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JP6033733B2 - 遊星歯車機構の組み立て方法 - Google Patents

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JP6033733B2
JP6033733B2 JP2013092220A JP2013092220A JP6033733B2 JP 6033733 B2 JP6033733 B2 JP 6033733B2 JP 2013092220 A JP2013092220 A JP 2013092220A JP 2013092220 A JP2013092220 A JP 2013092220A JP 6033733 B2 JP6033733 B2 JP 6033733B2
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靖章 上原
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Description

本発明は、リングギヤと、サンギヤと、キャリヤと、前記キャリヤに回転自在に支持されて前記リングギヤおよび前記サンギヤに噛合するピニオンと、固定部に固定された環状のキャリヤ保持部材とを備え、前記キャリヤ保持部材の内周面および前記キャリヤの外周面間にグリスが充填された微小な間隙が介在する遊星歯車機構の組み立て方法に関する。
かかる伸縮アクチュエータにおいて、遊星歯車機構のキャリヤをハウジングに対して直接的に回転自在に支持するための支持部を設けることなく、キャリヤに支持した複数のピニオンをリングギヤおよびサンギヤに噛合させることで、キャリヤをハウジングに対して間接的に回転自在に支持するものが、下記特許文献1により公知である。
特開2009−173192号公報
ところで、上記特許文献1に記載された遊星歯車機構は、ハウジング内に回転自在に配置したキャリヤに支持された複数のピニオンが、モータ軸に固定されたサンギヤとハウジングに固定されたリングギヤとに噛合しており、サンギヤの回転を減速してキャリヤに出力するようになっている。キャリヤはベアリングを介してハウジングに直接的に支持されておらず、複数のピニオンがリングギヤおよびサンギヤに噛合することで、キャリヤはハウジングに間接的にフローティング支持されているため、キャリヤが傾き易いという問題があった。またキャリヤおよびピニオンの自重によって、ピニオンがサンギヤおよびリングギヤの歯溝に押し付けられるという問題があった。キャリヤが傾くと、キャリヤに支持したピニオンがリングギヤやサンギヤに対して傾き、それらの噛み合い状態が悪くなって振動や騒音の原因となる可能性があるだけでなく、各ギヤの耐久性が低下する可能性がある。
一方、自重によってピニオンの歯先がサンギヤおよびリングギヤの歯溝に押し付けられると、ピニオンの駆動歯面だけでなく非駆動歯面も噛み合ってしまい、非駆動歯面の噛み合い開始点および終了点での荷重が急激に増加あるいは減少して振動が発生することになる。またピニオンの軸中心の位置が歯面の精度によって変動するので、この点からも振動が発生することになる。さらに、非駆動歯面が噛み合うことにより、非駆動歯面の摩擦力が遊星歯車機構の摩擦力として加算されるので、効率が低下してモータの消費電力が増加する問題がある。
そこで、ハウジングに環状のキャリヤ保持部材を固定し、キャリヤ保持部材の内周面にキャリヤの外周面を微小な間隙を介して対向させることで、キャリヤをセンタリングして傾きを防止することが考えられる。しかしながら、キャリヤは各ギヤの噛み合いによってその中心が定まるものであり、キャリヤの支持精度を向上(間隙→0)させると、ギヤの噛み合いはキャリヤが拘束されることによって逆に悪化し、振動、耐久性ともに悪化する。一方、キャリヤとキャリヤ保持部材との間の間隙が大きくなり、キャリヤおよびピニオンの自重を支持できなくなると、ピニオンがサンギヤおよびリングギヤの歯溝に落下してしまい、キャリヤ保持部材が機能を発揮していないことになる。
