以下、図面を参照して、本発明による作業車両の一実施形態について説明する。
図1は、本発明による作業車両の一例であるシリーズハイブリッド式のホイールローダ100の外観側面図である。なお、説明の便宜上、本実施の形態では図に記載したように前後および上下方向を規定する。
図1に示すように、ホイールローダ100は、前部車体140Fと後部車体140Rとで構成される。前部車体140Fは、リフトアーム(以下、単にアーム101と記す)、バケット102、および前輪141F等を有する。後部車体140Rは、運転室151、エンジン室152、および後輪141R等を有する。なお、前輪141Fと後輪141Rについて、総称する場合には車輪141として説明する。
前部車体140Fには、上下方向に回動可能にアーム101が連結されており、アーム101はアームシリンダ110の駆動により上下方向に回動する。アーム101の先端にはバケット102が前後方向に回動可能に取付けられており、バケット102はバケットシリンダ120の駆動により前後方向に回動する。このため、アーム101が上方に回動されるとバケット102が上昇することになり、アーム101が下方に回動されるとバケット102が下降することになる。なお、アーム101が上方に回動してアーム101の先端が上方に移動することを、単にアーム101が上昇する、あるいはアーム101がリフトアップするとも言う。アーム101が下方に回動してアーム101の先端が下方に移動することを、単にアーム101が下降する、あるいはアーム101がリフトダウンするとも言う。
前部車体140Fと後部車体140Rとはセンタピン109を有した関節部により互いに回動自在に連結され、運転者の操舵にともなって一対のステアリングシリンダ130が伸縮すると、後部車体140Rに対し前部車体140Fが左右に屈折する。
アーム101の回動軸には、アーム101の前部車体140Fに対する回動角度を検出するアーム角度センサ204が設けられている。アーム角度センサ204は、たとえばロータリーポテンショメータである。
図2はホイールローダ100の運転室151内に配置される操作部材を示す模式図である。運転室151には、運転者がホイールローダ100を操舵するためのステアリングホイール303と、運転者がエンジン10を始動または停止させるためのイグニッションスイッチ164とが配設されている。ステアリングホイール303はステアリングシリンダ130を伸縮させる際に操作される。運転者はステアリングホイール303を操作することで、ステアリングシリンダ130を伸縮させてホイールローダ100の操舵角を調整して、ホイールローダ100を旋回させる。
ステアリングホイール303の下方には、ステアリングコラムの側部から突出するように前後進切換レバー161が配設されている。前後進切換レバー161は、操作に応じて前進を指示する前進信号、後進を指示する後進信号、および、中立を指示する中立信号を出力する。運転室151の床面には、アクセルペダル162と、左右で連動する一対のブレーキペダル163とが配設されている。
運転者は、アクセルペダル162、ブレーキペダル163、前後進切換レバー161を操作することによって、車輪141を駆動してホイールローダ100を走行させることができる。
運転室151には、アーム101をリフトアップあるいはリフトダウンさせるためのアーム操作レバー301と、バケット102を後傾方向あるいは前傾方向に回動させるためのバケット操作レバー302とが配設されている。なお、バケット102が後傾方向に向かって回動することを、バケット102がロールバックするとも言う。バケット102が前傾方向に向かって回動することを、バケット102がダンプするとも言う。
アーム操作レバー301は、アーム101のリフトアップ(上昇)指令/リフトダウン(下降)指令を出力して、アームシリンダ110を伸縮させる。バケット操作レバー302は、バケット102のクラウド/ダンプ指令を出力して、バケットシリンダ120を伸縮させる。
運転者はアーム操作レバー301、バケット操作レバー302を操作することにより、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120を伸縮させて、バケット102の高さと傾きとを制御し、掘削および荷役作業を行う。
図3は、ホイールローダ100の構成の一例を示す図である。ホイールローダ100は、メインコントローラ200と、エンジン10と、エンジンコントローラ10cと、走行電動装置100Eと、作業油圧装置100Hと、走行駆動装置100Dとを含む。
図4は、ホイールローダ100の作業油圧装置100Hを示す図である。作業油圧装置100Hは、圧油を吐出するメインポンプ11およびパイロットポンプ12と、メインポンプ11から供給される圧油によってアーム101を回転駆動するアームシリンダ110と、メインポンプ11から供給される圧油によってバケット102を回転駆動するバケットシリンダ120と、作業用油圧回路HCとを有している。
メインポンプ11はホイールローダ100の各油圧シリンダ、すなわちステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120(図3および図4において不図示)に圧油を供給する。パイロットポンプ12はアーム操作レバー301のパイロット弁301a,301bおよびバケット操作レバー302のパイロット弁302a,302bに圧油を供給する。図3に示すように、メインポンプ11およびパイロットポンプ12の回転軸はエンジン10の駆動軸と同軸上に設けられている。
メインポンプ11およびパイロットポンプ12がエンジン10により駆動されると、作動油タンク19の作動油が作業用油圧回路HCに供給される。本実施の形態のメインポンプ11は、斜板11aの傾転角を変更することで容量の変更が可能な斜板式の可変容量型油圧ポンプである。メインポンプ11の押しのけ容積(ポンプ1回転当りの吐出量)は、ポンプレギュレータ211により調節される。
図4に示すように、作業用油圧回路HCは、アーム用コントロールバルブ310と、バケット用コントロールバルブ320と、メインリリーフ弁330とを有している。アーム用コントロールバルブ310は、メインポンプ11からアームシリンダ110に供給される圧油の方向と流量を制御してアームシリンダ110の駆動を制御する。バケット用コントロールバルブ320は、メインポンプ11からバケットシリンダ120に供給される圧油の方向と流量を制御してバケットシリンダ120の駆動を制御する。メインリリーフ弁330は、メインポンプ11から吐出される圧油の最高圧力を規定する。
アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320は、オープンセンタ型の方向制御弁であって、メインポンプ11と作動油タンク19とを接続するセンタバイパスライン390に設けられている。すなわち、センタバイパスライン390には、アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320がタンデムに接続されている。アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320は、アーム用コントロールバルブ310の上流側のセンタバイパスライン390から分岐されるパラレル油路391によってメインポンプ11に対してパラレルに接続されている。
アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320は、それぞれアーム操作レバー301およびバケット操作レバー302によって操作される。アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302は、それぞれ油圧パイロット式の操作レバーである。アーム操作レバー301は、パイロットポンプ12から吐出される圧油を減圧して操作量に応じたパイロット圧を出力するパイロット弁301a,301bを備えている。バケット操作レバー302は、パイロットポンプ12から吐出される圧油を減圧して操作量に応じたパイロット圧を出力するパイロット弁302a,302bを備えている。アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320は、パイロット弁301a,301b,302a,302bから出力されるパイロット圧が作用することで、変移量が制御される。アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320の詳細については、後述する。
図5はレバー操作量Lとパイロット圧pとの関係を示す図である。図5に示すように、アーム操作レバー301のレバー操作量Lに応じて、パイロット弁301a,301bからパイロット圧pが出力される。レバー操作量Lが所定値La未満であるときには、パイロット圧pは上昇せず、レバー操作量Lが所定値Laになったときに、パイロット圧pが所定値paまで上昇する。
レバー操作量Lが値La〜Lbの範囲では、パイロット圧pはレバー操作量Lに比例して増加し、レバー操作量LがLbのときにパイロット弁301a,301bから出力されるパイロット圧pはpbとなる。バケット操作レバー302のレバー操作量と、パイロット弁302a,302bから出力されるパイロット圧との関係についても同様である。なお、本明細書では、パイロット弁301aから出力されるパイロット圧をアーム上げパイロット圧と記し、パイロット弁301bから出力されるパイロット圧をアーム下げパイロット圧と記す。また、パイロット弁302aから出力されるパイロット圧をロールバックパイロット圧と記し、パイロット弁302bから出力されるパイロット圧をダンプパイロット圧と記す。
図4に示すように、アーム用コントロールバルブ310は、中立位置(N)、ライズ位置(R)、パワーダウン位置(D)およびフロートダウン位置(F)を有している。アーム用コントロールバルブ310は、パイロット圧(アーム上げパイロット圧およびアーム下げパイロット圧)に応じてスプールのストローク量を変更して、アームシリンダ110に供給される圧油の方向および流量を変更する。アーム用コントロールバルブ310は、Pポートと、P’ポートと、Tポートと、Aポートと、T’ポートと、Bポートとを有している。
