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JP6069545B2 - SiCエピタキシャルウェハの評価方法 - Google Patents

SiCエピタキシャルウェハの評価方法 Download PDF

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Description

本発明は、SiCエピタキシャルウェハの評価方法に関する。
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きく、熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有することから、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。SiCエピタキシャルウェハは、SiCエピタキシャル膜を形成する基板として昇華法等で作製したSiCのバルク単結晶から加工したSiC単結晶ウェハを用い、通常、この上に化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD)によってSiC半導体デバイスの活性領域となるSiCエピタキシャル膜を成長させることにより製造する。
SiCエピタキシャル膜の品質を劣化させる原因として、三角形状の欠陥(以下、「三角欠陥」という)が知られている。この三角欠陥は、ステップフロー成長方向に沿って三角形の頂点とその対辺(底辺)が順に並ぶような方向を向いて形成される(非特許文献3)。すなわち、<11−20>方向に直交する方向に三角欠陥の対辺(底辺)が配置する。この三角欠陥の発生原因としては複数考えられており、例えば、基板(ウェハ)表面に残っている研磨傷等のダメージ(特許文献1)、ステップフロー成長中にテラスに形成される二次元核(特許文献2)、成長初期の過飽和状態のときに基板とエピタキシャル膜との界面に形成される異種のポリタイプの結晶核(非特許文献1)、後述するSiC膜の微小破片を起点とするものがある。三角欠陥はSiCエピタキシャル膜の成長と共に成長していく。すなわち、ステップフロー成長と共に、上記の起点を三角形の頂点として、ほぼ三角形の相似形を維持しながらその面積を大きくするように成長していく(図2の摸式図参照)。従って、通常、起点がSiCエピタキシャル膜の成長初期に発生した三角欠陥ほどサイズが大きく、三角欠陥のサイズから起点の膜中の深さを推測することができる。
SiCエピタキシャルウェハの量産において歩留り向上のためには、かかる三角欠陥の低減は不可欠であり、特許文献1及び2にはその低減について原因に応じた方策が提案されている。
上記三角欠陥の他、SiCエピタキシャル膜の品質を劣化させる原因として、ウェハを載置するウェハ載置部を有するサセプタの上面に対向して上方に配置するシーリング(天板)上に堆積したSiC膜が剥がれて、SiC単結晶ウェハ上若しくはSiCエピタキシャル膜上に落下したSiC膜の微小破片(以下「ダウンフォール」という。)がある。このダウンフォールも三角欠陥の起点になりえる。
ここで、SiCエピタキシャル膜の成長に際して、基板であるSiC単結晶ウェハを高温に加熱しその温度を保持する必要があるが、この加熱・保持の方法として主に、サセプタの下面側及び/又はシーリングの上面側に配置された加熱手段を用いて加熱する方法が用いられている(特許文献3、非特許文献2、3)。シーリングを加熱する場合、誘導コイルによる高周波誘導加熱によって加熱されるものが一般的であり、高周波誘導加熱に適したカーボン製のものが通常用いられる。
SiCエピタキシャル膜の成膜中、SiCの堆積はSiC単結晶ウェハ上だけでなく、シーリング上にも生じてしまう。成膜を繰り返すとシーリング上に形成されるSiCの堆積量も多くなるため、特に量産においてはダウンフォールの問題も顕在化する。
SiCエピタキシャルウェハの量産において歩留り向上のためには、ダウンフォールの低減も不可欠であり、特許文献4にはその低減のため、SiC単結晶ウェハの上にウェハをカバーするカバープレートを配置して、ダウンフォールがSiC単結晶ウェハ若しくはSiCエピタキシャル膜に落下するのを阻止する構成が開示されている。
特許第4581081号公報 特開2009−256138号公報 特表2004−507897号公報 特開2009−164162号公報 特開2011−49496号公報
Journal of Applied Physics 105 (2009) 074513 Materials Science Forum Vols. 483-485 (2005) pp141-146 Materials Science Forum Vols. 556-557 (2007) pp57-60
しかしながら、三角欠陥については、特許文献1及び2に開示されているような方法をとっても三角欠陥密度は十分に低減できていないのが現状である。その理由の一つとして原因がよくわかっていない三角欠陥の存在が挙げられる。
また、ダウンフォールについては、特許文献4に開示されている方法によって、シーリングからSiC単結晶ウェハ上若しくはその上に成長したSiCエピタキシャル膜に落下するダウンフォールを阻止することはできるが、ダウンフォールの原因となるシーリング上のSiCの堆積(もしくはSiC膜の成長)自体を抑制することはできない。そのため、シーリングのクリーニングが必要となり、この場合、装置の稼働率が低下してしまうという問題がある。また、カバープレートの下面にもSiCは堆積してしまうので、成膜を繰り返すと、カバープレートからのダウンフォールが発生してしまうという問題がある。
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハ及びその評価方法を提供することを目的とする。
本発明者らはまず、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥を発見した。すなわち、チャンバ内の部材の材料片が何らかの原因でSiC単結晶ウェハ上若しくは成長途中のSiCエピタキシャル膜上に落下してそれを起点として三角欠陥が成長する新しいタイプの三角欠陥を見出した。従来、三角欠陥の起点としては上述したとおり、基板(ウェハ)表面に残っている研磨傷やステップ上に生じてしまった異種のポリタイプの結晶核等が知られていたが、今回発見した三角欠陥はチャンバ内の部材の材料片を起点とするものである。本発明者らはこの新しいタイプの三角欠陥を発見し、この三角欠陥を低減するべく鋭意検討を行なった結果、本発明を完成させた。
図1(a)に、典型的なチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の光学顕微鏡像を示す。光学顕微鏡はオリンパス株式会社製MX51を用いた。
図1(a)で示したSiCエピタキシャルウェハは、量産型の複数枚サセプタ(自公転)型エピタキシャルウェハの製造装置であるアイクストロン社製Hot Wall SiC CVD(VP2400HW)を用い、遮蔽板を用いず、シーリングとしては黒鉛製ものを使用して、オフ角4°の4H−SiC単結晶基板にSiCエピタキシャル膜を10μm成膜したSiCエピタキシャルウェハであって、80個目の製造ロット(すなわち、チャンバ内でSiCエピタキシャル膜800μmに相当する成膜を行った後)のSiCエピタキシャルウェハである。
光学顕微鏡を用いてSiCエピタキシャルウェハを観察する場合、通常、エピタキシャル膜の表面に焦点を合わせて表面にある欠陥を観察する。図1(b)は同じ三角欠陥を通常通り、エピタキシャル膜の表面に焦点を合わせて観察した光学顕微鏡像である。
これに対して、本発明者らは通常表面に合わせる焦点をずらして、SiC単結晶基板とエピタキシャル膜の界面に焦点を合わせることによって、三角欠陥の頂点の先(対辺とは遠ざかる方向)に黒く見える異物(丸印の中央に見えている黒点(「三角欠陥の起点」)を見つけ、それを詳細に分析することにより、その異物の由来(チャンバ内の部材の材料片)を同定し、チャンバ内の部材の材料片を起点とするこれまで知られていなかった新しいタイプの三角欠陥であることを突き止めたのである。
図2は、同じSiCエピタキシャルウェハについて得られた透過型電子顕微鏡(TEM)像である。透過型電子顕微鏡は(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 HF−2200)を用いた。
