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JP6023554B2 - 鱗片状シリカ粒子の製造方法 - Google Patents

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JP6023554B2 JP2012245991A JP2012245991A JP6023554B2 JP 6023554 B2 JP6023554 B2 JP 6023554B2 JP 2012245991 A JP2012245991 A JP 2012245991A JP 2012245991 A JP2012245991 A JP 2012245991A JP 6023554 B2 JP6023554 B2 JP 6023554B2
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Description

本発明は、鱗片状シリカ粒子の製造方法及び鱗片状シリカ粒子に関する。
鱗片状シリカ粒子は、自己造膜性を有し、常温においても強固なシリカ被膜を形成することができる。鱗片状シリカ粒子で形成したシリカ被膜は、特に、耐酸性、耐アルカリ性及び耐熱性に優れる。
特許文献1には、所定の物性を有する鱗片状シリカ粒子の製造方法として、シリカヒドロゲルまたはシリカゾルをアルカリ金属塩の存在下に水熱処理して鱗片状シリカ3次凝集体粒子を形成し、次いで、鱗片状シリカ3次凝集体粒子を湿式解砕装置または環式粉砕・分級機で解砕・分散化して2次粒子からなる鱗片状シリカ粒子を製造する方法が開示されている。
特許文献1に提案されるように、鱗片状シリカ3次凝集体粒子は、2次粒子が凝集したものであり、湿式解砕装置または環式粉砕・分級機で解砕・分散化することで、ある程度微粒化を進めることができる。ここで、得られる鱗片状シリカ粒子に不定形粒子等の大きな粒子が混入すると、シリカ塗膜の緻密性が低下して強度が低下することがある。そのため、鱗片状シリカ粒子の製造方法では、鱗片状シリカ3次凝集体粒子のさらなる微粒化を進めて、大きな粒子の発生を防止することが望まれる。
一方、非特許文献1には、合成したマガディアイトまたはケニアアイトの凝集体をKOH、LiOHまたはNHOHの溶液で処理することで小板形状に分散することが開示されている。非特許文献1では、直径5〜20μmの凝集体を、最大粒子径4μmの小板形状に分散させている(図1及び図3)。
このように、非特許文献1の分散後の粉体には大きな粒子が含まれる。しかし、鱗片状シリカ粒子としては、より小さな粒子径であることが望まれるため、さらなる微粒化が望まれる。また、微粒化においては、全体的に微粒化が進むことが望まれ、不定形粒子等の大きな粒子が混入しないことが望まれる。
また、非特許文献1のマガディアイト及びケニアアイトの他に、鱗片状シリカ粒子としては、結晶構造がシリカ−X及びシリカ−Yであるものが硬化性組成物として適している。これらの結晶構造の鱗片状シリカ粒子での微粒化についての開発が望まれる。
特許4063464号公報
Kosuge et al.,Langmuir 1996,12,p1124−1126
本発明の目的としては、不定形粒子の発生を防いで鱗片状シリカ粒子を提供することである。
本発明の一側面としては、鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体を含むシリカ粉体をpH2以下で酸処理する工程、前記酸処理したシリカ粉体をpH8以上でアルカリ処理し、前記シリカ凝集体を解膠する工程、及び前記アルカリ処理したシリカ粉体を湿式解砕し、鱗片状シリカ粒子を得る工程を含む、鱗片状シリカ粒子の製造方法である。
である。
本発明の他の側面としては、上記鱗片状シリカ粒子の製造方法によって製造された、鱗片状シリカ粒子である。
本発明によれば、不定形粒子の発生を防いで鱗片状シリカ粒子を提供することができる。
図1は、実施例1のシリカ分散体に含まれるシリカ凝集体のTEM写真である。 図2は、実施例1のシリカ分散体のアルカリ処理後のシリカ粒子のTEM写真である。 図3は、実施例1のシリカ分散体の湿式解砕後のシリカ粒子のTEM写真である。 図4は、実施例2のシリカ分散体の湿式解砕後のシリカ粒子のTEM写真である。 図5は、実施例3のシリカ分散体の湿式解砕後のシリカ粒子のTEM写真である。 図6は、比較例1のシリカ分散体の湿式解砕後のシリカ粒子のTEM写真である。 図7は、実施例1〜3のゼータ電位を示すグラフである。
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本実施形態における例示が本発明を限定することはない。
本発明の一実施形態による鱗片状シリカ粒子の製造方法としては、鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体を含むシリカ粉体をpH2以下で酸処理する工程、酸処理したシリカ粉体をpH8以上でアルカリ処理し、シリカ凝集体を解膠する工程、及び前記アルカリ処理したシリカ粉体を湿式解砕し、鱗片状シリカ粒子を得る工程を含むことを特徴とする。
このような製造方法によれば、不定形粒子の発生を防いで鱗片状シリカ粒子を提供することができる。このような鱗片状シリカ粒子を用いて硬化性組成物等を製造することで、鱗片状シリカ粒子が密につまって塗膜を形成することができ、塗膜強度を高めることができる。
ここで、鱗片状シリカ粒子としては、薄片状のシリカ1次粒子及び/または薄片状のシリカ1次粒子が互いに面間が平行的に配向し複数枚重なって形成される鱗片状のシリカ2次粒子から構成されるものである。この鱗片状のシリカ2次粒子は通常積層構造の粒子形態を有する。また、薄片状のシリカ1次粒子及び鱗片状のシリカ2次粒子は、単独の状態でも、または組み合わせた状態でも、鱗片状シリカ粒子を構成することができる。
また、鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体としては、個々の鱗片状シリカ粒子が凝集して不規則に重なり合って形成される間隙を有する凝集体形状のシリカ3次粒子である。
