以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
まず、図1〜図7を併せて用いて、実施形態に係る自律移動式無人搬送車1の構成について説明する。図1は、自律移動式無人搬送車1の構成を示す斜視図であり、図2は、自律移動式無人搬送車1の構成を示す背面図である。また、図3は、自律移動式無人搬送車1の機能的な構成を示すブロック図である。図4は、レーザレンジファインダ20,21の走査範囲、及びマスク領域の例を示す図である。図5は、自律移動式無人搬送車1が移載機110に接続された状態を示す側面図である。図6は、自律移動式無人搬送車1の積載部60の構造を示す斜視図である。図7は、自律移動式無人搬送車1における接続部の構造を示す図である。
自律移動式無人搬送車1は、オペレータ(ユーザ)の遠隔操作に従って自機が誘導されているときにSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)を用いて移動経路の環境地図(障害物が存在する領域と存在しない領域を表したグリッドマップ)を作成するとともに、誘導されて所定の設定ポイントに到達したときに、そのときの実際の自己位置を環境地図上の設定ポイントの位置座標として登録する機能を有する(本機能を実行するモードを「据付モード」と呼ぶ)。さらに、自律移動式無人搬送車1は、作成されて記憶されている環境地図上の設定ポイントを利用して移動経路を計画するとともに、計画された移動経路に沿ってスタート地点(荷物を積み込む地点)からゴール地点(荷物を受け渡す地点)(図9参照)まで自律して移動し、荷物を搬送する機能を有する(本機能を実行するモードを「搬送モード」と呼ぶ)。
そのため、自律移動式無人搬送車1は、主として、その下部に電動モータ12により駆動されるオムニホイール13が設けられ、上部に荷物を積載する積載部60が設けられた本体10と、周囲に存在する物体(例えば壁や障害物等)との距離を計測する一対のレーザレンジファインダ20,21や荷物の有無を検知するトレイ有無センサ50等のセンサと、行動開始スイッチ26、ステータス表示ランプ40やスピーカ45等のユーザインターフェースとを備えている。また、自律移動式無人搬送車1は、据付モードにおける環境地図の作成、及び、搬送モードにおける移動経路の計画並びに該移動経路に沿った自律移動(荷物搬送)を統合的に司る電子制御装置30を備えている。以下、各構成要素について詳細に説明する。
本体10は、例えば略有底角筒状に形成された金属製のフレームであり、この本体10に、上述したレーザレンジファインダ20,21、及び電子制御装置30等が取り付けられている。なお、本体10の形状は略有底角筒状に限られない。本体10の下部には、4つの電動モータ12が十字状に配置されて取り付けられている。4つの電動モータ12のそれぞれの駆動軸にはオムニホイール13が装着されている。すなわち、4つのオムニホイール13は、同一円周上に周方向に沿って90°ずつ間隔を空けて取り付けられている。ここで、電動モータ12及びオムニホイール13は、特許請求の範囲に記載の移動手段に相当する。
オムニホイール13は、電動モータ12の駆動軸を中心にして回転する2枚のホイールと、各ホイールの外周に電動モータ12の駆動軸と直交する軸を中心として回転可能に設けられた6個のフリーローラとを有する車輪であり、全方向に移動可能としたものである。なお、2枚のホイールは位相を30°ずらして取り付けられている。このような構成を有するため、電動モータ12が駆動されてホイールが回転すると、6個のフリーローラはホイールと一体となって回転する。一方、接地しているフリーローラが回転することにより、オムニホイール13は、そのホイールの回転軸に平行な方向にも移動することができる。そのため、4つの電動モータ12を独立して制御し、4つのオムニホイール13のそれぞれの回転方向及び回転速度を個別に調節することより、自律移動式無人搬送車1を任意の方向(全方向)に移動させることができる。
4つの電動モータ12それぞれの駆動軸には、該駆動軸の回転角度(すなわち駆動量あるいは回転量)を検出するエンコーダ16が取り付けられている。各エンコーダ16は、電子制御装置30を構成するモータドライバ11に接続されており、検出した各電動モータ12の回転角度をモータドライバ11に出力する。モーションコントローラ38は、モータドライバ11を介して入力された各電動モータ12の回転角度から、自律移動式無人搬送車1の移動量を演算する。なお、車輪として全方位に移動可能なオムニホイール13に代えて、通常の車輪(操舵輪及び駆動車輪)を用いる構成としてもよい。
本体10の対向する側面には、一対のレーザレンジファインダ20,21が、互いの検出領域が対称関係を有するように(すなわち、検出波の射出方向が逆方向となるに)、対を成して配設されている(図4参照)。すなわち、一方のレーザレンジファインダ20は、自機の正面方向(前方)を向くようにして自律移動式無人搬送車1の前部に取付けられている。また、他方のレーザレンジファインダ21は、自機の背面方向(後方)を向くようにして後部に付けられている。
各レーザレンジファインダ20,21は、レーザ(検出波)を射出するとともに、射出したレーザを回転ミラーで反射させることで、自律移動式無人搬送車1の周囲を水平に走査する。詳しくは、図4に示されるように、レーザレンジファインダ20は、半径が5mで正面方向を0°として正負90°の扇状の検出領域(走査範囲)を有し、この検出領域内に存在する物体で反射されて戻ってきたレーザを検出し、レーザ(反射波)の検出角度、及びレーザを射出してから物体で反射されて戻ってくるまでの時間(伝播時間)を計測することにより、物体との角度及び距離を検出する。同様に、レーザレンジファインダ21は、半径が5mで背面方向を0°として正負90°の扇状の検出領域を有し、この検出領域内に存在する物体で反射されて戻ってきたレーザを検出し、レーザ(反射波)の検出角度、及びレーザを射出してから物体で反射されて戻ってくるまでの時間(伝播時間)を計測することにより、物体との角度及び距離を検出する。すなわち、レーザレンジファインダ20,21は、特許請求の範囲に記載の物体情報取得手段として機能する。なお、レーザレンジファインダ20(21)は、例えば、半径15mで正面(背面)方向を0°として正負120°の扇状の検出領域(走査範囲)を有するものであってもよい。
