可変制御する、振動型アクチュエータの駆動装置であって、
前記印加電圧1周期中に周期が複数回存在するPWM信号を生成する駆動信号生成部を有し、
前記駆動信号生成部は、
前記PWM信号の周期を非周期的に可変調整することで、前記印加電圧1周期中での前記PWM信号の周期の平均値が、前記印加電圧の目標周期の整数分の一の値となるように設定された前記PWM信号の周期の設定値を出力する可変周期設定部と、
正弦波の固定位相情報を用いて生成された前記印加電圧の駆動波形情報を出力する駆動波形情報出力部と、
前記可変周期設定部から出力された前記設定値と、前記駆動波形情報出力部から出力された前記駆動波形情報と、に基づいて、前記PWM信号を生成するPWM信号生成部と、を有し、
前記駆動信号生成部は、ディジタル回路で構成される
ことを特徴とする振動型アクチュエータの駆動装置。 - 前記可変周期設定部は、前記印加電圧の目標周期において整数回存在する前記PWM信号の周期の内、シフト演算による誤差に相当する回数だけ前記PWM信号の周期を1加算または1減算させることにより該PWM信号の周期を適宜可変調整することを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。
- 前記可変周期設定部は、前記設定値と、その更新タイミングを示すトリガ信号と、を出力し、
前記駆動波形情報出力部は、前記駆動波形情報を前記トリガ信号に同期して出力し、
前記PWM信号生成部は、前記設定値と前記トリガ信号と前記駆動波形情報と、に基づいて前記PWM信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。 - 前記駆動信号生成部は、固定周期サンプリングされた任意波形情報を、前記トリガ信号に同期した前記駆動波形情報の出力タイミングと同期化する同期部を備え、
前記駆動波形情報に、前記同期部の出力が重畳された前記PWM信号を得ることを特徴とする請求項3に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。 - 前記同期部は、CICフィルタを含むことを特徴とする請求項4に記載の振動型アクチュエータの駆動装置。
- 振動体と、前記振動体に電圧を印加する駆動装置と、を有する振動型アクチュエータであって、
前記駆動装置が請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータの駆動装置であることを特徴とする振動型アクチュエータ。 - 請求項6に記載の振動型アクチュエータを有することを特徴とする複写機。
- 請求項6に記載の振動型アクチュエータを有することを特徴とするカメラ用交換レンズ。
- 振動型アクチュエータの振動体に印加する印加電圧の少なくとも周波数または振幅を可変制御する、振動型アクチュエータの駆動方法であって、
前記印加電圧1周期中に複数周期が存在するPWM信号を生成する駆動信号生成工程を有し、
前記駆動信号生成工程は、
前記PWM信号の周期を非周期的に可変調整することで、前記印加電圧1周期中での前記PWM信号の複数周期の平均値が、前記印加電圧の目標周期の整数分の一の値となるように設定された前記PWM信号の周期の設定値を出力する可変周期設定工程と、
正弦波の固定位相情報を用いて生成された前記印加電圧の駆動波形情報を出力する駆動波形情報出力工程と、
前記可変周期設定工程で出力された前記設定値と、前記駆動波形情報出力工程で出力された前記駆動波形情報と、に基づいて前記PWM信号を生成するPWM信号生成工程と、を有する
ことを特徴とする振動型アクチュエータの駆動方法。
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