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JP6096517B2 - 活物質およびそれを用いた二次電池 - Google Patents

活物質およびそれを用いた二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、活物質およびそれを用いた二次電池に関する。
近年、二次電池は、携帯電話やノートPCだけでなく、電気自動車用バッテリーとしてもその用途を広げており、さらに風力や太陽光発電の電圧安定化など大型用途での利用も期待されている。
二次電池は、一般に正極と負極と電解液(質)とから構成されており、正極および負極には、電気伝導を担うイオンの挿入または吸着、および脱離が可能な活物質が含まれている。二次電池の開発においては、充放電条件および使用条件に応じて、容量が大きく、寿命が長い電極を製作可能な活物質を開発することが特に重要である。
従来より、負極用の活物質としては黒鉛やハードカーボンなどの炭素系材料や合金系材料が、正極用の活物質としては電気伝導を担うイオン(Li、Naなど)とCo、Niなどの複合酸化物が検討され、利用されてきた。また、近年では、レアメタルの資源リスクの増大により、低コストのFe、Mn、Ti、Pなどを主成分とする活物質や、資源量の少ないリチウムに替えて資源量が豊富なナトリウムを蓄電イオンとしたナトリウム二次電池が検討されている。ナトリウム二次電池の正極材料としては、容量密度と出力特性に優れている点から、斜方晶のNa0.44MnOが提案されている。
例えば、特許文献1では、Na/Mn比が0.4〜0.7で、斜方晶系の一次元トンネル構造を有するナトリウム・マンガン複合金属酸化物の製法とそれを用いたナトリウム二次電池を提案している。また、特許文献2では、水性二次エネルギー貯蔵装置のカソード電極活物質としてNa0.44MO(ただしMは、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Ti、Cu、Zr、Nb、WおよびMoからなる群から選択される1種または複数種の遷移金属)を用いることが提案されている。
特開2009−129702号公報 特表2011−519122号公報
しかしながら、特許文献1に記載されている斜方晶系の一次元トンネル構造を有するナトリウム・マンガン複合金属酸化物は、初期の充放電容量が高いものの充放電過程において結晶格子の体積変化が大きいため、満足なサイクル特性が得られないという問題があった。また、特許文献2では、Na0.44MO(ただしMは、Mn、Fe、Co、Ni、Cr、V、Ti、Cu、Zr、Nb、WおよびMoからなる群から選択される1種または複数種の遷移金属)を水性二次エネルギー貯蔵装置のカソード電極活物質として用いることが提案されているものの、実施例に示されたNa0.44MnOを正極に用いた電池は、高容量かつ良好なサイクル性を示すが、充放電レートの増加にしたがって容量が大きく低下するものであった。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたもので、充放電のサイクル特性に優れ、高いレートで充放電しても容量の低下が少ない活物質およびそれを用いた二次電池を提供するこ
とを目的とする。
本発明の活物質は、組成式NaMn1−y2+z(ただし、x=0.40〜0.55かつy=0.02〜0.15、z=0〜0.1、Mは遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種である)で表される複合酸化物であって、前記Mが、ZrおよびHfからなる元素群のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする。
本発明の二次電池は、正極と、負極と、電解質とを有し、前記負極が上記の活物質を含むことを特徴とする。
本発明によれば、充放電のサイクル特性に優れ、容量の充放電レート依存性が小さい活物質、およびそれを用いた二次電池を提供できる。
本発明の一実施形態である二次電池の概略断面図である。 二次電池の外観を示す斜視図である。
本発明の一実施形態である二次電池について、図1および図2を用いて説明する。本実施形態の二次電池は、正極1と負極3との間に電解質層2を有し、これらは発電要素4を構成している。また、正極1および負極3の電解質層2に面する側とは反対側の面には、それぞれ正極側集電層5Pおよび負極側集電層5Nが設けられている。図1に示した発電要素4を、図2に示すような電池ケースに収納することにより二次電池が形成される。電池ケースの形態はラミネートタイプやチューブ型、コイン型など多種多様であるが、いずれの形態であっても良い。図2に示す6Pおよび6Nは、それぞれ外部回路と正極1および負極3とを電気的に接続する正極端子および負極端子であり、7はラミネートフィルムである。
