JP6003772B2 - マイクロチップ及びマイクロチップの製造方法 - Google Patents
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Description
このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(Micro−Total−Analysis−System)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称され、化学的及び生物学的分析の高速化や高効率化、集積化又は分析装置の小型化を可能にする技術として注目されている。
本技術に係るマイクロチップは、液体が導入部から複数の分析領域のそれぞれに同じタイミングで供給されるように形成された流路を備えるため、導入部に液体が注入されると、その液体が各分析領域に同じタイミングで到達する。
前記流路は、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成されていることで、前記液体を各分析領域に同じタイミングで供給することができる。
前記流路は、前記導入部に接続された主流路と、該主流路から分岐されて各分析領域に接続する複数の分岐流路と、を有する構成とすることができる。
前記主流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積が、前記複数の分岐流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積の合計よりも大きいことが好ましい。
前記流路は、前記複数の分析領域のうち前記導入部に最も近い位置の第1分析領域に接続する第1分岐流路の流路抵抗と、前記主流路における前記第1分岐流路の接続点から前記第1分析領域以外の他の分析領域までの流路抵抗とが、略同一となるように形成されていることが好ましい。
前記主流路を複数備え、前記導入部から、該導入部に最も近い位置の分析領域までの各主流路の流路抵抗が略同一に形成されている、マイクロチップとすることもできる。
前記分析領域から前記液体が流出する第二の流路と、該第二の流路を介して各分析領域に接続された、各分析領域への液体の供給状況を提示する表示領域と、を備える、マイクロチップであってもよい。
前記第二の流路は、前記各分析領域に接続する複数の第二の分岐流路と、該複数の第二の分岐流路のそれぞれが接続する第二の主流路と、を有していてもよい。
前記第二の主流路は、該第二の主流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面の幅及び/又は深さの寸法が前記表示領域側に向かって漸次又は段階的に大きくなるように形成されていてもよい。
前記第二の流路の所定箇所に前記液体の逆流防止用の収容部を有していてもよい。
前記導入部と前記分析領域との間に、前記分析領域とは別に試薬収容領域を備えるマイクロチップであってもよい。
導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成された構成について、前記流路抵抗は、前記液体の粘度、前記流路の長さ、及び前記流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面のサイズ、を含む抵抗要素から導くことかできる。
例えば、前記流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の形状が長方形状である場合、この流路の流路抵抗は、下記式(I)より算出されることとしてもよい。
前記分岐流路内に、前記液体の流れに対する抵抗部を有し、該抵抗部により、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成された、マイクロチップであってもよい。
説明は以下の順序で行う。
1.第1実施形態
(導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一とされた構成例)
2.第2実施形態
(導入部から各分析領域までの流路の長さ等が略同一とされた構成例)
3.第3実施形態
(複数の分岐流路を有する主流路を複数備える構成例)
4.第4実施形態
(分析領域から液体が流出する第二の流路を備える構成例)
5.第5実施形態
(流路に狭窄部や抵抗部を備える構成例)
6.第6実施形態
(導入部と分析領域との間に試薬収容領域を備える構成例)
図1は、本技術に係る第1実施形態のマイクロチップ11の上面模式図である。図2は、マイクロチップ11の断面模式図であり、図2Aは図1におけるA−A断面の模式図、図2Bは図1におけるB−B断面の模式図である。また、図3Aは図2Bにおける領域Sの拡大図であり、図3B〜Fは、後述する流路の断面形状の変形例を説明するための、図3A相当の図である。
