以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔第1実施形態:インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すインクジェット記録装置10は、オンデマンド型インクジェット記録装置である。
インクジェット記録装置10は、記録媒体12を保持して搬送する記録媒体搬送部14と、記録媒体搬送部14に保持された記録媒体12に対して、K(黒)、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)に対応するカラーインクを吐出させるインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yを含む印字部17と、を含んで構成されている。
また、図1では図示が省略され、図2に符号40を付して図示されるメンテナンス処理部を備えている。メンテナンス処理部は、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yに対してダミージェット(予備吐出、フラッシング)、吸引等のメンテナンス処理を施す手段である。
記録媒体搬送部14は、記録媒体12が保持される記録媒体保持領域に多数の吸着穴(不図示)が設けられた無端状の搬送ベルト18と、搬送ベルト18が巻き掛けられる搬送ローラ(駆動ローラ20、従動ローラ22)と、記録媒体保持領域の搬送ベルト18の裏側(記録媒体12が保持される記録媒体保持面と反対側の面)に設けられ、記録媒体保持領域に設けられた不図示の吸着穴にと連通しているチャンバー24と、チャンバー24に負圧を発生させる真空ポンプ26と、を含んでいる。
記録媒体12が搬入される搬入部28には、記録媒体12の浮きを防止するための押圧ローラ30が設けられるとともに、記録媒体12が排出される排出部32にもまた、押圧ローラ34が設けられている。
搬入部28から搬入された記録媒体12は、記録媒体保持領域に設けられた吸着穴から負圧が付与され、搬送ベルト18の記録媒体保持領域に吸着保持される。
記録媒体12の搬送路上には、印字部17の前段側(記録媒体搬送方向上流側)に、記録媒体12の表面温度を所定範囲に調整するための温度調節部36が設けられるとともに、印字部17の後段側(記録媒体搬送方向下流側)に、記録媒体12上に記録された画像を読み取る読取装置(読取センサ)38が設けられている。
搬入部28から搬入された記録媒体12は、搬送ベルト18の記録媒体保持領域に吸着保持され、温度調節部36による温度調節処理が施された後に、印字部17において画像記録が行われる。
図1に示すように、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yは、記録媒体搬送方向の上流側からこの順番で配置されている。記録媒体12がインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの直下を通過する際に、記録媒体12に対してKCMYの各色のインクを吐出させて、所望のカラー画像が形成される。
なお、印字部17は上述した形態に限定されない。例えば、LC(ライトシアン)やLM(ライトマゼンタ)に対応するインクジェットヘッド16LC,16LMを具備してもよい。また、インクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yの配置順も適宜変更可能である。
画像記録がされた記録媒体12は、読取装置38によって記録画像(テストパターン)が読み取られた後に、排出部32から排出される。
〔メンテナンス処理部〕
図2は、インクジェットヘッド16に対してメンテナンス処理を施すメンテナンス処理部の概略構成図である。以降の説明において、色ごとのインクジェットヘッド16K,16C,16M,16Yを区別する必要がない場合は、符号16を付してインクジェットヘッドを表すこととする。
同図に示すメンテナンス処理部40は、インクジェットヘッド16を記録媒体搬送部14上の画像形成位置(画像形成位置に配置されるインクジェットヘッド16を破線により図示)から、記録媒体12の搬送方向と直交する方向、又は記録媒体12の搬送方向と交差する斜めに水平移動させた位置に配置されている。
すなわち、画像形成位置に配置されているインクジェットヘッド16は、一旦上方向へ移動し(画像形成位置から上方向へ移動させたインクジェットヘッド16を実線により図示)、さらに、水平方向へ移動してメンテナンス位置(非描画領域)へ到達する。
メンテナンス処理部40は、インクジェットヘッド16に対してダミージェット(予備吐出、フラッシング)、又は吸引処理(ノズル内のインクの排出処理)を施すキャップ42を具備している。インクジェットヘッド16がメンテナンス位置に到達すると、キャップ42を上昇させてインクジェットヘッド16のノズル面(インク吐出面)16Dに、キャップ42を密着させる。
この状態で、ポンプ44を動作させてキャップ42の内部を減圧すると、インクジェットヘッド16のノズル面16Dに形成されたノズル(図2中不図示、図4に符号54を付して図示)からインク排出される。
メンテナンス処理部40は、キャップ42の排液口(不図示)に一方の端が接続される排液流路46と、排液流路46の他方の端に接続される排液タンク48と、を備えており、排液流路46に配設されたポンプ44を動作させると、インクジェットヘッド16からキャップ42へ排出されたインクは、排液タンク48へ送られる。
なお、ノズル面16Dに洗浄液を付与する洗浄液付与装置や、ノズル面16Dを払拭する払拭部材(ブレード、ウエブ等)を備える態様もありうる。
図1には、1ヘッド分に対応するメンテナンス処理部40の構成を図示したが、この構成をインクジェットヘッドの数分備えてもよいし、インクジェットヘッド16の数よりも少ないメンテナンス処理部40を備え、インクジェットヘッド16又はメンテナンス処理部40を移動させながらすべてのインクジェットヘッド16に対してメンテナンス処理部を施してもよい。
インクジェットヘッド16を上下方向及び水平方向へ移動させる移動機構には、周知の水平搬送機構、上下搬送機構(ボールネジ、リニアアクチュエータ等)を適用することができる。
〔インクジェットヘッドの説明〕
図3は、インクジェットヘッド16の概略構成を示す平面透視図(インクジェットヘッド16から記録媒体12(図1参照)を見た図)である。同図に示すように、各サブヘッド50は、ヘッド本体部52がインクジェットヘッド16の短手方向の両側からヘッドカバー54A,54Bによって支持される構造を有している。
