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JP6059084B2 - 静電潜像現像用トナーの製造方法 - Google Patents

静電潜像現像用トナーの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関する。
一般に電子写真法では、静電潜像担持体の表面を、コロナ放電を用いて帯電させた後、レーザーを用いて露光して静電潜像を形成する。形成した静電潜像をトナーで現像してトナー像を形成する。さらに、形成したトナー像を記録媒体に転写して高品質な画像を得ている。通常このような電子写真法に適用するトナーには熱可塑性樹脂のような結着樹脂に、着色剤、電荷制御剤、離型剤、磁性材料のような成分を混合した後、混練、粉砕、分級を行い平均粒径5μm以上10μm以下のトナー粒子(トナー母粒子)としたものが用いられる。そしてトナーに流動性を付与したり、トナーに好適な帯電性能を付与したり、感光体ドラムからのトナーのクリーニング性を向上させたりする目的で、シリカや酸化チタンのような無機微粉末がトナー母粒子に外添されている。
このようなトナーに関して、従来より低い温度域で良好な定着性を得る目的、高温での保存安定性の向上の目的、及び耐ブロッキング性の向上の目的で、低融点の結着樹脂を用いたトナーコア粒子を、トナーコア粒子の結着樹脂のガラス転移点(Tg)よりも高いTgを示す樹脂からなるシェル材を用いて被覆するコア−シェル構造のトナーが使用されている。
このようなトナーとしては、ポリエステル樹脂、又は、ポリエステル樹脂とビニル樹脂とが結合した樹脂を含むトナーコア粒子と、スチレンと、ポリアルキレンオキシド単位を含む(メタ)アクリレート系の単量体との共重合体を含むシェル材からなるシェル層と、からなるコア−シェル構造のトナーが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、酢酸エチルのような有機溶媒の存在下で、水性媒体中に分散された樹脂の粒子によってトナーコア粒子の表面を被覆して、コア−シェル構造のトナーが形成されている。
特開2011−70179号公報
しかし、特許文献1に記載のトナーのシェル層は、樹脂微粒子同士の接触部が有機溶剤に溶解されながら形成されているため、樹脂粒子間の空隙が殆ど残らず、且つ、樹脂粒子の形状が残存している状態の、均質な膜となっている。このため、特許文献1に記載のトナーは、トナーを被記録媒体上に定着させる際に、トナーに加わる圧力によってシェル層が破壊されにくい場合がある。シェル層が容易に破壊されない場合、被記録媒体上にトナーを良好に定着させにくい。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、定着性、及び耐熱保存性に優れる、静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、
前記トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる静電潜像現像用トナーであって、
前期シェル層は、球状の樹脂微粒子を用いて形成され、
前記静電潜像現像用トナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径が6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層に球状の前記樹脂微粒子に由来する構造が観察されず、
前記静電潜像現像用トナーの断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、前記シェル層の内部に、前記トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向の、前記樹脂微粒子同士の界面に由来するクラックが観察される、静電潜像現像用トナーに関する。
本発明によれば、定着性、及び耐熱保存性に優れる、静電潜像現像用トナーを提供できる。
本発明のトナーの断面の一部を示す模式図である。 高架式フローテスターを用いる融点の測定方法を説明する図である。 実施例1のトナーの断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例1のトナーの断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 比較例3のトナーの断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
本発明の静電潜像現像用トナー(以下単にトナーともいう)は、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子を被覆するシェル層と、からなる。そして、トナーコア粒子を被覆するシェル層は、球状の樹脂微粒子を用いて形成される。
また、本発明のトナーは、その表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径が6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されない。そして、本発明のトナーは、トナーの断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向の、樹脂微粒子同士の界面に由来するクラックが観察される。以下、トナーの構造と、トナーの材料とについて説明する。
[トナーの構造]
本発明のトナーは、トナーコア粒子がその全表面を、シェル層によって被覆されている。静電潜像現像用トナーの表面のシェル層の被覆状態は、走査型電子顕微鏡(SEMを用いて確認できる。また、シェル層の平滑化の程度と、静電潜像現像用トナーのシェル層の内部とは、トナーの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することによって確認できる。本発明のトナーの好適な一態様について、TEMを用いて観察されるトナーの断面の模式図を図1に示す。
図1に示されるように、静電潜像現像用トナー101では、シェル層103が、トナーコア粒子102の全表面を被覆している。また、シェル層は、トナーコア粒子に樹脂微粒子層を付着させて形成される樹脂微粒子層の外表面を、外力によって平滑化することで形成されたものである。
シェル層103の厚さは、0.03μm以上1μm以下が好ましく、0.04μm以上0.7μm以下がより好ましく、0.045μm以上0.5μm以下が特に好ましく、0.045μm以上0.3μm以下が最も好ましい。なお、後述するように、シェル層が凸部を有する場合、シェル層の厚さが不均一である場合がある。このようにシェル層の厚さが不均一な場合について、本出願の、特許請求の範囲、及び明細書では、シェル層の最も厚い部分の厚さを、「シェル層の厚さ」と規定する。
シェル層の厚さが厚過ぎる場合、トナーを被記録媒体へ定着する際にトナーに加わる圧力によってシェル層が破壊されにくい。この場合、トナーコア粒子に含まれる結着樹脂や離型剤の軟化又は溶融が速やかに進行せず、従来より低い温度でトナーを被記録媒体上に定着させられない場合がある。一方、シェル層の厚さが薄すぎる場合、シェル層の強度が低くなる。シェル層の強度が低いと、輸送時で加わる衝撃によってシェル層が破壊される場合があり、高温でトナーを保存する場合に、シェル層が破壊された個所からの、トナー表面へ離型剤が染み出すことによって、トナーが凝集することがあり得る。
シェル層103の厚さは、トナー101断面のTEM撮影像を市販の画像解析ソフトウェアを用いて解析することによって、計測することができる。市販の画像解析ソフトウェアとしては、WinROOF(三谷商事株式会社製)のようなソフトウェアを用いることができる。
本発明のトナーは、図1に示すようにシェル層103が、トナーコア粒子102とシェル層103との界面上、且つ、2つのクラック104間に、凸部105を有するのが好ましい。シェル層103がこのような凸部105を有することによって、シェル層が凸部105を有していない場合に比べて、トナーコア粒子102とシェル層103との接触面積を大きくすることができる。シェル層に凸部105を設けることで、トナーコア粒子102とシェル層103との密着性が向上し、シェル層103がトナーコア粒子102から剥離しにくくなる。このため、シェル層が凸部105を備えることによって、耐熱保存性が良好なトナーを得ることができる。
本発明の静電潜像現像用トナーの、樹脂微粒子を用いて形成されるシェル層は、より具体的には、
I)球状の樹脂微粒子を、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に重ならないように、トナーコア粒子の表面に付着させて、トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層を形成する工程、及び
II)樹脂微粒子層の外表面への外力の印加することによって、樹脂微粒子層中の樹脂微粒子を変形させることによって、樹脂微粒子層の外表面を平滑化することでシェル層を形成する工程、
を含む方法を用いて形成される。
シェル層の平滑化の程度は、本発明のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子のシェル層の外表面に、シェル層の形成に用いる球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されない程度であればよい。粒子径6μm以上8μm以下のトナーのシェル層の状態がこのような状態であれば、トナーに含まれるトナー粒子の殆どで、コア粒子の表面が露出しないようにシェル層が形成されている。シェル層の外表面の状態を、走査型電子顕微鏡観察を用いて確認する場合の、トナー粒子の粒子径とは、電子顕微鏡画像上のトナーの投影面積から算出される円相当径である。
図1に示されるシェル層の好適な態様では、トナー101は、トナーコア粒子102の全表面がシェル層103によって被覆されている。また、シェル層103は、その外表面が平滑であるようにトナーコア粒子102の全表面を被覆しているため、トナー101を高温で保存する際に、離型剤のような成分のトナー101表面への染み出しが生じにくい。
さらに、トナー101は、シェル層103の内部に空隙(クラック)105が存在するため、トナーを被記録媒体上に定着させる際に、トナーに加わる圧力によって、クラックを基点とするシェル層の破壊が起こりやすい。このことによって、トナー101は、トナーコア粒子102に含まれる結着樹脂や離型剤のような成分の軟化又は溶融が速やかに進行するため、従来より低い温度で、トナーを被記録媒体上に定着することができる。
[トナー材料]
本発明のトナーは、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆するシェル層と、からなる。トナーコア粒子は、結着樹脂中に、必要に応じ、離型剤、電荷制御剤、着色剤、磁性粉のような成分を含んでいてもよい。また、本発明のトナーは所望によりその表面が、外添剤を用いて処理されたものであってもよい。さらに、本発明のトナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。
以下、本発明の静電潜像現像用トナーを構成する必須、又は任意の成分である、結着樹脂、離型剤、電荷制御剤、着色剤、磁性粉、シェル層を形成する樹脂微粒子、外添剤、及び本発明のトナーを2成分現像剤として使用する場合に用いるキャリアと、本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法とについて順に説明する。
〔結着樹脂〕
本発明のトナーにおけるトナーコア粒子は、結着樹脂を含む。トナーコア粒子に含まれる結着樹脂としては、従来からトナー用の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、及びスチレン−ブタジエン樹脂のような熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、結着樹脂中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、トナーの用紙に対する定着性の面から、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましい。以下、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂について説明する。
ポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体でもよく、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーの具体例としては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、及びイソブチレンのようなエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、及び弗化ビニルのようなハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、及び酪酸ビニルのようなビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、及びメタアクリル酸ブチルのような(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、及びアクリルアミドのような他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、及びビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、及びメチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、及びN−ビニルピロリデンのようなN−ビニル化合物が挙げられる。これらの共重合モノマーは、2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合できる。
ポリエステル樹脂は、2価又は3価以上のアルコール成分と2価又は3価以上のカルボン酸成分とを縮重合や共縮重合させることで得られるものを使用することができる。ポリエステル樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリテトラメチレングリコールのようなジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、及びポリオキシプロピレン化ビスフェノールAのようなビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンのような3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、或いはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、及びイソドデセニルコハク酸のようなアルキル又はアルケニルコハク酸のような2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、及びエンポール三量体酸のような3価以上のカルボン酸が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステルのようなエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、70℃以上130℃以下であることが好ましく、80℃以上120℃以下がより好ましい。
本発明のトナーが、磁性1成分トナーとして用いられる場合、結着樹脂として、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、及びエポキシ基(グリシジル基)からなる群より選択される1以上の官能基を分子内に有する樹脂を使用するのが好ましい。これらの官能基を分子内に有する結着樹脂を用いることによって、結着樹脂中での磁性粉、電荷制御剤のような成分の分散性を向上させることができる。なお、これらの官能基の有無は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて確認することができる。また、樹脂中のこれらの官能基の量は、滴定のような公知の方法を用いて測定することができる。
結着樹脂としては、用紙に対する定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。架橋剤や熱硬化性樹脂を添加して、結着樹脂内に、一部架橋構造を導入することによって、トナーの定着性を低下させることなく、トナーの耐熱保存性、耐久性を向上させることができる。なお、熱硬化性樹脂を用いる場合は、ソックスレー抽出器を用いて抽出される結着樹脂の架橋部分量(ゲル量)は、結着樹脂の質量に対して、10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、40℃以上70℃以下が好ましい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。ガラス転移点が低すぎる場合、トナーの耐熱保存性が低下する傾向がある。
結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、結着樹脂の比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、結着樹脂の吸熱曲線を測定することによって結着樹脂のガラス転移点を求めることができる。結着樹脂10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分という測定条件で、常温常湿下で測定して得られた結着樹脂の吸熱曲線より結着樹脂のガラス転移点を求めることができる。
結着樹脂の質量平均分子量(Mw)は、20,000以上300,000以下が好ましく、30,000以上2,000,000以下がより好ましい。なお、結着樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、標準ポリスチレン樹脂を用いて予め作成しておいた検量線を用いて求めることができる。
また、結着樹脂がポリスチレン系樹脂である場合、結着樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーのような手段で測定される分子量分布上で、低分子量領域と、高分子量領域とにそれぞれピークを有するのが好ましい。具体的には、低分子量領域のピークを分子量3,000以上20,000以下の範囲に有するのが好ましく、高分子量領域のピークを分子量300,000以上1,500,000以下の範囲に有するのが好ましい。また、このような分子量分布のポリスチレン系樹脂について、数平均分子量(Mn)と質量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)は、10以上が好ましい。結着樹脂が、分子量分布において、低分子量領域のピークと高分子量領域のピークをこのような範囲に有することで、低温定着性に優れ、高温オフセットを抑制できるトナーを得ることができる。
〔離型剤〕
トナーコア粒子は、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含むのが好ましい。トナーコア粒子に含むことができる離型剤としては、ワックスが好ましい。ワックスの例としては、カルナウバワックス、合成エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス、ライスワックスが挙げられる。これらの離型剤は2種以上を組み合わせて使用できる。このような離型剤をトナーに添加することによって、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
結着樹脂としてポリエステル樹脂が用いられる場合は、相溶性の観点から、離型剤として、カルナバワックス、合成エステルワックス、及びポリエチレンワックスからなる群より選択される1以上の離型剤を用いるのが好ましい。また、結着樹脂としてポリスチレン系樹脂が用いられる場合は、同じく相溶性の観点から、離型剤として、フィッシャートロプシュワックス、及び/又はパラフィンワックスを用いるのが好ましい。
なお、フィッシャートロプシュワックスは、一酸化炭素の接触水素化反応であるフィッシャートロプシュ反応を利用して製造される、イソ(iso)構造分子や側鎖が少ない、直鎖炭化水素化合物である。
フィッシャートロプシュワックスの中でも、質量平均分子量が1,000以上であり、且つ、DSC測定を用いて観測される吸熱ピークのボトム温度が、100℃以上120℃以下の範囲内であるものがより好ましい。このようなフィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社から入手できるサゾールワックスC1(吸熱ピークのボトム温度:106.5℃)、サゾールワックスC105(吸熱ピークのボトム温度:102.1℃)、及びサゾールワックスSPRAY(吸熱ピークのボトム温度:102.1℃)が挙げられる。
離型剤の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、形成画像におけるオフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー粒子同士が融着しやすく、トナーの耐熱保存性が損なわれる場合がある。
〔電荷制御剤〕
トナーコア粒子は、トナーの、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で、電荷制御剤を含むのが好ましい。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
トナーコア粒子に含有させることができる電荷制御剤として、従来からトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択して使用できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、及びキノキサリンのようなアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディープブラック3RLのようなアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、及びニグロシン誘導体のようなニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、及びニグロシンZのようなニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライドのような4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な帯電立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