このように、キャリヤとキャリヤ保持部材との間の間隙を微妙に調整する必要があるが、前記間隙が円周方向に均一になるようにキャリヤ保持部材を固定する作業が難しく、前記間隙が不均一になるとキャリヤのセンタリング精度が低下してしまう可能性がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、遊星歯車機構のキャリヤを簡単な構造で精度良くセンタリングすることを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、リングギヤと、サンギヤと、キャリヤと、前記キャリヤに回転自在に支持されて前記リングギヤおよび前記サンギヤに噛合するピニオンと、固定部に固定された環状のキャリヤ保持部材とを備え、前記キャリヤ保持部材の内周面および前記キャリヤの外周面間にグリスが充填された間隙が介在する遊星歯車機構の組み立て方法であって、前記固定部に対する前記キャリヤ保持部材の回転を規制する突起部と、前記突起部が緩く係合する孔部と、前記キャリヤ保持部材を前記固定部に固定する固定手段とを備え、前記キャリヤ保持部材の内周面および前記キャリヤの外周面間の間隙にグリスを介在させた状態で、前記孔部および前記突起部を係合させる工程と、前記キャリヤを回転させて前記グリスの膜厚を前記間隙の円周方向に均一化する工程と、前記固定手段で前記キャリヤ保持部材を前記固定部に固定する工程とを含み、前記突起部は前記固定手段を兼ねるボルトであり、前記ボルトの回転方向は前記キャリヤの回転方向と同一であることを特徴とする遊星歯車機構の組み立て方法が提案される
尚、実施の形態のベアリングホルダ42およびリングギヤ61は本発明の固定部に対応し、実施の形態のボルト孔74b,61cは本発明の孔部に対応し、実施の形態のボルト75は本発明の突起部あるいは固定手段に対応する。
請求項1の構成によれば、遊星歯車機構は、リングギヤと、サンギヤと、キャリヤと、キャリヤに回転自在に支持されてリングギヤおよびサンギヤに噛合するピニオンと、固定部に固定された環状のキャリヤ保持部材とを備えており、キャリヤ保持部材の内周面およびキャリヤの外周面間にグリスが充填された間隙を介在させるので、固定部に対してキャリヤをセンタリングすることができる。その際に、固定部に対するキャリヤ保持部材の回転を規制する突起部と、突起部が緩く係合する孔部と、キャリヤ保持部材を固定部に固定する固定手段とを備えるので、突起部および孔部が緩く係合した状態でグリスの粘性によって間隙の大きさを円周方向に均一化し、この状態でキャリヤ保持部材を固定することで、キャリヤ保持部材を簡単かつ高精度にセンタリングすることが可能になる。
たキャリヤ保持部材の内周面およびキャリヤの外周面間の間隙にグリスを介在させた状態で孔部および突起部を係合させ、次にキャリヤを回転させ、次に固定手段でキャリヤ保持部材を固定部に固定するので、グリスの膜厚を均一にして間隙の大きさを円周方向に均一化することで、キャリヤ保持部材のセンタリング精度を高めることができる。
しかも突起部は固定手段を兼ねるボルトであるので、ボルトに二つの機能を持たせて部品点数を削減することができるだけでなく、ボルトの回転方向はキャリヤの回転方向と同一であるので、ボルトを回転させてキャリヤ保持部材を固定する際に、キャリヤ保持部材の位置がずれて間隙の大きさが円周方向に不均一になるのを防止することができる。
以上のように、非常に簡単な組立方法によって、キャリヤの回転中心からキャリヤ保持部材までの間隔を均一に設定することが可能になる。これにより、特別の設備等を必要とせずに生産が可能になり、生産性が向上して大量生産が可能な低コストのシステムを提供できる。またキャリヤの保持が容易になることで振動が低減して商品性が向上し、かつギヤの噛み合いが良好になることでギヤの耐久性が向上する。従って、従前と同じ耐久性を確保するのであれば、ギヤのモジュールを低減してギヤの小型化を図ることができる。さらに、ギヤの噛み合いが良好になることで遊星歯車機構の摩擦トルクが低減するので、遊星歯車機構の駆動源の消費電力を節減することができる。
左後輪のサスペンション装置の斜視図。(第1の実施の形態) 図1の2方向矢視図。(第1の実施の形態) トーコントロールアクチュエータの縦断面図。(第1の実施の形態) 図3の4部拡大図。(第1の実施の形態) 遊星歯車機構および弾性カップリングの分解斜視図。(第1の実施の形態) 図4の6−6線拡大断面図。(第1の実施の形態) 図4の7部拡大図。(第1の実施の形態) 図4の8−8線矢視図。(第1の実施の形態) トーコントロールアクチュエータが湾曲した状態を示す模式図。(第1の実施の形態) キャリヤおよびキャリヤ保持部材の位置関係を示す模式図。(第1の実施の形態