導入部12、分析領域13、及び流路14は、マイクロチップ11を構成する基板110内に空間として形成されている。マイクロチップ11をなす基板110の構成は、特に限定されるものではない。例えば、基板は複数の基板層から構成することができ、図2においては2つの基板層111、112が例示されているが、三層以上であってもよい。また、図2においては、基板層112に導入部12等が形成されている構成が例示されている。
分析領域13内の分析対象物を光学的に分析する場合においては、基板110の材質は、光透過性を有し、自家蛍光が少なく波長分散が小さいことで光学誤差の少ない材料を選択することが好ましい。
導入部12は、マイクロチップ11による解析に用いる液体が注入される部分である。導入部は液体が注入される部分であるという点で、流路の一部(例えば流路における流路長の端付近)であってもよい。
導入部12に注入された液体は、導入部12からマイクロチップ11内に流入される。
導入部12への液体の注入方式は特に限定されず、例えば、注入部(不図示)を外部と連通するように開口させ、そこからシリンジで注入することができる。また例えば、導入部12を一つの基板層111で閉塞しておき、その基板層111にシリンジを接続した針等の穿刺部材を穿刺して、導入部12へ液体を注入してもよい。導入部12を閉塞する基板層111から穿刺注入する場合、穿刺される基板層111としては、ポリウレタン系エラストマー、及びポリジメチルシロキサンなどの自己封止性を備える基板層が好適に用いられる。
分析領域13は、導入部12に注入された液体が、後述する流路14を介して供給される領域である。分析領域13では、分析対象物として、液体に含まれる物質、又はその物質が他の物質として反応して生成される反応生成物の検出、分析が行われる。このように、分析領域13において、分析対象物が反応により生成される場合があることから、分析領域13は反応領域13とも称されることがある。
流路14は、導入部12及び各分析領域13に接続し、導入部12に注入された液体を各分析領域13に供給するものである。
本実施形態では、流路14は、導入部12に接続された主流路15と、その主流路15から分岐して各分析領域13に接続する複数の分岐流路16とを有する。主流路15は、導入部12から第5分岐流路165との接続点P15までの長さを有している。各分岐流路16は、主流路15から、主流路15における液体の流れ方向(図1の矢印Fm参照)に対して所定の角度(図1のθ参照)を有して斜めに分岐されて、各分析領域13に接続されている。
また、「流路抵抗」とは、流路における液体の流れ難さ(流れ易さ)を示すものである。流路抵抗は、例えば、流路の長さ、幅、深さ、形状、及び流路内壁面の性質、並びに流路内を流れる液体の粘度等を含む抵抗要素に基づいている。
以下、この流路構造についてより具体的に説明する。
そのため、第1分岐流路161の流路抵抗と、主流路15における第1接続点P11から第1分析領域131以外の他の分析領域132、133、134、135までのそれぞれの流路14における流路抵抗とが、略同一とされている。
同様に、第1分岐流路161の流路抵抗と、第1接続点P11から第3接続点P13までの主流路15及び第3分岐流路163の合計の流路抵抗とは、略同一とされている。
第1接続点P11から第4接続点P14までの主流路15及び第4分岐流路164の合計の流路抵抗、並びに第1接続点P11から第5接続点P15までの主流路15及び第5分岐流路165の合計の流路抵抗についても同様である。
このように、マイクロチップ11は、導入部12から各分析領域13までの流路抵抗が略同一となるように形成された流路14を備えるため、導入部12に注入された液体を複数の分析領域13のそれぞれに同じタイミングで供給することができる。
具体的には、図3Aの主流路15の垂直断面の模式図で示すように、流路14(主流路15及び分岐流路16)は、垂直断面の形状が長方形状とされており、その流路抵抗は、下記式(I)により算出することができる。
このように、導入部12から各分析領域13までの流路抵抗は、導入部12から各分析領域13に接続する分岐流路16の接続点(P11〜P15)までの各主流路15における流路抵抗と、各分岐流路16の流路抵抗とを合計して求められる。
ここで、本技術において、流路抵抗が「略同一」であるとは、算出される各流路抵抗の値が、実質的に同じ範囲内にあることをいう。例えば、導入部12から各分析領域13までの各流路抵抗のうちの最大値と最小値との差が、各流路抵抗の平均値に対して5%以内、好適には2%以内、より好適には1%以内にある場合、各流路抵抗は略同一である。