官能基として4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル樹脂、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、及びカルボキシル基を有するポリエステル樹脂が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系樹脂について、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、及びメタアクリル酸iso−ブチルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、及びジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートが挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びN−メチロール(メタ)アクリルアミドのようなヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸系の金属錯体、芳香族モノカルボン酸、及び芳香族ポリカルボン酸、及びその金属塩、無水物、エステル類、並びにビスフェノールのようなフェノール誘導体類が挙げられる。これらの中でも有機金属錯体、キレート化合物が好ましい。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナートのようなアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロムのようなサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が特に好ましい。これらの負帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対し、0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させにくいため、形成画像の画像濃度が所望する値を下回ったり、画像濃度を長期にわたって維持することが困難になったりすることがある。また、トナーコア中に電荷制御剤が均一に分散し難いため、形成画像にかぶりが生じやすくなったり、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなったりする。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化に起因する、高温高湿下での帯電不良に起因する形成画像における画像不良や、トナー成分による潜像担持部の汚染が起こりやすくなる。
〔着色剤〕
トナーコア粒子は、必要に応じて着色剤を含んでいてもよい。トナーコア粒子に含むことができる着色剤として、トナーの色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加可能な好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、及びアニリンブラックのような黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネープルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モノアゾイエロー、及びジアゾイエローのような黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、及びインダスレンブリリアントオレンジGKのような橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、及びモノアゾレッドのような赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、及びメチルバイオレットレーキのような紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、及びフタロシアニンブルーのような青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、及びファイナルイエローグリーンGのような緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、及び硫化亜鉛のような白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、及びアルミナホワイトのような体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
着色剤の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
なお、熱可塑性樹脂のような樹脂材料中に予め着色剤が分散されたマスターバッチとして、着色剤を用いることもできる。着色剤をマスターバッチとして用いる場合、マスターバッチに含まれる樹脂は、結着樹脂と同種の樹脂であるのが好ましい。
〔磁性粉〕
本発明の静電潜像現像用トナーは、所望により、トナーコア粒子において、結着樹脂中に磁性粉を配合することによって、磁性1成分現像剤とすることができる。トナーを磁性1成分現像剤とする場合に用いる磁性粉としては、フェライト、マグネタイトのような鉄;コバルト、ニッケルのような強磁性金属;鉄、及び/又は強磁性金属を含む合金;鉄、及び/又は強磁性金属を含む化合物;熱処理のような強磁性化処理を施された強磁性合金;二酸化クロムが挙げられる。
磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下が好ましく、0.1μm以上0.5μm以下がより好ましい。このような範囲の粒子径の磁性粉を用いる場合、結着樹脂中に磁性粉を均一に分散させやすい。
磁性粉は、結着樹脂中での分散性を改良する目的で、チタン系カップリング剤やシラン系カップリング剤のような表面処理剤を用いて表面処理されたものを用いることができる。
磁性粉の使用量は、トナーコア粒子の全質量に対して、35質量%以上65質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下がより好ましい。磁性粉の使用量が過多である場合、長期間連続して画像を形成する場合に所望する画像濃度の画像を形成しにくくなったり、定着性が極度に低下したりする場合がある。また、磁性粉の使用量が過少である場合、形成画像にかぶりが発生しやすかったり、長期間にわたり印刷する場合に画像濃度が低下してしまう場合がある。
〔樹脂微粒子〕
本発明の静電潜像現像用トナー中のシェル層を形成する樹脂微粒子は、トナーコア粒子を被覆できる限り特に限定されない。所定の構造のシェル層を形成しやすいことから、シェル層を形成する樹脂微粒子は、不飽和結合を有するモノマーの重合体であることが好ましい。また、樹脂微粒子には、ソープフリー乳化重合によって合成可能な樹脂が含まれていること好ましい。ソープフリー乳化重合によって樹脂微粒子を製造すれば、粒子径が揃っており、界面活性剤を含まないか、殆ど含まない樹脂微粒子を調製できるからである。
不飽和結合を有するモノマーは、シェル層として十分な物理的性質を有する樹脂を合成可能なモノマーであれば特に限定されない。不飽和結合を有するモノマーとしては、ビニル系単量体が好ましい。ビニル系単量体に含まれるビニル基は、α位をアルキル基で置換されていてもよい。また、ビニル系単量体に含まれるビニル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ビニル基が有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。また、ビニル基が有していてもよいハロゲン原子は、塩素原子、又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることがより好ましい。
ビニル系単量体は、含窒素極性官能基を有するものであってもよく、フッ素置換された炭化水素基を有するものであってもよい。樹脂を製造する際に、含窒素極性官能基を有するビニル系単量体を用いる場合、得られる樹脂に正帯電性を付与することができる。また、樹脂を製造する際に、フッ素置換された炭化水素基を有するビニル系単量体を用いる場合、得られる樹脂に負帯電性を付与することができる。シェル層の材質として、上記の正帯電性の樹脂、又は負帯電性の樹脂を用いる場合、トナーコア粒子中に電荷制御剤を配合しないか、トナーコア粒子中への電荷制御剤の配合量を減らしても、所望する帯電量に帯電可能なトナーを得ることができる。
ビニル系単量体のうち、含窒素極性官能基、及びフッ素置換された炭化水素基を持たない単量体の具体例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、及び3,4−ジクロロスチレンのようなスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、及びイソブチレンのようなエチレン性不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、及びフッ化ビニルようなのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、及び酪酸ビニルようなのビニルエステル類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、及びα−クロロアクリル酸メチルのような(メタ)アクリル酸エステル類;アクリロニトリルのような(メタ)アクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、及びビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、及びメチルイソプロペニルケトンのようなビニルケトン類;ビニルナフタリン類が挙げられる。これらの中でも、スチレン類が好ましく、スチレンがより好ましい。これらのモノマーは2種以上を組み合わせて使用できる。
含窒素極性官能基を持つビニル系単量体の例としては、N−ビニル化合物や、アミノ(メタ)アクリル系単量体や、メタクリロニトリル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N−ビニル化合物の具体例としては、N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、及びN−ビニルピロリドンのようなN−ビニル化合物が挙げられる。また、アミノ(メタ)アクリル系単量体の好適な例としては、下式で表される化合物が挙げられる。
CH=C(R)−(CO)−X−N(R)(R
(式中、Rは水素又はメチル基を示す。R及びRは、それぞれ水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。Xは−O−、−O−Q−又は−NHを示す。Qは炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン基、又はこれらの基の組合せを示す。)
上記式中、R及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基(ラウリル基)、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基(ステアリル基)、n−ノナデシル基、及びn−イコシル基が挙げられる。
上記式中、Qの具体例としては、メチレン基、1,2−エタン−ジイル基、1,1−エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル、プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基、ヘプタン−1,7−ジイル基、オクタン−1,8−ジイル基、ノナン−1,9−ジイル基、デカン−1,10−ジイル基、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基、及びベンジル基に含まれるフェニル基の4位から水素を除いた二価基が挙げられる。
上記式で表されるアミノ(メタ)アクリル系単量体の具体例としては、N,N−ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−メチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート、4−(N,N−ジメチルアミノ)ブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジエチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジ−n−プロピルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル)メチルベンジル(メタ)アクリレート、(p−N−ラウリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、(p−N−ステアリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジ−n−プロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジメチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジエチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジ−n−プロピルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N,N−ジ−n−ブチルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、(p−N−ラウリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミド、及び(p−N−ステアリルアミノフェニル)メチル(メタ)アクリルアミドのような単量体が挙げられる。