ヘッド本体部52は、インクを吐出させるノズル面16D(図2参照)に、ノズル(図3中不図示、図4に符号54を付して図示)が形成される。ヘッド本体部52のノズル面16Dと反対側には、インクリザーバー、フィルタ(ともに不図示)が配置される。
図4は、サブヘッド50のノズル配列を示す平面透視図である。同図に示すように、各サブヘッド50は、ノズル54が二次元状に並べられた構造を有し、係るサブヘッド50を備えたインクジェットヘッド16は、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれている。
図4に示したサブヘッド50は、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル54が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。
図4では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号56を付し、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号58を付して図示されている。
ここで、「副走査方向」は、上述した「記録媒体の搬送方向」と同じ技術的意義を有する用語である。また、「主走査方向」は、上述した「記録媒体の搬送方向と直交する方向」と同じ技術的意義を有する用語であり、「サブヘッド50の配列(配置)方向」とも同じ技術的意義を有する用語である。
図4に示す構造を有するインクジェットヘッド16は、主走査方向Xと角度βをなす行方向V、及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
なお、主走査方向を行方向、主走査方向と交差する列方向に沿って一定の配列パターンでノズルを配置させてマトリクスヘッドを構成することも可能である。
図5は、インクジェットヘッド16(サブヘッド50)の一吐出素子分の立体構造を示す断面図である。同図に示すように、インクジェットヘッド16は、インクを吐出させるノズル54と、ノズル54と連通する圧力室60と、圧力室60の天井面を構成する振動板62と、振動板62に設けられる圧電素子64と、を備えている。
圧力室60は、供給口(供給絞り)66を介して共通流路68と連通され、さらに、共通流路68は、不図示の流路等を介してインクジェットヘッド16の外部に配置されるインクタンクと連通している。
圧電素子64は、上部電極70及び下部電極72に圧電体74がはさまれた構造を有し、上部電極70と下部電極72との間に駆動電圧を印加することでたわみ変形が生じ、圧電素子64のたわみ変形により圧力室60が変形することで、圧力室60の内部に収容されているインクがノズル54から吐出される。
圧電素子64のたわみ変形が元の状態に復元されると、共通流路68から供給口66を介して圧力室60内にインクが充填される。なお、振動板62に金属材料が適用される場合は、振動板62と下部電極72とを共通化してもよい。
図5に示すインクジェットヘッド16は、複数のキャビティプレートを積層させた構造を有している。例えば、ノズル54の開口部が形成されるノズルプレート76と、圧力室60、供給口66、共通流路68等が形成される流路プレート78と、振動板62と、圧電素子64とを、この順に積層させる態様が挙げられる。なお、上記した各プレートをさらに複数のプレートにより構成することも可能である。
本例では、記録媒体12の全幅に対応する長さにわたってノズル54が配設されるフルライン型のインクジェットヘッド16を備える態様を例示したが、本発明に適用されるインクジェットヘッドは、フルライン型に限定されない。
例えば、記録媒体の搬送方向と平行に複数のノズルを配列させたシリアル型インクジェットヘッドを備える態様にも本発明を適用することは可能である。
なお、記録媒体12の「全幅」とは、記録媒体12の搬送方向(図4に符号Yを付して図示した方向)と直交する方向における記録媒体12の全長であり、余白を考慮した場合には画像が形成される画像形成領域の同方向における全長としてもよい。
また、ここでいう「直交」とは、基準となる記録媒体の搬送方向に対して90°をなす方向だけでなく、記録媒体の搬送誤差の範囲でずれた斜め方向が含まれる。本明細書では、特に断らない限り、「直交」、「平行」の用語は、基準に対して誤差の範囲でずれた斜め方向が含まれることとする。
〔制御系の説明〕
図6は、図1に示すインクジェット記録装置10の制御系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース80、システム制御部82(吐出制御手段)、搬送制御部84、画像処理部86(描画用画像処理部、予備吐出用画像処理部)、ヘッド駆動部88(吐出制御手段)を備えるとともに、画像メモリ90、ROM92を備えている。
通信インターフェース80は、ホストコンピュータ94から送られてくるラスターイメージデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース80は、USB(Universal Serial Bus)などのシリアルインターフェースを適用してもよいし、セントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用してもよい。通信インターフェース80は、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
すなわち、ホストコンピュータ94は、印刷しようとする電子データ、例えば、ページ記述言語(PDL:Page Description Language)等で記述された電子データをラスターイメージに変換するRIP(Raster Image Processing)処理、RGBの三原色をインク色のCMYKへ変換する色変換処理、階調変換処理等を行う処理手段として機能する。
システム制御部82は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能し、さらに、画像メモリ90及びROM92のメモリコントローラとして機能する。
すなわち、システム制御部82は、通信インターフェース80、搬送制御部84等の各部を制御し、ホストコンピュータ94との間の通信制御、画像メモリ90及びROM92の読み書き制御等を行うとともに、上記の各部を制御する制御信号を生成する。
ホストコンピュータ94から送出された画像データは通信インターフェース80を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、画像処理部86によって所定の画像処理が施される。
