以下、本発明の発電装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて説明する。
<第1実施形態>
まず、本発明の発電装置の第1実施形態について説明する。
図1は、本発明の発電装置の第1実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す発電装置の平面図、図3は、図1に示す発電装置が備える装置本体の分解斜視図、図4は、図1中のA−A線断面図(図3に示す装置本体の縦断面図)、図5は、図3に示す装置本体が備える板バネの平面図である。
なお、以下の説明では、図1、図3および図4中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。また、図2および図5中の紙面手前側を「上」または「上方」と言い、紙面奥側を「下」または「下方」と言う。
図1および図2に示す発電装置100は、空調ダクトに固定して使用するものであり、装置本体1と、この装置本体1を空調ダクトに吸着により固定する吸着手段9と、装置本体1から側方に突出するようにして設けられ、外部装置に接続される接続コネクタ11とを有している。
図3および図4に示すように、装置本体1は、筐体(支持部)20と、筐体20内に、図4の上下方向に振動可能に保持された発電部10とを備えている。この発電部10は、一対の対向する上側板バネ60Uおよび下側板バネ60Lと、これらの間に固定された、永久磁石31を有する磁石組立体30、および、永久磁石31の外周側を囲むように設けられたコイル41を有するコイル組立体40とを有している。なお、本実施形態では、上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとは、同じ構造を有している。
<<筐体20>>
筐体20は、図3および図4に示すように、カバー21と、発電部10を上面(一方の面)側に支持するベース(支持板)23と、カバー21とベース23との間に、発電部10を囲むように設けられた筒状部22とを備えている。
カバー21は、円盤状をなし、その外周縁部に沿って、円環状(リング状)のリブ211が下方に向かって突出形成されている。このリブ211に対応する部分に沿って、ほぼ等間隔で6つの貫通孔212が形成されている。また、カバー21のリブ211より内側の部分には、上方に向かって凹没形成された凹部(逃げ部)214が形成されている。発電部10は、振動した際に、この凹部214内に位置(退避)し、カバー21と接触するのが防止されている。
筒状部22は、円筒状をなし、その外径がカバー21の外径とほぼ等しくなっている。発電部10と筐体20とを組み立てた状態(以下、この状態を「組立状態」と言う。)で、筒状部22の内側に発電部10の発電に寄与する主要部が位置する。
また、筒状部22の内周面には、カバー21の貫通孔212に対応する位置に、筒状部22の高さ方向に沿って6つのボス221が形成されている。このボス221の上端部には、上側ネジ孔221aが形成されている。また、上側板バネ60Uの外周部(第1の環状部61)には、その周方向に沿ってほぼ等間隔で6つの貫通孔66が形成されている。
上側板バネ60Uの外周部をカバー21と筒状部22との間に位置させた状態で、ネジ213を、カバー21の貫通孔212および上側板バネ60Uの貫通孔66に挿通し、ボス221の上側ネジ孔221aに螺合させる。これにより、上側板バネ60Uの外周部が、カバー21と筒状部22とに固定される。
ベース23は、円盤状をなし、その外周縁部に沿って、円環状(リング状)のリブ231が上方に向かって突出形成されている。このリブ231に対応する部分に沿って、ほぼ等間隔に6つの貫通孔232が形成されている。また、ベース23のリブ231より内側の部分には、下方に向かって凹没形成された凹部(逃げ部)234が形成されている。発電部10は、振動した際に、この凹部234内に位置(退避)し、ベース23と接触するのが防止されている。
また、筒状部22のボス221の下端部には、下側ネジ孔(雌ネジ)221bが形成されている。下側板バネ60Lの外周部(第1の環状部61)をベース23と筒状部22との間に位置させた状態で、ネジ233を、ベース23の貫通孔232および下側板バネ60Lの貫通孔66に挿通し、ボス221の下側ネジ孔221bに螺合させる。これにより、下側板バネ60Lの外周部が、ベース23と筒状部22とに固定される。
図4に示すように、ベース23の下面(他方の面)230は、下方に向かって突出する湾曲凸面で構成されている。なお、かかる構成とすることにより得られる効果については、後に説明する。また、ベース23の下面230の中央部には、吸着手段9の一部を構成する永久磁石911等を収納可能な凹部235が形成されている。
筐体20(カバー21、筒状部22およびベース23)を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
筐体20の寸法は、特に限定されないが、発電装置100を小型化(低背化)する観点からは、筐体20(ベース23)の平均幅(平均径)は、60〜120mm程度であるのが好ましい。また、筐体20の平均高さは、20〜50mm程度であるのが好ましく、30〜40mm程度であるのがより好ましい。
この筐体20内には、上側板バネ60Uおよび下側板バネ60Lにより、発電部10が振動可能に保持されている。
<<上側板バネ60U、下側板バネ60L>>
上側板バネ60Uは、その外周部がカバー21と筒状部22との間に、これらに挟持されることにより固定され、また、下側板バネ60Lは、その外周部がベース23と筒状部22との間に、これらに挟持されることにより固定されている。
各板バネ60L、60Uは、例えば、鉄、ステンレス鋼のような金属製の薄板材から形成され、その全体形状が円盤状をなす部材である。図5に示すように、各板バネ60L、60Uは、外周側から、第1の環状部61、第1の環状部61の内径よりも小さい外径を有する第2の環状部62、および、第2の環状部62の内径よりも小さい外径を有する第3の環状部63を有している。
これらの第1の環状部61、第2の環状部62および第3の環状部63は、同心的に設けられている。また、第1の環状部61と第2の環状部62とは、複数(本実施形態では、6つ)の第1のバネ部64によって連結されており、第2の環状部62と第3の環状部63とは、複数(本実施形態では、3つ)の第2のバネ部65によって連結されている。
第1の環状部61には、その周方向に沿って、6つの貫通孔66がほぼ等間隔(およそ60°間隔)で形成されている。前述したように、上側板バネ60Uの貫通孔66には、ボス221の上側ネジ孔221aに螺合されるネジ213が挿通され、一方、下側板バネ60Lの貫通孔66には、ボス221の下側ネジ孔221bに螺合されるネジ233が挿通される。
また、第2の環状部62にも、その周方向に沿って、6つの貫通孔67がほぼ等間隔(およそ60°間隔)で形成されている。また、後述するコイル組立体40のコイル保持部50には、その周方向に沿って、6つのボス511が上下方向に突出して形成されている。各ボス511には、その上端部に上側ネジ孔511aと、下端部に下側ネジ孔511bとが形成されている。
ネジ82を上側板バネ60Uの貫通孔67に挿通し、ボス511の上側ネジ孔511aに螺合させる。これにより、上側板バネ60Uの第2の環状部62が、コイル組立体40(コイル保持部50)に固定される。一方、ネジ82を下側板バネ60Lの貫通孔67に挿通し、ボス511の下側ネジ孔511bに螺合させる。これにより、下側板バネ60Lの第2の環状部62が、コイル組立体40に固定される。
また、上側板バネ60Uの第3の環状部63には、磁石組立体30の上方に配置されるスペーサ70が固定されている。一方、下側板バネ60Lの第3の環状部63には、磁石組立体30が固定されている。また、本実施形態では、ネジ73により、スペーサ70と磁石組立体30とが連結されている。
6つの第1のバネ部64は、それぞれ、円弧状の部分を有する形状(ほぼS字状)をなしており、第1の環状部61と第2の環状部62との間に配置されている。具体的には、第2の環状部62(コイル組立体40)を介して、互いに対向する一対の第1のバネ部64が3組で(第3の環状部63の中心軸を中心とした回転対象の位置に)配置されている。各第1のバネ部64は、その一端が第1の環状部61の貫通孔66近傍で第1の環状部61に連結され、円弧状の部分が第1の環状部61および第2の環状部62の周方向に沿って左回り(反時計回り)に延在して、他端が第2の環状部62の貫通孔67近傍で第2の環状部62に連結されている。
6つの第1のバネ部64は、第2の環状部62を第1の環状部61に対して、図4の上下方向に振動可能に支持(連結)している。上述したように、第1の環状部61は筐体20に固定され、第2の環状部62はコイル組立体40に固定されている。そのため、空調ダクトからの振動が筐体20に伝達されると、この振動が第1のバネ部64を介して第2の環状部62に伝達され、コイル組立体40が筐体20に対して振動する。
一方、3つの第2のバネ部65は、それぞれ、円弧状の部分を有する形状(ほぼS字状)をなしており、第2の環状部62と第3の環状部63との間に配置されている。具体的には、3つの第2のバネ部65は、第3の環状部63(磁石組立体30)の中心軸を中心とした回転対称の位置に配置されている。各第2のバネ部65は、その一端が第2の環状部62の貫通孔67近傍で第2の環状部62に連結され、円弧状の部分が第2の環状部62および第3の環状部63の周方向に沿って右回り(時計回り)に延在して、他端が第3の環状部63と連結している。
3つの第2のバネ部65は、第3の環状部63を第2の環状部62に対して、図4の上下方向に振動可能に支持(連結)している。上述したように、第2の環状部62はコイル組立体40に固定され、第3の環状部63は直接または間接的に磁石組立体30に固定されている。そのため、第2の環状部62に伝達された空調ダクトからの振動が、第2のバネ部65を介して第3の環状部63に伝達され、磁石組立体30がコイル組立体40に対して振動する。
このように、各板バネ60L、60Uは、図5に示すように、その中心軸(第3の環状部63の中心軸)を中心とした回転対称の形状をなしている。これにより、各板バネ60L、60Uの周方向における第1のバネ部64および第2のバネ部65のバネ定数にバラつきが生じることを防止することができる。そのため、各板バネ60L、60Uの全体としての厚さ方向とほぼ直交する方向における剛性(横剛性)を向上させることができる。また、発電装置100(装置本体1)を組み立てる際には、その作業をより簡便に行うことができるようになる。
なお、各板バネ60L、60Uの平均厚さは、各バネ部64、65のバネ定数(k1、k2)を所望の値とするために適宜調整することができる。具体的には、各板バネ60L、60Uの平均厚さは、0.1〜0.4mm程度であるのが好ましく、0.2〜0.3mm程度であるのがより好ましい。各板バネ60L、60Uの平均厚さが上記範囲内であれば、各板バネ60L、60Uの塑性変形、破断などの発生を確実に防止することができる。これにより、発電装置100を空調ダクトに取り付けた状態で長期間にわたって使用することができる。