フッ素置換された炭化水素基を持つビニル系単量体は、含フッ素樹脂の製造に使用されるものであれば特に限定されない。フッ素置換された炭化水素基を有するビニル系単量体の具体例としては、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロアミルアクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシルアクリレートのようなフルオロアルキル(メタ)アクリレート類、トリフルオロクロルエチレン、フッ化ビニリデン、三フッ化エチレン、四フッ化エチレン、トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレンが挙げられる。これらの中でも、フルオロアルキル(メタ)アクリレート類が好ましい。
不飽和結合を有するモノマーの付加重合方法としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合のような任意の方法を選択できる。これらの製造方法の中では、粒子径のそろった樹脂微粒子を得やすいことから、乳化重合法が好ましい。
以上説明したビニル系単量体の重合に使用できる重合開始剤としては過硫酸カリウム、過酸化アセチル、過酸化デカノイル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、及び2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルのような公知の重合開始剤を使用できる。これらの重合開始剤の使用量は、モノマーの総質量に対して0.1質量%以上15質量%以下が好ましい。
上記のビニル系単量体の重合方法としては、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合のような任意の方法を選択できる。これらの製造方法の中では、粒子径のそろった樹脂微粒子を得やすいことから、乳化重合法が好ましい。
樹脂微粒子を乳化重合法によって製造する方法としては、乳化剤(界面活性剤)を使用しないソープフリー乳化重合法が好ましい。ソープフリー乳化重合法では、水相で発生した開始剤のラジカルが水相にわずかに溶けているモノマーを結合させてゆき、重合が進むにつれて、不溶化した樹脂微粒子の粒子核が形成される。ソープフリー乳化重合法を用いれば、粒度分布の幅が狭い樹脂微粒子が得られ、また、樹脂微粒子の平均粒子径を0.03μm以上1μm以下の範囲に制御しやすい。このため、ソープフリー乳化重合法用いれば、粒子径が均一な樹脂微粒子が得られる。
ソープフリー乳化重合法で得られる粒子径の均一な樹脂微粒子を用いることで、トナーコア粒子に対する樹脂微粒子の付着力のバラツキを減らすことができるので、厚さが均一であり均質なシェル層を形成できる。また、ソープフリー乳化重合法によって製造される樹脂微粒子は、乳化剤(界面活性剤)を用いることなく形成されるので、ソープフリー乳化重合法によって得られる樹脂微粒子を用いることによって、湿気の影響を受けにくいシェル層を形成できる。
樹脂微粒子は、必要に応じて、前述の着色剤、及び電荷制御樹脂のような成分を含有してもよい。樹脂微粒子に十分な量の電荷制御剤を含有させる場合には、トナーコア粒子に電荷制御剤を含有させなくてもよい。
樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点は、45℃以上90℃以下が好ましく、50℃以上80℃以下がより好ましい。
樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点が低過ぎる場合、樹脂微粒子が変形しすぎ、シェル層の内部にトナーコア粒子に対して略垂直方向のクラックが形成されにくい。この場合、定着時にトナーに圧力が印加されても、シェル層の破壊が起こりにくいため、従来より低い温度で、トナーを被記録媒体上に定着させられない場合がある。また、樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点が低過ぎる場合は、高温でトナーを保存する際に、トナーが凝集することがある。
一方、樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点が高過ぎる場合、所望する程度の樹脂微粒子の変形が起こらず、所定の形状のシェル層が形成できない場合がある。この場合、樹脂微粒子間に隙間が残るため、高温でトナーを保存する際に、トナーコア粒子に含まれる離型剤のような成分の、トナー表面への染み出しが生じることがる。
樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂微粒子を構成する樹脂の比熱の変化点から求めることができる。以下、示差走査熱量計(DSC)を用いるガラス転移点の測定方法について説明する。
<ガラス転移点測定方法>
測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−200を用い、JIS K 7121−1987に準拠した方法によって、樹脂微粒子を構成する樹脂の吸熱曲線を測定することで樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点を求めることができる。樹脂微粒子を構成する樹脂10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用する。測定温度範囲25℃以上200℃以下、昇温速度10℃/分という条件で、常温常湿下で測定して得られた樹脂微粒子を構成する樹脂の吸熱曲線より樹脂微粒子を構成する樹脂のガラス転移点を求めることができる。
樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点は、100℃以上250℃以下が好ましく、110℃以上240℃以下がより好ましい。また、樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点は、トナーコア粒子に含まれる結着樹脂の軟化点よりも高いのが好ましく、10〜140℃高いのがより好ましい。樹脂微粒子を構成する樹脂のの軟化点をこのような範囲とすることで、樹脂微粒子がトナーコア粒子に埋め込まれる際に、樹脂微粒子のトナーコア粒子と接触する部分が変形しにくいため、シェル層の内表面に、シェル層を形成する前の樹脂微粒子の形状に由来する凸部が形成されやすい。
樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点は、フローテスターを用いて測定することができる。以下、フローテスターを用いる樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点の測定方法について説明する。
<軟化点測定方法>
高架式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点(F1/2)の測定を行う。測定試料作成用の成形型に樹脂微粒子を構成する樹脂約1.8gを充填し、4MPaの圧力を印加して、直径1cm長さ2cmの円柱状の樹脂微粒子のペレットを作成する。得られたペレットをフローテスターにセットし、プランジャー荷重:30kg、ダイ穴直径:1mm、ダイ長さ:1mm、昇温速度4℃/分、測定温度範囲70℃以上160℃以下という測定条件で樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点(Tm)を測定する。フローテスターの測定によって得られた、温度(℃)とストローク(mm)とに関するS字カーブより、樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点(F1/2)を読み取る。
樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点(F1/2)の読み取り方を、図2を用いて説明する。ストロークの最大値をSとし、低温側のベースラインのストローク値をSとする。S字カーブ上で、ストロークの値が(S+S)/2となる温度を、樹脂微粒子を構成する樹脂の軟化点(F1/2)とする。
樹脂微粒子の平均粒子径は、30nm以上1000nm以下が好ましく、40nm以上700nm以下がより好ましく、45nm以上500nm以下が特に好ましく、45nm以上300nm以下が最も好ましい。このような粒子径の樹脂微粒子を用いる場合、トナーコア粒子の表面を、樹脂微粒子からなる単層で均一に被覆しやすく、所望の構造のシェル層を形成しやすい。
平均粒子径が過小である樹脂微粒子を用いる場合、トナーコア粒子表面に好ましい厚さのシェル層を形成できず、耐熱保存性に優れるトナーを得なれない場合がある。一方、平均粒子径が過大である樹脂微粒子を用いる場合、トナーコア粒子表面に均一に樹脂微粒子を付着させられず所定の構造のシェル層を形成できないことで、耐熱保存性に優れるトナーが得られない場合がある。
樹脂微粒子の平均粒子径は、重合条件の調整や、公知の粉砕方法、分級方法のような方法を用いて調整することができる。樹脂微粒子の平均粒子径については、フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて撮影した電子顕微鏡写真から、50個以上の樹脂微粒子の粒子径を測定して、個数平均粒径を算出することができる。
樹脂微粒子を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5,000以上100,000以下が好ましい。樹脂微粒子を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる質量基準の分子量分布から求めることができる。前記樹脂微粒子を構成する樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される質量基準の分子量分布中の、最大ピークでの分子量(M)は、5,000以上100,000以下が好ましい。
Mw、及びMpが過小である樹脂微粒子を構成する樹脂を用いる場合、樹脂微粒子が過度に変形することがあるため、シェル層の内部にトナーコア粒子に対して略垂直方向のクラックが形成されない場合がある。この場合、定着時にトナーに圧力が印加されても、シェル層の破壊が起こりにくいため、トナーを被記録媒体上に定着させられない場合がある。また、樹脂微粒子を構成する樹脂のMw、及びMpが過小である樹脂微粒子を構成する樹脂を用いて製造されたトナーを用いる場合は、高温でトナーを保存する際に、トナーが凝集することがる。
一方、Mw、及びMpが過大である樹脂微粒子を構成する樹脂を用いる場合、所望する程度の樹脂微粒子の変形が起こらず、所望する形状のシェル層が形成できないことがある。この場合、樹脂微粒子間に隙間が残るため、高温でトナーを保存する際に、トナーコア粒子に含まれる離型剤のような成分の、トナー表面への染み出しが生じることがある。また、Mw、及びMpが過大である樹脂微粒子を構成する樹脂を用いて製造されたトナーを用いる場合、トナーを定着する際に樹脂微粒子から形成されたシェル層が破壊されにくい場合がある。このため、シェル層がトナーの定着を阻害する場合があり、トナーを被記録媒体上に良好に定着できないことがある。
以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いる質量基準の分子量分布の測定方法について説明する。