バケット用コントロールバルブ320は、中立位置(N)、ロールバック位置(R)およびダンプ位置(D)を有している。バケット用コントロールバルブ320は、パイロット圧(ロールバックパイロット圧およびダンプパイロット圧)に応じてスプールのストローク量を変更して、バケットシリンダ120に供給される圧油の方向および流量を変更する。バケット用コントロールバルブ320は、Pポートと、P’ポートと、Tポートと、Aポートと、T’ポートと、Bポートとを有している。
アーム用コントロールバルブ310のPポートは、逆止弁392を介してメインポンプ11に接続されている。アーム用コントロールバルブ310のP’ポートはメインポンプ11に、T’ポートはバケット用コントロールバルブ320のP’ポートに、Tポートは作動油タンク19にそれぞれ接続されている。アーム用コントロールバルブ310のAポートはアームシリンダ110のボトム側油室110aに、Bポートはアームシリンダ110のロッド側油室110bにそれぞれ接続されている。
バケット用コントロールバルブ320のPポートは、逆止弁393を介してアーム用コントロールバルブ310のT’ポートに接続され、さらにパラレル油路391上にある絞り394および逆止弁395を介してメインポンプ11に接続されている。バケット用コントロールバルブ320のP’ポートはアーム用コントロールバルブ310のT’ポートに、TポートおよびT’ポートは作動油タンク19にそれぞれ接続されている。バケット用コントロールバルブ320のAポートはバケットシリンダ120のボトム側油室120aに、Bポートはバケットシリンダ120のロッド側油室120bにそれぞれ接続されている。
図4〜図7を参照してアーム操作レバー301およびバケット操作レバー302に基づく動作について説明する。図6はアーム操作レバー301とバケット操作レバー302の操作方向を示す図であり、図7は図6に示すレバーの操作方向に対応するアーム101およびバケット102の動作方向を示す模式図である。
図6に示すように、アーム操作レバー301が中立操作位置(N)に配置され、アーム上げパイロット圧およびアーム下げパイロット圧のいずれもが図4に示すアーム用コントロールバルブ310に作用しないとき、アーム用コントロールバルブ310のスプールは中立位置(N)となる。アーム用コントロールバルブ310のスプールが中立位置(N)にあるときには、P’ポートとT’ポートとが接続され、PポートおよびTポートがAポートおよびBポートと遮断される。
図6に示すように、バケット操作レバー302が中立操作位置(N)に配置され、ロールバックパイロット圧およびダンプパイロット圧のいずれもが図4に示すバケット用コントロールバルブ320に作用しないとき、バケット用コントロールバルブ320のスプールは中立位置(N)となる。バケット用コントロールバルブ320のスプールが中立位置(N)にあるときには、P’ポートとT’ポートとが接続され、PポートおよびTポートがAポートおよびBポートと遮断される。
図6に示すように、運転者がアーム操作レバー301を中立操作位置(N)からアーム上げ(RISE)側操作方向に操作すると、図4に示すアーム用コントロールバルブ310にアーム上げパイロット圧が作用するため、アーム用コントロールバルブ310のスプールは中立位置(N)からライズ位置(R)に向かって移動する。アーム上げパイロット圧の大きさに応じてP’ポートとT’ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、PポートとAポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとBポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。ライズ位置(R)では、メインポンプ11からの圧油がアームシリンダ110のボトム側油室110aに供給され、かつ、アームシリンダ110のロッド側油室110bが作動油タンク19と接続されてロッド側油室110bがタンク圧となる。したがって、運転者がアーム操作レバー301をアーム上げ側操作方向に操作すると、アームシリンダ110のシリンダロッドが伸長されて、図7に示すように、アーム101が上方向に回動され、バケット102が上昇する。なお、バケット102を上昇させるためのアーム上げ側操作方向の操作量を「リフトアップ操作量」と定義する。
図6に示すように、運転者がアーム操作レバー301を中立操作位置(N)からアーム下げ(DOWN)側操作方向に操作すると、図4に示すアーム用コントロールバルブ310にアーム下げパイロット圧が作用するため、アーム用コントロールバルブ310のスプールは中立位置(N)からパワーダウン位置(D)に向かって移動する。アーム下げパイロット圧の大きさに応じてP’ポートとT’ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、PポートとBポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとAポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。パワーダウン位置(D)では、メインポンプ11からの圧油がアームシリンダ110のロッド側油室110bに供給され、かつ、アームシリンダ110のボトム側油室110aが作動油タンク19と接続されてボトム側油室110aがタンク圧とされる。したがって、運転者がアーム操作レバー301をアーム下げ側操作方向に操作すると、アームシリンダ110のシリンダロッドが縮退されて、図7に示すように、アーム101が下方向に回動され、バケット102が動力降下する。なお、バケット102を下降させるためのアーム下げ側操作方向の操作量を「リフトダウン操作量」と定義する。
アーム用コントロールバルブ310がパワーダウン位置(D)にある状態から、図6に示すように、運転者がさらにアーム操作レバー301をアーム下げ(DOWN)操作側の方向に操作すると、アーム用コントロールバルブ310のスプールはパワーダウン位置(D)からフロートダウン位置(F)に向かって移動する。図4に示すように、フロートダウン位置(F)では、アーム用コントロールバルブ310は、Pポートを遮断し、P’ポートとT’ポートとを連通し、AポートとBポートとを連通して共にTポートに接続する。フロートダウン位置(F)では、アームシリンダ110のロッド側油室110bおよびボトム側油室110aのそれぞれがタンク圧とされる。このように、アーム用コントロールバルブ310は、リフトダウン操作量の増加に応じてパワーダウン位置(D)からフロートダウン位置(F)に切り換わる構成とされている。
アーム操作レバー301は、アーム操作レバー301がアーム下げ側操作方向にフル操作されると、周知のデテントソレノイド301d(図4参照)が励磁され、アーム操作レバー301がその位置(以下、フロートダウン操作位置(F)と記す)で電磁保持される。これにより、アーム用コントロールバルブ310はフロートダウン位置(F)に切り換えられた状態で保持される。その結果、図7に示すように、アーム101は自由降下して、バケット102が地上に接すると外力のまま自由に上下動するようになる。
図6に示すように、運転者がバケット操作レバー302を中立操作位置(N)からロールバック(ROLLBACK)側の操作方向に操作すると、図4に示すバケット用コントロールバルブ320にロールバックパイロット圧が作用するため、バケット用コントロールバルブ320のスプールは中立位置(N)からロールバック位置(R)に向かって移動する。ロールバックパイロット圧の大きさに応じて、P’ポートとT’ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、PポートとAポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとBポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。ロールバック位置(R)では、メインポンプ11からの圧油がバケットシリンダ120のボトム側油室120aに供給され、かつ、バケットシリンダ120のロッド側油室120bが作動油タンク19と接続されてロッド側油室120bがタンク圧となる。したがって、運転者がバケット操作レバー302をロールバック側操作方向に操作すると、バケットシリンダ120のシリンダロッドが伸長されて、図7に示すように、バケット102が後傾方向に回動される、すなわちロールバック動作される。なお、バケット102をロールバック動作させるためのロールバック側操作方向の操作量を「ロールバック操作量」と定義する。
図6に示すように、運転者がバケット操作レバー302を中立操作位置(N)からダンプ(DUMP)側操作方向に操作すると、図4に示すバケット用コントロールバルブ320にダンプパイロット圧が作用するため、バケット用コントロールバルブ320のスプールは中立位置(N)からダンプ位置(D)に向かって移動する。ダンプパイロット圧の大きさに応じて、P’ポートとT’ポートとを接続する流路の開口面積が漸減し、PポートとBポートとを接続する流路の開口面積、およびTポートとAポートとを接続する流路の開口面積がそれぞれ漸増する。ダンプ位置(D)では、メインポンプ11からの圧油がバケットシリンダ120のロッド側油室120bに供給され、かつ、バケットシリンダ120のボトム側油室120aが作動油タンク19と接続されてボトム側油室120aがタンク圧となる。したがって、運転者がバケット操作レバー302をダンプ側操作方向に操作すると、バケットシリンダ120のシリンダロッドが縮退されて、図7に示すように、バケット102が前傾方向に回動される、すなわちダンプ動作される。なお、バケット102をダンプ動作させるためのダンプ側操作方向の操作量を「ダンプ操作量」と定義する。
図3を参照して、走行駆動装置100Dについて説明する。走行駆動装置100Dは、アクスル142F,142Rと、ディファレンシャル装置143F,143Rと、プロペラシャフト145とを含み、走行電動機402f,402rによって駆動される。走行電動機402fのロータおよび走行電動機402rのロータは、両端のそれぞれに自在継手を有するプロペラシャフト145を介して接続されている。
