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JP5938193B2 - 抗老化剤のスクリ−ニング方法 - Google Patents

抗老化剤のスクリ−ニング方法 Download PDF

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Description

本発明は、化粧料等に好適な、新規な作用機序に基づく抗老化剤、当該抗老化剤を含有する抗老化用組成物、並びにその抗老化用組成物の設計方法に関するものである。また、本発明の抗老化剤は、シワ形成に対する予防又は改善剤に好適である。尚、本発明の説明においては、化粧料との用語は、医薬部外品を含むものとして定義する。
細胞における細胞質成分(オルガネラ、細胞質蛋白質等)の分解・再生機構には、選択的な蛋白質分解を担うユビキチン・プロテアソ−ム系と、非選択的でバルク分解系と称されるオ−トファジ−による機構が存在する。オ−トファジ−は自食作用とも呼ばれ、正常時の細胞の恒常性維持のみならず、加齢症状(例えば、非特許文献1を参照)、栄養飢餓ストレスを受けた場合などの緊急時の生体反応等と深く関連することが報告されている。また、その分解・再生機構は酵母から高等動植物に至るまで非常によく保存されている。オ−トファジ−による細胞質成分の分解過程は、隔離膜と呼ばれる扁平な小胞が細胞質に現れた後、自己成分を取り囲みオ−トファゴソ−ムを形成し、リソソ−ムと融合したオ−トリソソ−ムにより細胞質成分が分解されることにより完結する。近年のオ−トファジ−に関する研究により、オ−トファジ−の詳細な機構解明が進められた結果(例えば、非特許文献2を参照)、オ−トファゴソ−ム形成に関連する因子として17種類のAtg(Autophagy)分子群が発見された。Atg分子群は、ユビキチン様因子Atg8(LC3)の結合反応系(Atg8系)、ユビキチン様因子Atg12の結合反応系(Atg12系)をはじめとする5種類の機能的なグル−プに分類される。また、Atg分子群の内、隔離膜に存在するAtg12系の蛋白質がオ−トファゴソ−ム完成と共に膜から離れるのに対し、Atg8系の蛋白質はオ−トファゴソ−ム完成後も外膜に存在し続ける。このため、Atg8系の蛋白質群は、オ−トファジ−の有用なモニタリング用マ−カ−として利用されている。
オ−トファジ−が関連する疾患としては、癌、神経障害疾患(筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマ−病、パ−キンソン病等)、肝炎(急性肝炎、慢性肝炎)、肝硬変、感染症、免疫異常等などが報告されている。また、オ−トファジ−機能を調節することによりかかる疾患に対する治療効果を期待した医薬品、例えば、抗癌剤(例えば、特許文献1を参照)、抗痴呆薬及び神経変性疾患治療薬(例えば、特許文献2を参照)等の開発が進められている。一方、オ−トファジ−が関与する皮膚疾患としては、乾癬が報告され、成熟ケラチノサイトにおけるオ−トファジ−因子(LC3:microtuble-associated protein 1 light chain 3)に関する抗LC3抗体を用いた免疫染色を行ったところ、ヒト正常上皮細胞組織に比較し乾癬患者の上皮組織におけるLC3量が著しく減少していることが報告されている。また、皮膚の光老化症状とオ−トファジ−との関連性に関しては、紫外線暴露によりオ−トファゴソ−ム膜成分のLC3−ll存在量が増加することが明らかにされ(例えば、非特許文献3を参照)、さらに、真皮線維芽細胞におけるオ−トファジ−関連遺伝子のノックダウンにより早期老化が起こることが報告されている(例えば、非特許文献4を参照)。一方、皮膚老化症状は、通常は露出しておらず紫外線暴露が極めて少なく皮膚部位にも認められる。かかる皮膚老化症状は、皮膚生理老化とも呼ばれ、紫外線暴露等による短期的な刺激による皮膚症状光老化とは異なる皮膚老化機構として認識されている。皮膚生理老化は、加齢に伴う長時間に渡る生体変化であり、皮膚老化の根本的な作用機序でありながら、皮膚生理老化モデル構築の困難さ、時間的な制約等により、その作用機構は詳細には解明されていない。さらに、発明者の知る限り、皮膚生理老化によるシワ形状変化等の皮膚老化症状とオ−トファジ−の関連性に関する報告、加えて、オ−トファジ−による皮膚老化現象の指標となるヒアルロン酸、コラ−ゲン等のシワ関連因子変化等との関連性に関する報告はなされていない。このため、皮膚生理老化機構を解明することは、基本的な生体反応である加齢による老化症状の皮膚老化現象の機構を明らかにし、シワ等の皮膚老化現象の予防又は改善に繋がる。さらに、かかる情報は、従来の光皮膚老化症状の作用機序研究と組み合わせることにより効果的に皮膚老化症状を抑制することが出来ると考えられる。
本発明者は、若年者と高齢者の皮膚線維芽細胞におけるオ−トファジ−機能を比較したところ、高齢者のオ−トファジ−機能が低下していることを見出した。また、かかるオ−トファジ−機能が低下した高齢者の皮膚細胞においては、ヒアルロン酸産生量が低下していることを確認した。さらに、高齢者の皮膚細胞におけるオ−トファジ−機能低下の作用機序を詳細に解析したところ、オ−トファジ−過程の内、主にオ−トリソソ−ム形成後の細胞質成分分解活性の低下によりオ−トファジ−機能低下が引き起こされていることを明らかにした。本発明者の知る限り、オ−トファジ−が、皮膚老化現象、取り分け、シワ形成に関与することは知られていない。このため、オ−トファジ−活性化作用を有する成分には、シワ形成に対する予防又は改善効果が期待出来る。また、かかる作用を有する成分は新たな作用機序を介し抗老化作用、シワ形成に対する予防又は改善作用を発揮するため、従来のシワ予防又は改善剤では顕著な効果が認められないシワに対し優れた効果が期待出来る。このため、かかる成分を効率的にスクリ−ニングする方法は、新規な作用機序を有する抗老化剤、シワ形成に対する予防又は改善剤の開発に非常に有用であると考えられる。