<分子量分布の測定方法>
室温で樹脂微粒子10mgをテトラヒドロフラン(THF)5mLに溶解させる。得られた溶液を、目開き0.45μmの非水系クロマトディスクを用いて濾過してサンプル溶液を得る。得られたサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定を行う。
<測定条件>
装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK−GEL Super HZM−H(東ソー株式会社製) 2本
TSK gurdcolumn Super HZ−H(東ソー株式会社製) 1本
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.200mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
検量線:標準試料(TSK standard POLYSTYREN(東ソー株式会社製))から、F−380、F−128、F−40、F−10、F−4、F−1、及びA−2500を選択して作成する。
樹脂微粒子を構成する樹脂について、溶融粘度が1.0×10Pa・sであるときの温度(T)が110℃以上160℃以下であり、且つ、溶融粘度が1・0×10Pa・sであるときの温度(T)が130℃以上170℃以下であるのが好ましい。
及びTが低過ぎる樹脂微粒子を構成する樹脂を用いる場合、樹脂微粒子が過度に変形するため、シェル層の内部にトナーコア粒子に対して略垂直方向のクラックが形成できないことがある。この場合、定着時にトナーに圧力が印加されても、シェル層の破壊が起こりにくいため、トナーを被記録媒体上に良好に定着できないことがある。また、T及びTが低過ぎる樹脂微粒子を構成する樹脂を用いて製造されたトナーを用いる場合、高温でトナーを保存する際に、トナーが凝集することがある。
一方、T及びTが高過ぎる樹脂微粒子を構成する樹脂を用いる場合、所望する程度の樹脂微粒子の変形が起こらず、所定の形状のシェル層が形成できないことがある。この場合、樹脂微粒子間に隙間が残るため、高温でトナーを保存する際に、トナーコア粒子に含まれる離型剤のような成分の、トナー表面への染み出しが生じることがある。また、T及びTが高過ぎる樹脂微粒子を構成する樹脂を用いて製造されたトナーを用いる場合、トナーを定着する際に樹脂微粒子から形成されたシェル層が破壊されにくいことがある。このため、シェル層がトナーの定着を阻害する場合があり、トナーを被記録媒体上に良好に定着できない場合がある。
及びTは、フローテスターを用いて測定することができる。以下、フローテスターを用いるT及びTの測定方法は、測定条件を適宜変更して、上述のフローテスターを用いる樹脂微粒を構成する樹脂の軟化点の測定方法と同様の方法を用いることができる。
樹脂微粒子の使用量は、トナーコア粒子100質量部に対して1質量部以上20質量部以下が好ましく、3質量部以上15質量部以下がより好ましい。樹脂微粒子の使用量が過少であると、トナーコア粒子の全表面が樹脂微粒子によって被覆できない場合がある。トナーコア粒子の全表面が樹脂微粒子によって被覆できない場合、高温での保存時にトナーが凝集することがあるので、耐熱保存性が低下する場合がある。樹脂微粒子の使用量が過多であると、シェル層が厚くなることがある。この場合、定着性に優れるトナーを得られないことがある。
〔外添剤〕
本発明のトナーは、トナーコア粒子の表面にシェル層を形成した後に、所望により外添剤を用いて処理することができる。以下、外添剤を用いて処理される粒子を、「トナー母粒子」とも記載する。
外添剤としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムのような金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
外添剤の粒子径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。
外添剤の使用量は、トナーコア粒子の表面にシェル層を形成して製造したトナー母粒子の質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、0.2質量%以上5質量%以下がより好ましい。外添剤の使用量が過少であると、トナーの疎水性が低下しやすい。その結果、高温高湿環境下で空気中の水分子の影響を受けやすくなり、トナーの帯電量の極端な低下に起因した形成画像の画像濃度の低下、及びトナーの流動性の低下のような問題が起こりやすくなる。また、外添剤の使用量が過多であると、トナーの過度のチャージアップに起因して画像濃度低下を招くおそれがある。
〔キャリア〕
本発明の静電潜像現像用トナーは、所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、キャリアとして磁性キャリアを用いるのが好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂によって被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルトのような粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、及びアルミニウムのような金属との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、及び鉄−コバルト合金のような粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、及びニオブ酸リチウムのようなセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、及びロッシェル塩のような高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリアが挙げられる。
キャリアを被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、及びアミノ樹脂が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、電子顕微鏡を用いて測定される粒子径で、20μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
キャリアの見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2400kg/m以上3000kg/m以下が好ましい。
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をこのような範囲とすることによって、形成画像の画像濃度を所望する濃度に維持したり、トナー飛散を抑制することによって画像形成装置内部のトナーによる汚染や転写紙へのトナーの付着を抑制したりできる。
[静電潜像現像用トナーの製造方法]
以上説明した静電潜像現像用トナーの製造方法は、トナーコア粒子とシェル層とが、それぞれ所定の構造となるように形成される限り特に限定されない。また、必要に応じて、シェル層によって被覆されたトナーコア粒子をトナー母粒子として用いて、トナー母粒子の表面に、外添剤を付着させる外添処理を施してもよい。以上説明した静電潜像現像用トナーの好適な製造方法として、以下に、トナーコア粒子の製造方法と、シェル層の形成方法と、外添処理方法とを順に説明する。
〔トナーコア粒子の製造方法〕
トナーコア粒子を製造する方法としては、結着樹脂中に着色剤、離型剤、電荷制御剤、磁性粉のような任意の成分を良好に分散できる方法である限り特に限定されない。トナーコア粒子の好適な製造方法の具体例としては、結着樹脂と、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉のような成分とを混合機を用いて混合した後、一軸又は二軸押出機のような混練機を用いて結着樹脂と結着樹脂に配合される成分とを溶融混練し、冷却された混練物を粉砕・分級する方法が挙げられる。トナーコア粒子の平均粒子径は、一般的には5μm以上10μm以下が好ましい。
〔シェル層の形成方法〕
シェル層は、球状の樹脂微粒子を用いて形成される。そして、より具体的には、
I)球状の樹脂微粒子を、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に重ならないように、トナーコア粒子の表面に付着させて、トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層を形成する工程、及び
II)樹脂微粒子層の外表面への外力の印加することによって、樹脂微粒子層中の樹脂微粒子を変形させることによって、樹脂微粒子層の外表面を平滑化させてシェル層を形成する工程、
を含む方法を用いて形成される。
このように、樹脂微粒子を用いてシェル層を形成させる方法としては、乾式条件でトナーコア粒子と樹脂微粒子とを混合できる混合装置を用いる方法が好ましい。具体例には、トナーコア粒子の表面に樹脂微粒子を付着させつつ、表面に樹脂微粒子が付着したトナーコア粒子に対して機械的外力を与えることができる混合装置を用いて、トナーコア粒子の表面にシェル層を形成させる方法が挙げられる。機械的外力としては、混合装置内の狭小な空間をトナーコア粒子が高速で移動する際に、トナーコア粒子同士のずりや、トナーコア粒子と、装置内壁、ローター、又はステーターとの間に生じるずりによって、トナーコア粒子に与えられる剪断力や、トナーコア粒子同士の衝突又はトナーコア粒子の装置内壁との衝突によって、トナーコア粒子に与えられる撃力が挙げられる。
より具体的な方法について説明する。まず、混合装置内で、トナーコア粒子と、樹脂微粒子とを、混合することによって、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に樹脂微粒子が重ならないように、トナーコア粒子の表面に樹脂微粒子を均一に付着させる。粒子径の大きなトナーコア粒子と、粒子径の小さな樹脂微粒子とが接触する場合、微視的には平面とみなせるトナーコア粒子の表面と、樹脂微粒子の表面との間で、面と面との接触が起こるため、樹脂微粒子はトナーコア粒子に付着しやすい。他方、樹脂微粒子同士が接触する場合、二つの樹脂微粒子の曲面である表面が接触するため、点と点との接触が起こる。このため、トナーコア粒子に樹脂微粒子を付着させる過程で、トナーコア粒子表面に付着する樹脂微粒子にさらに樹脂微粒子が付着しても、混合装置を用い、樹脂微粒子が付着したトナーコア粒子に与えられる機械的外力によって、樹脂微粒子に付着する樹脂微粒子は、樹脂微粒子から容易に剥離する。このような理由から、以下説明する方法では、トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に樹脂微粒子が重ならないように、トナーコア粒子が樹脂微粒子によって被覆される。
樹脂微粒子をトナーコア粒子に付着させる際、トナーコア粒子表面の樹脂微粒子層に、前述の機械的外力が加えられる。トナーコア粒子表面の樹脂微粒子層に、機械的外力が加えられることによって、樹脂微粒子がトナーコア粒子に埋め込まれつつ変形し、トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層外表面が平滑化され、樹脂微粒子層がシェル層に変化する。このように、シェル層の外表面では平滑化が進行するのに対し、シェル層内部では、樹脂微粒子間の境界面が残されたままとなる。このため、樹脂微粒子を用いて形成されるシェル層の内部には、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが形成される。
このとき、トナーコア粒子の材質がシェル層を形成する樹脂微粒子と同等の硬さか、やや硬い材質である場合、シェル層の内表面(トナーコア粒子側の表面)が平滑になる場合がある。他方、トナーコア粒子の材質がシェル層を形成する樹脂微粒子よりも柔らかい材質である場合、樹脂微粒子がトナーコア粒子に埋め込まれる際に、樹脂微粒子のトナーコア粒子と接触する部分が変形しにくいため、シェル層の内表面に、シェル層に変化する前の微粒子の形状に由来する凸部が形成されやすい。なお、この場合、凸部は、シェル層が備える2つのクラック間に形成される。