本実施形態において、正極1に用いる活物質は、斜方晶系のNaMnO(ただし、x=0.4〜0.65)と同じ結晶構造を有しており、NaMnOのMnの一部を、陽イオンの半径がMn4+のイオン半径よりも大きい元素で置換した複合酸化物を用いる。この複合酸化物は、組成式NaMn1−y2+zで表され、この組成式においてxが0.40〜0.65の範囲、yが0.02〜0.20、zが0〜0.1の範囲であるものである。
ここで、xは0.40〜0.65の範囲にあることが、容量密度と出力特性に優れた斜方晶構造を維持しつつ高いサイクル特性を実現するために重要である。組成式NaMnOで表される化合物においては、xが0.20〜0.70の範囲で斜方晶系の結晶構造をとることが可能ではあるが、xが0.40より小さくなると正極としての容量が低下してしまい、xが0.65よりも大きくなると充放電の過程で相変態が発生し、容量のサイクル劣化が起こる。
また、NaMnOのMnの一部を、Mnとは異なる遷移金属元素で置換することにより、イオン伝導率が改善されて電気伝導を担うイオンの挿入・脱離が容易になり、内部抵抗が低減するという効果が得られるが、さらに陽イオンの半径がMn4+のイオン半径よりも大きい元素で置換することにより、NaMnOで得られる高い放電容量を維持しつつ、充放電サイクル特性の向上および容量の充放電レート依存性の低減を実現することができる。
すなわち、ナトリウムとマンガンのみの複合酸化物である斜方晶系のNaMnO(ただし、x=0.40〜0.65)を正極の活物質として用いた場合、100mAh/g以上の高い放電容量を得られるが、充放電サイクル特性に関しては十分な特性を得ることができず、また充放電レートが高くなるにつれて容量が著しく低下するという問題があった。その原因のひとつは、充放電により複合酸化物の結晶格子の体積が変化することであると考えられる。
一方、Mnの一部を、陽イオンの半径がMn4+のイオン半径よりも大きい元素Mで置換した場合には、Mn4+よりもイオン半径が大きい置換元素Mが結晶格子中に存在することにより、Naなどの電気伝導を担うイオンの離脱と挿入およびMnの酸化還元に伴う、結晶格子の体積変化が抑制されるため、容量の充放電サイクル特性および充放電レート依存性を向上することができる。陽イオンの半径がMn4+のイオン半径よりも大きい遷移金属元素としては、たとえばTi(Ti3+、Ti4+)、V(V2+、V3+)、Cr(Cr2+、Cr3+)、Fe(Fe2+、Fe3+)、Co(Co2+、Co3+)、Ni(Ni2+、Ni3+)、Cu(Cu2+)、Zr(Zr4+)、Nb(Nb5+)、Mo(Mo6+)、Hf(Hf4+)などが挙げられる。
Mは、特に4価の陽イオンとなる元素を含むことが好ましく、さらには、Ti、ZrおよびHfからなる元素群から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。このような元素は、陽イオンとしてのイオン半径が大きいだけでなく、NaMnOの結晶格子中でMnの位置に安定に固溶し、Naなどのイオンの離脱と挿入を妨害する可能性が小さいため、高容量を維持しつつ容量の充放電サイクル特性および充放電レート依存性を向上する上で特に大きな効果を得ることができる。
本実施形態においては、複合酸化物中のMnに対するMの置換量であるyを、0.02〜0.20とすることが望ましい。yが0.02より小さいと、Mによる置換の効果が充分に得られず、yが0.20を超えると、複合酸化物中に固溶できないMによる異相の発生が懸念され、容量発現に寄与しないMを含有する異相により容量が低下する可能性がある。
なお、本実施形態においては、正極1に、上述の組成式NaMn1−y2+zで表される複合酸化物(以下、単に複合酸化物という場合もある)以外の活物質を含んでいても構わない。また、工程上の不可避不純物としてたとえばAl、Mg、Fe、V、Co、Crなどを0.5質量%以下の割合で含有していてもよい。
なお、活物質である複合酸化物の組成は、元素分析により確認すればよく、たとえば蛍光X線分析や、波長分散型X線分光分析(WDS)、ICP発光分光分析などを用いればよい。活物質に含まれる結晶相は、活物質のX線回折(XRD)測定により得られた回折パターンを同定することにより確認できる。なお、MがNaとMnの複合酸化物に固溶していることは、たとえば、元素分析によりMが含有されていることが確認されるとともに、X線回折によりNaとMnの複合酸化物以外にMを含む異相が確認できないことや、複合酸化物の格子定数がMの含有量に応じて変化していることなどから確認できる。
