第1の発明は、内箱と外箱の間に発泡断熱材が充填された断熱箱体と、前記断熱箱体の少なくとも側面壁に前記発泡断熱材と共に配設され、外被材に少なくとも芯材を内包し減圧密封した真空断熱材とを備え、前記真空断熱材には気体吸着材が内包されている冷蔵庫である。
これにより、断熱壁の中で歪みの大きくなる側面壁に気体吸着材を有する真空断熱材を前記発泡断熱材と共に備えたことで、側面壁の剛性を向上させるとともに真空断熱材の経年劣化を抑制し、長期間に渡って断熱箱体の剛性を維持することが可能となる。
第2の発明は、前記真空断熱材は板形状を成し、前記断熱箱体の左右両側の側面壁には、前記気体吸着材が内包された前記真空断熱材が配設されるとともに、前記左右両側の側面壁に配設された前記真空断熱材は、夫々の主面が互いに同じ面積を有している。
これにより、冷蔵庫の左右壁である側面壁における剛性を同一にすることができ、断熱箱体における剛性の偏りをなくし、バランスよく安定した強度の断熱箱体を形成することが可能となる。
第3の発明は、前記断熱箱体の背面壁には、前記気体吸着材が内包された前記真空断熱材が配設されるものである。
これにより、冷蔵庫の側面壁に加えて、それら左右の側面壁を繋ぐ背面壁においても剛性を高めることで、断熱箱体の剛性をさらに高めることが可能となる。
第4の発明は、前記側面壁に配設された前記真空断熱材は、その下端部に前記芯材が内包されていない前記外被材のみの無芯部を有し、前記無芯部は折り返された複層部を形成し、前記気体吸着材は、前記複層部から離れた箇所に位置するものである。
これにより、真空断熱材の中でも熱伝導性の良い外被材の部分のみで形成された複層部は、温度変化が大きくなる傾向があるが、気体吸着材をこの複層部から離れた箇所に配設することで、温度変化をより抑制することができ、安定した気体吸着量を得ることで、経年劣化を抑制することができる。
第5の発明は、前記断熱箱体には発熱部が設けられ、前記真空断熱材に内包された前記気体吸着材は、前記断熱箱体の発熱部とは、隣接しないように位置するものである。
これにより、真空断熱材に備えられた気体吸着材が高温となることを避けることができ、気体吸着材が短期間に高活性化するのを避け、長期間に渡って機能を発揮することができる。更に、気体吸着材周辺の外被材の経年劣化を防ぐことで気体吸着材が空気に触れる影響が低減でき、断熱箱体を長期に渡り使用した場合でも、真空断熱材に搭載した気体吸着材は外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図り、真空断熱材の熱伝導率の劣化を抑制することができる。
第6の発明は、前記断熱箱体には発熱部が設けられ、前記真空断熱材に内包された前記気体吸着材は、前記真空断熱材の厚み方向において前記断熱箱体の発熱部と重ならないように位置するものである。
これにより、真空断熱材に備えられた気体吸着材が高温となることを避けることができ、気体吸着材が短期間に高活性化するのを避け、長期間に渡って機能を発揮することができる。更に、気体吸着材周辺の外被材の経年劣化を防ぐことで気体吸着材が空気に触れる影響が低減でき、断熱箱体を長期に渡り使用した場合でも、真空断熱材に搭載した気体吸着材は外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図り、真空断熱材の熱伝導率の劣化を抑制することができる。
第7の発明は、前記断熱箱体には、圧縮機と、コンデンサに備えられた放熱パイプと、キャピラリーチューブと、冷却器とを有する冷凍サイクルが設けられ、前記発熱部は前記放熱パイプであるものである。
これにより、冷凍サイクルの中で高温となる放熱パイプにおいて発生する外気温度よりも高い熱が、気体吸着材に熱伝達することを抑制することができ、気体吸着材がヒートスポットになることを避けることが可能となる。
さらに、気体吸着材が真空断熱材よりも出っ張る場合でも、本体箱側の真空断熱材の表面が凸形状とならず、外観変形も防止できる。
また、低真空度に維持される真空断熱材の空気侵入による変形も防止できるため、本体外箱の外観変形も防止できる。
第8の発明は、前記放熱パイプは、前記真空断熱材の表面に配設されるとともに、少なくとも2本の前記放熱パイプの間に前記気体吸着材が配設されるものである。
これにより、真空断熱材に局所的に断熱できない箇所がないため、放熱能力を増加し、省エネ性を向上させることができる。
第9の発明は、前記気体吸着材は、前記真空断熱材における前記放熱パイプが配設される面とは反対側の面に配設されるものである。
これにより、放熱パイプと気体吸着材とは、必ず真空断熱材の芯材を介して逆側の面に位置するため、放熱パイプからの熱影響を受けることを低減することが可能となる。
第10の発明は、前記断熱箱体は、扉内板と扉外板とを有する扉を備え、前記扉内板と前記扉外板の間には、発泡断熱材が充填されると共に、外被材に少なくとも芯材を内包し減圧密封した真空断熱材が配設され、前記真空断熱材には気体吸着材が内包されているものである。
これにより、気体吸着材を内包した真空断熱材は、真空断熱材の経年劣化も抑制できることから、扉の剛性向上を長期間に渡って図ることができるため、扉の強度を向上させることができる。
また、十分な強度が得られている場合には、気体吸着材を内包した真空断熱材を用いることで強度を維持したままで壁厚の薄壁化を行うことができ、庫内容量を大きくすることが可能となる。また、壁厚の薄壁化によって、使用する硬質ウレタンフォームの使用量が低減できるとともに製品重量も低減することができる。
第11の発明は、前記断熱箱体は複数の前記扉を備え、前記複数の扉の中で最も面積の大きい扉に、前記気体吸着材を内包した真空断熱材が配設されるものである。
一般に、面積の大きいドアは長期間使用することで、ドア内外の反りといった変形が生じる可能性があるが、本発明により、気体吸着材を内包した真空断熱材は、真空断熱材の経年劣化も抑制できることから、扉の剛性向上を長期間に渡って図ることができるため、扉の強度を向上させることができ、扉の変形による冷気もれ等による冷却効率の低下を防止し、省エネルギーの冷蔵庫を提供することができる。
第12の発明は、前記扉の前記扉外板は切欠部を有し、前記扉をその厚み方向から見て、前記切欠部の少なくとも一部に重なるように、前記気体吸着材を内包した真空断熱材が配設されるものである。
一般に、切欠部を備えた扉外板を有することで、扉強度の低下する懸念があるが、本発明により、前記扉をその厚み方向から見て、切欠部の少なくとも一部に重なるように、気体吸着材を内包した真空断熱材を備えることで、扉の強度を向上させることができ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することが可能となる。
第13の発明は、前記断熱箱体には、真空度の異なる複数の真空断熱材が備えるものである。
一般に、真空断熱材の真空度は、真空断熱材の外被材内部に含まれる気体が外部から吸引される量、若しくは、気体吸着材の吸着性能によって決定される。真空断熱材の真空度と剛性および熱伝導率は相関があり、真空度が高い真空断熱材は、剛性が高く、且つ、熱伝導率は低い。真空度の低い真空断熱材はこの逆である。よって、真空度の高い真空断熱材を、強度を高めたい部分に用いることで冷蔵庫の本体自身の強度を高めることができる。
第14の発明は、前記真空度の異なる複数の真空断熱材の中で、最も真空度の大きい真空断熱材は、少なくとも繊維材料を含む芯材と、包材からなる袋に内包された気体吸着材とを、ガスバリア性を有する外被材で被った真空断熱材である。
これによって、空気中の概ね75%程度の割合で存在する窒素を、常温でも吸着することが出来るため、真空断熱材内部の残留空気を低減でき、真空断熱材の真空度の向上や剛性の向上が図れ、熱伝導率の低減を行える。また、気体吸着材は真空封止後も外被からの空気侵入分を継続して吸着することができるため、真空断熱材の時間経過による内部への空気侵入で起こる熱伝導率の経年劣化に対する性能低下の抑制も可能となり、長期にわたり高断熱性能を維持することができる。
第15の発明は、前記断熱箱体の上面及び背面はそれぞれ第一の天面部及び第一の背面部によって画定され、前記断熱箱体の上部の背面側部分には凹部が形成され、前記凹部は、前記第一の天面部の背面側にて前記第一の天面部より低い位置に設けられ、かつ前記第一の背面部の上部に接続された第二の天面部と、前記第一の天面部と前記第二の天面部との間を接続する第二の背面部とを有し、前記凹部が有する第二の天面部には圧縮機が配設されており、前記第二の背面部または前記第二の天面部、もしくはこれらの両方に、前記気体吸着材を内包した真空断熱材が配設されるものである。
これにより、強度が高く、且つ、省エネ性に優れた冷蔵庫であることに加え、温度の高い圧縮機を含めた機械室周囲部に気体吸着材を用いた真空断熱材を使うことで高い断熱性を有するため、圧縮機の排熱による庫内側への断熱を抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ向上を図ることができる。
更に、圧縮機や機械室ファンを支持する第二の天面部の剛性を高めて騒音、振動の伝播を抑えることができる。
第16の発明は、前記気体吸着材を内包した真空断熱材は、前記第二の背面部と前記第二の天面部を構成する断熱壁のうち、厚みが薄いほうに配設される。
これにより、気体吸着材による熱伝導率の低減した真空断熱材を断熱壁の厚みが薄いほうに貼り付けることで、断熱性能として高い効果を得ることが出来る。
また、熱伝導率の低減により従来と同等の断熱性能であれば真空断熱材自体の厚みを薄くできるため、ウレタン流動性も阻害しない。一方、熱伝導率低減により従来と同等の断熱性能であれば、硬質ウレタンフォームの厚みを薄くする方法もある。この場合は、庫内容量UPが図れるだけでなく、壁厚の薄壁化によって、使用する硬質ウレタンフォームの使用量も低減できコストダウンが図れるとともに製品重量も低減することができるため、搬入時の運搬性も向上する。
また、本体上部の重量が低減されるため、剛性および真空度が異なる真空断熱材を複数で使い分けして配置して剛性強度を向上させた本体に加えて、重心も下がるため転倒防止にも効果がある。
第17の発明は、前記気体吸着材を内包した真空断熱材は、前記第二の背面部と前記第二の天面部を構成する断熱壁のうち、各断熱壁を厚み方向から見たときに庫内への投影面積が大きいほうに配設されるものである。
これにより、気体吸着材を備えた真空断熱材の被覆面積を大きくとることができるため、庫内への伝熱を抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ向上を図ることができる。更に、強度の向上が図れるとともに、庫内への騒音・振動の伝播面積の減衰効果も高められる。
第18の発明は、前記気体吸着材を内包した真空断熱材は、前記第二の背面部と前記第二の天面部を構成する断熱壁のうち、圧縮機への距離が近いほうに配設されるものである。
これにより、温度差の大きい部分に気体吸着材を備えた真空断熱材を配置することで、断熱性能として高い効果が得られ、圧縮機の排熱による庫内側への伝熱を抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ向上を図ることができる。
また、圧縮機の排熱温度の影響を受け気体吸着材自身も温度が高まるため、気体吸着材の活性度が向上し、吸着効果が高まる。その結果、より真空度の高まった真空断熱材を提供することができ、熱伝導率が低く、強度も向上するので高い省エネ性や外観強度が実現する。
第19の発明は、第1の発明から第18の発明のいずれかの冷蔵庫に搭載する冷蔵庫用の真空断熱材である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
なお、従来と同一構成及び差異がない部分については、詳細な説明を省略する。また、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の斜視図である。図2は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の正面断面図である。図3は本発明の実施の形態1による冷蔵庫の側面壁の縦断面図である。
図1から図3に示すように、冷蔵庫の本体101は、前方に開口する金属製(例えば鉄板製)の外箱124と、硬質樹脂製(例えばABS製)の内箱125と、外箱124と内箱125の間に発泡充填された硬質ウレタンフォーム126とを備える断熱箱体である。本体101は、その内部が複数の室に区分けされており、本実施の形態では、上部に設けられた冷蔵室102と、冷蔵室102の下に設けられた上段冷凍室103と、冷蔵室102の下で上段冷凍庫103に並列に設けられた製氷室104と、本体下部に設けられや野菜室106と、並列に配置された上段冷凍室103及び製氷室104と野菜室106の間に設けられた下段冷凍室105とを有している。