一対の前輪141Fは、それぞれ、前輪側アクスル142Fに連結されている。前輪側アクスル142Fはディファレンシャル装置143Fに接続され、ディファレンシャル装置143Fは一対の自在継手からなる連結部146を介して前側の走行電動機402fのロータシャフトに連結されている。一対の後輪141Rは、それぞれ、後輪側アクスル142Rに連結されている。後輪側アクスル142Rはディファレンシャル装置143Rに接続され、ディファレンシャル装置143Rは一対の自在継手からなる連結部147を介して後側の走行電動機402rのロータシャフトに連結されている。
図3を参照して走行電動装置100Eについて説明する。走行電動装置100Eは、発電電動機401と、発電電動機用のインバータ(以下、M/Gインバータ410と記す)と、走行電動機402f,402rと、走行電動機用のインバータ(以下、走行インバータ420f,420rと記す)と、キャパシタなどの蓄電素子404と、コンバータ440とを含む。
発電電動機401は、エンジン10の駆動軸と同軸上にある回転軸にロータが取り付けられ、ロータの外周にステータが配置されている。発電電動機401は発電機モードと電動機モードのいずれかのモードで駆動される。発電機モードが選択されているとき、発電電動機401は、エンジン10によってロータが回転することにより発電する。M/Gインバータ410は発電電動機401で発電された交流電力を所定電圧の直流電力に変換する。電動機モードが選択されているとき、発電電動機401は、M/Gインバータ410から交流電力が供給されて電動機として機能する。発電電動機401の回転軸はエンジン10の回転軸とメインポンプ11の回転軸に連結されている。そのため、発電電動機401の出力トルクはメインポンプ11に与えられる。
走行電動機402f,402rは、蓄電素子404および発電電動機401に電力線を介して接続され、蓄電素子404および発電電動機401の一方、または双方から供給される電力によって車輪141を駆動する。走行加速時には、走行電動機402f,402rは、走行インバータ420f,420rにより力行駆動される。力行駆動により発生した力行トルクはプロペラシャフト145、ディファレンシャル装置143F,143Rおよびアクスル142F,142Rを介して前輪141Fおよび後輪141Rへと伝えられ、ホイールローダ100が加速する。走行制動時には、走行電動機402f,402rが発生した回生トルク(制動トルク)は、力行トルクと同様にして車輪141へと伝えられ、ホイールローダ100が減速する。
車輪141は油圧ブレーキ(不図示)により制動される。油圧ブレーキは、油圧ブレーキ制御弁(不図示)からのブレーキ圧力に応じて制動力を得る。
走行インバータ420f,420rは、走行加速時には走行電動機402f,402rに交流走行駆動電力を供給してそれぞれを駆動する。走行インバータ420f,420rは、走行制動時に走行電動機402f,402rで発生した回生電力(交流電力)を所定電圧の直流電力に変換して蓄電素子404に供給する。コンバータ440、M/Gインバータ410および走行インバータ420f,420rは、同一の電力線に接続され、相互に電力の供給が可能となるように構成されている。コンバータ440は、電力線に取り付けられた平滑コンデンサ(不図示)の直流電圧(DC電圧)を監視し、この平滑コンデンサのDC電圧を一定に保つように蓄電素子404の充放電を制御する。
なお、本実施の形態では、走行電動機402と走行インバータ420を2つずつ備える構成としているが、これに限らず、走行電動機および走行インバータを1つずつ、または、4つずつ備える構成であってもよく、これらの個数に関しては限定しない。以下、説明の簡略化のため、走行電動機402および走行インバータ420を1つずつ備える構成について説明を行う。
メインコントローラ200およびエンジンコントローラ10cは、それぞれ演算処理装置を含む。各演算処理装置は、CPUや、記憶装置であるROMおよびRAM、その他の周辺回路などを有する。メインコントローラ200は、ホイールローダ100の走行系および油圧作業系を含むシステム全体の制御を行っており、システム全体が最高のパフォーマンスを発揮するように各部を制御する。
図3および図4に示すように、メインコントローラ200には、パイロット圧センサ201a,201b,202a,202b(図4参照)、ポンプ圧センサ203(図4参照)、アーム角度センサ204(図3参照)、前後進切換スイッチ206(図3参照)、アクセルペダルセンサ207(図3参照)、走行電動機回転数センサ208(図3参照)、および、ブレーキペダルセンサ209(図3参照)のそれぞれからの信号が入力される。
図4に示すように、アーム操作レバー301の操作量はパイロット圧センサ201a,201bで検出される。パイロット圧センサ201aからはリフトアップ操作量に応じたリフトアップ指令が出力され、パイロット圧センサ201bからはリフトダウン操作量に応じたリフトダウン指令が出力される。バケット操作レバー302の操作量はパイロット圧センサ202a,202bで検出される。パイロット圧センサ202aからはロールバック操作量に応じたロールバック指令が出力され、パイロット圧センサ202bからはダンプ操作量に応じたダンプ指令が出力される。なお、リフトアップ指令およびリフトダウン指令、ならびに、ロールバック指令およびダンプ指令について、総称する場合にはレバー信号として説明する。
メインポンプ11の吐出圧(以下、単にポンプ圧と記す)は、ポンプ圧センサ203で検出される。ポンプ圧センサ203は、メインポンプ11とアーム用コントロールバルブ310との間に設けられ、検出したポンプ圧に応じたポンプ圧信号をメインコントローラ200へ出力する。
図3に示すように、アクセルペダル162の踏込量はアクセルペダルセンサ207で検出される。ブレーキペダル163の踏込量はブレーキペダルセンサ209で検出される。アクセルペダルセンサ207およびブレーキペダルセンサ209は、運転者による操作量、すなわち踏込量に応じて、それぞれアクセル信号とブレーキ信号とをメインコントローラ200へ出力する。前後進切換レバー161が前進側または後進側に操作されたことは前後進切換スイッチ206により検出され、この前後進切換スイッチ206は前進信号または後進信号をメインコントローラ200に出力する。
走行電動機回転数センサ208は、走行電動機402の回転数を検出して、走行電動機回転数信号をメインコントローラ200へ出力する。
図8は、メインコントローラ200の機能を説明するブロック図である。図8に示すように、メインコントローラ200は、蓄電管理部210と、油圧要求演算部220と、走行要求演算部230と、出力管理部240と、目標回転数演算部250と、発電電動機制御部260と、傾転角制御部270と、走行電動機・ブレーキ制御部280と、ブレーキ制御部290とを機能的に備える。
−蓄電管理部−
蓄電管理部210は、蓄電素子404の許容充電電力Pwr_chg_maxを演算して出力管理部240に出力する。蓄電管理部210には、コンバータ440で検出される蓄電素子404の蓄電電圧が入力される。蓄電管理部210は、コンバータ440から入力した蓄電素子404の蓄電電圧と、メインコントローラ200内の記憶装置(不図示)に記憶された許容充電電力マップとに基づいて、蓄電素子404の許容充電電力Pwr_chg_maxを算出する。
図9に許容充電電力マップの一例を示す。図9では、Vcmin、Vcmaxはそれぞれ蓄電素子404が劣化しにくい使用範囲における最低電圧、最高電圧である。許容充電電力マップは、蓄電素子404の蓄電電圧が最高電圧Vcmaxを超えないように、許容充電電力が最高電圧Vcmax付近で0以下になるように設定されている。一方、Icmaxはコンバータ440の最大電流制限に基づいて設定される。許容充電電力マップは、充電電流が最大電流制限Icmaxを超えないように蓄電電圧が低いほど許容充電電力が小さくなるようにも設定されている。
−油圧要求演算部−
油圧要求演算部220は、ポンプ要求流量指令qpmp_reqと、油圧要求出力Pwr_pmp_reqとを演算する。油圧要求演算部220には、アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302からレバー信号が入力され、ポンプ圧センサ203からポンプ圧ppmpを表すポンプ圧信号が入力される。なお、説明を簡略化するため、ステアリングホイール303の操作およびステアリングシリンダ130の動作については演算に含めないものとする。
図10は、油圧要求演算部220の機能を説明するブロック図である。油圧要求演算部220は、作業状態判定部221と、流量演算部224と、切換部225と、最大値選択部226と、出力演算部227と、アーム高さ判定部229とを機能的に備えている。
作業状態判定部221は、ホイールローダ100の状態が掘削作業状態であるか否かを判定する。図14はホイールローダ100による掘削作業を説明する図であり、図15はホイールローダ100による荷役作業(トラックへの積込み作業)を説明する図である。ホイールローダ100による掘削作業および荷役作業は次のようにして行われる。
−−掘削作業−−
(1)図14に示すように、運転者はバケット操作レバー302とアーム操作レバー301とを操作して、バケット102が地面から僅かな高さを隔てて地面と平行になるように、バケット102を配置させておく。
(2)運転者はアクセルペダル162を踏み込み操作して、ホイールローダ100を土砂などの地山9に向けて前進走行させ、バケット102を地山9に突っ込み、アーム操作レバー301とバケット操作レバー302とを操作して、土砂をバケット102内に積み込んでいく。
(3)運転者はアーム操作レバー301とバケット操作レバー302とを操作してアーム101を上昇させつつバケット102を徐々に後傾方向へ回動させる。運転者は所定の掘削終了高さまでアーム101が上昇したときに、アーム操作レバー301とバケット操作レバー302とを操作して、アーム101の上昇を止めると同時にバケット102を後傾方向へ回動させて土砂をバケット102内の後側に引き込む。これにより、ホイールローダ100を運搬姿勢とすることができる。