上記方法では、機械的外力が弱いと、所望する程度の樹脂微粒子の変形が起こらず、所望する形状のシェル層を形成できない場合がある。シェル層の形成に用いる装置によって、所望する形状のシェル層を形成するための条件は異なるが、樹脂微粒子によって被覆されたトナーコア粒子に与えられる機械的外力が強くなるように、段階的に運転条件を変更し、各条件で得られるトナーのシェル層の構造を確認することによって、種々の装置についての、所望する形状のシェル層を形成するための好適な条件を定めることができる。しかし、機械的外力が強すぎる場合、樹脂微粒子が激しく変形しすぎ、シェル層の内部にトナーコア粒子に対して略垂直方向のクラックが形成されなかったり、機械的外力が熱に変換されることによって、トナーコア粒子や、樹脂微粒子の溶融が生じたりするような不具合が生じる場合がある。
樹脂微粒子によってトナーコア粒子を被覆しつつ、樹脂微粒子によって被覆されたトナーコア粒子に対して機械的外力を与えることができる装置としては、ハイブリダイザーNHS−1(株式会社奈良機械製作所製)、コスモスシステム(川崎重工業株式会社製)、ヘンシェルミキサー(日本コークス工業株式会社製)、マルチパーパスミキサー(日本コークス工業株式会社製)、コンポジ(日本コークス工業株式会社製)、メカノフュージョン装置(ホソカワミクロン株式会社製)、メカノミル(岡田精工株式会社製)、及びノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)が挙げられる。
〔外添処理方法〕
外添剤を用いるトナー母粒子の処理方法は特に限定されず、従来知られている方法に従ってトナー母粒子を処理できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子中に埋没しないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサーのような混合機を用いて、外添剤を用いるトナー母粒子の処理が行われる。
以上説明した、本発明の静電潜像現像用トナーは、定着性、及び耐熱保存性に優れているので、種々の画像形成装置で好適に使用できる。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
[製造例1]
(ポリエステル樹脂の製造)
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1960g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780g、ドデセニル無水コハク酸257g、テレフタル酸770g、及び酸化ジブチル錫4gを反応容器に仕込んだ。次に、反応容器内を窒素雰囲気とし、撹拌しながら反応容器内部の温度を235℃まで上昇させた。次いで、同温度で8時間反応を行った後、反応容器内を8.3kPaに減圧して1時間反応を行った。その後、反応混合物を180℃に冷却し、所望の酸価となるようにトリメリット酸無水物を反応容器に添加した。次いで、10℃/時間の速度で反応混合物の温度を210℃まで昇温させて、同温度で反応を行った。反応終了後、反応容器の内容物を取り出し、冷却してポリエステル樹脂を得た。
[製造例2]
(トナーコア粒子の製造)
結着樹脂(製造例1で得たポリエステル樹脂)89質量部、離型剤(ポリプロピレンワックス 660P(三洋化成株式会社製))5質量部、電荷制御剤(P−51(オリヱント化学工業株式会社製))1質量部、及び着色剤(カーボンブラック MA100(三菱化学株式会社製))5質量部を、混合機を用いて混合し、混合物を得た。次に、混合物を、2軸押出機を用いて溶融混練して混練物を得た。混練物を、粉砕機(ロートプレックス(株式会社東亜機械製作所製))を用いて粗粉砕した後に、粗粉砕物を、機械式粉砕機(ターボミル(ターボ工業株式会社製))を用いて微粉砕して微粉砕物を得た。分級機(エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製))を用いて、微粉砕物を分級して、体積平均粒子径(D50)が7.0μmのトナーコア粒子を得た。トナーコア粒子の体積平均粒子径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマンコールター社製)を用いて測定した。
[製造例3]
(樹脂微粒子Aの製造)
撹拌装置、温度計、冷却管、及び窒素導入装置を備えた1000mLの反応容器に、蒸留水450mLと、ドデシルアンモニウムクロライド0.52gとを仕込んだ。反応器の内容物を、窒素雰囲気下で撹拌しながら、反応容器内部の温度を80℃まで上昇させた。昇温後、反応容器に、濃度1質量%の過硫酸カリウム(重合開始剤)水溶液120gとイオン交換水200gとを加えた。次いで、アクリル酸ブチル15g、メタクリル酸メチル165g、及びn−オクチルメルカプタン(連鎖移動剤)3.6gからなる混合物を1.5時間かけて反応容器に滴下した後、さらに2時間かけて重合を行い、樹脂微粒子の水性分散液を得た。得られた樹脂微粒子の水性分散液を、フリーズドライを用いて乾燥して、樹脂微粒子を得た。樹脂微粒子の個数平均粒子径は、102nmであった。また、樹脂微粒子Aのガラス転移点(Tg)は49.6℃であり、軟化点は、188℃であった。
なお、樹脂微粒子の個数平均粒子径の測定方法は、まず、フィールドエミッション走査電子顕微鏡(JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて、倍率100,000倍の樹脂微粒子の写真を撮影した。撮影した電子顕微鏡写真を必要に応じてさらに拡大し、50個以上の樹脂微粒子の粒径を定規、ノギスを用いて測定し、その測定値から樹脂微粒子の個数平均粒径を算出した。
(樹脂微粒子B〜Eの製造)
表1に記載の量のアクリル酸ブチル、及びメタクリル酸メチルを用いる他は、樹脂微粒子Aと同様にして、樹脂微粒子B〜Eを得た。得られた樹脂微粒子B〜Eの個数平均粒子径、ガラス転移点、及び軟化点を表1に記す。
(樹脂微粒子F〜Iの製造)
表2に記載の使用量のドデシルアンモニウムクロライドを用いる他は、樹脂微粒子Aと同様にして、樹脂微粒子F〜Iを得た。得られた樹脂微粒子F〜Iの個数平均粒子径を表2に記す。
(樹脂微粒子J〜Mの製造)
アクリル酸ブチルの使用量を140gに変更することと、165gのメタクリル酸メチルの使用量を30gに変更することと、n−オクチルメルカプタンの使用量を表3に記載の量に変更することとの他は、樹脂微粒子Aと同様にして、樹脂微粒子J〜Mを得た。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いる、下記の分子量分布の測定方法に従って、樹脂微粒子A、及びJ〜Mを構成する樹脂の質量基準の分子量分布を測定した。測定した分子量分布から、樹脂微粒子A、及びJ〜Mの樹脂の質量平均分子量(Mw)と、分子量分布中の最大ピークの分子量(M)とを求めた。樹脂微粒子A、及びJ〜Mを構成する樹脂のMwと、Mとを表3に記す。また、得られた樹脂微粒子J〜Mの個数平均粒子径を表3に記す。
<分子量分布の測定方法>
室温で樹脂微粒子10mgをテトラヒドロフラン(THF)5mLに溶解させた。得られた溶液を、目開き0.45μmの非水系クロマトディスクを用いて濾過してサンプル溶液を得た。得られたサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定を行った。
(測定条件)
装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
カラム:TSK−GEL Super HZM−H(東ソー株式会社製) 2本
TSK gurdcolumn Super HZ−H(東ソー株式会社製) 1本
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.200mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
検量線:標準試料(TSK standard POLYSTYREN(東ソー株式会社製))から、F−380、F−128、F−40、F−10、F−4、F−1、及びA−2500を選択して作成した。
(樹脂微粒子N及びOの製造)
n−オクチルメルカプタンの使用量を表4に記載の量に変えることの他は、樹脂微粒子Kと同様にして、樹脂微粒子N、及びOを得た。
下記方法に従って、樹脂微粒子N及びOを構成する樹脂について、溶融粘度が1.0×10Pa・sであるときの温度(T)と、溶融粘度が1・0×10Pa・sであるときの温度(T)とを測定した。また、樹脂微粒子K及びMを構成する樹脂についても、T及びTを測定した。樹脂微粒子K及びM〜Oを構成する樹脂のT及びTを表4に記す。また、得られた樹脂微粒子N及びOの個数平均粒子径を表4に記す。
<T及びTの測定>
樹脂微粒子を構成する樹脂のT及びTを、高架式フローテスター(CFT−500D(株式会社島津製作所製))を用いて測定した。測定試料作成用の成形型に樹脂微粒子を構成する樹脂約1.2gを充填し、4MPaの圧力を印加して、直径1cm長さ2cmの円柱状の樹脂微粒子のペレットを作成した。得られたペレットをフローテスターにセットし、プランジャー荷重:30kg、ダイ穴直径:1mm、ダイ長さ:1mm、予熱温度:70℃、予熱時間:300秒、昇温速度:4℃/分、測定温度範囲:70℃以上160℃以下という測定条件で測定を行った。
[実施例1、比較例1、及び比較例2]
(トナー母粒子の調製)
製造例2で得られたトナーコア粒子100gに対して、製造例3で得られた樹脂微粒子A10gを用い、トナーコア粒子を樹脂微粒子Aによって被覆し、トナーコア粒子表面にシェル層を形成した。シェル化処理には粉体処理装置(マルチパーパスミキサー MP型(日本コークス工業株式会社製))を用い、粉体処理装置の処理槽内にトナーコア粒子と樹脂微粒子Aとを投入し、表5に記載の回転数、及び処理時間で処理してトナー母粒子を得た。なお、実施例1では、粉体処理装置の槽内温度が50℃以上60℃以下の範囲となるように制御した。
(外添処理)
得られたトナー母粒子に、トナー母粒子の質量に対して、2.0質量%の酸化チタン(EC−100(チタン工業株式会社製))と、1.0質量%の疎水性シリカ(RA−200H(日本アエロジル株式会社製))とを加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて、回転周速30m/秒で5分間、撹拌・混合して、トナーを得た。
[比較例3]
製造例2で得られたトナーコア粒子100gに対して、製造例3で得られた樹脂微粒子A10gを用い、トナーコア粒子を樹脂微粒子Aによって被覆し、トナーコア粒子表面にシェル層を形成した。
シェル層の形成には表面改質装置(微粒子コーティング装置 SFP−01型(株式会社パウレック製))を用いた。トナーコア粒子を、表面改質装置の流動層中に、給気温度80℃で循環させた。製造例3で得られた樹脂微粒子A10gを含む水性分散液300gを、スプレー速度5g/分で、60分間、表面改質装置の流動層中に噴霧し、トナー母粒子を得た。得られたトナー母粒子を、実施例1と同様に外添処理し、比較例3のトナーを得た。
≪シェル層の構造の確認≫
下記方法に従って、実施例1、及び比較例1〜3のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、トナーコア粒子を被覆するシェル層の表面の状態を確認した。また、下記方法に従って、実施例1、及び比較例1〜3のトナーの断面の写真を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した。得られたTEM写真を用いて、シェル層の表面状態と、シェル層の内部の状態と、シェル層の内表面の形状とを確認した。実施例1のトナーの断面のTEM写真を図3に示し、比較例1のトナーの断面のTEM写真を図4に示し、比較例3のトナーの断面のTEM写真を図5に示す。
<トナーの表面の観察方法>
走査型電子顕微鏡(JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて、トナー粒子表面を、倍率10,000倍で観察した。