冷蔵庫は、冷蔵室102の前面開口部分を開閉する回転式の扉102aを備えている。この扉102aは、本体101の天面部に備えられた上部ヒンジ保持部102bと冷蔵室102の下方側に備えられた下部ヒンジ部102cとによって、回動自在に本体101に取り付けられている。
また、上部ヒンジ保持部102bの少なくとも一部は、上下方向に沿って見た場合に、側面壁101aの内箱125よりも外箱124側に位置するように備えられている。言い換えると、上部ヒンジ保持部102bの少なくとも一部は、上下方向に沿って見た場合に、断熱材で形成された側面壁101a上に重なるように位置している。
上段冷凍室103と製氷室104と下段冷凍室105と野菜室106の前面開口部分は、それぞれに対応した引き出し式の扉103a,104a,105a,106aにより開閉自由に閉塞される。また、冷蔵室102の前面開口部分は、例えば観音開き式で回転式の扉102aにより開閉自由に閉塞するように構成してもよい。
冷蔵室102は、食品を冷蔵保存するために、凍らない温度を下限とするよう、通常は1〜5℃となるように設定されている。野菜室106は、冷蔵室102と同等もしくは若干高い温度設定の2℃〜7℃に設定することが多い。低温にすれば葉野菜の鮮度を長時間維持することが可能である。上段冷凍室103と下段冷凍室105は、食品を冷凍保存するために、通常は−22〜−18℃となるように設定されているが、冷凍保存状態の向上のために、たとえば−30〜−25℃などのように、より低温に設定されることもある。
上記のように、冷蔵室102や野菜室106は、庫内がプラス温度に設定されるので、このような温度領域を有する上記各庫内は冷蔵温度帯と呼ばれる。また、上段冷凍室103や下段冷凍室105や製氷室104は、庫内がマイナス温度で設定されるので、このような温度領域を有する上記各庫内は冷凍温度帯と呼ばれる。また、上段冷凍室103は切替室として構成し、冷蔵温度帯から冷凍温度帯まで選択可能な部屋としてもよい。
冷蔵庫の本体101の天面部は、冷蔵庫の背面方向に向かって階段状を成すように、第一の天面部108とその背面側の第二の天面部109とで構成されている(図3参照)。換言すれば、本体101の天面部の背面側部分には、第二の天面部109を底面とする凹みが設けられている。この凹みは、圧縮機117を配置する機械室119となっている。なお、図1に示すようにこの凹みにはカバーが被せられている。
この冷蔵庫は、圧縮機117と、水分除去を行うドライヤ(図示せず)と、コンデンサ(図示せず)と、放熱用の放熱パイプ143と、キャピラリーチューブ118と、冷却器(図示せず)とを順次環状に接続してなる冷凍サイクルを備えている。そして、この冷凍サイクルに冷媒を封入し、冷却運転を行う。前記冷媒には近年、環境保護のために可燃性冷媒を用いることが多い。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品を機械室内に配設することもできる。
ここで、真空断熱材127,128,129,130,131は、硬質ウレタンフォーム126とともに冷蔵庫の本体101を構成している。具体的に説明すると、上記真空断熱材のうち真空断熱材127,128,129,130は、外箱124の天面、背面、左側面、右側面の内側に接してそれぞれ貼り付けられている。また、真空断熱材131は、内箱125の底面に接して貼り付けられている。
側面壁101aに備えられた真空断熱材129,130には、気体吸着材137がそれぞれ内部に備えられている。これらの気体吸着材137は、真空断熱材129,130それぞれの厚み方向の中心位置よりも、庫内側(内箱側)の位置に配設されている。左右両側の側面壁101aに配設された真空断熱材129,130は、板形状を成し、夫々の主面が互いに同じ面積を有している。
また、側面壁101aに備えられた真空断熱材129,130には、上下方向に延びる直線状の変形部が形成されている。図3には、右側の側壁面101aに備えられた真空断熱材130が有する変形部130aを示しているが、左側の真空断熱材129の変形部も同様である。これらの変形部は、真空断熱材129,130の外側表面から窪んだ凹状部(あるいは、溝状部)となっている。また、これらの変形部は、真空断熱材129,130の夫々において複数形成されており、横方向にほぼ平行に並んでいる。また、図3に示すように、真空断熱材130は、芯材が内包されていない外被材のみで形成された無芯部を折り返した複層部130bを有している。図3では、側面視で長方形状を成す真空断熱材130の四隅のうち、下部背面側の角部を折り返した複層部130bを示しているが、他の角部にも複層部を形成してもよい。また、真空断熱材129についても同様に複層部を形成してもよい。
図2に示すように、本体101内の各室は仕切り部によって区画されている。具体的には、冷蔵室102と、その下方の製氷室104および上段冷凍室103とは、第一の断熱仕切り部110によって区画されている。また、左右に並設された製氷室104と上段冷凍室103とは、第二の断熱仕切り部111によって区画されている。また、製氷室104および上段冷凍室103と、それらの下方の下段冷凍室105とは、第三の断熱仕切り部112によって区画されている。更に、下段冷凍室105とその下方の野菜室106とは、第四の断熱仕切り部113によって区画されている。
なお、第二の断熱仕切り部111および第三の断熱仕切り部112は、硬質ウレタンフォーム126を充填した後の本体101に対して組み付けられる部品であるため、断熱材として発泡ポリスチレンを使用することが考えられる。しかしながら、断熱性能や剛性を向上させるために硬質ウレタンフォーム126を用いてもよく、更には、高断熱性の真空断熱材を挿入することにより、仕切り構造のさらなる薄型化を図ってもよい。
また、上段冷凍室103及び製氷室104の引き出し式の扉は、ローラ及びガイドなどから成る可動部(ガイド機構)を備えている。従って、この可動部を確保しさえしておけば、第二の断熱仕切り部111および第三の断熱仕切り部112の形状の薄型化や廃止を行って、冷却風路を確保でき冷却能力の向上を図ることもできる。また、第二の断熱仕切り部111および第三の断熱仕切り部112の内部をくりぬくことで、くりぬいた部分を風路とすることができ、更には材料の低減を図ることもできる。
冷蔵庫の本体101の背面には、アルミニウムや銅を用いて形成された冷却室(図示せず)が設けられている。この冷却室内には、代表的なものとして、フィンアンドチューブ式の冷気を生成する冷却器が配設されている。一例として該冷却器は、断熱仕切壁である第二および第三の仕切り部111,112の後方領域と下段冷凍室105の背面領域とにわたるようにして、上下方向に縦長に配設されている。
冷却器の近傍(例えば、冷却室の上部空間)には、強制対流方式により各貯蔵室102〜106に冷却器で生成した冷気を送風する冷気送風ファン(図示せず)が配置されている。また、冷却室の下部空間には、冷却時に冷却器や冷気送風ファンに付着する霜を取り除く除霜装置としてのガラス管製のラジアントヒーター(図示せず)が設けられている。除霜装置の具体的な構成は特に上記のものに限定するものではなく、ラジアントヒーターに換えて、冷却器に密着したパイプヒータを用いてもよい。
次に、上記のような冷蔵庫の冷却運転について説明する。例えば、本体101の壁部を通じた外部からの侵入熱や、ドアの開閉時の侵入熱などにより、冷凍室106の庫内温度が上昇して温度センサである冷凍室センサ(図示せず)が所定の起動温度以上を検出した場合に、圧縮機117が起動して冷却運転が開始される。圧縮機117から吐出された高温高圧の冷媒は、凝縮器にて放熱して凝縮液化し、最終的に機械室119に配置されたドライヤまで到達する間、特に外箱124に設置される放熱パイプ143において、外箱124の外側の空気や庫内のウレタンフォーム126との熱交換により、冷却されて液化する。
次に、液化した冷媒は減圧器であるキャピラリーチューブ118で減圧されて、冷却器に流入し冷却器周辺の庫内空気と熱交換する。熱交換により生成された冷気は、近傍の冷気送風ファンにより庫内へ送風され庫内を冷却する。この後、冷媒は加熱されガス化して圧縮機117に戻る。庫内が冷却されて冷凍室センサの温度が停止温度以下になった場合に圧縮機117の運転が停止する。
次に、本実施の形態で使用した気体吸着材137を用いた真空断熱材について説明する。
図4のように、真空断熱材138は、少なくとも繊維材料を含む芯材132と、ガスバリア性を有する包材133からなる袋に真空封止された粉末状の気体吸着材137とを、ガスバリア性に優れた外被材135で被い、外被材135を真空封止後に、包材133に穴を開け、包材内部と外被材内部を連通させて構成される。尚、連通とは、包材内部と包材外部で隔てられていた空間を一続きの空間にすることである。
上記のように外被材135の真空封止後に包材133に穴を開ける際に、本実施の形態においては、予め包材133に備えられた破壊部134に対し、真空封止後に外被材135の外部から外力を加えることで当該破壊部134を破壊し、包材133に穴を開けている。
このように、穴が開いた状態では、外被材135の内部空間と気体吸着材とが連通し、気体吸着材により外被材135の内部空間に残存していた気体がさらに吸着されるので、真空度をより向上させることが可能となる。
このように、本実施の形態の真空断熱材は、製造時に真空引きをして密封した後に、気体吸着材の容器を適当な方法で破壊して外被材内で連通させることで二段減圧を行う。この二段減圧によって、真空度を大幅に高めることが可能となり、併せて、気体吸着材を内包する真空断熱材は剛性が向上する。
なお、気体吸着材は、ZSM−5型ゼオライトからなる吸着材を、表面積が大きい粉末状として備えている。また、常温での窒素吸着特性を向上させるため、ZSM−5型ゼオライトの中でも、さらに望ましくは、ZSM−5型ゼオライトの銅サイトのうち、少なくとも60%以上の銅サイトが、銅1価サイトであり、銅1価サイトのうち、少なくとも70%以上が酸素三配位の銅1価サイトである吸着材としている。
このように酸素三配位の銅1価サイトの率を高めた気体吸着材を備えることで、空気の吸着量を大幅に向上させることが可能となる。
また、真空断熱材は、内部に芯材を有しており、芯材はグラスウールなどの無機繊維集合体を加熱乾燥後、蒸着層フィルムと金属薄層フィルムを貼り合わせた外被材中に挿入し、内部を真空引きして開口部を封止することにより形成されている。ここで、繊維集合体とは、繊維のみからなる集合体であって、バインダーや酸、熱等で成形されていてもよい。
蒸着層フィルムとしては、アルミ蒸着フィルムをナイロンフィルムと高密度ポリエチレンフィルムとで挟み込んだ複合プラスチックフィルムを用いることができる。また、金属箔層フィルムとしては、アルミ箔をナイロンフィルムと高密度ポリエチレンフィルムとで挟み込んだ複合プラスチックフィルムを用いることができる。
また、蒸着層フィルムの金属箔層フィルムとのシール面は平面状とし、金属薄層フィルムの蒸着層フィルムとのシール面は立体的に構成している。そして、このような外被材は、蒸着層フィルムを外箱124もしくは内箱125に接するようにして配置している。
ガスバリア性を有する包材133は、内部に気体吸着材を入れた上で、包材133の開口部に封止部材を配設したものを用いる。包材133としては、アルミニウム、鉄、銅、ステンレス等の容器が安価であり、容易に利用できる。本実施の形態では、包材133としてアルミニウムの容器を使用し、封止部材としてガラス組成物を用いた。これは、金属の中でも熱膨張係数が大きく、外被材135の内部を真空封止する際の加熱過程および冷却過程においてガラス組成物より収縮度合いが顕著に大きくなるため、ガラス組成物を挟み込む物理的な応力を発現し、ガラス組成物による金属製容器の封止をより強固にすることができるためである。
また、アルミニウムは他の金属と比較して柔軟性が高いため、収縮の際にガラス組成物を破壊することなく、自身が延伸してガラス組成物を適切な応力にて挟み込むことが可能である。このため、減圧密封後に金属製の包材133を開封して、気体吸着材がその機能を発揮するような用途に用いる場合、アルミニウムの柔軟性により開封が容易である。