これらの上側板バネ60Uと下側板バネ60Lとの間には、永久磁石31を有する磁石組立体30が設けられている。
<<磁石組立体30>>
磁石組立体30は、円柱状の永久磁石31と、有底筒状のバックヨーク(磁性部材)32と、永久磁石31上に設けられた円盤状のヨーク(磁性部材)33とを有している。この磁石組立体30は、バックヨーク32の底面の外周部が下側板バネ60Lの第3の環状部63に固定され、ヨーク33がスペーサ70を介して上側板バネ60Uの第3の環状部63に固定されている。
永久磁石31は、N極を上側に、S極を下側にして配置されている。これにより、永久磁石31(磁石組立体30)は、その磁化方向(上下方向)に沿って変位する。
永久磁石31には、例えば、アルニコ磁石、フェライト磁石、ネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石や、それらを粉砕して樹脂材料やゴム材料に混練した複合素材を成形してなる磁石(ボンド磁石)等を用いることができる。なお、永久磁石31は、例えば永久磁石31自体の磁力による吸着、接着剤による接着等により、バックヨーク32およびヨーク33に固定される。
ヨーク33は、その平面視での大きさが永久磁石31の平面視での大きさとほぼ等しくなっている。また、ヨーク33の中央部にはネジ孔331が形成されている。
バックヨーク32は、底板部321と、その外周部に沿って立設された筒状部322とを備えている。永久磁石31は、底板部321の中央部に、筒状部322と同心的に配置されている。また、底板部321には、その中央部に貫通孔が形成されている。かかるバックヨーク32を備える構成の磁石組立体30では、永久磁石31により発生する磁束を増大させることができる。
バックヨーク32およびヨーク33の構成材料としては、それぞれ、例えば、純鉄(例えば、JIS SUY)、軟鉄、炭素鋼、電磁鋼(ケイ素鋼)、高速度工具鋼、構造鋼(例えば、JIS SS400)、ステンレス、パーマロイのような比重7以上の磁性材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる磁性材料を用いることにより、磁石組立体30の大型化を防止しつつ十分な質量を確保することができる。
磁石組立体30と筐体20との間には、コイル組立体40が設けられている。
<<コイル組立体40>>
コイル組立体40は、コイル41と、このコイル41を保持するコイル保持部(保持部材)50とを有している。また、コイル保持部50は、全体形状が円筒状の本体部51と、本体部51の上端内周側に位置する円環状の円盤部52とを有している。
本体部51は、円筒状のブロックを上下方向から肉抜きしたような形状をなしている。また、本体部51には、その周方向に沿って、6つのボス511が上下方向に突出して形成されている。各ボス511の上端部および下端部には、それぞれ、ネジ82が螺合する上側ネジ孔511aおよび下側ネジ孔(雌ネジ)511bが形成されている。
円盤部52は、本体部51と一体的に形成され、その内径は、スペーサ70(本体部71)の外径よりも大きく形成されている。この円盤部52の下面の内周側には、コイル41が保持されている。
コイル保持部50は、非磁性の金属粒子を含有する樹脂材料で構成されているのが好ましい。かかる材料を用いることにより、コイル組立体40の大型化を防止しつつ十分な質量を確保することができる。非磁性の金属粒子としては、例えば、ステンレス、タングステン、鉛、銅、銀、金等で構成される金属粒子が挙げられる。また、樹脂材料としては、例えば、ABS、PBT、PA、POM、PPS、PC等が挙げられる。
コイル41は、その外径がバックヨーク32の筒状部322より小さく、内径が永久磁石31およびヨーク33の外径より大きく設定されている。これにより、コイル41は、組立状態において、バックヨーク32の筒状部322と永久磁石31との間に、これらから離間して(これらに接触しないように)配置される。
このコイル41は、発電部10の振動により、永久磁石31に対して相対的に上下方向に変位する。このとき、コイル41を通過する永久磁石31からの磁力線の密度が変化し、コイル41に電圧が発生する。
コイル41は、例えば、銅製の基線に絶縁被膜を被覆した線材や、銅製の基線に融着機能を付加した絶縁被膜を被覆した線材等を巻回することにより形成されている。線材の巻き数は、線材の横断面積等に応じて適宜設定され、特に限定されない。また、線材の横断面形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、六角形のような多角形、円形、楕円形等のいかなる形状であってもよい。
なお、このコイル41を構成する線材の両端は、コイル保持部50の円盤部52の上側に設けられた電圧取出部(図示せず)を介して接続コネクタ11に接続されている。この接続コネクタ11を、例えば、無線通信装置等の電気回路に接続することにより、発電装置100を電気回路の電源として利用することができる。
また、磁石組立体30は、スペーサ70を介して、上側板バネ60Uに連結されている。
<<スペーサ70>>
スペーサ70は、有底筒状の本体部71と、この本体部71の上端外周に沿って、本体部71と一体的に形成された円環状のフランジ部72とを備えている。本体部71の底部は、ネジ73により磁石組立体30(ヨーク33)に連結されている。また、フランジ部72の下面の外周側に、上側板バネ60Uの第3の環状部63が固定されている。
このスペーサ70を構成する材料としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、成形樹脂等を用いることができる。
以上のような構成の装置本体1では、筐体20に対して、第1のバネ部64を介してコイル組立体(第1の質量部)40が振動する第1の振動系と、コイル組立体40に対して、第2のバネ部65を介して磁石組立体(第2の質量部)30が振動する第2の振動系とが形成されている。換言すれば、装置本体1では、発電部10が、第1の振動系および第2の振動系を有する2自由度振動系を構成している。
ここで、図6は、発電部が有する2自由度振動系(第1の振動系および第2の振動系)の構成を説明するためのモデル図である。また、図7は、図6に示す2自由度振動系における発電量の周波数特性を説明するためのグラフである。
このような2自由度振動系の発電部10では、第1の振動系が、コイル組立体40の第1の質量m1[kg]と、コイル組立体40と磁石組立体30との質量比μ=m2/m1と、第1のバネ部64の第1のバネ定数k1[N/m]とで決定される第1の固有振動数ω1[Hz]を有し、第2の振動系が、磁石組立体30の第2の質量m2[kg]と、コイル組立体40と磁石組立体30との質量比μと、第2のバネ部65の第2のバネ定数k2[N/m]とで決定される第2の固有振動数ω2[Hz]を有する。
ここで、第1および第2の固有振動数ω1、ω2は、下記式(1)の運動方程式で表すことができる。
すなわち、2自由度振動系の第1の固有振動数ω1および第2の固有振動数ω2は、上記のコイル組立体40と磁石組立体30との質量比μ、第1の振動系の第1の固有角振動数Ω1[rad/S]、および、第2の振動系の第2の固有角振動数Ω2[rad/S]の3つのパラメータで決定される。
なお、図6中では、減衰係数C1、C2に基づく減衰(以下、それぞれ、単に「減衰C1」、「減衰C2」とも言う。)が含まれている。ここで、減衰C1は、第1のバネ部64の撓みで発生する構造減衰である。一方、減衰C2は、第2のバネ部65の構造減衰に加え、発電した電力を外部負荷が消費した際に、発電部10に発生する振動を抑制しようとする反力による減衰である。本実施形態のような電磁誘導による発電方式の場合、後者の減衰とは、永久磁石31とコイル41とによる電磁誘導で発電した電流が、発電装置100の外部負荷を通してループし、電流が流れた時の推力による減衰を示し、いわゆる逆起電力による減衰である。
この逆起電力による減衰は、推力定数Kt、コイル41の抵抗値R、および、コイル41のインダクタンスから定まり、発電装置100に負荷がない状態(コイル41の解放状態)において、減衰C2は、第2のバネ部65の構造減衰のみになる。なお、第2のバネ部65の構造減衰は、上述した逆起電力による減衰に比べて極めて小さく、実際上、無視しても問題がない値である。そのため、以下では、減衰C2とは、逆起電力による減衰のことを指すものとして説明する。
上記式(1)で表される2自由度振動系の発電量(発電能力)は、逆起電力による減衰を含む減衰C2を伴い、図7に示すように、各固有振動数ω1、ω2にそれぞれ起因する2つの共振周波数(第1の共振周波数f1、第2の共振周波数f2)において最大値A1およびA2[mW/100mG]をとる。そして、発電装置100では、これらの2つの共振周波数f1、f2の間の周波数帯域にわたって発電部10が筐体20に対して効率良く振動する。なお、減衰C2が無い場合において各固有振動数ω1、ω2は各共振周波数f1、f2に一致する。
本発明では、コイル組立体40の第1の質量m1[kg]と、第1のバネ部64の第1のバネ定数k1[N/m]と、磁石組立体30の第2の質量m2[kg]と、第2のバネ部65の第2のバネ定数k2[N/m]とを設定することにより、第1の振動系の第1の固有角振動数Ω1=(k1/m1)1/2、第2の振動系の第2の固有角振動数Ω2=(k2/m2)1/2およびコイル組立体40と磁石組立体30との質量比μ=m2/m1が所定の値となるように構成されている。具体的には、第1の固有角振動数Ω1は200〜250rad/Sの範囲の値となるように、第2の固有角振動数Ω2は60〜120rad/Sの範囲の値となるように、また、質量比μは0.4〜1の範囲の値となるように構成されている。これらの3つのパラメータのそれぞれの値が上記範囲内であれば、第1の振動系の第1の固有振動数ω1と第2の振動系の第2の固有振動数ω2とが14〜42Hzの範囲の値となる。これにより、発電部10(発電装置100)は、空調ダクトの振動を効率よく利用して、結果として高い発電効率で発電することができる。以下、この点について説明する。
空調ダクトの振動周波数は、種々の要因によって変動するが、主たる要因は、送風機の回転数に一致する気体の脈動と、空調ダクトの振動面の固有振動数とである。
そこで、まず、送風機の回転数について検討する。事務所や施設、ビルなどの空調において送風機には、一般的に、誘導モーターが用いられている。この誘導モーターの回転数は、供給される交流電源周波数、モーター磁極数、および、すべり率から定まり、通常、15.8〜28.5Hzの範囲に分布する。空調を行う際には、送風機から空調口(吸気口、排気口、送風口)まで、空気が流動し、圧力が空調ダクト全体にわたって伝達される。したがって、送風機による脈動も、空調ダクト全体で発生する。
次に、空調ダクトの固有振動数について、代表的なサイズの空調ダクトをモデル化して、シミュレーションを行った。表1は、シミュレーション結果を示す表であり、図8は、解析結果の代表例を示す図である。
ここで、図9は、本発明の発電装置が取り付けられる代表的な空調ダクトを示す斜視図である。