より詳細には、各レーザレンジファインダ20,21は、物体によって反射されたレーザ(反射波)を検出できた場合には、走査角度に対応させて、物体との距離を示すデータ(例えば20〜4095)を含む検出情報(位置情報)を出力する。一方、レーザ(反射波)を検出できない(すなわち反射波が返ってこない)場合には、レーザレンジファインダ20,21は、非検出情報(エラーコード、例えば0〜19)を走査角度に対応させて出力する。なお、各レーザレンジファインダ20,21は、電子制御装置30と接続されており、検出した周囲の物体の検出情報(角度・距離情報)、及び非検出情報を電子制御装置30に出力する。
また、本体10の側面には、超音波センサ23が、全周にわたって略等間隔に取付けられている。なお、本実施形態では、16個の超音波センサ23を取り付けた。16個の超音波センサ23それぞれは、物体の検出方向に指向性を有している。すなわち、16個の超音波センサ23それぞれを組み合わせることにより全方位(360°)にわたって物体を検出することができるように構成されている。
超音波センサ23は、超音波を発信するとともに、物体で反射されて戻ってくる超音波(反射波)を検出し、この反射波の有無及び反射波の到達時間(伝搬時間)から、物体の有無及び物体までの距離を検出する。超音波センサ23は、電子制御装置30を構成するモーションコントローラ38に接続されている。
本体10の下部には、バンパースイッチ24が取付けられている。バンパースイッチ24は、本体10の前後左右の側面を覆うカバーと、該カバーと本体10との相対変位に応じてオン/オフする近接スイッチとを有している。すなわち、バンパースイッチ24は、カバーが障害物等と接触したときに生じる、カバーと本体10との相対変位を近接スイッチによって検出することにより、障害物等との接触を検知する。バンパースイッチ24は、特許請求の範囲に記載の検知手段として機能する。なお、バンパースイッチ24は、電子制御装置30を構成するモーションコントローラ38に接続されている。
本体10の側面には、主電源を断続する主電源ブレーカ25と、自律移動式無人搬送車1に各種行動(詳細は後述する)を開始させる行動開始スイッチ26と、オムニホイール13のブレーキ状態を解除するブレーキ解除スイッチ27とが配設されている。行動開始スイッチ26には行動開始スイッチランプ46が内蔵されており、ブレーキ解除スイッチ27にはブレーキ解除スイッチランプ47が内蔵されている。行動開始スイッチ26は、電子制御装置30を構成するI/Oボード39に接続されている。また、行動開始スイッチランプ46及びブレーキ解除スイッチランプ47も、I/Oボード39に接続されており、自機のステータスに応じて点灯状態(点灯、点滅、消灯)が切り替えられる。ブレーキ解除スイッチ27は全ての電動モータ12に接続されている。
また、本体10の背面には、自律移動を非常停止させる非常停止スイッチ28が設けられている。非常停止スイッチ28は、電子制御装置30を構成するモーションコントローラ38に接続さている。
本体10の四隅には、ステータス表示ランプ40が配置されている。ステータス表示ランプ40は、電子制御装置30を構成するI/Oボード39に接続されており、自機のステータス(状態)に応じて、点灯色及び/又は点滅パターンが変更される。これにより、自律移動式無人搬送車1のステータスが表示(報知)される。
また、本体10の左右の側面には、スピーカ45が配置されている。スピーカ45は、電子制御装置30を構成するコントロールボード37に接続されており、自機のステータス(状態)に応じて音声等を出力する。ステータス表示ランプ40及びスピーカ50を用いて、自律移動式無人搬送車1は、オペレータやユーザ等に対して、自機のステータスを報知する。すなわち、ステータス表示ランプ40及びスピーカ45は、特許請求の範囲に記載の報知手段として機能する。
より具体的には、ステータス表示ランプ40及び/又はスピーカ45は、例えば、自機が荷物の受け渡し許容領域内340(図9参照、詳細は後述する)を移動しているときに、荷物が搭載されている場合には、該荷物の受け取りが可能な状態であることを報知する。また、ステータス表示ランプ40及び/又はスピーカ45は、受け渡し許容領域340外において、荷物が検知されなくなった場合に、搬送中断による停止状態である旨を報知し、受け渡し許容領域340内において、荷物が検知されなくなったときに、搬送完了による停止状態である旨を報知する。さらに、ステータス表示ランプ40及び/又はスピーカ45は、自律移動(荷物搬送)が停止された後、現在の自己位置からの継続した自律移動が不可能であると判断された場合に、自機を初期位置(後述する移載機110との接続位置)へ移動させるように報知する。
本体10の上部には、荷物を積載する積載部60が設けられている。積載部60は、積載した荷物を収容する積載物収容部61と、積載した荷物が落下しないように積載物収容部61を覆う積載物カバー65とを有している。積載物カバー65は、移載機110による荷物の移載を可能とするように、正面側が開口されている。
積載物収容部61には、荷物を載せたトレイの有無を検出するトレイ有無センサ50が取付けられている。トレイ有無センサ50は、電子制御装置30を構成するI/Oボード39に接続されており、トレイ有無センサ50による検出結果(オン/オフ信号)は、該I/Oボード39に出力される。なお、トレイ有無センサ50としては、機械式スイッチの他、例えば、フォトインタラプタや、渦電流センサ等を利用することができる。