気体吸着材137とは、気体中に含まれる非凝縮性気体を吸着できるものであり、アルカリ金属やアルカリ土類金属の酸化物、あるいは、アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物等が利用でき、例えば、酸化リチウム、水酸化リチウム、酸化バリウム、水酸化バリウム等がある。これによって、空気中の概ね75%を有する窒素を常温状態で吸着できるため、高い真空度を得ることが出来る。
破壊部134は、封止部材と兼用しており、包材133よりも脆く壊れやすい材料であるガラス組成物によって形成されている。即ち、包材133の内部に気体吸着材を密封する封止部として機能するとともに、脆く壊れやすい材料で形成することで、減圧密封後に包材133に貫通孔を確実に形成することが可能であり、破壊部としても機能する。
ガスバリア性を有する外被材135とは、芯材132、包材133、気体吸着材137、破壊部134を包み込むことにより、これらを周囲の空間から独立させるものである。また、気体透過度が104[cm3/m2・day・atm]以下であることが好ましく、より望ましくは103[cm3/m2・day・atm]以下となるものである。
なお、穴を開ける方法として、本実施の形態では端部に封止部と兼用して形成した破壊部134を用いたが、破壊部134は、外被材135の真空封止後に外力によって、包材133を破壊できる部材であればよく、例えば包材133の剛性の弱い箇所やシール部を破壊部とし、これを破壊してもよい。
また、その他の方法として、突起物を包材133に接触することにより穴を開けてもよい。図5に示す真空断熱材138は、気体吸着材137を用いた真空断熱材138であって、少なくとも繊維材料を含む芯材132と、ガスバリア性を有する包材133からなる袋に真空封止された気体吸着材137とを、ガスバリア性を有する外被材135で被い、外被材135の真空封止後に、包材133に穴を開け、包材内部と外被材内部を連通させた構成となっている。
上記のように図5に示す真空断熱材138では、外被材135の真空封止後に包材133に穴を開ける際に、本実施の形態においては、予め包材133に隣接して突起物を有する部材134を外被材135に内包しておき、真空封止後に外力によって突起物を有する部材134を押すことで包材133に穴を開けている。
なお、繊維材料を含む芯材を用いて作製した真空断熱材の熱伝導率は、粉末材料のみからなる芯材を用いて作製した真空断熱材の熱伝導率に比較して、低圧力領域では小さく、高圧力領域では大きい。従って、繊維材料を含む芯材を用いて作製した真空断熱材はその外被材内部の圧力を低く維持することが重要である。
なお、本実施の形態で使用した気体吸着材137を用いた真空断熱材138は、外被材内に気体吸着材137を有しているため、外被材内部は圧力が低く維持され、繊維材料を含む芯材132を用いた真空断熱材の熱伝導率は低く維持される。よって、外被材内部の圧力が低く維持されるため、剛性も高くなる。
一般に、真空断熱材の熱伝導率は、芯材による熱伝導と、外被材内の残留気体による熱伝導の和により決定する。例えば、芯材が粉末を含む場合は、芯材内部に存在する気体の平均自由工程が短いため、気体による熱伝導率は非常に小さく、芯材による熱伝導が支配的である。一方、芯材が繊維の場合は、繊維同士の接点が少ないため、芯材の熱伝導率は非常に小さくなるが、気体の平均自由工程が大きいため、わずかな圧力上昇で、気体による熱伝導率が支配的になってしまう。従って、芯材が繊維のみからなるときは、このような効果が大きいため、外被材内部を低圧に保つことが、真空断熱材の熱伝導率を低減するために非常に有効な手段となる。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下、その動作、作用について説明する。
本実施の形態のように、野菜室106が下方に設置され、真ん中に冷凍室105が設置され、冷蔵室102が上方に設置された冷蔵庫のレイアウト構成が使い勝手と省エネの観点からよく用いられている。また、圧縮機117を天面奥部に配設した構成の冷蔵庫も、使い勝手の観点と庫内容量UPの点から用いられる。近年では更に、省エネの観点から環境へ配慮した取り組みの中で、硬質ウレタンフォーム126と比較して数倍から10倍程度の断熱性能を有する真空断熱材を、適切な範囲内で最大限に利用することにより、断熱性能や強度を向上させている冷蔵庫も発売されている。
その中で、本実施の形態では、側面壁101aに備えられた真空断熱材129,130には、気体吸着材137がそれぞれ内部に備えられている。このように、断熱壁の中で最も歪みの大きくなり得る側面壁に、気体吸着材を有する真空断熱材を備えたことで、側面壁の剛性を向上させるとともに真空断熱材の経年劣化を抑制し、長期間に渡って断熱箱体の剛性を維持することが可能となる。
また、前述したように、左側の側面壁101aに備えられた真空断熱材129及び右側の側面壁101aに備えられた真空断熱材130には、上下方向に延びる直線状の変形部が夫々形成されている。このように上下方向に延びる変形部によって、主に上下方向の荷重を受けた場合の剛性を向上させることができ、側面壁の上下方向(長手方向)における剛性をさらに高めている。このように、右側面壁101aに備えられた真空断熱材において、上下方向に延びる直線状の変形部130aが、側面壁101aの上下方向における補強部として機能している。左側面壁101aに備えられた真空断熱材129についても同様である。
図6は、図3の真空断熱材130として適用することのできる他の構成を示す図面である。図6に示すように、この真空断熱材130は、芯材132が長方形状に配置されており、但し、その四隅の角部のうち1箇所は切り欠かれたようになっている。このような芯材132の周囲には、当該芯材132が内包されていない外被材135のみで形成された無芯部が形成されている。そして、特に芯材132の四隅のうち上記切欠部分に対応する無芯部を折り返すことで、複層部130bが形成されている。また、図中の点線で示した変形部130aは放熱パイプ143が埋設される凹部であり、気体吸着材137は、2つの変形部130aの間(即ち、並設される放熱パイプ143の間)であって、複層部130bから離れた位置に配設される。図6に示す例では、気体吸着材137は真空断熱材130の中央近辺の芯材132内部に配置されている。
このように、真空断熱材の中でも熱伝導性の高い外被材のみで形成された複層部130bは、温度変化が大きくなる傾向がある。しかしながら、気体吸着材をこの複層部から離れた箇所に配設することで、気体吸着剤の温度変化を抑制することができる。例えば、気体吸着剤が過剰に高温になるのを抑制することで、吸着剤が過剰に活性化されるのを抑制し、経年劣化を抑制することができる。
さらに、気体吸着材が内包されている真空断熱材は左右両側の側面壁において板形状を成し、これらの真空断熱材のそれぞれの主面が互いに同じ面積である。これにより、冷蔵庫の左右壁である側面壁における剛性を同一にすることができ、断熱箱体における剛性の偏りをなくし、バランスよく安定した強度の断熱箱体を形成することが可能となる。
また、本実施の形態に係る冷蔵庫は、前述した上部ヒンジ保持部102b及び下部ヒンジ部102cを介して本体101に接続された冷蔵室102用の回転式の扉102aを備える。このような扉102aの接続形態の場合、扉102aを開放している状態においては、一般的に、側壁に大きな負荷がかかって変形して傾きやすくなる。しかしながら、本実施の形態では、側壁に剛性が高い気体吸着材を備えた真空断熱材を備えることとしているため、扉102aが開放している状態においても、側壁の傾き等の変形を抑制することが可能となり、断熱箱体全体の変形を防止することができる。
また、本実施の形態に係る真空断熱材138は、気体吸着材137を、真空断熱材の厚み方向において冷蔵庫の庫内側(内箱側)に配設したものである。これにより、気体吸着材137は空気に触れる可能性が低くなるため、冷蔵庫を長期に渡り使用した場合でも、真空断熱材に外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行える。従って、長期にわたって真空断熱材の真空度維持を図ることができ、真空断熱材の熱伝導率の劣化を防止することができる。
本実施の形態に用いた気体吸着材137は、空気中の概ね75%程度の割合で存在する窒素を、常温でも吸着することが出来るため、真空断熱材内部の残留空気を低減できる。そのため、従来の真空断熱材の真空度よりも、残留空気中に多く含まれる窒素を常温吸着することで真空断熱材の真空度を高めている。通常、大気圧は100KPa、真空断熱材の真空度は10Pa程度であるが、本実施の形態に用いた気体吸着材137を用いた真空断熱材は1Pa程度の真空度である。このように、真空断熱材の真空度の向上を図ることができ、これに伴って真空断熱材の剛性の向上や、熱伝導率の低減を実現できる。
また、気体吸着材137は、真空封止後も外被材を通じて侵入した空気を継続して吸着することができるため、真空断熱材の時間経過に伴う空気侵入によって起こる熱伝導率の経年劣化の抑制も可能となり、長期に亘り高断熱性を維持することができる。
図7は真空断熱材の熱伝導率の経年劣化のイメージを示す図面である。図7のように、従来の真空断熱材(C)は時間経過に伴って空気の侵入があるため、使用開始時から年数の経過に伴って熱伝導率が上昇していく。一方、気体吸着材137を用いた真空断熱材(D)は、従来の真空断熱材(C)に比べ、使用開始時から長期に亘って侵入空気を気体吸着材137が吸着するため、経年劣化が抑えられ、概ね10年間にわたって高性能を維持することが可能となる。これによって、真空断熱材として初期状態での性能を長期にわたり維持することができるため、非常にパフォーマンスの優れた省エネ性能(低ランニングコスト性能)を有する冷蔵庫を提供できる。
本実施の形態では、図7の結果を考慮し、冷蔵庫のユーザー使用期間が概ね10年間と想定して、使用する気体吸着材137の内容量を選定している。即ち、気体吸着材1つ当たり内容量を0.5g程度とし、少なくとも10年間は真空断熱材の初期性能を維持できるようにしている。なお、気体吸着材137の内容量を多くすれば、使用期間を更に延ばすことができる。
本実施の形態では、各所に設けた気体吸着材137を用いた真空断熱材のうち、最大寸法を有するものは側面壁101aに設けた真空断熱材(側面)129,130であり、その寸法は、縦×横×厚み=510×1505×10.5mmである。この体積は、8.06×10−3(m3)である。本実施の形態では、気体吸着材137の量を1m3あたり、60gとしている。
上記の量であれば、面積が大きく空気に触れる面積の大きい真空断熱材においても、冷蔵庫の平均使用期間である10年間は、真空断熱材に搭載した気体吸着材が外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行えるので、真空断熱材の真空度維持を図ることができる。よって、真空断熱材の熱伝導率の劣化を防止することができる。また、真空断熱材の真空度維持によって、真空断熱材の空気侵入による変形も防止できるため、本体外箱の外観変形も防止できる。
なお、気体吸着材の量を1m3あたり60g以上とすれば、図7に示す例よりも更に長い期間、空気の吸着を行えるため、真空度を維持できる期間を延ばすことができる。同様に、気体吸着材が同量であっても面積の小さい真空断熱材であれば、更に長い経過年数においても空気吸着を行うことができ、真空度を維持できる期間を延ばすことができる。
この気体吸着材137の量は、真空断熱材の製造コストにも影響を及ぼす。従って、使用する真空断熱材の形状、寸法、あるいは体積によって異なる残留空気量に応じて、気体吸着材137の量を適切に選定することにより、コストパフォーマンスの良い真空断熱材を提供できる。
図8は、本実施の形態に係る冷蔵庫に使用可能な真空断熱材の一例であって、特に、気体吸着材の配置を示す図である。図8のように、本実施の形態では、真空断熱材に搭載される気体吸着材137の配置を、真空引きをする開口部とは反対側の外被材135の末端位置としている。これは真空断熱材の製造工程において、真空断熱材の外被材135内部に空気の粗密が発生するためである。また、図8に示す真空断熱材では、真空断熱材の内部の水分吸着を行うための反応型水分吸着材146も配設されている。
真空断熱材の製造後(真空封止後)、芯材からの水分放出により真空断熱材の内圧が上昇する可能性があるが、上記の反応型水分吸着材146がこの水分を吸着除去する。そのため、乾燥(水分除去)に要する時間を大幅に短縮でき、放出された水分による内圧増加に伴う断熱性能の劣化を抑制できる。よって、真空断熱材の生産性を低下させることはない。