第1の実施の形態
以下、図1〜図10に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1および図2に示すように、四輪操舵車両のダブルウイッシュボーン式のリヤサスペンションSは、後輪Wを回転自在に支持するナックル11と、ナックル11を上下動可能に車体に連結するアッパーアーム12およびロアアーム13と、後輪Wのトー角を制御すべくナックル11および車体を連結するトーコントロールアクチュエータ14と、後輪Wの上下動を緩衝する懸架ばね付きダンパー15等で構成される。
基端をそれぞれゴムブッシュジョイント16,17で車体に連結されたアッパーアーム12およびロアアーム13の先端は、それぞれボールジョイント18,19を介してナックル11の上部および下部に連結される。トーコントロールアクチュエータ14は、基端がゴムブッシュジョイント20を介して車体に連結され、先端がゴムブッシュジョイント21を介してナックル11の後部に連結される。上端を車体(サスペンションタワーの上壁22)に固定された懸架ばね付きダンパー15の下端が、ゴムブッシュジョイント23を介してナックル11の上部に連結される。
トーコントロールアクチュエータ14を伸長駆動すると、ナックル11の後部が車幅方向外側に押されて後輪Wのトー角がトーイン方向に変化し、トーコントロールアクチュエータ14を収縮駆動すると、ナックル11の後部が車幅方向内側に引かれて後輪Wのトー角がトーアウト方向に変化する。従って、ステアリングホイールの操作による通常の前輪の操舵に加えて、車速やステアリングホイールの操舵角に応じて後輪Wのトー角を制御することで、車両の直進安定性能や旋回性能を高めることができる。
次に、図3〜図6に基づいてトーコントロールアクチュエータ14の構造を詳細に説明する。
図3および図4に示すように、トーコントロールアクチュエータ14は、車体側に連結されるゴムブッシュジョイント20が一体に設けられた第1ハウジング31と、ナックル11側に連結されるゴムブッシュジョイント21が一体に設けられた出力ロッド33を伸縮自在に支持する第2ハウジング32とを備えており、第1、第2ハウジング31,32の対向部は、シール部材34を介してインロー嵌合した状態で、各々の結合フランジ31a,32aを複数本のボルト35…で締結して一体化される。第1ハウジング31の内部には駆動源となるブラシ付きのモータ36と、減速機を構成する遊星歯車機構37とが収納され、第2ハウジング32の内部には、弾性カップリング38と、台形ねじを用いた送りねじ機構39とが収納される。これらのモータ36、遊星歯車機構37、弾性カップリング38および送りねじ機構39は、トーコントロールアクチュエータ14の軸線L上に直列に配置される。
モータ36の外郭は、フランジ40aを有するカップ状に形成されたヨーク40と、ヨーク40のフランジ40aに突き当てられたベアリングホルダ42とで構成される。ヨーク40の内周面に支持した環状のステータ43内に配置されるロータ44は、その回転軸45の一端がヨーク40の底部に設けたボールベアリング46に回転自在に支持され、他端がベアリングホルダ42に設けたボールベアリング47に回転自在に支持される。ベアリングホルダ42の内面には、回転軸45の外周に設けたコミュテータ48に摺接するブラシ49が支持される。ブラシ49から延びる導線50は、第1ハウジング31に設けたグロメット51を介して外部に引き出される。
図4および図5に示すように、遊星歯車機構37は、第1ハウジング31の開口部に嵌合して固定されたリングギヤ61と、モータ36の回転軸45の先端に直接形成されたサンギヤ62と、円板状のキャリヤ63と、キャリヤ63に圧入により片持ち支持されたピニオンピン64…にボールベアリング65…を介して回転自在に支持され、前記リングギヤ61および前記サンギヤ62に同時に噛合する3個のピニオン66…とで構成される。遊星歯車機構37は、入力部材であるサンギヤ62の回転を、出力部材であるキャリヤ63に減速して伝達する。