−−荷役作業−−
(4)運転者は前後進切換レバー161を後進側に切り換えた後、アクセルペダル162、ステアリングホイール303を操作して、ホイールローダ100を後進走行させ、地山9から離れる。
(5)図15(a)および図15(b)に示すように、運転者は前後進切換レバー161を前進側に切り換えた後、アクセルペダル162、ステアリングホイール303を操作して、ホイールローダ100を前進走行させ、土砂を運搬するトラックにホイールローダ100を近づける。なお、運転者は、トラックへ向かって前進走行する際、アーム101を上昇させる。ホイールローダ100がトラックの手前で停止したときに、バケット102が積込み高さまで上昇していれば、直ちにすくい込んだ土砂等をトラックに積み込むことができる。そのため、トラックへ向けたホイールローダ100の前進走行時には、速やかにアーム101を上昇させることのできる上昇速度が得られることが望ましい。
(6)図15(c)に示すように、運転者はアーム操作レバー301を操作してアームを積込み高さまで上昇させた後、図15(d)に示すように、バケット操作レバー302を操作してバケット102を前傾方向に回動させ、すなわちダンプさせ、土砂を積込みトラックへ放土する。
本実施の形態では、このような掘削作業や荷役作業での運転者の操作を考慮して、作業状態の判定に用いる条件が定められている。図10に示す作業状態判定部221は、以下の3つの条件(i)〜(iii)のいずれもが満たされているときに、ホイールローダ100が掘削作業状態であると判定し、条件(i)〜(iii)のいずれかが満たされていないときには、ホイールローダ100が非掘削作業状態であると判定する。
(i)アーム操作レバー301が上げ側操作方向に操作され、リフトアップ操作量に応じた所定値(たとえば、pa)以上のパイロット圧pを表すレバー信号が、パイロット圧センサ201aからメインコントローラ200に入力されていること。
(ii)前後進切換レバー161が前進側に操作され、前後進切換スイッチ206からの前進信号がメインコントローラ200に入力されていること。
(iii)アーム角度センサ204からメインコントローラ200に入力されたアーム101の角度信号によって得られるアーム先端部の走行面からの高さが、所定高さ(たとえば、運搬高さである300mm程度)未満であること。
流量演算部224は、ポンプ要求流量マップの各特性を参照し、各パイロット圧センサ201a,201b,202a,202bから出力されるレバー信号に基づいてポンプ要求流量を演算する。
図11は、ポンプ要求流量マップの一例を示す図である。ポンプ要求流量マップには、特性AR1,AR2,ADおよびBR,BDが示されている。これらの特性AR1,AR2,ADおよびBR,BDは、ルックアップテーブル形式でメインコントローラ200の記憶装置(不図示)に記憶されている。なお、各特性は近似式で記憶させておいてもよい。
特性AR1は、掘削作業時に、アーム操作レバー301に対してアーム上げ側操作方向の操作がなされたときに用いられる。特性AR2は、非掘削作業時に、アーム操作レバー301に対してアーム上げ側操作方向の操作がなされたときに用いられる。特性ADは、アーム操作レバー301に対してアーム下げ側操作方向の操作がなされたときに用いられる。特性BRは、バケット操作レバー302に対してロールバック側操作方向の操作がなされたときに用いられる。特性BDは、バケット操作レバー302に対してダンプ側操作方向の操作がなされたときに用いられる。各特性AR1,AR2,ADおよびBR,BDは、それぞれ独立して設けられ、異なった特性とされている。なお、以下で説明するパイロット圧p1〜p5の大小関係は、p1<p2<p3<p4<p5である。
各特性AR1,AR2,ADおよびBR,BDは、いずれもパイロット圧pが0以上p1以下の範囲において、パイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qが増加し、パイロット圧pがp1のときにポンプ要求流量QがQ1となるように定められている。以下、説明の便宜上、パイロット圧pの増加に応じたポンプ要求流量Qの増加率のことを、単に流量増加率と記す。
図12(a)に示すように、掘削作業時のアーム上げ側操作方向の操作量に応じたポンプ要求流量Qを定める特性AR1は、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲において、パイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qが増加するように定められている。パイロット圧pがp4以上p5以下の範囲における流量増加率は、p1以上p4未満の範囲における流量増加率に比べて小さく設定されている。なお、図12(a)では、特性AR1の比較例として、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲において、流量増加率が一定とされた特性AR1’を破線で示している。このように特性AR1では、p4以上p5以下の範囲における流量増加率が、p1以上p4未満の範囲における流量増加率に比べて小さく設定されている。このため、本実施の形態では、たとえば、パイロット圧pがp5のときのポンプ要求流量Qを、比較例の特性AR1’から求められるポンプ要求流量Qb1に比べて小さいQa1とすることができる(Qa1<Qb1)。これにより、掘削作業時において、アーム操作レバー301がアーム上げ側操作方向にフル操作されている状態(図12(a)の特性AR1参照)からアーム101を急停止させた場合に発生するショックを、比較例(図12(a)の破線で示す特性AR1’参照)に比べて軽減できる。
図12(b)に示すように、荷役作業時などの非掘削作業時のアーム上げ側操作方向の操作量に応じたポンプ要求流量Qを定める特性AR2は、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲において、パイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qが増加するように定められている。パイロット圧pがp2以上p5以下の範囲における流量増加率は、p1以上p2未満の範囲における流量増加率に比べて小さく設定されている。なお、図12(b)では、特性AR2の比較例として、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲において、流量増加率が一定とされた特性AR2’を破線で示している。このように特性AR2では、p2以上p5以下の範囲における流量増加率が、p1以上p2未満の範囲における流量増加率に比べて小さく設定されている。このため、本実施の形態では、たとえば、パイロット圧pがp5のときのポンプ要求流量Qを、比較例の特性AR2’から求められるポンプ要求流量Qb2に比べて小さいQa2とすることができる(Qa2<Qb2)。これにより、非掘削作業時において、アーム操作レバー301がアーム上げ側操作方向にフル操作されている状態(図12(b)の特性AR2参照)からアーム101を急停止させた場合に発生するショックを、比較例(図12(b)の破線で示す特性AR2’)に比べて軽減できる。
図12(a)および図12(b)に示すように、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲における平均的な流量増加率は、特性AR2に比べて特性AR1の方が小さくなるようにした。このため、図12(a)に示すように、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲では、掘削作業時における所定のリフトアップ操作量を表すパイロット圧pwに応じたポンプ要求流量QW1が、非掘削作業時における上記所定のリフトアップ操作量を表すパイロット圧pwに応じたポンプ要求流量QW2に比べて小さくなる(QW1<QW2)。このように、非掘削作業時の特性AR2の平均的な流量増加率に比べて、掘削作業時の特性AR1の平均的な流量増加率を小さくすることで、掘削作業時に牽引力を優先させることができる。
図13(a)に示すように、特性ADは、パイロット圧pがp1以上p3未満の範囲において、パイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qが増加し、パイロット圧pがp3以上p5以下の範囲において、パイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qが減少するように定められている。アーム101をリフトダウンさせるときにはアーム101の自重を利用することができる。このため、リフトダウン時では、非掘削作業におけるリフトアップ時に比べて、ポンプ吐出量は小さくてもよい。本実施の形態では、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲において、パイロット圧pに応じたポンプ要求流量Qが特性AR2に比べて、特性ADの方が小さくなるようにした。
たとえば荷役作業時にアーム操作レバー301が単独で操作された場合において、所定のリフトダウン操作量を表すパイロット圧pxがパイロット圧センサ201bで検出されたときのポンプ要求流量QXDは、上記所定のリフトダウン操作量と同等のリフトアップ操作量を表すパイロット圧pxがパイロット圧センサ201aで検出されたときのポンプ要求流量QXRよりも小さくなる。このように、非掘削作業時におけるリフトダウン操作時のポンプ要求流量が、非掘削作業時におけるリフトアップ操作時のポンプ要求流量に比べて小さくなるように特性ADを定めることで、アーム101をリフトダウンさせるときのエネルギーの損失を抑えることができる。なお、本実施の形態では、リフトダウン操作時のポンプ要求流量の特性ADは、掘削作業時においても同じ特性が用いられる。
アーム用コントロールバルブ310がフロートダウン位置(F)に切り換えられた状態(図4参照)で行う作業、たとえば整地作業ではメインポンプ11の吐出量は小さくてよい。このため、特性ADでは、パイロット圧pがp3のときにポンプ要求流量Qを最大値Q2とし、パイロット圧pがp3以上の範囲ではパイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qを減少させ、フロート操作位置(F)で発生するパイロット圧p5のときのポンプ要求流量QをQ2よりも小さいQ1とした。これにより、整地作業時などでのエネルギーの損失を抑えることができる。