真空断熱材は、例えば厚さ5mmのシート状グラスウール集合体を140℃で1時間乾燥した後、外被材135中に挿入し、内部を真空引きして開口部を封止することにより形成されている。真空断熱材の製造過程で、外被材135は、四辺のうち三辺が封止されて袋状とされる。そして、この袋状の外被材135の内部に芯材を入れた後、残る一辺の開口部分から、周囲を低圧にした環境下で真空断熱材内部を排気及び減圧すると共に、この開口部分を封止する。このとき、真空断熱材の内部は全体的に低圧となっているが、低圧化するのに伴って空気の粘性状態が変化し、真空断熱材の外被材入口部分(図8の開口部側の部分)と封止されている末端部分(図8の末端側の部分)とでは、空気の粗密状態が異なる。即ち、外被材入口部分では空気が疎となり、末端部分では密の状態となる。
図8に示すように、気体吸着材137を外被材135の末端位置に配置することで、残留空気も効果的に吸着できるため、より真空度の高い真空断熱材を製造することができる。
なお、気体吸着材137の効果により、真空断熱材は、剛性が向上し、熱伝導率が低減する。これは、気体吸着材137によって、真空度が高くなるためである。真空断熱材の真空度は、真空断熱材の外被材内部へ外部から侵入する気体の量、及び、気体吸着材137の吸着性能によって決定される。また、真空断熱材の真空度と、剛性および熱伝導率とは相関があり、真空度が高い真空断熱材は、剛性が高く、且つ、熱伝導率は低い。真空度の低い真空断熱材はこの逆である。
本実施の形態では、冷蔵庫の本体101に貼り付けて設けた真空断熱材の中で、側面壁や背面壁のように貼り付け面積の大きい断熱壁に設けた真空断熱材に気体吸着材137を搭載している。これは、面積の大きい真空断熱材は高い断熱効果が期待できるものの、本体101を支える主要な剛性壁を成すので、経年劣化によって剛性が低下した場合に大きな影響を受けやすいためである。
これらの断熱壁に設けた真空断熱材に気体吸着材137を備えることで、使用の際に経年侵入する空気も吸着できるため、概ね10年間の冷蔵庫の使用期間での性能劣化を抑制することが可能である。
更に、寸法面積の大きい真空断熱材は、冷蔵庫の被覆率も大きくなる。これにより、冷蔵庫の断熱壁全体の真空度が高くなり、剛性が向上するだけでなく熱伝導率も低減される。従って、真空断熱材が同一厚みであれば、気体吸着材を使用しないものに比べて本実施の形態のように気体吸着材を使用したものでは、壁厚の薄壁化をしつつ庫内容量UPと省エネ性能の向上とを図ることができる。本実施の形態では、側面壁には、概ね8〜11.5mmの厚みで気体吸着材137を備えた真空断熱材129,130を用い、背面壁には、概ね15mmの厚みで気体吸着材137を用いた真空断熱材128を用いている。これに対し、天面と底面の真空断熱材127,131は、概ね8〜15mmの厚みで気体吸着材137を備えていない真空断熱材を用いている。このように、強度と省エネ性とに関して寄与度が高い部分には、気体吸着材を備えた真空断熱材を使用している。
なお、冷蔵庫内の温度は生鮮食品や飲料を貯蔵する概ね1℃〜5℃のプラス温度の冷蔵温度帯から、冷凍食品を貯蔵する概ね−18℃以下のマイナス温度の冷凍温度帯に区分けされている。本実施の形態のように、冷蔵庫の側面もしくは背面に上記真空断熱材を備えることで、先述の温度帯に設定されている各貯蔵室102〜106を広範囲にわたり被覆できる。従って、真空断熱材の高断熱性により、外部からの熱侵入を広範囲にわたり抑制でき、省エネ性に優れた箱体を実現できる。
また、最も剛性の高い(即ち、真空度の高い)真空断熱材を側面壁もしくは背面壁に備えることは、冷蔵庫本体の骨格となる部分に備えることとなる。そのため、冷蔵庫全体の強度の向上を図ることができ、壁厚の薄壁化も可能となる。よって、強度を維持しつつ庫内容量UPも図ることができる。
さらに、本実施の形態では、気体吸着材137を、真空断熱材のうち冷蔵庫の庫内側(内箱側)に配設しているため、真空断熱材の表面のうち気体吸着材137を配設した部分が他の部分よりも出っ張る場合でも、本体101の外箱へは凸形状とならず、外観変形も防止できる。
なお、本実施の形態では、壁面の外形寸法(例えば、幅寸法)と壁厚の比率で5%以下の部分を優先的に、気体吸着材137を搭載した真空断熱材を貼り付けている。具体的には、側面と背面の真空断熱材128,129,130がそれである。例えば、側面の場合は、外形の幅寸法が740mmであり、壁厚は33mmである。この場合の比率は、33/740×100%=4.8%である。
一般的に、断面が矩形を成す部材の強度(断面二次モーメント)は、(幅の三乗)×高さ/12の曲げ応力の式で表される。これを冷蔵庫の壁部についてみれば、幅は壁厚であり、高さは冷蔵庫の高さ(概ね1800mm)とすることができる。先述の算出式によると、強度は幅の三乗に比例することから、概ね35mm程度の厚みから強度が加速度的に増していくことになる。そこで、本実施の形態では、概ね比率を5%以下、すなわち壁厚が35mm以下の部分を中心に強度を高めるようにしている。
なお、外形寸法と壁厚の比率を上げていくと強度は増すが、庫内容量が減少していく。これは、外形寸法を固定した場合である。冷蔵庫はその商品展開において様々な外形寸法、および、レイアウトの設計開発がなされる。開発段階において、十分な試験データを収集し、外形寸法と壁厚の比率が庫内容量と強度において最も効果的に働く比率となるように設計することで、コストパフォーマンスが高くなる。
なお、本実施の形態の冷蔵庫において、冷凍領域の冷凍室105を囲む硬質ウレタンフォーム126と真空断熱材128,129,130とで形成される本体101の断熱壁厚は、扉を除き、開口部の壁厚の薄い部分を含めて25〜50mmである。また、冷蔵領域の冷蔵室102や野菜室106を囲む硬質ウレタンフォーム126と真空断熱材127,131とで形成される本体101の断熱壁厚は、扉を除き、開口部の壁厚の薄い部分を含めて25〜40mmである。
庫内容量UPの為には、庫内壁厚の薄壁化が有効であるが、一般的には薄壁化すると硬質ウレタンフォームの流動性が阻害されて充填が困難になる。しかしながら、気体吸着材137を備えた真空断熱材は、概ね8〜11.5mm程度の厚みであるため、薄壁化した断熱壁に真空断熱材の貼り付け後も、硬質ウレタンフォーム126の流動性を阻害することなくこれを充填可能である。さらに、熱伝導率も飛躍的に低減されるため、熱侵入抑制の為に複数の真空断熱材を重ね合わせる必要もない。これにより、硬質ウレタンフォーム126を充填する隙間の部分的な変化も無く(抑制でき)、流動性の低下に基づく内外面の変形やボイドの発生も防止することができる。
なお、本実施の形態において、冷蔵庫の左右の側面に備えた気体吸着材137を内包した真空断熱材の厚さを11.5mmとした場合、気体吸着材137を備えていない真空断熱材で同等な性能を得るためには厚みが16mm必要となる。よって、同等な性能を基準とした場合には、気体吸着材137を備えた真空断熱材を用いることで、庫内容量を15L増やすことが可能となる。更に、硬質ウレタンフォーム126の使用量を低減できるのでコストダウンが図れるとともに製品重量を低減することができる。よって、製品を搬入する時の運搬性が向上する。
また、本実施の形態では、真空度を変えて剛性の異なる複数の真空断熱材を使い分けることで、冷蔵庫の本体101の強度を向上させている。即ち、気体吸着材を内包する高価格の真空断熱材と、気体吸着材を備えない低価格の真空断熱材とを、冷蔵庫の各部に要求される断熱性や剛性とコストとを考慮しつつ、適材適所となるように採用している。特に複数の真空断熱材のうち、剛性の高い真空断熱材を、冷蔵庫の被覆率を大きく取れる側面壁や背面壁に備えることで、本体101の強度の向上を図ることができる。
これは一般的なタンスや住宅の壁面において、上下方向の面(側面や背面)の強度を高めることで、全体の強度を高めることと同様である。強度として寄与する部分には剛性の高い気体吸着材を備えた真空断熱材を用い、寄与しにくい部分には硬質ウレタンフォーム126よりも剛性の高い程度の真空断熱材であって気体吸着材を備えないものを用いる。これにより、断熱性能を向上し省エネ性を向上させつつ、本体強度を高めた冷蔵庫を提供することができる。特に壁厚の薄い部分には剛性の高い真空断熱材を用い、壁厚の厚い部分には硬質ウレタンフォーム126よりは強いが相対的に剛性の弱い真空断熱材を用いることで、箱体強度のバランスを高めて箱体全体の強度を維持することができる。真空断熱材の厚みは、概ね8〜15mm程度であるが、同一厚みであれば硬質ウレタンフォーム126よりも剛性が高く、熱伝導率も低い。
なお、冷蔵庫に要求される性能(寸法や断熱性能)を実現するための、従来の真空断熱材や、気体吸着材137を用いた真空断熱材138の組み合わせは、多数考えられるが、組み合わせに応じてコストも異なってくる。よって、冷蔵庫の性能と材料費等のコストとを考慮し、真空断熱材の寸法、厚み、及び種類(気体吸着材の要否)を決定することができる。
また、内箱125の底面に接して配設される真空断熱材131は、その厚み方向に沿って見たときの面積(主面の面積)が内箱125の面積より小さい。換言すれば、内箱125に接して配設された真空断熱材131は、真空断熱材131が接して配設される内箱からはみ出ていない。従って、この真空断熱材131は、その一方の主面(接着面)の全体が内箱125の底面に接した状態になっている。
これにより、本実施の形態の冷蔵庫は、真空断熱材131を所定箇所に配設した後で、外箱124と内箱125との間に硬質ウレタンフォーム126を流し込んだ場合に、内箱125に配設された真空断熱材131に対して、内箱125から剥がす方向に力が加わらないため、硬質ウレタンフォーム126の流入による真空断熱材131の剥がれを防止できる。さらに、真空断熱材131の貼付けの安定を容易に図ることができると共に、硬質ウレタンフォーム126の流動性を阻害しない。これによって、真空断熱材131と内箱125との間における、空気などの不活性ガスの侵入もしくは残留を抑制することができる。従って、内箱125と真空断熱材131とが密着し、内箱に凹み等の変形が生じるのを抑制できる効果もある。
また、天面の真空断熱材127は、外箱124に接して配設しているので、庫内照明用の取り付け部材あるいは電線を、内箱125の天面に取り付け可能となり、冷蔵室102の天面に照明を貼り付けることができ、使い勝手の向上が図れる。
なお、本実施の形態では、本体底部にコの字状の底部補強部材144と真空断熱材とが投影面で重なるように、真空断熱材を配設している。これによって、冷蔵庫本体101の強度が足元においても向上し、本体101全体の更なる強度向上が図れる。底部補強部材144には剛性の高い鉄やステンレス等の材料を用いることができ、また、外気の湿度によって錆びないような表面処理を施しておくとよい。また、本実施の形態では、コの字状の底部補強部材144としているが、コスト低減の観点や、本体強度の測定の結果、強度的に適切であれば、例えばLの字状の底部補強部材としてもよい。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図9は、本実施の形態2の比較例としての冷蔵庫の側面断面図である。図10は本実施の形態2における冷蔵庫の側面壁の縦断面図である。図11は、本実施の形態2における冷蔵庫の側面断面図である。
まず、本実施の形態2の冷蔵庫の比較例について説明する。近年では、省エネとして環境への取り組みの中で、硬質ウレタンフォーム126と比較して数倍から10倍程度の断熱性能を有する真空断熱材を、適切な範囲内で最大限に利用することにより、断熱性能や強度を向上させている冷蔵庫も発売されている。
図9は、特開2007−198622号公報に記載された冷蔵庫の断熱壁の断面図である。この断熱壁は、外箱102と、内箱103と、内箱103と外箱102の間に充填されるウレタン断熱材104とを備えている。更に、外箱102と内箱103との間で外箱102に密着して備えられた真空断熱材105と、真空断熱材105と外箱102の間に構成された放熱パイプ120とを備え、放熱パイプ120は真空断熱材105の表面に埋設されている。
しかしながら、上記比較例としての冷蔵庫では、真空断熱材が硬質ウレタンフォームと共に外箱及び内箱の間に存在するものの、真空断熱材の空気に触れる面積が大きい。従って、使用時の年数経過に伴って真空断熱材内部に空気が侵入し易く、更に、空気が侵入した真空断熱材は内部の真空度が低下するため、熱伝導率の劣化を招くという懸念があった。更に、長期使用時に内部の真空度が低下した真空断熱材に入った空気によって、外観的には凹み等の変形を招くという問題があった。