また、不定形粒子としては、シリカ凝集体がある程度解砕されているが、個々の鱗片状シリカ粒子まで解砕されていない状態であり、複数の鱗片状シリカ粒子で塊を形成する形状である。
鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体としては、いわゆる層状ポリケイ酸及び/またはその塩を用いることができる。ここで、層状ポリケイ酸としては、基本構成単位がSiO四面体からなるシリケート層構造のポリケイ酸である。層状ポリケイ酸及び/またはその塩としては、例えばシリカ−X(SiO−X)、シリカ−Y(SiO−Y)、ケニアアイト、マガディアイト、マカタイト、アイラアイト、カネマイト、オクトシリケート等を挙げることができる。これらの中でもシリカ−X及びシリカ−Yが好ましい。
シリカ−X及びシリカ−Yは、シリカ原料を水熱処理して、クリストバライトや石英(クオーツ)を形成させる過程で生じる、中間的なまたは準安定な相であり、シリカの準結晶質ともいうべき微弱な結晶相である。
なお、シリカーX及びシリカーYは、X線回折パタ−ンは異なるが、電子顕微鏡で観察される粒子外観は極似しており、いずれも鱗片状シリカ粒子を得るために好ましく使用することができる。
シリカーX及びシリカーYのX線回折のスペクトルとしては、シリカ−Xでは米国のASTM(American Society for Testing and Materials)に登録されているカード(以下、単にASTMカードと称する。)番号16−0380に該当する2θ=4.9°、26.0°、及び28.3°の主ピークを特徴とし、シリカ−YではASTMカード番号31−1233に該当する2θ=5.6°、25.8°及び28.3°の主ピークを特徴とする。シリカ凝集体のX線回折のスペクトルとしては、これらのシリカーX及び/またはシリカーYの主ピークを特徴とするものが好ましい。
「シリカ粉体の形成」
シリカ粉体の形成方法の一例としては、シリカヒドロゲル、シリカゾル及び含水ケイ酸のうち1種以上をアルカリ金属塩の存在下に水熱処理し、鱗片状シリカ粒子が凝集した凝集体を含むシリカ粉体を形成する方法がある。なお、シリカ粉体は、この方法に限定されず任意の方法で形成されたものも含む。
(a)出発原料として、シリカヒドロゲルを使用する場合は、シリカ凝集体としてシリカ−X、シリカ−Y等をより低温度・短時間の反応で、クオーツ等の結晶を生成させることなく、しかも収率高く形成することができる。シリカヒドロゲルは、粒子状シリカヒドロゲルが好ましく、その粒子形状は、球状でも不定形粒状でもよく、また、その造粒方法は適宜選択できる。
例えば、球状のシリカヒドロゲルの場合では、シリカヒドロゾルを石油類その他の媒体中で、球形状に固化せしめて生成することもできるが、ケイ酸アルカリ金属水溶液と鉱酸水溶液を混合して、シリカゾルを短時間で生成させるとともに、気体媒体中に放出し、気体中でゲル化させる方法により製造されることが好ましい。鉱酸水溶液としては、硫酸水溶液、塩酸、硝酸等を挙げることができる。
すなわち、ケイ酸アルカリ金属水溶液と鉱酸水溶液とを、放出口を備えた容器内に別個の導入口から導入して瞬間的に均一混合し、SiO濃度換算で130g/L以上、pH7〜9であるシリカゾルを生成せしめ、これを、上記放出口から、空気等の気体媒体中に放出させ、空中でゲル化させる。これに水を張った熟成槽に落下せしめて数分〜数十分熟成させ、酸を添加・水洗して球状のシリカヒドロゲルとする。
このシリカヒドロゲルは、粒径がよく揃った平均粒子径2〜10mm程度の透明で弾力性を有する球状粒子であり、SiOに対して重量比で約4倍もの水を含有している場合もあり、シリカヒドロゲル中のSiO濃度は、15〜75質量%が好ましい。
(b)シリカゾルを出発原料とする場合は、シリカ及びアルカリ金属を特定量含むシリカゾルを使用することが好ましい。シリカゾルとしては、シリカ/アルカリ金属のモル比(SiO/MeO、ここでMeは、Li、Na又はK等のアルカリ金属を示す。以下、同じ。)が1.0〜3.4であるケイ酸アルカリ金属水溶液を、イオン交換樹脂法又は電気透析法等によって脱アルカリしたシリカゾルが好適に使用される。なお、ケイ酸アルカリ金属水溶液としては、例えば、水ガラス(ケイ酸ナトリウム水溶液)を適宜水で希釈したもの等が好ましい。
シリカゾルのシリカ/アルカリ金属のモル比(SiO/MeO)は、3.5〜20の範囲が好ましく、4.5〜18の範囲がより好ましい。また、シリカゾル中のSiO濃度は、2〜20質量%が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。
シリカゾル中のシリカの平均粒子径は1〜100nmが好ましい。平均粒子径が100nm超であると、シリカゾルの安定性が低下するので好ましくない。シリカゾルの中でも活性ケイ酸と称される平均粒子径1〜20nm以下のものが特に好ましい。
(c)含水ケイ酸を出発原料として使用する場合、シリカゾルと同様の方法でシリカ凝集体を含むシリカ粉体を形成することができる。
(d)次に、上記したシリカヒドロゲル、シリカゾル、含水ケイ酸またはこれらの組み合わせであるシリカ源を、アルカリ金属塩の存在下に、オートクレーブ等の加熱圧力容器中で加熱して水熱処理を行い、シリカ凝集体を含むシリカ粉体を形成することができる。
オートクレーブとしては、特にその形式を限定するものではないが、少なくとも加熱手段と撹拌手段、及び好ましくは、温度測定手段を備えたものであればよい。
なお、シリカ源を水熱処理するため、オートクレーブに仕込むに先立って、さらに蒸留水やイオン交換水等の精製水を加えることにより、シリカ濃度を所望の範囲に調整することもできる。
球状シリカヒドロゲルを使用する場合は、そのまま使用してもよいが、粉砕又は粗粉砕して、粒径0.1〜6mm程度としてもよい。
オートクレーブ内の処理液中の総シリカ濃度は、撹拌効率、結晶成長速度、収率等を考慮して選択されるが、通常、全仕込み原料基準でSiOとして1〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。ここで、処理液中の総シリカ濃度としては、系内の総シリカ濃度を意味し、シリカ源中のシリカのみでなく、アルカリ金属塩としてケイ酸ナトリウム等を使用した場合は、ケイ酸ナトリウム等により系に持ち込まれるシリカをも加えた値である。