再表2009−119662号公報 再表2006−118196号公報
T. Vellai et. al, Trens Cell Biol.,19(10),487−494(2009) T. Vellai, Cell Death and Differentiation,16,94−102(2009) Lamore SD. Photochem. Photobiol. Sci.,2011, Jul 20. DOI:10.1039/C1PP05131H HT. Kang,PLoS One,6(8),e23367(2011)
本発明は、上記の様な状況を鑑みてなされたものであり、優れた抗老化剤、取り分け、シワ形成に対する予防又は改善剤の発見に繋がる技術を確立することを課題とする。特に、既存の作用機序を有する従来の抗老化剤の使用では予防又は改善が困難であると考えられる皮膚老化現象に対する抗老化剤、取り分け、シワ形成に対する予防又は改善剤、更には、高齢者を対象とした抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)の発見と、かかる抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)をスクリ−ニングするための方法を確立することを課題とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意努力を重ねた結果、若年者及び高齢者の皮膚線維芽細胞において、オ−トファジ−活性化作用の指標であるLC3-ll蛋白質量を測定することにより、若年者に比較し高齢者の皮膚線維芽細胞におけるLC3−ll蛋白質量が高いこと、即ち、高齢者の皮膚細胞においては、オ−トファジ−機能が低下していることを見出した。また、オ−トファジ−機能の低下が確認された高齢者の皮膚線維芽細胞のヒアルロン酸量も、若年者に比較し高齢者の細胞で低下していることを確認した。かかる事実は、高齢者の皮膚線維芽細胞におけるオ−トファジ−機能の低下、取り分け、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解作用の低下を意味しており、シワ形成との深い関係性が示唆される。加えて、オ−トファジ−を介した細胞質成分の分解を人為的に阻害した若年者の皮膚線維芽細胞においてもヒアルロン酸量が低下することを確認しており、前記内容を支持する。一方、発明者の知る限り、オ−トファジ−と皮膚生理老化現象、取り分け、シワ形成との関連性は報告されていない。このため、抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)を、オ−トファジ−活性化作用を測定し、当該活性化作用を指標とし抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)を選択又は判別する方法は、オ−トファジ−による皮膚老化現象、取り分け、オ−トファジ−とシワ形成の作用機序が明らかとされていない以上、これを抑制する成分や方法についての検討も、積極的に行われてこなかったと言える。このため、本発明のオ−トファジ−活性化作用を有する成分、取り分け、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解を活性化する作用を有する成分は、新たな作用機序を介した抗老化剤(シワ予防又は改善剤)となることが期待出来る。
本発明者は、さらに鋭意努力を重ね、抗老化剤、取り分け、シワ形成に対する予防又は改善剤の開発に繋がるオ−トファジ−活性化作用を有する成分を精度よく、効率的に評価し得る方法を確立した。さらに、かかる方法により評価した成分を含有した組成物が、優れた抗老化作用(シワ形成に対する予防又は改善作用)を発揮することを確認した。即ち、本発明は、以下に示す通りである。
<1> オ−トファジ−活性化作用を評価する工程を含む抗老化剤のスクリ−ニング方法であって、被験物質のオ−トファジ−活性化作用を測定し、当該活性化作用が高い場合には、抗老化作用が高いと判断することを特徴とする、抗老化剤のスクリ−ニング方法。
<2> 前記抗老化作用が、シワ形成に対する予防又は改善作用であることを特徴とする、<1>に記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法。
<3> 前記オ−トファジ−活性化作用が、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解過程の活性化作用であることを特徴とする、<1>又は<2>に記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法。
<4> 前記オ−トファジ−活性化作用が、オ−トファゴソ−ムに局在する蛋白質LC3−ll(microtuble- associated protein 1 light chain 3−ll)量調節作用であることを特徴とする、<1>〜<3>何れかに記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法。
<5> 前記抗老化剤のスクリ−ニングに用いる細胞が、高齢者の皮膚線維芽細胞であることを特徴とする、<1>〜<4>何れかに記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法。