より詳しく説明する。冷蔵庫は、放熱用パイプが冷蔵庫の外箱に配設され、放熱用パイプを覆うように真空断熱材が貼り付けられる。このとき、真空断熱材は硬質ウレタンフォームに被われるが、放熱用パイプは硬質ウレタンフォーム外部へと延設されていることと、放熱用パイプ自身をアルミテープにより外箱に貼り付ける際に空気層が形成されることとによって、外部空気と真空断熱材が直接的、もしくは硬質ウレタンフォームやアルミテープを介して間接的に接触する。
そこで、本実施の形態の冷蔵庫は、真空断熱材に内包された気体吸着材を、当該冷蔵庫が備える発熱部から離して配設している。本実施の形態では、発熱部とは圧縮機117や放熱パイプ143を指す(図10参照)。
以下、図10および図11を参照して本実施の形態2に係る冷蔵庫について説明する。なお、当該冷蔵庫の正面断面図として、以下では、上記実施の形態1で説明した図2も参照する。
図2に示すように、真空断熱材127、128,129,130は、外箱124の天面、背面、左側面、右側面の内側にそれぞれ接して貼り付けられている。また、真空断熱材131は、内箱125の底面に接して貼り付けられている。
真空断熱材128,129,130には、気体吸着剤137がそれぞれ内部に備えられている。これらの気体吸着剤137は、中心よりも庫内側(内箱側)に配設されている。
放熱パイプ143は、真空断熱材128,129,130の外箱124側に設置されている。図10に示すように、放熱パイプ143は冷蔵庫の右側面壁に備えられた真空断熱材130の表面に蛇行配置されている。より詳しく言えば、放熱パイプ143は、上下方向に沿って配設された直線状のパイプの一端にU字状のパイプの一端が接続され、該U字状のパイプの他端に、同様に上下方向に沿って配設された別の直線状のパイプの一端が接続される。このように、放熱パイプ143は、直線状のパイプとU字状のパイプとが順次繋ぎ合わされることで構成されている。なお、左側面壁の断熱壁としての構成や左側面壁に設けられた放熱パイプの構成及び配置は、上記及び下記に説明する右側面壁におけるものと同様である。
その中で、本実施の形態では、図10及び図11に示すように、冷蔵庫の右側面壁に備えられた真空断熱材130は気体吸着材137を内包するとともに、真空断熱材130に備えられた気体吸着材137と、発熱部である放熱パイプ143との間には芯材132が介在している。本実施の形態では、真空断熱材130は右側面壁全体を覆うように配設されている。そして、放熱パイプ143のU字状の折曲部143dに対応する真空断熱材130の上部の延伸領域130dでは、芯材132の量を少なくするとともに芯材132内部に気体吸着剤137を配設していない。このように、真空断熱材130の延伸領域130dでは、他の領域と比べて厚みを薄くしている。
このように、本実施の形態に係る真空断熱材130は、図10に示すように、気体吸着材137と放熱パイプ143とが一定の距離を離れて配設されたものとなっている。また、気体吸着材137と放熱パイプ143との間に断熱材である芯材132を介していることで、放熱パイプ143の熱が気体吸着材に到達するのを低減している。
また、図11に示すように、気体吸着材137は、真空断熱材130の厚み方向において、発熱部である放熱パイプ143と重ならない位置に配設している。更に、真空断熱材130の厚み方向において、気体吸着材137は圧縮機117とも重ならないように配設している。
上記構成によって、真空断熱材に備えられた気体吸着材が高温となることを避けることができ、気体吸着材が短期間に高活性化するのを避け、長期間に亘って機能を発揮させることができる。更に、気体吸着材周辺の外被材の経年劣化を防ぐことで、気体吸着材が空気に触れる影響が低減でき、断熱箱体を長期に亘り使用した場合でも、真空断熱材に備えられた気体吸着材は外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行える。従って、真空断熱材の真空度維持を図り、真空断熱材の熱伝導率の劣化を抑制することができる。
また、気体吸着材137を金属製の容器からなる包材133に収納した場合には、仮に高温部付近に容器が位置した場合には、熱伝導性の良い金属製の包材133がヒートスポットとなり、容器は常に高温で維持され、容器内の気体吸着材が高活性化してしまう。その結果、短期間で吸着特性が低下する可能性があった。そこで、本実施の形態のように気体吸着材と発熱部を離間させることで、長期間にわたって機能を発揮することが可能となる。
また、真空断熱材の外被材として蒸着層フィルムを用いた場合には、温度の上昇により劣化が加速されるので、長期間の使用時において、外被材が劣化することで空気の侵入量が増加するという懸念があった。そこで、本実施の形態のように気体吸着材と発熱部を離間させて、気体吸着材周辺が高温となることを避けることで、気体吸着材の包材の熱に起因して外被材が昇温して劣化するのを抑制することができる。
また、図11に示す断熱壁は、気体吸着材137を備えた真空断熱材130を備え、気体吸着材137を真空断熱材のうち断熱箱体の庫内側(内箱125側)に配設し、且つ、発熱部である放熱パイプを庫外側(外箱124側)に配置したものである。
これにより、確実に気体吸着材と発熱部を離間させることができ、気体吸着材周辺が高温となることを避けて、真空断熱材の長期的な信頼性を向上することができる。
また、この気体吸着材137は、本体101の内側に配設されて空気に触れる影響が低減される。そのため、該気体吸着材137は、断熱箱体を長期に亘り使用した場合でも、真空断熱材に外部から侵入してくる空気の吸着を継続して行うことができる。従って、真空断熱材の真空度維持を図ることができ、真空断熱材の熱伝導率の劣化を防止することができる。
放熱パイプ143は、図11のように、断熱箱体の本体101の外箱124の内側に配置され、アルミテープ145により固定される。アルミテープ145は、硬質ウレタンフォーム126の充填される外箱124と内箱125とで区画された内部から外部へと配設される。つまり、アルミテープ145内の空間は外部と連通している。これは、冷蔵庫の製造過程で、硬質ウレタンフォーム126を発泡する際に発生する熱によりアルミテープ145内に存在する空気が膨張し、その圧力によって外箱124が変形するのを防止するためである。
そのため、真空断熱材は硬質ウレタンフォーム126の内部にあるが、放熱用パイプ143が硬質ウレタンフォーム126の内外にわたって配設されていることと、放熱用パイプ143を外箱124に貼り付けるアルミテープ145により空気層が形成されることとから、外部空気と真空断熱材が、直接的もしくは硬質ウレタンフォーム126やアルミテープ145を介して間接的にも接触する。
その結果、冷蔵庫を長期に亘り使用した際に、少なからず空気に触れている真空断熱材は、時間経過とともに外部から侵入してくる空気の影響を受ける。従って、気体吸着材137を備えない真空断熱材の場合、早期に内部真空度が低下して膨張するとともに、冷蔵庫外箱124への外観変形を及ぼす可能性がある。
上記のように、真空断熱材中の気体吸着材137は、圧縮機117や放熱パイプ143といった発熱部からは離れた箇所に設置している。これによって、気体吸着材137の金属製の容器が発熱部からの熱を吸収するのを抑制し、真空断熱材に局所的に断熱できない箇所(ヒートスポット)が生じて、放熱能力(放熱パイプから冷蔵庫外部への放熱能力)が低下してしまうことを防止している。
特に、冷蔵庫に少なくとも2本の放熱パイプが真空断熱材の表面に埋設されている場合、気体吸着材は2本の放熱パイプの間に埋設されることが望ましい。本実施の形態では、図10に示すように、放熱パイプ143は、直線状のパイプとU字状のパイプとが順次繋ぎ合わされることで構成されている。このような場合には、気体吸着材137を、放熱パイプ143を構成する2本の直線状の放熱パイプの間にて、各パイプからの距離が等しくなるようにして埋設するのが好ましい。これにより、放熱能力を増加し、省エネ性を向上させることができる。
本実施の形態に用いた気体吸着材137は、実施の形態1で説明したものと同様に製造でき、同様の構成を備えるものを採用することができる。従って、この気体吸着材137は、空気中の概ね75%程度の割合で存在する窒素を、常温でも吸着することが出来る。これにより、真空断熱材内部の残留空気を低減でき、真空断熱材の真空度の向上や剛性の向上が図れ、熱伝導率の低減を行える。
なお、断熱箱体の温度は、生鮮食品や飲料を貯蔵する概ね1℃〜5℃のプラス温度の冷蔵温度帯から、冷凍食品を貯蔵する概ね−18℃以下のマイナス温度の冷凍温度帯に区分けされている。この場合に、気体吸着材137が低温になりすぎることなく、使用の初期段階において十分な吸着特性を発揮させるために、真空断熱材中の気体吸着材137を冷蔵温度帯の貯蔵室の水平方向の対応位置に配置してもよい。
なお、本実施の形態では、気体吸着材137を真空断熱材内部の中心よりも庫内側(内箱側)に配設したが、庫外側(外箱側)に配置してもよい。これにより、気体吸着材137の活性度が向上するため、真空断熱材の真空度をより高めることができる。その結果、真空断熱材は強度も高くなり熱伝導率も低減するので、高い省エネ性や高い外観強度を備えた冷蔵庫を提供できる。これは、冷蔵庫の本体101の外箱側は、外気からの熱の影響や外箱の内側に貼り付けている放熱パイプ143による熱の影響で、気体吸着材137の温度が高まるからである。
図12は、気体吸着材を真空断熱材内部の中心よりも庫外側(外箱側)に配置した真空断熱材11の断面図である。この真空断熱材11は、芯材132と気体吸着デバイス15を外被材135で覆って構成されている。気体吸着デバイス15を、芯剤132の内部に埋設し、これらを外被材135に内包して減圧密封している。また、気体吸着デバイス15は、気体吸着物質13、これを収納する収納容器16、及び、収納容器16の開口部を閉塞する封止材17で構成され、減圧密封されている。ここでは真空断熱材11の気体吸着デバイス15側の外被材135に凹み部20を設けている。
これにより、収納容器16が熱伝導性の良い金属製である場合に、たとえ外箱と外被材を介して、放熱パイプ143の熱が気体吸着デバイス15に直接伝達した結果、真空断熱材11において気体吸着デバイス15が凹み部20内で出っ張ったとしても、冷蔵庫の外箱の外観が変形するのを抑制することができる。
また、本実施に形態のように熱伝導性の良い金属材料からなる包材を用いている場合には、外箱と外被材を介して、放熱パイプ143の熱が気体吸着材137に直接伝達する。このような熱伝達を緩和するために気体吸着材137と外被材135または外箱との間に断熱材を備えることが有効である。例えば、気体吸着材137を真空断熱材の厚み方向において外箱側に配置する場合であっても、断熱材(芯材)中に埋設しておき、気体吸着材137が外被材135に直接的に接触しないようにしておくのが有効である。
このように、断熱材として真空断熱材に備えられている芯材132を用い、気体吸着材137の外被材135側に芯材132を配置してもよい。図13は、断熱材として芯材132を用いた真空断熱材の断面図である。この真空断熱材11は、芯材132と気体吸着デバイス15と水分吸着剤19とを外被材135で覆って構成されている。即ち、三方閉めの移動抑制部である内袋18に内包された気体吸着デバイス15と、水分吸収剤19とを、芯剤132の内部に埋設し、これらを外被材135に内包して減圧密封している。また、気体吸着デバイス15は、気体吸着物質13、これを収納する収納容器16、及び、収納容器16の開口部を閉塞する封止材17で構成され、減圧密封されている。このように、芯材132の中に気体吸着材を埋設して、外被材135に対して断熱材(芯材)を介して配置することで、気体吸着材への熱伝導、及び気体吸着剤から外被材への熱伝導を抑制することが可能となる。
また、本実施の形態では、真空断熱材11は、上述したように内部に芯材132を有している。この芯材132は、グラスウールなどの無機繊維集合体から成り、加熱乾燥後、蒸着層フィルムと金属薄層フィルムを貼り合わせた外被材135中に挿入され、内部を真空引きして開口部が封止される。
蒸着層フィルムは、アルミ蒸着フィルムをナイロンフィルムと高密度ポリエチレンフィルムとで挟み込んだ複合プラスチックフィルムである。アルミ蒸着フィルムは、熱伝導性が低く、曲げに強いという長所があるが、その反面、ガスバリア性が比較的低い。
一方、金属箔層フィルムは、アルミ箔をナイロンフィルムと高密度ポリエチレンフィルムとで挟み込んだ複合プラスチックフィルムである。アルミ箔はガスバリア性が高いという長所があるが、その反面、熱伝導性が高い。