図13(b)に示すように、特性BRおよび特性BDは、それぞれパイロット圧pがp1以上p5以下の範囲において、パイロット圧pの増加に応じてポンプ要求流量Qが増加するように定められている。特性BRおよび特性BDは、パイロット圧pがp1以上p4未満の範囲において、共通の特性とされている。
特性BRでは、パイロット圧pがp4以上p5以下の範囲における流量増加率が、p1以上p4未満の範囲における流量増加率に比べて小さく設定されている。これに対して特性BDでは、パイロット圧pがp4以上p5以下の範囲における流量増加率が、p1以上p4未満の範囲における流量増加率と同一に設定されている。つまり、パイロット圧pがp4以上p5以下の範囲における流量増加率は、特性BRに比べて、特性BDの方が大きい。したがって、図13(b)に示すように、パイロット圧pがp4以上p5以下の範囲では、所定のダンプ操作量を表すパイロット圧pyに応じたポンプ要求流量QYDは、上記所定のダンプ操作量と同等のロールバック操作量を表すパイロット圧pyに応じたポンプ要求流量QYRに比べて大きくなる(QYD>QYR)。
上記したように特性BRを定めることで、バケット操作レバー302がロールバック側操作方向にフル操作されている状態からバケット102を急停止させた場合、たとえばバケット102を最後傾位置まで回動したときに発生するショックを軽減できる。また、上記したように特性BDを定めることで、土砂をトラックへ積込む際に、バケット操作レバー302をダンプ側操作方向にフル操作して、バケット102を最前傾位置まで回動したときに、意図的に適度なショックを発生させて、バケット102から土砂を効率よくふるい落とすことができる。
図13(b)に示すように、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲における平均的な流量増加率は、特性AR2に比べて、特性BR,BDの方が小さくなるようにした。このため、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲では、所定のロールバック操作量およびダンプ操作量を表すパイロット圧pzに応じたポンプ要求流量QZBは、上記所定のロールバック操作量およびダンプ操作量と同等の、非掘削作業時のリフトアップ操作量を表すパイロット圧pzに応じたポンプ要求流量QZ2に比べて小さくなる(QZB<QZ2)。掘削作業では、アーム操作レバー301のアーム上げ側操作方向の操作と同時に、バケット操作レバー302の操作も行われる。このため、非掘削作業でのリフトアップ動作時の特性AR2の平均的な流量増加率に比べて、バケット動作時の特性BR,BDの平均的な流量増加率を小さくすることで、掘削作業時に牽引力を優先させることができる。
アーム101のリフトアップ動作とバケット102の動作とが複合してなされるときには、後述する最大値選択部226(図10参照)により、特性AR1および特性BRまたはBDを参照して演算されたポンプ要求流量Qのうち大きい方が選択される。そこで、図13(b)に示すように、パイロット圧pがp1以上p5以下の範囲における平均的な流量増加率は、特性AR1に比べて、特性BR,BDの方が大きくなるようにした。これにより、アーム101の単独動作時に比べて、アーム101とバケット102の複合動作時においてアームシリンダ110へ供給される流量が低下してアーム101の上昇速度が低下することを抑制できる。
図10に示すように、作業状態判定部221で掘削作業状態であることが判定されると、切換部225は端子a側に切り換わる。このため、ホイールローダ100が掘削作業状態のときには、特性AR1を参照し、パイロット圧センサ201aで検出されるパイロット圧pに基づいて演算されたポンプ要求流量Qが最大値選択部226に出力される。一方、作業状態判定部221で非掘削作業状態であることが判定されると、切換部225は端子b側に切り換わる。このため、ホイールローダ100が非掘削作業状態のときには、特性AR2を参照し、パイロット圧センサ201aで検出されるパイロット圧pに基づいて演算されたポンプ要求流量Qが最大値選択部226に出力される。
最大値選択部226は、流量演算部224で演算された各特性に応じたポンプ要求流量Qのうち、最も大きい値を選択して、その値をポンプ要求流量指令qpmp_reqとして記憶し、出力演算部227および傾転角制御部270へ出力する。
出力演算部227は、ポンプ要求流量指令qpmp_reqと、受信したポンプ圧ppmpとを用いて、以下の式(1)により油圧要求出力Pwr_pmp_reqを算出する。算出された油圧要求出力は、傾転角制御部270に出力される。
Pwr_pmp_req=qpmp_req・ppmp …(1)
なお、説明を簡略化するため、メインポンプ11の効率は考慮しないものとし、以下の計算式においても同様にメインポンプ11の効率は含まれない。
−走行要求演算部−
走行要求演算部230は、走行時に走行電動機402に要求されるトルクである走行要求トルクTrq_reqと、走行時に走行電動機402で消費または発生(回生)される電力である走行要求出力Pwr_drv_reqとを演算する。走行要求演算部230は、メインコントローラ200の記憶装置(不図示)に記憶されたアクセル要求トルクマップを用いて演算を行う。
図16にアクセル要求トルクマップの一例を示す。アクセル要求トルクマップは、走行電動機402の最大トルクカーブについて、アクセル要求トルクTrq_accが、アクセル信号に比例しつつ走行電動機402の回転数の絶対値に反比例するように設定されている。走行要求演算部230は、アクセルペダルセンサ207から入力されるアクセル信号と、走行電動機回転数センサ208から入力される走行電動機回転数Nmotとに基づいて、アクセル要求トルクマップを用いてアクセル要求トルクTrq_accを算出する。
走行要求演算部230は、算出したアクセル要求トルクTrq_accと、前後進切換スイッチ206から入力される前後進スイッチ信号VFNRと、走行電動機回転数センサ208から入力される走行電動機回転数Nmotと、ブレーキペダルセンサ209から入力されるブレーキ信号Vbrkとを用いて、以下の式(2)により走行要求トルクTrq_reqを算出する。
Trq_req=sign(VFNR)・Trq_acc−sign(Nmot)・Kbrk・Vbrk
…(2)
ただし、signは符号関数であり、引数が正の場合は1を、負の場合は「−1」を、0の場合は「0」を返すものとする。さらに、前後進スイッチ信号VFNRは、前後進切換スイッチ206が前進方向の場合は「1」を、後進方向の場合は「−1」を、中立の場合は「0」を示す。Kbrkは比例定数であり、ブレーキペダルの操作によって過不足のない減速が得られるように予め設定されている。
走行要求演算部230には、コンバータ440で検出されるDC電圧VDCと、走行インバータ420で検出される走行直流電流(以下、走行DC電流IDC_motと記す)が入力されている。走行DC電流は走行インバータ420の電力線側を流れるDC電流であり、消費側を正とし、回生側を負とする。走行要求演算部230は、DC電圧VDCと、走行DC電流IDC_motとを用いて、以下の式(3)により走行要求出力Pwr_drv_reqを算出する。
Pwr_drv_req=VDC・IDC_mot …(3)
−出力管理部−
出力管理部240は、傾転角増加指令dDpmp_tと、回生電力低減指令dPwr_mot_tと、発電出力指令Pwr_gen_tと、エンジン出力指令Pwr_eng_tとを算出する。出力管理部240には、エンジンコントローラ10cからのエンジン回転数Nengと、蓄電管理部210からの許容充電電力Pwr_chg_maxと、油圧要求演算部220からの油圧要求出力Pwr_pmp_reqと、走行要求演算部230からの走行要求出力Pwr_drv_reqとが入力される。
なお、出力管理部240は、エンジン回転数を受信して演算に用いているが、エンジン10、発電電動機401およびメインポンプ11が機械的に接続されているため、エンジン回転数に代えて発電電動機401およびメインポンプ11の回転数をセンサ等を介して適宜受信して演算に用いてもよい。
(余剰電力)
出力管理部240は、走行要求演算部230から走行要求出力Pwr_drv_reqを受信する。この走行要求出力Pwr_drv_reqが0以上であれば、出力管理部240はホイールローダ100が力行運転中と判断し、走行要求出力Pwr_drv_reqが負であればホイールローダ100が回生運転中と判断する。ホイールローダ100が回生運転中と判断すると、出力管理部240は、蓄電管理部210からの許容充電電力Pwr_chg_maxと、走行要求演算部230からの走行要求出力Pwr_drv_reqとを用いて、以下の式(4)により、余剰電力Pwr_supを算出する。
Pwr_sup=max(|Pwr_drv_req|−Pwr_chg_max,0)…(4)
回生時の走行要求出力Pwr_drv_reqが許容充電電力Pwr_chg_maxより大きいとき、その差が余剰電力Pwr_supとして計算される。回生時の走行要求出力Pwr_drv_reqが許容充電電力Pwr_chg_maxより小さいとき、その差は負となり、余剰電力Pwr_supは0として計算される。この場合、回生電力で蓄電素子404を充電することができる。
出力管理部240は、算出した余剰電力Pwr_supが0か否かを監視することで、走行電動機402で発生した全ての回生電力を蓄電素子404に充電可能か否か、すなわち余剰電力Pwr_supが発生するか否かを判定する。ただし、力行運転中と判断されている場合には、余剰電力Pwr_supは0に設定される。
すなわち、出力管理部240は、式(4)で算出される余剰電力Pwr_supから以下のことを判定することができる。
(a)余剰電力Pwr_supが0のときに回生電力で蓄電素子404を充電することができる。(b)余剰電力Pwr_supが0ではないときには、回生電力で蓄電素子404を充電することができないので、発電電動機401を電動モードで駆動して回生電力を消費する。