例えば、複数の分岐流路16の垂直断面における幅及び/又は深さの寸法を、下流側の分岐流路16ほど(導入部12から遠い位置にある分岐流路16ほど)、大きくすることができる。具体的には、下流側に位置する分岐流路16(例えば第5分岐流路165)の垂直断面の幅及び/又は深さを、上流側に位置する分岐流路16(例えば第1分岐流路161)の垂直断面の幅及び/又は深さよりも大きくすることができる。
このように、導入部12から遠い位置ほど、液体が流れ易い(抵抗を受け難い)分岐流路16とすることで、導入部12から各分析領域13までの各流路抵抗を揃えることが可能となる。この場合、上流側から下流側にいくにつれて、分岐流路16の流路抵抗を小さくすることが好適である。
これにより、分析領域13における分析対象物が、液体の供給により化学反応を伴い生成される物質である場合、各分析領域13において、その反応開始条件を揃えることが可能となり、反応のばらつきを低減することができる。例えば、分析領域13に予め試薬が収容されており、分析領域13に供給される液体によりその試薬を溶解させて反応を生じさせる場合に、その溶解時間を揃えることが可能となり、反応のばらつきを低減することができる。
このような問題を、本技術に係るマイクロチップは、導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一に形成されている流路構造を有することで、解消することが可能となる。
図4は、本技術に係る第2実施形態のマイクロチップ21の上面模式図である。
第2実施形態のマイクロチップ21は、第1実施形態と同様、導入部22と、複数の分析領域23と、導入部22及び分析領域23に接続する流路24とを備える。
なお、導入部22及び分析領域23については、配置位置及び配置数以外は、第1実施形態で述べた説明と同様であるため、以下の実施形態及び変形例において重複説明を省略する。
しかしながら、本実施形態のマイクロチップ21では、導入部22から各分析領域23までの流路24の長さが、分析領域23間で略同一となるように形成されている点が、第1実施形態のマイクロチップ11における流路構造とは異なる。
そして、各主流路25から分岐され、導入部22に最も近い列の各第1分析領域231に接続する各第1分岐流路261は、平面視蛇腹状に形成されている。また、各主流路25から分岐され、中間列に位置する各第2分析領域232に接続する各第2分岐流路262は、第1分岐流路261より折り返し回数が少ない平面視蛇腹状に形成されている。さらに、各主流路25から、導入部22に最も遠い列の各第3分析領域233に接続する各第3分岐流路263は、各主流路25から斜めに直線状に形成されている。
そして、各第1分岐流路261の長さはそれぞれ略同一に形成されている。また、各第2分岐流路262の長さもそれぞれ略同一に、各第3分岐流路263の長さもそれぞれ略同一に形成されている。
また、このマイクロチップ21は、導入部22から各分析領域23までの流路24の長さのほか、流路24の垂直断面の幅及び深さも同一に形成されている。このようにして、マイクロチップ21における流路24は、導入部22から各分析領域23までの流路抵抗が略同一となるように形成されている。
図5及び図6は、第2実施形態の変形例として、導入部から各分析領域までの流路の長さが、分析領域間で略同一となるように形成されているマイクロチップの構成例を説明するための図である。
図7は、本技術に係る第3実施形態のマイクロチップ31の上面模式図である。
第3実施形態のマイクロチップ31は、第1実施形態における流路構造と、第2実施形態における流路構造とを組み合わせたような構成をとる。
本技術に係るマイクロチップは、導入部から分析領域へ液体を供給する流路とは別に、分析領域から液体が流出する第二の流路を備えていてもよい。当該第二の流路を備える構成例として、本技術に係る第4実施形態のマイクロチップの上面模式図を図8に示す。
また、第二の流路44は、第二の主流路45と、複数の第二の分岐流路46(461、462、463、464、465)とを有する。第二の流路44は、各分析領域13から液体が流出する第二の分岐流路46を分析領域13ごとに有しており、複数の第二の分岐流路46のそれぞれが第二の主流路45に接続して合流し、第二の主流路45を介して表示領域43に接続されている。
表示領域43は、各分析領域13(131、132、133、134、135)への液体の供給状況を提示するものであり、分析領域13等と同様に、マイクロチップを構成する基板内に空間として形成されるものである。