そこで、本実施の形態では、外箱124側にアルミ箔を含んだ外被材135が位置し、内箱125側にアルミ蒸着フィルムを含んだ外被材135が位置するように真空断熱材11を配置する。そして、図12に示すように、アルミ箔を含んだ外被材135の近傍に気体吸着デバイス15を配設する。これにより、アルミ箔が有する高いガスバリア性により、外部から真空断熱材11内への空気の侵入を抑制する。ここで、上記のように配置した場合、熱伝導性の高いアルミ箔を有する外被材135に対して放熱パイプが近接するが、真空断熱材の厚み方向から見て、気体吸着デバイス15を放熱パイプと重ならないように配置することで、放熱パイプから気体吸着デバイス15へ熱伝導しにくくすることができる。さらに、芯材132を介し、アルミ箔と気体吸着物質13が入った金属製の収納容器16とが直接接しないようにすることで、気体吸着物質の高温化を防ぐことができる。
その他の形態として、アルミ蒸着フィルムを含んだ外被材135が外箱側になるように真空断熱材を配置し、アルミ蒸着フィルムを含んだ外被材135の近傍に吸着材を入れるようにしてもよい。上記のとおりアルミ蒸着フィルムは熱伝導しにくいという長所を有するので、熱伝導による吸着材の高温化を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、冷凍温度帯に掛かるように真空断熱材を貼り付けている。これにより、外気あるいは庫内他室との温度差の大きい部分を効果的に断熱でき、真空断熱材の性能を生かすことができる。
(実施の形態3)
以下、本発明の実施の形態3について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図14は、本実施の形態3の比較例としての冷蔵庫の扉の側面断面図である。図15は、本実施の形態3における冷蔵庫の縦断面図である。図16は、本実施の形態3における冷蔵庫の扉の縦断面図である。
まず、本実施の形態3の冷蔵庫の比較例について説明する。
図14は、特開2005−127602号公報に記載された冷蔵庫の扉の断面図である。扉本体5は、扉外板6と扉内板7と扉上蓋8と扉下蓋9と真空断熱材3から形成される空間に発泡断熱材であるウレタンフォーム10を充填して構成されている。
真空断熱材3は、扉内板7に接して配置し、扉内板7の庫内側には水平方向に複数の突起51を設け、突起51の幅(上下方向の幅寸法)を10mm以下、高さ(水平方向への突出寸法)を3mm以下とし、扉内板7の表面に沿った横方向の全幅にわたって形成している。上記構成により、扉内板7に複数設けた突起51により扉内板7の構造強度を高く保つことができ、変形や外力による凹みなどを防ぐことができる、とされている。しかしながら、扉の内側には飲料水等の重量物が収納されることもあり、さらなる剛性の向上が望ましい。
そこで、本実施の形態の冷蔵庫は、扉内板と扉外板とを有する扉において、扉内板と扉外板の間に発泡断熱材を充填すると共に、外被材に少なくとも芯材を内包し減圧密封した真空断熱材を配設し、更に、前記真空断熱材には気体吸着材を内包したものである。
図15に示すように、冷蔵庫の本体において、上段冷凍室103と製氷室104と下段冷凍室105と野菜室106の前面開口部分は、それぞれに対応した引き出し式の扉103a、104a、105a、106aにより開閉自由に閉塞される。また、冷蔵室102の前面開口部分は、片側開きで冷蔵室102の全開口部を覆う回転式の扉102aにより開閉自由に閉塞する。
回転式の扉102aは、冷蔵庫の複数の扉の中で最も面積が大きく、また真空断熱材150が備えられており、この真空断熱材150は気体吸着剤137が内部に搭載されている。
また、図16に示すように、冷蔵室の扉102aは、扉内板102bと扉外板102cとを有する。扉内板102bと扉外板102cとの間の空間には、硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材102dと共に真空断熱材150が備えられている。また、この真空断熱材150は、前記空間において扉内板102b側に近接又は接触して設けられている。
また、既に実施の形態1でも説明したように、冷蔵庫の被覆率を大きくとれる側面壁や背面壁に真空断熱材(特に、気体吸着材を内包する真空断熱材)を備えることで、本体の強度の向上を図ることができる。
特に、本実施の形態のように、冷蔵室102に備えられた面積の最も大きい扉が回転扉102aである場合には、扉が開いた状態で冷蔵庫本体(特に、側面壁)に大きな負荷がかかるため、上下方向の壁面の強度を高めることが重要である。
よって、本実施の形態のような冷蔵庫においては、全体の強度を高めるためには上下方向の強度を高めることが有効である。このように、強度として寄与する部分には剛性の高い気体吸着剤を内包した真空断熱材を用い、寄与しにくい部分には気体吸着剤を備えない通常の真空断熱材を用いる。これにより、断熱性能を向上し省エネ性能を向上させつつ、本体全体の強度を高めた冷蔵庫を提供することができる。
従って、冷蔵庫の本体全体の強度を高める際に、側面と背面の全てに亘って貼付ができない場合には、少なくとも冷蔵庫全体の全高の1/2より下方側の背面および両側面のすべての面に、気体吸着剤を備えた真空断熱材を貼り付けることによって、筐体(断熱箱体)を支える下方部の剛性を大幅に向上させることができる。
例えば、本実施の形態のように最上部に回転式の扉102aがある場合、扉102aを開けた状態では、冷蔵庫本体において扉102aのヒンジが付いている側に大きな荷重がかかり、冷蔵庫本体が傾くことにより左右方向に歪が生じる。これに対し、特に冷蔵庫本体の下方部の剛性を高めることにより、この傾きおよび歪を低減することが可能となる。
また、本実施の形態では最も面積の大きい扉が回転扉102aであるので、この回転扉102aに、気体吸着剤を内包した真空断熱材を備えている。
これによって、気体吸着剤を内包した真空断熱材は、真空断熱材の経年劣化を抑制できることから、扉の剛性向上を長期間にわたって図ることができ、扉の強度を長期にわたって高く維持することができる。また、気体吸着剤を内包した真空断熱材を用いることで、強度を維持したままで扉の壁厚の薄壁化を図ることができ、庫内容量を大きくすることが可能となる。
一般的に、面積の大きいドアは長期間使用することで、ドア内外に反りといった変形が生じる可能性がある。しかしながら、気体吸着材を内包した真空断熱材は、真空断熱材の経年劣化も抑制できることから、扉の剛性を長期間に亘って高く維持することができる。従って、扉の強度を向上させることができ、扉の変形による冷気もれ等による冷却効率の低下を防止し、省エネルギー性の高い冷蔵庫を提供することができる。
また、本実施の形態では、気体吸着剤137を真空断熱材に備えることで、真空度を高めている。即ち、残留空気中に多く含まれる窒素を常温吸着することで、従来の真空断熱材(気体吸着材を備えない真空断熱材)よりも真空度を高めている。通常、大気圧は100KPa、真空断熱材の真空度は10Pa程度であるが、本実施の形態に用いた気体吸着材137を用いた真空断熱材は1Pa程度の真空度である。ここで、本実施の形態3で用いる気体吸着材137は、実施の形態1で説明したものと同様に製造でき、同様の構成を備えるものを採用することができる。
なお、真空断熱材の真空度が高くなると、剛性は高くなり熱伝導率は低減するため、真空断熱材が同一厚みであれば、扉の壁厚の薄壁化をしつつ収納容量のUPと省エネ向上を図ることができる。
さらに、気体吸着剤137を用いた真空断熱材150を用いることで、断熱性能も飛躍的に向上できるため、熱侵入抑制のために真空断熱材を重ね合わせる必要がない。これによって、硬質ウレタンフォームからなる発泡断熱材の壁厚の変化を抑制でき、発泡断熱材の充填時に流動性が阻害されて内外面の変形やボイドが発生することも防止することができる。
また、本実施の形態のように扉内板側に真空断熱材を備える場合は、外被材135の面積又は封止部分である四辺の寸法が長いと、樹脂製の扉内板を介して空気が侵入し易く、真空断熱材の真空度が低下し、性能劣化を導きやすい。これに対し、本実施の形態に係る冷蔵庫のように、扉に設けた真空断熱材に気体吸着材137を備えることで、使用の際に時間経過に伴って侵入する空気も吸着できるため、概ね10年間の冷蔵庫使用中での性能劣化を抑制することが可能である。
これによって、真空断熱材としての初期状態での性能を概ね10年間維持することができるため、省エネランニングコストとして非常にパフォーマンスの優れた省エネ性能を提供できる。
(実施の形態4)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。図17は、本実施の形態4における冷蔵庫の斜視図である。図18は、本実施の形態4における冷蔵庫の分解図である。
図17および図18に示すように、冷蔵庫本体301は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱324と、硬質樹脂製(例えばABS製)の内箱325と、外箱324と内箱325の間に発泡充填された硬質ウレタンフォームと、を備える断熱箱体である。この本体301は、右部に設けられた冷蔵室302と、左部に設けられた冷凍室314を有している。このようなレイアウトの冷蔵庫は、欧米などで以前より普及している。
右側の冷蔵室302は、その右側端部(回転基端)がヒンジにより本体301に連結された回転式の扉302aを有し、扉302aの扉外板は切欠部302bを有している。より詳しくは、切欠部302bは、金属製の外側表面を形成する扉外板の端部(回転基端とは反対側の端部)の一部に設けられている。この切欠部302bには、冷蔵庫の設定温度等を変更する表示板が設けられ、樹脂によってその表面部が形成されている。
また、扉302aの中央付近には、比較的大きな切欠部302cが形成されており、アイスディスペンサや、ウォーターディスペンサ等の付加機器が備えられている。
隣接する左側の冷凍室314もまた、その左側端部がヒンジ連結された回転式の扉314aを有している。この扉314aの中央付近には、比較的大きな切欠部314bが形成されており、上記と同様な付加機器が備えられている。
これらの回転式の扉302a,314aは、扉外板と扉内板の間に発泡断熱材と真空断熱材とを備えたものである。この真空断熱材は、実施の形態1で説明した窒素の吸着特性の高い気体吸着剤を内包した真空断熱材である。
なお、本実施の形態においては回転式の扉302a,314aは、ほぼ同様の大きさであり、両方の扉が最も大きな扉となり、両方の扉に気体吸着材を内包した真空断熱材が備えられている。但し、例えばコスト等によって制限がある場合には、−20℃から−40℃程度の冷凍温度帯に設定されることで扉の内外温度差が大きく扉の反り等が生じやすく、変形が生じた場合の冷気漏れが大きくなる冷凍室の扉314aに対し、気体吸着材を内包した真空断熱材を優先的に取り付けることも有効である。
扉302a、314aをその厚み方向から見て、扉外板の切欠部302b、302c、314bの少なくとも一部に重なるようにして、気体吸着剤を内包した真空断熱材が配設される。
一般的に、切欠部を備えた扉外板を有することで、扉強度の低下する懸念があるが、本実施形態のように、扉の厚み方向において切欠部に重なるように気体吸着材を内包した真空断熱材を備えることで、扉の強度を向上させることができ、信頼性の高い冷蔵庫を提供することが可能となる。
また、上記のような大きな回転扉を備えた冷蔵庫においては、扉を支える本体301の剛性向上が必要となる。ここで、図18に示すように、真空断熱材327,328,329,330,331,342は、硬質ウレタンフォーム326とともに冷蔵庫本体301を構成している。即ち、本体301の各断熱壁には、真空断熱材327,328,329,330,331,342が介装されていると共に、硬質ウレタンフォーム326が隙間に充填されている。
具体的に説明すると、上記真空断熱材のうち、真空断熱材327,328,329,330は、外箱324の天面、背面、左側面、右側面の内側に接してそれぞれ貼り付けられている。また、真空断熱材331は、内箱325の底面に接して貼り付けられている。また、真空断熱材342は、冷蔵室302と冷凍室314を仕切る断熱仕切り部の内部にある。そして、背面、左側面、及び右側面に設けられた真空断熱材328,329,330、342には、気体吸着剤337がそれぞれ内部に備えられている。