遊星歯車機構37の出力部材であるキャリヤ63は、送りねじ機構39の入力部材である入力フランジ67に弾性カップリング38を介して接続される。概ね円板状の入力フランジ67は、その外周部を一対のスラストベアリング68,69に挟まれて回転自在に支持される。即ち、第2ハウジング32の内周面に環状のロックナット70が締結されており、一方のスラストベアリング68は第2ハウジング32と入力フランジ67との間のスラスト荷重を支持し、他方のスラストベアリング69はロックナット70と入力フランジ67との間のスラスト荷重を支持するように配置される。
図4〜図6から明らかなように、弾性カップリング38は、例えばポリアセタールで構成された2枚の外側弾性ブッシュ71,71と、例えばシリコンゴムで構成された1枚の内側弾性ブッシュ72とを備える。一方の外側弾性ブッシュ71の中心には軸線Lに延びる円筒部71cが一体に形成されており、円筒部71cの外周に内側弾性ブッシュ72および他方の外側弾性ブッシュ71が嵌合する。外側弾性ブッシュ71,71および内側弾性ブッシュ72の外周には各8個の突起71a…,72a…および各8個の溝71b…,72b…が等間隔で形成され、またキャリヤ63および入力フランジ67の対向面には、各4個の爪63a…,67a…が等間隔で軸線L方向に対峙するように突出する。
外側弾性ブッシュ71,71および内側弾性ブッシュ72は突起71a…,72a…の位相が揃うように重ね合わされ、8個の溝71b…,72b…のうちの一つおきの4個にキャリヤ63の4個の爪63a…が係合し、8個の溝71b…,72b…のうちの残りの4個に入力フランジ67の4個の爪67a…が係合する。
従って、キャリヤ63のトルクは、該キャリヤ63の爪63a…から外側弾性ブッシュ71,71および内側弾性ブッシュ72は突起71a…,72a…と、入力フランジ67の爪67a…とを介して、該入力フランジ67に伝達される。その際に、弾性体で構成された外側弾性ブッシュ71,71および内側弾性ブッシュ72が、キャリヤ63および入力フランジ67間の微小な軸線のずれを吸収するとともに、トルクの急変を吸収してスムーズな動力伝達を可能にすることができる。
弾性カップリング38の一方の外側弾性ブッシュ71の中心に形成された円筒部71cの内部にはコイルスプリングよりなる与圧ばね73が収納されており、与圧ばね73は一端部が入力フランジ67に当接して他端部が遊星歯車機構37のキャリヤ63に当接する。その結果、与圧ばね73の弾発力で付勢されたキャリヤ63に120゜間隔で固定した3本のピニオンピン64…の先端は、リングギヤ61の外周部61aから径方向内側に延びる側板部61bに摺動可能に当接する。
このとき、ピニオンピン64に回転自在に支持されたピニオン66の厚さは、ピニオンピン64の長さよりも僅かに大きいため、ピニオン66の端面がキャリヤ63およびリングギヤ61の側板部61b間に挟まれることによってピニオン66の取り付け姿勢を制御する。しかもピニオン66…がリングギヤ61の側板部61bに接触する部分は、歯幅より1段高くなっており、かつ直径が小さくなっている。これは接触部の有効半径を小さくすることにより接触部に生じる摩擦トルクを低減するためで、与圧荷重による摩擦トルクの増加を抑制することができる。また接触部が摩耗してもピニオン66…の歯幅が減少しないようにするためで、強度耐久性を確保するための設計的配慮である。
図4、図5および図8に示すように、環状の本体部74aに3個のボルト孔74b…が形成されたキャリヤ保持部材74と、環状の外周部61aに3個のボルト孔61c…が形成されたリングギヤ61とが、それらのボルト孔74b…,61c…を貫通する3本のボルト75…がベアリングホルダ42の端面に形成したねじ孔42a…に螺合することで共締めされる。キャリヤ保持部材74は、その内周にキャリヤ63の外周面63bを僅かな間隙α(図8参照)を介して取り囲むフランジ部74cを備える。前記間隙αには、潤滑油としてのグリスが充填される。キャリヤ保持部材74のボルト孔74b…の直径と、リングギヤ61のボルト孔61c…の直径とは、それを貫通するボルト75…の直径よりも僅かに大きくされる。
キャリヤ保持部材74は金属板をプレス加工したもので、本体部74aの外周をL字状に折り曲げたフランジ部74cを備える。またキャリヤ63の外周面63bの軸線L方向両端部は円弧状の面取り63c,63c(図7参照)が施されている。