<6> オ−トファジ−活性化作用を評価する工程を含む抗老化剤のスクリ−ニング方法であって、被験物質を添加した高齢者の皮膚細胞にオ−トファジ−を介する細胞質成分の選択的な分解抑制作用を有する成分を添加し(非添加の細胞を対照とする)、当該細胞のLC3−ll蛋白質量を測定し、当該測定値よりオ−トファジ−活性化度合いを推定し、オ−トファジ−活性化度合いが高い場合には、抗老化作用が高いと判別することを特徴とする、抗老化剤のスクリ−ニング方法。
<7> <1>〜<6>何れかに記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法により選択された抗老化剤を含有することを特徴とする、抗老化用組成物。
<8> シワ形成の予防又は改善用であることを特徴とする、<7>に記載の抗老化用組成物。
<9> 皮膚外用剤であることを特徴とする、<7>又は<8>に記載の抗老化用組成物。
<10> 化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、<7>〜<9>何れかに記載の抗老化用組成物。
<11> 使用対象が高齢者であることを特徴とする、<7>〜<10>何れかに記載の抗老化用組成物。
<12> <1>〜<6>の何れかに記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法により抗老化用を有すると判断された成分を含有させることを特徴とする、抗老化用組成物の設計方法。
<13> <1>〜<6>に記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法により選択される抗老化剤。
<14> 前記オ−トファジ−活性化作用を有する成分のスクリ−ニング方法により選択される抗老化剤が、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、イチョウ科イチョウ属イチョウより得られる植物抽出物、シソ科タツミソウ属コガネバナより得られる植物抽出物、フフトモモ科テンニンカ属テンニンカより得られる植物抽出物、バラ科サクラ属サクラより得られる植物抽出物、ラン科の植物より得られる植物抽出物より選択される1種又は2種以上よりなることを特徴とする<13>に記載の抗老化剤。
<15> ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、イチョウ科イチョウ属イチョウより得られる植物抽出物、シソ科タツミソウ属コガネバナより得られる植物抽出物、フフトモモ科テンニンカ属テンニンカより得られる植物抽出物、バラ科サクラ属サクラより得られる植物抽出物、ラン科の植物より得られる植物抽出物より選択される1種又は2種以上よりなることを特徴とする、オ−トファジ−活性化剤。
本発明によれば、新規な作用機序を有するオ−トファジ−活性化機構を介する抗老化剤、取り分け、シワ形成に対する予防又は改善剤を、精度よく、かつ簡便に選択することが出来る。また、かかる抗老化剤を含有する抗老化用組成物、並びにその設計方法を提供することが出来る。
高齢者及び若年者の皮膚線維芽細胞におけるLC3−ll蛋白質量変化に関する図である。 高齢者及び若年者の皮膚線維芽細胞におけるヒアルロン酸産生量変化に関する図である。 本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法による評価結果を示す図である。
以下に、本発明の実施の形態に関し詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
<本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法>
オ−トファジ−は、自食作用とも呼ばれ、リソソ−ムにより細胞質成分を非選択的に分解する細胞の分解・再生機構である。オ−トファジ−は、主に、1)細胞質に隔離膜と呼ばれる扁平な小胞が現れた後、細胞質成分を取り込みながら伸張し、先端同士が融合しオ−トファゴソ−ムが形成される過程、2)オ−トファゴソ−ムがリソソ−ムと融合し細胞質成分が分解される過程に分類され、かかる過程を通じ自己消化されたアミノ酸が栄養源として再利用される。本発明者は、皮膚生理老化とオ−トファジ−との関連性を調べるために若年及び高齢者の皮膚線維芽細胞を用いオ−トファジ−活性化作用に関し検討を行った。その結果、高齢者の皮膚線維芽細胞におけるオ−トファゴソ−ムに局在する蛋白質量(LC3-ll量)が多いこと、さらには、オ−トファゴソ−ム形成に関与する因子にはほとんど違いがないことを見出した。かかる事実は、高齢者の皮膚線維芽細胞におけるオ−トファジ−機能が低下していること、特に、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解過程の抑制によるオ−トファジ−機能が低下していることを意味する。また、オ−トファジ−を介した細胞質成分の分解を人為的に阻害した若年者の皮膚線維芽細胞においてもヒアルロン酸量が低下することを確認した。この様な事実は、皮膚生理老化現象、取り分け、シワ形成に対しオ−トファジ−が深く関与していることを示し、皮膚生理老化現象を改善するためには、オ−トファジ−機能を活性化すること、取り分け、単純にオ−トファジ−を惹起するのではなく、「オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解過程を活性化しオ−トファジ−過程全体を完遂する」ことが重要であることを示唆している。また、高齢者の皮膚細胞において確認されるオ−トファジ−機能の低下は、光皮膚老化とは作用機序が異なり、加齢による生体反応が関与する皮膚の生理的な老化との関連性が高い。