本発明の活物質である複合酸化物は、固相反応法、水熱合成法など公知の種々の方法で作製することができる。たとえば、所定の組成のNa、Mnおよび置換元素Mが含まれる混合原料粉末や、共沈法により得られるNa、Mnおよび置換元素Mが含まれる前駆体を、大気中にて700〜1100℃の範囲の温度で加熱処理することにより合成することができる。なお、この場合、化合物の組成比を調整するには、原料粉末や前駆体に含まれるNa、Mnおよび置換元素Mの比率を適宜調整すればよい。
得られた複合酸化物は、必要に応じボールミルやビーズミル等の手法により粉砕するなどして粒度調整を行ってもよい。粒度調整を行う場合、複合酸化物の粉末の平均粒径は、それを活物質として用いる二次電池の使用条件や電極の作製方法に応じて適正な範囲に調整すればよく、たとえば0.1〜50μmの範囲から目的に応じた適正な範囲を選択して調整すればよい。粉末の平均粒径は、たとえば回折散乱法による粒度分布測定などにより確認できる。
得られた複合酸化物を活物質として電極を作製する。たとえば、得られた活物質を80質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを10質量%およびバインダーとしてポリフッ化ビニリデンを10質量%に、さらに溶媒として、活物質、導電助剤およびバインダーの合量に対して15質量%のNMP(N−メチルピロリドン)を添加してスラリーを作製する。作製したスラリーを、ドクターブレード法などの周知のシート成形法により、たとえばAlやステンレス、Ni、Ti等の金属箔上に塗布し溶剤を乾燥することで、いずれも本発明の活物質と、導電助剤と結着剤とを含む電極を作製できる。
バインダーは、ポリフッ化ビニリデン以外にも、たとえばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂など、用途によって適したものを選んで使用できる。また、導電助剤も、アセチレンブラックの代わりにケッチェンブラックやカーボンナノチューブ、黒鉛、ハードカーボン、金属(アルミニウム、金、白金など)の粉末、無機導電性酸化物(酸化インジウムスズ(ITO)ガラス、酸化スズなど)など、使用電圧範囲において化学的に安定で導電性を示すものであればその材料はいずれでも良い。
また、得られた活物質の粉末を用いて、押し出し成形やロールコンパクション法などの成形法によって圧粉体を作製し、電極を形成してもよい。また、活物質の粉末を焼成し、導電助剤やバインダーを含まない焼結体として用いてもよい。
負極3に用いる活物質の種類は、Sn−Sbコンポジットガラスなどのガラス材料や、ハードカーボン、ナトリウム金属、NaTiなどの酸化物材料、NaTi(POや活性炭などを用いることができる。たとえば、これらの粉末を用いて、上述したような製法により電極を作製することにより、負極3が得られる。
電極中における活物質の粒子の平均粒径は、これを用いる二次電池の電圧範囲や温度などの使用条件に応じて、たとえば0.1〜50μmの範囲から適正な範囲を選んで調整すればよい。たとえば高出力が必要な二次電池用途に用いる場合、活物質の粒子の平均粒径は0.5〜1.0μmの比較的微小な範囲とすることが好ましい。
なお、電極中における活物質の粒子の平均粒径は、たとえば電極の断面において、走査型電子顕微鏡(SEM)と波長分散型X線分析(WDS)により活物質の粒子を判別し、撮影した写真を画像解析して算出するなどして求めることができる。
電解質層2としては、水系電解液や、有機電解液、イオン液体等の非水系電解液をセパレータに含浸させたものや、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等のいずれも用いることができる。
水系電解液や非水系電解液を含浸させるセパレータには、イオンを通し、かつ正負極のショートを防止することが求められる。具体的には、ポリオレフィン繊維性の不織布やポリオレフィン製の微多孔膜、ガラスフィルター、セラミックの多孔質材料などを用いることができる。ここで、ポリオレフィンとしてはポリエチレン、ポリプロピレンを挙げるこ
とができ、一般的にリチウムイオン電池などの二次電池に用いられるセパレータが適用可能である。
水系電解液としては、たとえば1〜2mol/Lの硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムな
どの水溶液を用いることができる。このような水系電解液は、pHの調整により水の電気分解電位を変化させることができる。