表示領域43は、表示領域43に液体が到達したことをユーザが視認可能となるように構成されている。表示領域43への液体の到達は、第二の流路44と接続する分析領域13への液体の充填が完了した後となる。そのため、表示領域43に液体が到達すれば、分析領域13への液体の充填の完了が提示されることとなる。逆に、表示領域43に液体が到達していなければ、分析領域13への液体の充填の未完了が提示されていることとなる。
なお、表示領域43に液体が到達したことの確認は、ユーザが目視する代わりに、受光器等の検出器を用いて検出してもよい。
表示領域43内に予め設けられる上記凹凸構造は、その凹凸構造に反射する光を利用して、表示領域43への液体の到達を提示するものである。
上記逆流を防止する観点からは、第二の主流路45は、その垂直断面の幅及び/又は深さの寸法が前記表示領域43側に向かって、漸次又は段階的に大きくなるように形成されていることが好ましい。なお、図8では、分析領域134に接続された第二の分岐流路464が接続している箇所で第二の主流路45の幅が大きく形成されており、その幅で第二の主流路45が表示領域43まで続いている構成が示されている。また、図示しないが、逆流防止の観点から、第二の流路44内の一部に逆流防止弁となる空間を配置してもよい。
本実施形態のマイクロチップ41は、上記の表示領域43及び第二の流路44等を有する構成について、次のように変更することもできる。
図9及び図10は、それぞれ、第4実施形態の第1変形例及び第2変形例のマイクロチップの上面模式図である。
図11は、本技術に係る第5実施形態によるマイクロチップを説明するための図であり、そのマイクロチップの上面を部分的に表した模式図である。
第5実施形態によるマイクロチップは、第1実施形態と同様に、液体が注入される導入部と、複数の分析領域13と、導入部から複数の分析領域13に液体を供給する流路とを有する。また、第1実施形態と同様に、この流路は、導入部に接続された主流路55と、その主流路55から分岐されて各分析領域13に接続された複数の分岐流路561、562とを有する。しかし、分岐流路561、562の構成が第1実施形態における分岐流路16の構成とは異なる。
この構成により、本実施形態によるマイクロチップは、液体を導入部から複数の分析領域13のそれぞれに同じタイミングで供給することが可能である。なお、狭窄部561a、562bは、分岐流路561、562のそれぞれの液体の流れ方向(図11の矢印Fb1、Fb2参照)に対する垂直断面の幅及び/又は深さの寸法を小さくすることで形成される。
その2つの系における流路の断面積をそれぞれS1及びS2、長さをそれぞれL1及びL2(ここで、L2=α×L1である)とし、それらの流路を流れる液体の流速をそれぞれV1及びV2とする。ある一定時間後に、各系における分析領域に液体が同時に充填されたと仮定すると、Q1=V1×S1×L1、Q2=V2×S2×L2となり、V1=V2、L2=α×L1、及びQ1=Q2より、S1=α×S2が導かれる。
よって、流路の長さに応じて、流路の断面積を変えることで、液体の分析領域への供給タイミングを揃えることが可能である。
第5実施形態の変形例によるマイクロチップでは、図12に示すように、分岐流路563、564内に、液体の流れに対して抵抗する作用を有する抵抗部563a、564aを設けてもよい。この抵抗部563a、564aにより、導入部から各分析領域13までの流路抵抗を略同一とすることが可能である。なお、抵抗部563a、564aは、それぞれの分岐流路563、564に単独で用いてもよく、図12に示すように狭窄部563b、564bと併用してもよい。
次に、フォトレジストrの上に、流路及びピラーパターンが設けられたマスクmを配置し、その上からUVを照射することで(工程S53)、露光されたレジストr部分が除去される(工程S54)。そして、導電性金属薄膜M1に電解メッキ等によりNiメッキM2を設けた後(工程S55)、残りのレジストrを除去し(工程S56)、異方性ドライエッチングを行う(工程S57)。このとき、NiメッキM2部分は、異方性ドライエッチングによりエッチングされ難いことから残留し、NiメッキM2部分以外の部分がエッチングされる。その後、NiメッキM2及び導電性金属薄膜M1を除去し、微細な凸パターンが形成された基材B1が得られる(工程S58)。最後にこの基材B1を鋳型にして、ピラー構造を有する基板B2を成形することが可能となる(工程S59)。
なお、上述の工程では、ピラーパターンを形成したものを鋳型として用いて、基板B2を成形する例を示したが、基板B2に直接ピラーを形成することも可能である。