本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法は、オ−トファジ−活性化作用を評価する工程を含む抗老化剤のスクリ−ニング方法であって、被験物質のオ−トファジ−活性化作用を測定し、該活性化作用が高い場合には、抗老化効果が高いと判別することを特徴とする。本発明におけるオ−トファジ−活性化作用を評価するとは、前述の1)細胞質に隔離膜と呼ばれる扁平な小胞が現れた後、細胞質成分を取り込みながら伸張し、先端同士が融合しオ−トファゴソ−ムが形成される過程、2)オ−トファゴソ−ムがリソソ−ムと融合し細胞質成分が分解される過程におけるオ−トファジ−活性化作用を評価することを意味し、より好ましくは、2)の過程におけるオ−トファジ−活性化作用を評価することが好ましい。前記オ−トファジ−活性化作用を測定する方法としては、オ−トファジ−活性化作用を測定することが出来る方法であれば特段の限定なく適用することが出来る。前記のオ−トファジ−活性化作用を測定する方法に関し具体例を挙げれば、顕微鏡により観察する方法、蛍光標識したオ−トファジ−関連蛋白質を発現させた後に蛍光顕微鏡により観察又は機器により測定する方法、オ−トファジ−関連蛋白質をウエスタンブロティング法などにより測定する方法等が好適に例示出来る。前記の顕微鏡により観察する方法としては、電子顕微鏡により細胞を観察しオ−トファジ−活性化作用を評価する方法(例えば、Method Enzymol,452,143−164(2009)を参照)、緑色蛍光色素等を結合させたオ−トファジ−関連蛋白質を発現させ蛍光顕微鏡等により当該活性化作用を評価する方法等が好適に例示出来る。緑色蛍光蛋白質は、1960年代にオワンクラゲから発見された緑色の蛍光発色団を有する蛋白質であり、調べたい遺伝子に緑色蛍光蛋白質の遺伝子を繋げば、その遺伝子が生きた細胞内や個体のどこで働いているかを明らかにすることが出来る。さらに、本発明における顕微鏡による観察によりオ−トファジ−活性化作用の評価は、顕微鏡による目視によりその形態又は挙動等を直接的に評価する方法のほか、かかる挙動を数値化し定量的に評価する方法も包含される。また、前記の顕微鏡による観察以外のオ−トファジ−活性化作用の測定方法としては、オ−トファジ−関連蛋白質に蛍光試薬で染色した後、フロ−サイトメ−タ−、蛍光プレ−トリ−ダ−等の機器を使用し測定する方法等が好適に例示出来る。さらに、ウエスタンブロッティング法などにより電気泳動によりオ−トファジ−蛋白質を分離し、抗体により目的とする蛋白質を検出する方法等が好適に例示出来る。また、オ−トファジ−関連蛋白質を認識する抗体としては、例えば、Medical & Biological Laboratories CO., LTD.等により販売されているオ−トファジ−関連蛋白質を認識する抗体を使用することが出来る。かかるオ−トファジ−関連蛋白質は、オ−トファジ−活性化作用とパラレルの関係にあるとされ、オ−トファジ−関連蛋白質を測定することによりオ−トファジ−活性化作用を評価することが出来る。尚、本発明におけるオ−トファジ−活性化作用を測定する方法としては、実施例1に記載のオ−トファジ−関連蛋白質の発現量をウエスタンブロッティング法により測定しオ−トファジ−活性化作用を評価することが好ましい。かかる方法は、試験方法及び操作の簡便性に優れ、簡便に精度よく測定が実施出来るためである。
また、本発明のオ−トファジ−活性化作用を評価するために測定の対象となるマ−カ−としては、オ−トファジ−活性化作用を評価することが出来るものであれば特段の限定なく適用することが出来、オ−トファジ−関連蛋白質群の遺伝子発現量、蛋白質量等の測定であることが好ましく、オ−トファジ−関連蛋白質群の蛋白質量を測定することがより好ましい。シワ等の皮膚老化現象が認められる皮膚においては、オ−トファジ−が不活性化されており、かかる皮膚では、オ−トファジ−関連遺伝子発現量、蛋白質量が低下している。現在、オ−トファジ−関連遺伝子としては、Atg1〜31の31種類が報告され、かかる遺伝子群の内、Atg1〜10、Atg12〜14、Atg16〜18、Atg29の17種類の遺伝子がオ−トファゴソ−ム形成に関与することが報告されている。このため、本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法におけるオ−トファジ−活性化作用を評価するためのマ−カ−としては、オ−トファジ−関連蛋白質の遺伝子発現量、蛋白発現量を測定することが好ましく、より好ましくは、LC3蛋白質の遺伝子発現量、蛋白質発現量、さらに好ましくは、LC3−ll蛋白質発現量を測定することが好ましい。LC3は、オ−トファジ−に必須な蛋白質であり、隔離膜、オ−トファゴソ−ム、オ−トリソソ−ムの膜に結合するため、オ−トファジ−の一連の過程をモニタ−するのに適切なマ−カ−として知られている。一方、LC3は翻訳後にC末側の切断によりLC3−lとなった後、さらに修飾を受けLC3−llとなり、これがオ−トファゴソ−ムに結合する。このため、LC3−llは、オ−トファゴソ−ム形成後の過程におけるオ−トファジ−活性化作用の適切なマ−カ−として使用することが出来、オ−トファゴソ−ム形成後の過程が活性化する場合には、LC3−ll量が減少することが知られている。このため、LC3−ll蛋白質量を測定することは、オ−トファジ−過程におけるオ−トリソソ−ム形成後の細胞質成分の分解過程の活性化作用を評価するのに好適である。