水熱処理においては、シリカ源にアルカリ金属塩を共存させることで、処理液のpHをアルカリ側に調節し、シリカ溶解度を適度に大きくし、所謂Ostwaldの熟成に基づく晶析速度を高め、シリカヒドロゲルのシリカ−X及び/またはシリカ−Yへの変換を促進させることできる。
ここでアルカリ金属塩としては、水酸化アルカリ金属、ケイ酸アルカリ金属又は炭酸アルカリ金属等、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。アルカリ金属としては、Li、Na、K等、またはこれらの組み合わせを挙げることができる。系のpHとしては、pH7以上が好ましく、pH8〜13がより好ましく、pH9〜12.5がさらに好ましい。
アルカリ金属とシリカとの合計量に対する好ましいアルカリ金属の量を、シリカ/アルカリ金属のモル比(SiO/MeO)で表示すれば、4〜15の範囲であることが好ましく、7〜13の範囲がより好ましい。
シリカゾル及び含水ケイ酸の水熱処理は、反応速度を大きく、かつ、結晶化の進行を小さくするため、温度150〜250℃の範囲で行われることが好ましく、温度170〜220℃の範囲で行われることがより好ましい。また、シリカヒドロゾル及び含水ケイ酸の水熱処理の時間は、水熱処理の温度や種晶の添加の有無等により変わりうるが、通常、3〜50時間が好ましく、3〜40時間がより好ましく、5〜25時間がさらに好ましい。
シリカヒドロゲルの水熱処理は、150〜220℃の温度範囲で行われることが好ましく、160〜200℃がより好ましく、170〜195℃がさらに好ましい。また、必要な水熱処理の時間は、シリカヒドロゲルの水熱処理の温度や種晶の添加の有無等により変わりうるが、通常、3〜50時間が好ましく、5〜40時間がより好ましく、5〜25時間程度がさらに好ましく、5〜12時間程度が一層好ましい。
なお、水熱処理を効率よく進め、処理時間を短くするためには、その添加は必須ではないが、シリカ源の仕込み量に対して0.001〜1質量%程度の種晶を添加するとより好ましい。種晶としては、シリカ−Xやシリカ−Y等をそのまま、又は適宜粉砕して使用することができる。
水熱処理終了後、生成物をオートクレーブより取り出し、濾過、水洗する。水洗処理後の粒子は、10質量%の水スラリーとした際に、pH5〜9であることが好ましく、pH6〜8であることがより好ましい。
「シリカ粉体」
上記して形成されたシリカ粉体には、鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体が含まれる。このシリカ凝集体は、個々の鱗片状シリカ粒子が凝集して不規則に重なり合って形成される間隙を有する凝集体形状のシリカ3次粒子である。これは、上記して形成された粉体を走査型電子顕微鏡(以下「SEM」と称することがある。)を用いて観察することで確認することができる。
ここで、SEMでは、薄片状のシリカ1次粒子は識別できず、シリカ1次粒子が互いに面間が平行的に配向し複数枚重なって形成される鱗片状のシリカ2次粒子を識別することができる。
一方、透過型電子顕微鏡(以下「TEM」と称することがある。)を使用して観察すると、電子線が一部透過するような極薄片粒子であるシリカ1次粒子を識別することができる。また、このシリカ1次粒子が互いに面間が平行的に配向し複数枚重なって形成されてシリカ2次粒子を形成することを識別することができる。このシリカ1次粒子及びシリカ2次粒子が鱗片状シリカ粒子である。
鱗片状のシリカ2次粒子から、その構成単位である薄片状のシリカ1次粒子を1枚ずつ剥離し、単離することは難しいとされている。すなわち、薄片状のシリカ1次粒子の層状の重なりにおいて、各層間の結合は強固であって融合一体化しており、従って鱗片状のシリカ2次粒子は、それ以上シリカ1次粒子に解砕することは難しいとされている。本実施形態の方法によれば、シリカ凝集体から、鱗片状のシリカ2次粒子まで微細化することができ、さらに薄片状のシリカ1次粒子まで微細化することも可能である。
上記して形成されたシリカ粉体の平均粒子径としては、7〜25μmであることが好ましく、7〜11μmであることがより好ましい。
「酸処理」
本実施形態は、鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体を含むシリカ粉体をpH2以下で酸処理する工程を含む。これによって、後工程のアルカリ処理においてシリカ凝集体の解膠を促進することができ、湿式解砕工程後に不定形粒子の発生を防ぐことができる。
また、酸処理を行うことで、シリカ粉体に含まれるアルカリ金属塩を除去することができる。シリカ粉体が水熱処理によって形成されたものである場合、水熱処理においてアルカリ金属塩が添加されているため、これを除去することができる。
酸処理のpHは2以下であればよい。く、より好ましくは1.9以下である。あらかじめ低いpHで酸処理しておくことで、後工程のアルカリ処理及び湿式解砕工程においてシリカ凝集体をより解膠及び解砕しやすくすることができる。
酸処理としては、特に制限されないが、シリカ粉体を含む分散体(スラリー状の分散体も含む。以下同じ。)に、系のpHが2以下になるように酸性液を添加して、任意で攪拌しながら処理することができる。酸処理は、特に制限されないが、処理を十分に行うために、室温下で8時間以上で行うとよい。
酸性液としては、硫酸、塩酸、硝酸等の水溶液を用いることができる。これらの濃度は、1〜37質量%で調整することができる。
シリカ分散体中のシリカ濃度は、5〜15質量%であることが好ましい。また、シリカ分散体のpHは、10〜12であることが好ましい。
シリカ分散体と酸性液との配合割合については、pH2以下となるように調整すればよく、特に制限されない。
シリカ分散体は酸処理後、洗浄することが好ましい。これによって、水熱処理で混入したアルカリ金属塩が酸処理によって中和された生成物を、除去することができる。
洗浄方法としては、特に制限されず、濾過洗浄、遠心洗浄等を用いて水洗することが好ましい。
洗浄後のシリカ分散体には、水を添加または濃縮して、固形分量を調整することができる。また、濾過洗浄などでシリカケーキとして回収される場合は、水を添加して分散体とすることができる。また、洗浄後のシリカ分散体のpHとしては4〜6であることが好ましい。
「アルミン酸処理」