有機電解液は、有機溶媒と電解質塩によって構成され、必要に応じて電極表面への被膜形成、過充電防止、難燃性の付与等を目的とした添加剤を加えてもよい。有機溶媒としては、高誘電率を有し、低粘性、低蒸気圧のものが好適に用いられ、このような材料としては、たとえば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートから選ばれる1種もしくは2種以上を混合した溶媒が挙げられる。電解質塩としては、たとえば過塩素酸ナトリウム(NaClO)、四フッ化ホウ酸ナトリウム(NaBF)、六フッ化リン酸ナトリウム(NaPF)、NaN(FSO、NaN(CFSO、NaN(CSO等のナトリウム塩が挙げられる。このうち、NaN(FSO、NaN(CFSOおよびNaN(CSOは、他のアルカリ金属塩と混合して一定温度以上の環境で使用することで、溶融塩としても用いることができる。
電解質層2として高分子固体電解質や無機固体電解質を用いる場合は、その厚みをたとえば10μm以下、さらには3μm以下と薄くすることができ、同一体積の二次電池と比較して活物質をより多く詰め込めるため、高容量化が進み、結果としてエネルギー密度向上にも寄与することができる。ただし、固体電解質は、ショートを防止するために絶縁破壊やピンホールによるショートを起こさない必要最低限の厚みを確保する必要がある。
正極側集電層5Pには、正極の電位において溶解などの反応が発生しない耐食性を有する材料を用いればよい。このような材料としては、たとえば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタン、金、白金等を含む金属材料や合金、黒鉛、ハードカーボン、ガラス状炭素等の炭素質材料、ITOガラス、酸化すずなどの無機導電性酸化物材料などを用いることができる。その中でもアルミニウム、金、白金は耐食性に優れ、容易に入手できるため好ましい。特にアルミニウムは、表面に酸化被膜を形成して不動態化し、高い電位においても耐食性に優れる点から好ましい。
負極側集電層5Nには、負極の電位においてNaとの合金化などの副反応が発生しない材料を用いればよい。このような材料としては、たとえば、銅、ニッケル、真鍮、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、タングステン、金、白金等を含む金属材料や合金、黒鉛、ハードカーボン、ガラス状炭素等の炭素質材料、ITOガラス、酸化すずなどの無機導電性酸化物材料などを用いることができる。特に、導電性が高く比較的安価な点から、アルミニウムまたはニッケルを用いることが好ましい。特にアルミニウムは、銅やニッケルと同様に導電性が高く比較的安価であり、ナトリウムに対しては不活性であるため、正極および負極のいずれにも集電体として用いることが可能である。
正極側集電層5Pおよび負極側集電層5Nは、これらの金属材料からなる金属箔やメッシュを用いてもよいし、金属材料、炭素質材料またはITOガラスや酸化すずなどの無機導電性酸化物材料などをフィラーとした導電性インクなどを電極材料表面に塗布し、乾燥させたものを用いてもよい。また、白金やアルミニウム、チタンなどの金属を電極材料表面に蒸着したものであってもよい。
なお、金属箔またはメッシュを用いる場合、その厚みは5〜20μmとすることが好ましい。また、金属箔を使用する場合は、電極材料との接着力向上のために、金属箔の表面を粗面化処理したものを用いてもよい。この場合、金属箔の表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)にして0.5〜2μmであることが好ましい。金属箔の表面粗さは、触針式、光干渉式等の表面粗さ計や、レーザー顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)等を用いて測定する。一般的に使用される触針式表面粗さ計を用いる場合は、JIS B0601に基づいて、たとえば、触針先端径を2μm、測定長を4.8mm、カットオフ値を0.8mmという条件で測定すればよい。
以上、本実施形態の二次電池について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲で種々変更したものにも適用することができる。
以下、本発明の活物質およびそれを用いた二次電池について、実施例に基づき詳細に説明する。
まず、正極活物質となる、組成式NaMn1−y2+zで表される複合酸化物を合成した。素原料として炭酸ナトリウム(関東化学製)、二酸化マンガン(高純度化学製)、アナターゼ型酸化チタン(東邦チタニウム製)、酸化ジルコニウムおよび酸化ハフニウム(高純度化学製)を、表1に示す比率となるように配合し、イソプロピルアルコール(IPA)を溶媒としてスラリー化し、ZrOボールを用いてボールミルにて20時間混合した。混合後のスラリーを乾燥した後、大気中で800℃×10hの加熱処理を行い、複合酸化物を合成した。