図2のTEM像の右側に示す図は、その三角欠陥の起点とそこから成長した三角欠陥について摸式的に示したものである。四角で囲んだ部分はTEM像で示した範囲を示すものであり、TEM像は三角欠陥の起点近傍の観察像である。また、下に示す図は三角欠陥近傍の断面を摸式的に示したものである。
この三角欠陥の場合、三角欠陥の起点となる異物は三角形の頂点から水平方向に7μm程度離れた先に存在し、その起点から三角形の対辺までの水平距離は143μm程度であった。
図3は、さらにシーリングの下面に、黒鉛基材を炭化タンタル(TaC)膜で被覆した遮蔽板を用いた以外は上記SiCエピタキシャルウェハの製造と同じ条件で製造したSiCエピタキシャルウェハの三角欠陥の起点(異物)近傍の透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。
異物を起点とする三角欠陥の部分は3C−SiC単結晶からなり、その三角欠陥の周辺の正常にエピタキシャル成長した部分は4H−SiC単結晶からなっている。
図4(a)は、図3で示した三角欠陥の起点である異物についてエネルギー分散型X線分析法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)で組成分析を行った結果を示すものである。
図4(a)における1.711keV及び8.150keVのピークはタンタル(Ta)を示すものであり、タンタル(Ta)を含む材料からなる部材は遮蔽板以外チャンバ内に存在しないことから、遮蔽板の被覆材料である炭化タンタル(TaC)のタンタル(Ta)であると断定できる。
なお、図4(b)は、EDXのサンプルホルダーのEDX分析結果を示すものである。図4(a)に現れているZn、Cu等のピークはEDXホルダーの材料由来のものであることがわかる。
以上のとおり、本発明者らは、三角欠陥の頂点の先(対辺とは遠ざかる方向)にチャンバ内の部材(図3の場合、遮蔽板)の材料からなる異物(材料片)を起点とする新しいタイプの三角欠陥を見出した。
光学顕微鏡やレーザー光を用いる光学式表面検査装置(例えば、KLA−Tencor社製Candela)を用いて三角欠陥を観察すると、三角欠陥の起点が明確なものと、明確でないものが観察される。従来、起点が明確でない三角欠陥の原因については成長条件が合っていない(例えば、成長温度が低すぎる)ために正常なステップフロー成長ができずに異種のポリタイプの結晶核が起点となったものと解釈されることが多かった。これに対して、発明者らは起点が明確でない三角欠陥の中に、チャンバ内の部材の材料片起因のものがあることを見出したのである。現時点では、起点が明確でない三角欠陥がすべてチャンバ内の部材の材料片起因のものであるかは断定できないが、後述するとおり、チャンバ内の部材の材料片起因の三角欠陥を低減する本発明を行うことにより起点が明確でない三角欠陥をほぼなくすことに成功したので、起点が明確でない三角欠陥の大半がチャンバ内の部材の材料片起因であると考えている。
起点が明確でない三角欠陥がチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥であるか否かは上述の通り、例えば、光学顕微鏡を用いて焦点を表面から深さ方向にずらす手法によって識別することができ、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を得ることができる。
また、成膜を繰り返す(製造ロット数が増える)ほどチャンバ内の部材の劣化が進み、その材料片の落下量が増加するので、成膜を繰り返すほどチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は増大する。ここで、チャンバ内の部材の劣化とは例えば、黒鉛基材に炭化タンタル(TaC)膜で被覆されたシーリングの場合、炭化タンタル膜と黒鉛基材とは熱膨張率が異なるので、成膜を繰り返すことによる温度の上下で炭化タンタル膜に応力がかかって膜が剥がれること、炭化タンタル膜にひびが入ってその間から黒鉛基材が発塵することや、チャンバ内のガスとシーリング表面との相互作用によりシーリング材料が昇華すること等を指す。さらに、このシーリング上にSiCが堆積してSiC膜が成長し、このSiC膜と炭化タンタル膜とも熱膨張率が異なるので、この熱膨張率差も炭化タンタル膜の劣化の原因となる。このように、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は成膜回数(又は製造ロット数)依存性が高い。また、成膜回数が所定回数(製造条件に依存)を超えると、チャンバ内の部材の劣化が一気に進み、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が急増する。
これに対して、基板(ウェハ)表面の研磨傷等のダメージを起点とする三角欠陥や、成長条件が適切でないことに起因して形成される異種のポリタイプの結晶核を起点とする三角欠陥は成膜回数には依存しない。すなわち、基板起因の三角欠陥や成長条件起因の三角欠陥は成膜回数には依存しない。
一方、ダウンフォールを起点とする三角欠陥も成膜回数に依存する。ダウンフォールは、遮蔽板を用いない場合はシーリングから落下するものであり、遮蔽板を用いる場合は遮蔽板から落下するものであるが、成膜を繰り返すとシーリング又は遮蔽板に形成されるSiC膜が厚くなり、剥がれやすくなるからである。後述するが、遮蔽板を用いる場合は、遮蔽板として少なくともその下面をシーリングよりもSiC膜の付着性が高い材料のものとすることにより、遮蔽板を用いない場合よりもダウンフォールを低減することができる。
従って、成膜の繰り返しによって増加する三角欠陥は、チャンバ内の部材の材料片を起点とするものの他、ダウンフォールを起点とするものも含まれる。しかしながら、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥は、光学顕微鏡像やレーザー光を用いる光学式表面検査装置による像(以下「カンデラ像」という)において起点が明確でないという特徴があるのに対して、ダウンフォールを起点とする三角欠陥は起点が明確である場合が多いので、通常、光学顕微鏡像又はカンデラ像等から識別することができる。仮に、起点が明確でない三角欠陥の中にダウンフォールその他の起因のものが含まれているとしても、その面密度はチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度の上限と考えることができるので、その面密度を管理することにより、そのチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度の上限を管理することができる。これにより、成膜の繰り返しによる起点が明確でない三角欠陥の面密度の増加を管理することで、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハを製造することが可能となる。
チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の密度をより厳密に計測して管理したい場合は、エネルギー分散型X線分析法等を用いて三角欠陥の先にある異物を組成分析することにより行うことができる。
三角欠陥の起点となるチャンバ内の部材の材料片は、成膜の繰り返しによってその部材が劣化して表面から剥がれたり等して生じた微小な塊がウェハ上若しくは成長途中のSiCエピタキシャル膜上に落下したものであると考えられる。そうすると、三角欠陥の起点となる材料片を生ずるチャンバ内の部材は主にウェハの上方に配置する部材であり、それ以外のチャンバの壁面やチャンバ内のその他の部材からウェハ上に落下する材料片は無視できる程度の量であると推測される。
そこで発明者らは、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥を低減するために、ウェハの上方にウェハに対面して配置する部材について、発塵や昇華の少ない材料で被覆すると共に、定期的に(各製造ロットごと、複数の製造ロットごと等)、又は不定期に、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定してその値を管理し、所定の面密度を超えている場合には、その部材を交換してから次のSiCエピタキシャルウェハの製造をすることにより、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハを製造することに想到したのである。