<トナーの断面の撮影方法>
トナーを樹脂に包埋した試料を作成した。ミクロトーム(EM UC6(ライカ株式会社製))を用いて、得られた試料から厚さ200nmのトナーの断面観察用の薄片試料を作成した。得られた薄片試料を、透過型電子顕微鏡(TEM、JSM−6700F(日本電子株式会社製))を用いて倍率50,000倍で観察し、任意のトナーの断面の画像を撮影した。
実施例1のトナーは、その表面に対して走査型電子顕微鏡観察(SEM)を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、図3に示す実施例1のトナーの断面のTEM写真からも、実施例1のトナーのシェル層の外表面が平滑であることが確認された。さらに、実施例1のトナーの断面のTEM写真から、実施例1のトナーのシェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが存在することが確認された。また、実施例1のトナーの断面のTEM写真から、実施例1のトナーのシェル層が、その内表面側の、2つのクラック間に凸部有することが確認された。
比較例1及び2のトナーは、SEMを用いてその表面を観察した際に、トナーコア粒子の表面が球状の粒子状態のままの樹脂微粒子で被覆されていることが確認された。また、図4の比較例1のトナーの断面のTEM写真からも、比較例1のトナーについて、トナーコア粒子の表面が粒子状態のままの樹脂微粒子で被覆されていることが確認された。なお、比較例2のトナーの断面を、TEMを用いて観察した際に、比較例2のトナーのシェル層の構造が、比較例1のトナーのシェル層の構造と同様であったため、比較例2のトナーの断面のTEM写真は撮影しなかった。
比較例3のトナーは、その表面をSEM観察した際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、図5に示す比較例3のトナーの断面のTEM写真からも、比較例3のトナーのシェル層の外表面が平滑であることが確認された。しかし、比較例3のトナーの断面のTEM写真から、比較例3のトナーのシェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが存在することが確認されなかった。
≪評価≫
下記方法に従って、実施例1、及び比較例1〜3のトナーの定着性、及び耐熱保存性の評価を行った。各トナーの評価結果を表5に記す。なお、定着性評価には、下記製造例4で得た、2成分現像剤を用いた。
[製造例4]
(2成分現像剤の調製)
キャリア(フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製))と、フェライトキャリアの質量に対して10質量%のトナーとを、ボールミルを用いて30分間混合して2成分現像剤を調製した。
<定着性>
評価機として、評価用に改造したページプリンター(FS−C5016N(京セラドキュメントソリューションズ製))を用い、評価機は、電源を切った状態で10分間静置した後、電源を入れて使用した。そして、直径30mm、線速100mm/秒の定着ローラーを用い、定着温度を180℃に設定して、常温常湿(20℃、65%RH)環境下で評価画像を得た。得られた評価画像の、摩擦前の画像濃度を、グレタグマクベススペクトロアイ(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。
次いで、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、評価用画像を摩擦した。具体的には、分銅の自重のみが画像にかかるように、分銅を評価用画像上で10往復させることで評価用画像を摩擦した。摩擦後の評価用画像の画像濃度を、グレタグマクベススペクトロアイ(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。下式に従って、摩擦前後の画像濃度から定着率を算出した。算出した定着率から、下記基準に従って定着性を評価した。
○評価を合格とした。
定着率(%)=(摩擦後画像濃度/摩擦前画像濃度)×100
○:定着率が95%以上
△:定着率が90%以上95%未満
×:定着率が90%未満
<耐熱保存性>
トナーを、50℃で100時間保存した。次いで、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)のマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5、時間30秒の条件で、140メッシュ(目開き105μm)の篩を用いてトナーを篩別して、下式を用いて凝集度(%)を求めた。耐熱保存性を、下記基準に従って評価した。○評価を合格とした。
(凝集度算出式)
凝集度(%)=篩上に残留したトナー質量/篩別前のトナーの質量×100
○:凝集度が20%以下
△:凝集度が20%超、50%以下
×:凝集度が50%超
実施例1から、トナーが、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆する所定の構造のシェル層と、からなり、シェル層が、樹脂微粒子層の外表面を所定の程度に平滑化されて形成され、且つ、透過型電子顕微鏡を用いてその断面を観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察される場合、定着性、及び耐熱保存性に優れたトナーが得られることが分かる。
比較例1及び2から、トナーコア粒子のシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察される場合、得られるトナーの耐熱保存性が良好ではないことが分かる。シェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察される場合、シェル層を被覆する、ある程度変形した樹脂微粒子間に隙間が残るため、トナーコア粒子に含まれる離型剤のような成分の、トナー表面への染み出しが生じやすいためと推察できる。
また、実施例1、比較例1、及び比較例2のトナーをSEM観察することで、シェル層の形成に用いる装置の回転数を上昇させるほど、形成されるシェル層の表面の平滑度が上がることが確認された。
比較例3から、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察されない場合、得られるトナーの定着性が劣ることが分かる。これは、シェル層の内部に、シェル層の破壊の起点となるクラックが存在しないことに起因して、定着ローラーの定着ニップから加わる圧力によってシェル層の破壊が起こりにくいためと推察される。
[実施例2、実施例3、比較例4、及び比較例5]
表6に記載の種類の樹脂微粒子を用いる他は、実施例1と同様にして実施例2、実施例3、比較例4、及び比較例5のトナーを得た。
≪シェル層の構造の確認≫
上記方法に従って、実施例2、実施例3、比較例4、及び比較例5のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、トナーコア粒子を被覆するシェル層の表面の状態を確認した。また、上記方法に従って実施例2、実施例3、比較例4、及び比較例5のトナーの断面の写真を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した。得られたTEM写真を用いて、シェル層の表面状態と、シェル層の内部の状態と、シェル層の内表面の形状とを確認した。
実施例2及び3のトナーの表面の走査型電子顕微鏡観察(SEM)を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、実施例2及び3のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、実施例2及び3のトナーのシェル層の構造は、図3に示される実施例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例4のトナーの表面のSEM観察を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、比較例4のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例4のトナーのシェル層の構造は、図5に示される比較例3のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例5のトナーの表面のSEM観察を行った際に、トナーコア粒子の表面が球状の粒子状態のままの樹脂微粒子で被覆されていることが確認された。また、比較例5のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例5のトナーのシェル層の構造は、図4に示される比較例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
≪評価≫
実施例1のトナーと同様にして、実施例2、実施例3、比較例4、及び比較例5のトナーの定着性と、耐熱保存性と、を評価した。各トナーの評価結果を表6に記す。
実施例1〜3、比較例4、及び比較例5から、トナーが、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆する所定の構造のシェル層と、からなり、シェル層が、樹脂微粒子層の外表面を所定の程度に平滑化されて形成され、且つ、透過型電子顕微鏡を用いてその断面観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察され、樹脂微粒子のガラス転移点が50℃以上80℃以下である場合、定着性、及び耐熱保存性により優れたトナーが得られることが分かる。
[実施例4〜6、比較例6、及び比較例7]
表7に記載の種類、及び量の樹脂微粒子を用いる他は、実施例1と同様にして実施例4〜6、比較例6、及び比較例7のトナーを得た。
≪シェル層の構造の確認≫
上記方法に従って、実施例4〜6、比較例6、及び比較例7のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、トナーコア粒子を被覆するシェル層の表面の状態を確認した。また、上記方法に従って実施例4〜6、比較例6、及び比較例7のトナーの断面の写真を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した。得られたTEM写真を用いて、シェル層の表面状態と、シェル層の内部の状態と、シェル層の内表面の形状とを確認した。
実施例4〜6のトナーの表面に対して走査型電子顕微鏡観察(SEM)を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、実施例4〜6のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、実施例4〜6のトナーのシェル層の構造は、図3に示される実施例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例6のトナーの表面をSEM観察した際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。比較例6のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例6のトナーのシェル層の構造は、図5に示される比較例3のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例7のトナーの表面をSEM観察した際に、トナーコア粒子の表面が球状の粒子状態のままの樹脂微粒子で被覆されていることが確認された。比較例7のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例7のトナーのシェル層の構造は、図4に示される比較例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
≪評価≫
実施例1のトナーと同様にして、実施例4〜6、比較例6、及び比較例7のトナーの定着性と、耐熱保存性と、を評価した。各トナーの評価結果を表7に記す。