図9に示すように、ビル施設などの天井裏に使用される空調ダクトのサイズは、縦300〜400mm程度、横300〜400mm程度、および、フランジ間の長さ900〜1,800mm程度である。なお、建物の形状に合わせて、空調ダクトの経路を屈曲させたり、ターンさせる場合は、直線形状とは異なる形状やフランジ間の長さが400mm程度になることがある。このため、かかる場合を想定して、フランジ間の長さを450mm程度に設定にしたモデルについてもシミュレーションを行った。
また、空調ダクトに使用する鋼板の厚さは、0.5mm、0.6mm、0.8mm、1.0mm、1.2mmなどがあり、空調ダクトのサイズによって適宜選択される。そのため、モデルの長さに応じて鋼板の厚さを適切に選択した(表1中のNo.1〜9)。さらに、空調ダクトの軽量化を図るため、極端に薄肉で長い大型の空調ダクトを想定した場合(表1中のNo.10)もモデル化して、シミュレーションを行った。
その結果、No.1〜9の空調ダクトでは、発電に寄与する方向(共振モード)の固有振動数は、14〜42Hzに分布していることがわかる。ここで、発電に寄与する方向(共振モード)とは、図8に示すモード1および2のように、発電装置100の発電方向に振動が発生している場合の空調ダクトの振動方向を言い、図8に示すモード3のように、空調ダクトの側面に振動モードが発生する場合も、発電装置100を空調ダクトの側面に設置することを想定すれば発電装置100の発電に寄与する。
なお、図8に示すモード4のような場合には、発電装置100を振動の節にあたる空調ダクト中央に設置すれば、空調ダクトの振動は発電装置100の発電に寄与しないが、発電装置100を振動の腹へ設置すれば、空調ダクトの振動は発電装置100の発電に寄与する。なお、各空調ダクトのモデルにおいてモードの種類、順位、周波数は異なるため、上記説明におけるモード番号は、各空調ダクトのモデルで共通ではない。
また、No.10の空調ダクト(薄肉の大型空調ダクト)の場合、その固有振動数は6Hz程度と低い。かかる空調ダクトは、その共振周波数より高い周波数での強制振動モデルとなる。すなわち、この場合、空調ダクトの振動面は、脈動による振動の振幅を抑制するように作用するため、共振による増幅は発生しない。しなしながら、空調ダクトの振動面は、薄肉でかつ面積が大きいため、そのバネ定数が低く、かつ、脈動を受ける面積が大きくなる。このため、空調ダクトの振動面は、圧力の力への変換率が大きくなり、結果的に、その変位量が大きくなる。この場合、空調ダクトの振動面は、送風機の脈動周波数に大きく依存する振動モードとなる。
以上のようなことから、送風機の脈動周波数を振動源とし、空調ダクトの固有振動数が影響することにより、空調ダクトの振動が強く発生する周波数帯域は、表1中において太字で示すように、14〜42Hzであることがわかる。
発電装置100は、第1の固有角振動数Ω1、第2の固有角振動数Ω2および質量比μが、それぞれ上述した所定の範囲内の値となるように構成することにより、第1の振動系の第1の固有振動数ω1と第2の振動系の第2の固有振動数ω2とを14〜42Hzの範囲の値とすることができる。そのため、発電装置100(発電部10)は、空調ダクトの振動を効率よく利用して、高い発電効率で発電することができる。
また、発電装置100は、ダクトの脈動周波数と固有振動周波数(固有振動数)とが同調することにより、振動が増幅され易い15〜28Hzを感度帯域(発電装置100の発電に寄与する周波数帯域)に含むことが好ましい。さらに、本発明者の検討によれば、発電装置100の感度帯域を広くすべく、第1の固有振動数ω1と第2の固有振動数ω2との差(間隔)を大きくすると、感度帯域における発電装置100の発電量にバラつきが生じ易くなる傾向を示すことが判っている。
このようなことから、第1の振動系の第1の固有振動数ω1と第2の振動系の第2の固有振動数ω2とが15〜28Hzの周波数帯域を含み、かつ、それらの差が大きくなり過ぎない範囲の値、すなわち14〜38Hzの範囲の値となるよう構成するのが好ましい。具体的には、発電装置100は、14Hzに1次側(低周波側)の固有振動数ω1を有し、28〜38Hzの範囲に2次側(高周波側)の固有振動数ω2を有することが好ましい。これにより、発電装置100は、十分に高い発電量を維持しつつ、発電量のバラつきが十分に抑えられる(12%程度)結果、さらに高い発電効率で発電することができる。
上述したように、Ω1は200〜250rad/Sの範囲の値であり、Ω2は60〜120rad/Sの範囲の値であり、μは0.4〜1の範囲の値である。ただし、Ω1は210〜240rad/Sの範囲の値であり、Ω2は80〜110rad/Sの範囲の値であり、μは0.5〜0.7の範囲の値となるように構成されているのがより好ましい。これにより、発電装置100の各固有振動数ω1、ω2を、より確実に上述したような範囲の値とすることができるとともに、広い感度帯域における発電装置100の発電量にバラつきが生じるのを防止することもできる。したがって、発電装置100は、空調ダクトの振動を効率良く利用して、より高い発電効率で発電することができる。
このような発電装置100では、図7に示すように、第1の共振周波数f1および第2の共振周波数f2付近において、高い発電量(発電能力)を示すが、これらの共振周波数f1、f2付近における発電量同士の差ができるだけ小さくなるよう構成されているのが好ましく、共振周波数f1、f2間の周波数帯域における発電量のバラつきもできるだけ小さくなるよう構成されているのがより好ましい。かかる構成によれば、発電装置100は、感度帯域において効率の良い発電が可能となる。
具体的には、第1の共振周波数f1における発電量をA1[mW/100mG]とし、第2の共振周波数f2における発電量をA2[mW/100mG]としたとき、A1=0.9A2〜1.1A2となるよう構成されているのが好ましく、A1=0.95A2〜1.05A2となるよう構成されているのがより好ましい。
さらに、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2との間の周波数帯域における最小の発電量をA3[mW/100mG]としたとき、A3=0.8[(A1+A2)/2]〜0.9[(A1+A2)/2]となるよう構成されているのが好ましく、A3=0.8[(A1+A2)/2]〜0.85[(A1+A2)/2]となるよう構成されているのがより好ましい。
なお、かかる発電装置100では、各共振周波数f1、f2における発電量A1、A2が、それぞれ、0.6〜1.5mW/100mG程度であるのが好ましく、0.7〜1.2mW/100mG程度であるのがより好ましい。発電装置100が、空調ダクトの振動により上記範囲の発電量を得ることができれば、例えば、以下のような発電システムに有効に利用することができる。
このような発電システムとしては、具体的には、発電装置100と、センサーおよび無線装置とを組み合わせて用いた発電システムが挙げられる。かかる発電システムでは、後述するように、発電装置100からの電力を電源として、センサーにより空調ダクト内や施設内の照度、温度、湿度、圧力、騒音等を計測し、得られた検出データを無線装置を介して外部端末に送信し、この検出データを各種制御信号やモニタリング信号として利用することができる。
また、各共振周波数f1、f2間の周波数帯域における最小の発電量A3は、0.5〜1mW/100mG程度であるのが好ましく、0.6〜0.9mW/100mG程度であるのがより好ましい。これにより、発電装置100は、各共振周波数f1、f2間の周波数帯域において、より高い発電量を得ることができ、例えば、上記のような発電システムにより有効に利用することができる。
上述したように、広い周波数帯域にわたって、効率の良い発電を行う観点からは、各共振周波数f1、f2間の周波数帯域における最小の発電量A3[mW/100mG]は、0.8[(A1+A2)/2][mW/100mG]以上、0.9[(A1+A2)/2][mW/100mG]以下となるよう構成されているのが好ましい。
一方、発電量A3[mW/100mG]が、0.25[(A1+A2)/2][mW/100mG]以上、0.8[(A1+A2)/2][mW/100mG]未満となるよう構成されている場合には、以下のような効果を得ることができる。すなわち、発電量A3に対する発電量A1またはA2の値を大きくする、言い換えれば、感度帯域の少なくとも一端における発電量を大きくすることで、感度帯域から外れかけている周波数(第1の共振周波数f1よりも低周波数、または第2の共振周波数f2よりも高周波数)を持つ振動に対する発電装置100の感度を向上させることができる。これにより、発電装置100の見かけ上の感度帯域を広くすることができる。
このような発電量の関係は、3つのパラメータ(Ω1、Ω2およびμ)の値を上述のような範囲に設定し、さらに、各固有振動数ω1、ω2に対応する減衰係数C2を設定することにより、好適に調整することができる。
本実施形態の発電装置100では、かかる減衰係数C2は、下記式(2)で表される。
上記式(2)で表される減衰係数C2を決定するコイル抵抗値R、コイルインダクタンスLは、コイル41の線材を構成する材料、線径、巻き数等を変更することにより調整することができる。
上記式(2)で表される第1の固有振動数ω1に対応する減衰係数C2は、6〜10[N/(m/s)]であるのが好ましく、7〜9[N/(m/s)]であるのがより好ましい。また、第2の固有振動数ω2に対応する減衰係数C2は、6〜10[N/(m/s)]であるのが好ましく、7〜9[N/(m/s)]であるのがより好ましい。
減衰C2が上記条件を満足すれば、2つの共振周波数f1、f2における発電量A1、A2をほぼ等しくすることができるとともに、発電量A3が発電量A1、A2の80〜85%程度とすることができる。すなわち、発電装置100は、十分に広い周波数帯域にわたって、高い発電量を維持しつつ、発電量のバラつきをより小さく抑えることができる。その結果、発電装置100は、空調ダクトの振動を効率良く利用して、さらに高い発電効率で発電することができる。
このような装置本体1では、図4に示すように、空調ダクトから筐体20に振動が伝達されると、発電部10が、筐体20の内部で上下方向に振動する。より具体的には、筐体20に対して、コイル組立体40が、各板バネ60U、60Lの第1のバネ部64を介して上下方向に振動する(すなわち、第1の振動系が振動する)。また、同様に、コイル組立体40に対して、磁石組立体30が、各板バネ60U、60Lの第2のバネ部65を介して上下方向に振動する(すなわち、第2の振動系が振動する)。
各板バネ60U、60Lは、その構造上、各バネ部64、65の振動方向のバネ定数よりも、振動方向に対してほぼ直交する方向(横方向)のバネ定数の方が大きい。すなわち、各板バネ60U、60Lは、その厚さ方向の剛性よりも、横方向の剛性(横剛性)が高い。そのため、各板バネ60U、60Lは、その横方向よりも、厚さ方向(振動方向)に優先して変形する。また、磁石組立体30とコイル組立体40とは、それぞれ、それらの厚さ方向の両側において、一対の板バネ60U、60Lに固定されている。そのため、磁石組立体30とコイル組立体40とは、各板バネ60U、60Lと一体となって振動する。