以上の通り、発明者らは、チャンバ内の部材の材料片を起点とする新しいタイプの三角欠陥の存在を発見し、その三角欠陥の低減という課題を鋭意研究した結果、以下の手段を有する本発明に想到した。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
(1)オフ角を有するSiC単結晶基板上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハであって、前記SiCエピタキシャル層に存在し、光学顕微鏡像又はレーザー光を用いる光学式表面検査装置を用い、焦点の位置をSiCエピタキシャルウェハのエピタキシャル膜の表面からエピタキシャル膜とSiC単結晶基板との界面の方向へずらすことにより見つけ出して識別される起点を頂点とし、ステップフロー成長方向に沿って前記頂点と該頂点の対辺である底辺が順に並ぶような方向を向いて形成される三角形状の欠陥である三角欠陥の面密度が0.5個/cm以下であることを特徴とするSiCエピタキシャルウェハ。
(2) 前記起点がチャンバ内の部材の材料片であることを特徴とする(1)に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
(3)前記起点となる材料片がカーボン又は炭化珪素からなることを特徴とする(2)に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
(4)オフ角を有するSiC単結晶基板上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハの評価方法であって、光学顕微鏡像又はレーザー光を用いる光学式表面検査装置による像の測定において、焦点の位置をSiCエピタキシャルウェハのエピタキシャル膜の表面からエピタキシャル膜とSiC単結晶基板との界面の方向へずらすことにより見つけ出して識別できる起点を頂点とし、該起点を頂点とし、ステップフロー成長方向に沿って頂点と該頂点の対辺である底辺が順に並ぶような方向を向いて形成される三角形状の欠陥である三角欠陥を検出する工程を有することを特徴とするSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
(5)前記起点を頂点とする前記三角欠陥の組成分析を、エネルギー分散型X線分析法を用いて行うことを特徴とする(4)のSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
本発明のSiCエピタキシャルウェハによれば、これまで原因がわからず低減することができなかったチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が0.5個/cm以下と低いので、SiCエピタキシャルウェハ1枚から従来よりも多数のデバイスをとることが可能となる。
本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造方法によれば、遮蔽板を備えたSiCエピタキシャルウェハの製造装置を用い、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する工程を含む構成を採用したので、SiCエピタキシャル層中にチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥が少ないSiCエピタキシャルウェハを製造することが可能となる。また、遮蔽板としてサセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されたもの、又は炭化珪素からなるものを用いる構成を採用したので、遮蔽板の劣化が進みにくく(炭化珪素膜で被覆されたもの又は炭化珪素からなるものを用いた場合は、遮蔽板に堆積するSiC膜とその被覆膜又はその材料とが同じ材料であるため、熱膨張率の差がないので劣化が進みにくい。また、熱分解炭素膜で被覆されたものを用いる場合は、遮蔽板としてカーボン材料基材のものを用いることでその基材と熱分解炭素膜とで熱膨張率の差が小さいので、劣化が進みにくい。)、遮蔽板からウェハ上に落下する材料片が低減すると共に、遮蔽板をより長く用いることができる。
本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造方法によれば、上記測定の結果、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が所定密度を超えている場合は、遮蔽板を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造する構成を採用することにより、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥が所定面密度以下のSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造方法によれば、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する工程を含む構成を採用したので、SiCエピタキシャル層中にチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥が少ないSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。また、天板としてサセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されたもの、又は炭化珪素からなるものを用いる構成を採用したので、天板の劣化が進みにくく(炭化珪素膜で被覆されたもの又は炭化珪素からなるものを用いた場合は、天板に堆積するSiC膜とその被覆膜又はその材料とが同じ材料であるため、熱膨張率の差がないので劣化が進みにくい。また、熱分解炭素膜で被覆されたものを用いる場合は、天板としてカーボン材料基材のものを用いることでその基材と熱分解炭素膜とで熱膨張率の差が小さいので、劣化が進みにくい。)、天板からウェハ上に落下する材料片が低減すると共に、天板をより長く用いることができる。
本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造方法によれば、上記測定の結果、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が所定密度を超えている場合は、天板を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造する構成を採用することにより、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥が所定面密度以下のSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造装置によれば、天板の下面に堆積物が付着するのを阻止すると共に天板の下面からの発塵物を受けるように、天板の下面に近接して配置された遮蔽板を備え、遮蔽板がサセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているものであるか、又は炭化珪素からなるものである構成を採用したので、遮蔽板からウェハ上に落下する材料片が低減するので、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
本発明のSiCエピタキシャルウェハの製造装置によれば、天板がサセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているものであるか、又は炭化珪素からなるものである構成を採用したので、天板からウェハ上に落下する材料片が低減するので、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