画像処理部86は、色ごとの入力画像データからインクジェットヘッド駆動用(印字制御用)の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号(画像)処理機能を有し、生成した駆動データ(ドットデータ)をヘッド駆動部88に供給する制御部である。
画像処理部86において所要の信号処理が施されると、該駆動データに基づいて、ヘッド駆動部88を介してインクジェットヘッド16の吐出液滴量(打滴量)や吐出タイミングの制御が行われる。
これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。なお、図6に示すヘッド駆動部88には、インクジェットヘッド16の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
搬送制御部84は、画像処理部86により生成された印字データに基づいて記録媒体12(図1参照)の搬送タイミング及び搬送速度を制御する。図6における搬送駆動部116は、記録媒体12を搬送する記録媒体搬送部14の駆動ローラ20(22)を駆動するモータが含まれており、搬送制御部84は該モータのドライバーとして機能している。
画像メモリ(一時記憶メモリ)90は、通信インターフェース80を介して入力された画像データを一旦格納する一時記憶手段としての機能や、ROM92に記憶されている各種プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域(例えば、画像処理部86の作業領域)としての機能を有している。画像メモリ90には、逐次読み書きが可能な揮発性メモリ(RAM)が用いられる。
ROM92は、システム制御部82のCPUが実行するプログラムや、装置各部の制御に必要な各種データ、制御パラメータなどが格納されており、システム制御部82を通じてデータの読み書きが行われる。ROM92は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。また、外部インターフェースを備え、着脱可能な記憶媒体を用いてもよい。
パラメータ記憶部98は、インクジェット記録装置10の動作に必要な各種制御パラメータが記憶されている。システム制御部82は、制御に必要なパラメータを適宜読み出すとともに、必要に応じて各種パラメータの更新(書換)を実行する。
プログラム格納部100は、インクジェット記録装置10を動作させるための制御プログラムが格納されている記憶手段である。システム制御部82(又は装置各部)は、装置各部の制御を実行する際にプログラム格納部100から必要な制御プログラムを読み出し、該制御プログラムは適宜実行される。
メンテナンス制御部102は、システム制御部82からの指令信号に応じて、メンテナンス処理部40の動作を制御する。例えば、インクジェットヘッド16のメンテナンス処理開始指令に応じて、インクジェットヘッド16を移動させる移動機構を動作させ、キャップ42を移動させる移動機構を動作させ、ポンプ44を動作させる。
描画用画像データ記憶部104は、画像処理部86において生成された描画用画像データ(描画用ドットデータ、描画用駆動データ)が記憶される。ヘッド駆動部88は、描画用画像データ記憶部104に記憶されている描画用画像データを読み出して、描画時にインクジェットヘッド16へ供給される駆動電圧を生成する。
ダミージェット(DJ)用画像データ記憶部106は、画像処理部86において生成されたダミージェット用画像データが記憶される。ヘッド駆動部88は、ダミージェット用画像データ記憶部106に記憶されているダミージェット用画像データを読み出して、ダミージェット時にインクジェットヘッド16へ供給される駆動電圧を生成する。
なお、図示は、省略するが、システム制御部82から送出される各種情報を表示する手段として表示部を備えている。表示部は、LCDモニタなどの汎用ディスプレイ装置が適用される。なお、表示部の表示形態には、ランプの点灯(点滅、消灯)を適用してもよい。また、スピーカーなどの音(音声)出力手段を備えてもよい。
また、不図示の入力インターフェースを備え、入力インターフェースを介して入力された情報は、システム制御部82へ送出される。入力インターフェースには、キーボード、マウス、ジョイスティックなどの情報入力手段が適用される。
〔画像処理部の詳細な説明〕
図7は、本例に適用される画像処理部86の構成を示すブロック図である。同図に示す画像処理部86は、データ伸張処理部122、拡大/縮小処理部124、歪み補正処理部126、Xレジ補正処理部128を備えている。
また、上記の各処理部による処理が施された画像データに対して、ガンマ補正処理を施すガンマ補正処理部130と、ノズルごとの吐出特性の違いに起因する濃度むらを補正すうむら補正処理部132と、むら補正処理後の画像データに対してXY変換処理を施すXY変換処理部134と、XY変換処理後の画像データにハーフトーン処理(HT処理、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など)を施すハーフトーン処理部136と、ハーフトーン処理後の画像データ(ドットデータ)にノズルを割り当てるノズルマッピング処理部138と、を備えている。
このようにして、RIPデータサーバ94から送られたラスタ画像データから、ノズルごとのドット位置及びドットサイズの情報を含む描画用画像データが生成される。
また、本例に示すインクジェット記録装置10では、ラスタ画像データからダミージェット(DJ)処理時の駆動データであるダミージェット用画像データが生成される。ダミージェット用画像データは、ハーフトーン処理前の入力画像データの各画素の濃度値(濃度値の大小関係)を反転させた濃度反転データに対してハーフトーン処理を施して生成される。
例えば、入力画像データの各画素の濃度値(階調値)が0から255の値で表される場合に、濃度値から255を減算した値の絶対値が濃度反転データの濃度値となり、濃度反転データに対してハーフトーン処理を施すことでダミージェット用画像データが生成される。
本例に示すインクジェット記録装置における「濃度値の反転」とは、濃度値の中から基準値を決定して、この基準値に対して対称の値へ変換される。具体的には、基準値よりも大きい値は値の昇順を降順(降順を昇順に)に変更して、基準値よりも小さい値に変更し、基準値よりも小さい値は値の昇順を降順(降順を昇順に)に変更して、基準値よりも大きい値に変更される。
この基準値は、濃度値の全範囲における中心値としてもよいし、中心値から決められた値だけシフトさせた値でもよい。なお、反転後の濃度値が濃度値の範囲を超えてしまう場合は、濃度値の範囲を超えた値を濃度値の最大値又は最小値としてもよいし、変換後の濃度値に係数を乗じて(圧縮して)濃度値の範囲内の値としてもよい。