本体10正面側の積載部60の下部には、後述する移載機110に設けられたピン状の位置決め部材111が挿入される一対(2つ)の位置決め部材挿入口64が形成されている。2つの位置決め部材挿入口64それぞれの内側には、V字状の凹部を有する位置決め部材62が配置されている(図7参照)。なお、図5に示されるように、自律移動式無人搬送車1と移載機110とが連結されたときに、位置決め部材62に形成されたV字状の凹部によって、移載機110側のピン状の位置決め部材111の左右方向の動きが拘束される。
一対の位置決め部材62それぞれには、ピン状の位置決め部材111を検出する移載機接続検知センサ52が取付けられている。なお、移載機接続検知センサ52としては、機械式スイッチの他、例えば渦電流センサ等を利用することができる。移載機接続検知センサ52は、電子制御装置30を構成するI/Oボード39に接続されており、移載機接続検知センサ52の検出結果(オン/オフ信号)は、該I/Oボード39に出力される。
積載物収容部61は、図6及び図7に示されるように、XY方向(本体10の前後・左右方向)及び回転方向(本体10の中心軸の軸周り方向)に移動可能なXYθ移動テーブル68を介して本体10と接続されている。なお、図7では、内部の構造を見やすくするために、積載物収容部61の底面部分を二点鎖線により示した。積載物収容部61は、本体10の上面に固定された保持部材66の上に載せられて、XY方向と回転方向に移動可能に保持されている。また、積載物収容部61は、付勢バネ63により、ストッパ67及びストッパ69,69に当接するように、本体10の正面方向に向かって付勢されている。それにより、積載物収容部61は、移載機110が接続されていない状態では、本体10の上面の中心に配置される。
電子制御装置30は、自律移動式無人搬送車1の制御を統合的に司るものである。電子制御装置30は、I/Oボード39と、該I/Oボード39とUSBを介して接続されるコントロールボード37と、該コントロールボード37とイーサネット(登録商標)を介して接続されるモーションコントローラ38と、該モーションコントローラ38からの制御信号に基づいて電動モータ12を駆動するドライバ回路11等を備えている。
また、電子制御装置30は、イーサネット(登録商標)によるLAN経由又はUSB経由で外部パーソナルコンピュータ(以下「外部PC」という)90及びジョイステックなどのコントローラと接続可能に構成されている。オペレータは、自律移動式無人搬送車1を誘導して移動させる場合(据付モード時)に、ジョイステックを用いることにより、自律移動式無人搬送車1に対して移動方向を指示し、自律移動式無人搬送車1を誘導することができる。また、オペレータは、自律移動式無人搬送車1を誘導しつつ、所定の設定ポイント(例えば、スタート地点(荷物積載場所)候補、目標通過地点候補、ゴール地点(荷物受け渡し場所)候補)に到達したときに、ジョイステックから、そのときの自己位置を設定ポイントの位置座標として登録することができる。さらに、オペレータは、地図及び設定ポイントの属性情報(例えば、ミキシングルーム前、ナースステーション前、受け渡し場所等)並びに走行パラメータを、外部PC90を使って登録することもできる。同様に、オペレータは、外部PC90を用いて、荷物の受け渡し場所を登録する際又は登録した後に、該受け渡し場所を含み積載された荷物を受け渡すことが許容される領域、すなわち受け渡し許容領域340を環境地図と対応付けて設定登録することができる(図9参照)。
I/Oボード39には、行動開始スイッチ26、ブレーキ解除スイッチ27、トレイ有無センサ50、移載機接続検知センサ52等の入力デバイス、及び、ステータス表示ランプ40、行動開始スイッチランプ46、ブレーキ解除スイッチランプ47等の出力デバイスが接続されている。コントロールボード37は、I/Oボード39を介して、上述した入力デバイスからの信号を読み込むとともに、上述した出力デバイスに対して駆動信号を出力し、該出力デバイスを駆動する。
コントロールボード37、及びモーションコントローラ38は、据付モードを実行することにより、SLAMを用いて移動経路の環境地図を作成するとともに、設定ポイントの位置座標を登録する。また、コントロールボード37、及びモーションコントローラ38は、搬送モードを実行することにより、計画された移動経路に沿ってスタート地点(荷物積載場所)からゴール地点(荷物受け渡し場所)まで自律して移動(荷物を搬送)するように電動モータ12を制御する。そのため、コントロールボード37は、局所地図作成部31、自己位置推定部32、環境地図作成部33、記憶部34、経路計画部35、制御部36を備えている。また、モーションコントローラ38は、走行制御部381、自己位置記憶部382、障害物回避制御部383を備えている。
コントロールボード37は、自律移動式無人搬送車1の制御を統合的に司るものである。コントロールボード37は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及び、その記憶内容が保持されるバックアップRAM等から構成されている。また、コントロールボード37は、I/Oボードと接続するためのUSBインターフェイス、モーションコントローラと接続するためのイーサネット(登録商標)のインターフェイス、及びレーザレンジファインダ20,21、スピーカ45とマイクロプロセッサとを電気的に接続するインターフェイス回路等も備えている。なお、上述した各機能部は、上記ハードウェアとソフトウェア(例えば、Brain、SLAM、Path Planning、Status manager、I/O manager等)の組み合わせにより実現される。
局所地図作成部31は、レーザレンジファインダ20,21から読み込まれた周囲の物体の角度・距離情報(位置情報)に基づいて、レーザレンジファインダ20,21それぞれを原点にした自機周辺の局所地図を作成する。局所地図作成部31は、据付モードにおいて局所地図を作成する際に、自律移動式無人搬送車1を誘導するオペレータが、障害物として誤って環境地図上に登録されてしまうことを防止するためのマスク処理を行う。すなわち、局所地図作成部31は、取得された物体の検出情報(位置情報)のうち、所定の領域内における検出情報をマスクする。