本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法における「オ−トファジ−活性化作用が高い場合」とは、前述のオ−トファジ−活性化作用評価において被験物質がオ−トファジ−活性化作用を示す場合が好適に例示出来る。また、本発明の被験物質が示すオ−トファジ−活性化作用としては、オ−トファジ−活性化作用を直接的に測定する作用ほか、細胞質成分の分解過程全体活性及びオ−トファジ−を介さない細胞質成分の分解過程の活性を測定し、当該測定値よりオ−トファジ−活性化作用を推定することも出来る。本発明における被験物質のオ−トファジ−活性化作用の測定方法の内、特に好ましいものを具体的に挙げれば、実施例1に記載の方法が好適に例示出来る。実施例1に記載の抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)のスクリ−ニング方法においては、被験物質を添加した細胞に、オ−トファジ−を介する細胞質成分の分解を選択的に阻害する成分を添加し(非添加の細胞を対照サンプルとする)とし、細胞のLC3−ll蛋白発現量を測定し、当該測定値よりオ−トファジ−活性化作用の度合いを推定する。また、LC3−ll蛋白発現量を測定する方法としては、ウエスタンブロット法による測定することが好ましい。具体的には、電気泳動後、LC3−ll及びβ−アクチン(対照)のバンドの輝度をImage−J(アメリカ国立衛生研究所製)を利用し測定することが好ましい。かかるオ−トファジ−活性化度合いを推定するためには、前記の測定値を直接的に比較することも出来るし、かかる測定値を用いオ−トファジ−を介する細胞質成分の分解過程を活性化する作用、取り分け、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解過程を活性化する作用を示す指標として算出することも出来る。かかる指標の内、好ましいものを具体的に挙げれば、下記の式より算出されるautophagic vacuole分解度が好適に例示出来る。前記autophagic vacuoleは、オ−トファゴソ−ムとオ−トリソソ−ムの総称であり、autophagic vacuole分解度は、オ−トファジ−活性化作用の指標となる。また、本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法において、オ−トファジ−活性化作用が高いと判断される成分は、autophagic vacuole分解度が、1.2以上である成分、より好ましくは、1.5以上である成分が好適に例示出来る。
また、前記の抗老化剤のスクリ−ニング方法におけるオ−トファジ−を介する細胞質成分を選択的に阻害する成分としては、かかる作用を有する成分であれば特段の限定なく適用することが出来、クロロキン二リン酸が特に好ましい。かかる成分は、オ−トファジ−を介する細胞質成分の阻害活性及び選択性が高く、該成分を加えた細胞におけるオ−トファジ−活性化作用の測定に影響が非常に少ない。また、前記のクロロキン二リン酸以外のオ−トファジ−を介する細胞成分を選択的に阻害する成分としては、ロイペプチン、ペプスタチン、E64d等のリソソ−ム酵素阻害剤が挙げられる。
さらに、本発明の抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)のスクリ−ニング法に用いる細胞としては、オ−トファジ−活性化作用が測定出来る細胞であれば特段の限定なく適用することが出来、より好ましくは、皮膚線維芽細胞、さらに好ましくは、高齢者の皮膚線維芽細胞を用いることが特に好ましい。本発明における高齢者の皮膚線維芽細胞とは、60歳以上のヒト皮膚由来の皮膚線維芽細胞が好適に例示出来る。これは、本発明の抗老化剤のスクリ−ニング法により選択される抗老化剤は、皮膚老化現象を対象としており、前記の高齢者の皮膚線維芽細胞においては、オ−トファジ−機能が低下していることが確認されており、実際の細胞又は組織の皮膚老化状態をよりよく反映していると考えられるためである。
<本発明の抗老化剤>
本発明の抗老化剤は、オ−トファジ−活性化作用を測定し、当該活性化作用が高い場合には、抗老化作用が高いと判別することを特徴とする、抗老化剤のスクリ−ニング方法である。本発明の抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)は、前述の抗老化剤のスクリ−ニング方法によりオ−トファジ−活性化作用が高いと判断された成分であれば特段の限定なく適用することが出来るが、特に、本願発明の実施例1に記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法によりオ−トファジ−活性化作用が高いと判断され選択された抗老化剤であることが好ましい。また、実施例1に記載の抗老化剤のスクリ−ニング方法においてオ−トファジ−活性化作用が高いと判断される成分としては、被験物質がオ−トファジ−活性化作用を示す成分、より好ましくは、前述のautophagic vacuole値が、1.2以上、さらに好ましくは、1.5以上である成分が好適に例示出来る。また、かかる成分を含有する組成物は、オ−トファジ−活性化作用、取り分け、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解促進作用により優れた抗老化効果を発揮する。また、本発明の抗老化剤は、高齢者用に使用することが好ましい。高齢者の皮膚細胞においては、オ−トファジ−活性、取り分け、オ−トファゴソ−ム形成後の細胞質成分の分解過程の活性が低下しているため、かかる作用を活性化する抗老化剤は、高齢者に適用することが好ましい。さらに、本発明の抗老化剤を適用するのに好ましい対象としては、60歳以上の高齢者であること、及び/又は、若年者に比較しオ−トファジ−活性化作用が低下している人を選択し、本発明の抗老化剤を含有する皮膚外用剤を適用することが好ましい。本発明における若年者とは、30歳以下の人を、より好ましくは、30歳以下の女性を若年者とすることが好ましい。本発明者の検討によれば、30歳以下の人は、加齢によるオ−トファジ−機構の活性化及び皮膚老化現象の進行が低い。