典型的なチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の光学顕微鏡像であって、(a)異物に焦点を合わせたもの、(b)エピタキシャル膜の表面に焦点を合わせたものである。 図1と同じSiCエピタキシャルウェハの透過型電子顕微鏡(TEM)像である。 炭化タンタル膜で被覆した黒鉛からなる遮蔽板を用いて製造したSiCエピタキシャルウェハの透過型電子顕微鏡(TEM)像である。 図3と同じSiCエピタキシャルウェハのエネルギー分散型X線分析法による測定結果であって、(a)異物を測定した結果であり、(b)サンプルホルダーを測定した結果である。 本発明の実施形態において使用されるエピタキシャルウェハの製造装置を示す断面模式図である。 図5のA−A’線に沿ったエピタキシャルウェハの製造装置の下部側を示す斜視図である。 図5で示した遮蔽板の周辺の拡大模式図である。 実施例のカンデラ像である。 (a)比較例1のカンデラ像である。(b)比較例2のカンデラ像である。
以下、本発明を適用したSiCエピタキシャルウェハ、SiCエピタキシャルウェハの製造方法及びエピタキシャルウェハの製造装置について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
〔SiCエピタキシャルウェハ〕
本発明を適用したSiCエピタキシャルウェハは、オフ角を有するSiC単結晶基板上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハであって、SiCエピタキシャル層に存在する、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が0.5個/cm以下であることを特徴とする。
チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥は基板起因の三角欠陥ではないため、SiC単結晶基板に特に限定はない。
SiC単結晶基板としてはいずれのポリタイプのものも用いることができ、実用的なSiCデバイスを作製する為に主に使用されている4H−SiCを用いることができる。SiCデバイスの基板としては昇華法等で作製したバルク結晶から加工したSiC単結晶基板を用い、通常、この上にSiCデバイスの活性領域となるSiCエピタキシャル膜を化学的気相成長法(CVD)によって形成する。
また、SiC単結晶基板のオフ角としてはいずれのオフ角のものも用いることもでき、限定はないが、コスト削減の観点からはオフ角が小さいもの例えば、0.4°〜5°のものが好ましい。0.4°はステップフロー成長をさせることが可能なオフ角として下限といえるものである。
SiC単結晶基板が2インチ程度までのサイズの場合では SiC単結晶基板のオフ角は主に8°が用いられてきた。このオフ角においてはウェハ表面のテラス幅が小さく、容易にステップフロー成長が得られるが、オフ角が大きいほど、SiCインゴットから得られるウェハ枚数が少なくなるため、3インチ以上のSiC基板においては、主に4°程度のオフ角のものが用いられている。
低オフ角になるほど、SiC単結晶基板の表面のテラス幅が大きくなるため、ステップ端に取り込まれるマイグレーション原子の取り込まれ速度、すなわちステップ端の成長速度にバラツキが生じやすく、その結果、遅い成長速度のステップに速い成長速度のステップが追いついて合体し、ステップバンチングが発生しやすい。また、例えば、0.4°のオフ角の基板では4°のオフ角の基板に比べてテラス幅は10倍になり、ステップフロー成長させる長さが一桁長くなるので、4°のオフ角の基板で用いられてきたステップフロー成長の条件を調整する必要がある点に留意する必要がある。
SiC単結晶基板としてはSiCエピタキシャル層の成長面が凸状に加工されたものを用いることができる。
SiCエピタキシャルウェハの製造(SiCエピタキシャル層の形成(成長))の際、SiC単結晶基板の裏面は加熱されたサセプタから直接加熱されるが、おもて面(SiCエピタキシャル層の形成面)は真空空間に剥き出しの状態にあり、直接加熱されない。さらに、キャリアガスである水素がおもて面上を流れるため、熱が持ち去られる。これらの事情から、エピタキシャル成長時のおもて面は裏面に対して低い温度になる。この温度差に起因して熱膨張の大きさがおもて面は裏面よりも小さく、エピタキシャル成長時にはSiC単結晶基板はおもて面が凹むように変形する。そこで、SiC単結晶基板としてSiCエピタキシャル層の成長面が凸状に加工されたものを用いることで、SiC単結晶基板としてエピタキシャル成長時の基板の凹み(反り)を解消した状態でエピタキシャル成長を行うことが可能となる。
SiCエピタキシャル層の厚さは特に限定はないが、例えば、典型的な成長速度4μm/hで2.5時間成膜を行うと10μm厚となる。
[SiCエピタキシャルウェハの製造装置(第1の実施形態)]
図5は本発明を適用したエピタキシャルウェハの製造装置の一部を示す断面模式図であり、図6は図5のA−A’線に沿ったエピタキシャルウェハの製造装置の下部側を示す斜視図であり、図7は図5で示した遮蔽板の周辺の拡大模式図である。
本実施形態のエピタキシャルウェハの製造装置100は例えば図5に示すようなCVD装置100であり、チャンバ1内に原料ガスを供給しながら、ウェハの面上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェハの製造装置であって、ウェハが載置される複数の載置部2bを有して、これら複数の載置部2bが周方向に並んで配置されたサセプタ2と、サセプタ2との間で反応空間4を形成するように、サセプタ2の上面に対向して配置されたシーリング(天板)3と、シーリング3の下面に気相中からの堆積物が付着するのを阻止する程度に、シーリング3の下面に近接して配置された遮蔽板10とを備え、遮蔽板10は、サセプタ2に対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているものであるか、又は炭化珪素からなるものであることを特徴とする。
なお、原料ガスには、例えば、Si源にシラン(SiH)、C源にプロパン(C)を含むものを用いることができ、更にキャリアガスとして水素(H)を含むものを用いことができる。
本実施形態のエピタキシャルウェハの製造装置100はさらに、サセプタ2の下面側及びシーリングの上面側に配置されて、載置部2bに載置されたウェハを加熱する加熱手段6、7と、シーリング3の上面中央部から反応空間4内に原料ガスを導入するガス導入口を有して、このガス導入口から放出された原料ガスを反応空間4の内側から外側に向かって供給するガス導入管5とを備える。
加熱手段6、7は誘導コイルであり、誘導コイルによる高周波誘導加熱によってシーリング3を加熱し、加熱されたシーリング3からの輻射熱によって遮蔽板10を加熱し、遮蔽板10からの輻射熱によってウェハを加熱することができる。
本実施形態では、ウェハはサセプタ2の下面側及びシーリングの上面側に配置された加熱手段を用いて加熱する構成であるが、サセプタ2の下面側にだけ加熱手段を有する構成であってもよい。
また、SiC単結晶基板の加熱手段としては、上述した高周波誘導加熱によるものに限らず、抵抗加熱よるものなどを用いてもよい。
シーリング3は、その下面中央部に遮蔽板10の開口部10bの内側に位置するように突出して設けられている突起部12を介して、ガス導入管5に固定された支持部材13に支持されている。この突起部12によって、遮蔽板12の内周部側からシーリング3との間に向かってガスが流れ込み難くなる。
シーリング3としては、黒鉛等のカーボン材料からなるもの又は炭化珪素からなるものや、カーボン材料の基材にSiC、熱分解炭素、TaC等の膜を被覆したものを用いることができる。高温下での発塵やチャンバ内のガスとの相互作用による昇華が生じにくい材料からなるのが好ましい。
遮蔽板10は、チャンバ内に着脱自在に取り付けられる構成であり、本実施形態ではその外周部10aがチャンバの内壁面に設けられた支持部11に載置されている。
遮蔽板の外周部のみを支持することによって、加熱手段により加熱されて高温となる遮蔽板に対して、原料ガスを分解しない状態で導入するために低温とされるガス導入管5と、この遮蔽板の内周部(開口部が形成された中央部)との接触を回避しながら、遮蔽板をチャンバ内に着脱自在に取り付けることが可能である。
遮蔽板10は複数に分割されてなるのが好ましく、本実施形態では、図6に示すように、中央線で2分割された一対の部材10A及び10Bからなる。この場合、一対の部材10A及び10Bを一方づつ支持部11に載置することができ、また、交換時には支持部11から一方づつ取り外せばよいので、作業性が高く、載置や交換、メンテナンス時に破損するリスクが軽減される。