図3から明らかなように、第2ハウジング32の軸線L方向中間部の内周面に第1スライドベアリング81が固定され、また第2ハウジング32の軸線L方向端部に螺合するエンド部材83の内周面に第2スライドベアリング82が固定されており、これら第1、第2スライドベアリング81,82に前記出力ロッド33が摺動自在に支持される。入力フランジ67の回転運動を出力ロッド33の往復運動に変換する送りねじ機構39は、入力フランジ67と一体に形成された雄ねじ部材84と、この雄ねじ部材84の外周に螺合するとともに、中空の出力ロッド33の内周面に嵌合してナット86で固定された雌ねじ部材85とを備える。
出力ロッド33の外周には環状のストッパ87が設けられており、このストッパ87は出力ロッド33が伸長方向に限界位置まで移動したときにエンド部材83の端部に当接する。このストッパ87を設けたことにより、何らかの異常でモータ36が暴走しても、出力ロッド33が第2ハウジング32から脱落するのを確実に防止することができる。
第2ハウジング32と出力ロッド33との隙間に水や塵が侵入するのを防止すべく、第2ハウジング32に形成した環状段部32bと、出力ロッド33に形成した環状溝33aとにブーツ88の両端が嵌合し、それぞれバンド89,90で固定される。出力ロッド33が伸長すると第1、第2ハウジング31,32の内部空間の容積が増加し、逆に出力ロッド33が収縮すると第1、第2ハウジング31,32の内部空間の容積が減少するため、前記内部空間の圧力が変動してトーコントロールアクチュエータ14のスムーズな作動を妨げる虞がある。しかしながら、中空の出力ロッド33の内部空間とブーツ88の内部空間とが、出力ロッド33に形成した通気孔33bを介して連通しているため、前記圧力の変動がブーツ88の変形により緩和されてトーコントロールアクチュエータ14のスムーズな作動が可能になる。
トーコントロールアクチュエータ14を伸縮制御する際に、その出力ロッド33のストローク位置を検出して制御装置にフィードバックすべく第2ハウジング32に設けられたストロークセンサ91は、出力ロッド33の外周面にボルト92で固定された永久磁石93と、この永久磁石93の位置を磁気的に検出するコイル等の検出部94を収納するセンサ本体95とを備える。第2ハウジング32には、出力ロッド33の移動に伴って永久磁石93が干渉するのを回避すべく、軸線L方向に延びる開口32cが形成される。
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
図3において、後輪Wのトー角を変更すべくモータ36を駆動すると、モータ36の回転軸45に固定したサンギヤ62の回転が減速されてキャリヤ63に出力される。キャリヤ63の回転は弾性カップリング38を介して入力フランジ67に伝達され、入力フランジ67と一体の雄ねじ部材84を回転させる。雄ねじ部材84が回転すると、それに螺合する雌ねじ部材85が軸線L方向に移動し、雌ねじ部材85に接続された出力ロッド33が第2ハウジング32から出没することで、トーコントロールアクチュエータ14が伸縮して後輪Wのトー角を変更される。
図9に模式的に示すように、トーコントロールアクチュエータ14が伸長すると、その両端のゴムブッシュジョイント20,21が受ける反力でトーコントロールアクチュエータ14は軸線L方向に強く圧縮され、第1ハウジング31および第2ハウジング32が弧状に湾曲する場合がある。この場合、第1ハウジング31に収納したモータ36の軸線と、第2ハウジング32に収納した送りねじ機構39の軸線とが「く」字状に折れ曲がってしまい、モータ36および送りねじ機構39間に配置した遊星歯車機構37のキャリヤ63がリングギヤ61に対して傾くことで、キャリヤ63に支持したピニオン66…がリングギヤ61やサンギヤ62に正しく噛み合わなくなる。