酸処理後のシリカ粉体は、任意にアルミン酸処理をしてもよい。これによって、シリカ粉体中のシリカ粒子の表面にアルミニウム(Al)を導入させて、負に帯電させるように表面改質をすることができる。この負に帯電したシリカ粉体は、酸性媒体に対する分散性を高めることができる。
アルミン酸処理としては、特に制限されないが、シリカ粉体を含む分散体にアルミン酸塩の水溶液を添加して、任意で攪拌して混合し、その後、加熱処理してシリカ粒子表面にAlを導入することができる。混合は、0.5〜2時間で10〜30℃の範囲で行うとよい。加熱は、加熱還流条件で行うことが好ましく、4時間以上で80〜110℃の範囲で行うとよい。
アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましくはアルミン酸ナトリウムであり、SiOに対するAlのモル比は、0.00040〜0.00160で調整するとよい。
アルミン酸塩の水溶液としては、濃度が1〜3質量%で調整するとよい。アルミン酸塩の水溶液は、シリカ分散体中のSiO100質量部に対し、5.8〜80.0質量部で添加することができる。
シリカ分散体中のシリカ濃度は、5〜20質量%であることが好ましい。また、シリカ分散体のpHは、6〜8であることが好ましい。
アルミン酸処理後のシリカ分散体には、水を添加または濃縮して、固形分量を調整することができる。また、アルミン酸処理後のシリカ分散体のpHとしては6〜8であることが好ましい。
「アルカリ処理」
次に、本実施形態は、上記酸処理したシリカ粉体をpH8以上でアルカリ処理し、シリカ凝集体を解膠する工程を含む。なお、アルミン酸処理を行う場合は、アルミン酸処理後のシリカ粉体を用いる。これによって、シリカ凝集体の強固な結合を解膠して、個々の鱗片状シリカ粒子の形態に近づけることができる。
ここで、シリカ凝集体を解膠することは、シリカ凝集体に電荷を与え、個々のシリカ粒子を媒体中に分散させることを意味する。アルカリ処理によって、シリカ粉体に含まれるシリカ粒子のほぼ全量が個々の鱗片状シリカ粒子に解膠されてもよく、その一部のみが解膠されて凝集体が残っていてもよい。また、シリカ分散体に含まれるシリカ凝集体は、すべての部分が個々の鱗片状シリカ粒子に解膠されてもよく、その一部分のみが解膠されて凝集体部分が残っていてもよい。残った凝集体は、後工程の湿式解砕工程で個々の鱗片状シリカ粒子に解砕することが可能である。
アルカリ処理のpHは8以上であればよく、より好ましくは8.5以上であり、一層好ましくは9以上である。これによって、シリカ粉体に含まれるシリカ凝集体の解膠を促進することができる。また、アルカリ処理後にシリカ凝集体が残ったとしても、シリカ凝集体のシリカ粒子の結合を弱めることができ、後工程の湿式解砕工程において個々のシリカ粒子に解砕しやすくすることができる。
アルカリ処理としては、特に制限されないが、シリカ粉体を含む分散体に、pHが8以上になるようにアルカリ性液を添加して、任意で攪拌しながら処理することができる。アルカリ性液の代わりにアルカリ金属塩及び水を別々に添加してもよい。アルカリ処理は、1〜48時間、好ましくは2〜24時間で10〜50℃の範囲で行うとよい。
アルカリ金属塩としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩等、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。アルカリ性液としては、これらのアルカリ金属塩を含む水溶液を用いることができる。また、アルカリ性液としてアンモニア水(NHOH)を用いてもよい。シリカを含む分散体に添加された状態で、アルカリ金属塩の濃度((アルカリ金属塩の質量)/(シリカ分散体中の水分とアルカリ金属塩の合計質量))は、0.01〜28質量%で調整することができ、より好ましくは0.04〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2.5質量%である。また、アルカリ金属塩は、シリカ分散体中のシリカ1gに対し0.4〜2.5mmolで調整すればよく、0.5〜2mmolであることがより好ましい。
シリカ分散体中のシリカ濃度は、3〜7質量%であることが好ましい。また、シリカ分散体のpHは、8〜11であることが好ましい。
シリカ分散体とアルカリ性液との配合割合については、pH8以上となるように調整すればよく、特に制限されない。
アルカリ処理後のシリカ分散体に含まれるシリカ粉体の平均粒子径としては、3〜10μmであることが好ましく、4〜8.5μmであることがより好ましい。
アルカリ処理後のシリカ分散体には、水を添加または濃縮して、固形分量を調整することができる。また、アルカリ処理後のシリカ分散体のpHとしては8.0〜12.5であることが好ましい。
「湿式解砕」
次に、本実施形態は、上記アルカリ処理したシリカ粉体を湿式解砕し、鱗片状シリカ粒子を得る工程を含む。ここで、アルカリ処理したシリカ粉体には、シリカ凝集体が解膠されて、一部残存したシリカ凝集体とともに、シリカ凝集体がある程度微粒化された状態でシリカ粒子が含まれる。これを湿式解砕することで、これらのシリカ粒子をさらに解砕して、個々の鱗片状シリカ粒子を得ることができる。あらかじめ、アルカリ処理しておくことで、湿式解砕においてシリカ粒子の解砕を促進することができる。そのため、シリカ粒子が十分に解砕されずに不定形粒子として残ることを防ぐことができる。
湿式解砕するための装置としては、粉砕媒体を使用して機械的に高速撹拌する方式の湿式ビーズミル、湿式ボールミル、薄膜旋回型高速ミキサー、衝撃粉砕装置(ナノマイザ等)等の湿式粉砕装置(解砕装置)等を用いることができる。特に、湿式ビーズミルに直径0.2〜1mmのアルミナ又はジルコニア等の媒体ビーズを使用すると、鱗片状シリカ粒子の基本的な積層構造を極力粉砕・破壊しないように、解砕・分散化することができるため好ましい。また、衝撃粉砕装置は、80〜1000μmの細い管に、粉体を含む分散体を圧力をかけて投入して、分散体中の粒子同士を衝突させて分散させるものであり、粒子をより微細に解砕することができる。
また、湿式粉砕するシリカ粉体は、蒸留水やイオン交換水等の精製水等で分散体として、適当な濃度にして湿式粉砕装置に供給することが好ましい。分散体濃度は0.1〜20質量%が好ましい。解砕効率や粘度上昇による作業効率を考慮すると0.1〜15質量%がより好ましい。