図7に示すように、画像処理部86はXレジ補正処理部128による処理後の画像データに対して、反転係数記憶部141に記録されている反転係数を用いた反転処理が施される反転処理部140と、反転処理後の画像データに対してむら補正処理を施すむら補正処理部142と、むら補正処理後の画像データに対してXY変換処理を施すXY変換処理部と、XY変換処理後の画像データにハーフトーン処理を施すハーフトーン(HT)処理部と146と、ハーフトーン処理後の画像データにノズルを割り当てるノズルマッピング処理部148と、を備えている。
図7に図示した各処理部による画像処理によって生成された、描画用画像データ及びダミージェット用画像データはヘッド駆動部88へ送られて、インクジェットヘッド16へ供給される駆動電圧が生成される。
ヘッド駆動部88は、描画用画像データ及びダミージェット用画像データに対して、インクジェットヘッド16の傾きの補正処理を施すバー位置補正処理部150と、サブヘッド50(図3参照)ごとの位置誤差の補正処理を施すヘッド位置補正処理部152と、を含み、不図示の駆動波形記憶部(駆動波形生成部)、駆動タイミング信号生成部、増幅部、出力回路等を含んで構成される。
上記の説明では、画像処理部86は画像処理基板に搭載され、ヘッド駆動部88はインクジェットヘッド16の近傍に配置される駆動回路基板に搭載されている。なお、上記した各処理部と基板との関係は変更することができる。
なお、図7に図示したむら補正処理部132とむら補正処理部142、XY変換処理部134とXY変換処理部144、ハーフトーン処理部136とハーフトーン処理部146、ノズルマッピング処理部138とノズルマッピング処理部148とは、それぞれ共通する機能を有しているので、これらを兼用させることで、画像処理部86のハードウエア構成が簡素化される。
また、図7では、ガンマ補正処理の処理対象データに対して反転処理が施される態様を例示したが、反転処理の処理対象データは、むら補正処理の処理対象データ、XY変換処理の処理対象データなど、ハーフトーン処理前のデータであればよい。
〔ダミージェット用画像データ生成の詳細な説明〕
以下に、ダミージェット用画像データの生成について詳細に説明する。図8は、反転係数を示す説明図であり、実線により図示されている曲線は、反転係数200であり、破線により図示されている曲線は、描画用画像データを生成するためのガンマ補正処理に使用されるガンマ補正係数202である。
反転係数200は、描画用画像データを生成する際に入力画像データに対して施されるガンマ補正処理に用いられるガンマ補正係数202を、原点(0,0)を回転中心として反時計周りに180°回転させ、さらに、上下反転させる幾何学的処理をすることで生成される。
ガンマ補正係数202は、入力濃度値に対して実際の濃度が非線形になるノズルごとの吐出特性を補正するために、ヘッドごと(色ごと)に決められている補正係数である。
反転係数200を用いた反転処理が施された反転画像データは、描画用画像データを生成するためのガンマ補正係数202を用いたガンマ処理が施された画像データに対して濃度値の大小関係が入れ換えられている。
つまり、ガンマ補正処理がされた画像データにおいて濃度値が大きい画素は、反転画像データにおいて濃度値が小さくなり、ガンマ補正処理がされた画像データにおいて濃度値が小さい画素は、反転画像データにおいて濃度値が大きくなる。
また、ガンマ補正処理がされた画像データにおいて濃度値がゼロの画素は、反転画像データにおいて濃度値が最大値となり、ガンマ補正処理がされた画像データにおいて濃度値が最大値の画素は、反転画像データにおいて濃度値がゼロとなる。
そうすると、描画において使用頻度が高いノズルはダミージェットにおいて使用頻度が低くなり、描画において使用頻度が高いノズルはダミージェットにおいて使用頻度が高くなり、各ノズルの使用頻度に応じて適切なダミージェット(フラッシング)を行うことができる。
このように、ダミージェット専用の画像(描画される画像を濃度反転させた仮想的な画像)を描画される描画画像と同様の処理によって生成することで、各ノズルの使用状況を検知する必要がなくなり、各ノズルの使用状況を検知するためのソフトウエアの作成が不要となり、さらに、PLDやFPGAにより処理がされるデータ量、処理負荷をより少なくすることができる。
図9は、図8の反転係数200の他の態様を示す説明図である。同図に示す反転係数204は、入力値が255(最大値)の場合に出力値(出力最小値)がDとなるように、出力値が決められている。
図9に示す反転係数204を用いることで、描画において使用頻度が高いノズルでも一定量のインク吐出(ダミージェット)がされる。すなわち、図9に示す出力最小値Dは、インクの種類、描画時の環境等の要因を考慮して決められる。
インクの種類、描画時の環境等をパラメータとして、出力最小値Dの値が異なる反転係数204を生成して記憶しておき、インクの種類、描画時の環境に応じて切り換えることも可能である。
図10に図示した反転係数206は、最も単純化された線形形状を有している。ダミージェット専用の画像(図14に符号220を付して図示)は、高精細な画像品質が要求されないので、ノズルごとの吐出特性のばらつきが補正されていなくても、ダミージェットの目的を達成することができる。
そうすると、図10に図示したように、図8の補正係数を直線近似した線形の反転係数206を用いることも可能である。つまり、入力画像データが有する各画素の濃度値を単純に反転させて(濃度値の大小関係を入れ換えて)もよい。
また、図10に示す反転係数206に対して。図9に示すように出力最初値をゼロ以外の値としてもよい。
図8から図10に図示した反転係数200,204,206のいずれかを用いて反転処理が施されると、以降の処理は描画用画像データの生成と同じ処理が施され、ダミージェット用画像データが生成され、ダミージェット用画像データ記憶部106(図6参照)に記憶される。
図8から図10には、入力値に対して出力値が連続的に変化する反転係数を図示したが、本例に適用される反転係数は、横系列を入力値とし、縦系列を出力値として二次元的に表現したときに、右下がりの傾向を示していればよい。
例えば、少なくとも、描画画像データにおける高濃度領域と低濃度領域との関係が入れ換えられればよく、中間領域は平坦部分が存在していてもよいし、段階的に(階段状に)となっていてもよい。
なお、「低濃度領域」はダミージェットの必要性が高い領域であり、例えば、図8から図10における入力値の基準値よりも左の領域とすることができる。入力値の基準値は、入力値の全範囲における中心値(入力値を0から255の整数で表したときの127)としてもよいし、中心値未満の値(入力値を0から255の整数で表したときの32や64等)としてもよい。