また、遮蔽板10は複数に分割されていると、熱応力が緩和され、反りや変形の発生が抑制される。
遮蔽板10は通常、黒鉛製のシーリング3の下面からの発塵物(黒鉛)がウェハに落下するのを阻止して、シーリングの材料片を起点とする三角欠陥の面密度を低減することができる。ただし、遮蔽板10の材料片がウェハに落下すると、遮蔽板の材料片を起点とする三角欠陥が形成されるので、それを抑制するためにはシーリング3の材料よりも高温下での発塵やチャンバ内のガスとの相互作用による昇華が生じにくい材料からなる必要がある。このため、遮蔽板10としては炭化珪素からなるもの、又は、黒鉛の基材に炭化珪素膜又は熱分解炭素膜を被覆したものを用いる。
炭化珪素膜又は熱分解炭素膜の膜厚は、劣化の抑制の観点から20μm以上であるのが好ましい。また、黒鉛基材との熱膨張率差に基づく応力低減の観点から100μm以下であるのが好ましい。
また、遮蔽板10は、気相中からSiC膜が堆積してそれが剥がれて、SiC単結晶ウェハ上若しくはSiCエピタキシャル膜上に落下するダウンフォールの量を低減するためには、少なくとも下面の表面はSiC膜の付着性が高い材料であるのが好ましい。そのような材料としては例えば、炭化珪素からなるものや炭化珪素膜で被覆されたものがある。
また、本実施形態では、遮蔽板10の材料としては、遮蔽板10はシーリング3からの熱輻射を受けて加熱され、輻射熱を放出してウェハを加熱する必要があるので、高熱伝導性であるのが好ましい。
遮蔽板10が炭化珪素からなる場合、化学的気相成長(CVD)法や焼結等によって作製することができるが、CVD法で作製した方が材料の純度が高い遮蔽板が作製できる。遮蔽板10において炭化珪素が堆積する面は炭化珪素の付着性を高めるために、研磨等によって表面を粗面化しておくのが好ましい。
遮蔽板10は割れ防止の観点から、厚さが2〜6mmであることが好ましい。遮蔽板は割れやすく、2mmより薄いと撓り過ぎて割れてしまい、6mmより厚くても割れてしまうからである。
シーリングが炭化珪素からなる場合には、シーリングよりも部材の厚さを薄くすることにより、同じ材質でも熱歪に耐えることができ、割れにくい。
複数の載置部2bは、円盤状のサセプタ2上にその中央部を囲むように周方向に並んで配置する。サセプタ2の下面中央部には公転用回転軸2aが取り付けられている。公転用回転軸2aはガス導入管5の直下に配置することになる。各載置部2bには自転用回転軸(図示せず)が取り付けられている。
この構成によって、ガス導入管5を中心軸にしてSiC単結晶ウェハをサセプタ2によって公転させるとともに、SiC単結晶ウェハの中心を軸にしてSiC単結晶ウェハ自体を載置部2bと共に自転させるようになっている。
このSiCエピタキシャルウェハの製造装置においては、中心部に配置されたガス導入管5から冷たいガスが導入されることや、サセプタ2の中心部には誘導加熱が加わりづらいことから、一般的に、中心部に近づくにつれてサセプタ2の温度は低くなっている。この影響を受けて、自転する載置部2bの外周部、すなわち載置部2b上に設置されるSiC単結晶ウェハの外周部の温度が低下する。このため、一般的なサセプタ型のエピタキシャル成長装置おいては、設置されるSiC単結晶ウェハが、ウェハ中央部で温度が最も高く、ウェハ外周部にいくにつれて温度が低下する温度勾配を有することになる。このSiC単結晶ウェハの温度勾配は、エピタキシャル成長過程においてSiC単結晶ウェハの中央部に圧縮性のストレスを生じさせることとなる。
また、ガス導入管5の先端部(下端部)には、拡径方向に突出されたフランジ部9aが設けられている。このフランジ部5aは、ガス導入管9の下端部から鉛直下向きに放出された原料ガスGを、その対向するサセプタ2との間で水平方向に放射状に流すためのものである。
そして、このCVD装置100では、ガス導入管9から放出された原料ガスGを反応空間4の内側から外側に向かって放射状に流すことで、SiC単結晶基板の面内に対して平行に原料ガスGを供給することが可能となっている。また、チャンバ内で不要になったガスは、チャンバの壁に設けられた排気口(図示せず)からチャンバの外へと排出することが可能となっている。
ここで、シーリング3は、上記誘導コイル7により高温で加熱されるものの、その内周部(開口部10bが形成された中央部)が原料ガスGを導入するために低温とされたガス導入管9とは非接触とされている。また、シーリング3は、ガス導入管9の外周部に取り付けられた支持部材11の上に、その内周部が載置されることによって、鉛直上向きに支持されている。さらに、このシーリング3は、上下方向に移動させることが可能となっている。
このSiC単結晶ウェハの温度勾配は、導入するガスの流量や、誘導加熱コイルの位置変更などによって変化するので、本実施形態では、ウェハ中央部で温度が最も低く、ウェハ外周部にいくにつれて温度が高くなる温度勾配を有するように、導入するガスの流量や、誘導加熱コイルの位置を調整することが望ましい。
遮蔽板10の上面とシーリング3の下面との間隔dは、0.5〜1mmの範囲に設定されていることが好ましい。これは、遮蔽板10によってシーリング3の下面にSiCの堆積物が堆積するのを阻止するためである。
また、遮蔽板10はチャンバ1の内壁1aから離間して配置され、遮蔽板10の外周側面10cとチャンバ1の内壁1aとの水平方向の離間距離dは、1.0〜3.0mmであるのが好ましい。これは、加熱時の熱膨張により遮蔽板10が壁面1aに接触するのを防ぐためである。
例えば、遮蔽板が炭化珪素からなる場合は1.0〜2.0mmであるのが好ましい。
また、遮蔽板10の開口部10bの内壁10dからガス導入管5の外壁5aまでの距離dは、0.5〜1mmの範囲に設定されていることが好ましい。これは、加熱時の熱膨張により遮蔽板10が突起部12に接触するのを防ぎつつ、遮蔽板10の内周部側からシーリング3との間に向かってガスを流れ込み難くするためである。
また、シーリング3の内周面とガス導入管9の外周面との間隔dは、0.5mm以下の範囲に設定されていることが好ましい。これは、原料ガスGを導入するために低温とされるガス導入管5が、上記誘導コイル7により加熱されて高温となるシーリング3からの輻射熱の影響をできるだけ受けないようにするためである。
本実施形態では、図7に示すように、シーリング3は、その下面3cの内周部3dから、遮蔽板10の開口部10bの内壁10dとガス導入管5の外壁5aとの間に突起部12を備えている。突起部12はシーリング3と一体に形成されていてもよいし、シーリング3とは別部材であってもよい。突起部12は遮蔽板10の開口部10bの内壁10dに沿って配置するのが好ましい。尚、図5及び図7ではその一部の断面のみ図示している。
突起部12は遮蔽板10の開口部10bの内壁10dとガス導入管5の外壁5aとの間の隙間から、気相中の膜材料のガスが入り込んでシーリングに堆積することを防止できる。
なお、本実施形態は突起部12を備えるが、備えない構成でも構わない。
本実施形態のエピタキシャルウェハの製造装置によれば、遮蔽板10を備えているため、シーリング3の材料片が落下しても遮蔽板10で受けてウェハ上又はエピタキシャル膜上に落下するのを阻止することができるので、エピタキシャル膜におけるシーリング3の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を低減することができる。また、遮蔽板10は、少なくとも下面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されたもの、又は炭化珪素からなるものを用いているので、遮蔽板10からその材料片が落下する量はシーリングよりも少ない。
従って、エピタキシャルウェハの製造装置を用いれば、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が従来のエピタキシャルウェハの製造装置を用いた場合よりも低いSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
[SiCエピタキシャルウェハの製造装置(第2の実施形態)]