その結果、ピニオン66…がリングギヤ61およびサンギヤ62から受ける軸線L方向の反力でキャリヤ63が送りねじ機構39側に押し出されてしまい、振動や騒音が発生する可能性がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、与圧ばね73の弾発力でキャリヤ63がリングギヤ61の側板部61bに向けて押し戻され、キャリヤ61に設けた3本のピニオンピン64…の先端に回転自在に支持されたピニオン66…がリングギヤ61の側板部61bに押し付けられることで、ピニオン66…およびリングギヤ61の側板部61bの位置関係が平行になり、ピニオン66…およびリングギヤ61の噛合状態が良好に維持される(図4参照)。その理由は、複数のピニオン66…の一つがリングギヤ61の側板部61bから浮き上がろうとしても、与圧ばね73の付勢力で、残りの接地している2個のピニオン66,66を支点としてキャリヤ63に復元モーメントが作用するからである。またリングギヤ61およびモータ36は同じ第1ハウジング31内に支持されているため、リングギヤ61およびサンギヤ62の位置関係は一定であり、よってピニオン66…およびサンギヤ62の噛合状態も良好に維持される。
以上のように、トーコントロールアクチュエータ14の第1ハウジング31および第2ハウジング32が弧状に湾曲しても、遊星歯車機構37のキャリヤ63に支持したピニオン66…はリングギヤ61およびサンギヤ62に正しく噛み合うため、振動や騒音の発生を防止することができる。
ところで、図9に示すように、モータ36の軸線と送りねじ機構39の軸線とが「く」字状に折れ曲がり、与圧ばね73が弧状に撓んで径方向に変位してしまうと、その弾発力をキャリヤ63に有効に作用させられなくなる。しかしながら、本実施の形態によれば、与圧ばね73が弾性カップリング38の一つの外側弾性ブッシュ71の円筒部71c内に収納されているので、円筒部71cで与圧ばね73をガイドすることで径方向の撓みを防止して直線形状を保ち、キャリヤ63を安定した弾発力で付勢して振動や騒音の発生を一層効果的に防止することができる。しかも与圧ばね73のガイド手段を、与圧ばね73を収容する外側弾性ブッシュ71の円筒部71cで構成したので、特別のガイド手段を設ける必要がなくなって部品点数やコストの増加を最小限に抑えることができる。
また与圧ばね73は自己の付勢力により着座面がずれることが抑制されるので、与圧ばね73の着座面の摩耗を抑制し、着座面のずれによるコイルの巻き締め・巻き戻しによる与圧量の増減を抑制し、与圧ばね73を安定した状態に保持することができる。
このように、与圧ばね73によってキャリヤ63の傾きを防止することは可能であるが、与圧ばね73の付勢力は軸線L方向に作用するため、自重によるキャリヤ63の落ち込みを与圧ばね73の付勢力で阻止することは困難であり、キャリヤ63に支持されたピニオン66…がリングギヤ61やサンギヤ62に正しく噛み合わなくなる可能性がある。しかしながら、本実施の形態によれば、リングギヤ61の外周部61aに固定されたキャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面が、キャリヤ63の外周面にグリスが充填された微小な間隙αを介して対向するので、キャリヤ保持部材74でキャリヤ63をセンタリングして自重による落ち込みを防止することができる。
またリングギヤ61は第1ハウジング31に固定されており、かつモータ36(つまりサンギヤ62)も第1ハウジング31に固定されているため、リングギヤ61およびサンギヤ62の同軸性は概ね保証される。このリングギヤ61の歯面とサンギヤ62の歯面とに噛み合うピニオン66…の位置関係によってキャリヤ63はセンタリングされることになり、キャリヤ63はこのセンタリングされた位置を保つようにキャリヤ保持部材74によって概ね支持されるので、ピニオン66…はリングギヤ61およびサンギヤ62と概ね正しく噛み合い、振動や騒音の発生を防止することができる。
以上のように、与圧ばね73およびキャリヤ保持部材74の協働によってキャリヤ63は傾くことなくセンタリングされ、ピニオン66…がリングギヤ61やサンギヤ62に正しく噛み合うことで騒音が低下し、かつ各ギヤの耐久性が向上する。しかもキャリヤ保持部材74が自重によるキャリヤ63の落下を防止するために、与圧ばね73の付勢力を強くせずともキャリヤ63が軸線L方向に押し出されるのを阻止することができ、ピニオン66…とリングギヤ61の側板部bとの間のフリクションの増大を最小限に抑えることができる。