マイクロチップの流路内に形成したピラーは、その表面を化学修飾することで疎水性表面を作ることも可能であり、この場合、逆相クロマトグラフィーの機能を持たせることが可能となる。また、ピラーには、ナノオーダーの微小孔を設けておくこともできる。マイクロチップに導入される液体が、分岐流路における当該微小孔を有するピラーを通流する際に、相互作用により、液体中の不要物を取り除く機能を付与することも可能である。
なお、粒子Pを分散させた溶液Dを流路C3の所定位置に滴下する場合、その所定位置を表面処理し、周囲よりも親水性にすることが好適である。この場合の表面処理としては、例えば、酸素又は不活性ガス(Ar等)の雰囲気中でプラズマ照射することが挙げられる。目的の場所のみを親水処理する場合は、パターンが形成されたマスク等を用いてプラズマ照射すればよい。
また、抵抗部563a、564aに用いる粒子として、適切な化学修飾を有する粒子を用いることで、マイクロチップに導入される液体が当該粒子を有する分岐流路563、564を通流する際に、不純物の捕捉や反応液の調整などを行うことも可能である。
本技術では、本技術に係る上記各実施形態のマイクロチップについて、導入部と、分析領域との間に、分析領域とは別の試薬収容領域を備えることもできる。
図15Aは、主流路65aと分岐流路66aとを有し、導入部(図示せず)と分析領域63aとの間の分岐流路66aに、試薬が収容される試薬収容領域67aを備える構成を表す模式図である。また、図15Bは、主流路65bと分岐流路66bとを有し、導入部(図示せず)と分析領域63bとの間の分岐流路66bに2つの試薬収容領域67b、67cを備える構成を表す模式図である。
また、分析領域63bよりも上流側に2か所、試薬収容領域67b、67cを設けることもできる(図15B参照)。この場合、1種(例えばプライマー等)の試薬R1を上流側(主流路65b側)の試薬収容領域67bに収容しておき、もう1種(例えば酵素等)の試薬R2を下流側(分析領域63b側)の試薬収容領域67cに収容しておくことができる(図15B参照)。
マイクロチップ61A、61Bを構成する基板の材質として、表面が親水性を示す材料を用いる場合、疎水処理を施すことが好ましく、例えば、ガラス等の無機材料の疎水処理としては、シランカップリング及びフッ素コート等が挙げられる。
分析領域63a〜bの容量が大きい場合、その分析領域63a〜b内で試薬を溶解させても拡散し難いため、試薬濃度が均一に分布しない場合がある。しかし、試薬収容領域67a〜cで予め溶解した試薬溶液が、分析領域63a〜bに流れ込むことで試薬濃度は均一になると考えられる。
すなわち、分析領域の上流側に複数の試薬収容領域を設け、その試薬収容領域に上流側から番号を付ける。どの試薬をどの番号の試薬収容領域に入れるかを決めておけば、試薬が収容されている場所から、どのような試薬が封入されているかを確認することができる。これは、マイクロチップの製造時の確認にも繋がる。
例えば、各分析領域の上流側に5つの試薬収容領域を設ける構成の場合、各分析領域には全反応に共通の酵素が含まれた試薬を封入すると共に、1番目〜5番目の試薬収容領域には、それぞれ順にA〜Eを検出するプライマーを含む試薬を封入する。このようにマイクロチップを製造する際には、画像等での自動認識も可能であり、製造時における試薬投入ミスの防止に繋がる。
本技術では、上記各実施形態で述べた構成は、本技術の目的を損なわない範囲で、他の実施形態で述べた構成と適宜組み合わせて、本技術に係るマイクロチップを構成することが可能である。例えば第1、第3及び第4実施形態のマイクロチップにおける一部の分岐流路を、第5実施形態で述べた狭窄部や抵抗部を備える分岐流路としてもよい。また、例えば、第2及び第3実施形態のマイクロチップの一部又は全部の分析領域に、第4実施形態で述べた第二の流路や表示領域等を設けてもよい。さらに例えば、第3実施形態のマイクロチップにおける複数の主流路のうちの一部の主流路について、第2実施形態で述べたように、導入部から、その一部の主流路に接続された複数の分析領域までの各流路の長さ、幅及び深さ等を略同一に形成してもよい。
また、上述の実施形態では、一つの導入部を備える構成を例示したが、マイクロチップにおける導入部の数は、2以上であってもよい。この場合、一の導入部に流路を介して接続された複数の分析領域について、一の導入部からそれに接続する複数の分析領域のそれぞれに液体が同じタイミングで供給される。
上記各実施形態で述べたような本技術に係るマイクロチップは、導入部から複数の分析領域のそれぞれに同じタイミングで液体を供給可能な流路を基板に形成することで製造される。この場合、基板への流路の形成は、流路の長さ、幅、及び深さ等の流路に基づく抵抗要素を考慮して設計された上で行うのが好適である。基板への流路の形成方法は、第1実施形態における基板の説明で述べたように、例えば、エッチング、ナノインプリント、射出成形、又は切削加工等の手法にて行うことが可能である。