本実施形態のエピタキシャルウェハの製造装置は、チャンバ内に原料ガスを供給しながら、ウェハの面上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェハの製造装置であって、ウェハを載置するウェハ載置部を有するサセプタと、サセプタとの間で反応空間を形成するように、サセプタの上面に対向して配置されたシーリング(天板)と、シーリングのサセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているものであるか、又は炭化珪素からなるものであることを特徴とするものであって、第1の実施形態に係るエピタキシャルウェハの製造装置とは遮蔽板がない点が異なる。
このエピタキシャルウェハの製造装置によれば、シーリングからウェハ上に落下する材料片が低減するので、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
本発明のエピタキシャルウェハの製造装置は、ウェハの上方に配置する部材(遮蔽板を有する場合は遮蔽板、有しない場合はシーリング)としてサセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されたもの、又は炭化珪素からなるものとして、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の低減を図ることができるが、チャンバ内の他の部材についてもそれらの材料からなるのが好ましい。
[SiCエピタキシャルウェハの製造方法(第1の実施形態)]
本実施形態のエピタキシャルウェハ製造方法は、第1の実施形態のエピタキシャルウェハの製造装置を用いてSiCエピタキシャルウェハを製造する方法であって、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する工程を含むことを特徴とする。
この工程を有することにより、SiCエピタキシャル膜中のチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を管理することが可能となる。
<研磨工程>
研磨工程では、スライス工程においてウェハ表面に残留した4H−SiC単結晶基板について、その表面の格子乱れ層が3nm以下となるまで研磨する。
「格子乱れ層」とは、TEMの格子像(結晶格子が確認できる像)において、SiC単結晶基板の原子層(格子)に対応する縞状構造又はその縞の一部が明瞭になっていない層をいう(特許文献5参照)。
研磨工程は、通常ラップと呼ばれる粗研磨、ポリッシュとよばれる精密研磨、さらに超精密研磨である化学的機械研磨(以下、CMPという)など複数の研磨工程が含まれるが、CMP前の機械研磨において加工圧力を350g/cm以下にし、直径5μm以下の砥粒を用いることによって、ダメージ層(TEMにおいて「格子乱れ層」として検出できるダメージだけでなく、TEMによって検出できない格子の歪み等がさらに深くまで存在している部分)を50nmに抑えておくのが好ましく、さらにCMPにおいては、研磨スラリーとして平均粒子径が10nm〜150nmの研磨材粒子及び無機酸を含み、20℃におけるpHが2未満であるのが好ましく、研磨材粒子がシリカであって、1質量%から30質量%含むのがさらに好ましく、無機酸が塩酸、硝酸、燐酸、硫酸のうちの少なくとも1種類であるのがより好ましい。
<清浄化(ガスエッチング)工程>
清浄化工程では、水素雰囲気下で、上記研磨及び凸状加工後の基板を1400〜1800℃にしてその表面を清浄化(ガスエッチング)する。
ガスエッチングは、SiC単結晶基板を1400〜1800℃に保持し、水素ガスの流量を40〜120slm、圧力を100〜250mbarとして、5〜30分間行う。
研磨後のSiC単結晶基板を洗浄した後、基板をエピタキシャル成長装置例えば、量産型の複数枚プラネタリー型CVD装置内にセットする。装置内に水素ガスを導入後、圧力を100〜250mbarに調整する。その後、装置の温度を上げ、基板温度を1400〜1600℃、好ましくは1480℃以上にして、1〜30分間、水素ガスによって基板表面のガスエッチングを行う。かかる条件で水素ガスによるガスエッチングを行った場合、エッチング量は0.05〜0.4μm程度になる。
水素ガスにSiHガス及び/又はCガスを添加することもできる。らせん転位に起因したシャローピットに短いステップバンチングが付随して発生する場合があるが、リアクタ内の環境をSiリッチにするため、0.009mol%未満の濃度のSiHガスを水素ガスに添加してガスエッチングを行うことにより、シャローピットの深さを浅くすることができ、シャローピットに付随する短いステップバンチングの発生を抑制できる。
SiHガス及び/又はCガスを添加した場合は、成膜(エピタキシャル成長)工程前に、一旦排気を行って水素ガス雰囲気にするのが好ましい。
<成膜(エピタキシャル成長)工程>
成膜(エピタキシャル成長)工程では、(エピタキシャル膜の成長温度が清浄化(ガスエッチング)温度よりも高い場合では昇温後に)上記清浄化後の基板の表面に、炭化珪素のエピタキシャル成長に必要とされる量の炭素含有ガス及び珪素含有ガスを所定の濃度比(例えば、SiHガスとCガスとを濃度比C/Siが0.7〜1.2)を供給してSiC膜をエピタキシャル成長させる。
この炭素含有ガス及び珪素含有ガスは同時に供給するのが好ましい。ステップバンチングが著しく低減するからである。
ここで、「同時に供給」とは、完全に同一時刻であることまでは要しないが、数秒以内であることを意味する。
SiHガス及びCガスの各流量、圧力、基板温度、成長温度はそれぞれ、15〜150sccm、3.5〜60sccm、80〜250mbar、1600℃より高く1800℃以下、成長速度は毎時1〜20μmの範囲内で、オフ角、膜厚、キャリア濃度の均一性、成長速度を制御しながら決定する。成膜開始と同時にドーピングガスとして窒素ガスを導入することで、エピタキシャル層中のキャリア濃度を制御することができる。成長中のステップバンチングを抑制する方法として成長表面におけるSi原子のマイグレーションを増やすために、供給する原料ガスの濃度比C/Siを低くすることが知られているが、本発明ではC/Siは0.7〜1.2である。また、成長させるエピタキシャル層は通常、膜厚については5〜20μm程度であり、キャリア濃度については2〜15×1015cm−3程度である。
成長温度は1400〜1800℃を用いるが、積層欠陥を低減するためには1600℃以上であるのが好ましい。また、成長温度が高いほど、成長速度を大きくするのが好ましい。また、同じ成長温度であれば、SiC単結晶基板のオフ角が大きいほど、成長速度を大きくするのが好ましい。
例えば、
(1)オフ角が0.4°〜2°の4H−SiC単結晶基板を用いる場合は、炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる成長温度を1600〜1640℃とするときは、成長速度を1〜3μm/hとして行い、成長温度を1640〜1700℃とするときは、成長速度を3〜4μm/hとして行い、成長温度を1700〜1800℃とするときは、成長速度を4〜10μm/hとして行い、
(2)オフ角が2°〜5°の4H−SiC単結晶基板を用いる場合は、炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる成長温度を1600〜1640℃とするときは、成長速度を2〜4μm/hとして行い、成長温度を1640〜1700℃とするときは、成長速度を4〜10μm/hとして行い、成長温度を1700〜1800℃とするときは、成長速度を10〜20μm/hとして行う、のが好ましい。
<降温工程>
降温工程では、炭素含有ガス及び珪素含有ガス(例えば、SiHガス及びCガス)の供給を同時に停止するのが好ましい。モフォロジーの悪化を抑制するのに有効だからである。停止後、炭素含有ガス及び珪素含有ガスを排気するまで基板温度を保持し、その後降温する。
<三角欠陥の面密度の測定及び部材交換工程>
定期的に(各製造ロットごと、複数の製造ロットごと等)、又は不定期に、SiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する。
チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は例えば、光学顕微鏡を用いて焦点の位置をSiCエピタキシャルウェハのエピタキシャル膜の表面からエピタキシャル膜とSiC単結晶基板との界面の方(膜の深さ方向)へずらすことによりチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥を見つけだし、それを計測することにより得ることができる。また、本実施形態では、成膜の繰り返しに従って増加する三角欠陥の種類(タイプ)はチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥と、ダウンフォールを起点とする三角欠陥だけであると考えることができる。通常、ダウンフォールを起点とする三角欠陥は起点が明確であるのに対し、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥は起点が明確でないという特徴があるので、この特徴に基づいてダウンフォールを起点とする三角欠陥を識別してその面密度の増加を管理することにより、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハを製造することが可能となる。チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の密度をより厳密に計測して管理したい場合は、エネルギー分散型X線分析法等を用いて三角欠陥の先にある異物を組成分析することにより行うことができる。
上記測定の結果、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が所定密度を超えている場合は、遮蔽板10を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造するのが好ましい。例えば、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのその三角欠陥の面密度がその0.25個/cm程度となったら、遮蔽板10を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造すると、当該面密度が確実に0.5個/cm以下であるSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
[SiCエピタキシャルウェハの製造方法(第2の実施形態)]
本実施形態のエピタキシャルウェハ製造方法は、第2の実施形態のエピタキシャルウェハの製造装置を用いてSiCエピタキシャルウェハを製造する方法であって、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する工程を含むことを特徴とする。
この工程を有することにより、SiCエピタキシャル膜中のチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を管理することが可能となる。
本実施形態のSiCエピタキシャルウェハの製造方法においても、第1の実施形態と同様に、各SiCエピタキシャルウェハの製造を行うことができる。
また、三角欠陥の面密度の測定工程も第1の実施形態と同様に行うことができる。
上記測定の結果、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が所定密度を超えている場合は、シーリング3を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造するのが好ましい。例えば、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのその三角欠陥の面密度がその0.25個/cm程度となったら、遮蔽板10を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造すると、当該面密度が確実に0.5個/cm以下であるSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
以下に、本発明に関連する発明を示す。
(1)オフ角を有するSiC単結晶基板上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハであって、前記SiCエピタキシャル層に存在する、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が0.5個/cm以下であることを特徴とするSiCエピタキシャルウェハ。
(2)前記起点となる材料片がカーボン又は炭化珪素からなることを特徴とする(1)に記載のSiCエピタキシャルウェハ。
(3)ウェハを載置するウェハ載置部を有するサセプタと、前記サセプタとの間で反応空間を形成するように、前記サセプタの上面に対向して配置された天板と、前記天板の下面に堆積物が付着するのを阻止する程度に、前記天板の下面に近接して配置された遮蔽板とを備え、チャンバ内に原料ガスを供給しながら、SiC単結晶ウェハの面上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハの製造装置を用いて、SiCエピタキシャルウェハを製造する方法であって、前記遮蔽板として前記サセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されたもの、又は炭化珪素からなるものを用い、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する工程を含むことを特徴とするSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
(4)前記測定の結果、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が所定密度を超えている場合は、前記遮蔽板を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造することを特徴とする(3)に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
(5)ウェハを載置するウェハ載置部を有するサセプタと、前記サセプタとの間で反応空間を形成するように、前記サセプタの上面に対向して配置された天板とを備え、チャンバ内に原料ガスを供給しながら、SiC単結晶ウェハの面上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハの製造装置を用いて、SiCエピタキシャルウェハを製造する方法であって、前記天板として前記サセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているもの、又は炭化珪素からなるものを用い、先に製造されたSiCエピタキシャルウェハのSiCエピタキシャル膜についてチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を測定した後に、次のSiCエピタキシャルウェハを製造する工程を含むことを特徴とするSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
(6)前記測定の結果、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が所定密度を超えている場合は、前記天板を交換して次のSiCエピタキシャルウェハを製造することを特徴とする(5)に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法。
(7)(3)から(6)のいずれか一項に記載のSiCエピタキシャルウェハの製造方法を用いて製造されたSiCエピタキシャルウェハ。
(8)チャンバ内に原料ガスを供給しながら、ウェハの面上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェハの製造装置であって、前記ウェハを載置するウェハ載置部を有するサセプタと、前記サセプタとの間で反応空間を形成するように、前記サセプタの上面に対向して配置された天板と、前記天板の下面に堆積物が付着するのを阻止する程度に、前記天板の下面に近接して配置された遮蔽板とを備え、前記遮蔽板は、前記サセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているものであるか、又は炭化珪素からなるものであることを特徴とするエピタキシャルウェハの製造装置。