図7(A)に示すように、キャリヤ63が正しくセンタリングされているとき、キャリヤ63の外周面63bとキャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面との間には微小な間隙αが形成されている。この状態からキャリヤ63が外力による曲げモーメント等を受けて径方向に変位してキャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面に接近すると、図7(B)に示すように、前記間隙αが小さくなるため、その部分のグリスの膜厚が薄くなってフリクションが増加する。しかしながら、本実施の形態によれば、キャリヤ63がキャリヤ保持部材74に対して相対的に回転していると間隙αが減少することで、間隙αが減少した部分のグリスの油圧が増加する。これにより、間隙αが減少してもキャリヤ63とキャリヤ保持部材74との潤滑状態を良好に維持することが可能となり、フリクションの増加や接触部における焼き付き等の問題が発生しない。
図10に示すように、キャリヤ63の外周面63bとキャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面との間の間隙αの大きさは、キャリヤ63が万一傾いても、その外周面63bに形成された面取り63c,63cがフランジ部74cの内周面に接触しないように設定されているため、キャリヤ63およびキャリヤ保持部材74が接触してフリクションが増加するのを未然に防止することができる。
しかも、図7(B)に示すように、キャリヤ保持部材74の本体部74aからL字状に屈曲するフランジ部74cが径方向外側に撓むことで間隙αが増加し、グリスの膜厚が厚くなることでフリクションの増加が最小限に抑えられる。このとき、図7(C)に示すように、キャリヤ63の外周面63bには面取り63c,63cが形成されているため、その面取り63c,63cの部分に保持されたグリスが、キャリヤ63の傾きに伴ってキャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面に引き込まれることで、キャリヤ63およびキャリヤ保持部材74の対向部におけるグリスの膜厚を確保してフリクションの増加が最小限に抑えられる。
ところで、キャリヤ保持部材74をボルト75…でリングギヤ61に固定するとき、キャリヤ63の回転中心は、キャリヤ63に回転自在に支承されたピニオン66…の歯面がサンギヤ62の歯面およびリングギヤ61の歯面と噛み合うことで定まるものである。このため、遊星歯車機構37のキャリヤ63の回転中心をサンギヤ62の外径やリングギヤ61の歯先円を基準にして幾何学的に設定するのは困難である。そこで遊星歯車機構37を作動させたときの歯面の噛み合いを基準にしてキャリヤ63の回転中心を定めることが必要になる。本実施の形態では、以下のような方法でキャリヤ63の回転中心を定め、前記間隙αを円周方向に均一化している。
先ず、第1ハウジング31をその軸線Lを鉛直にした状態で固定し、組み立てを開始する。キャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面にグリスを厚めに塗布した状態で、そのフランジ部74cをキャリヤ63の外周面63bに嵌合させる。このとき、キャリヤ63の外周面63bにグリスを塗布しても良いし、両方にグリスを塗布しても良い。続いて3本のボルト75…をキャリヤ保持部材74のボルト孔74b…およびリングギヤ61のボルト孔61c…を貫通させ、ベアリングホルダ42のねじ孔42a…に緩く螺合することで、キャリヤ63の外側にキャリヤ保持部材74を仮保持する。この状態では、図8(A)に示すように、キャリヤ保持部材74は組み付け出来なりの状態になっており、例えばグリスの膜厚は上部で薄く、下部で厚くなっている。
続いてモータ36を一方向に駆動し、第2ハウジング32側から第1ハウジング31側に見て、キャリヤ63を時計方向に回転させると、キャリヤ63とキャリヤ保持部材74とがグリスの剪断抵抗によって共回りする。この回転によって、サンギヤ62→ピニオン66…→リングギヤ61の順に歯面によるトルク伝達が行われるので、キャリヤ63の回転中心が定まる。キャリヤ保持部材74のボルト孔74b…の直径はボルト75…の直径よりも大きいため、キャリヤ保持部材74のセンタリングが阻害されることはなく、キャリヤ63の回転に引きずられてキャリヤ保持部材74が時計方向に回転することで、ボルト孔74b…の回転方向遅れ側の内周面がボルト75…に当接する位置でキャリヤ保持部材74が停止する。