より具体的には、局所地図作成部31は、図4に示されるように、後方側に取り付けられたレーザレンジファインダ21から出力される検出情報(角度・距離情報)のうち所定の検出領域(例えば、レーザレンジファインダ21を原点として角度210°〜330°(背面方向を0°として正負(±)60°)、距離0.75m以下の領域)から検出された検出情報を物体の存在が不明であることを示す情報(0)に書き換えることによりマスク処理を行う。なお、マスク処理を施す領域(マスク領域)は、上記実施形態には限られず、任意に設定することができる。また、マスク処理は、データを書き換えるのではなく、上記所定の検出領域内における検出情報を、局所地図の作成に使用されないように処理する(マスクする)ことによって行ってもよい。なお、マスク処理が施された検出情報によって作成された局所地図は、自己位置推定部32及び環境地図作成部33に出力される。
自己位置推定部32は、各エンコーダ16から読み込まれた各電動モータ12の回転角度に応じて算出された自機の移動量を考慮して、環境地図の座標系(絶対座標系)に座標変換した局所地図と、環境地図とを照合し、その結果に基づいて自己位置を推定する。ここで、自己位置推定部32は、特許請求の範囲に記載の自己位置推定手段として機能する。また、自己位置推定部32は、ジョイステックのボタンが押されたときに、そのときの自己位置を該設定ポイントの位置座標として記憶部34に登録する。
環境地図作成部33は、誘導移動時(据付モード実行時)に、SLAMを利用して、移動空間(領域)の環境地図を作成する。環境地図は、自律移動式無人搬送車1の移動領域のグリッドマップであり、壁面等の固定物(物体)の位置が記録されている。ここで、グリッドマップは、水平面を所定の大きさ(例えば1cm×1cm)のセル(以下「単位グリッド」又は単に「グリッド」という)で分割した平面からからなる地図であり、単位グリッド毎に物体があるか否かを示す物体存在確率情報が与えられている。
環境地図作成部33は、局所地図作成部31で作成されたレーザレンジファインダ20,21を原点にした自機周辺の局所地図と自己位置推定部32により推定された自己位置とを用いて、環境地図を作成・更新する。
ここで、環境地図の作成方法をより具体的に説明する。環境地図作成部33は、まず、局所地図作成部31から局所地図を取得するとともに、自己位置推定部32から環境地図上の自己位置を取得する。次に、環境地図上の自己位置に基づいて、レーザレンジファインダ20(21)を原点にした座標系を推定される自己位置をもとに環境地図の座標系(以下「絶対座標系」という)に座標変換することにより、局所地図(以下、座標変換された局所地図を「局所地図@絶対座標系」という)を環境地図に投影する。そして、環境地図作成部33は、自律移動式無人搬送車1が誘導されて移動している間中この処理を繰り返して実行し、局所地図@絶対座標系を環境地図に順次足し込んで行く(継ぎ足してゆく)ことにより移動空間(領域)全体の環境地図を作成する。なお、環境地図作成部33は、自律移動時(搬送モード実行時)には、環境地図の作成・更新を停止する。
また、環境地図作成部33は、誘導移動時(据付モード実行時)に環境地図を複数の部分地図に分割して作成する。なお、本実施形態では、環境地図を3つの部分地図341,342,343に分割した(図9参照)。その際に、オペレータ(据付作業者)は、外部PC90上で各部分地図341,342,343毎に自律移動式無人搬送車1の走行パラメータを設定して、記憶部34に登録する。ここで、走行パラメータとしては、使用するレーザファインダ(例えばレーザレンジファインダ20或いはレーザレンジファインダ21)、障害物を検出した場合の動作(回避又は停止、停止)、最高速度等が挙げられる。
記憶部34は、例えば、上述したバックアップRAM等で構成されており、上述したように、環境地図作成部33により作成された環境地図を複数の部分地図341,342,343に分割して記憶する。また、記憶部34は、部分地図341,342,343毎に、設定された自律移動式無人搬送車1の走行パラメータ(移動速度等)を記憶する。記憶部34は、各部分地図341,342,343に設定された設定ポイントの位置座標も記憶する。なお、後述する経路計画部35で計画される移動経路情報等は、揮発性のRAMに記憶される。
また、記憶部34は、受け渡し場所となる設定ポイントを記憶する際に、荷物の受け渡し許容領域(受け渡し場所の設定ポイントを含む位置範囲)340を記憶する。その際に、記憶部34は、受け渡し許容領域340を環境地図とは異なるレイヤに記憶する。すなわち、記憶部34は、特許請求の範囲に記載の記憶手段として機能する。また、受け渡し許容領域340は、受け渡し場所を中心とする半径N[m]の円の固定領域として持たせてもよい。この場合、半径Nの値は目的地の属性に依存させることが好ましい。さらに、記憶部34は、自律移動が停止された場合に、その停止要因を記憶する。すなわち、記憶部34は、特許請求の範囲に記載の停止要因記憶手段として機能する。
経路計画部35は、自機の自己位置とユーザが選択した設定ポイント(記憶部34に記憶されている環境地図上の設定ポイント、例えば、ホームポジションであるスタート地点、目標通過地点、荷物の受け渡し場所となるゴール地点)間を接続することにより自律移動式無人搬送車1の移動経路を計画する。なお、設定ポイントをゴール地点として移動経路を計画する場合、自己位置が把握できているため、必ずしも設定ポイント同士を接続する必要はない。より詳細には、経路計画部35は、例えば、まず、環境地図に含まれる障害物領域の輪郭を、Minkowski和を利用して、自機の半径だけ拡張して拡張障害物領域を作成し、該拡張障害物領域を除く領域を、障害物と接触することなく移動することができる移動可能領域として抽出する。次に、経路計画部35は、Hilditchの細線化法を利用して、抽出した移動可能領域を細線化する。そして、経路計画部35は、細線化された移動可能領域の中から、A*アルゴリズム(Aスター・アルゴリズム)を利用して、設定ポイント(スタート地点、目標通過地点、ゴール地点)間をつなぐ最短経路を探索することにより移動経路を計画する。