「カチオン交換処理」
湿式解砕後のシリカ粉体は、任意にカチオン交換処理をしてもよい。これによって、シリカ粉体に含まれるカチオン、特に金属イオンを除去することができる。
カチオン交換処理としては、特に制限されないが、シリカ粉体を含むシリカ分散体にカチオン交換樹脂を添加して、任意で攪拌しながら処理することができる。カチオン交換処理は、0.5〜24時間で10〜50℃の範囲で行うとよい。
カチオン交換樹脂の樹脂母体としては、例えば、スチレン−ジビニルベンゼン等のスチレン系、(メタ)アクリル酸系等を挙げることができる。また、カチオン交換樹脂としては、水素型(H型)カチオン交換樹脂が好ましく、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基又はリン酸基等を有するカチオン交換樹脂を挙げることができる。カチオン交換樹脂は、シリカ分散体中のSiO100質量部に対し、3〜20質量部で添加することができる。
シリカ分散体中のシリカ濃度は、3〜20質量%であることが好ましい。また、シリカ分散体のpHは、4以下であることが好ましい。
「鱗片状シリカ粒子」
上記製造方法によって、鱗片状シリカ粒子を得ることができる。鱗片状シリカ粒子は、薄片状のシリカ1次粒子、薄片状シリカの1次粒子が互いに面間が平行的に配向し複数枚重なって形成される鱗片状のシリカ2次粒子、またはこれらの組み合わせから構成される。シリカ粉体をTEMを用いて観察することで、鱗片状シリカ粒子の形状を確認することができる。
得られるシリカ鱗片状シリカ粒子を含むシリカ粉体の平均粒子径としては、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜4μmがより好ましく、0.1〜2μmが一層好ましい。上記して製造されるシリカ粉体では、粒子径の大きい不定形粒子量を少なくすることができるため、粒子の平均粒子径をさらに0.4μm以下とすることができ、特に0.3μm以下とすることができる。
鱗片状のシリカ2次粒子の厚さは、0.001〜3μmであることが好ましく、より好ましくは0.005〜2μmである。シリカ2次粒子の厚さに対する最長長さの比(アスペクト比)は、少なくとも10、好ましくは30以上、さらに好ましくは50以上である。このシリカ2次粒子の厚さに対する最小長さの比は、少なくとも2、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上である。なお、このシリカ2次粒子は、融着することもなく互いに独立に存在していることが好ましい。
また、薄片状のシリカ1次粒子は、その平均厚さが0.001〜0.1μmであることが好ましい。このようなシリカ1次粒子は、互いに面間が平行的に配向して1枚または複数枚重なった鱗片状のシリカ2次粒子を形成することができる。
本実施形態による製造方法によれば、不定形粒子の発生を防いで鱗片状シリカ粒子を得ることができる。不定形粒子は、シリカ凝集体がある程度微粒化されているが、個々の鱗片状シリカ粒子まで微粒化されていない状態であり、複数の鱗片状シリカ粒子で塊を形成する形状である。もちろん、得られる鱗片状シリカ粒子には、シリカ凝集体の混入を防ぐことができる。
不定形粒子及びシリカ凝集体は、いずれも、TEM観察において黒色状に観察されるものとして確認することができる。一方、鱗片状または薄片状のシリカ2次粒子または1次粒子は、TEM観察において透明ないし半透明状に観察される。
また、本実施形態による鱗片状シリカ粒子のシリカ純度は、95.0質量%以上とすることができ、より好ましくは99.0質量%以上である。
「鱗片状シリカ粒子」
本実施形態による鱗片状シリカ粒子としては、上記した製造方法によって製造された鱗片状シリカ粒子を含むことを特徴とする。鱗片状シリカ粒子としては、粉体状であってもよく、粉体を媒体に分散させた分散体状であってもよい。鱗片状シリカ粒子を含むシリカ分散体としては、上記した湿式解砕後に、任意にカチオン交換処理をした後、そのままの状態で、または、水分を濃縮または希釈して使用することができる。また、シリカ分散体の水分を除去して有機溶媒を添加して使用してもよい。有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、灯油、軽油等を挙げることができる。ここで、シリカ分散体中のシリカ濃度は、1〜80質量%であることが好ましい。
「硬化性組成物」
上記した製造方法によって製造された鱗片状シリカ粒子は、硬化性組成物に含まれる成分として用いることができる。この鱗片状シリカ粒子は、上記した鱗片状シリカ粒子と同様に、粉体状であっても分散体状であってもよい。また、硬化性組成物中のシリカ濃度は、1〜80質量%であることが好ましい。
硬化性組成物は、鱗片状シリカ粒子とともに、塗膜形成性を有する樹脂をさらに含んでもよく、樹脂としては水性エマルションであることが好ましい。樹脂としては、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、スチレン樹脂系、シリコーン樹脂系、フッ素樹脂系、酢酸ビニル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、ポリエステル樹脂系等及びこれらの共重合体並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。
硬化性組成物は、金属、ガラス、セラミックス、プラスチックス等の基材上に塗布されて、塗膜等の硬化体を形成することができる。
また、硬化性組成物は、粒子結着剤(バインダー)、建物や構築物の外装用あるいは内装用塗料・コーティング剤、熱的機能(耐熱、断熱、防火・難燃など)を有する塗料・コーティング剤、光学的機能(紫外線遮蔽、光選択吸収、発光・蛍光など)を有する塗料・コーティテング剤、電気・磁気的機能(電気絶縁、導電性、帯電防止、電波吸収、電磁波遮蔽など)を有する塗料・コーティング剤、吸着機能(水分の吸着・脱着、ガスの吸着・脱着、薄層クロマトグラフィーなど)を有する塗料・コーティング剤及び吸着剤粒子の粒子結着剤(バインダー)、触媒機能(光触媒など)を有する塗料・コーティング剤及び触媒粒子の粒子結着剤(バインダー)、対生物機能(抗菌、防黴、船底防汚、水産栄養、細胞培養など)を有する塗料・コーティング剤、芳香、消臭機能を有する塗料・コーティング剤等の種々の用途に用いることができる。