このようなことから、磁石組立体30とコイル組立体40とは、各板バネ60U、60Lの厚さ方向とほぼ直交する方向を軸とする直動(横揺れ)および回動(ローリング)が阻止され、それらの振動軸が一定の方向(縦方向)に規制される。また、前述したように、コイル41は、磁石組立体30(永久磁石31およびヨーク33、バックヨーク32)と接触しないように配置されている。
したがって、発電部10が振動する際に、磁石組立体30とコイル41とが互いに接触することが防止される。特に、磁石組立体30とコイル組立体40とは、いずれも、高い剛性を有する剛体であるため、各板バネ60U、60Lの各バネ部64、65と同様に、振動方向とほぼ直交する方向への剛性(横剛性)も高い。そのため、発電部10の振動時においても、磁石組立体30とコイル41とが接触するのが確実に防止される。
これにより、空調ダクトからの振動エネルギーが第1の振動系に効率よく伝達され、この第1の振動系に伝達された振動エネルギーが、さらに第2の振動系に効率よく伝達される。その結果、磁石組立体30とコイル41との相対的な移動が確実になされる。発電部10には、図4に示すように、永久磁石31の中心側からヨーク33を介して外側に向かって流れ、バックヨーク32を介して永久磁石31の中心側に向かって流れる磁界ループが形成されている。
このため、磁石組立体30とコイル41との相対的な移動により、永久磁石31が発生した磁束密度の磁場(磁界ループ)のコイル41を通過する位置が移動する。このとき、磁場が通過するコイル41内の電子が受けるローレンツ力に基づいて起電力が発生する。この起電力が直接的に発電部10の発電に寄与するので、発電部10では、効率的な発電が可能となる。
なお、発電部10において、上側板バネ60Uの第1のバネ部64と、下側板バネ60Lの第1のバネ部64との離間距離は、筐体20の筒状部22側とコイル保持部50側とでほぼ等しく設定しても、異なるように設定してもよい。また、上側板バネ60Uの第2のバネ部65と、下側板バネ60Lの第2のバネ部65との離間距離は、コイル保持部50側と磁石組立体30側(スペーサ70側)とでほぼ等しく設定しても、異なるように設定してもよい。
離間距離を異なるように設定することにより、発電部10が振動していない状態において、第1のバネ部64や第2のバネ部65にプリテンション(初期荷重)を付与することができる。このような構成では、発電装置100を横置きした場合(図12(a)に示す状態)と縦置きした場合(図12(b)に示す状態)との間で、発電部10の姿勢変化を抑制することができる。したがって、かかる発電装置100は、設置場所にかかわらず、効率の良い発電が可能である。
以上説明したような装置本体1には、ベース(支持板)23の下面(発電部10と反対の面)に吸着手段9が設けられている。この吸着手段9を空調ダクトに吸着させることにより、装置本体1(発電装置100)を空調ダクトに固定することができる。
<<吸着手段9>>
図10は、図1に示す発電装置が備える吸着手段の分解斜視図、図11は、図1中のB−B線断面図、図12は、図1に示す発電装置の使用状態(固定状態)を示す図、図13は、図12に示す発電装置を拡大して示す側面図、図14は、図1に示す発電装置の他の使用状態(固定状態)を示す図である。
なお、以下の説明では、図10〜図14中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
図10および図11に示すように、吸着手段9は、複数(本実施形態では、7つ)の磁石組立体91と、磁石組立体91を保持する第1のシート材92と、磁石組立体91の装置本体1と反対側に設けられた第2のシート材93とを備えている。
各磁石組立体91は、円環状をなす小型の永久磁石(磁石ブロック)911と、有底筒状をなし、底部(天井部)に貫通孔が形成されたヨーク912とで構成されている。そして、このヨーク912の内側に、永久磁石911が、例えば永久磁石911自体の磁力による吸着、接着剤による接着等により固定されている。かかるヨーク912を備える構成の磁石組立体91では、永久磁石911の吸引力を増大させることができる。
永久磁石911は、十分な吸引力を発揮することができれば、特に限定されないが、例えば、前述した永久磁石31と同様のものを用いることができる。かかる永久磁石911を用いることにより、空調ダクトの構成材料によらず、発電装置100を十分な吸引力(固定力)で振動体に固定することができるとともに、発電装置100を振動体から取り外す際には、その取り外し操作を容易に行うことができる。すなわち、発電装置100の振動体からの脱着を容易かつ確実に行うことができる。
また、ヨーク912の構成材料としては、飽和磁束密度が高い軟磁性材料が好ましい。ヨーク912をプレス成形により製造することを考慮した場合、その素材には、亜鉛メッキ鋼板、錫めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板のような鉄系材料で構成される基材にメッキを施した板材が好ましく用いられる。
これらの磁石組立体91は、第1のシート材(取付機構)92を介して、ベース23の下面230に取り付けられている。第1のシート材92は、図10に示すように、装置本体1のベース23に固定されるほぼ円形状の固定部921と、この固定部921の側方に延在し、固定部921と一体的に形成された複数の腕部922とを備えている。固定部921は、例えば接着剤による接着等により、ベース23に固定されている。
固定部921の中央部、および、各腕部922の固定部921と反対側の端部には、各磁石組立体91を保持する凹部(保持部)923が形成されている。凹部923内に磁石組立体91が収納され、例えば接着剤による接着等により、固定部921または腕部922に固定されている。また、組立状態において、固定部921の凹部923に保持された磁石組立体91は、ベース23の凹部235内に位置する。
第1のシート材92は、可撓性を有している。これにより、腕部922の凹部923に保持された磁石組立体91(永久磁石911)は、ベース23の厚さ方向に対して変位可能となっている。また、図2に示すように、各腕部922は、発電装置100を平坦面に載置したとき、凹部923(磁石組立体91)が装置本体1より外側に位置するような長さを有している。
これにより、各腕部922の長手方向(長さ方向)の引張剛性を低下させることなく、腕部922同士が接近する方向や、各腕部922の長手方向を中心軸とする捻じり方向への剛性を低下させることができる。その結果、例えば、図14に示す丸型ダクト300のような湾曲面(湾曲部)を備える振動体に対しても、装置本体1を安定的に固定することができる。
また、腕部922は、固定部921の周方向に沿って、ほぼ等間隔(およそ60°間隔)で設けられている。すなわち、回転対称となる位置に、3つの磁石組立体91(永久磁石911)が配置されている。これにより、装置本体1を、その周方向に沿って均等な吸引力により、振動体に固定することができる。また、振動体の振動により、発電装置100が特定の方向に移動するのを防止すること、すなわち、振動体が振動しても、発電装置100を振動体の所定の位置に保持することができる。
特に、本実施形態では、腕部922は、複数の第1の腕部922aと、これらの第1の腕部922aより長さの短い複数の第2の腕部922bとを含み、第1の腕部922a同士の間に、第2の腕部922bが位置するように配置されている。これにより、第1の腕部922aにより、曲率半径の比較的小さい湾曲面を備える振動体に対する装置本体1の固定力(保持力)を向上させ、第2の腕部922bにより、曲率半径の比較的大きい湾曲面や平坦面を備える振動体に対する装置本体1の固定力を向上させることができる。すなわち、腕部922をかかる構成とすることにより、振動体の形状や大きさを選ばず、装置本体1(発電装置100)を振動体に安定的に固定することができる。
なお、固定部921の中心から第1の腕部922aの先端までの長さは、特に限定されないが、ベース23の半径の1.8〜4倍程度であるのが好ましく、2〜3.5倍程度であるのがより好ましい。一方、固定部921の中心から第2の腕部922bの先端までの長さも、特に限定されないが、ベース23の半径の1.2〜2.5倍程度であるのが好ましく、1.2〜2倍程度であるのがより好ましい。
第1のシート材92は、十分な柔軟性および屈曲性を有し、かつ、引張強度が高いものが好ましい。かかる第1のシート材92の素材には、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニル等のフィルムや、これらの高分子材料で構成される繊維を編み込んで作製した織布等を用いることができる。
また、第1のシート材92の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜1.0mm程度であるのが好ましく、0.03〜0.1mm程度であるのがより好ましい。かかる厚さの第1のシート材92は、その構成材料によらず、優れた柔軟性および屈曲性を備えるので、振動体が振動する際に、その振動を阻害することを防止することができる。その結果、発電装置100の発電効率の低下を防止または抑制することができる。
第1のシート材92の下面には、この第1のシート材92の外形とほぼ等しい外形を有する第2のシート材93が固定(ラミネート)されている。第2のシート材93の第1のシート材92に対する固定方法としては、例えば、融着(熱融着、超音波融着、高周波融着)や接着剤による接着等が挙げられる。
第2のシート材93は、装置本体1を振動体に固定した際に、装置本体1の振動体に対する滑りを防止する機能を有する。吸着手段9が第2のシート材93を備えることにより、振動体が激しく振動しても、装置本体1が振動体に対して位置ズレするのをより確実に防止することができる。
第2のシート材93は、摩擦係数が高く、振動体の表面に存在する微小な凹凸を吸収することができるものが好適である。かかる第2のシート材93の構成材料には、例えば、硬度10〜100程度のエラストマー材料(ゴム材料)が好ましく用いられる。このようなエラストマー材料としては、特に限定されないが、例えば、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、低硬度のエラストマー材料を用いることにより、第2のシート材93は、高い粘着性を発揮し、その摩擦係数を好ましくは0.7以上、より好ましくは0.85以上に設定することができる。
また、第2のシート材93の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜2.0mm程度であるのが好ましく、0.3〜1.0mm程度であるのがより好ましい。かかる厚さの第2のシート材93は、その構成材料によらず、優れた柔軟性および屈曲性を備えるので、第2のシート材93が固定された状態で、第1のシート材92の可撓性(柔軟性および屈曲性)が低下するのを防止または抑制することができる。
発電装置100では、上述した吸着手段9によって空調ダクトに固定されるため、発電装置100と空調ダクトとの接触面積を大きくすることができる。これにより、空調ダクトからの振動が吸着手段9を介して発電装置100に効率良く伝達され、その結果、発電装置100は、空調ダクトの振動を効率良く利用して、優れた発電効率で発電することができる。