(1)液体が注入される導入部と、前記液体が供給される複数の分析領域と、前記液体が前記導入部から前記複数の分析領域のそれぞれに同じタイミングで供給されるように形成された流路と、を備えるマイクロチップ。
(2)前記流路は、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成されている上記(1)に記載のマイクロチップ。
(3)前記流路は、前記導入部に接続された主流路と、該主流路から分岐されて各分析領域に接続する複数の分岐流路と、を有する上記(1)又は(2)に記載のマイクロチップ。
(4)前記主流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積が、前記複数の分岐流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積の合計よりも大きい上記(3)に記載のマイクロチップ。
(5)前記流路は、前記複数の分析領域のうち前記導入部に最も近い位置の第1分析領域に接続する第1分岐流路の流路抵抗と、前記主流路における前記第1分岐流路の接続点から前記第1分析領域以外の他の分析領域までの流路抵抗とが、略同一となるように形成されている上記(3)又は(4)に記載のマイクロチップ。
(6)前記主流路を複数備え、前記導入部から、該導入部に最も近い位置の分析領域までの各主流路の流路抵抗が略同一に形成されている上記(3)〜(5)の何れかに記載のマイクロチップ。
(7)前記分析領域から前記液体が流出する第二の流路と、該第二の流路を介して各分析領域に接続された、各分析領域への液体の供給状況を提示する表示領域と、を備える上記(1)〜(6)の何れかに記載のマイクロチップ。
(8)前記第二の流路は、前記各分析領域に接続する複数の第二の分岐流路と、該複数の第二の分岐流路のそれぞれが接続する第二の主流路と、を有する上記(7)に記載のマイクロチップ。
(9)前記第二の主流路は、該第二の主流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面の幅及び/又は深さの寸法が前記表示領域側に向かって漸次又は段階的に大きくなるように形成されている上記(7)又は(8)に記載のマイクロチップ。
(10)前記第二の流路の所定箇所に前記液体の逆流防止用の収容部を有する上記(7)〜(9)の何れかに記載のマイクロチップ。
(11)前記導入部と前記分析領域との間に、前記分析領域とは別に試薬収容領域を備える上記(1)〜(10)の何れかに記載のマイクロチップ。
(12)前記流路は、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成され、その流路抵抗は、前記液体の粘度、前記流路の長さ、及び前記流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面のサイズ、を含む抵抗要素から導かれる上記(1)〜(11)の何れかに記載のマイクロチップ。
(13)前記流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の形状が長方形状であり、前記流路の流路抵抗は、下記式(I)より算出される上記(12)記載のマイクロチップ。
(15)前記分岐流路内に、前記液体の流れに対する抵抗部を有し、該抵抗部により、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成された上記(3)〜(6)の何れかに記載のマイクロチップ。
(16)液体が注入される導入部から、複数の分析領域のそれぞれに、同じタイミングで前記液体を供給可能な流路を基板に形成するマイクロチップの製造方法。
このようにして作成したマイクロチップ71の上面模式図を図16に示す。
このマイクロチップ71は、サンプル溶液(液体)が注入されるインレット72と、5つのウェル73(731、732、733、734、735)と、インレット72から各ウェル73に接続する流路74とを備える。そして、流路74は、主流路75と、その主流路75から分岐して各ウェル73に接続する5つの分岐流路76(761、762、763、764、765)とを有する。
マイクロチップ71を製造する際に、インレット72から各ウェル73までの流路抵抗が略同一となるように、主流路75及び分岐流路76の長さ、垂直断面の形状に係る寸法(幅及び深さ)を表1に示すとおりとした。なお、流路抵抗は、第1実施形態で述べた上記式(I)により算出したものである。また、インレット72から、インレット72に最も近い位置にあるウェル731までの主流路75については、各分析領域において共通するため、表1においては、この共通する主流路75部分を省略した寸法で示した。