以下、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。固形分の単位は「質量%」を単に「%」と示す。
(実施例1)
「シリカ分散体の作製」
出発原料のシリカヒドロゲルは、ケイ酸ナトリウムをアルカリ源として次のようにして調整した。SiO/NaO=3.0(モル比)、SiO濃度21.0質量%であるケイ酸ナトリウム水溶液2000ml/minと、硫酸濃度20.0質量%の硫酸水溶液とを、放出口を備えた容器内に別個の導入口から導入して瞬間的に均一混合して、放出口から空中に放出される液のpHが7.5〜8.0になるように2液の流量比を調整し、均一混合されたシリカゾル液を放出口から連続的に空気中に放出させた。放出された液は、空気中で球形液滴となり、放物線を描いて約1秒間滞空する間に空中でゲル化した。落下地点には、水を張った熟成槽を置いておき、ここに落下せしめて熟成させた。
熟成後、pHを6に調整し、さらに十分水洗して、シリカヒドロゲルを得た。得られたシリカヒドロゲル粒子は、粒子形状が球形であり、平均粒子径が6mmであった。このシリカヒドロゲル粒子中のSiO質量に対する水の質量比率は、4.55倍であった。
上記シリカヒドロゲル粒子を、ダブルロールクラッシャーを用いて平均粒子径2.5mmに粗粉砕して、次の水熱処理に用いた。
容量17mのオートクレーブ(アンカ−型攪拌羽根付き)に、系内の総SiO/NaOモル比が12.0なるように、上記粒径2.5mmのシリカヒドロゲル(SiO18質量%)6201Kg及びケイ酸ナトリウム水溶液(SiO28.72質量%、NaO9.33質量%、SiO/NaO=3.18(モル比)))1400Kgを仕込み、これに水1500kgを加え、10rpmで攪拌しながら飽和圧力17kgf/cmの高圧水蒸気を3381kg加え185℃まで昇温し、その後5時間水熱処理を行った。系内の総シリカ濃度は、SiOとして12.5質量%であった。
合成後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出し、透過型顕微鏡(TEM)を用いて観察した結果を図1に示す。図1に示すように、シリカ分散体には、シリカ凝集体が含まれることが観察された。レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所製「LA−950」、以下同じ)でのシリカ粒子の平均粒子径は8.71μmであった。
「酸処理」
合成後のシリカ分散体(固形分14.1%、pH11.0)6500gをスターラーで撹拌しながら、硫酸濃度20.0質量%の硫酸水溶液736gを加えた。添加後のpHは1.9であった。そのまま室温下で24時間撹拌を継続し処理を行った。
「洗浄」
酸処理後のシリカ分散体は、シリカ1g当たり50mlの水でろ過洗浄を行った。洗浄後のシリカケーキを回収し、水を加えスラリー状に調製した。このシリカ分散体の赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製「FD−60」、以下同じ)での固形分は15.4%、pHは5.1であった。
「アルカリ処理」
洗浄後のシリカ分散体2500gをスターラーで撹拌しながら、水酸化カリウム21.6g(1mmol/g−シリカ)及び水5200gを加えた。添加後のpHは9.4であった。そのまま室温下で23時間撹拌を継続し処理を行った。
アルカリ処理後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出し、透過型顕微鏡(TEM)を用いて観察した結果を図2に示す。図2に示すように、シリカ分散体には、のシリカ凝集体が解膠されたシリカ粒子が含まれることが観察された。また、アルカリ処理後のシリカ粒子の平均粒子径は7.71μmであった。
「湿式解砕」
アルカリ処理後のシリカ分散体を、超高圧湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製「ナノマイザNM2−2000AR」、孔径120μmのμmの衝突型ジェネレータ)を用い、吐出圧力140MPaで32パスで処理を行い、シリカ粒子を解砕・分散化した。解砕後のシリカ分散体のpHは9.0、シリカ粒子の平均粒子径は0.169μmであった。
湿式解砕後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出し、透過型顕微鏡(TEM)を用いて観察した結果を図3に示す。図3に示すように、シリカ分散体には、鱗片状シリカ粒子が含まれることが観察された。
「カチオン交換」
湿式解砕後のシリカ分散体12914gにカチオン交換樹脂(三菱樹脂株式会社製「ダイヤイオンSK1B」、以下同じ)2583mlを添加し、オーバーヘッドスターラーで撹拌しながら、室温下で24時間処理した。その後、カチオン交換樹脂を分離した。カチオン交換後のシリカ分散体のpHは3.9であった。
「評価」
図1から図3のTEM写真に示す通り、シリカ分散体に含まれるシリカ凝集体が、酸処理、アルカリ処理及び湿式解砕を通して、鱗片状シリカ粒子にまで微粒化されることが観察された。
また、得られたシリカ分散体に含まれるシリカ粒子の平均粒子径は、湿式解砕後と同じであり、0.169μmであった。また、得られたシリカ分散体の赤外線水分計での固形分は、2.7%であった。
(実施例2)
上記実施例1と同様にして、シリカ分散体を作製し、酸処理及び洗浄を行った。
「アルカリ処理」
洗浄後のシリカ分散体389.6gをスターラーで撹拌しながら水酸化カリウム3.4g(1mmol/g−シリカ)及び水810.4gを加えた。添加後のpHは9.4であった。そのまま室温下で19.5時間撹拌を継続し処理を行った。また、アルカリ処理後のシリカ粒子の平均粒子径は7.82μmであった。
「湿式解砕」
アルカリ処理後のシリカ分散体を、湿式媒体撹拌ミル(寿工業株式会社製「ウルトラアペックスミルUAM−015」、ベッセル容量170ml、φ0.05mmジルコニアビーズ80%充填)を用い、ディスク周速6m/sec、滞留時間60分になるよう循環処理を行い、シリカ粒子を解砕・分散化した。解砕後のシリカ分散体のpHは9.0、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置での平均粒子径は0.194μmであった。