このとき、図8(B)に示すように、キャリヤ保持部材74に対してキャリヤ63が相対回転することでグリスの膜厚が円周方向に一定になる。その結果、キャリヤ保持部材74のフランジ部74cの内周面およびキャリヤ63の外周面63b間の間隙αが円周方向に均一になり、キャリヤ63に対してキャリヤ保持部材74がセンタリングされる。
続いて、緩く仮締めした3本のボルト75…を本締めすることで、キャリヤ保持部材74およびリングギヤ61をベアリングホルダ42に締結する。ボルト75…は時計方向に回転して締まる右ねじであるために、ボルト75…を螺合するときにキャリヤ保持部材74に加わるトルクは、キャリヤ63の回転方向と同じ時計方向になる。このとき、キャリヤ保持部材74は、ボルト孔74b…の回転方向遅れ側の内周面がボルト75…に当接する位置で停止しているので、ボルト75…を螺合する際にキャリヤ保持部材74に時計方向のトルクが加わっても、キャリヤ保持部材74はボルト75によって回転を阻止されるため、一旦完了したセンタリングがずれることはない。
またグリスは組立時にキャリヤ63の全周に概ね塗布されていれば良いので、稼働時には必ずしも間隙αの全周に充填されている必要はない。
以上のように、各歯車の歯面の噛み合いによって、サンギヤ62を基準としてキャリヤ63の回転中心を定めることが可能になり、そのキャリヤ63に対してキャリヤ保持部材74との間隙αを均等に設定することができる。
このように設定することにより、遊星歯車機構37の伝達トルクが低く、歯面の伝達力が低いときに、キャリヤ63が自重で付勢されて下方に落下しようとしても、キャリヤ保持部材74によってキャリヤ63が極端に落下するのを抑制でき、良好な噛み合いを確保することができる
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の遊星歯車機構の用途は、実施の形態で説明したトーコントロールアクチュエータ14に限定されるものではない
またキャリヤ保持部材74が固定される固定部は実施の形態のベアリングホルダ42やリングギヤ61に限定されず、ハウジング等の任意の固定部であっても良い。
42 ベアリングホルダ(固定部
61 リングギヤ(固定部)
61c ボルト孔(孔部)
62 サンギヤ
63 キャリヤ
63b 外周面
66 ピニオン
74 キャリヤ保持部材
74b ボルト孔(孔部)
75 ボルト(突起部あるいは固定手段
α 間隙

Claims (1)

  1. リングギヤ(61)と、サンギヤ(62)と、キャリヤ(63)と、前記キャリヤ(63)に回転自在に支持されて前記リングギヤ(61)および前記サンギヤ(62)に噛合するピニオン(66)と、固定部(61,42)に固定された環状のキャリヤ保持部材(74)とを備え、前記キャリヤ保持部材(74)の内周面および前記キャリヤ(63)の外周面(63b)間にグリスが充填された間隙(α)が介在する遊星歯車機構の組み立て方法であって、
    前記固定部(61,42)に対する前記キャリヤ保持部材(74)の回転を規制する突起部(75)と、前記突起部(75)が緩く係合する孔部(74b,61c)と、前記キャリヤ保持部材(74)を前記固定部(61,42)に固定する固定手段(75)とを備え
    前記キャリヤ保持部材(74)の内周面および前記キャリヤ(63)の外周面(63b)間の間隙(α)にグリスを介在させた状態で、前記孔部(74b,61c)および前記突起部(75)を係合させる工程と、
    前記キャリヤ(63)を回転させて前記グリスの膜厚を前記間隙(α)の円周方向に均一化する工程と、
    前記固定手段(75,76)で前記キャリヤ保持部材(74)を前記固定部(61,42)に固定する工程とを含み、
    前記突起部(75)は前記固定手段(75)を兼ねるボルト(75)であり、前記ボルト(75)の回転方向は前記キャリヤ(63)の回転方向と同一であることを特徴とする遊星歯車機構の組み立て方法
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