また、「高濃度領域」はダミージェットの必要性が低い領域であり、例えば、図8から図10における入力値の基準値よりも右の領域とすることができる。入力値の基準値は、入力値の全範囲における中心値(入力値を0から255の整数で表したときの127)としてもよいし、中心値を超える値(入力値を0から255の整数で表したときの159や191等)としてもよい。
〔インクジェットヘッドのメンテナンス方法の説明〕
次に、インクジェットヘッド16のメンテナンス方法について説明する。図11は、描画制御の流れを示すフローチャートである。インクジェット記録装置10では、ノズル内のインクの増粘(劣化)による吐出異常を回避するために、描画時に適宜ダミージェットが実行される。
図11に示すように、描画が開始されると(ステップS10)、入力画像データに基づいて描画用画像データが生成される(ステップS12)。また、入力画像データに基づいてダミージェット用画像データが生成され(ステップS14)、記憶される(ステップS16)。すなわち、描画画像ごとにダミージェット用画像データが生成され、記憶される。
描画用画像データが生成され(ステップS12)、ダミージェット用画像データが記憶されると(ステップS16)、描画用画像データを用いて描画が実行され(ステップS18)、設定された枚数の描画が実行されたか否かが判断される(ステップS20)。
ステップS20において、描画枚数が設定された枚数に満たない場合は(No判定)、描画終了の判定が継続される(ステップS20)。一方、ステップS20において、描画枚数が設定枚数に達した場合は(Yes判定)、ダミージェット指令の有無が判断される(ステップS22)。
ダミージェットを実行するか否かは、インクジェットヘッド16の稼働時間(又は、非稼動時間)、環境温度・湿度等の情報に基づいて決められ、ダミージェットを実行させる条件が満たされると、ダミージェットの実行指令が出される。
ステップS22において、ダミージェット実行指令がされていないと判断されると(No判定)、ステップS32に進み、次の画像データが存在するか否かが判断される。一方、ステップS22において、ダミージェット実行指令がされたと判断されると(Yes判定)、ダミージェット用画像データが読み出され(ステップS24)、ダミージェット用画像データを用いたダミージェットが実行される(ステップS26)。
ダミージェット実行中は終了指令の有無が監視され(ステップS28)、終了指令がない場合は(No判定)、ダミージェットが継続され(ステップS26)、終了指令がされると(ステップS28のYes判定)、ダミージェット終了される(ステップS30)。
ステップS30においてダミージェットが終了されると、次の描画データの有無が判断される(ステップS32)。次の描画データがある場合は(Yes判定)、ステップS18に進み、描画が実行される。
一方、次の描画データがない場合は(ステップS32のNo判定)、終了処理がされた後に描画が終了される(ステップS34)。
図11に図示した、描画用画像データ生成(ステップS12)、及びダミージェット用画像データ生成(ステップS14)は、描画工程(ステップS18)以降の工程の実行中に、描画領域においても実行される。
つまり、次の描画に使用される描画用画像データの生成、及び次の描画に使用される描画用画像データに対応するダミージェット用画像データの生成は、前の描画が実行されている時点で開始することができる。
図6に図示したダミージェット用画像データ記憶部106は、複数のダミージェット用画像データを記憶してもよいし、新たにダミージェット用画像データが生成された場合に、最新のダミージェット用画像データを記憶するように構成してもよい。
また、複数のダミージェット用画像データが記憶されている場合には、いずれのダミージェット用画像データを用いてもよい。先に生成されたダミージェット用画像データは、すでに描画が終了している描画用画像データに対応しているので、過去のインクジェットヘッドの使用環境を反映させたダミージェットが可能である。
一方、後に生成されたダミージェット用画像データは、これから描画がされる描画用画像データに対応しているので、将来のインクジェットヘッドの使用環境を見越したダミージェットが可能となる。
図12は、図11のステップS26に示したダミージェット工程の流れを示すフローチャートである。ダミージェット工程が開始されると(ステップS100)、あるタイミング(例えば、ある記録媒体への描画が終了したタイミング)で描画が終了され(ステップS102)、インクジェットヘッド16をメンテナンス位置へ移動させ(ステップS104)、インクジェットヘッド16のノズル面16Dにキャップ42を装着させる(ステップS106)。
そして、ダミージェットが実行され(ステップS108)、ダミージェットの終了指令がされない場合は(ステップS110のNo判定)、ダミージェットが継続される(ステップS108)。
一方、ダミージェットの終了指令がされると(ステップS110のYes判定)、キャップ42をインクジェットヘッド16のノズル面16Dから離間させ(ステップS112)、インクジェットヘッド16を描画位置へ移動させ(ステップS114)、ダミージェット工程は終了される(ステップS116)。
図13は、記録媒体へダミージェットがされる態様のフローチャートである。なお、以下の説明において、図12と同一の部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図13に示すフローチャートでは、図12のヘッド移動工程(ステップS104)、キャップ装着工程(ステップS106)に代わり、給紙工程(ステップS105)が実行される。
すなわち、描画が停止されると(ステップS102)、ダミージェット用の記録媒体が給紙され、ダミージェット用の記録媒体へ向けてダミージェットが実行される(ステップS108)。
ダミージェットが終了すると(ステップS110のYes判定)、ダミージェット用の記録媒体が排紙され(ステップS113)、ダミージェット工程は終了される(ステップS116)。
ダミージェット用の記録媒体は、描画用の記録媒体を用いてもよいし、ダミージェット専用の記録媒体を用いてもよい。
図14は、記録媒体12の余白領域12B,12Cに向けてダミージェットを実行する場合の説明図である。図14(a)は、ダミージェット用の画像220の分割例を模式的に図示した説明図であり、図14(b)は、余白領域12B,12Cにダミージェット画像の一部220A,220Bのダミージェットを実行する場合の例を模式的に図示した説明図である。