湿式解砕後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出し、透過型顕微鏡(TEM)を用いて観察した結果を図4に示す。図4に示すように、シリカ分散体には、鱗片状シリカ粒子が含まれることが観察された。
「カチオン交換」
解砕後のシリカ分散体180gにカチオン交換樹脂16mlを添加し、オーバーヘッドスターラーで撹拌しながら、室温下で16.5時間処理。その後、カチオン交換樹脂を分離した。カチオン交換後のシリカ分散体のpHは3.8であった。
「評価」
得られたシリカ分散体からシリカ粒子を取り出し、TEMにより形状観察したところ、僅かに不定形粒子を含むが大半が鱗片状粒子であることが観察された。
また、得られたシリカ分散体に含まれるシリカ粒子の平均粒子径は、湿式解砕後と同じであり、0.194μmであった。
また、得られたシリカ分散体の赤外線水分計での固形分は、4.3%であった。
(実施例3)
「シリカ分散体の作製」
上記実施例1と同様にして、シリカヒドロゲルを作製した。
上記シリカヒドロゲル粒子を、ダブルロールクラッシャーを用いて平均粒子径2.5mmに粗粉砕して、次の水熱処理に用いた。
容量17mのオートクレーブ(アンカ−型攪拌羽根付き)に、系内の総SiO/NaOモル比が12.0なるように、上記粒径2.5mmのシリカヒドロゲル(SiO18質量%)7249Kg及びケイ酸ナトリウム水溶液(SiO29.00質量%、NaO9.42質量%、SiO/NaO=3.18(モル比)))1500Kgを仕込み、これに水1560kgを加え、10rpmで攪拌しながら飽和圧力17kgf/cmの高圧水蒸気を4682kg加え185℃まで昇温し、その後5時間水熱処理を行った。系内の総シリカ濃度は、SiOとして12.5質量%であった。
合成後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出した。また、シリカ粒子の平均粒子径は8.33μmであった。
「酸処理」
合成後のシリカ分散体(固形分13.3%、pH11.4)10100gをスターラーで撹拌しながら、硫酸濃度20質量%の硫酸水溶液1083g加えた。添加後のpHは1.5であった。そのまま室温下で18時間撹拌を継続し処理を行った。
「洗浄」
酸処理後のシリカ分散体は、シリカ1g当たり50mlの水でろ過洗浄を行った。洗浄後のシリカケーキを回収し、水を加えスラリー状に調製した。このシリカ分散体の赤外線水分計での固形分は14.7%、pHは4.8であった。
「アルミン酸処理」
洗浄後のシリカ分散体7000gを10Lのフラスコへ入れ、オーバーヘッドスターラーで撹拌しながら、2.02質量%濃度のアルミン酸ナトリウム水溶液197g(Al/SiOモル比=0.00087)を少量ずつ加えた。添加後のpHは7.2であった。添加後、室温下で1時間撹拌を継続した。その後、昇温し加熱還流条件で4時間処理を行った。
「アルカリ処理」
アルミン酸処理後のシリカ分散体775gをスターラーで撹拌しながら、水酸化カリウム43.5g(1mmol/g−シリカ)、及び水1381gを加えた。添加後のpHは9.9であった。そのまま室温下で24時間撹拌を継続し処理を行った。また、アルカリ処理後のシリカ粒子の平均粒子径は7.98μmであった。
「湿式解砕」
アルカリ処理後のシリカ分散体を、超高圧湿式微粒化装置(吉田機械興業株式会社製「ナノマイザNM2−2000AR」、孔径120μm衝突型ジェネレータ)を用い、吐出圧力130〜140MPaで30パスで処理を行い、シリカ粒子を解砕・分散化した。解砕後のシリカ分散体のpHは9.3、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置での平均粒子径は0.182μmであった。
湿式解砕後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出し、透過型顕微鏡(TEM)を用いて観察した結果を図5に示す。図5に示すように、シリカ分散体には、鱗片状シリカ粒子が含まれることが観察された。
「カチオン交換」
解砕後のシリカ分散体1550gにカチオン交換樹脂161mlを添加し、オーバーヘッドスターラーで撹拌しながら、室温下で17時間処理。その後、カチオン交換樹脂を分離した。カチオン交換後のシリカ分散体のpHは3.7であった。
「評価」
得られたシリカ分散体からシリカ粒子を取り出し、TEMにより形状観察したところ、不定形粒子を実質的に含まない鱗片状シリカ粒子のみであることが確認された。
また、得られたシリカ分散体に含まれるシリカ粒子の平均粒子径は、湿式解砕後と同じであり、0.182μmであった。
また、得られたシリカ分散体の赤外線水分計での固形分は、3.6%であった。
(比較例1)
「シリカ分散体の作製」
上記実施例1と同様にして、シリカヒドロゲルを作製した。
上記シリカヒドロゲル粒子を、ダブルロールクラッシャーを用いて平均粒子径2.5mmに粗粉砕して、次の水熱処理に用いた。
容量17mのオートクレーブ(アンカ−型攪拌羽根付き)に、系内の総SiO/NaOモル比が12.0なるように、上記粒径2.5mmのシリカヒドロゲル(SiO18質量%)7600Kg及びケイ酸ナトリウム水溶液(SiO28.63質量%、NaO9.34質量%、SiO/NaO=3.16(モル比)))1800Kgを仕込み、これに水4669kgを加え、10rpmで攪拌しながら飽和圧力17kgf/cmの高圧水蒸気を3381kg加え185℃まで昇温し、その後6時間水熱処理を行った。系内の総シリカ濃度は、SiOとして12.5質量%であった。
合成後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出した。また、シリカ粒子の平均粒子径は8.01μmであった。
「酸処理」
合成後のシリカ分散体(固形分13.1%、pH11.5)を2.0〜2.5L/分の流量でアクリル製の60L槽へ連続的に添加し、オーバーヘッドスターラーで撹拌しながら硫酸濃度20.0質量%の硫酸水溶液を連続的に加え、槽内のシリカ分散体をpH3.5に保持した。そのまま室温下で約40分撹拌を継続し処理を行った。