(エンジン回転数によるモード判定)
出力管理部240は、ホイールローダ100が回生運転中と判断すると、エンジン10のエンジン回転数Nengが第1設定閾値Neng_th1以下であるか、さらに第2設定閾値Neng_th2以下であるかを判定する。ここで、第1設定閾値Neng_th1および第2設定閾値Neng_th2は、「エンジン10のアイドル回転数<第1設定閾値Neng_th1<第2設定閾値Neng_th2<min{エンジン10の最高回転数、メインポンプ11の最高回転数}」を満たすように設定されている。第1設定閾値Neng_th1および第2設定閾値Neng_th2は、メインコントローラ200の記憶装置(不図示)に記憶され、必要に応じて適宜再設定が可能である。
出力管理部240は、入力されたエンジン回転数Nengと第1設定閾値Neng_th1と第2設定閾値Neng_th2とを比較して、エンジン10が低回転モードか、回転抑制モードか、高回転モードかを判定する。この場合、エンジン回転数Nengが第1設定閾値Neng_th1以下であれば、出力管理部240はエンジン10を低回転モードと判定する。エンジン回転数Nengが第1設定閾値Neng_th1よりも大きく第2設定閾値Neng_th2以下であれば、出力管理部240はエンジン10を回転抑制モードと判定する。エンジン回転数Nengが第2設定閾値Neng_th2よりも大きい場合は、出力管理部240はエンジン10を高回転モードと判定する。
なお、ホイールローダ100が力行運転中と判断された場合には、出力管理部240は、エンジン回転数Nengの大小にかかわらず、エンジン10を通常モードと判定する。
(油圧シリンダ動作判定)
出力管理部240は、油圧要求演算部220で算出された油圧要求出力Pwr_pmp_reqに基づいて、ステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120のいずれが動作中であるかを判定する。油圧要求出力Pwr_pmp_reqが、たとえばポンプ圧×最小吐出量で算出される設定値以上であれば、出力管理部240は少なくともステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120のいずれかが動作中であると判定する。
(傾転角増加指令)
出力管理部240は、以下の3つの条件(i)〜(iii)のいずれもが満たされているときに、メインポンプ11の斜板11aの傾転角を増加するための傾転角増加指令dDpmp_tを下記(5)式にしたがって算出する。なお、条件(i)〜(iii)のいずれかが満たされていないときには、出力管理部240は傾転角増加指令dDpmp_tを0に設定する。
(i)ホイールローダ100が回生運転中と判定されていること。
(ii)走行電動機402の余剰電力で発電電動機401が駆動されている場合に、ステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120のいずれも動作中でないと判定されていること。
(iii)エンジン10が回転抑制モードまたは高回転モードであると判定されていること。
出力管理部240は、エンジンコントローラ10cから入力されたエンジン回転数Nengと、第1設定閾値Neng_th1とを用いて、以下の式(5)により傾転角増加指令dDpmp_tを算出する。
dDpmp_t=max{KnD(Neng−Neng_th1),0}…(5)
ただし、KnDは、第1設定閾値Neng_th1とエンジン回転数Nengの差から傾転角増加指令を算出する比例定数であり、予めメインコントローラ200に記憶されている。
上記の式(5)に基づいて傾転角増加指令dDpmp_tが算出された場合、エンジン回転数Nengが高くなるほど傾転角増加指令dDpmp_tが大きくなり、メインポンプ11の吐出容量が大きくなる。この結果、エンジン回転数Nengが高くなるほど、メインポンプ11の負荷トルク、すなわち回生制動力を大きくすることができる。
(回生電力低減指令)
出力管理部240は、走行電動機402の余剰電力で発電電動機401が駆動され、かつエンジン10が高回転モードと判定された場合に、走行電動機402が発電する回生トルクを低減するための回生電力低減指令dPwr_mot_tを算出する。出力管理部240は、エンジンコントローラ10cから入力されたエンジン回転数Nengと、第2設定閾値Neng_th2とを用いて、以下の式(6)により回生電力低減指令dPwr_mot_tを算出する。
dPwr_mot_t=max{KnP(Neng−Neng_th2),0}…(6)
なお、式(6)において、KnPは、第2設定閾値Neng_th2とエンジン回転数Nengとの差から回生電力低減指令を算出する比例定数である。
エンジン10が通常モード、低回転モード、回転抑制モードのいずれかの場合には、出力管理部240は回生電力低減指令dPwr_mot_tを0に設定する。
上記の式(6)に基づいて回生電力低減指令dPwr_mot_tが算出されると、エンジン回転数Nengが高くなるほど、回生電力低減指令dPwr_mot_tが大きくなり、走行電動機402の回生電力が小さくなる。この結果、エンジン回転数Nengが高くなるほど、発電電動機401で消費される回生電力を小さくできる。
この回生電力低減指令制御は、エンジン10の回転数が高速域で走行しているときに、たとえば、アクセルペダル162を解放してホイールローダ100が回生運転に入るような場合は、走行電動機402も高速域で運転されおり、発電量が大きくなりすぎることを防止するために行われる。
(消費電力)
出力管理部240は、ホイールローダ100が回生運転中であると判定した場合に、走行電動機402で発生する回生電力のうち発電電動機401で消費すべき電力である消費電力Pwr_cnsを算出する。出力管理部240は、算出した余剰電力Pwr_supと、算出した回生電力低減指令dPwr_mot_tとを用いて、以下の式(7)から消費電力Pwr_cnsを算出する。
Pwr_cns=max(Pwr_sup−dPwr_mot_t,0)…(7)
ただし、出力管理部240は、ホイールローダ100が力行運転中と判定した場合には、消費電力Pwr_cnsを0に設定する。
上記の式(7)を用いて消費電力Pwr_cnsを算出すると、出力管理部240は、以下の式(8)を用いて走行要求出力Pwr_drv_reqと消費電力Pwr_cnsに基づいて、発電出力指令Pwr_gen_tを算出する。
Pwr_gen_t=max(Pwr_drv_req,0)−Pwr_cns …(8)
出力管理部240は、油圧要求演算部220からの油圧要求出力Pwr_pmp_reqと、算出した発電出力指令Pwr_gen_tとを用いて、以下の式(9)によりエンジン出力指令Pwr_eng_tを算出する。
Pwr_eng_t=Pwr_pmp_req+Pwr_gen_t…(9)
−目標回転数演算部−
目標回転数演算部250は、エンジンコントローラ10cに出力するエンジン回転数指令Neng_tを算出する。目標回転数演算部250は、出力管理部240で算出されたエンジン出力指令Pwr_eng_tに基づいて、エンジン等燃費マップを用いて、最もエンジン効率が高くなる動作点を算出する。目標回転数演算部250は、算出した動作点でのエンジン回転数をエンジン回転数指令Neng_tとする。エンジンコントローラ10cは、エンジン回転数指令Neng_tを目標回転数演算部250から受信すると、そのエンジン回転数指令Neng_tが示すエンジン回転数でエンジン10を回転させる。
−発電電動機制御部−
発電電動機制御部260は、発電電動機トルク指令Trq_gen_tを算出し、この発電電動機トルク指令Trq_gen_tをM/Gインバータ410に出力することで発電電動機401の駆動を制御する。発電電動機制御部260には、エンジンコントローラ10cからのエンジン回転数Nengと、出力管理部240からの発電出力指令Pwr_gen_tと、目標回転数演算部250からのエンジン回転数指令Neng_tとが入力される。発電電動機制御部260は、エンジン回転数Nengと、発電出力指令Pwr_gen_tと、エンジン回転数指令Neng_tとを用いて、以下の式(10)によって発電電動機トルク指令Trq_gen_tを算出する。発電電動機制御部260は、算出した発電電動機トルク指令Trq_gen_tをM/Gインバータ410へ出力する。なお、発電出力指令Pwr_gen_tの符号は、正が発電電動機401の発電、負が発電電動機401の力行を示す。
Trq_gen_t=max{Kp(Neng_t−Neng),0}−Pwr_gen_t/Neng
…(10)
ただし、Kpは、エンジン回転数Nengとエンジン回転数指令Neng_tとの差から発電電動機トルクを算出する比例定数である。
−傾転角制御部−
傾転角制御部270は、傾転角制御信号VDp_tを算出して、この傾転角制御信号に基づいてメインポンプ11のポンプレギュレータ211の傾転角制御弁(不図示)を駆動することによって、メインポンプ11の斜板11aの傾転角、すなわち容量を制御する。傾転角制御部270は、エンジンコントローラ10cからのエンジン回転数Nengと、油圧要求演算部220からのポンプ要求流量指令qpmp_reqと、出力管理部240からの傾転角増加指令dDpmp_tとを用いて、以下の式(11)によって傾転角制御信号VDp_tを算出する。
VDp_t=KDp{(qpmp_req/Neng)+dDpmp_t} …(11)
なお、KDpは、メインポンプ11の傾転角を目標値とするために必要な傾転制御信号を算出するための比例定数である。
傾転角増加指令dDpmp_tが0の場合、アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302の操作量に応じて演算されたポンプ要求流量(図10参照)に実際のポンプ吐出量が保持されるように傾転角制御信号VDp_tが設定される。したがって、メインポンプ11の傾転角は、メインポンプ11の吐出量が運転者によって要求する値(ポンプ要求流量)に保持されるように、エンジン10、発電電動機401またはメインポンプ11の回転数の増加に合わせて小さくなるように制御される。