図14(a)には、ユーザ領域12A(描画領域)に対してダミージェットを実行した場合が図示されている。ユーザ領域12Aには、描画画像に対して濃度反転された(濃淡の関係が反転された)ダミージェット画像220が形成される。
このダミージェット画像220が記録媒体の搬送方向(図14(a)における上下方向)について4分割された、分割ダミージェット画像220A,220B,220C,220Dの少なくとも1つを、描画に使用される記録媒体12の余白領域12B,12Cに形成してもよい。
図14(b)に示す例では、分割ダミージェット画像220Aが、記録媒体搬送方向下流側の余白領域12Bに形成され、分割ダミージェット画像220Bが、記録媒体搬送方向上流側の余白領域12Cに形成されている。残りの分割ダミージェット画像220C,220Dは、分割ダミージェット画像220A,220Bに重ねてもよいし、次の記録媒体12の余白領域12B,12Cに形成してもよい。余白領域12B,12Cは、描画後に切断され、廃棄される。
図14(a),(b)に示した例では、ダミージェット画像220が4分割され、分割ダミージェット画像の1つが1つの余白領域12B(12C)に形成されているが、ダミージェット画像220の分割数、1つの余白領域12B,12Cへ分割ダミージェット画像220A,220B,220C,220Dをいくつ形成するかは、ダミージェット画像220の内容、余白領域12B,12Cの面積等に応じて決められる。
このようにして、ダミージェット画像220を分割して、描画に使用される記録媒体12の余白領域12B,12Cへ、分割ダミージェット画像220A,220B,220C,220Dの少なくとも1つを形成する構成によれば、ダミージェットを実行するたびに記録媒体を使用せずにすみ、かつ、描画の直前、直後でダミージェットが実行されることで、インクジェットヘッド16の吐出状態を安定させることができる。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10によれば、入力画像データの濃度値の大小関係を入れ換えて、描画画像の濃度を反転させたダミージェット用画像を形成するダミージェット用画像データが生成される。
このダミージェット用画像データは、描画画像における使用頻度の低いノズルからの吐出が多くなり、描画画像における使用頻度の高いノズルからの吐出が少なくなるので、描画におけるノズルごとの使用頻度を検知することなく、ノズルの使用頻度が反映されたダミージェットが実行される。
すなわち、入力画像データから描画用画像データを生成するプロセスと同様のプロセスを適用して、描画用画像データを生成するためのガンマ補正係数を、ダミージェット用画像データを生成するための反転係数に変更してダミージェット用画像データが生成されるので、ダミージェット用画像データを生成するための専用のソフトウエアを作成する必要がなく、ダミージェット用画像データを生成するためにPLDやFPGEなどの処理部を確保する必要がなく、ダミージェットによるむだなインクの消費が回避される。
〔第2実施形態:画像処理部の構成の説明〕
次に、図15及び図16を用いて、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下に説明する第2実施形態において、先に説明した第1実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図15は、第2実施形態に適用される画像処理部86’の構成を示すブロック図である。本例では、ノズルマッピングにおいて、描画用画像データのドットサイズの大小関係の反転(入れ換え)によって、ダミージェット用画像データが生成される。
すなわち、図7に示す反転処理部140、反転係数記憶部141、補正処理部142、XY変換処理部144、ハーフトーン処理部146、ノズルマッピング処理部148に代わり、反転処理部158及び反転係数記憶部141が具備される。
図16(a)から(c)は、反転テーブルの説明図である。図16(a)は、「ドットあり」、「ドットなし」によって2階調を表現する場合(2値化)の例であり、図16(b),(c)は、「ドットなし」、「小サイズのドット(小ドット)」、「中サイズのドット(中ドット)」、「大サイズのドット(大ドット)」を用いて4階調を表現する場合(4値化)の例である。
図16(a)から(c)において、「変換前」は描画用画像データにおけるドット情報であり、「変換後」は、ダミージェット用画像データにおけるドット情報である。
図16(a)では、「ドットなし」は「1」で表され、「ドットあり」は「2」で表されている。図16(a)に示す2階調表現の場合、描画用画像データの「ドットあり」はダミージェット用画像データの「ドットなし」に変換され、描画用画像データの「ドットなし」はダミージェット用画像データの「ドットあり」に変換される。
すなわち、ダミージェット用画像データに基づいてダミージェット画像を形成したとすると、このダミージェット画像は描画用画像データに基づいて生成された描画画像の白黒を反転させた画像となる。
なお、ここでいう「ダミージェット画像」とは、描画画像を形成する場合と同様に記録媒体を搬送させてインクジェットヘッドからインクを吐出させたとして、記録媒体に形成される仮想的な画像であり、ダミージェット画像が記録媒体へ形成される必要はない。
図16(b),(c)に示した4階調表現の場合は、描画画像の濃淡を反転させる(濃淡の関係を入れ換える)ことで、ダミージェット画像を形成することができる。
図16(b)は、描画用画像データのドットサイズの大小関係を単純に入れ換えた例であり、「0」はドットなし(例えば、インク吐出量ゼロピコリットル)、「1」は小ドット(例えば、インク吐出量2ピコリットル)、「2」は中ドット(例えば、インク吐出量4ピコリットル)、「3」は大ドット(例えば、インク吐出量8ピコリットル)を表している。
図16(b)に示す例では、描画用画像データの「ドットなし」はダミージェット用画像データの「大ドット」に変換され、描画用画像データの「小ドット」はダミージェット用画像データの「中ドット」、描画用画像データの「中ドット」はダミージェット用画像データの「小ドット」、描画用画像データの「大ドット」はダミージェット用画像データの「ドットなし」に変換される。
すなわち、図16(b)に示す変換係数を用いると、ハーフトーン処理によってN値化されたドットデータにおいて、階調値M(≦N)は階調値(N−M+1)に変換される。なお、Nは、2以上入力階調値未満の整数であり、Mは1からNまでの整数である。
このように描画用画像データにおけるドットサイズの大小関係を反転させる(入れ換える)ことで、描画画像の濃度反転をさせたダミージェット画像に対応するダミージェット用画像データを生成しうる。