なお、上記試験と同様に行った比較例の結果もあわせて図17Bに示す。この比較例では、インレット及びウェルの位置及び寸法等は実施例と同じであるが、インレットから各ウェルまでの流路抵抗が略同一となるように形成されていないマイクロチップを用いた。
Claims (13)
- 液体が注入される導入部と、
前記液体が供給される複数の分析領域と、
前記液体が前記導入部から前記複数の分析領域のそれぞれに同じタイミングで供給されるように形成された流路と、
を備え、
前記流路は、
前記導入部に接続された主流路と、
該主流路から分岐されて各分析領域に接続し、部分的に狭く形成された狭窄部を有する複数の分岐流路と、
を有し、
前記主流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積の平均値が、前記複数の分岐流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積の平均値の合計よりも大きく、
前記複数の分岐流路は、前記導入部に近い分岐流路ほど前記狭窄部が長く形成された、
マイクロチップ。 - 前記流路は、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成されている、請求項1に記載のマイクロチップ。
- 前記流路は、
前記複数の分析領域のうち前記導入部に最も近い位置の第1分析領域に接続する第1分岐流路の流路抵抗と、前記主流路における前記第1分岐流路の接続点から前記第1分析領域以外の他の分析領域までの流路抵抗とが、略同一となるように形成されている、請求項1又は2に記載のマイクロチップ。 - 前記主流路を複数備え、
前記導入部から、該導入部に最も近い位置の分析領域までの各主流路の流路抵抗が略同一に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のマイクロチップ。 - 前記分析領域から前記液体が流出する第二の流路と、
該第二の流路を介して各分析領域に接続された、各分析領域への液体の供給状況を提示する表示領域と、
を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のマイクロチップ。 - 前記第二の流路は、
前記各分析領域に接続する複数の第二の分岐流路と、
該複数の第二の分岐流路のそれぞれが接続する第二の主流路と、
を有する、請求項5に記載のマイクロチップ。 - 前記第二の主流路は、該第二の主流路における前記液体の流れ方向に対する垂直断面の幅及び/又は深さの寸法が前記表示領域側に向かって漸次又は段階的に大きくなるように形成されている、請求項6に記載のマイクロチップ。
- 前記第二の流路の所定箇所に前記液体の逆流防止用の収容部を有する、請求項5〜7のいずれか1項に記載のマイクロチップ。
- 前記導入部と前記分析領域との間に、前記分析領域とは別に試薬収容領域を備える、請求項1〜8のいずれか1項に記載のマイクロチップ。
- 前記流路は、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成され、その流路抵抗は、前記液体の粘度、前記流路の長さ、及び前記流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面のサイズ、を含む抵抗要素から導かれる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のマイクロチップ。
- 前記分岐流路内に、前記液体の流れに対する抵抗部を有し、
該抵抗部により、前記導入部から各分析領域までの流路抵抗が略同一となるように形成された、請求項1、3〜4のいずれか1項に記載のマイクロチップ。 - 液体が注入される導入部から、前記液体が供給される複数の分析領域のそれぞれに、同じタイミングで前記液体を供給可能な流路を基板に形成し、
前記流路は、
前記導入部に接続された主流路と、
該主流路から分岐されて各分析領域に接続し、部分的に狭く形成された狭窄部を有する複数の分岐流路と、
を有し、
前記主流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積の平均値が、前記複数の分岐流路の前記液体の流れ方向に対する垂直断面の面積の平均値の合計よりも大きく、
前記複数の分岐流路は、前記導入部に近い分岐流路ほど前記狭窄部が長く形成された、
マイクロチップの製造方法。
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