以上のような発電装置100は、図12に示す角型ダクト200や、図14に示す丸型ダクト(パイプ型ダクト)300のような、磁性材料で構成される空調ダクトに固定して使用される。
図12に示す角型ダクト200は、4つの変形可能な板状部201を備える四角筒状をなしている。角型ダクト200は、例えば、磁性材料で構成された板材(鋼板またはめっき鋼板)を折り曲げ、接合(溶接)すること等により形成されている。かかる角型ダクト200は、蒸気、空気のような気体を移送(排気、換気、吸気、循環)する装置の流路を構成する。
例えば、大型施設、ビル、駅等の施設に設置されている角型ダクト(空調ダクト)200には、施設内の排気や換気を目的として、送風機等により空気を通過させている。このとき、送風機の空気圧の揺れ(脈動)や角型ダクト200内を空気(流体)が移動することで発生する乱気流等により角型ダクト200が振動する。また、角型ダクト200内は、送風機の作用により常に正圧または負圧となっている。かかる圧力に、前述の脈動等による角型ダクト200の振動が加わり、板状部201が変形する。具体的には、角型ダクト200内が正圧の場合には、板状部201は、図13(a)に示すように、角型ダクト200の外側に向かって突出した状態(凸状)に変形し、一方、角型ダクト200内が負圧の場合には、図13(b)に示すように、板状部201が角型ダクト200の内側に向かって突出した状態(凹状)に変形する。このような板状部201の変形によって、角型ダクト200の振動が増幅される。
本発明によれば、磁石組立体91は、可撓性を有する第1のシート材92を介して装置本体1に取り付けられている。このため、仮に、板状部201の表面(発電装置100の取付面)に凹凸が存在しても、この凹凸に追従して第1のシート材92が変形することにより、凹凸による段差を吸収することができる。したがって、板状部201の表面形状によらず、吸着手段9を板状部201に確実に吸着させることができる。さらに、前述したように、板状部201が凸状に変形した状態(図13(a)参照)や、板状部201が凹状に変形した状態(図13(b)参照)となっても、第1のシート材92が、この板状部201の変形に追従して変形する。したがって、吸着手段9の板状部201に対する吸着状態が維持され、発電装置100が角型ダクト200から脱落するのを確実に防止することができる。
なお、本実施形態では、ベース23の下面230は、その中央部を凸とする湾曲凸面を構成している。このため、板状部201が図13(b)に示す状態(凹状)となっても、ベース23の縁部が板状部201に接触し難くなっており、かかる観点からも、発電装置100が角型ダクト200から脱落するのを確実に防止することができる。
ここで、本来、角型ダクト200の振動は、施設内に騒音や不快な振動を発生させる不要な振動である。本発明では、板状部201に吸着手段9を吸着させることにより、装置本体1を角型ダクト200に固定し、角型ダクト200の不要な振動を利用(回生)して発電部10に電力を発生(発電)させることができる。したがって、角型ダクト200が設置されている場所であれば、電源供給配線が存在しなくても、発電装置100から電力を得ることができる。
そして、この発電装置100とセンサーおよび無線装置とを組み合わせることにより、例えば、次のような発電システムを構築することができる。かかる発電システムでは、発電装置100からの電力を電源として、センサーにより角型ダクト200内や施設内の照度、温度、湿度、圧力、騒音等を計測し、得られた検出データを無線装置を介して外部端末に送信し、この検出データを各種制御信号やモニタリング信号として利用することができる。
このような角型ダクト200には、図12(a)に示すように、その天板部を構成する板状部201に発電装置100を固定してもよく、図12(b)に示すように、その側壁部を構成する板状部201に発電装置100を固定するようにしてもよい。
ところで、発電装置100は、発電に寄与する発電部10のサイズを大きくすることにより、すなわち、発電装置100の重量を大きくすることにより、発電能力が高くなる。
ところが、発電装置100の重量が増加すると、その材料コストが増加するという問題がある。また、板状部201の質量およびバネ定数に対し、発電装置100の重量が大きすぎると、板状部201の振動を抑制してしまい、板状部201が十分に振動しない結果、発電装置100から目的とする発電量の電力を得ることができないおそれがある。
一方、発電装置100の重量によっては、角型ダクト200(空調ダクト)の振動特性が影響を受ける。例えば、発電装置100の重量が増加するにしたがって、ダクトの固有振動数が低周波数側にシフトし、また、ダクトに対する重量負荷が大きくなる。その際、送風機などによる加振力が一定であれば、振動振幅は減じられる傾向にあるが、発電装置100の重量を増加しても、固有振動数と原動機(送風機)の脈動周波数とをマッチングすることにより、むしろ振動が増加する現象も起きる。
上記のように、発電装置100では、送風機による加振周波数(脈動周波数)、感度帯域、発電装置100の重量による角型ダクト(空調ダクト)200の固有振動数のバランスを調整することで、更なる最適化が可能であり、さらに言えば、発電装置100の重量を必要最低限としつつも、その発電量を最大限高くすることができる。
上記効果は、具体的には、発電装置100に、その発電量を調整するための錘を取り付けることにより得られる。
かかる構成では、発電装置100の重量は、200〜700gとするのが好ましく、350〜450gとするのがより好ましい。発電装置100の重量が比較的小さい、上記範囲内であれば、その材料コストを十分に抑えつつ、錘を取り付けることによって、十分に大きな発電量を得ることができる。
また、錘の重量は、角型ダクト200に取り付けた発電装置100単独での発電量を測定し、その結果に応じて調整すればよいが、発電装置100と錘とを合わせた重量が、800g以下であるのが好ましく、700g以下であるのがより好ましい。これにより、発電装置100および錘によって角型ダクト200の板状部201の振動を大きく抑制することがなく、角型ダクト(空調ダクト)200の振動を効率良く利用することができる。
ここで、角型ダクト(空調ダクト)200に重量200gおよび400gの発電装置100を固定し、各発電装置100に各重量の錘を取り付けて発電量を測定した結果を示す。表2は、空調ダクトの寸法と発電装置100の取り付け位置を示す表であり、表3は、各重量の発電装置100の発電量の測定結果を示す表である。なお、表2中、「送風機からの距離」とは、空調ダクトの送風機から発電装置100までの距離である。また、表3中、「積算発電量」とは、8秒間の積算発電量である。
表3に示すように、発電装置100の発電量は、測定点No.1〜No.5によって、すなわち、発電装置100の空調ダクトへの設置位置によって異なる。
測定点No.2では、重量200gの発電装置、重量400gの発電装置のいずれもが、錘を追加することにより、その発電量が低下する傾向にあることが分かる。この測定点では、重量400gの発電装置を単体で(すなわち、錘を取り付けずに)空調ダクトに固定することにより、最も高い発電量を得ることができる。
測定点No.4では、総重量300g(100gの錘を取り付けた重量200gの発電装置)の発電装置が、単体で重量400gの発電装置よりも高い発電量(7.26mJ)を得ることができる。したがって、この測定点においては、発電装置の軽量化の観点からは、重量200gの発電装置に100gの錘を取り付けることにより、単体で重量400gの発電装置よりも高い発電量を得ることができる。なお、より高い発電量を得る観点からは、表3に示すように、重量400gの発電装置に200gの錘を取り付けることにより最大の発電量(16.30mJ)を得ることができる。
以上説明したように、発電装置100に錘を取り付けることによって、その発電量を調整することができ、結果として、発電装置100の重量を必要最低限としつつも、その発電量を最大限高くすることができる。
なお、このような錘は、発電装置100に取り付けずに、発電装置100周辺の空調ダクト(角型ダクト200)に直接取り付け(固定)てもよい。錘を空調ダクトに直接固定した場合でも、発電装置100に直接錘を取り付けた場合と同様に、発電装置100の発電量を最大限高くすることができる。
この場合、錘として、永久磁石31や永久磁石911と同様の永久磁石を用いるのが好ましい。錘が永久磁石で構成されていれば、空調ダクトへの取り付け(固定)や、取り付け位置の調整が容易であり、発電装置100の発電量の調整を速やかに行うことができる。
また、発電装置100および錘がそれぞれ空調ダクトに固定された状態において、その離間距離は1〜150mm程度であるのが好ましく、10〜100mm程度であるのがより好ましい。発電装置100から錘までの距離が上記範囲内であれば、発電装置100に錘を直接取り付ける場合と同様の効果をより確実に得ることができる。
このような錘の構成材料としては、例えば、鉛、タングステン等の高比重の各種金属材料およびその合金や、これらの金属材料で構成された金属粒子と樹脂材料との複合材料等を用いることができる。
なお、上述した発電装置100と錘とが、空調ダクト(角型ダクト200)に固定された発電装置100の発電量を調整するための発電装置セット(本願発明の発電装置セット)を構成する。
また、発電装置100の重量を400gとした場合、吸着手段9の板状部201に対する吸引力(磁石組立体91の板状部201に対する吸引力の総和)は、発電装置100の重量より大きくなるよう設定するのが好ましく、具体的には、600g以上に設定するのが好ましい、これにより、天板部を構成する板状部201のいかなる箇所にも、発電装置100を安定的に固定することができる。
なお、発電装置100の振動加速度、および、地震などで発生する外部からの振動を考慮した場合、振動加速度を1G、地震による加速度1Gとすれば、重力加速度1Gを加えて3Gが発電装置100に加わることになる。したがって、発電装置100の重量が400gであれば、吸着手段9の板状部201に対する吸引力を1200g以上に設定するのが好ましい。これにより、図12(b)に示す角型ダクト200の側壁部を構成する板状部201に対しても、発電装置100を安定的に固定することができる。また、吸着手段9の板状部201に対する吸引力が1200g程度であれば、作業者による発電装置100の角型ダクト200からの取り外し操作も容易に行うことができる。
このような吸着手段9の板状部201に対する吸引力は、例えば、永久磁石911の種類(構成材料)や個数、ヨーク912の構成材料等を適宜選択することにより、調整することができる。
一方、図14に示す丸型ダクト300は、例えば、磁性材料で構成された板材(鋼板またはめっき鋼板)を円管状に湾曲させ、接合(溶接)すること等により形成されている。すなわち、丸型ダクト300は、その外周全体にわたって湾曲部(湾曲面)を備えている。かかる丸型ダクト300も、前述した角型ダクト200と同様に、蒸気、空気のような気体を移送(排気、換気、吸気、循環)する装置の流路を構成する。