「洗浄」
酸処理後のシリカ分散体を、2.0〜2.5L/分の流量で水平ベルトフィルター(月島機械株式会社製「502型月島水平ベルトフィルター」)へ供給し、シリカ1g当たり10mlの水でろ過洗浄を行った。洗浄後のシリカケーキを回収し、水を加えスラリー状に調製した。このシリカ分散体の赤外線水分計での固形分は13.3%、pHは6.1であった。
「湿式解砕」
洗浄後のシリカ分散体を湿式媒体撹拌ミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製「ダイノーミルKD−25C」、ベッセル容量25L、φ0.5mmジルコニアビーズ80%充填)を用い、ディスク周速16m/sec、流量60L/hで1パス処理を行い、シリカ粒子を解砕・分散化した。解砕後のシリカ分散体のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置での平均粒子径は0.426μmであった。
湿式解砕後のシリカ分散体を濾過及び洗浄してシリカ粉体を取り出し、透過型顕微鏡(TEM)を用いて観察した結果を図6に示す。図6に示すように、シリカ分散体には、黒色状に観察される不定形粒子が多く含まれることが観察された。
「評価」
得られたシリカ分散体からシリカ粒子を取り出し、TEMにより形状観察したところ、不定形粒子が多く混在する鱗片状粒子であることが確認された。
また、得られたシリカ分散体に含まれるシリカ粒子の平均粒子径は、湿式解砕後と同じであり、0.426μmであった。
また、得られたシリカ分散体の赤外線水分計での固形分は、13.5%であった。
上記した実施例及び比較例の工程条件及び評価結果を表1にまとめて示す。
表1では、不定形粒子の存在をシリカ分散体に含まれるシリカ粒子をTEM観察して、以下の基準で評価した。ここで、不定形粒子は、TEM写真において黒色状に観察される粒子であり(図6参照)、鱗片状粒子は透明ないし半透明に観察される粒子である(図3〜5参照)。
A:シリカ粒子に不定形粒子が確認されず、鱗片状粒子のみであった。
B:シリカ粒子に僅かに不定形粒子が確認されたが、シリカ粒子数の半数以上が鱗片状粒子であった。
C:シリカ粒子に不定形粒子がシリカ粒子数の半数超過の割合で混在する鱗片状粒子であった。
Figure 0006023554
図3〜5のTEM写真及び表1に示す通り、実施例1から3のシリカ分散体は、不定形粒子をほとんど含まず、鱗片状のシリカ粒子からなった。
比較例1のシリカ分散体は、図6のTEM写真及び表1に示す通り、鱗片状のシリカ粒子の他に、黒色状に観察される不定形粒子を含んだ。
(ゼータ電位の測定)
上記実施例1から3で得られたカチオン交換後のシリカ分散体に、10mMのNaCl水溶液をシリカ濃度0.05%になるよう添加し混合した。これに所定量のHClもしくはNaOH水溶液を加えて任意のpHに調整し、測定用サンプルを作製した。このサンプルをゼータ電位計(マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS」)によりn=3で測定し、その平均値をシリカ分散体のゼータ電位とした。結果を図7に示す。
図7に示す通り、実施例3のアルミン酸処理をしたものでは、特に酸性域において高い負の電位が得られた。このことから、アルミン酸処理を行うことで、酸性液中での分散安定性が向上することがわかる。

Claims (8)

  1. 鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体を含むシリカ粉体をpH2以下で酸処理する工程、
    前記酸処理したシリカ粉体をpH8以上でアルカリ処理し、前記シリカ凝集体を解膠する工程、及び
    前記アルカリ処理したシリカ粉体を湿式解砕し、鱗片状シリカ粒子を得る工程を含む、
    鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  2. 前記鱗片状シリカ粒子が凝集したシリカ凝集体を含むシリカ粉体のX線回折分析での主ピークがシリカ−X及び/またはシリカ−Yに該当するピークである、請求項1に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  3. 前記湿式解砕後のシリカ粉体の平均粒子径は0.01μm〜5μmである、請求項1または2に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  4. 前記アルカリ処理は、LiOH、KOH及びNaOHのうち1種以上の水溶液で前記シリカ粉体を処理する、請求項1から3のいずれか1項に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  5. 前記鱗片状シリカ粒子が、薄片状のシリカ1次粒子及び/または薄片状のシリカ1次粒子が互いに面間が平行的に配向し複数枚重なった鱗片状のシリカ2次粒子である、請求項1から4のいずれか1項に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  6. シリカヒドロゲル、シリカゾル及び含水ケイ酸のうち1種以上をアルカリ金属塩の存在下に水熱処理し、鱗片状シリカ粒子が凝集した凝集体を含むシリカ粉体を形成する工程をさらに含み、前記形成したシリカ粉体を前記酸処理工程で用いる、請求項1から5のいずれか1項に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  7. 前記酸処理したシリカ粉体をアルミン酸で処理する工程をさらに含み、前記アルミン酸で処理したシリカ粉体を前記アルカリ処理工程で用いる、請求項1から6のいずれか1項に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
  8. 前記湿式解砕したシリカ粉体をカチオン交換処理する工程をさらに含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の鱗片状シリカ粒子の製造方法。
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