(9)チャンバ内に原料ガスを供給しながら、ウェハの面上にエピタキシャル層を形成するエピタキシャルウェハの製造装置であって、前記ウェハを載置するウェハ載置部を有するサセプタと、前記サセプタとの間で反応空間を形成するように、前記サセプタの上面に対向して配置された天板と、前記天板の前記サセプタに対向する面が炭化珪素膜又は熱分解炭素膜で被覆されているものであるか、又は炭化珪素からなるものであることを特徴とするエピタキシャルウェハの製造装置。
(10)前記炭化珪素膜又は熱分解炭素膜の膜厚が20〜100μmであることを特徴とする(8)又は(9)のいずれかに記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
(11)前記サセプタの下面側及び/又は前記天板の上面側に配置された加熱手段を有することを特徴とする(8)から(10)のいずれか一つに記載のエピタキシャルウェハの製造装置。
以下、本発明の効果を、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)
実施例は第1実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造装置及びSiCエピタキシャルウェハの製造方法の実施例である。
図5で示したSiCエピタキシャルウェハの製造装置において、シーリングとしては黒鉛製のもの、遮蔽板としては図6で示した2分割ものであって黒鉛基材に炭化珪素膜を被覆したもの(直径:371mm、厚さ:4mm)を用いた。遮蔽板はシーリングから距離(d)0.5mm離間して配置した。
4H−SiC単結晶ウェハとしては、c面((0001)面)が<11−20>方向に4°傾斜したSi面を主面とする、直径3インチ(76.2mm)で厚みは350μmのものを用いた。
次に、SiC単結晶ウェハに対して、前処理として有機溶剤洗浄及び酸・アルカリ洗浄及び十分な水洗を行った。
SiC単結晶ウェハをウェハ載置部に配置し、真空排気を行った後に水素ガスを導入して200mbarの減圧雰囲気に調整した。その後、1570℃まで昇温し、成長速度5μm/hで1時間成長を行い、厚さ5μmのSiCエピタキシャル膜を成膜してSiCエピタキシャルウェハを作製した。
キャリアガスとしては水素を使用し、原料ガスとしてはSiHとCとの混合ガスを用い、ドーパントとしてNを供給した。
以上の条件でチャンバ内の部材の交換を行わずにSiCエピタキシャルウェハの製造を繰り返した。図8(a)及び(b)はそれぞれ、2回目の製造ロットのカンデラ像、80回目の製造ロットのカンデラ像ある。黒い斑点状に見えているものが三角欠陥である。
カンデラ像から全種類の三角欠陥の数を計測して、全種類の三角欠陥の面密度を得た。また、光学顕微鏡を用いて焦点をずらして観察する手法により、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の数を計測して、その三角欠陥の面密度を得た。
2回目の製造ロットのSiCエピタキシャルウェハの三角欠陥の面密度は0.5個/cmであり、そのうち、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は0個/cmであった。
また、80回目の製造ロットのSiCエピタキシャルウェハの三角欠陥の面密度は2個/cmであり、そのうち、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は0.5個/cmであった。
なお、20回目の製造ロットのSiCエピタキシャルウェハの三角欠陥の面密度は1個/cmであり、そのうち、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は0個/cmであった。
図8(c)は80回目のSiCエピタキシャルウェハの製造後に、遮蔽板を新しいものに交換した後、製造した直後の製造ロットのカンデラ像ある。三角欠陥の面密度は0.5個/cmであり、そのうち、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は0個/cmであった。
この結果により、遮蔽板を新しいものに交換することにより、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を低減できることが確認できた。
(比較例1)
比較例1は、実施例で用いたSiCエピタキシャルウェハの製造装置において遮蔽板が黒鉛基材に炭化タンタル膜を被覆したものである点が異なり、他の製造条件は同様であった。
この条件でチャンバ内の部材の交換を行わずにSiCエピタキシャルウェハの製造を繰り返した。図9(a)は、20回目の製造ロットのカンデラ像である。
このSiCエピタキシャルウェハの全種類の三角欠陥の面密度は2個/cmであり、そのうち、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は1個/cmであった。
SiCエピタキシャルウェハの製造の繰り返し回数が実施例の場合と同じ回数であっても、全種類の三角欠陥の面密度及びチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度共に、実施例に比べて高かった。
この結果により、遮蔽板として、黒鉛基材に炭化タンタル膜を被覆したものよりも、黒鉛基材に炭化珪素膜を被覆したものを用いた方が全種類の三角欠陥の面密度及びチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を低減できることがわかった。
(比較例2)
比較例2は、実施例で用いたSiCエピタキシャルウェハの製造装置において遮蔽板を用いなかった点が異なり、他の製造条件は同様であった。
この条件でチャンバ内の部材の交換を行わずにSiCエピタキシャルウェハの製造を繰り返した。図9(b)は、20回目の製造ロットのカンデラ像である。
このSiCエピタキシャルウェハの全種類の三角欠陥の面密度は100個/cmであり、そのうち、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度は90個/cmであった。
SiCエピタキシャルウェハの製造の繰り返し回数が実施例の場合と同じ回数であっても、全種類の三角欠陥の面密度及びチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度共に、実施例に比べて著しく高かった。
この結果により、遮蔽板を用いることにより、全種類の三角欠陥の面密度及びチャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度を大幅に低減できることがわかった。
本発明のSiCエピタキシャルウェハ及びその製造方法、並びにSiCエピタキシャルウェハの製造装置は、チャンバ内の部材の材料片を起点とする三角欠陥の面密度が低いSiCエピタキシャルウェハの製造に利用することができる。
1 チャンバ
1a 内壁
2 サセプタ
2b 載置部
3 シーリング(天板)
4 反応空間
6、7 誘導コイル(加熱手段)
10 遮蔽板
10a 外周部
10A、10B 遮蔽板
11 支持部
100 CVD装置(エピタキシャルウェハの製造装置)

Claims (2)

  1. オフ角を有するSiC単結晶基板上にSiCエピタキシャル層を有するSiCエピタキシャルウェハの評価方法であって、
    光学顕微鏡像又はレーザー光を用いる光学式表面検査装置による像の測定において、焦点の位置をずらすことにより見つけ出して識別できる起点を頂点とし、該起点を頂点とし、ステップフロー成長方向に沿って頂点と該頂点の対辺である底辺が順に並ぶような方向を向いて形成される三角形状の欠陥である三角欠陥を検出する工程を有し、
    前記三角欠陥を検出する工程では、前記焦点の位置を、SiCエピタキシャル膜の表面から、前記SiCエピタキシャル膜を透して前記SiC単結晶基板との界面の方向にずらすことにより、前記起点を見つけ出して識別することを特徴とするSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
  2. さらにエネルギー分散型X線分析法を用いて、前記起点を頂点とする前記三角欠陥の先にある異物を組成分析することを特徴とする請求項1に記載のSiCエピタキシャルウェハの評価方法。
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