制御部36は、環境地図、自己位置、及び荷物の有無等に基づいて、自律移動を制御(荷物の搬送を実行)する。すなわち、制御部36及びモーションコントローラ38は、特許請求の範囲に記載の制御手段として機能する。
その際に、制御部36は、受け渡し許容領域340の外において荷物が検知されなくなった場合には、荷物が落下したと判断し、受け渡し許容領域340の内において荷物が検知されなくなったときには、荷物が落下したと判断することなく自律移動を制御する。より詳細には、制御部36は、トレイ有無センサ50の検出信号に基づいて荷物が無いことが検知されたときは、モーションコントローラ38に自機を停止するように制御情報を出力する。制御部36は、自己位置が荷物の受け渡し許容領域340外にある場合には、搬送中断による停止状態(待機状態)とする。そのときに、制御部36は、ステータス表示ランプ40を例えば赤色に点灯させ、行動開始スイッチランプ46を点滅させるとともに、スピーカ45から例えば「薬品トレイを載せてください」「セットが完了したら、点滅ボタンを押してください」と発話させる。一方、自己位置が上記荷物の受け渡し許容領域340内にあるときに、制御部36は、荷物が受け取られたと判断して搬送完了による停止状態(待機状態)とし、ステータス表示ランプ40を例えば緑色に点灯させる。
また、制御部36は、受け渡し許容領域340の中を移動するときには、受け渡し許容領域340の外を移動するときよりも移動速度が遅くなるように自律移動を制御する。制御部36は、受け渡し許容領域340内において、非常停止スイッチ28により停止指示が受付けられた場合には、自律移動を停止する。
制御部36は、起動(ブート)されたときに、記憶部34に記憶されている停止要因に基づいて、現在の自己位置から継続して自律移動が可能であるか否かを判断する。なお、ここで、起動(ブート)には、主電源ブレーカ25の投入によるものの他、例えば、行動開始スイッチ26がオンされることによるアプリケーションソフトの起動等も含む。そして、制御部36は、自律移動が可能であると判断した場合には、自己位置記憶部382に記憶されている自己位置に基づいて、自律移動を開始する。一方、自律移動が不可能であると判断した場合には、待機状態を保持する。その際に、制御部36は、例えば、停止要因が障害物との接触である場合には、継続して自律移動が可能であると判断する。一方、制御部36は、例えば、停止要因がソフトウェア不具合などであり、記憶されている自己位置が正しくないおそれが高い場合には自律移動が不可能であると判断する。
さらに、制御部36は、起動されたときに、移載機110の第1位置決め部材111が検出された場合には、レーザレンジファインダ20により検出された第2位置決め部材112との位置関係に基づいて、自機を初期位置に移動させる。なお、詳細は後述する。
モーションコントローラ38は、コントロールボード37からの制御情報に基づいて、電動モータ12を駆動し、自律移動式無人搬送車1の走行制御を司るものである。モーションコントローラ38は、演算を行うマイクロプロセッサ、マイクロプロセッサに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM、及び、その記憶内容が保持されるバックアップRAM等から構成されている。モーションコントローラ38には、電動モータ12を駆動するドライバ回路11、超音波センサ23、バンパースイッチ24、及び非常停止スイッチ28が接続されている。また、モーションコントローラ38とコントロールボード37とは、イーサネット(登録商標)で接続されおり、制御情報(エンコーダの回転角度、自己位置、入出力情報、移動停止要因等)が相互に通信可能に構成されている。モーションコントローラ38では、上記ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせにより、走行制御部381、自己位置記憶部382、及び障害物回避制御部383の各機能が実現される。
走行制御部381は、据付モード実行時に、誘導制御信号に従って電動モータ12を駆動する。一方、走行制御部381は、搬送モード実行時に、障害物を回避しながら計画された移動経路に沿って自機をゴール地点(荷物受け渡し場所)まで自律移動させるように電動モータ12を制御する。
自己位置記憶部382は、例えば、上述したバックアップRAM等で構成されており、搬送モード時に、自己位置推定部32により推定された自己位置を逐次記憶する。すなわち、自己位置記憶部382は、特許請求の範囲に記載の自己位置記憶手段として機能する。
ここで、搬送モード実行時に、障害物を回避しながら移動経路に沿って自機をゴール地点まで自律移動させる制御方法として仮想ポテンシャル法を用いることができる。この仮想ポテンシャル法は、ゴール地点に対する仮想的な引力ポテンシャル場と、回避すべき障害物に対する仮想的な斥力ポテンシャル場とを作成して重ね合わせることで、障害物との接触を回避しつつゴール地点へ向かう方法である。より具体的には、走行制御部381は、まず、自己位置に基づいてゴール地点へ向かうための仮想引力を計算する。一方、障害物回避制御部383により、自己位置、移動速度、及び障害物の位置並びに速度に基づいて、障害物を回避するための仮想斥力が算出される。続いて、走行制御部381は、得られた仮想引力と、仮想斥力とをベクトル合成することにより仮想力ベクトルを計算する。そして、走行制御部381は、得られた仮想力ベクトルに応じて電動モータ12(オムニホイール13)を駆動することにより、障害物を回避しつつゴール地点へ移動するように自機の移動をコントロールする。
次に図9〜図11を併せて用いて、自律移動式無人搬送車1を備えた自律移動式無人搬送システム3について説明する。なお、本実施形態では、自律移動式無人搬送システム3として、例えば、病院内で薬剤等を載せたトレイ(以下、トレイ及びトレイに載せられる薬剤等をまとめて荷物ともいう)を搬送するシステムを例に説明する。図9は、自律移動式無人搬送車1を備える自律移動式無人搬送システム3の全体構成を示す図である。図10は、自律移動式無人搬送システム3における荷物の搭載方法を説明するための図である。図11は、自律移動式無人搬送システム3を構成するパスボックス150の背面図である。