また、冷蔵室302と冷凍室314を断熱区画する断熱仕切り部の内部は、硬質ウレタンフォーム326が充填されており、冷蔵温度帯の冷蔵室302と冷凍温度帯の冷凍室314の温度差20K〜30Kを断熱している。また、この断熱仕切り部は、本体101内で天面から底面に至る上下方向の面を形成し、中仕切りとなっているため、箱体強度の高い冷蔵庫となる。断熱仕切り部は、硬質ウレタンフォーム326の充填前に冷蔵庫に組み付けられるが、製造上の作り易さから硬質ウレタンフォーム326の充填後に組み付けてもよい。この場合は、断熱仕切り部315の内部の断熱材は、形状の作り易い発泡ポリスチレンを用いてもよいし、硬質ウレタンフォーム326を別部品として作成し板状のボードとして構成してもよい。
上記構成の冷蔵庫において、真空断熱材342は、気体吸着剤337を用いた真空断熱材であり、真空断熱材328,329,330と同様に剛性が高いため、本体301の強度向上を図ることができる。
また、真空断熱材342を、断熱仕切り部の中で冷凍室314側に貼り付けることで、断熱効果の向上を図ることができる。またこの場合、冷蔵室302の側壁(断熱仕切り部における冷蔵室302側の部分)には庫内照明用取り付け部材、あるいは電線を取り付け可能となる。従って、冷蔵室302の側面に照明を取り付けることができるため、使い勝手の向上が図れる。
また、真空断熱材342は、気体吸着剤337を用いた真空断熱材であるため熱伝導率を低減できる。よって、剛性の向上に加え、冷蔵室302と冷凍室314との熱移動を低減できるため、断熱仕切り部の薄壁化が可能となる。これによって、本体強度と省エネ性を向上しながら庫内容量UPを行うことができる。更に断熱仕切り部315を薄く構成できるのでデザイン性にも優れた冷蔵庫を提供することができる。
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図19は、本実施の形態5の比較例としての冷蔵庫の側面断面図である。図20は、本実施の形態5における冷蔵庫の縦断面図である。図21は、本実施の形態5における冷蔵庫の機械室構成図である。
まず、本実施の形態5の冷蔵庫の比較例について説明する。
図19は、特開平6−159922号公報に記載された冷蔵庫の側面断面図である。図19に示すように、冷蔵庫の本体1は、外箱24と内箱25とで構成される空間全体を、成形可能な袋状の紙材20で覆い、この紙材20内部に無機多孔質からなる充填剤21を充填し、内外箱24,25で囲まれた空間の形状に沿って真空断熱材22が配設されている。また、使用される真空断熱材は両面ともに金属箔を有し、形状は平面のみとなっている。
本構成により、内外箱24,25への真空断熱材の収納作業が容易に行えると共に、内外箱24,25と真空断熱材22との隙間を塞ぐ作業が不要となる。更に、硬質ウレタンフォームを使用せず真空断熱材22のみで断熱箱体を構成できるため、断熱性能が向上する、とされている。
しかしながら、上記比較例としての冷蔵庫は、外箱と内箱とに密着してなる硬質ウレタンフォームと比較して強度的に劣る真空断熱材のみを使用するため、断熱性能は高いものの強度的には非常に弱くなるといった問題があった。また、真空断熱材の断熱性能の更なる向上のためには、一平面にアルミ蒸着フィルムを用いた真空断熱材の使用が効果的であるが、空気侵入が発生しやすいという面からアルミ蒸着フィルムを用いた真空断熱材の使用は困難であった。
そこで、本実施の形態の冷蔵庫は、真空度の異なる複数の真空断熱材を使用することにより、上記課題の解決を図るものである。以下、本実施の形態の冷蔵庫の構成について具体的に説明する。
図20及び図21に示すように、冷蔵庫の本体101の天面部は、冷蔵庫の背面方向に向かって階段状に凹みを設けて機械室119がある。より詳しく説明すると、本体101は、その天面及び背面を成す第一の天面部108と第一の背面部147とを有している。機械室119を成す凹み部は、この第一の天面部108の背面部分であって、且つ第一の背面部147の上端部分に形成されている。この凹み部は、第一の天面部108より背面側でかつ第一の天面部108より低い位置に設けられた第二の天面部109と、第一の天面部108と第二の天面部109との間を接続する第二の背面部148とで構成されている。なお、第二の天面部109の背面側端部は第一の背面部147の上端部に接続されている。凹み部の機械室119には、圧縮機117と、凝縮器152と、放熱用の放熱パイプ(図示せず)と、水分除去を行うドライヤ157と、機械室ファン153と、キャピラリーチューブ118入口とが配置される。
機械室119は機械室カバー151で覆われ、この機械室カバー151には、機械室ファン153の強制対流によって圧縮機117と凝縮器152を冷却するべく通風孔154が設けられてある。また機械室カバー151は、第一の天面部108と第二の天面部109の上部にビスなどで取り外し可能に設けられている。
そして、冷蔵庫は、上記の圧縮機117と、凝縮器152と、放熱用の放熱パイプ(図示せず)と、水分除去を行うドライヤ157と、キャピラリーチューブ118と、冷却器107とを順次環状に接続してなる冷凍サイクルに冷媒が封入され、冷却運転を行う。前記冷媒には近年、環境保護のために可燃性冷媒を用いることが多い。なお、三方弁や切替弁を用いる冷凍サイクルの場合は、それらの機能部品を機械室119内に配設することもできる。
また、凝縮器152には、強制対流方式のものに加えて、冷蔵庫の周囲鋼板を利用して自然放熱するための配管や、各室の断熱扉体の間の仕切りに配設して防滴防止を行うための配管を組み合わせてもよい。また、凝縮器152としては、ワイヤータイプやフィンコイルタイプやスパイラルフィンタイプなどの薄型構成で高効率な凝縮器152を、機械室119内に収めるとよい。
ここで、真空断熱材127,128,129,130,131,155,156は、硬質ウレタンフォーム126とともに冷蔵庫の本体101を構成している。具体的に説明すると、上記真空断熱材のうち、真空断熱材127,128,129,130は、外箱124の第一の天面部108、第一の背面部147、本体左側面、本体右側面の内側に接して(より詳しくは、各断熱壁内において外箱に接して)それぞれ貼り付けられている。また、真空断熱材155,156は、第二の背面部148、第二の天面部109の内側に接して(より詳しくは、各断熱壁内において外箱に接して)それぞれ貼り付けられている。また、真空断熱材131は、内箱125の底面に接して(より詳しくは、対応する断熱壁内において内箱に接して)貼り付けられている。
また、図20に示すように、上記のうち真空断熱材128,129,130,156には、気体吸着材137がそれぞれ内部に備えられており、その他の真空断熱材には気体吸着材を設けないこととしている。
このように、気体吸着材の有無で真空断熱材の剛性を異なるものとすることができる。具体的には、気体吸着材が入っている真空断熱材は、剛性が高く、気体吸着材が入っていない真空断熱材は剛性が低くなる。ここで剛性とは、単位体積当たりの剛性を意味し、例えば同素材、同製法の真空断熱材であっても大きさや厚さが異なることによって真空断熱材全体の剛性が異なるようなものは含まないものとする。
本実施の形態では、剛性の異なる複数の真空断熱材を使い分けることで、冷蔵庫の本体101の強度を向上させている。特に、複数の真空断熱材のうち、冷蔵庫の被覆率を大きく取れる側面壁や背面壁に剛性の高い真空断熱材128,129,130を備えることで、本体101の強度の向上を図ることが出来る。
このように、冷蔵庫の本体101全体の強度を高める際に、側面と背面のすべてに亘って真空断熱材の貼付が出来ない場合には、少なくとも冷蔵庫本体の全高の1/2より下方側部分について、背面および両側面のすべての面に気体吸着材を備えた真空断熱材を貼り付けるのが好ましい。これによって、筐体を支える下方部の剛性を大幅に向上させることができる。
なお、本実施の形態に係る冷蔵庫では、真空断熱材の構成や配置、気体吸着材の有無等において、既に説明した実施の形態に係る冷蔵庫と共通する部分を有している。そして、当該共通部分については、既に説明したのと同様の作用効果を奏するため、本実施の形態ではその重複する説明は省略する。
ところで、本実施の形態では、圧縮機117の前面である第二の背面部148、および圧縮機117の下面である第二の天面部109のうち、少なくとも一方に真空断熱材を配設する。そして、この真空断熱材には気体吸着材を内包させる。図20では、一例として第二の背面部148に配設した真空断熱材が気体吸着材137を備えた構成を示している。
これにより、更に強度および省エネ性に優れた構成となり、加えて、温度の高い圧縮機117を含めた機械室119周囲部での発熱に対し、高い断熱性を発揮することができる。従って、圧縮機117の排熱が庫内側へ伝熱するのを抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ性の向上を図ることが出来る。
更に、圧縮機117や機械室ファン153を支持する第二の天面部109に真空断熱材を備えているので、支持部の剛性を高めて騒音、振動の伝播を抑えることができる。
ここで、静音、制振効果は真空断熱材の配設部位によってもその効果の度合いが異なる。本実施の形態のように、圧縮機117前方である第二の背面部148の中の外箱側に真空断熱材を配設した場合は、圧縮機117などの振動による騒音成分の伝播を抑えながら前方(庫内側)へ騒音が透過するのを抑えることができる。また、第二の天面部109の中の外箱側に真空断熱材を配設した場合は、圧縮機117の載置面の制振効果が高い。一方、第二の天面部148の中の内箱側に真空断熱材を配設した場合には、一旦、硬質ウレタンフォーム126を通過中に減衰されつつある騒音を、更に内側の真空断熱材で遮音する効果を有し、前方(庫内側)への騒音の伝搬を抑えることができる。
また、本実施の形態では、気体吸着材137を備えた真空断熱材は、第二の背面部148と第二の天面部109を構成する断熱壁のうち、断熱壁の厚みが薄い第二の背面部148に配設されている。これにより、壁厚が薄いにもかかわらず、第二の背面部148は、高い断熱性能を発揮することができる。
第二の背面部148の庫内側は、冷蔵室102の上部に位置する。本実施例では、庫内の冷気を、冷気送風ファン116によって強制循環冷却するため、冷蔵室102の背面部(断熱壁の内部)には、冷気送風ファン116によって吐出された冷気が通過するダクトが配置されており、冷蔵室背面の上部には冷蔵室内へ冷気を吐出する吐出口がある。この冷気温度は概ね−10〜−20℃であり、例えば外気温25℃の場合に機械室温度が33℃程度になると想定すれば、冷気と機械室119との温度差は概ね43〜53Kにもなる。このため、断熱壁の薄く、且つ温度差の大きい第二の背面部148に、気体吸着材137を備えた断熱性能の高い真空断熱材を貼り付けることで、吐出冷気の温度上昇が抑えられ、省エネ性も向上する。
なお、気体吸着材137を備えた真空断熱材の配設する場合、従来と同等の断熱性能を確保するのであれば、真空断熱材自体の厚みを薄くできる。従って、第二の背面部148のように壁厚が薄い場所でも硬質ウレタンフォーム126の流動性を阻害しない。本実施の場合では、第二の背面部148の膜厚は27mmとし、気体吸着材137を備えた真空断熱材の厚みを概ね8mmとしている。このため、硬質ウレタンフォーム126の流動部分の壁厚(隙間)は19mm確保でき、ボイドの発生などの流動性を阻害する要因が生じない。
一方、気体吸着材入りの真空断熱材が熱伝導率を低減できるため、断熱壁として従来同等の断熱性能を確保できればよい場合は、硬質ウレタンフォーム126の厚みを薄くする方法もある。この場合は、壁厚の薄壁化によって庫内容量UPが図れるだけでなく、硬質ウレタンフォーム126の使用量も低減できるため、コストダウンが図れるとともに製品重量も低減することができる。また、本体上部の重量が低減され、本体の重心も下がるため、冷蔵庫の転倒防止も効果がある。
また、本実施の形態では、気体吸着材137を備えた真空断熱材を、第二の背面部148と第二の天面部109を構成する各断熱壁のうち、各断熱壁を厚み方向から見たときに庫内である冷蔵室への投影面積が大きい第二の背面部148に配設している。
これにより、気体吸着材137を備えた真空断熱材の被覆面積を大きくとることが出来るため、庫内への伝熱を抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ性の向上を図ることができる。更に、強度の向上が図れると共に、庫内への騒音及び振動の伝播面積の削減効果も高められる。本実施の形態のように、被覆面積が大きく使用者の頭部に近い高さの第二の背面部148に気体吸着材入りの真空断熱材を配設すると、圧縮機117や機械室ファン153が配置された冷蔵庫の後方部分から冷蔵庫の前方に立つ使用者への騒音や振動の伝播経路を遮ることができる。