−走行電動機・ブレーキ制御部−
走行電動機・ブレーキ制御部280は、走行電動機トルク指令Trq_mot_tを演算し、算出した走行電動機トルク指令Trq_mot_tを走行インバータ420に出力することによって、走行電動機402の力行・回生を制御する。走行電動機・ブレーキ制御部280には、走行要求演算部230からの走行要求トルクTrq_reqと、走行電動機回転数センサ208からの走行電動機回転数Nmotと、出力管理部240からの回生電力低減指令dPwr_mot_tが入力されている。走行電動機・ブレーキ制御部280は、走行要求トルクTrq_reqと、走行電動機回転数Nmotと、回生電力低減指令dPwr_mot_tとを用いて、以下の式(12)によって走行電動機トルク指令Trq_mot_tを算出する。
Trq_mot_t=sign(Trq_req)・max{|Trq_req|−(dPwr_mot_t)/|Nmot|,0} …(12)
走行電動機・ブレーキ制御部280は、算出した走行電動機トルク指令Trq_mot_tと、走行要求トルクTrq_reqと、走行電動機回転数Nmotとを用いて、以下の式(13)により制動トルク指令Trq_brk_tを算出する。制動トルク指令Trq_brk_tが算出されると、回生電力低減指令dPwr_mot_tが大きいほど走行電動機トルク指令Trq_mot_tの絶対値が小さくなり、この減少分だけ制動トルク指令Trq_brk_tが大きくなる。
Trq_brk_t=max{−sign(Nmot)・(Trq_req−Trq_mot_t),0}
…(13)
−ブレーキ制御部−
ブレーキ制御部290は、ブレーキ制御信号Vbrk_tを演算し、当該ブレーキ制御信号Vbrk_tに基づいて油圧ブレーキ制御弁(不図示)を駆動することで油圧ブレーキ(不図示)を制御する。ブレーキ制御部290は、走行電動機・ブレーキ制御部280で演算された制動トルク指令Trq_brk_tから。次式(14)を用いてブレーキ制御信号Vbrk_tを演算し、油圧ブレーキ制御弁(不図示)を駆動する。
Vbrk_t=Kbrk・Trq_brk_t …(14)
ただし、Kbrkは、制動トルク指令Trq_brk_tと油圧ブレーキの実際の制動トルクが一致するように予め設定された比例定数である。
−−メインコントローラの処理−−
以下、メインコントローラ200により行われる処理について、掘削作業および荷役作業時の主な動作の一例とともに説明する。図14に示すように、ホイールローダ100を地山9に向けて前進走行させ、バケット102を地山9に突っ込み、アーム操作レバー301とバケット操作レバー302とを操作して、土砂をバケット102内に積み込んでいく。このとき、掘削作業状態判定用の3つの条件、すなわち(i)アーム操作レバー301が上げ側操作方向に操作されていること、(ii)前後進切換レバー161が前進側に操作されていること、(iii)アーム101の高さが所定高さ未満であること、のいずれもが満たされている。このため、図10に示す作業状態判定部221が、ホイールローダ100が掘削作業状態であると判定する。
掘削作業中、運転者によりアーム操作レバー301およびバケット操作レバー302のうち、アーム操作レバー301が単独でアーム上げ側操作方向に操作されると、流量演算部224が特性AR1を参照し、リフトアップ操作量に基づいて演算したポンプ要求流量Qがポンプ要求流量指令qpmp_reqとして傾転角制御部270に出力される。
掘削作業中、運転者によりアーム操作レバー301およびバケット操作レバー302のうち、バケット操作レバー302が単独でロールバック側操作方向に操作されると、流量演算部224が特性BRを参照し、ロールバック操作量に基づいて演算したポンプ要求流量Qがポンプ要求流量指令qpmp_reqとして傾転角制御部270に出力される。
掘削作業中、運転者によりアーム操作レバー301がアーム上げ側操作方向に操作されると同時に、バケット操作レバー302がロールバック側操作方向に操作されると、特性AR1および特性BRのそれぞれに基づいて演算されたポンプ要求流量Qのうち、大きい方が最大値選択部226によって選択され、選択されたポンプ要求流量Qがポンプ要求流量指令qpmp_reqとして傾転角制御部270に出力される。
運転者は、一旦、ホイールローダ100を後退させ、トラックに向けて前進走行する。運転者は、ホイールローダ100を前進走行させつつアーム101をリフトアップさせる。アーム101の高さが所定高さ以上となると、作業状態判定部221が、ホイールローダ100が非掘削作業状態であると判定する。
トラックに向けた前進走行中、運転者によりアーム操作レバー301およびバケット操作レバー302のうち、アーム操作レバー301が単独でアーム上げ側操作方向に操作されると、流量演算部224が特性AR2を参照し、リフトアップ操作量に基づいて演算したポンプ要求流量Qがポンプ要求流量指令qpmp_reqとして傾転角制御部270に出力される。
運転者は、アーム操作レバー301を操作して、積込み高さまでバケット102を上昇させる。その後、運転者により、アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302のうち、バケット操作レバー302が単独でダンプ側操作方向に操作されると、流量演算部224が特性BDを参照し、ダンプ操作量に基づいて演算したポンプ要求流量Qがポンプ要求流量指令qpmp_reqとして傾転角制御部270に出力される。
運転者により、アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302のうち、アーム操作レバー301が単独でアーム下げ側操作方向に操作されると、流量演算部224が特性ADを参照し、リフトダウン操作量に基づいて演算したポンプ要求流量Qがポンプ要求流量指令qpmp_reqとして傾転角制御部270に出力される。
以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)メインコントローラ200およびポンプレギュレータ211によって、パイロット圧センサ201a,201bにより検出されたアーム操作レバー301の操作方向および操作量に応じてメインポンプ11の吐出量を制御するようにした。これにより、アーム101の動作に応じた適切なポンプ吐出量をアームシリンダ110に供給することができ、メインポンプ11を効率的に運転することができる。たとえば、リフトダウン時にはアーム101に作用する自重を利用してアーム101を下方に回動させることができるため、メインポンプ11の吐出量は小さくても、所望の速度を得ることができる。このため、図13(a)に示すように、所定のリフトダウン操作量(たとえば、パイロット圧p=px)が検出された場合、この所定のリフトダウン操作量と同等のリフトアップ操作量(パイロット圧p=px)が検出されたときに比べて、メインポンプ11の吐出量を小さくすることで、リフトダウン時のエネルギー損失を小さくすることができる。
(2)図11に示すように、バケット操作レバー302が単独で操作されたときのバケット操作レバー302の操作方向および操作量に応じたメインポンプ11の吐出量の特性BR,BDと、アーム操作レバー301が単独で操作されたときのアーム操作レバー301の操作方向および操作量に応じたメインポンプ11の吐出量の特性AR1,AR2,ADとを個別に設け、それぞれが異なる特性となるようにした。アーム101だけでなく、バケット102の動作に応じた特性を設けることで、さらにメインポンプ11を効率よく運転することができる。
(3)ホイールローダ100の作業状態を検出し、作業状態に応じて、バケット102を上昇させるためにアーム101を回動させるアーム上げ側操作方向における操作量、すなわちリフトアップ操作量に応じたメインポンプ11の吐出量を変更するようにした。本実施の形態では、メインコントローラ200で掘削作業状態が検出されると、リフトアップ操作量に応じたメインポンプ11の吐出量が、掘削作業状態が検出されていないときに比べて小さくなるよう特性AR1および特性AR2を定めた。これにより、掘削作業時に作業負荷よりも走行負荷、すなわち牽引力を優先することができ、非掘削作業時である荷役作業時にはアーム101を速やかに上昇させることができる。この結果、掘削作業および荷役作業の効率の向上を図ることができる。
従来、掘削作業時にアーム101の上方への回動速度が大きすぎると、バケット102が掘削対象物である土砂に十分に食い込む前にバケット102が上昇し、掘削量が小さくなることがあった。一方、掘削作業時にアーム101の上方への回動速度が小さすぎると、バケット102が土砂に食い込みすぎて作業負荷が増大し、アーム101を上方へ回動させることができなくなったり、車輪がスリップ(空転)したりすることがあった。これに対して、本実施の形態では、掘削作業時のメインポンプ11の吐出量を荷役作業などの非掘削作業時に比べて低減させるようにした。なお、掘削作業時において、メインポンプ11の吐出量は、バケット102が土砂に食い込みすぎない程度の吐出量は確保されている。これにより、アーム101の上方への回動力を適度に発生させつつ、高い牽引力を発生させることができるため、掘削作業を効率よく行うことができる。
また、本実施の形態では、特性BR,BDにおいては、特性AR2に比べて、操作量に応じたポンプ要求流量Qが小さくなる特性とされ、特性AR2よりも特性AR1に近い特性とされている。このため、掘削作業時にバケット102のロールバック動作とアーム101のリフトアップ動作とが複合的に行われたときにおいても、牽引力を優先することができる。
一方、荷役作業では、ホイールローダ100を前進させながらアーム101を上昇させる(図15参照)。地山9からトラックまでの距離が短い場合、アーム101はできるだけ速やかに積込み高さまで上昇させることが望ましい。本実施の形態では、非掘削作業時である荷役作業時のメインポンプ11の吐出量を掘削作業時に比べて増加させるようにしたので、バケット102を速やかに上昇させることができる。このため、荷役作業を効率よく行うことができる。