図16(c)は、ダミージェット用画像データの出力最小値を「小ドット」とした場合の変換例である。すなわち、描画用画像データの「ドットなし」はダミージェット用画像データの「大ドット」に変換され、描画用画像データの「小ドット」はダミージェット用画像データの「大ドット」に変換される。
さらに、描画用画像データの「中ドット」はダミージェット用画像データの「中ドット」(又は「小ドット」)、描画用画像データの「大ドット」はダミージェット用画像データの「小ドット」に変換される。
すなわち、N値化されたハーフトーンデータにおいて、階調値Mは、M=1の時に階調値Nに変換され、M>1の時に階調値N−M+2に変換される。
図16(c)に示すようドットの大小関係が反転されると、ダミージェット実行時にすべてのノズルからインクが吐出され、インクジェットヘッド16の吐出状態をより良好に保つことができる。
なお、図16(b),(b)に示したドットサイズの大小関係の変換例は、描画用画像に対して濃度反転をさせたダミージェット用画像に対応するダミージェット用画像データが生成されれば、適宜変更が可能である。
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができ、かつ、画像処理部86の構成がより簡素化される。
本例では、ドットなしを含めて4種類のドットサイズによって4階調を表現する例を示したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。また、1画素を複数のドット(同一サイズのドット)により構成し、2階調以上の階調を表現する態様にも適用可能である。
〔他の装置構成例〕
図17は、他の装置構成の説明図である。同図に示すインクジェット記録装置300は、圧胴314の外周面に記録媒体を保持した状態で、圧胴314の外周面に沿って記録媒体(不図示)を搬送する圧胴搬送方式が適用される。
不図示の記録媒体供給部から渡し胴328へ受け渡された記録媒体は、圧胴314の外周面に保持された状態で印字部317の直下へ搬送される。記録媒体は、印字部317に具備されるインクジェットヘッド316K,316C,316M,316Yからカラーインクが打滴され、所望の画像が形成される。
同図に示すインクジェットヘッド316K,316C,316M,316Yは、ノズル面が圧胴314の外周面の法線に対して直交するように、水平面に対して斜めに傾けられて配置される。係る構成により、記録媒体とノズル面との距離(クリアランス)が一定に保たれる。
画像が形成された記録媒体は、圧胴314から渡し胴332へ受け渡される。その後、所定の後処理(乾燥処理、定着処理等)が施された後に、排出部から排出される。なお、印字部317による画像形成前に、前処理工程(処理液付与工程、加熱工程等)が施される態様もありうる。
図17に図示されたインクジェット記録装置300における、印字部317、制御系、メンテナンス処理部の構成は、先に説明したインクジェット記録装置10と同様の構成を適用することができる。
以上説明したインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドのメンテナンス方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):複数のノズルが具備されるインクジェットヘッドと、入力画像データから描画用画像データを生成する描画用画像処理部と、入力画像データから描画用画像データにおける階調値の大小関係を反転させた予備吐出用画像データを生成する予備吐出用画像処理部と、描画用画像データに基づいてインクジェットヘッドから記録媒体上にインクを吐出させる描画を行い、かつ、予備吐出用画像データに基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させて予備吐出を行う吐出制御手段と、を備えたインクジェット記録装置。
第1態様によれば、入力画像データから、描画用画像における階調値の大小関係を反転させた予備吐出用画像を生成する予備吐出用画像データが生成される。この予備吐出用画像は、描画用画像における各ノズルの使用頻度の低いノズルからの吐出が多くなり、使用頻度の高いノズルからの吐出が少なくなるので、予備吐出時におけるノズルごとのドットデータを生成するための専用のソフトウエアの作成が不要となり、このドットデータを生成するための処理部(PLD,FPGA等)の確保が不要となり、予備吐出時のインク消費量が抑制される。
予備吐出用画像データは、描画用画像データごとに生成される態様が好ましい。
(第2態様):第1態様に記載のインクジェット記録装置において、描画用画像処理部は、入力画像データに対してガンマ補正係数を用いたガンマ補正処理を施すガンマ補正処理部を具備し、予備吐出用画像処理部は、入力画像データに対してガンマ補正係数の大小関係を反転させた反転係数を用いた反転処理を施している。
第2態様によれば、既存のガンマ補正係数の大小関係を反転させて反転係数が生成されるので、ノズルごとの使用頻度を検知することなく、ノズルごとの使用頻度が反映された予備吐出用のデータが生成される。
(第3態様):第1態様に記載のインクジェット記録装置において、描画用画像処理部は、入力画像データに対してガンマ補正係数を用いたガンマ補正処理を施すガンマ補正処理部を具備し、予備吐出用画像処理部は、ガンマ補正係数の大小関係を反転させ、かつ、直線近似させた反転係数を用いて、入力画像データに対して反転処理を施している。
第3態様によれば、より単純な反転係数を用いた反転処理がされるので、予備吐出用画像を生成する画像処理の処理負荷が軽減される。
(第4態様):第1態様から第3態様のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、予備吐出用画像処理部は、入力画像データの全範囲において値が0を超える反転係数を用いて、入力画像データに対して反転処理を施している。
係る態様によれば、予備吐出において、すべてのノズルからインクが吐出されるので、予備吐出後はすべてのノズルについて好ましい吐出状態が維持される。
(第5態様):複数のノズルが具備されるインクジェットヘッドと、入力画像データに対してハーフトーン処理を施してN(但し、Nは2以上入力画像データの階調値未満の整数)値化された描画用画像データを生成する描画用画像処理部と、描画用画像データにおける階調値の大小関係を反転させた予備吐出用画像データを生成する予備吐出用画像処理部と、描画用画像データに基づいてインクジェットヘッドから記録媒体上にインクを吐出させて描画を行い、かつ、予備吐出用画像データに基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させて予備吐出を行う吐出制御手段と、を備えたインクジェット記録装置。