一方、第二の天面部109の方が庫内である冷蔵室102への投影面積が大きい場合には、当該第二の天面部109に気体吸着材入りの真空断熱材を設けることが考えられる。この場合、圧縮機117や機械室ファン153を支持する第二の天面部109の剛性が高まるため制振効果が高い。
また、本実施の形態では、気体吸着材137を備えた真空断熱材を、第二の背面部148と第二の天面部109を構成する断熱壁のうち、圧縮機117への距離が近い第二の背面部148に配設している。
例えば機械室温度が33℃であれば、上述したように冷凍庫102へ送られる冷気(−
10〜−20℃)と機械室119との温度差は概ね43〜53Kにもなる。しかし、機械室119内の発熱体となる圧縮機117の温度は更に高く、圧縮機117の回転数や冷蔵庫の負荷変動による冷凍サイクルの状態にもよるが、概ね45から50℃となる。従って、このときは上述した冷気と圧縮機117との温度差は60〜73Kにもなり、温度勾配が大きい。このように温度差の大きい部分に気体吸着材137を備えた熱伝導率の低い真空断熱材を配置することで、断熱性能として高い効果が得られ、圧縮機117自身の熱や排熱が庫内側へ伝搬するのを抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ性の向上を図ることができる。
また、圧縮機117の排熱温度の影響を受け、気体吸着材137自身も温度が適度に高まるため、気体吸着材137の活性度が向上し、気体吸着効果が高まる。その結果、第二の背面部148の真空断熱材は真空度が更に高まる。従って、第二の背面部148は、熱伝導率が低くなって強度も向上するので、高い省エネ性や外観強度が実現する。
(実施の形態6)
図22は、本発明の実施の形態6における冷蔵庫の縦断面図である。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図22に示すように、冷蔵庫の本体201は、前方に開口する金属製(例えば鉄板)の外箱224と、硬質樹脂製(例えばABS製)の内箱225と、外箱224と内箱225の間に発泡充填された硬質ウレタンフォーム226とを備える断熱箱体である。本体201は、その内部が複数の室に区分けされており、本実施の形態では、上部に設けられた冷蔵室202と、冷蔵室202の下に設けられた上段冷凍室203と、冷蔵室202の下で上段冷凍室203に並列に設けられた製氷室204と、本体下部に設けられた野菜室206と、並列に設置された上段冷凍室203及び製氷室204と野菜室206との間に設けられた下段冷凍室205とを有している。
上段冷凍室203と製氷室204と下段冷凍室205と野菜室206の前面開口部分は、引き出し式の扉により開閉自由に閉塞される。また、冷蔵室202の前面開口部分は、例えば観音開き式の扉により開閉自由に閉塞するように構成されていてもよい。
ここで、真空断熱材227,228,229,230は、外箱224の第一の天面部208、第一の背面部247、本体左側面、本体右側面の内側に接してそれぞれ貼り付けられている。また、真空断熱材242は、第二の背面部248及び第二の天面部209の内側に接して、一体となってこれらに沿うように折り曲げて貼り付けられている。即ち、真空断熱材242は、第二の背面部248に貼り付けられた部分と、第二の天面部209に貼り付けられた部分とを有する。そして、これら2つの部分は、第二の背面部248と第二の天面部209の接続箇所にて接続され、図22に示すように側面視でL字状を成している。また、真空断熱材231は、内箱225の底面に接して貼り付けられている。
真空断熱材228,229,230,242には、気体吸着材237がそれぞれ内部に備えられている。特に、真空断熱材242については、第二の背面部248に対応する部分に気体吸着材237が設けられている。
これにより、大きい温度差を生じさせる機械室219を下方及び前方から被うように、気体吸着材237を備えた熱伝導率の低い真空断熱材242を配置することで、断熱性能としてより高い効果が得られる。従って、圧縮機217自身の熱や排熱が庫内側へ伝搬するのを抑え、庫内温度の上昇を抑制しつつ省エネ性の向上を図ることができる。
また、実施の形態5で説明したのと同様に、第二の背面部248に対応して設けられた気体吸着材237の温度は適度に高まり、高活性化する。従って、吸着効果が高まり、より真空度の高まった真空断熱材242を提供することができると共に、熱伝導率が低く、強度も向上するので、高い省エネ性や外観強度が実現する。
更に、冷蔵庫の後方部分から冷蔵庫の前方に立つ使用者への騒音や振動の伝播経路を遮る効果がある点も、実施の形態5で説明したのと同様である。
また、本実施の形態では、上述したように凹み部の第二の背面部248及び第二の天面部209に設けた真空断熱材242を一体のものとしている。従って、圧縮機217等、凹み部に設けられた発熱体の熱が庫内へ伝搬するのを、より効果的に抑制することができる。
(実施の形態7)
以下、本発明の実施の形態7について図面を用いて説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
図23は、本実施の形態7における冷蔵庫の背面図であり、冷凍サイクル回路を構成する主要な配管の配置を概略的に示している。冷蔵庫の本体301に備えられた冷凍サイクル回路は、圧縮機117と、凝縮器357と、減圧器である毛細管と、水分除去を行うドライヤ(図示せず)と、蒸発器354と、吸入配管362とを、環状に接続して構成されている。なお、図23において、他の配管との違いを明確にするため、毛細管361は破線で示し、吸入配管362は二重線で示している。また、蒸発器54は一点鎖線でその配置を示している。
吸入配管362は、蒸発器354と圧縮機117を接続する配管であり、毛細管361は、径が吸入配管362の径より小さく、凝縮器357と蒸発器354とを接続する配管である。
吸入配管362と毛細管361とはほぼ同じ長さであり、端部を残して、熱交換可能に互いにはんだ付けされた熱交換部363を備えている。そして、熱交換部363は熱交換する部分の長さを確保するために、水平方向に略U字状に蛇行して折れ曲げられた第1の折曲部364と第二の折曲部365とを備えている。第1の折曲部364、第2の折曲部365は、水平横断部366,367,368を繋ぐように配置されている。また、水平横断部368,369を繋ぐ折曲部は略W字状に構成されている。
毛細管361と吸入配管362の上方の端部は、機械室の淵に設けた切欠部(図示せず)から突出し、圧縮機117や凝縮器357と接続されている。また、下方の端部は、内箱から突き出し、蒸発器354と接続されている。
圧縮機117の底部と第1の折曲部364との間の吸入配管362の垂直方向の長さLは、第1の折曲部364の高さH1より長くなるように構成されている。また、第2の折曲部365の高さH2は、第1の折曲部364のH1より大きくなるように構成されている。
以上の吸入配管362の圧縮機117から蒸発器354へ至る経路について換言する。吸入配管362の一端は、圧縮機117から機械室内を延設され、冷蔵庫の背面壁内にて一側方寄りの位置を下方へ延設されている。この吸入配管362は途中で屈曲し、水平横断部366となって他側方へ延設され、第1の折曲部364により延設方向が一側方へ転向される。転向後は、水平横断部367となって、上記水平横断部366の下方位置にて一側方へ延設される。次に、この吸入配管362は第2の折曲部365によって延設方向が再び他方向へ転向され、水平横断部368となって他方向へ延設される。その後、水平横断部368の端部からは、上方且つ一側方への転向、上方且つ他方向への転向、そして再び上方且つ一側方への転向が、上記W字状の折曲部によって行われ、一側方へ向かう水平横断部369を経て蒸発器354へ至る。この間、W字状の折曲部と水平横断部369とは、水平横断部367,368の間に配置されている。
圧縮機117は、レシプロ式の圧縮機である。ここで圧縮機のピストンの往復方向は、背面と略平行な左右方向であり、すなわち、ピストンの往復方向は、水平横断部366,367,368,369と略平行となっている。
図24は、本発明の実施の形態7における冷蔵庫の正面部を除く面展開図であり、これを用いて真空断熱材の埋設位置を説明する。図24は、断熱箱体の各面を展開して、図面の中央部に断熱箱体の背面部、図面の上部に断熱箱体の天面、図面の下部に断熱箱体の底面、図面の左右に断熱箱体の側面部がそれぞれ示されている。
側面壁371L,371Rには、気体吸着剤337を内包した真空断熱材370が備えられている。図24では、左側の側面部371Lの上部に、天面の凹み(機械室を形成する凹み)の左側への投影領域である第1の投影部372Lを示している。また、側面部371Lに、本体301の庫内全空間の左側への投影領域である第2の投影部373Lを示している。そして上記真空断熱材370は、第1の投影部372Lの少なくとも一部を含み、且つ、第2の投影部373Lにまたがって、本体301の側面部のほぼ全体である80%以上の領域に埋設されている。図示するように、右側の側面部371Rについても同様である。
また、背面壁374には、側面壁よりも少ない面積でおよそ背面部全体の50%以上70%以下の範囲に、気体吸着剤337を内包した真空断熱材375を貼り付けている。背面壁374の真空断熱材375は、少なくとも冷凍温度帯で保持される冷凍室の背面に備えられている。なお、これらの気体吸着剤337は、実施の形態1で詳細に説明した窒素吸着特性に優れた粉末のZSM−5型ゼオライトである。
以上のように構成された冷蔵庫について、以下、作用を説明する。
本実施の形態では、背面壁を形成する内箱と外箱の間に、水平横断部366,367,368,369を有した吸入配管362を備える。これにより、背面壁の左右方向(水平方向)における剛性を向上させている。一方、本体部301の左右の側面壁には、実施の形態1で説明したような、上下方向に延びる変形部130aを有する真空断熱材が備えられている。このように、背面壁の水平方向の補強部材として吸入配管362が機能しており、側面壁101aに備えられた真空断熱材の上下方向に延びる直線状の変形部130aが側面壁101aの上下方向における補強部として機能している。また、背面壁の左右方向の剛性は、左右の側面壁を強固に接続するのに貢献し、本体部301の全体的な剛性が向上している。
また、水平横断部を繋ぐ第1の折曲部264を、圧縮機117と蒸発器354との間の断熱壁に埋設し、第2の折曲部265を蒸発器254の背面の断熱壁に埋設することにより、背面壁のそれぞれの箇所の断熱壁の強度(剛性)が向上する。
これにより、冷蔵庫の背面壁は、側面壁と同等程度の広い範囲で真空断熱材が設けられていなくても、特に左右方向の強度が向上する。このように、側面壁の剛性を高くした上で、それらを繋ぐ背面壁の中でも特に左右方向の剛性を高めることで、冷蔵庫の断熱箱体である本体301全体の剛性を向上することができる。
以上のように、本体部301の左右の側面壁には上下方向に延びる変形部130aを有する真空断熱材を備えることで、側面壁の剛性を高める。更に、左右の側面壁を繋ぐ背面壁には吸入配管362を備えることで、左右方向(水平方向)の剛性を高める。
このように、側面壁の剛性を高める構成と背面壁の剛性を高める構成を組み合わせることで、断熱箱体の背面部と、側面部との強度の差を低減でき冷蔵庫全体の剛性が向上する。
また、本実施の形態では、真空断熱材370を断熱箱体の外側の内面に密着して貼り付けているので、断熱体に硬質ウレタンフォームを発泡充填する際には、真空断熱材370の厚みと、真空断熱材370の片側のみを考慮すればよい。これにより、真空断熱材を中間部に配置する構成に比べて左右の側面部を薄壁化することができ、貯蔵室の容量を大きくすることができる。よって、断熱性と剛性を高めた冷蔵庫を提供することが可能となる。
さらに、本実施の形態では、側面壁に備えられた真空断熱材370は、断熱体の強度が低下しやすい断熱箱体の天面に設けられた凹みの左右方向における投影部372L,372Rの少なくとも一部を含んで埋設する。これにより、特に側面部の上部の剛性を向上させることができる。
さらに、吸入配管362は、第1の折曲部364と第二の折曲部365とを備えている。これにより、蒸発器354で生じる冷熱により熱収縮と熱膨張を繰り返す蒸発器354の背面の断熱壁の強度をさらに向上することができる。