合成した複合酸化物は、ICP発光分光分析により組成を確認し、x、yの値が配合時と同等であることを確認した。また、X線回折(XRD)測定を行い、回折パターンを解析して複合酸化物に含まれる結晶相を同定した。いずれの試料においても、NaとMnの複合酸化物以外にはごく微小な回折ピークしか確認されず、Mは複合酸化物の結晶相にほぼ固溶していると考えられる。なお、X線回折(XRD)測定はCuKα線を用いて行った。
合成した活物質を用いて正極を作製した。合成した活物質の粉末を80質量%、導電助剤としてアセチレンブラックを10質量%、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを10質量%、溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)を、活物質、導電助剤およびバインダーの合量に対して15質量%混合してスラリーを作製した。このスラリーを、正極側集電層となるニッケル金属箔の上にドクターブレード法により塗布し、溶媒を乾燥することにより、厚さ30μmの正極を形成した。
負極は、市販の活性炭粉末(クラレ製)を活物質として用いて、正極と同じ方法で厚さ100μmの負極を形成した。
得られた正極および負極を、集電層である金属箔と共に10×10cmの正方形状に切断し、さらに集電層である金属箔の電極が形成されていない側の面の端部に、ニッケル金属箔を正極端子または負極端子として、スポット溶接で取り付けた。
作製した正極と負極との間に、電解液を含んだポリプロピレン/ポリエチレン製のセパレータを配置し、外装体である袋状のアルミニウムラミネートフィルムに収納し、電解液を注入した。電解液には、有機溶媒であるプロピレンカーボネート(PC)にNaN(FSO(いわゆるNaFSA)を1mol/Lで溶解した有機電解液、あるいはH
OにNaSOを2mol/L溶解した水系電解液を用いた。電解液の種類を表1に示す。
電解液を注入した後、正極端子および負極端子の端部が外装体の開口部から露出した状態で、外装体の開口部を熱溶着により密閉し、二次電池とした。
作製した二次電池の充放電特性は、以下のような条件で評価した。
充放電電圧範囲:上限4.0V、下限1.5V(有機電解液)
上限4.0V、下限2.2V(水系電解液)
充放電電流値 :1mA/cm(定電流充放電)
充放電レート :0.2C
測定温度 :30℃
電池特性として、初期放電容量、および放電−充電1回を1サイクルとした100サイクルの充放電試験後の放電容量維持率を示す。また、一部のセルに対して充放電レートを0.2C、1C、2C、10Cと変更して、放電容量の充放電レート依存性を評価した。各充放電レートで測定した放電容量を表2に示す。
Figure 0006096517
Figure 0006096517
本発明の範囲内である試料No.4〜6、8〜10、17〜19は、50mAh/gの高い初期放電容量を示すともに、100サイクルの充放電試験後の容量維持率が80%以
上とサイクル特性に優れたものであった。また、試料No.5、6に代表されるように、充放電レートに対する放電容量依存性が、Mnの一部を置換していない試料No.1、2と比較して小さく、高いレートで充放電しても放電容量の低下が少ないものであった。なお、試料No.11〜16は参考例である。
一方、組成式NaMn1−y2+zにおけるxが0.3と小さい試料No.3では初期放電容量が小さく、xが0.7と大きい試料No.14や、MnのMによる置換量yが少ない試料No.1、2、7、yが大きい試料No.12では、初期放電容量は大きいもののサイクル特性に劣るものであった。
1・・・・正極
2・・・・電解質層
3・・・・負極
4・・・・発電要素
5P・・・正極側集電層
5N・・・負極側集電層
6P・・・正極端子
6N・・・負極端子
7・・・・ラミネートフィルム

Claims (4)

  1. 組成式NaMn1−y2+z(ただし、x=0.40〜0.55かつy=0.02〜0.15、z=0〜0.1、Mは遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種である)で表される複合酸化物であって、前記Mが、ZrおよびHfからなる元素群のうち少なくとも1種を含むことを特徴とする活物質。
  2. 正極と、負極と、電解質とを有し、前記正極が請求項1に記載の活物質を含むことを特徴とする二次電池。
  3. 前記電解質が、水系の電解液であることを特徴とする請求項に記載の二次電池。
  4. 前記正極と前記負極との間でナトリウムイオンをやり取りすることにより充放電を行うことを特徴とする請求項またはに記載の二次電池。
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