自律移動式無人搬送システム3は、自律移動式無人搬送車1と移載機110とを備え、薬剤調合室231で調合された薬剤をミキシングルーム232内で自律搬送式無人搬送車1に積載し、病院内の通路241を経由してナースステーション251内にある受け渡し場所210まで搬送するシステムである。
薬剤調合室231は、クリーンルーム環境に保持され、通常環境のミキシングルーム232とは、パスボックス150により隔てられている。パスボックス150は、調合された薬剤が入れられる複数のボックスからなり、薬剤調合室231をクリーンルーム環境に保ちつつ、薬剤を通常環境のミキシングルーム232に受け渡すものである。なお、ミキシングルーム232側の扉が開閉される度にパスボックス150内部の空気が強制換気されることにより、薬剤調合室231のクリーン度が保たれる。パスボックス150の薬剤調合室231側の側面には、荷物の受け渡しを許可(開始)する搬送スイッチ180、及び荷物の受け渡しを禁止する停止スイッチ181が取り付けられている。また、パスボックス150には、ボックスの薬剤調合室231側の扉の開閉状態を検知する扉開閉センサ182が設けられている。
パスボックス150のミキシングルーム232側には、該ミキシングルーム232側の扉を開閉する扉開閉機120と、パスボックス150から荷物を取り出して自律移動式無人搬送車1に移載する移載機110とが備えられている。
ここで、薬剤搬送の概要を説明する。まず、薬剤調合室231で調剤された薬剤がトレイに載せられて、パスボックス150に入れられる。そして、搬送スイッチ180がオン(荷物セット完了信号がオン)されることにより荷物の移載が開始される。より詳細には、搬送スイッチ180がオンされることにより、荷物がパスボックス150にセットされたことが、扉開閉機120及び移載機110によって認識される。そして、自律移動式無人搬送車1が、移載機110と接続され、ホームポジション(初期位置)200にいることが検知された場合には、荷物がセットされたパスボックス150の扉が扉開閉機120により開かれ、移載機110により、パスボックス150にセットされた荷物が自律移動式無人搬送車1に移載される。
ここで、自律移動式無人搬送車1に荷物を移載する移載機110について図8を参照しつつ説明をする。移載機110は、荷物をパスボックス150から自律移動式無人搬送車1へ移載する移載装置と自律移動式無人搬送車1を充電するための充電装置とが一体化されたものである。移載機110は、自律移動式無人搬送車1が移載機110に接続されて待機しているとき、及び荷物の移載中に自律移動式無人搬送車1の充電を行う。
移載機110は、荷物を移載するためのスライド機構116を有している。スライド機構116は、自律移動式無人搬送車1の上下方向及び前後方向に移動可能となるようにスライドレール及びラック&ピニオン機構が設けられている。また、スライド機構116の先端にはハンドが設けられており、荷物を把持して、自律移動式無人搬送車1に移載するように構成されている。ハンドにはトレイ(荷物)の有無を検出するトレイ有無センサ115が取付けられている。
また、移載機110は、自律移動式無人搬送車1と接続される側面(正面)上部に設けられた一対のピン状の第1位置決め部材111と、正面下部に設けられた第2位置決め部材112とを有している。第2位置決め部材112は、移載機110が自律移動式無人搬送車1と接続されたときに、自律移動式無人搬送車1の正面に取付けられたレーザレンジファインダ20と対向する位置に取付けられている。また、第2位置決め部材112は、矩形の開口部を有し、縦断面が矩形に、かつ横断面が台形状(又はV字状)に、すなわち、開口部から奥に行くに従って徐々に狭くなるようにプレート等で形成されている。
ここで、自律移動式無人搬送車1は、移載機110に接続されたときの位置を、自機のホームポジション(初期位置)としている。自律移動式無人搬送車1は、起動されたときに、第1位置決め部材111が検出された場合(すなわち移載機110と接続されている場合)には、レーザレンジファインダ20により検出された第2位置決め部材112との位置関係に基づいて、自機を正確に初期位置に合わせる。より詳細には、レーザレンジファインダ20により検出された第2位置決め部材112の検出情報(角度・距離情報)に基づいて、自律移動式無人搬送車1と移載機110との相対的な位置関係を算出し、その位置関係に基づいて、ホームポジション200へ位置を合わせるように電動モータ12を駆動する。
移載機110による荷物の移載が完了すると、自律移動式無人搬送車1が、該荷物を、ナースステーション251内の荷物の受け渡し場所210まで自律的に搬送する。自律移動式無人搬送車1は、受け渡し場所210又は受け渡し許容領域340内で、荷物の受け取り者であるユーザ(看護師等)によって荷物が取り上げられることにより搬送終了による待機状態となる。その後、自律移動式無人搬送車1は、行動開始スイッチ26がユーザによりオンされると、ミキシングルーム232内におけるホームポジション200に戻って待機する。
なお、自律移動式無人搬送システム3では、パスボックス150のガラス扉に、薬剤調合室231側とミキシングルーム232側とで対向するように、一対の光通信装置160を取り付けて通信を行っている(図15参照)。これにより、ガラス扉を通してクリーンルーム内外で信号通信を行うことができる。
次に、図12〜図14を併せて用いて、自律移動式無人搬送車1の動作について説明する。図12は、自律移動式無人搬送車1による据付処理(据付モード)の処理手順を示すフローチャートである。図13は、自律移動式無人搬送車1による搬送処理(搬送モード)の処理手順を示すフローチャートである。また、図14は、自律移動式無人搬送車1による起動処理の処理手順を示すフローチャートである。図12〜図14に示される各処理は、主として電子制御装置30によって実行される。なお、図12に示される据付処理は、図13,15に示される搬送処理に先立って実行される。