本実施形態によれば、磁石組立体91は、可撓性を有する第1のシート材92を介して装置本体1に取り付けられている。このため、図14に示す丸型ダクト300のように湾曲面(湾曲部)を有する振動体に対しても発電装置100を固定することができる。
また、前述したように、本実施形態では、第1のシート材92が長さの異なる2種類の腕部922a、922bを備えるため、横断面形状において曲率半径の異なる種類の丸型ダクト300に対しても、発電装置100を確実に固定することができる。
なお、丸型ダクト300についても、その固有振動数をシミュレーションした結果、角型ダクトを例とした表1と同様の結果が得られている。すなわち、発電装置100を丸型ダクト300に取り付けた場合でも、発電装置100を角型ダクト200に取り付けた場合と同様の作用・効果を生じる。
<第2実施形態>
次に、本発明の発電装置の第2実施形態について説明する。
図15は、本発明の発電装置の第2実施形態の基本状態を示す側面図であり、図16は、図15に示す発電装置の振動状態を示す側面図である。なお、以下の説明では、図15および図16中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。また、図15および図16中の左側を「先端」と言い、右側を「基端」と言う。
以下、第2実施形態の発電装置について、前記第1実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態の発電装置100は、図15に示すように、空調ダクトに固定されるフレーム110と、フレーム110の先端側に固定された第1の質量部120と、第1の質量部120の先端側に設けられた第2の質量部130と、第1の質量部120と第2の質量部130とを連結する一対の併設された磁歪素子140とを有している。
また、第1の質量部120は、一対の磁歪素子140、140同士の間に設けられた永久磁石122を備え、第2の質量部130は、対の磁歪素子140、140同士の間に設けられた永久磁石131を備えている。かかる発電装置100では、各永久磁石122および131が発した磁力線が一対の磁歪素子140、140を通過するように構成され、永久磁石122、131と磁歪素子140、140とで磁界ループを形成する。
フレーム110は、発電装置100を空調ダクトに固定するための部分であり、例えば、鉄、ステンレス鋼のような金属製の板材をコの字状に屈曲させることにより形成されている。このフレーム110は、空調ダクトに固定される底板部111と、底板部111の上下両端から立設された一対の側板部112とを備えている。本実施形態では、一対の側板部112により第1のバネ部が構成され、これらの側板部112と第1の質量部120とにより第1の振動系が構成されている。
なお、フレーム110は、底板部111および一対の側板部112を、別部材として形成し、これらを溶接等により接続して構成してもよい。また、底板部111を空調ダクトに固定する方法としては、例えば、ネジ止め、接着剤による接着、カシメ、拡散接合、ピンの圧入、ろう付け、溶接(レーザー溶接、電気溶接等)等を用いることができる。
図15に示すように、この一対の側板部112には、その先端側において、第1の質量部120がピン113の圧入によって固定(保持)されている。
第1の質量部120は、一対の磁歪素子140を先端側に連結する連結部121と、連結部121の基端側に固定された錘123とを有している。連結部121は、略直方体状をなし、その先端側には、高さ方向(図15中、上下方向)の略中央に凹部1211が形成されている。この凹部1211に、各磁歪素子140の基端部が、その間に永久磁石122を介した状態で挿入され、各磁歪素子140と永久磁石122との間、および各磁歪素子140と凹部1211との間が接着剤等により固定されている。
なお、このような連結部121の構成材料としては、磁歪素子140、140および永久磁石122、131とで形成された磁界ループが連結部121により短絡するのを防止する材料が好ましい。そのため、連結部121は、弱磁性材料または非磁性材料で構成されているのが好ましいが、磁界ループの短絡をより確実に防止する観点から、非磁性材料で構成されているのがより好ましい。
錘123は、円筒状をなしており、第1の質量部120全体の質量を調整するためのものである。このような錘123の構成材料としては、例えば、第1実施形態の錘と同様の材料を用いることができ、鉛、タングステン等の高比重の各種金属材料およびその合金や、これらの金属材料で構成された金属粒子と樹脂材料との複合材料等を用いることができる。
第1の質量部120(連結部121)の先端側には、一対の磁歪素子140が連結されている。
各磁歪素子140は、長尺の平板状をなす磁歪棒141と、その外周に巻回されたコイル142とを備えている。この磁歪棒141は、磁歪材料で構成され、磁力線を軸方向に通過させる。また、磁歪棒141は、磁化が生じ易い方向(磁化容易方向)を軸方向として、第1の質量部120と第2の質量部130との間に配置されている。
磁歪棒141は、第1の質量部120側(基端部)を固定端とし、第2の質量部130側(先端部)を可動端として、その軸方向とほぼ垂直な方向(図15中、上下方向)に相対的に変位可能となっている。すなわち、本実施形態では、各磁歪棒(磁歪部材)141により第2のバネ部が構成され、各磁歪棒141と第2の質量部130とにより第2の振動系が構成されている。第2の質量部130が第1の質量部120に対して相対的に変位することにより磁歪棒141が伸縮する。このとき、逆磁歪効果により磁歪棒141の透磁率が変化し、磁歪棒141を通過する磁力線の密度(コイル142を貫く磁力線の密度)が変化することにより、コイル142に電圧が発生する。
このような磁歪棒141は、その厚さ(横断面積)が軸方向に沿ってほぼ一定となっている。磁歪棒141の平均厚さは、特に限定されないが、0.3〜10mm程度であるのが好ましく、0.5〜5mm程度であるのがより好ましい。また、磁歪棒141の平均横断面積は、0.2〜200mm2程度であるのが好ましく、0.5〜50mm2程度であるのがより好ましい。かかる構成により、磁歪棒141の軸方向に磁力線を確実に通過させることができる。
磁歪材料のヤング率は、40〜100GPa程度であるのが好ましく、50〜90GPa程度であるのがより好ましく、60〜80GPa程度であるのがさらに好ましい。かかるヤング率を有する磁歪材料で磁歪棒141を構成することにより、磁歪棒141をより大きく伸縮させることができる。このため、磁歪棒141の透磁率をより大きく変化させることができるので、発電装置100の発電効率をより向上させることができる。
かかる磁歪材料としては、特に限定されないが、例えば、鉄−ガリウム系合金、鉄−コバルト系合金、鉄−ニッケル系合金等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、鉄−ガリウム系合金(ヤング率:約70GPa)を主成分とする磁歪材料が好適に用いられる。鉄−ガリウム系合金を主成分とする磁歪材料は、前述したようなヤング率の範囲に設定し易い。
また、以上のような磁歪材料は、Y、Pr、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tmのような希土類金属のうちの少なくとも1種を含むのが好ましい。これにより、磁歪棒141の透磁率の変化をより大きくすることができる。
かかる各磁歪棒141の外周には、その両端部(第1の質量部120、第2の質量部130との連結部)を除く部分を囲むようにコイル142が巻回(配置)されている。
このコイル142は、線材を磁歪棒141の外周に巻回することにより構成されている。これにより、コイル142は、磁歪棒141を通過している磁力線が、その軸方向に通過する(内腔部を貫く)ように配設されている。このコイル142には、磁歪棒141の透磁率の変化、すなわち、磁歪棒141を通過する磁力線の密度(磁束密度)の変化に基づいて、電圧が発生する。
線材としては、特に限定されないが、例えば、銅製の基線に絶縁被膜を被覆した線材や、銅製の基線に融着機能を付加した絶縁被膜を被覆した線材等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
線材の巻き数は、特に限定されないが、100〜500程度であるのが好ましく、150〜450程度であるのがより好ましい。これにより、コイル142に発生する電圧をより大きくすることができる。
また、線材の横断面積は、特に限定されないが、5×10−4〜0.126mm2程度であるのが好ましく、2×10−3〜0.03mm2程度であるのがより好ましい。このような線材は、その抵抗値が十分に低いため、発生した電圧によってコイル142を流れる電流を効率良く外部に流すことができ、発電装置100の発電効率をより向上させることができる。
なお、線材の横断面形状は、例えば、三角形、正方形、長方形、六角形のような多角形、円形、楕円形等のいかなる形状であってもよい。
磁歪素子140、140の先端側には、第2の質量部130が固定されている。
この第2の質量部130は、磁歪素子140に対して外力や振動を付与する錘として機能する部位である。空調ダクトの振動により、第2の質量部130に対して、上下方向への外力または振動が付与される。これにより、磁歪素子140は、その先端が基端に対して相対的に変位(振動)する。
第2の質量部130は、略直方体状をなし、その基端側には、高さ方向(図15中、上下方向)の略中央に凹部1301が形成されている。この凹部1301に、各磁歪棒141の先端部が、その間に永久磁石131を介した状態で挿入され、各磁歪棒141と永久磁石131との間、および各磁歪棒141と凹部1301との間が接着剤等により固定されている。
なお、第2の質量部130および前述した連結部121の構成材料としては、それぞれ、磁歪棒141および永久磁石122、131とで形成された磁界ループが第2の質量部130により短絡するのを防止する材料が好ましい。そのため、第2の質量部130は、弱磁性材料または非磁性材料で構成されているのが好ましく、特に、非磁性材料で構成されているのがより好ましい。
図15に示すように、磁歪棒141の基端部同士の間に設けられた永久磁石122が、S極を図15中上側に、N極を図15中下側にして配置されている。また、磁歪棒141の先端部同士の間に設けられた永久磁石131が、S極を図15中下側に、N極を図15中上側にして配置されている。すなわち、各永久磁石122、131は、その着磁方向が磁歪棒141(磁歪素子140)の併設方向とほぼ直交するように配設されている。これにより、発電部(発電装置100)には、時計周りの磁界ループが形成されている。
また、永久磁石122および131の構成材料としては、前述した永久磁石31と同様の材料を用いることができる。
以上のような構成の発電装置100は、第1の振動系を構成する一対の側板部112および第1の質量部120と、第2の振動系を構成する一対の磁歪棒141および第2の質量部130とにより、発電部が構成され、フレーム110の底板部111により、発電部を支持する支持部が構成されている。