本発明の抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)は、合成された又は天然に存在する化合物、動植物由来の抽出物、その分画精製物等の混合組成物の何れであってもよく、植物由来の抽出物としては、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、丸善製薬株式会社等により販売されている市販の抽出物等が挙げられる。抽出操作を行う場合、植物部位は全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎分、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位のみを使用することが出来るが、予めこれらを粉砕又は細切し抽出効率を向上させることが望ましい。抽出溶媒としては、水、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル、ブタノ−ルなどのアルコ−ル類、1,3−ブタンジオ−ル、ポリプロピレングリコ−ルなどの多価アルコ−ル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示出来る。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィ−等で分画精製する方法が挙げられる。
また、後述する実施例1に記載のオ−トファジ−機能活性化作用を指標とする抗老化剤(シワ形成に対する予防又は改善剤)のスクリ−ニング方法によれば、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、イチョウ科イチョウ属イチョウより得られる植物抽出物、シソ科タツミソウ属コガネバナより得られる植物抽出物、フフトモモ科テンニンカ属テンニンカより得られる植物抽出物、バラ科サクラ属サクラより得られる植物抽出物、ラン科の植物より得られる植物抽出物、クロウメモドキ科ナツメ属ナツメより得られる植物抽出物(生薬、タイソウ)、フウロソウ科フウロソウ属ヒメフウロより得られる植物抽出物、アカバナ科マツヨイグサ属メマツヨイグサより得られる植物抽出物、アヤメ科ヒオウギ属ヒオウギより得られる植物抽出物、イネ科ジュズダマ属ヨクイニンより得られる植物抽出物、シソ科イブキジャコウソウ属タイムより得られる植物抽出物、ユリ科ナギイカダ属ナギイカダより得られる植物抽出物(ブッチャ−ブル−ム)、バラ科バラ属ノバラより得られる植物抽出物、マメ科カンゾウ属カンゾウより得られる植物抽出物、マタタビ科マタタビ属マタタビより得られる植物抽出物、セリ科シシウド属トウキより得られる植物抽出物、ゴマノハグサ科ジオウより得られる植物抽出物、スベリユリ科スベリユリ属スベリユリより得られる植物抽出物、アロエ科アロエ属アロエより得られる植物抽出物、クロレラ科クロレラ属クロレラより得られる植物抽出物、マメ科クズ属クズより得られる植物抽出物(生薬名カッコン)等が好適に例示出来る。ユキノシタ科アジサイ属アマチャは、日本原産のユキノシタ科に属する落葉低木で、日本国内で広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することが出来る。抽出原料として使用し得るアマチャの構成部位としては、例えば、葉部、幹部、枝部、地上部、花部、根部、全草又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは葉部及び枝部である。アマチャは、園芸、鑑賞用のほか、その葉は発酵させ食用に用いられる。イチョウ科イチョウ属イチョウは、中国を原産地とする落葉低木であり、本州、四国、九州なで栽培・自生している。イチョウの果実はギンナン(銀杏)と呼ばれ、食用に広く用いられる。また、イチョウの葉は、民間療法では糖尿病、夜尿症、咳、痰切れに薬効があるとされている。シソ科タツミソウ属コガネバナは、東シベリア〜中国北部、朝鮮を原産地とする多年草であり、これらの地域から容易に入手することができる。また、コガネバナの根は、生薬名をオウゴンといい、従来、健胃薬、抗アレルギー剤等として使用されている。フトモモ科テンニンカ属テンニンカは、東南アジアを原産地とする常緑低木である。また、日本においては沖縄等に自生し、果実は芳香があり、生食出来る。バラ科サクラ属サクラは、日本、中国、朝鮮を原産地とする落葉広葉低木であり、本州、九州、四国等の日本全国において生育する。サクラは、鑑賞用のほか、食用等に用いられる。ラン科は、単子葉植物の科のひとつであり、世界に700属以上存在する。ラン科の種は、ラン(蘭、英名:オ−キッド)と総称される。また、南極を除く全ての熱帯から亜熱帯に自生し、鑑賞用等に広く用いられている。尚、本発明のラン科の植物より得られる植物抽出物としては、一丸ファルコス社より購入したオ−キッドエキスNを使用した。
<本発明の抗老化用組成物及びその製造方法>
前述した本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法により、オ−トファジ−活性化作用に有し抗老化作用に優れる抗老化剤を選択することが出来る。また、本発明の抗老化剤のスクリ−ニング方法により選択された抗老化剤を用い調製された抗老化用組成物、及び本スクリ−ニング方法を利用して抗老化用組成物を製造する方法も本発明である。本発明の抗老化用組成物及び抗老化用の製造方法は、前述したスクリ−ニング方法によって選択された抗老化剤を用いるものであれば、その他の構成については特に限定されず、公知の調製方法を適宜用いることができる。