始めに、図12に示される据付処理(据付モード)の処理手順について説明する。ステップS100において、ユーザからの環境地図作成開始指示が受け付けられると、自律移動式無人搬送車1がオペレータに誘導されて移動を開始する。
次に、ステップS102では、レーザレンジファインダ20,21により取得された検出情報、すなわち周囲の物体との角度・距離情報、並びに非検出情報、及びエンコーダ16により検出された各電動モータ12の回転角度が読み込まれる。
続くステップS104では、ステップS102で読み込まれた物体情報(角度・距離情報)に対してマスク処理が行われる。なお、マスク処理については上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
次に、ステップS106では、ステップS104においてマスク処理が施された物体情報に基づいてレーザレンジファインダ20,21それぞれを原点とする局所地図(ローカルマップ)が生成される。また、各電動モータ12の回転角度に基づいて自機の移動量が演算される(デッドレコニング)。
ステップS108では、ステップS106において生成された局所地図(ローカルマップ)及び自機の移動量から、ベイズフィルタを用いて確率的に自己位置が推定される。
続いて、ステップS110では、ステップS106でマスク処理されたローカルマップが、レーザレンジファインダ20,21を原点にした座標系からグローバルマップの座標系に自己位置にあわせて座標変換され、グローバルマップに投影されることにより、周囲環境全体のグローバルマップが生成又は更新される。
次に、ステップS112では、ジョイステックから設定ポイント登録情報が入力されたか否かについての判断が行われる。ここで、設定ポイント登録情報が入力された場合には、ステップS114において、その地点の自己位置が環境地図上の設定ポイントとして登録される。また、据付完了後に外部PC90から各種データ編集が行われ、部分地図番号、及び走行パラメータ等の入力情報も登録される。一方、設定ポイント登録情報が入力されていないときには、ステップS116に処理が移行する。
ステップS116では、ユーザからの環境地図作成終了指示が受け付けられたか否かについての判断が行われる。ここで、環境地図作成終了指示が受け付けられていない場合には、ステップS102に処理が移行し、環境地図作成終了指示が受け付けられるまで、上述したステップS102〜ステップS114の処理が繰り返し実行される。一方、環境地図作成終了指示が受け付けられたときには、作成された設定ポイントを含む複数の部分地図341,342,343が記憶され、据付処理(据付モード)が終了する。
続いて、自律移動式無人搬送車1による搬送処理(自律移動式無人搬送車1が自律的に障害物を避けながら目的地まで荷物を搬送する搬送モード)の処理手順について説明する。
ステップS200では、例えば、自律移動(搬送)で使用される環境地図(部分地図341,342,343)のロード処理等を含むイニシャル処理(初期化処理)が実行される。
次に、ステップS202では、レーザレンジファインダ20及び/又はレーザレンジファインダ21により取得された検出情報、すなわち周囲の物体との角度・距離情報、及びエンコーダ16により検出された各電動モータ12の回転角度が読み込まれる。
続くステップS204では、ステップS202で読み込まれた周囲の物体との角度・距離情報に基づいて、レーザレンジファインダ20及び/又はレーザレンジファインダ21を原点とするローカルマップが生成されるとともに、各電動モータ12の回転角度に基づいて自機の移動量が演算される(デッドレコニング)。
ステップS206では、ステップS204において生成されたローカルマップ及び自機の移動量から、ベイズフィルタを用いて確率的に自己位置が推定される。
続くステップS208では、ステップS206において推定された自己位置が記憶される。なお、自己位置が荷物の受け渡し許容領域340内にあるときは、受け渡し許容領域340外よりも移動速度が低くされる。
次に、ステップS210では、荷物が有るか無いかについての判断が行われる。ここで、荷物が有る場合には、ステップS212に処理が移行する。一方、荷物が無い場合には、ステップS216に処理が移行する。
次に、ステップS212では、ゴール地点の受け渡し場所210に到着したか否かについての判断が行われる。ここで、受け渡し場所210に到着していない場合には、ステップS202に処理が移行し、上述したステップS202〜ステップS210の処理が繰り返し実行される。一方、自機が受け渡し場所210に到着したときには、ステップS214において終了処理が実行された後、搬送処理(搬送モード)が終了する。より具体的には、S214では、例えば、受け渡し場所210に到着してからN秒経過した後、ステータス表示ランプ40が、緑色の2回点滅と一定時間消灯とを繰り返す。また、その際に、スピーカ45から「薬品を下してください」という音声が発せられる。その後、本処理から一旦抜ける。なお、荷物が受け取られたことが検知された後、行動開始スイッチ26がオンされると、自律移動式無人搬送車1は、上述したホームポジション200に戻る。
上述したステップS210が否定された場合、ステップS216では、自律移動無人搬送車1の自律移動が停止される。続くステップS218では、自機が受け渡し許容領域340内にいるか否かについての判断が行われる。ここで、自機が受け渡し許容領域340内にいるときは、ステップS220に処理が移行する。一方、自機が受け渡し許容領域340外にいるときは、ステップS222に処理が移行する。
ステップS220では、荷物が受け取られたと判断されて搬送完了の待機状態となり、搬送処理が終了する。より具体的には、例えば、ステータス表示ランプ40が緑色に点灯されて、搬送処理(搬送モード)が終了する。その後、本処理から一旦抜ける。なお、その後、行動開始スイッチ26がオンされると、自律移動式無人搬送車1は、上述したホームポジション200に戻る。