(4)図12(b)に示すように、リフトアップ操作量を表すパイロット圧pがp2以上のときにおけるリフトアップ操作量の増加に応じたメインポンプ11の吐出量の増加率が、リフトアップ操作量を表すパイロット圧pがp1以上p2未満のときにおけるリフトアップ操作量の増加に応じたメインポンプ11の吐出量の増加率よりも小さくなるように特性AR2を定めた。同様に、図12(a)に示すように、リフトアップ操作量を表すパイロット圧pがp4以上のときにおけるリフトアップ操作量の増加に応じたメインポンプ11の吐出量の増加率が、リフトアップ操作量を表すパイロット圧pがp1以上p4未満のときにおけるリフトアップ操作量の増加に応じたメインポンプ11の吐出量の増加率よりも小さくなるように特性AR1を定めた。これにより、掘削作業時において、アーム操作レバー301がアーム上げ側操作方向にフル操作されている状態(図12(a)の特性AR1参照)からアーム101を急停止させた場合に発生するショックを、p1以上p5以下の範囲で流量増加率を一定とした比較例(図12(a)の特性AR1’参照)に比べて軽減できる。同様に、非掘削作業時において、アーム操作レバー301がアーム上げ側操作方向にフル操作されている状態(図12(b)の特性AR2参照)からアーム101を急停止させた場合に発生するショックを、p1以上p5以下の範囲で流量増加率を一定とした比較例(図12(b)の特性AR2’参照)に比べて軽減できる。このため、たとえば、アーム操作レバー301のフル操作後におけるアーム101の急停止時に、バケット102に積載された土砂がこぼれ落ちることを防止できる。
(5)図13(b)に示すように、ダンプ操作量を表すパイロット圧pがp4以上の場合において、所定のダンプ操作量(たとえば、パイロット圧p=py)が検出された場合、所定のダンプ操作量と同等のロールバック操作量(パイロット圧p=py)が検出されたときに比べて、メインポンプ11の吐出量が大きくなるように特性BDおよび特性BRを定めた。これにより、たとえば掘削作業時にバケット操作レバー302がロールバック側操作方向にフル操作されている状態(図13(b)の特性BR参照)からバケット102を急停止させた場合に発生するショックを、仮にロールバック動作時に特性BDを用いる場合に比べて軽減して、バケット102に積載された土砂がこぼれ落ちることを防止できる。一方、たとえば、積込み作業時にバケット操作レバー302がダンプ側操作方向にフル操作されている状態(図13(b)の特性BD参照)からバケット102を急停止させた場合に意図的に適度なショックを発生させて、バケット102から土砂を効率よくふるい落とすことができる。
図4に示すように、アーム用コントロールバルブ310は、アームシリンダ110のボトム側油室110aをタンク圧とし、ロッド側油室110bに圧油を供給するパワーダウン位置(D)と、アームシリンダ110のボトム側油室110aおよびロッド側油室110bをそれぞれタンク圧とするフロートダウン位置(F)とを有し、リフトダウン操作量の増加に応じてパワーダウン位置(D)からフロートダウン位置(F)に切り換わる構成とされている。図13(a)に示すように、リフトダウン操作量を表すパイロット圧pが0以上p3未満ではリフトダウン操作量の増加に応じてメインポンプ11の吐出量を増加させ、リフトダウン操作量を表すパイロット圧pがp3以上ではリフトダウン操作量の増加に応じてメインポンプ11の吐出量を減少させるように特性ADを設定した。これにより、整地作業時などでのエネルギーの損失を抑えることができる。
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
(1)掘削作業状態であるか否かの判定方法は、上記した実施の形態に限定されない。
(1−1)たとえば、ポンプ圧が所定値以上であること、エンジン回転数が所定値以上であること、および、走行電動機回転数が所定値未満であることのいずれもが満たされているときに掘削作業状態であると判定し、いずれか1つでも満たされないときには非掘削作業状態であると判定してもよい。
(1−2)たとえば、ポンプ圧が所定値以上であること、走行電動機に供給される電流が所定値以上であること、および、走行電動機回転数が所定値未満であることのいずれもが満たされているときに掘削作業状態であると判定し、いずれか1つでも満たされないときには非掘削作業状態であると判定してもよい。
(1−3)たとえば、掘削作業を行うためのモードスイッチがオンされているときに掘削作業状態であると判定してもよい。
(2)上記した実施の形態では、ホイールローダ100の作業状態について、掘削作業状態であるか否かを判定するようにしたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、積込み作業状態であるか否か、あるいは、ホイールローダ100でバケット102内の土砂等を山状に積み上げる、いわゆるかき上げ作業の状態であるか否かを車体に搭載した角度センサを用いて判定するなど、様々な作業状態を判定して、判定された作業状態と操作部材の操作量に応じてポンプ吐出量を制御してもよい。
(3)ポンプ要求流量の特性は、上記した実施の形態に限定されない。
(3−1)たとえば、図11に示す特性BR,BD,AR1をそれぞれ特性AR2と同じ特性として、リフトダウン操作時の特性ADのみを特性AR2と異なる特性にしてもよい。
(3−2)たとえば、図11に示す特性AD,BD,BRをそれぞれ特性AR2と同じ特性として、掘削作業時のリフトアップ操作時の特性AR1のみを特性AR2と異なる特性にしてもよい。
(3−3)たとえば、図11に示す特性AR1,ADをそれぞれ特性AR2と同じ特性として、バケット動作時の特性BR,BDのみを特性AR2と異なる特性にしてもよい。
(3−4)たとえば、図11に示す特性BRと特性BDとを同じ特性にしてもよい。
(4)図11に示したポンプ要求流量の各特性は、傾きの異なる直線比例の特性を組み合わせる場合に限定されることなく、二次曲線的な比例関係としてもよいし、ステップ状に段階的に変化するようにしてもよい。
(5)ホイールローダ100は、エンジン10により駆動される発電電動機401で発生させた電力よって走行電動機402を駆動し、走行電動機402によって車輪141を駆動するシリーズハイブリッド式を用いるものに限定されない。たとえば、エンジン10と、エンジン10により駆動された発電電動機401との少なくとも一方によって車輪141を駆動するパラレルハイブリッド式を用いてもよい。
(6)ハイブリッド式の作業車両とする場合に限定されるものでなく、走行電動機を備えずに、エンジン10の回転力をトルクコンバータやトランスミッションを介して、プロペラシャフトに伝達する作業車両に本発明を適用してもよい(たとえば、特開2005−155494号公報参照)。また、可変容量型の油圧ポンプと、可変容量型の油圧モータとを一対の管路によって閉回路接続した、いわゆるHST走行駆動回路を備えた作業車両に本発明を適用してもよい(たとえば、特開平6−8755号公報参照)。
(7)上記した実施の形態では、メインポンプ11およびパイロットポンプ12を駆動する原動機としてエンジン10を採用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。電動機を原動機として採用し、電動機によってメインポンプ11およびパイロットポンプ12を駆動するようにしてもよい。
(8)蓄電素子404として、キャパシタを採用した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。蓄電素子として、たとえば鉛蓄電池や、リチウムイオン電池などの2次電池を採用してもよい。
(9)上記した実施の形態では、出力管理部240は油圧要求出力Pwr_pmp_reqに基づいて、ステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120が動作中であると判定したが、本発明はこれに限定されない。油圧要求出力Pwr_pmp_reqに代えて、操作部材の操作を検出してステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120のいずれが動作中であるかを判定してもよい。また、ステアリングシリンダ130、アームシリンダ110およびバケットシリンダ120の伸縮速度を検出するセンサを設け、出力管理部240は、センサにより検出された検出速度を用いて判定してもよい。
(10)上記した実施の形態では、ホイールローダを例に挙げて説明したが、油圧ショベル等のアームとアームの先端に作業具を有する種々の作業車両にも本発明を適用することができる。
(11)上記した実施の形態では、作業具をバケットとした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。
(12)上記した実施の形態では、アーム操作検出手段および作業具操作検出手段をパイロット圧センサ201a,201b,202a,202bで構成したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、アーム操作レバー301やバケット操作レバー302の回動角度を検出する角度センサとしてもよい。
(13)上記した実施の形態では、アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302に油圧パイロット式のコントロールレバーを採用し、アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320に油圧パイロット式の方向制御弁を採用したが、本発明はこれに限定されない。たとえば、アーム操作レバー301およびバケット操作レバー302に電気式のものを採用し、アーム用コントロールバルブ310およびバケット用コントロールバルブ320に、メインコントローラ200から出力される電気信号によってスプールが駆動される電磁パイロット式の方向制御弁を採用してもよい。
(14)油圧要求演算部220は、図10に示すように、ポンプ要求流量マップの各特性を参照し、最大値選択部226で最大値を選択する構成とする場合に限定されない。
本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。説明に用いた実施の形態および変形例は、それぞれを適宜組み合わせて構成しても構わない。