このような発電装置100は、図16に示すように、フレーム110の底板部111が空調ダクト(角型ダクト200)に固定される。この状態において、空調ダクトからの振動がフレーム110に伝達されると、この振動が一対の側板部112を介して第1の質量部120に伝達されて、第1の質量部120が底板部111(支持部)に対して上下方向に振動する。また、第1の質量部120に伝達された空調ダクトからの振動が、磁歪棒141、141を介して第2の質量部130に伝達され、第2の質量部130が、第1の質量部120に対して上下方向に振動する。この第2の質量部130が上下方向に振動する際に、各磁歪棒141が伸縮するように変形して、各磁歪棒141を通過する磁力線の密度(コイル142の内腔部を軸方向に貫く磁力線の密度)が変化する。これにより、コイル142に電圧が発生する。
以上のような構成の発電装置100では、底板部111に対して、一対の側板部112(第1のバネ部)を介して第1の質量部120が振動する第1の振動系と、第1の質量部120に対して、一対の磁歪棒141、141(第2のバネ部)を介して第2の質量部130が振動する第2の振動系とが形成されている。すなわち、本実施形態の発電装置100も、前述した第1実施形態の発電装置100と同様に、2自由度振動系を構成している。
本実施形態の発電装置100においても、前述した第1実施形態の発電装置100と同様に、第1の質量部120の第1の質量m1[kg]と、一対の側板部112(第1のバネ部)の第1のバネ定数k1[N/m]と、第2の質量部130の第2の質量m2[kg]と、磁歪棒141、141(第2のバネ部)の第2のバネ定数k2[N/m]とを設定して、第1の固有角振動数Ω1が200〜250rad/Sの範囲の値となるように、第2の固有角振動数Ω2が60〜120rad/Sの範囲の値となるように、また、質量比μが0.4〜1の範囲の値となるように構成されている。これらの3つのパラメータのそれぞれの値が上記範囲内であれば、第1の振動系の第1の固有振動数ω1と第2の振動系の第2の固有振動数ω2とが14〜42Hzの範囲の値となる。これにより、発電部(発電装置100)は、空調ダクトの振動を効率よく利用して、結果として高い発電効率で発電することができる。
また、発電装置100の2つの共振周波数f1、f2を定める3つのパラメータ(Ω1、Ω2およびμ)および減衰係数C2を、第1実施形態の発電装置100と同様に設計することにより、前述した第1実施形態の発電装置100と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態の発電装置100において、各固有振動数ω1、ω2に対応する減衰係数C2の値は、コイル142内部を通過する永久磁石122、131からのバイアスの磁束密度とコイル142の巻き数とから定まる逆起電力定数、コイル142の巻き数、線材径から定まる内部インピーダンスやインダクタンスによって調整される。すなわち、減衰係数C2の値は、コイル142の巻き数、線材径を変更することによって調整することができる。
なお、上述した本実施形態の発電装置100では、第1の質量部120側および第2の質量部130側のいずれにも永久磁石122、131を設ける構成について説明したが、これらの永久磁石のうち、一方を磁性材料で構成された部材に変更した構成としてもよい。
また、上述した本実施形態の発電装置100において、発電部の構成としては、図15に示す構成に限られない。例えば、各磁歪素子140と併設され、図15の紙面奥側で第1の質量部120および第2の質量部130と永久磁石を介して連結するヨークを設ける構成としてもよい。この場合、第1の質量部120および第2の質量部130を、いずれも、前述したヨーク33と同様の磁性材料で構成し、かつ、各永久磁石122、131の着磁方向を図15の紙面手前側から奥側(または、紙面奥側から手前側)とする。これにより、2つの磁歪素子140、140に同一方向に磁力線が流れるような磁界ループが形成される発電部とすることができる。なお、このような構成では、各磁歪棒141にコイル142を巻回する(設ける)代わりに、ヨークの外周に巻回するようにしてもよい。
かかる第2実施形態の発電装置100によっても、前記第1実施形態の発電装置100と同様の作用・効果を生じる。
<第3実施形態>
次に、本発明の発電装置の第3実施形態について説明する。
図17は、本発明の発電装置の第3実施形態の基本状態を示す側面図であり、図18は、図17に示す発電装置の振動状態を示す側面図である。なお、以下の説明では、図17および図18中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。また、図17および図18中の左側を「先端」と言い、右側を「基端」と言う。
以下、第3実施形態の発電装置について、前記第1および第2実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第3実施形態の発電装置100は、第2のバネ部の構成を変更した以外は、前記第2実施形態の発電装置100と同様である。すなわち、本実施形態では、第2のバネ部が1つの圧電素子150で構成されている。
図17に示すように、圧電素子150は、弾性変形可能な圧電体層(圧電部材)151と、圧電体層151を介して対向して配置された一対の電極152とを備えている。
圧電体層151は、圧電材料で構成され、帯状(長尺の平板状)をなしている。この圧電体層151は、第1の質量部120側(基端部)を固定端とし、第2の質量部130側(先端部)を可動端として、その軸方向とほぼ垂直な方向(図17中、上下方向)に相対的に変位可能となっている。圧電体層151が変形(伸縮)すると、圧電効果によって、圧電体層151の両表面付近に分極が生じて、一対の電極152間に電圧が発生する。
圧電体層151を構成する圧電材料としては、例えば、チタン酸バリウム、ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶等が用いられる。
圧電体層151の平均厚さは、特に限定されないが、0.05〜1mm程度であるのが好ましく、0.1〜0.3mm程度であるのがより好ましい。これにより、圧電体層151の耐久性を維持しながら、その材料コストを抑えることができる。
また、各電極152を構成する材料としては、Fe、Ni、Co、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、Moまたはこれらを含む合金等の各種金属材料が用いられる。
電極152の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜10μm程度であるのがより好ましい。これにより、電極152の耐久性が向上し、長期間にわたって圧電体層151から電極152が剥離するのを防止することができる。
このような発電装置100は、図18に示すように、空調ダクトからの振動がフレーム110に伝達されると、この振動が一対の側板部112を介して第1の質量部120に伝達されて、第1の質量部120が底板部111(支持部)に対して上下方向に振動する。また、第1の質量部120に伝達された空調ダクトからの振動が、圧電体層151を介して第2の質量部130に伝達され、第2の質量部130が、第1の質量部120に対して上下方向に振動する。この第2の質量部130が上下方向に振動する際に、圧電体層151が変形すると、圧電効果によって、圧電体層151の両表面付近に分極が生じ、一対の電極152間に電圧が発生する。
かかる本実施形態の発電装置100も、前記第2実施形態の発電装置100と同様に、2自由度振動系を構成しており、前記第1および第2実施形態の発電装置100と同様の作用・効果を生じる。
なお、本実施形態の発電装置100において、各固有振動数ω1、ω2に対応する減衰係数C2の値は、圧電体層151の厚みと幅、圧電素子150自体が有する圧電定数を変更することにより調整することができる。
<第4実施形態>
次に、本発明の発電装置の第4実施形態について説明する。
図19は、本発明の発電装置の第4実施形態の横断面図である。なお、以下の説明では、図19中の上側を「上」または「上方」と言い、下側を「下」または「下方」と言う。
以下、第4実施形態の発電装置について、前記第1〜第3実施形態の発電装置との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第4実施形態の発電装置100は、図19に示すように、空調ダクトに固定される筐体(支持部)410と、筐体410内に、図19の左右方向に振動可能に保持された発電部とを有している。この発電部は、エレクトレット層421を有するエレクトレット組立体(第1の質量部)420と、エレクトレット組立体420を介して筐体410と反対側に設けられた電極(第2の質量部)430と、エレクトレット組立体420と筐体410とを連結する一対(2つ)の第1のバネ部440と、電極430とエレクトレット組立体420とを連結する一対(2つ)の第2のバネ部450とを備えている。
一対の第1のバネ部440は、エレクトレット組立体420を、筐体410内で図19の左右方向に振動可能に筐体410に連結し、一対の第2のバネ部450は、電極430を、エレクトレット組立体420上で図19の左右方向に振動可能にエレクトレット組立体420に連結している。
筐体410は、平面視において矩形状をなしており、空調ダクトに固定される底板部411と、底板部411の縁部を囲むように鉛直上方に立設した側板部412とを備えている。この底板部411と側板部412とで規定される凹部(スペース)413に発電部10が収容されている。
筐体410を構成する材料としては、例えば、金属材料、セラミックス材料、樹脂材料等が挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。特に、エレクトレット組立体420が底板部411上を低摩擦(または摩擦無く)で振動することができるのが好ましく、この観点から、金属材料およびセラミックス材料がより好ましい。
この筐体410(凹部413)内には、一対の第1のバネ部440により、エレクトレット組立体(第1の質量部)420が図19の左右方向に振動可能に設けられている。
各第1のバネ部440は、コイルバネで構成されており、一端が筐体410の側板部412に固定され、他端がエレクトレット組立体420に固定されている。
エレクトレット組立体420は、図19に示すように、電極422と、電極422上に積層されたエレクトレット層421と、電極422およびエレクトレット層421を中央に保持するエレクトレット保持部423とを備えている。
エレクトレット層421は、その表面付近に多量の電荷を半永久的に保持する材料から構成されている。
このようなエレクトレット層421を構成する材料としては、各種誘電材料が挙げられ、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂や、結晶構造として、ペロブスカイト構造、ビスマス層状構造、またはタングステンブロンズ構造を有する各種強誘電材料を用いることができる。
エレクトレット層421の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、10〜50μm程度であるのがより好ましい。これにより、エレクトレット層421の耐久性と電荷保持性を維持しながら、材料コストを抑えることができる。