本発明の抗老化用組成物及び抗老化用組成物の製造方法における、抗老化剤の量は特段限定されないが、抗老化用組成物全量に対し、0.00001質量%〜15質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜10質量%、さらに好ましくは、0.001質量〜5質量%含有させることが好ましい。これは、抗老化剤の組成物における含有量が少なすぎると、目的とする抗老化効果が低下する傾向にあり、多すぎても効果が頭打ちになる傾向があり、この系の自由度を損なう場合がある。また、本発明の抗老化用組成物に含有される抗老化剤の種類も1種類に限定されず、2種類以上を含有させてもよい。
本発明の抗老化用(シワ予防又は改善用)組成物の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することができる。この様な任意成分としては、経口投与組成物であれば、例えば、乳糖や白糖などの賦形剤、デンプン、セルロ−ス、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロ−スなどの結合剤、カルボキシメチルセルロ−スナトリウム、カルボキシメチルセルロ−スカルシウムなどの崩壊剤、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、マルチト−ルやソルビト−ルなどの甘味剤、クエン酸などの酸味剤、リン酸塩などの緩衝剤、シェラックやツェインなどの皮膜形成剤、タルク、ロウ類などの滑沢剤、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲルなどの流動促進剤、生理食塩水、ブドウ糖水溶液などの希釈剤、矯味矯臭剤、着色剤、殺菌剤、防腐剤、香料など好適に例示出来る。経皮投与組成物であれば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリ−ブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ル、オクチルドデカノ−ル等の高級アルコ−ル、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコ−ル、グリセリン、1,3−ブタンジオ−ル等の多価アルコ−ル類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を含有することができる。製造は、常法に従い、これらの成分を処理することにより、困難なく、為しうる。
本発明の抗老化用組成物としては、医薬品、化粧品、食品、飲料などが好適に例示でき、日常的に摂取できることから、食品、化粧品等に適応することが好ましい。その投与経路も、経口投与、経皮投与の何れもが可能であるが、皮膚における抗老化作用を発揮するためには、皮膚への貯留性、標的部位への到達効率等を考慮し、経皮投与を採用することが好ましい。
以下に、本発明について、実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明がかかる実施例のみに限定されないことは言うまでもない。
<試験例1: 若年者及び高齢者の皮膚線維芽細胞におけるオ−トファジ−活性化作用に関する検討>
23歳、27歳、63歳、68歳、70歳女性腹部皮膚由来線維芽細胞1.5×10(cells)を含む2(mL)の培地を6穴プレ−トの各ウェルに添加し、細胞播種した。播種翌日、20(μM)クロロキンニリン酸(CQ)又は溶媒を添加した。さらに24時間培養後、細胞を回収した。ウェスタンブロットによりLC3−ll及びβ−actin蛋白質を検出し、Image-Jを用いバンドの定量解析を行った。測定値を以下の式に当てはめ、autophagic vacuole分解度を算出した。結果を図1に示す。
Figure 0005938193
<試験例2: 若年者及び高齢者の皮膚線維芽細胞におけるヒアルロン酸量に関する検討>
23歳、27歳、68歳、70歳女性腹部皮膚由来線維芽細胞4.5×10(cells)を含む1(mL)の培地を24穴プレ−トの各ウェルに添加し、細胞播種した。播種翌日に培地を交換し、さらに24時間培養後、培養上清を回収した。5000rpm×1min遠心後の上清をヒアルロン酸量測定サンプルとし、Hyaluronan Assay Kit(生化学バイオビジネス株式会社製)を用いてヒアルロン酸量を定量した。結果を図2に示す。
図2の結果より、高齢者の皮膚由来線維芽細胞におけるヒアルロン酸量は、若年者の皮膚線維芽細胞に比較し低下していることが確認された。試験例1及び試験例2の結果より、高齢者の皮膚線維芽細胞においては、オ−トファジ−活性及びヒアルロン酸産生能が低下していることが確認された。また、かかる試験結果は、オ−トファジ−活性化機構が、皮膚老化現象、取り分け、ヒアルロン酸などのシワ形成に関連する因子に作用しシワ形成に関与していることを示唆する結果と言える。
<試験例3: 高齢者の皮膚線維芽細胞を用いたオ−トファジ−活性化作用を評価する工程を含む抗老化剤のスクリ−ニング方法>