実施例4〜6、比較例6、及び比較例7から、トナーが、少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子と、トナーコア粒子の全表面を被覆する所定の構造のシェル層と、からなり、シェル層が、樹脂微粒子層の外表面を所定の程度に平滑化されて形成され、且つ、透過型電子顕微鏡を用いてその断面を観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察され、樹脂微粒子の平均粒子径が45nm以上300nm以下である場合、定着性、及び耐熱保存性により優れたトナーが得られることが分かる。
[実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9]
表8に記載の種類の樹脂微粒子を用い、粉体処理装置の条件を表8に記載の回転数、及び処理時間とする他は、実施例1と同様にして実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9のトナーを得た。
≪シェル層の構造の確認≫
上記方法に従って、実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、トナーコア粒子を被覆するシェル層の表面の状態を確認した。また、上記方法に従って実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9のトナーの断面の写真を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した。得られたTEM写真を用いて、シェル層の表面状態と、シェル層の内部の状態と、シェル層の内表面の形状とを確認した。
実施例7及び実施例8のトナーの表面の走査型電子顕微鏡観察(SEM)を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、実施例7、8のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、実施例7、8のトナーのシェル層の構造は、図3に示される、実施例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例8のトナーの表面のSEM観察を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、比較例8のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例8のトナーのシェル層の構造は、図5に示される、比較例3のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例9のトナーの表面のSEM観察を行った際に、トナーコア粒子の表面が球状の粒子状態のままの樹脂微粒子で被覆されていることが確認された。また、比較例9のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例9のトナーのシェル層の構造は、図4に示される、比較例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
≪評価≫
実施例1のトナーと同様にして、実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9のトナーの定着性を評価した。また、トナーの保存温度を50℃に変える他は、実施例1のトナーと同様にして、実施例7、実施例8、比較例8、及び比較例9のトナーの耐熱保存性を評価した。各トナーの評価結果を表8に記す。
実施例7及び実施例8と、比較例8及び比較例9との比較から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される質量基準の分子量分布中の、最大ピークでの分子量(M)が5,000以上100,000以下であり、樹脂微粒子を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)が、5,000以上100,000以下である樹脂からなる樹脂微粒子を用いてトナーコア粒子を被覆する場合、透過型電子顕微鏡を用いてトナーの断面を観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察されるトナーを得やすいことが分かる。このような構造のシェル層を備えるトナーは、定着性及び耐熱保存性に優れる。
[実施例9及び比較例10]
樹脂微粒子の種類を表9に記載の種類に変えることと、表9に記載の回転数及び処理時間に粉体処理装置の条件を変更することとの他は、実施例1と同様にして実施例9及び比較例10のトナーを得た。
≪シェル層の構造の確認≫
上記方法に従って、実施例9及び比較例10のトナーの表面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、トナーコア粒子を被覆するシェル層の表面の状態を確認した。また、上記方法に従って実施例9及び比較例10のトナーの断面の写真を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した。得られたTEM写真を用いて、シェル層の表面状態と、シェル層の内部の状態と、シェル層の内表面の形状とを確認した。
実施例9のトナーの表面の走査型電子顕微鏡観察(SEM)を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子についてシェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、実施例9のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、実施例9のトナーのシェル層の構造は、図3に示される、実施例1のトナーのシェル層の構造と同様であった。
比較例10のトナーの表面のSEM観察を行った際に、粒子径6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層の表面に球状の樹脂微粒子に由来する構造が観察されなかった。また、比較例10のトナーの断面を、TEMを用いて観察したが、比較例10のトナーのシェル層の構造は、図5に示される、比較例3のトナーのシェル層の構造と同様であった。
≪評価≫
実施例1のトナーと同様にして、実施例9及び比較例10のトナーの定着性を評価した。また、トナーの保存温度を45℃に変える他は、実施例1のトナーと同様にして、実施例9及び比較例10のトナーの耐熱保存性を評価した。各トナーの評価結果を表9に記す。
実施例8及び実施例9と、比較例9及び比較例10との比較から、溶融粘度が1.0×10Pa・sであるときの温度(T)が110℃以上160℃以下であり、且つ、溶融粘度が1・0×10Pa・sであるときの温度(T)が130℃以上170℃以下である樹脂からなる樹脂微粒子を用いてトナーコア粒子を被覆する場合、透過型電子顕微鏡を用いてその断面を観察する場合に、シェル層の内部に、トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向のクラックが観察されるトナーを得やすいことが分かる。このような構造のシェル層を備えるトナーは、定着性及び耐熱保存性に優れる。
101 静電潜像現像用トナー
102 トナーコア粒子
103 シェル層
104 クラック
105 凸部

Claims (4)

  1. 少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子の製造工程と、
    前記トナーコア粒子を被覆するシェル層の製造工程と、を含む静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
    前記シェル層の製造工程は、下記工程I)及びII):
    I)球状の樹脂微粒子を、前記トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に重ならないように、前記トナーコア粒子の表面に付着させて、前記トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層を形成する工程と、
    II)前記樹脂微粒子層の外表面へ外力を印加し、前記樹脂微粒子層中の前記樹脂微粒子を変形させることで、前記樹脂微粒子層の外表面を平滑化させてシェル層を形成する工程と、を含み、
    前記静電潜像現像用トナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径が6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層に球状の前記樹脂微粒子に由来する構造が観察されず、
    前記静電潜像現像用トナーの断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、前記シェル層の内部に、前記トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向の、前記樹脂微粒子同士の界面に、当該樹脂微粒子の平均粒子径に由来するクラックが観察されると共に、前記トナーコア粒子と前記シェル層との界面上、且つ、2つの前記クラック間に、前記シェル層が有する凸部が観察され
    前記樹脂微粒子を構成する樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定される質量基準の分子量分布中の最大ピークでの分子量(M )が5,000以上100,000以下であり、
    前記樹脂微粒子を構成する樹脂の質量平均分子量(Mw)が、5,000以上100,000以下である静電潜像現像用トナーの製造方法。
  2. 前記樹脂微粒子を構成する樹脂について、溶融粘度が1.0×10Pa・sであるときの温度(T)が110℃以上160℃以下であり、且つ、溶融粘度が1・0×10Pa・sであるときの温度(T)が130℃以上170℃以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
  3. 少なくとも結着樹脂を含むトナーコア粒子の製造工程と、
    前記トナーコア粒子を被覆するシェル層の製造工程と、を含む静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
    前記シェル層の製造工程は、下記工程I)及びII):
    I)球状の樹脂微粒子を、前記トナーコア粒子の表面に対して垂直方向に重ならないように、前記トナーコア粒子の表面に付着させて、前記トナーコア粒子の全表面を被覆する樹脂微粒子層を形成する工程と、
    II)前記樹脂微粒子層の外表面へ外力を印加し、前記樹脂微粒子層中の前記樹脂微粒子を変形させることで、前記樹脂微粒子層の外表面を平滑化させてシェル層を形成する工程と、を含み、
    前記静電潜像現像用トナーの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、粒子径が6μm以上8μm以下のトナー粒子について、シェル層に球状の前記樹脂微粒子に由来する構造が観察されず、
    前記静電潜像現像用トナーの断面を、透過型電子顕微鏡を用いて観察する場合に、前記シェル層の内部に、前記トナーコア粒子の表面に対して略垂直方向の、前記樹脂微粒子同士の界面に、当該樹脂微粒子の平均粒子径に由来するクラックが観察されると共に、前記トナーコア粒子と前記シェル層との界面上、且つ、2つの前記クラック間に、前記シェル層が有する凸部が観察され、
    前記樹脂微粒子を構成する樹脂について、溶融粘度が1.0×10 Pa・sであるときの温度(T )が110℃以上160℃以下であり、且つ、溶融粘度が1・0×10 Pa・sであるときの温度(T )が130℃以上170℃以下である静電潜像現像用トナーの製造方法。
  4. シェル層の製造工程により形成される前記シェル層の厚さは0.045μm以上0.3μm以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。
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