電極422は、前述した電極152と同様の各種金属材料で構成されている。
電極422の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜10μm程度であるのがより好ましい。これにより、電極422の耐久性が向上する。
エレクトレット保持部423は、平面視において、その外形が矩形状をなしており、底部4231と、底部4231の縁部に沿って鉛直上方に立設した側部4232とを備え、第1のバネ部440の伸縮により筐体410の底板部411に対して摺動する。底部4231の中央部には、厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔内に電極422およびエレクトレット層421が固定されている。また、底部4231と4つの側部4232とで規定される凹部(スペース)424に電極430が収容されている。
このエレクトレット保持部423(凹部424)内には、一対の第2のバネ部450により、電極(第2の質量部)430が図19の左右方向に振動可能に設けられている。
各第2のバネ部450は、コイルバネで構成されており、一端がエレクトレット保持部423の側部4232と固定され、他端が電極430と固定されている。
この電極430は、平板状の支持基板431と、支持基板431上に設けられた電極層432とを備えている。この電極層432は、自然状態で、平面視において、エレクトレット層421と重なるように構成されている。
かかる発電装置100では、表面付近に多量の電荷が存在するエレクトレット層421により形成される静電場によって、電極層432に誘導電荷が静電誘導される。電極430がエレクトレット組立体420に対して左右方向に振動することにより、電極層432とエレクトレット層421との平面視において重なり合う面積が変化し、電極層432と電極422との間に電圧が発生する。
支持基板431は、一対の第2のバネ部450と固定され、エレクトレット組立体420に対して左右方向に振動する。支持基板431としては、特に限定されないが、例えば、FPC基板を用いることができる。
電極層432は、前述した電極152と同様の各種金属材料で構成されている。
このような電極層432の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜10μm程度であるのがより好ましい。これにより、電極層432の耐久性が向上し、電極層432が支持基板431から剥がれたり、ひび割れしたりするのを確実に防止することができる。
このような発電装置100は、図19に示すように、筐体410の底板部411が空調ダクト(角型ダクト200)に固定される。この状態において、空調ダクトからの振動が筐体410に伝達されると、この振動が一対の第1のバネ部440を介してエレクトレット組立体420に伝達されて、エレクトレット組立体420が筐体410(支持部)に対して左右方向に振動する。また、エレクトレット組立体420に伝達された空調ダクトからの振動が、一対の第2のバネ部450を介して電極430に伝達され、電極430が、エレクトレット組立体420に対して左右方向に振動する。この電極430が左右方向に振動する際に、電極430(電極層432)とエレクトレット層421との平面視において重なり合う面積が変化し、電極層432と電極422との間に電圧が発生する。
以上のような構成の発電装置100では、筐体410に対して、一対の第1のバネ部440を介してエレクトレット組立体420が振動する第1の振動系と、エレクトレット組立体420に対して、一対の第2のバネ部450を介して電極430が振動する第2の振動系とが形成されている。すなわち、本実施形態の発電装置100も、前述した第1〜第3実施形態の発電装置100と同様に、2自由度振動系を構成している。
そして、本実施形態の発電装置100においても、前述した第1実施形態の発電装置100と同様に、エレクトレット組立体420の第1の質量m1[kg]と、一対の第1のバネ部440の第1のバネ定数k1[N/m]と、電極430の第2の質量m2[kg]と、一対の第2のバネ部450の第2のバネ定数k2[N/m]とを設定して、第1の固有角振動数Ω1が200〜250rad/Sの範囲の値となるように、第2の固有角振動数Ω2が60〜120rad/Sの範囲の値となるように、また、質量比μが0.4〜1の範囲の値となるように構成されている。これらの3つのパラメータのそれぞれの値が上記範囲内であれば、第1の振動系の第1の固有振動数ω1と第2の振動系の第2の固有振動数ω2とが14〜42Hzの範囲の値となる。これにより、発電部10(発電装置100)は、空調ダクトの振動を効率よく利用して、結果として高い発電効率で発電することができる。
また、発電装置100の2つの共振周波数f1、f2を定める3つのパラメータ(Ω1、Ω2およびμ)および減衰係数C2を、第1実施形態の発電装置100と同様に設計することにより、前述した第1実施形態の発電装置100と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態の発電装置100において、各固有振動数ω1、ω2に対応する減衰係数C2の値は、エレクトレット層421と電極層432との離間距離(ギャップ)や、自然状態(無振動状態)におけるエレクトレット層421と電極層432との対向面積を変更することにより調整することができる。また、電極430を、支持基板431上に複数の電極領域を備えるように構成した場合には、電極領域の数を調整することにより減衰係数C2の値を調整することができる。
なお、かかる発電装置100では、エレクトレット組立体420が筐体410に対して振動する際に、筐体410の側板部412(図19の紙面手前側および紙面奥側の側板部412)とエレクトレット組立体420とが離間していてもよいが、接触しているのが好ましい。この場合、エレクトレット組立体420は、筐体410の側板部412と摺接しつつ振動する。したがって、この側板部412は、エレクトレット組立体420の左右方向への振動をガイドするガイド部として機能して、他の方向(紙面手前側または紙面奥側)に振動するのを防止することができる。これにより、空調ダクトの振動によるエレクトレット組立体420の振動効率をより優れたものとすることができ、その結果、発電装置100の発電効率をより向上させることができる。
また、電極430がエレクトレット組立体420に対して振動する際に、エレクトレット組立体420の側部4232(図19の紙面手前側および紙面奥側の側部4232)と電極430とが離間していてもよいが、接触しているのが好ましい。これにより、電極430は、エレクトレット組立体420の側部4232と摺接しつつ振動する。したがって、上記と同様に、この側部4232が、電極430の左右方向への振動をガイドするガイド部として機能し、空調ダクトの振動による電極430の振動効率をより優れたものとすることができる。そして、発電装置100の発電効率をより向上させることができる。
なお、上記の説明では、筐体410およびエレクトレット組立体420の外形が、平面視において矩形状をなしていると説明したが、その他の形状に構成されていてもよい。例えば、筐体410およびエレクトレット組立体420の外形が、それぞれ、円筒状をなしていてもよい。
かかる第4実施形態の発電装置100によっても、前記第1〜第3実施形態の発電装置100と同様の作用・効果を生じる。
以上、本発明の発電装置、発電装置セットおよび発電システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、本発明では、前記第1〜第4実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
以上、本発明の発電装置、発電装置セットおよび発電システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
例えば、本発明では、前記第1〜第4実施形態の任意の構成を組み合わせることもできる。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1、2および比較例1〜3)
図1〜図4に示す構成の発電装置100において、コイル組立体40の第1の質量m1[kg]と、第1のバネ部64の第1のバネ定数k1[N/m]と、磁石組立体30の第2の質量m2[kg]と、第2のバネ部65の第2のバネ定数k2[N/m]とを下記表4に示すように設定し、第1の固有角振動数Ω1、第2の固有角振動数Ω2、質量比μ、第1の振動系の第1の固有振動数ω1および第2の振動系の第2の固有振動数ω2を求めた。また、各固有振動数ω1、ω2に対応する減衰C2を表4に示すように設定した。
図20(a)〜(e)は、上記実施例1、2および比較例1〜3の発電装置における発電量の周波数特性を示すグラフである。各グラフに示される第1の共振周波数f1における発電量A1[mW/100mG]、第2の共振周波数f2における発電量A2[mW/100mG]、および第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2との間の周波数帯域における最小の発電量A3[mW/100mG]を表4に示す。
実施例1および実施例2は、いずれも、第1の固有角振動数Ω1が200〜250rad/Sの範囲の値であり、第2の固有角振動数Ω2が60〜120rad/Sの範囲の値せあり、質量比μが0.4〜1の範囲の値である。その結果、第1の振動系の第1の固有振動数ω1が、14Hzであり、第2の振動系の第2の固有振動数ω2が38Hzである。これらの実施例では、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2との間隔が十分に広く、この広い周波数帯域にわたって、高い発電量を維持しつつ、発電量のバラつきが小さいことが分かる。すなわち、実施例1および実施例2の発電装置は、空調ダクトの振動を効率良く利用して、高い発電効率で発電することができることが分かる。
なお、実施例1と実施例2との比較から、各固有振動数ω1、ω2に対応する減衰C2の値の違いにより、周波数特性を示すグラフ形状が変わることを示しており、実施例1の発電装置の方が、実施例2の発電装置よりも周波数特性のバランスに優れていることが分かる。
一方、比較例1の発電装置では、質量比μが0.4〜1の範囲外の値(1.328)である。その結果、比較例1の発電装置では、第1の振動系の第1の固有振動数ω1が、14Hz未満(13.25Hz)であり、第1の共振周波数f1と第2の共振周波数f2とで発電量のバラつきが大きくなり過ぎてしまう。このような発電装置では、空調ダクトの振動から効率良く発電することはできない。
また、比較例2および比較例3の発電装置では、第1の固有角振動数Ω1が200〜250rad/Sの範囲外の値(比較例2:278rad/S、比較例3:336rad/S)である。その結果、比較例2および比較例3の発電装置では、第2の振動系の第2の固有振動数ω2が、それぞれ、48Hz、58Hzである。これらの発電装置では、感度帯域は広いが、発電量の最大値(各共振周波数f1、f2における発電量)が、低くなり過ぎてしまう。さらに、感度帯域における発電量のバラつきも極めて大きい。