第5態様によれば、描画用画像データの階調値の大小関係を反転させて予備吐出用画像データが生成される。この予備吐出用画像データは、描画用画像における各ノズルの使用頻度の低いノズルからの吐出が多くなり、使用頻度の高いノズルからの吐出が少なくなるので、予備吐出時におけるノズルごとのドットデータを生成するための専用のソフトウエアの作成が不要となり、このドットデータを生成するための処理部(PLD,FPGA等)の確保が不要となり、予備吐出時のインク消費量が抑制される。
さらに、描画用画像処理部と予備吐出用画像処理部において、ハーフトーン処理までの処理を行う処理部の構成を兼用することが可能である。
(第6態様):第5態様に記載のインクジェット記録装置において、予備吐出用画像処理部は、描画用画像データの階調値M(但し、Mは1からNの整数)を階調値(N−M+1)に変換して予備吐出用画像データを生成する。
第6態様において、1画素を構成するドットのサイズを変調させて多階調を表現してもよいし、1画素を構成するドット数を変調させて多階調を表現してもよい。
(第7態様):第5態様に記載のインクジェット記録装置において、予備吐出用画像処理部は、描画用画像データの階調値M(但し、Mは1からNの整数)を、M=1の場合に階調値Nに変換し、M>1の場合に階調値(N−M+1)に変換して予備吐出用画像データを生成する。
第7態様によれば、予備吐出において、すべてのノズルからインクが吐出されるので、予備吐出後はすべてのノズルについて好ましい吐出状態が維持される。
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、予備吐出が実行される際に、インクジェットヘッドを非描画領域へ移動させる移動手段を備え、吐出制御手段は、描画後に、非描画領域においてインクジェットヘッドの予備吐出を実行させる。
第8態様における非描画領域の一例として、非描画領域とは、インクジェットヘッドに対してメンテナンスを行うメンテナンス位置が挙げられる。
(第9態様):第1態様から第7態様のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、吐出制御手段は、描画位置において描画後又は描画間に、記録媒体上にインクジェットヘッドの予備吐出を実行させる。
第9態様によれば、インクジェットヘッドを非描画位置へ移動させることなく、インクジェットヘッドの予備吐出を実行することができる。
(第10態様):第9態様に記載のインクジェット記録装置において、吐出制御手段は、インクジェットヘッドの予備吐出においてに、記録媒体の描画領域に予備吐出用画像データに基づく画像を描画させる。
第10態様によれば、描画における一連の工程として、インクジェットヘッドの予備吐出を実行することができるので、予備吐出のための工程の入れ換えが不要である。
(第11態様):第9態様に記載のインクジェット記録装置において、吐出制御手段は、インクジェットヘッドの予備吐出において、記録媒体の余白領域に予備吐出用画像データに基づく画像を分割して描画させる。
第11態様によれば、予備吐出用の記録媒体が不要となり、記録媒体をむだに消費することが抑制される。
(第12態様):複数のノズルが具備されるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、入力画像データから描画用画像データを生成する描画用画像処理工程と、入力画像データから描画用画像データにおける階調値の大小関係を反転させた予備吐出用画像データを生成する予備吐出用画像処理工程と、描画用画像データに基づいてインクジェットヘッドから記録媒体上にインクを吐出させる描画工程と、予備吐出用画像データに基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させる予備吐出工程と、を含んでいる。
第12態様において描画用画像処理工程は、入力画像データに対してガンマ補正係数を用いたガンマ補正処理を施すガンマ補正処理工程を含み、予備吐出用画像処理工程は、入力画像データに対してガンマ補正係数の大小関係を反転させた反転係数を用いた反転処理を施す態様が好ましい。
また、描画用画像処理工程は、入力画像データに対してガンマ補正係数を用いたガンマ補正処理を施すガンマ補正処理工程を含み、予備吐出用画像処理工程は、ガンマ補正係数の大小関係を反転させ、かつ、直線近似させた反転係数を用いて、入力画像データに対して反転処理を施す態様が好ましい。
さらに、予備吐出用画像処理工程は、入力画像データの全範囲において値が0を超える反転係数を用いて、入力画像データに対して反転処理を施す態様が好ましい。
(第13態様):複数のノズルが具備されるインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置において、入力画像データに対してハーフトーン処理を施してN(但し、Nは2以上入力画像データの階調値未満の整数)値化された描画用画像データを生成する描画用画像処理工程と、描画用画像データにおける階調値の大小関係を反転させた予備吐出用画像データを生成する予備吐出用画像処理工程と、描画用画像データに基づいてインクジェットヘッドから記録媒体上にインクを吐出させて描画を行う描画工程と、予備吐出用画像データに基づいてインクジェットヘッドからインクを吐出させて予備吐出を行う予備吐出工程と、を含んでいる。
第13態様において、予備吐出用画像処理工程は、描画用画像データの階調値M(但し、Mは1からNの整数)を階調値(N−M+1)に変換して予備吐出用画像データを生成する態様が好ましい。
また、予備吐出用画像処理工程は、描画用画像データの階調値M(但し、Mは1からNの整数)を、M=1の場合に階調値Nに変換し、M>1の場合に階調値(N−M+1)に変換して予備吐出用画像データを生成する態様が好ましい。
さらに、第12、第13態様において、予備吐出が実行される際に、インクジェットヘッドを非描画領域へ移動させる移動工程を含み、予備吐出工程は、描画後に、非描画領域においてインクジェットヘッドの予備吐出を実行させる態様が好ましい。
また、予備吐出工程は、描画位置において描画後又は描画間に、記録媒体上にインクジェットヘッドの予備吐出を実行させる態様が好ましい。
さらに、予備吐出工程は、インクジェットヘッドの予備吐出においてに、記録媒体の描画領域に予備吐出用画像データに基づく画像を描画させる態様が好ましい。
さらにまた、予備吐出工程は、インクジェットヘッドの予備吐出において、記録媒体の余白領域に予備吐出用画像データに基づく画像を分割して描画させる態様が好ましい。