ステップS222では、荷物が落下したと判断され、自律移動式無人搬送車1が、搬送中断による待機状態となる。より具体的には、例えば、ステータス表示ランプ40が赤色に点灯されるとともに、行動開始スイッチランプ46が点滅される。また、スピーカ45から、例えば、「薬品トレイを載せてください。セットが完了したら、点滅ボタンを押してください」といった音声が発せられて待機状態となる。その後、本処理から一旦抜ける。
続いて、自律移動式無人搬送車1による起動処理の処理手順について説明する。自律移動式無人搬送車1に例えばエラー等が発生して自律移動(搬送)が停止された場合に、ステップS300では、停止要因が記憶される。
その後、ステップS302において、自機(電子制御装置30)が起動(ブート)されたか否かについての判断が行われる。なお、起動には、主電源ブレーカ25の投入によるものの他、例えば、行動開始スイッチ26がオンされることによるアプリケーションソフトの起動等を含む。ここで、自機(電子制御装置30)が起動された場合には、ステップS304において移動停止要因が読み込まれる。
次に、ステップS306では、ステップS304において読み込まれた移動停止要因に基づいて、現在の位置(その場)から継続して自律移動(搬送)が可能であるか否かが判断される。その場からの自律移動(その場復帰)が可能と判断された場合は、ステップS308に処理が移行する。一方、自律移動が不可能と判断された場合は、ステップS310に処理が移行する。
ステップS308では、その場から自律移動が開始される。その後、本処理から一旦抜ける。
ステップS310では、ピン状の第1位置決め部材111が検出されたか否か、すなわち自律移動式無人搬送車1と移載機110とが接続されているか否かについての判断が行われる。ここで、ピン状の第1位置決め部材111が検出された場合には、ステップS312に処理が移行する。一方、ピン状の第1位置決め部材111が検出されなかったときには、ステップS314に処理が移行する。
ステップS312では、自機をホームポジション200(初期位置)へ合わせるための位置決め動作が実行される。なお、本動作については、上述した通りであるので、ここでは詳細な説明を省略する。その後、本処理から一旦抜ける。
一方、ステップS314では、自律移動式無人搬送車1のステータスがエラー状態(その場復帰不可能)とされ、停止状態が維持される。その後、本処理から一旦抜ける。その際に、例えば、ステータス表示ランプ40が赤色に点滅され、スピーカ45から、エラーを示す電子音、及び、「エラーが発生しました」「点滅している両側のボタンを同時に押しながら、充電ステーション(移載機110)へ運びドッキングさせてください」等の音声が出力される。その後、本処理から一旦抜ける。
以上、詳細に説明したように、本実施形態によれば、起動されたときに、記憶されている停止要因に基づいて、現在の自己位置から継続して自律移動が可能であるか否かが判断され、自律移動が可能であると判断された場合には、記憶されている自己位置に基づいて、自律移動が開始される。一方、自律移動が不可能であると判断された場合には、待機状態が保持される。よって、例えば、自己位置が保持されている蓋然性が高い停止要因の場合には、停止している位置から復帰(自律移動を再開)させることができる。一方、例えば、自己位置が保持されていない可能性がある停止要因(例えば、センサーファイルやシステムエラー等)の場合には、待機状態が保持されるため、その後、オペレータ等から例えば初期位置に戻す等の適切な処置を受けることができる。その結果、起動時又は復帰時に、自機の停止要因に応じて、適切な位置から自律移動を開始することが可能となる。
また、本実施形態によれば、停止要因がバンパースイッチ24により検知された障害物との接触である場合には、継続して自律移動が可能であると判断される。すなわち、障害物との接触により停止した場合には、自己位置が保持されている蓋然性が高いため、継続して自律移動が可能であると判断される。よって、この場合には、障害物との接触により一旦停止した位置から復帰(自律移動を再開)させることが可能となる。
また、本実施形態によれば、現在の自己位置からの継続した自律移動が不可能であると判断された場合に、スピーカ45により、自機を初期位置へ移動させるように報知される。よって、現在の自己位置からの継続した自律移動が不可能であると判断された場合、すなわち、停止要因(例えば、センサーファイルやシステムエラー等)から自己位置が保持されていない可能性があると判断された場合に、例えばオペレータ等に自機を初期位置(適切な位置)に戻してもらうことができる。よって、初期位置から、改めて自律移動を開始することが可能となる。
本実施形態によれば、起動されたときに、移載機110に設けられた第1位置決め部材111が検出された場合には、第2位置決め部材112との位置関係に基づいて、自律移動式無人搬送車1が初期位置に移動される。よって、移載機110の第1位置決め部材111を検出できるように、例えばオペレータが、自律移動式無人搬送車1を移動させるだけで、第2位置決め部材112との位置関係に基づいて、自動的にかつより正確に、自律移動式無人搬送車1を初期位置にセットすることができる。
本実施形態に係る自律移動式無人搬送システム3によれば、上述した自律移動式無人搬送車1と、上述した第1位置決め部材111及び第2位置決め部材112を有する移載機110とを備えているため、上述したように、起動時又は復帰時に、自機の停止要因に応じて、適切な位置から自律移動を開始することが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、充電装置と移載装置とが一体となった移載機110を用いたが、充電装置と移載装置とは別々に設けられていてもよい。
上記実施形態では、レーザレンジファインダ20,21を用いて物体情報を取得したが、例えば、ステレオカメラを用いたパターン認識等により、物体情報を取得する構成とすることもできる。
また、コントロールボード37、モーションコントローラ38、及びI/Oボード39は統合することもできる。同様に、記憶部34と自己位置記憶部382とを統合してもよい。