FIB311−1ML2152(70歳女性腹部皮膚由来線維芽細胞)を1.0×10(cells)を含む2(mL)の培地を6穴プレ−トの各ウェルに添加し、細胞播種した。播種翌日、培地を除去し、各濃度の被験物質(植物抽出物)を含む培地を各ウェルに3(mL)を加えた。前記の植物抽出物は、原液を使用し、植物抽出物の最終濃度は、1.0及び0.5(v/v%)とした。2日間培養した後、CQを最終濃度50(μM)になるように添加し、4時間インキュベ−トした。その後、培地を除去し、1(mL)のPBSで洗浄後、細胞回収用溶液を200(μL)加え、スクレ−パ−を用い1.5(mL)チュ−ブに細胞を回収した。SDS−PAGE後にウエスタンブロットを行い、回収したサンプル中のLC3−ll及びβ−actinをバンドとして検出し、Imager−Jを用いてバンド輝度を測定した。測定値を前記の式1に当てはめ、autophagic vacuole分解度を算出した。結果を図3に示す。
図3の試験結果より、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、イチョウ科イチョウ属イチョウより得られる植物抽出物、シソ科タツミソウ属コガネバナより得られる植物抽出物、フフトモモ科テンニンカ属テンニンカより得られる植物抽出物、バラ科サクラ属サクラより得られる植物抽出物、ラン科の植物より得られる植物抽出物は、何れの植物抽出物も最終濃度1.0(v/v%)においてautophagic vacuole分解度が1.2以上を示し、優れたオ−トファジ−活性化作用を有することが確認された。かかる成分を含有する抗老化用組成物には、優れた抗老化作用、取り分け、シワ形成に対する予防又は改善効果が期待出来る。
<本発明の抗老化剤を含有する組成物(皮膚外用剤)の製造方法>
以下の手順に従い、本発明の抗老化剤のスクリ−ニング法により選択された抗老化剤を含有する抗老化用組成物(皮膚外用剤)を作製した。即ち、表1及び表2の処方成分(A)に記載の各成分を合わせ、室温下に溶解した。一方、処方成分(B)に記載された各成分を室温下に溶解し、これを前記(A)に記載された成分の混合物を加え可溶化し、本発明の抗老化用組成物(皮膚外用剤1〜6)を得た。また、本発明の抗老化剤を水に置換した比較例1を作製した。
Figure 0005938193
Figure 0005938193
<試験例4: 本発明の抗老化剤用組成物のシワ改善効果の検討>
実施例2に記載の方法に従い作製された化粧料1〜6、比較例1を用い、以下の方法に従いシワ改善効果を調べた。即ち、目尻のシワが気になるパネラ−28名(女性、年齢層40〜60歳)を4名ずつ7群に分け、各群に対しそれぞれ化粧料1〜6、比較例1を渡し、1日朝晩2回、連日8週間使用してもらい、試験の前後の目尻のレプリカの比較からシワ改善効果を調べた。レプリカは、光を透過させない白色のものを用い、これに皮膚表面形態をうつしとり、このレプリカを実体顕微鏡の標本台に固定し、45度の角度で光を照射し、レプリカを回転させて、皮溝の陰影が強く観察される方向の陰影画像(1×1cm2)を画像解析装置に取り込んだ。この画像はシワの凹凸に従って、シワの深いところは輝度が低く、シワのないところは輝度が高く、陰影を形成する。陰影画像における輝度の分布を求め、輝度のメジアン値を境に、メジアン値以上の輝度の輝点は最大輝度に、メジアン値未満の輝度の輝点は輝度0に変換して、二値化を行い、陰影部分(輝度0の部分)の面積率を求めた。(試験前の陰影の面積率−試験後の陰影の面積率)/(試験前の陰影の面積率)×100でシワ改善度(%)を求めた。結果を各群4名の平均値±標準偏差として表3に示す。表3の結果より、本発明の化粧料1〜6は、優れたシワ改善作用を有することがわかる。
Figure 0005938193
<製造例2: 本発明の抗老化剤を含有する抗老化用組成物(健康食品)の製造方法>
表4及び表5に示す処方に従い、健康食品(健康食品)を作製した。即ち、処方成分を10重量部の水と共に転動相造粒(不二パウダル株式会社製「ニュ−マルメライザ−」)し、打錠して錠剤状の健康食品1を得た。尚、表中の数値の単位は、重量部を表す。本健康食品は、優れた抗老化作用(シワ形成に対する予防又は改善作用)を有していた。
Figure 0005938193
Figure 0005938193
本発明は、食品、医薬品、化粧料等に応用出来る。

Claims (7)

  1. 抗老化剤のスクリーニング方法であって、
    被験物質を60歳以上のヒトの皮膚細胞に添加する工程、
    前記細胞にオートファジーを介する細胞質成分の選択的な分解阻害作用を有する成分を添加する工程、
    当該細胞のLC3−II蛋白質量を測定する工程、及び
    当該測定値より、前記オートファジーを介する細胞質成分の選択的な分解阻害作用を有する成分を非添加の場合のLC3−II蛋白質量を対照として、オートファゴソーム形成後の細胞質成分の分解過程の活性化度合いを推定する工程を含み、
    前記活性化度合いが高い場合には、前記被験物質は抗老化作用が高いと判別することを特徴とする、抗老化剤のスクリーニング方法。
  2. 前記抗老化作用が、シワ形成に対する予防又は改善作用であることを特徴とする、請求項1に記載の抗老化剤のスクリーニング方法。
  3. 請求項1又は2に記載の抗老化剤のスクリーニング方法を行う工程、及び
    前記工程により選択される抗老化剤を処方に含有させる工程を含む、抗老化用組成物の設計方法。
  4. 前記抗老化用組成物が、シワ形成の予防又は改善用であることを特徴とする、請求項に記載の設計方法
  5. 前記抗老化用組成物が、皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項又はに記載の設計方法
  6. 前記抗老化用組成物が、化粧料(但し、医薬部外品を含む)であることを特徴とする、請求項何れか1項に記載の設計方法
  7. 前記抗老化用組成物の使用対象60歳以上であることを特徴とする、請求項何れか1項に記載の設計方法
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